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第4章 計画の目標と基本方針

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第4章 計画の目標と基本方針
第4章 計画の目標と基本方針
第4章
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計画の目標と基本方針
計画の基本理念
「みどり豊かな生きいきとしたまち
東村山」
私たちは、先人から受け継いだ豊かな自然の恵みと営みのもとで生活を営んできました。し
かし、近年のたゆまざる科学技術の発達により、私たちの生活の利便性を飛躍的に向上させた
一方で、エネルギーが大量に消費され、資源の枯渇や自然の浄化能力を超える環境汚染、取り
返しのつかない生物種の絶滅など地球の環境が脅かされ、今や私たちの生命や生活の基盤が損
なわれるまでに至っています。
私たちの住む東村山市は、武蔵野台地のほぼ中央に位置し、狭山丘陵を背に空堀川、前川、
北川をはじめ野火止用水などの水辺空間を有し、点在する平地林などの豊かなみどりは武蔵野
の面影を今に色濃くとどめています。しかし、近年は、武蔵野の美しい風情を残す農村地域か
ら住宅都市として発展し、急速な市街化が進展し、緑地の著しい減少も顕在化しています。
一方、良好な環境は、単に自然から与えられるものでなく、すべての市民による保全、回復
及び創造の努力によってはじめて享受できるものです。同時に恵み豊かな環境を将来の世代に
継承していく責任と義務があります。
みどりの自然環境は、市民の生活にとって欠くことができないものであり、その保護、育成
は今日の重要かつ急務とする課題です。みどり豊かな東村山をめざし、まちづくりの中で、み
どりを守り、つくり、育てていきます。また、「東村山の原風景」として「みどりと人と生き
物が共生する地域」である里山は、人とみどりの関わりでつくられ守り、育てられた循環社会
の象徴です。里山のよさを現代の生活にも活かしながら、将来に向けて人と自然が共生する「新
たな里山*」づくりを進めます。
*この計画における里山とは
里山の明確な定義はありませんが一般には「人が何らかの目的で生活のために利用する二次林
を中心にした地域」を呼んでいました。
東村山の農家では、平地にある雑木林も「山」と呼んできたといいます。この基本計画では「里
山」の概念を巾広くとらえ「東村山の原風景」として「みどりと人と生きものが共生する地域」
として里山という言葉を使うことにします。このように考えると里山は、人とみどりの関わりで
つくられ守り、育てられた循環社会の象徴であるとも考えることができます。
この計画における里山とは、里山のよさを現代の生活にも活かしながら、将来に向けて人と自
然が共生する「新たな里山」づくりを始めるという視点からも用います。
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第4章 計画の目標と基本方針
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みどりの将来像
かつて、集落に住む人々は雑木林を活用し、育成してきました。それが里山であり、里山
は人とともにありました。そして、その状態が東村山の原風景でもありました。
しかし、現在は、急激な人口増加に伴う都市化によって、人は自分たちの生活や活動を中心
に考え、雑木林などのみどりを減少させてきました。時代が移り、まちもみどりもかたちは
変えていますが、人とまちのみどりの関係は、その共存、共生という関係においてかつて
の里山における人と雑木林の関係であることが望ましいと考えます。
現在は、地球規模の環境問題の顕在化とともに、人を含む多様な生物が生息・生育していく
ことができる環境を守っていくことの重要性が高まり、さらに市民一人ひとりが心豊かに暮ら
していける都市づくりも必要とされています。
こうしたことから、人が中心であった人とみどりとの関係を、今後は「人とみどりは共に生
きていく」と再認識していくことが必要です。
人とみどりは共に生き、東村山の原風景を保全していくだけでなく、みどりは市民一人ひ
とりにかけがえのない大切なみんなのものとの認識に立って、人とみどりの新しい付き合い方
を創造していく「新たな里山」があるまちに育てていきます。
(1)みどりの骨格構造
市域のみどりの分布状況に応じて、河川、湧水、水路等及びその周辺の「水辺ゾーン」雑木
林や農地と住宅などの土地利用が混在している「雑木林と農地ゾーン」東村山駅を中心とする
「市街地ゾーン」の3つのゾーンに区分します。これらの土地利用の特性を踏まえ、みどりの
まちづくりを進めます。
■ 水辺ゾーン
市内には、河川(柳瀬川、空堀川、前川、北川、出水川など)と用水路(野火止用水)
があり、流域は野火止用水を境に北は空堀川、北川、前川が柳瀬川流域に属し、南は出
水川が黒目川流域に属しています。
下水道水洗化率(接続率)が 98.5%となり、河川の水質は向上していますが、動植物
の種は一部を除いては減少しています。
空堀川の水量については、減少傾向にあり、瀬切れも日常化しています。流れを取り
戻すことによって生きものの生息の場の確保が必要です。
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みどりの将来像
~「新たな里山」があるまち~
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第4章 計画の目標と基本方針
空堀川では河川改修により、治水安全度の向上とともに高水敷の草地、広場等が拡張
され、水辺のみどり環境が改善されました。流路については晴天時流量の減少によって
水生動物の生息の場が分断されています。流路の連続性の復活を目標とした当市最大の
水辺のみどり環境整備が必要です。
北川と前川は晴天時でも流量が確保されており、流路内にも水生植物が繁茂して魚類、
水鳥も随所に見られます。雨水排水路としての役割もあり、コンクリート護岸が随所に
見られます。できる限り自然的護岸に戻し、沿川の緑化推進により、広がりと厚みをも
った水辺のみどり環境の保全が望まれます。
出水川は雨天時の雨水排水路の役割が最も大きく、晴天時はほとんど流量が確保でき
ません。河床や護岸部には自然植生が発達し、下水道の普及に伴い雑排水が排除された
ので河床の水溜まりと水生生物が雨天時に流れから逃避できる環境護岸を設置すること
で身近な水辺みどりを創り出すことができます。
野火止用水は、1655 年に開削され、玉川上水から分かれる地点から都県境まで全長 9.6
㎞と、それに隣接する樹林地からなる歴史環境保全地域です(昭和 49 年指定)。
昭和 59 年に下水処理水を浄化した高度処理水を活用し、清流が復活し、さらには、
「玉
川・野火止」「松山・青葉町」「黒目川・柳窪」といった3つの雑木林のみちコースが
整備されています。
しかし、植栽されている樹木が高木化し、水路法面の崩壊が進行している今日、護岸・
法面の整備をするとともに、高木化した樹木の伐採・間引きを行い、若木の植栽を行う
等、危険箇所を事前に回避し、歴史的遺構として、人と自然がふれあい、うるおいと安
らぎのある親水の場として維持管理していく必要があります。
■ 雑木林と農地ゾーン
雑木林と農地ゾーンは、市内の全ての里山が存在し、八国山など都立公園や緑地保護
区域、生産緑地が多く分布する地域です。このゾーンでは、「人々の適切な維持管理」
により「生物多様性に富んだ空間」を保全再生し、地域社会とともに持続可能にするこ
とを将来像とします。
東村山の原風景を形成していたのは里山、つまり雑木林と農地であることを再確認し、
生きものの生息の場、子どもたちの環境教育の場、市民の憩いの場、地球温暖化防止の
場等、多くの機能(付加価値)があるという認識を市民全てが共有していきます。そし
て、市民や行政が一体となって、現状よりも里山を絶対減らさないという強い決意を持
って行動します。将来像を実現するためには、里山の拠点を中心に、土地の公有地化を
主体に雑木林と農地の保全による土地の確保に努め、併せて人とみどりの触れ合いの場
等としての普及啓発・環境学習を進め、人とのかかわりを深めるとともに管理の担い手
の確保をしていきます。
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第4章 計画の目標と基本方針
都市計画緑地として
保全・活用
里山の拠点(せせらぎの郷多摩湖緑地周辺)
廻田の丘からの眺望(廻田緑地)
せせらぎの郷多摩湖緑地
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第4章 計画の目標と基本方針
たいけんの里
たいけんの里
下宅部遺跡
はっけんのもり
北川と北山公園一帯の
みどりと水辺の整備・復元
里山の拠点(北山公園周辺)
八国山たいけんの里
北山公園
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第4章 計画の目標と基本方針
■ 市街地ゾーン
市街地ゾーンは、駅周辺の商業地や業務地、幹線道路の沿道の土地利用が進んだ地域、
面的に広がる住宅地など都市的な土地利用が進んでいる地域です。このゾーンでは、緑
の拠点となる公園の整備、身近な公園の有効利用、街路樹の植栽と生垣化の推進などの
沿道緑化、事業所の緑化の促進などを進め、広がりと厚みのあるみどり豊かな都市空間
のネットワークを進めていきます。
「東村山駅周辺まちづくり構想」に基づく東村山駅周辺みどりのまちづくり
出典:東村山駅周辺まちづくり構想(平成 22 年 2 月)
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第4章 計画の目標と基本方針
(2)水とみどりのネットワーク
水辺ゾーン、雑木林と農地ゾーン、市街地ゾーン、それぞれの地域を結び、さらに、拠点と
なる公園やシンボルとなる公園と公共施設をつなぐことにより、だれもがみどりを実感しなが
ら、安心して快適に歩けるみちづくりを進めます。
■ 広域ネットワーク
東京都が指定している「雑木林の道」「武蔵野の路」などで隣接市との連続性を図り
広域的なネットワークを形成します。
水とみどりのネットワークは、市内だけにとどまらず、隣接市も含んだ広域的なもの
となることが重要です。そのためには、地域をつなげている道路の活用が有効であり、
街路樹により広域的なみどりのネットワーク化を図ります。
■ 身近なみどりのネットワークづくり
生垣や庭のみどりを連続したつながりに発展させ、有機的なネットワークの形成を図
ります。
保存生垣や保存樹木は助成制度が行われていたにもかかわらず、平成 13 年度以降減少
しています。身近なみどりとして生垣や庭のみどりは重要であり、これらを連続したつ
ながりに発展させるためには、これまで以上の助成や新築住宅へのみどり創出の制度化
等を進めます。
■ 生態系の保全と回復を図るネットワークづくり
狭山丘陵の自然や水辺とみどりにおける生態系の保全と回復を図り、これらを相互に
結び生き物にやさしい環境をつなげていきます。
狭山丘陵を核とする生態系の保全と回復のためには、雑木林や川のネットワークが重
要です。しかしながら、一部の雑木林は公有地化されたものの、消失面積が大きく上回
っており、雑木林の分断化が進んでいます。また、空堀川や北川の一部では生物に配慮
した取り組みが行われていますが、依然として生物の回廊としての流水のつながりが遮
断されているところが見られます。従って、生きものが自由に移動できるという視点で
雑木林や河川のネットワーク化を図ります。
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第4章 計画の目標と基本方針
■ 文化を育むネットワークづくり
社寺境内地の森や史跡を結び、歴史的資源をめぐるルートを位置づけ、歴史的な変遷
を知ることのできるネットワークの形成を図ります。
社寺林は、永らく地域の人々から大切にされてきましたが、最近では樹冠を切断され
てみどりや歴史の価値を損なうケースが見られます。そこで、社寺林の持つ価値を再認
識し、下宅部遺跡を始めとする史跡と合わせ、市内の歴史的な変遷を知ることのできる
ネットワーク形成していきます。
■ みどりと健康のネットワーク
散歩やジョギング、サイクリングなどが楽しめ拠点となる公園や健康、福祉施設を結
ぶレクリエーションの増進に寄与するネットワークづくりを推進します。
近年、人々のみどりに対する関心とともに健康に対する関心が高まっています。散歩
やジョギング等により、これらは同時に楽しむことができるので、拠点となる公園や歩
道のみどりのネットワークづくりを進めます。また、河川の管理用通路をウォーキング
のコースと位置づけ、散歩道の充実を図ります。
せせらぎの郷多摩湖緑地
淵の森緑地
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第4章 計画の目標と基本方針
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計画の基本目標
平成 32 年までの 10 年間の基本目標は次のとおりです。
● 緑被率の現状を守り育て維持します
緑被率(市域面積のうち樹林地・草地・農地を合わせた緑地面積の割合)31.8%の現状を
守り育て維持していきます。
● 緑地の公有地化面積を増やします
せせらぎの郷多摩湖緑地、北山公園の緑地の公有地化面積は、現在 3.81ha ですが、都市
計画公園・緑地の計画的な事業化として、緑地の公有地化を推進します。
● 下水道水洗化率(接続率)を高めます
平成7年度末に公共下水道整備が完了しており、市全域で水洗化が可能になっていますが、
下水道へ未接続となっている家庭、事業者があり、市民の生活環境の改善や公共用水域の水質
改善の観点から下水道水洗化率(接続率)*を98.5%から99.0%に高めます
● 多面的機能を活かして農地を保全します
農地の状況を把握し、農業者と市民の協働による、農地保全を検討し利用を進めるととも
に、景観の維持向上や防災機能等、農地の理解のために、市民への意識啓発、PR を図ります。
● 都市公園等の再整備を推進します
都市公園等の再整備として、トイレ等の整備、ユニバーサルデザインの導入を推進すると
ともに、より利用者のニーズや地域の現状にあった公園の整備・運営をしていくために、市
民や事業者が、公園の整備に参加することができるしくみづくりを進めます。
● 学校の緑化を推進します
児童・生徒の教育学習の場としてだけでなく、地域のオープンスペースや防災活動の拠点と
しても重要な学校の緑化を推進します。
● 全小中学校の樹木・草花をみんなで育てていきます
学校は東村山のみどりを守り育てる次世代を育む場所として、全小中学校の樹木・草花を
みんなで育てていきます。
● 都市計画道路の整備に合わせて街路樹を整備します
都市計画道路の整備に合わせて街路樹、歩道植栽帯の効果的な整備を推進するとともに、
沿道の緑化を推進し、みどり豊かな都市空間のネットワーク形成を促進します。
● 緑道・散歩道を整備します
緑道・散歩道の整備を進める安心して歩けるみどりのネットワーク整備を進めます。
● 保存生垣を増やします
人々が参加協力してつくる東村山のみどりの環境の 1 つとして、市が指定する保存生垣を
3,471mから 4,000mに増やします。
*
下水道水洗化率:処理区域内人口のうち、下水道へ接続し、汚水処理している人口の割合(接続率ともいう)。
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第4章 計画の目標と基本方針
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計画の基本方針
(1)東村山の原風景を残す
昔から狭山丘陵の裾野に生活し、歴史・文化が存在している里山風景が残る都立八国山
緑地周辺、北山公園一帯、せせらぎの郷多摩湖緑地周辺の地域を東村山の原風景として大
切に保全していきます。
・里山としての東村山の歴史と文化
・循環する環境の中に人々の暮らしはある
・人の手による環境保全は必要
(2)水・みどり・土を守る
水・みどり・土は、命あるすべての生きものが存在する基盤です。東村山市内に流れる
柳瀬川、空堀川、北川、前川、出水川は、地域の温暖化の防止効果と、そこに住む生きも
のの生育・生息の場であり、流水の確保と水辺環境保全が重要です。また、生きものや農
業を支えるみどりや土を守っていきます。
・東村山に流れる川
・雑木林や農地としてのみどり
・木々や農業を支える土の価値
・公共財産としての水・みどり・土
(3)みどりを活かしたまちづくり
みどりは、住宅・道路・河川・公園等、及び電気・上下水道と同じように社会基盤を構
成する社会資本です。また、みどりは、住宅、道路、河川、公園をつなぐソフトなインフ
ラで生活環境に安らぎと豊かさを与えてくれるものです。住宅地や身近な道路、公園や河
川のみどりを市民参加で育てていきます。
・まちのみどりを知り育てる
・まちのみどりをつくり育てる
・身近なみどりを増やす
(4)人々が参加協力してつくる東村山の環境
東村山のみどりの環境を育て、子どもたちに残していくことが私たちの努めです。まち
のみどりは、人々の協力なしでは保全していくことは難しく、多くの市民が協働・協力し
て東村山のみどり環境を育て保全していくシステムが重要です。
・環境保全は人の手が介在して初めて保全できる
・たくさんの人の参加をつくることの大切さ
・子どもたちへ伝えたい環境のこと
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