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特定非営利活動法人エービーアイ・ジャパン 代表

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特定非営利活動法人エービーアイ・ジャパン 代表
瀧谷
和
睦
( たきや . かずたか ,
特 定非 営利 活動 法 人 エーピーアイ・ジャパ ン 代 表
■ 研修先団体 (部署名 ・所在都市)
① C ou n cil of C om m u n ity S erv ices of N ew Y ork S tate , In c. (C C SN Y S )
(N onprofit A ccounting Service C enter ・ A lbany , N ew Y ork)
② A ccou n tin g A id Society (A A S )
(N onprofit Services & T ax A ssistance ・D etroit, M ichigan )
■ 研修先でのスーパーバイザー (氏名 ・肩書き)
① K elly S.M ath ew S /D irector, N on p rofit A ccou n tin g Serv ice C en ter
D en ise L .H arlow /D irector, L eadersh ip & M an ag em en t In stitu te
② M arsh all ∫
.H u n t/ D irector, T ax A ssistan ce P rog ram
R .S u e D odea/ D irector, N on profit Serv ices
雷 研修実施期間
① 2 0 0 1 年 1 1 月 1 6 日∼2 0 0 2 年 6 月 3 0 日
② 2 0 0 2 年 7 月 1 日∼2 0 0 2 年 1 1 月 9 日
■ 研修テーマ
非営利 団体 へ の会 計支援
■ 研修概要
1 . 中間支援組織 による非営利 団体への会計支援サー ビス につ いて
2 . 職業専門家 による非営利 団体等へのボ ランテ ィア的支援活動 (P ro bon o 活動) について
3 . 非営利 団体 の会計 ・ 税務 に関す る法 的社会基盤 につ いて
34
●
●
住所 . 連絡先 . U R L
2 72 B roadw ay A lb an y , N ew Y ork 122 04
T E L : 5 18-4 34-9 194
w w w .CCSn y S.Org
年間予算額 (U S S )
U S $ 1,8 68 ,168
収入源
寄付 : $ 128,328 、 政府助成金 : $ 1,0 12,14 8
プログラム収入 : $ 626,327 、 その他 : $ 10 1,365
組織
スタッフ
の構成
. 会員数
(役員
等)
.
理事 34 名、 本部スタ ッフ 約 30 名、 会員 925 名
組織 の使命
強 固な慈善的非営利セ クター と質 の高 いコミュニテ ィー に基 づいた
プランニ ングを通 して、 健全な コミュニテ ィー とヒューマ ンケアの
提供 システムを創造す る こと
活動内容
非営利 団体へのテ クニ カル アシスタ ンス、 政策提言、 コミュニテ ィ
- 開発等 を行 っているo そ して、 テ クニカル アシスタ ンスは、 以下
の様な多様なサー ビスを提供 している.
・
・
・
・
・
・
・
・
・
戦略計画の作成
経営分析
合併 . 連携のプランニ ング
給与報酬体系のコンサルテ ィング
マーケテイング
ファン ド . デベ ロプメン ト . プランニ ング
理事 . スタッフの研修
法律相談
会計 . 税務相談 他
N E X U S (コミュニテ ィー プランニ ング等 に関す る出版物)
N etw ork N ew s (H Ⅰ
Ⅴ/A Ⅰ
D s に関す る出版物)
その他
主な出版物
特記事項
CN2002
api
on profi
taLE
年秋季
ty es
Fに、
O C(政策提言
U上記住所
S (C Cに関す
SN
に新事務所
Y S る出版物)
のN ewを取得
sletter)
し移転 したo
D
J
C o u n cil o f C o m m u n ity S erV ices o f N ew Y o rk S ta te , Ⅰ
n c.
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団体名
団体名
A cco u n tin g A id S o ciety (A A S )
※その後 (2002 年秋)、
V olu n teer A ccoun ting SerV ice T eam of M ich igan と改称 されたo
住所 . 連絡先 . U R L
18 14 5 M ack A V en u e D etroit, M ich ig an 4 8224-1444
T E L : 3 13-64 7-14 4 4
w w w .accu n tin g aidsociety .org
年 間予算額 (U S S )
U S $ 1 ,4 6 3 ,303
収入源
寄付 . 助成金 (サー ビス . 物品を含む) : $ 1,366,096
その他 (会費 . プログラム収入 . 投資利益等) : $ 9 7,207
組 織 の構 成 (役員 .
理事 18 名
スタッフ . 会員数 等)
スタ ッフ 13 名
会員 約 300 名
ボ ランテ ィア 65 1 名
組 織 の使 命
非営利 団体 の活動が持続 的 . 効率的 . 効果的 にな るよ うに支援す る
ことと、 低所得世帯 の財 政的安定性 を税務サー ビスの提供 によ り向
上す る こと
活動 内容
* 低所得者への税務 申告援助
ボランティアによる低所得者への無料税務申告書作成補助
* 非営利団体への会計 . 税務相談
ワークショップの開催、 アンサーライン(電話 . E m ailなどによる個別
無料相談)、 ビジネスコーチング、 出版物の作成 . 提供及び会計専門
家の紹介等
主な出版物
36
M ich ig an N on profit M an ag em en t M an u al
Y o rk State , Inc. (C C S N Y S )>
●ヽD
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.I
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< C o uncH of C o m m unity S e rvices of N ew
1 . 研 修 テーマ
(主) 中間支援組織 による非営利 団体への会計支援サー ビス につ いて
(副) 非営利団体 の会計 ・ 税務 に関す る法的社会基盤 について
2 . c c S N Y S について
C C S N Y S は、 約75 年の歴史を持つニュー ヨーク州の非営利団体の中間支援組織であ り、 非営
利団体へのテクニカルアシスタンス、 政策提言、 コミュニティー開発等 を行 っている。 そ して、 テ
クニカルアシスタンスは、 以下のような多様なサー ビスを提供 している。
・ 戦略計画の作成
・ 経営分析
・ 合併 ・ 連携のプランニング
・ 給与報酬体系のコンサルティング
・ マーケテイング
・ 資金調達企画
・ 理事 ・ スタッフの研修
・ 法律相談
・ 会計 ・ 税務相談
他
また、 C C S N Y S の関連団体に、 非営利団体のインキュベーター ・ サービスを提供する rhn ovative
C h aritable ln itiativ es」 と、 リスク ・ マネジメン ト(保険の提供) を行 う 「C ou n cilServ ices P lu s」
がある。
3 . N o n p ro fit A cco u n tin g S e rv ic e C e nte r (N A S C ) について
C C S N Y S のテ クニカルアシスタンス事業のうち、 非営利団体への会計 ・ 税務サー ビスを専門
に行 う部門として、 N A S C がある。 ここには、 私 を含め 4 名のスタッフがお り、 当部門のサー ビ
スは、 原則 として 1 時間当た り32 ドルの報酬 を会員 (顧客)に請求 している。 N A S C が提供するサ
ー ビスは以下のような内容である。
・ 帳簿管理 ・ 記帳代行
・ システム分析
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・ 会計 ソフ トの販売や導入 ・ 操作 の指導
・ 会計 システム ・ 内部統制の検証
・ 会計監査の補助
・ 内規 ・ 規約の作成
・ 予算作成
・ 財務諸表の作成
・ 税務書類の作成
・ 財務 ・ 管理会計の研修
4.
他
研修 内容
C C S N Y S での研修では、 上記のN A S C に配属 され、 主 に非営利団体 の財務諸表 ・ 税務書類
の作成 に携わった。 日々の業務 は、 会員 (顧客)である非営利団体か ら送 られて くる会計取 引記録 を
もとに、 会計 ソフ トや税務 ソフ トを使 って、 月次 ・ 部門別 ・ 連結の財務諸表や税務 申告書 を作成す
るというものであった。 また、 米国の非営利団体 においては、 ロビー活動 (特定の利益 をはかるた
めに議員 ・ 官僚 ・ 政党な どにはた らきかけ、 政治的決定 に影響 を及 ぼそ うとす る活動) 関連支出が
総支 出の一定割合 を超過す る ことで、 内国歳入庁 ( I R S ) がペナルテ ィー を課 した り、 免税資格 を
否認す る こともある ことか ら、 私が担 当していた非営利団体 の中で ロビー活動 を行 っている団体 に
おいては、 、 総支 出に占めるロビー関連支 出の割合 を算定 し、 当該割合が一定割合 を超過 していな
いか担 当スタ ッフに報告 していた。
N A S C で私が携わった会計 ・ 税務 の業務 に関 しては、 基本的に会負 (顧客)別 にタイム シー トを
作成 し、 それ をスーパーバイザー等 に報告す ると、
負 (顧客) に対 して報酬 を請求 していた。
は、
C C S N Y S が当該タイム シー トに基づいて会
C C S N Y S 内での会計 ・ 税務関連 の研修 (業務) に関 して
N A S C 所長のK elly S. M athew s氏が私 のスーパーバイザー として助言や指導 をして くれた
とともに、 他 の N
A S C のスタ ッフも日々の細かい会計 ・ 税務処理 の助言や会員 (顧客)への連絡 の
補助 をして くれた。 また、 会計 ・ 税務以外のテクニカルアシスタンス関連の研修 (業務) に関 しては、
Leadership & M anagem entInstitute 所長のD enise L.H arlow 氏が私 のスーパーバイザー として
助言や指導 をして くれた とともに、 政策提言や コミュニティー開発等 に関 して も、 多 くの担 当者か
ら助言や指導 をしていただき、 会計 ・ 税務以外 の中間支援組織 の役割やマネジメン トに関 して も幅
広 く学ぶ ことができた。
C C S N Y S での主な研修 (業務)内容は以下の とお り。
・ 非営利団体 の財務諸表 ・ 税務資料の作成
・ 免税資格取得 に関す る申請書の作成補助
・ 会計 ・ 税務 コンサルティング業務への同行
・ その他 の内部資料 (内部規約書、 財産 ・ 債務明細書等)の作成補助
・ ワー クシ ョップの準備 ・ 参加 ・ 後片付 け
・C
38
C S N Y S 内部 の税務処理等 に関す る調査 ・ 報告
●
●
・ 月次理事会への参加
・ そ の他 の内部 ・外部会議 (N onprofit Serv ices C om m ittee M eetin g , N ew Y ork State
N onprofit P olicy C ab in et M eetin g 等) への参加
D qDJ
nZDX
・ 月次スタ ッフ会議への参加
D^JqD J
・ 非営利団体全般 の会計 ・ 税務 ・ 監査 に関す る調査 ・ 研究
・ サイ トビジッ ト
5 . 研修 の成果
C C S N Y S に所属 し、 実際に現地 の非営利団体 の財務諸表や届 出書等 の作成 に携 る ことがで き
た ことで、 米国 (ニ ュー ヨー ク州) における非営利 団体 の会計 ・ 税務 に関す る一連 の業務 の流れや、
非営利 団体が抱 える会計 ・ 税務 に関す る問題点 を把握す る ことができた。 そ して、 それ らの問題点
や非営利団体か らの要望 に応えるために、 中間支援組織が担 う役割 を理解す る とともに、 中間支援
組織 としての (当該組織 の有給職員 による)会計支援サー ビスの提供方法 を学ぶ ことができた。 さ ら
に、 米国における非営利団体 の会計 ・ 税務 ・ 監査 に関す る法体系 を実務的側面 と学術的側面か ら学
ぶ ことができた。
6 . 研修先への貢献
私のスーパーバイザーは、 事務所で内勤 し細かい財務資料 を作成するということよ り、 会員 (顧客)
と直接会 い相談 ・ 提案 ・ 交渉等 を行 うことを得意 として (積極的 に行 いたい と思 って) いたため、 私
が会員 (顧客)である非営利団体 の財務諸表 ・ 税務 申告書の作成 を担 当した ことによ り、 私 のスーパ
ーバイザー等がよ り多 くの時間 を会員 (顧客) との直接的な相談業務等 に充 当す る ことができた と思
っている。 また、 多忙なスーパーバイザー等 に代わ り、 C C S N Y S 内部や非営利団体全般 の税務
処理 に関す る情報 を収集 し、 スーパーバイザー等 に提 出 ・ 報告 した。
7 . 研修 の課題 ・反省点
C C S N Y S での私 の研修 は、 財務諸表や税務 申告書 を作成す る といった比較的事務的な業務が
多 く、 非営利団体全般 のマネジメン トとい うよ り、 非営利団体 の会計 ・ 税務 の処理 に多 くの時間 を
使 って いた。 そ のため個人的な会計 ・ 税務 の知識や事務処理能 力に関 してはある程度向上 させ る こ
とがで きた と思 って いるが、 非営利団体全般 のマネジメン トの知識や能力を向上 させ る とい うこと
に関 しては、 自分 自身の意識がやや不十分 (消極的)であった と反省 している。
39
< A cc o unting A id S o c iety (A A S ) >
1 . 研 修 テーマ
(主) 専門家 による非営利 団体等 へ のボ ランテ ィア的支援活 動 (P ro bon o 活動) につ いて
(副) 非営利 団体 の会計 ・ 税務 に関す る法的社会基盤 につ いて
2 . A A S について
(1 ) 概要
19 72 年 にデ トロイ トで設立 された非営利団体 (50 1 (C ) (3 ) 法人)で、 主 にミシガ ン州南東部 の非
営利団体及びその関係者並びに低所得者に対 して会計 ・ 税務のサポー トを行 っている。 当該団体 の
ミッシ ョンは、 非営利団体 の活動が持続的 ・ 効率的 ・ 効果的になるように支援する ことと、 低所得
世帯の財政的安定性 を税務サー ビスの提供によ り向上することである。 そ して、 このミッシ ョンを、
ボランティア リズム とパー トナーシップを通 して実現す ることに重点 を置いている.
20 02 年の活動規模及び実績は、 金額 にして約 14 6 万 ドルであ り、 8 名の専従職員、 5 名のパー
トタイム職員、 約 6 50 名のボ ランテ ィアによ り、 主 に、 約 2,000 の非営利団体及びその関係者 に対
す る会計 ・ 税務のサポー トと、 約6,000 の低所得者世帯 に対す る税務 申告のサポー ト(総額 500 万 ド
ル超の税金の還付手続 き) を行った。
(2 ) 非営利団体等へのサポ ー ト活動について
非営利団体等への会計 ・ 税務サポー ト活動 に関 しては、 主 にワー クシ ョップの開催、 アンサー ラ
イ ン(電話 ・ E m ailな どによる個別無料相談)、 ビジネスコーチ ング、 出版物の作成 ・ 提供及び会計
専門家 の紹介 を、 会計士な どの専門家の無償 のボ ランティア的 (pro bon o)活動の一環 として行 っ
て いる。 また、 会計 ・ 税務以外 の問題 ・ 相談 に対 しては、 Sou th east
M ich ig an
N on profit
A ssistan ce P rov iders (C om m u n ity L egal R esou rces, N eighborhood Serv ice O rgan ization ,
D etroit E x ecu tiv e Serv ice C orps, U n ited W ay C om m u n ity Serv ices, N pow er M ichigan 等、
ミシガン州の11 の中間支援団体の連合体) やN onprofit E n terprise at W ork (N E W / N P O 等のセ
ミナー ・ イ ンキュベ- トな どを得意 とするミシガン州 アン ・ アーバーの非営利団体) 等 とパー トナ
ーシップ(ネ ッ トワーク) を組み、 解決 に取 り組んでいる.
(3 ) 低所得者への税務 申告 サポ ー ト活動 について
税務 申告のサポー ト活動 に関 して、 A A S の活動 と日本の税務署 ・ 税理士会等の活動を比較 した
場合、 A A S の活動のユニークな点は、 学生 ・ 会計専門家 ・ 一般市民 ・ 企業 ・ 政府機関等が協働 し
て実施 していることである。 学生や一般市民な ど、 税 の知識が十分 にないボランテ ィアは、 事前 に
トレーニ ングを受 け、 当 日は低所得者の基本的な個人データの入力、 質問表の作成及び受付等 を担
当 し、 会計の専門家や税務の知識が豊富なボ ランテ ィアは、 その個人データを基 に、 税務 申告書の
40
●
●
所等の提鋲 を行 い、 政府機関 ( I R S ) は税務 ソフ トウエアやデーターベース作成 ・ アンケー トの集
計 ・ 分析のための必要資料等の提供 を行 っている。 また、 ミシガン州 の多様な納税者層に対応す る
ため、 障害者な どに対 しては 自宅 に訪問 し、 英語能力が十分でない納税者 に対 しては外国語の分か
るボランティアが対応できるような態勢 も整えている。
D^JqDJ DqDJnZDH
主要な部分の作成 を担 当す る。 企業 ・ 財団な どは、 活動資金 ・ コンピューター (ハー ドウエア) ・ 場
3 . A A S への移籍 について
私は もともとは全研修期間を C C S N Y S で過 ごす予定だったが、 途中で A A S への移籍 を決め
た。 その主な理 由は、 専門家 によるボランティア活動 (P ro bon o 活動) の組織化 ・ 運営手法 を学ぶ
ことと、 専門性 の高い中間支援組織同士のパー トナー シップ(ネ ッ トワーク)の形成 ・ 維持 について
学ぶ ことにあった。
4 . 研修内容
A A S での研修では、 上記の非営利団体等へのサポー ト活動 と低所得者への税務 申告サポー ト活
動の両活動に携わることができた。 非営利団体等へのサポー ト活動 に関 しては N onprofit Serv ices
部長 の R . Su e D odea 氏が、 低所得者への税務 申告サポー ト活動 に関 しては T ax A ssistan ce
P rogram 部長のM arshall ∫. H un t 氏が、 それぞれ私のスーパーバイザー として当研修 の指導 をし
て くれた。 A A S での主な研修 (業務)内容は以下のとお り。
① 非営利団体等へのサポー ト活動
・ ワークシ ョップの準備 ・ 参加 ・ 後片付け
・ 会計専門家 ・ 中間支援組織等 との会議に参加
・ 関連非営利団体 の訪問
② 低所得者への税務 申告サポー ト活動
・ 過年度の (低所得)納税者 ・ ボ ランテ ィア等の統計資料 (データベース)の作成
・ 税務 申告 ソフ ト操作等 のボランテ ィア研修 の補助
・ 関係団体 (者) との会議 ・ 面会
③ その他の研修 (業務)内容
・ スタッフ会議への参加
・ 非営利団体の会計 ・ 税務 ・ 監査 に関する調査 ・ 研究
・A A S の過去 10 年間の財務分析報告書の作成 と提示
41
5.
研修 の成果
A A S にて研修 を受けた ことによ り、 専門家 によるボランテ ィア的活動 (P ro b on o 活動)の組績
化 ・ 運営方法等 を学ぶ ことができた. A A -S に限 らず、 全米の同様な会計支援組織は、 各地の公認
会計士協会や I R S か ら多 くの資金的 ・ 人的支援 を受けて運営 されてお り、 組織的 ・ 制度的な支援
体制が整備 されている。 例えば、 公認会計士協会 においては、 公認会計士が A A S な どのボランテ
ィア活動 に参加すれば、 ライセ ンスを更新す る際の単位 として認定 してお り、 公認会計士のボラン
テ ィア活動を組織的 ・ 制度的に奨励 している。 また、 I R S においては、 低所得者の税務 申告サポ
ー ト活動 を低所得者の救済事業 としてではな く市民への納税教育 として位置付けてお り、 税務支援
を受ける側 も行な う側 も税金 についての知識 を学べる機会を提供 している。 さ らに、 大学 において
は、 サー ビス ラーニ ングプログラム として、 低所得者の税務 申告サポー ト活動 を行なってお り、 会
計な どを学ぶ大学生に社会参加の機会 を提供 している。 このような ことか ら、 A A S のプログラム
に限 らず、 ボ ランテ ィア活動の多 くは、 支援 を受ける側の立場だけではな く、 支援す る側の立場 も
考慮 して、 プログラムを企画 ・ 実施 してい くことの大切 さを学んだ。
また、 A A S のボ ランテ ィア活動のアウ トプッ ト(活動評価) に関連する統計資料 を作成する手伝
いをしていた ことによ り、 ボランティア活動の評価手法や無償 の専門サー ビスを財務諸表に数値的
に表現す る方法等 を学ぶ ことができた。 さ らに、 多 くの非営利団体 の訪問 ・ 関係者 との面会 ・ 関係
団体 との会議への参加等ができた ことによ り、 米国における非営利団体 の多様なマネジメン ト ・ ス
タイルや考えを見聞することができた とともに、 専門性の高い多様な中間支援組織同士のパー トナ
ーシップ(ネ ッ トワーク)の形成 ・ 維持 について学ぶ ことができた。 米国の中間支援組織において も、
一般 の非営利団体 と同様 に財政的に余裕があるわけでないので、 各団体 の得意分野 に経営資源 を集
中 していかざるを得ない. よって、 パー トナーシップの形成は活動 を維持す る上でやむな く行なっ
ている こともあ り、 組織 を維持 してい くためには、 内部資源の配分 と外部環境への対応 をバ ランス
よ くマネジメン トす る ことが大切だ と教わった。 そ して、 そのために、 中間支援組織 同士の間で理
事 ・ 事務局長 といった トップレベルでの会合 を行ない、 各組織の方向性 と非営利セ クター全体 の方
向性 を定期的に確認す ることの必要性 を強 く感 じた。
このように、 多 くの非営利団体関係者の話 を聞いた り、 会合に参加できた ことか ら、 米国におけ
る非営利団体 の会計 ・ 税務 ・ 監査 に関す る法体系についても、 実務的側面 と学術的側面か ら学ぶ こ
とができた。
6 . 研修 先への貢献
A A S の過去 10 年間の財務分析報告書 を作成 し、 スーパーバイザーや C E O に提示 した。 この業
務は特 にスーパーバイザー等か ら指示 された ものではな く、 A A S の過去の活動実績やその推移 を
調べてみたかった という個人的な好奇心 と、 A A S には長年 にわたって勤務 しているスタッフが少
な く過去 の活動実績等 を熟知 している者が少ないと実感 していたため、 当該情報は他 のスタッフに
も利用価値が高 いのではないか と思 い、 作成 した。 その他、 毎年多 くの時間 を費や していた (低
ヽ
●
によ り、 他 のスタ ッフの業務負担 もいくらか軽減 された と思 っている。 また、 非営利団体等へのサ
ポー ト活動の責任者である、 R . Su e D odea 氏が退職 した後 の非営利団体等へのサポー ト活動の人
手が不足 している時期 には、 ワー クシ ョップの準備や後片付けを、 時には一人で担 当して行 った。
D^J
qDJ D qDJ
nZD X
所得)納税者 ・ ボ ランテ ィア等の統計資料 (データベース) の作成 を長時間にわたって手伝 った こと
7 . 研修 の課題 ・反省点
A A S の低所得者への税務 申告サポー ト活動 に関 しては、 そ の事前準備 (ボ ランテ ィアの募集 ・
訓練等) と事後評価 (納税者 ・ ボ ランテ ィア等 の統計資料/ データベースの作成) に関 しては参加す
ることができたが、 活動 自体が行われるのは主 に 1 月か ら4 月までなので、 その実際のサー ビスを
提供す る場 には殆 ど参加す る ことができなかった ことが残念である。 また、 非営利団体等へのサポ
ー ト活動 に関 しては、 専門性の高い他の中間支援組織同士のパー トナーシップ(ネ ッ トワーク)の形
成や維持 ということについて関心が高かったため、 一部のスタ ッフを除いて A A S 内部 のスタ ッフ
と十分 に対話す る時間が少なかった と反省 している。
A A S スタッフとの日本食ランチパーティー
43
ヽ∫
一
壷
近年、 米国では営利 ・ 非営利 を問わず、 倫理や アカウンタ ビリテ ィー (会計報告責任) といった企
業 ・ 団体 の社会的責任 の重要性が高 まっているよ うに感 じた。 その背景には、 巨額 に上る企業 の不
正事件や非営利団体幹部 の資金の私的流用事件等が生 じた ことと、 企業 ・ 団体 の活動成果やそ のプ
ロセスに高い関心 をもつ市民 (professional consum er という意味の新語で 「prosum er」 と呼ばれ
る)が増加 して いる ことがあるのではないか と思 う。 また、 非営利 団体 に対 して も、 具体的な成果
を求める内部 ・ 外部 の関係者が増加 し、 その活動成果 を数値的に評価 ・ 報告す る ことの必要性 も高
ま りつつあるように感 じた。 しか し、 そ の一方で、 その活動成果 を数値的に評価す る ことが馴染 ま
ない慈善性の高い団体 ・ 活動 も数多 く存在 しているもの と思われ る。
1 . 米国の非営利団体 に対する会計 ・税務 支援 (サービス)
米国の非営利セ クター も、 少数 の大規模な団体 と多数 の小規模な団体 によって構成 されている。
大規模な団体 に関 しては、 外部監査 を受 ける ことが法的 に義務付 け られていた り、 複雑な税務 申告
書 を作成 ・ 提 出 しなければな らないため、 そ のような会計 ・ 税務 の業務 に専門に携わ る内部スタ ッ
フを雇用 した り、 外部 の専門家 と通年契約 を交わ し、 多 くの予算 を費や している。 しか し、 その一
方で、 小規模な団体 に関 しては、 会計 ・ 税務 の専門知識 を有す る内部スタ ッフを確保 した り外部 の
専門家 に常時報酬 を支払 った りす る財政的余裕がな く、 適正な会計 ・ 税務支援 (サー ビス) を受 ける
ことが困難な ことが多 い。 そのよ うな非営利団体 に対す る会計 ・ 税務支援 (サー ビス) については、
主に営利組織である会計事務所 と非営利組織である中間支援組織がその役割 を担 っている。 しか し、
営利組織である会計事務所の多 くは、 採算性 の高い大規模な非営利 団体 に対 しては積極的 に関与 し
ているが、 採算性 の低 い小規模な非営利団体 に対 しては、 その関与が消極的になる傾向が強 い。 そ
のため、 比較的小規模な非営利団体 に対 しては、 中間支援組織や会計の専門知識 を有す るボ ランテ
ィアが会計 ・ 税務支援 (サー ビス) を提供す る ことが求め られている.
2 . 中間支援組織による会計 ・税務 支援 (サービス)
米国の中間支援組織 による非営利団体 に対す る会計 ・ 税務支援 (サー ビス)は、 主 にセ ミナー、 ワ
ー クシ ョップ、 出版物等 による情報提供及び会計専門家 の紹介等が中心であ り、 記帳代行や財務諸
表 ・ 税務書類の作成 といった直接的なサー ビスを提供す る中間支援組織はそれ ほ ど多 くないよ うで
ある。 少な くとも、 ニ ュー ヨー ク州周辺で、 上記のよ うな直接的なサー ビス を提供す る非営利 の中
間支援組織は、 C C S N Y S のN A S C だけであると思 う。 しか し、 中間支援組織の中には、 会計 ・
税務 に詳 しい内部スタ ッフを雇用 していた り、 外部 の会計専門家や財務 コンサルタン ト等 と委託契
約 していた りと、 非営利団体が常時、 会計 ・ 税務の相談ができる態勢 を整えて いる団体が、 東海岸
44
ヽ
●
会計専門家によるボランティア活動 (P ro bo n o 活動)
D
J
3.
D^.I
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JDq nZDX
地域 に数団体存在 しているようである。
米 国では、 法律事務所や会計事務所が組織 として、 また個 々の専門家が個人 として、 非営利団体
を支援す るボランテ ィア活動 を行 うことがある。 このよ うな専門家 によるボ ランティア活動は、 一
般的 にpro bono publico または単 にpro bono ( 「公益 のために」 を意味す るラテ ン語) と呼ばれてお
り、 米国には こうした活動 を行 うことまたは推進す る ことを目的 とす る非営利団体 も存在す る。 そ
して、 個 々の専門家や法律 ・ 会計事務所が、 単独でボ ランティア活動 を行 うこともあれば、 非営利
団体等 に属 してボ ランテ ィア活動 を行 うこともある。 米国での専門家 による組織的なボ ランティア
活動は、 弁護士等 の法律の専門家 によって 1876 年 に始 め られ、 1916 年 には4 1の本格的な法律相談
を行 うボ ランテ ィア (非営利)団体が存在 していた と言われている。 会計 ・ 税務 に関す るボ ランテ ィ
ア活動は、 それか らしば らくした 1968 年 に、 コネチカ ッ ト州 の大学教授やそ の学生等 によって行
われ、 その内容 は個人 (低所得者) の税務 申告書 の作成 ・ 申告 を支援する というものであった。 翌
年 の 1969 年 には、 ロスアンジェルスやニ ュー ヨー クで も同様 の活動が開始 され る とともに、 アイ
オ ワ州では、 A ccounting A id Society という非営利団体 によ り、 非営利団体や小規模事業者 に対
す る会計 ・ 税務支援 プ ログラムが開始 された。 そ の後、 1970 年代 には、 ミシガ ン州、 コネチカ ッ
ト州 、 ノー ス カ ロ ライ ナ 州 、 ミネ ソ タ 州 、
ニューヨー ク州 、
カ リ フ ォル ニ ア州 等 で も、
A ccounting A id Society と同様な活動 を行 う非営利団体が設立 された。 そ して、 1975年 には、 サ
ンフランシスコに、 全米 の会計専門家 のボ ランテ ィア活動 を支援す るアンブレラ組織 として N A A
P A (N ationalA ssociation of A ccountants for the Public lnterest) が設立 され、 各州の中間支
援組織やA ccounting A id Society 等 の会計 ・ 税務支援等 をす る全米の 15 の非営利団体が参画 し
た。 そ の後、 N A A PA は、 団体名 をA ccountants for the Public lnterestとし、 事務所 をボルチモ
アに移転 した。 しか し、 残念なが ら、 そ の全国的な活動は、 1990 年代終盤以降、 特 に目立 った動
き は 無 く、 そ の活 動 は 停 滞 して し ま っ た よ うで あ る。 だ が 、 そ の 一 方 で 、 デ トロイ トの
A ccounting A id Society のよ うに、 会計 ・ 税務 の支援活動 を現在で も積極的に行 い、 その活動規
模 を拡大 している非営利団体 も幾つか存続 している。
45
4 . c c S N Y S A A S との会計 ・税務支援 (サービス) の比較
C C S N Y S の N A S C の業務 と、 A A S の低所得者への税務 申告サポー ト活動 を比較 し、 それ
ぞれの特徴 を再確認す る。
CCSNYS
46
AAS
サービスの内容
多様な要求 に対 応 可能
限定された内容
サービスの対象者
原 則 制 限なし
所 得基 準による制 限あり
サービス期間
常時
期 間限定
サービスの提供者
内部 有給 職 員 又は外 部 専 門家
主にボランティア
受益者の負担(報酬)
有料
無料
活動運営資金
主にサービスの報 酬
主に助 成 金と寄 付 金
副次的効果
雇用 機 会 の創 出と拡 大
ボランティア活 動の促 進
サービスの質的向上に
必要な要素
職 員の能 力開発
専 門知識 の高いボランティアの
維 持 .確 保
会計 .税務サービス以外
のサービスへの対応
内部の他の部 門との連携 が重要
外 部の他 の専 門性 の高い中間支援
組 織との連携 が重 要
サービス提供者(担当者)
の専門知識
非営 利 団体 に関する知識 は高いが、
会 計 . 税 務の知 識 は担 当者により
大差 あり
非 営 利 団体 に関する知識 は低 いが、
比 較 的多くの担 当者の会 計 . 税 務
の知識は高 い
外部関係(協力)団体
それほど多くない
・ 会 計事 務 所 .法律 事務 所
・ 外 部コンサルタント
・ 会 計ソフトウエア会 社
比 較 的多 い
・Ⅰ
R S (税務ソフト.最新情報の提供)
・ 会 計事 務 所 .法律 事 務 所
(ボランティアの募集)
●
●
日本 において も、 多種多様な活動や 目的 を有す るN P O が数多 く誕生 し、 N P O が新たな社会 の
役割 を担 いつつある。 しか し、 N P O を理解 して いる市民はまだ まだ少数で、 今後、 よ り多 くの市
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1I-来 へ の 展亡
月
民にN P O を理解 し支援 ・ 参加 して もらうことが、 N P O セ クター全体 にとって重要な課題 にな る
だろ う。 そ して、 個 々の N P O の活動 を多 くの市民に正 しく理解 して もらうには、 財務内容 も含 め
た情報公開が大切 になる。 N P O が、 既存のまたは将来 の支援者等 に適正 ・ 適時 に活動 ・ 会計情報
を発信す ることによ り、 後 の資金調達 の協 力も得やす くす り、 活動の継続性 も高 まる ことになる。
N P O
また、 今後、 さ らに多種多様な活動や 目的 を有す るN P O が増加す るのに伴 って、 それ らの●
に支援 ・ 参加す る市民 (個 人、 企業、 助成団体等)が適正な選択 ・ 選別 を容易にす るために必要な情
報収集 を支援す ることも重要 になると思 っている。 よって、 N P O の側 に立った情報公開の支援 と、
N P O に支援 ・ 参加す る者の側 に立 った情報収集 の支援 を、 バ ランスよ く行 ってい く必要がある と
実感 している。 そ して、 個 々の N P O の公益性や慈善性 を行政が判断す るのではな く、 それ らの活
動 に支援 ・ 参加す る市民 (個人、 企業、 助成団体等)が判断す る とともに、 そ の選択 に自己責任 を 自
覚す る ことが大切である と思 う。 そ して、 その結果、 市民が本 当に必要 とす るN P O によ り多 くの
資金や人材が集 ま り、 N P O セ クター内での適正な資源配分 と自然淘汰が行われ る ことが望 ましい
のではないか と思 う。
また、 米国 と日本の非営利 の法人格 を比較 した場合、 日本の特定非営利活動法人 (N P O 法人) と
しての法人格 を取得す る ことは、 とて も煩雑で多 くの労力を必要 とす る。 また、 法人格 を取得 した
後 も、 営利組織 よ りも複雑な会計処理 と報告が求 め られ、 それ らの事務処理 に多 くの時間 と労力を
割かれている。 さ らに、 寄付金の所得控除の対象 となる団体 になるとした ら、 その手続 きは専門家
で も理解す る ことが困難なほ ど大変な作業 になる。 その一方で、 N P O 法人 に対 しては、 正式な会
計基準 も存在 してお らず、 従来 の公益法人や行政 の外郭 団体 の会計に近 い形で会計 を行 う団体 もあ
れば、 営利企業が用 いる企業会計原則 に則 って会計 を行 う団体 もあ り、 現場の会計担 当者 も混乱 し
ているのが実情である。
そのよ うな 日本の N P O に関す る会計 ・ 税務 の事情 を勘案 し、 今後は、 N P O 等 に対す る会計支
援 を組織的に提供できるシステム作 りを行 いたい と希望 している。 そ して、 N P O 関係者 に適正な
情報が適時 に供給 され る とともに、 よ り多 くの N P O で煩雑な会計や税務等 の事務作業の負担が軽
減 され、 本来 の 目的である活動 に多 くの経営資源 を投入できる環境 を整備す る ことに貢献で きれば
と思 っている。
具体的 には、 下記のような活動 (プログラム) を考 えて いる。
・ N P O や 中間支援組織 に対す る会計 ・ 税務情報 の提供
・ N P O 相互 の会計情報の共有化 を促進す るシステム作 り
・ N P O の情報公開の支援
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・ N G O の海外活動のモニター リング支援
・ 会計専門家 のボ ランティア活動の促進
・ N P O の会計 ・ 監査 ・ 税務制度 に関す る提言
・ 市民への租税教育の機会 と市民か らの租税政策提言 の機会 の提供
・ 社会 コス トの低減 に関す る政策提言
そ して、 上記の活動 (プログラム) を行 うにあたって、 渡米前 に設立 した、 N P O 法人エー ピー ア
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イ ・ ジャパ ンの活動 を軌道 に乗せ ることが急務な課題 と認識 している。 そのために、 まず、 地元 の
札幌近郊 の限定 した地域 をモデル地域 として活動 を行 い、 その後、 徐々に活動範囲を広 げていけれ
ば と思 っている。 また、 将来的 には、 今回のフェロー シップで出会 った米国で類似 の活動 をして い
る関係者 らと共 に活動 ・ 交流できることを希望 している。 そ して、 最終的 には、 米国で始 まった A
A S や A P I (A ccountants for the Public Interest) といった会計専門家 のボ ランテ ィア活動
が、 米国や 日本以外の他 の国々、 特 にアジア諸国にも広がることを希望 している。
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