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皮膚疾患に於ける血中並びに皮膚中電解質に関する研究

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皮膚疾患に於ける血中並びに皮膚中電解質に関する研究
616.
5-008.
82.
616.
5-008.
92
皮 膚 疾患 に於 け る血 中並 び に皮膚 中電 解質 に関す る研 究
第2編
実 験 的 家 兎 皮 膚 炎 に 於 け る血 中 並 び に 皮 膚 中
電 解 質 量 の 変 動 に 就 い て
岡山大学医学部皮膚科泌尿器科教室(主 任:大 村順一教授)
専 攻 生 国
原
角
〔
昭和34年9月10日
I
緒
言
第1編 に 述 べ た如 く皮 膚疾 患 に於 け る電 解 質代 謝
三
受稿〕
に よ り乾 性 灰 化 して被 検 液 を調 製 し,か
くして得 た
血 液,皮 膚 の 両被 検 材 料 につ い て 第1編
と全 く同 様
の 方 法 に よ りNa.K,Ca量
を 測 定 した.尚 各 電 解
は極 めて 多様 な変 動を 示 す もの で あ り,著 者 は そ の
質 量の 数 値 は 血清 で は1neq/l,皮
因 を 電 解質 一 内 分 泌腺 その 他 の諸 臓 器機 能 一 自律 神
を単 位 と した.
経 機能 間 の複 雑 な相 互 関係 に帰 した.尤 も二 三 特 定
Ⅲ
の 疾患 群,即 ち水 疱 症,後 天 的色 素 異常 症等 に於 い
て は 多様 の変 動 の 中 に も異 々一定 の 傾 向 を指 摘 し得
膚 で はmeq/100g
実 験 成 績
測定 され た各 電 解 質 量 の 数値 に関 す る記 載 に先 立
たが,臨 床 的 に最 も普 遍 的 な皮 膚疾 患 で あ る湿 疹,
ち,本 実 験 に於 け る ク ロ トン油 皮 膚 炎 の経 過 に就 い
皮 膚 炎 に於 いて は特 に そ の変 動 は増 減 不 同 の複 雑 性
て説 明 して 置 くな らば 次 の 如 くで あ る.即 ち塗 布 後
を 示 し,容 易 に 一 定 の傾 向を 窺 知 し得 な い.従 つ て
2日 目 に は既 に局 所 皮 膚 は発 赤 を来 し,次 いで 日を
著 者 は この間 の 事 情 を 動物 実 験 的 に 明 らか に しよ う
追 つ て紅 潮度 を増 し,更 に 腫脹 も これ に加 わ り,第
と企 て,ク ロ トン油 皮膚 炎 家 兎 に於 け る血 中 並 に皮
5∼7病
膚 中 電 解質Na,
達 す る.つ い で病 巣 は次 第 に厚 い 痂皮 形 成 を来 し,
K,
Ca含 有 量 を皮 膚 炎 の経 過 を追
つ て 測 定 し,次 に述べ る如 き興 味 あ る成 績 を 得 た.
Ⅱ
150gの
この 痂 皮 も10日 目頃 に は 自然 に脱落 又 は容 易 に剥 離
し得 る状 態 とな り,更 に14日 目前 後 に は 軽度 の浮 腫,
実験 材 料 及 び方 法
潮 紅 を 残 す の み とな る.第3週
に入 れ ば 炎症 徴候 は
外 の 成 熟 白色 雄性 家 兎
全 く消退 し,毛 髪 の再 生 も始 ま り肉 眼 的 に は 治癒 と
め 食 餌 に よ る 影 響 を 考 慮 して1日 約
見做 し得 る状 態 に 復 す る.従 つ て 著 者 は この全 経 過
被検 動 物 には体 重2kg内
を 選 び,予
日の 間 に於 い て 病 巣皮 膚 の 炎症 は最 盛 期 に
新 鮮豆 腐粕 及 び青 菜 を 以 て2週 間前 後 飼 育
を 初 期(第2∼4病
日),最 盛 期(第5∼8病
日),
し,そ の 後之 等 の 家 兎 の背 部 を5ヶ 所(各5cm2)
緩解 期(第2週),治
に 亘 つつ て 動 毛 し,そ の 内4ヶ 所 の 皮面 に毛 筆 にて
分 し,こ れ ら各 病 期 の 略 々中 間 日を撰 ん で第3,
メル ク製 ク ロ トン油(オ
14, 21病 日に被 検 材 料 を採 取 した .
レー フ油 にて2倍 稀 釈)を
1回 塗布 し,そ の儘 放 置 した.被 検 家 兎 は2群 各5
羽 に分 つ たが,採 血及 び皮 膚剥 離 に就 い て は,ク
トン油 塗 布前3日
目 及 び塗 布 後3,
ロ
7, 14, 21日 目
1.
癒 期(第3週)の4病
期 に区
第1群 家 兎 に於 け る血 清 及 び皮 膚 中Na,
7,
K,
Ca含 有 量 の変 動 経 過
先 ず 家 兎No.
1に 於 い て は(第1表),血
清中の
に於 い て 午前10時 頃 の 空腹 時 を選 び,先 ず 耳静 脈 よ
Na量
は第3日
目に既 に増 加 を 示 して そ の儘 最 盛 期
り5ccを
に 移 り,第14日
目に は更 に増 加 して 最 高 値 に 達 す る
採 血 し,続 い て 直 ち に 前 記 の勇 毛 部 背 皮
を1ヶ 所(50m2)宛
順 次 に 日を 追 つ て 剥離 した.
つ いで 採 取 血 液 は 永室 中に 静 置 して 血 清 の折 出 を 待
ち,2時
間 後 遠 心 に よ り血 清 を 分 離 し,一 方 採 取 皮
膚 片は 恒 量 に 至 る迄 乾燥 さ せ た 後Stolte氏
法1)2)
が,第21日
目に は 急 激 に減 収 して 殆 ん ど ク ロ トン油
塗 布 前 に 於 け る数値(以 後 これ を健 常 値 と称 す る)
に近 付 いて い る.次 いでK量
もNa量
加 を示 す が,そ の 増 加 度 は 緩 徐 で第7日
と同 様 に増
目 に最 高 値
7898 国
原
角
三
第2表
第1表
No.
1
No.
2
に達 し,以 後 漸 次 減 少 して 第21日 目 に は健 常 値 に復
回復 しな い. Na/K比
して い る. Ca量
急 昇 して 第14日 目に は既 に健 常 値 に復 して い る.こ
示 す が第7日
で は 第3日
目 に一 旦 著 明 な 増 量 を
目に は反 転 して急 減 し,第14日
目に は
れ に対 してK/Ca比
は第7日
は第7日
目ま で低 下 し,以 後
目 ま で 上 昇 し以 後 下
尚 減 少 を 続 け る.し か し第21日 目 には 略 々健 常 値 に
降す るが 第21日 目 に至 る も尚健 常 値 迄 に は復 帰 しな
近 い 回復 を示 す. Na/K比
い.
下 す るが,第14日
は第3,
7日 目 と漸 次 低
目 に は既 に健 常 値 に復 し,第21日
次 に皮 膚 中Na量
は第3日
目 に 於 いて一旦やや
目 に は却 つ て 上 昇 を 示 す. K/Ca比
は緩 か に上 昇 し
減 少 す るが,後 直 ちに急 増 して 第7日
て 第14日 目に最 高 値 を示 し,第21日
目 に は下 降 して
を 示 し,以 後 減少 に転 じて 第21日 目 に は健 常値 に復
健 常 値 に復 して い る.
す る. K量 は初 期 よ り急激 に増 加 して 第3日
本 家 兎 の 皮 膚 中 含 有 量 に就 い て次 に述 べ る と,
Na量
で は第3,
7日 目と次 第 に 増 量 す るが 第14日
目 に は減 少 に傾 き,第21日
K量 で は第3日
目 に は健 常 値 に復 す る.
目に 急 増 し,第7日
目 に は梢 々下 降
に 傾 くが 尚 相 当の 増 量 を証 し,第14日
目以 降 漸 く減
少 して 第21日 目 に至 り健 常 値 に復 す る.Ca量
第3日
では
目に 稍 々 増加 を認 め る が以 後 減 少 して健 常 値
以 下 とな り,第14日
目 には 最 高値
目に最 低値 を示 す.そ
の後 は再
目に最
高 値 を 示 す が,以 後 は減 少 に転 じて 第14日 目 には 一
旦 健 常値 以 下 とな り,治 癒 期 に入 つ て 健 常 値 に 復 し
て い る. Ca量
は第3日
目に 稍 々増 加,第7日
目は 稍
々減 少 と健常 値 閾 の上 下 に僅 に動 揺 し,第14日
後 は全 く旧 に復 して い る. Na/K比
期 に於 け るNa量
目以
は上 述 の 如 き初
減 少, K量 著 増 の 関 係 か ら第3日
目 に於 いて は著 明 な低 下 を 示 し,以 後 漸次 上昇 して
第14日 目以 降 は 略 々健 常 値 を維 持 して い る.K/Ca
び 増 加 して 第21日 目に は 略 々健 常 値 に近 く回 復 す る.
比 も亦K量 著 増 の 影 響 を受 け て第3,
Na/K比
て は高 値 を示 し,以 後 は急 減 して 第14, 21日 目 に於
で は第3日
目 に低 下 を 示 す が,以 後 上昇 に
転 じて 第14日 目 に は既 に健 常 値 に復 して い る,K/Ca
比 で はKの 著 増 の為 に第3日
目に 於 い て 急 昇 を示 す
7日 目 に於 い
いて は健 常 値 以 下 に 留 る.
No. 3で は(第3表),血
清 中Na量
は 前 述 の第
が 以 後 は漸 次 下 降 して 第21日 目に 至 れ ば 略 々健 常 値
1, 2例 と異 り初 期 よ り急 減 し て第3日
に 近 い値 に復 す る.
を 示 し,以 後緩 か に 増 加 して第21日 目 に至 り漸 く健
No. 2に 於 いて は(第2表),血
清 中 のNa量
は第
常 値 に接 近 す る. K量 も亦 減 少 し第7日
目に最 低 値
目 に最 低 値
3日 目 よ り漸増 して第14日 目 に最 高 値 を 示 し,以 後
を 示す が,以 後 増 減 して 治癒 期 に 至 る も尚 低 値 に留
減 少 に転 ず るが第21日 目 に於 いて も 尚健 常 値 迄 に は
る. Caは
復 帰 しな い. K量 も亦 第3日
第14日 目に は三 転 して 急 減 を 示 し,第21日
目に 於 い
日目 に最 高 値 を 示 し,以 後 漸 次 減 少 に傾 くが 第21日
て も尚 健 常 値 に甚 し く及 ば な い. Na/K,
K/Ca各
目の 数値 は 尚健 常 値 よ り も大 で あ る, Ca量 は第3日
比 も上 記 の如 き異 常 な変 動 値 の影 響 を 受 け て,前 者
目以 降 減 少 を 続 けて 第14日 目に 最 低 値 を 示 し,以 後
に於 いて は初 期 に梢 々上 昇,第7日
増 加 に 転 ず るが 第21日 目に 於 い て も尚健 常 値 迄 に は
14日 目 に は急 昇,治 癒 期 に至 る も尚 高 値 を 示 し,後
目 に梢 々増 加 して 第7
第3日
目 に僅 か に減,第7日
目 に は急 増,
目で は 低 下,第
皮 膚 疾 患 に 於 け る血 中並 び に皮 膚 中電 解 質 に関 す る研 究 第3表
No.
第4表
No.
3
者 に於 い て は第3,
し く上 昇,第21日
7日 目に低 下,第14日
目 に は甚
目に は再 び健常 値 以 下 に低 下 す る
と云 う異 常 値 を示 して い る,
本 家 兎 の皮 膚 中Na量
7899
4
本 家 兎 の皮 膚 中 含 有 量 に就 い て は,先 ずNa量
で は 初 あ漸 増 して 第7日
目を境 に減 少 に転 じ,第14,
21日 目に は却 つ て 健 常 値 を 下 廻 る数 値 を示 す. K量
は第3,
7日 目 と次 第 に 増
加 した後 減 少 に 転 じて 第14,第21日
目 は何 れ も健 常
は初 期 よ り急 増 して 第7日
目 には 最 高 値 に 達 し,以
後 急 減 す るが第21日 目 に至 る も尚 か な りの高 値 に留
値 を 示す. K量 も亦 これ と類 似 の傾 向 を 示す が 第7
る. Ca量
日目に於 け る増 量が 極 め て顕 著 で あ る.Ca量
す が 第7日 目以 後 は 健 常値 を維 持 して い る, Na/K
3日 目に於 いて は変化 な く,第7日
は第
目に至 つ て 減 少,
第14日 目 に は反 対 に健 常 値 以 上 に増 加 し,第21日
に は更 に転 じて健 常 値 以 下 とな る. Na/K比
日目に 変化 な く,第7日
目
は第3
目の みK量 の急 増 に起 因 し
て 著 明 な低 下 を み るが,第14日
常 値 に復 して い る. K/Ca比
目以 後 に於 いて は健
は初 期 よ り増 加 して 第
7日 目に はか な りの高 値 を示 す が,第14日
降 して健 常 値 以 下 とな り,第21日
目 に は急
目に は更 に転 じて
は 初 期 に 於 いて 一 時 的 に 甚 しい増 加 を示
比 は緩 か に低 下 して 第7日
目に最 低 値 を 示 し,以 後
上 昇 に転 ず るが 治 癒 期 に入 つ て も尚健 常値 閾 に は 達
しな い.K/Ca比
で は初 期 に僅 か に 低 下 す るが 第7
日に於 い て は 急 激 に 上 昇 して高 値 を示 す.こ れ はK
の急 増 に 因 る もの で あ り,治 癒 期 に 至 る も尚 稍 々 高
値 に止 ま る.
No. 5で は(第5表),血
清 中Na量
は 第3日
目
のみ 一 時 的 に 軽度 減 少 し以 後増 加 して 健 常 値 を 僅 に
健 常 値閾 を 稍 々上 廻 る値 を示 す.こ の よ うに本 家 兎
上 廻 る数 値 を維 持 す る.つ いでK量
に於 け る各 電 解質 の 変 動 は他 例 に比 して か な り異 常
して 第7日 目 に は本 群 被検 家兎 中最 高 の数 値 を示 し,
の 傾向 を示 して い る.
No. 4で は(第4表),血
第5表
清 中Na量
は第3日 目
に軽 度 増加,つ いで 稍 々急 速 に増 加 して 第7日
目に
は最 高値 を 示 し,以 後 は漸 減 して 第21日 目に至 り健
常 値 に復 す る. K量 は 第7日 目を 頂 上と して 極 め て
緩 徐 に増 加,つ い で減 少 し,第21日
値 を 示 す. Ca量
目に は略 々健 常
は第3日 目 に僅 か に増 加 す るが 以
後 急 激 に減 少 して 第14日 目 に最 低値 を示 し,つ い で
増 加 に転 ず るが第21日 目に 於 いて も尚健 常 値 に遙 に
及 ばな い低 値 を 示 す. Na/K比
ば 第7日
目を 最 低
値 と して 初 期 に低 下,緩 解 期 に上 昇,治 癒 期 に は略
々 健 常 値 に近 付 く. K/Ca比
は初 期 よ り漸次 上昇 度
を 増 して 第14日 目に は最 高 値 を 示 し,以 後 下 降 に傾
くが 第21日 目 に於 い て 尚か な り高 値 を 示 す.
No.
5
は初 期 よ り増 加
7900 国
原
以 後 漸 減 す るが第21日 目 に於 て も尚 か な りの高 値 に
留 る. Ca量
で は 第3日
角
三
第2図 第1群 家 兎 に お け る 皮膚 電 解 質 量 の 変 動
目のみ 僅 に 増 加 す るが,以
後 は減 少 して 第14日 目 に最 低 値 を 示 し,治 癒 期 に至
る も尚 低 値 に 留 る. Na/K比
に よつ て 第7日
は 上述 の如 きKの 急 増
目ま で急 激 に低 下 し,以 後 漸次 上 昇
に移 行 す るが 第21日 目 に至 る も尚 健 常 値 に 比す れ ば
低 値 に留 る. K/Ca比
は第7日
目に 於 い て 急激 に上
昇 し,以 後 漸 次低 下す るが 第21日 目に 於 いて 尚 かな
りの 高 値 を示 す.
次 に皮 膚 中 変 動 に就 いて み れ ば, Na量
よ り軽 度 に増 加 して 第7日
で は初 期
目に最 高値 を示 す が,以
後 容 易 に健 常 値 え の復 帰 を み な い. K量 で は第3.
7日 目 に於 いて 著 明 な 増 加 を 証 す るが,第14日
は急 減 して健 常値 に近 接 し,第21日
復 す る. Ca量
は第3日
目に
目に は全 く旧 に
目の み 稍 々増 加 して 第7日
目に は減 少 に転 じ,以 後 徐 々 に健 常 値 に復 帰 す る.
Na/K比
は第3日
目 に 於 いてNa減
少, K増 加 の
関係 か ら著 明 な低 下 を 証 し,以 後 急 激 に上 昇 して健
常 値 を超 え,第21日
す. K/Ca比
は 第3,
目に 於 いて は かな りの 高値 を示
7日 目 と急 激 に 上 昇 し,以 後
緩 徐 に低 下 して 健 常 値 に 接近 す る.以 上 第1群 被 検
家兎 の全 測 定 値 を 各 電 解 質毎 に グ ラ フに描 き,そ の
血 清 に於 け る もの を 第1図,皮
膚 に於 け る もの を第
2図 と した.(図 中太 線 は平 均 値 を示 す).
第1図 第1群 家 兎 に お け る血 清電 解 質 量 の 変 動
更 に本 群 家 兎 に 於 け る平 均 値 を第6表
これ に よ る と先 ず 血清Na量
は第3日
に収 め た が,
目 に於 いて 一
過性 に僅 に減 少 す るが,以 後第14日 目 ま で漸 増 し,
つ い で減 少 に転 じて 第21日 目 に は健 常 値 に復 す る.
これ に対 しK量 で は初 期 よ り増 加 して 第7日
目 に最
高 値 を示 し,以 後 減 少 して 第21日 目に は 略 々健 常 値
に近 付 く. Ca量
は第3日
目迄 殆 ん ど変 化 な く,つ
い で 急激 に減 少 して 第14日 目 に最 低 値 を 示 し,第21
第6表 第1群
平 均 値
皮 膚 疾 患 に於 け る血 中並 び に皮 膚 中電 解質 に関 す る研究 7901
日目 に至 る も尚健 常 値 え の復 帰 を み な い. Na/K比
し,以 後上 昇 して 第14日 目に は略 々健 常値 に 達す る
は初 期 よ り低 下 して 第7日
が 第21日 目 に は再 び や や低 下 に傾 く. K/ca比
目に最 低値 を示 し,以 後
急 激 に上 昇 して 第14日 目に は健 常 値 を,第21日
は更 に 高 値 を 示 す.こ れ に対 しK/Ca比
目に
は初 期 よ
り.ヒ昇 して 第14日 目 に は最 高値 を示 し,次 いで 第21
は第
7日 目に於 いて 甚 しい 高値 を 示 し,以 後徐 々 に低 下
す るが 容 易 に健 常値 に は復 さない.
次 に 本 家兎 の皮 膚 中Na量
は 第3日
目 に 稍 々減
日目 に は下 降 に 傾 く健 尚 旧 値 に 復 す る に は 程 遠
少,第7日
い.
て 第21日 目 には1日に復 す る. K量 は 初 期 よ り急 増 し
次 に皮 膚 に於 け る平均 値 を 検 討す れ ば,先 ずNa
は 初 期 よ り漸 増 して 第7日
目に最 高 値 を示 し,以 後
減 少 して 速 か に健 常 値 に接 近 す る.こ れ に対 しK量
は 初 期 よ り急 増 して 第3,7日
目共 に 高 値 を 示 すが,
目に は健 常値 を超 えて 増 加,以 後漸 減 し
て 第7日 目 に最 高値 を示 し,以 後 急 減 して 健 常 値 以
下 と な る. Ca量
で は第3日
目 に 増 加 を証 す るが 第
7日 目 には 急 減 して 最 低 値 を 示 し,以 後徐 々 に増 加
して健 常 値 に 復 す る. Na/K比
は 初 期 に於 いて 低 下,
健 常 値 復 帰 は緩 徐 で第21日 目に於 い て も尚 稍 々高 値
後 上昇 に転 じ暫 く高 値 を維 持 す る.K/Ca比
に 留 る. Ca量
日目 まで 上昇,以 後 低 下 して 第21日 目 に は健 常 値 以
は第3日
目で は 増 加 を認 め るが 第7
日 目に は反 転 して 減 少 し,第14日 目以後 は健 常 値 を
示す. Na/K比
で は第3日 目 に於 いて低 下を 証 し,
以 後 徐 々 に 上昇 して 治 癒 期 に至 れ ば健 常値 に復 帰 す
る. K/Ca比
は第3,
下 とな る.
次 にNo.7(第8表)に
量 は,そ
びK
6と 全
第8表
No.
第2群 家兎 に於 け る血 清及 び皮 膚 中Na,
於 け る 血 清Na及
の 変 動 傾 向 の み に 就 い て み れ ばNo.
7日 目 と 上 昇 し,以 後 低 下 に
傾 くが 治癒 期 に至 る も尚 稍 々高 値 に留 る.
2.
は 第7
7
K,
Ca含 有 量 の変 動経 過
第2群
に於 け る実 験 は 第1群 と全 く同 一 方法 によ
つ て 実 施 さ れ た が,先 ず 家 兎No.
に就 い て述 べ れ ば(第7表),血
6に 於 け る経 過
清 中Na量
は 第3
第7表
No.
6
く同様 であ るが,そ の 含 有量 は他 の 本 群 家兎 の何 れ
よ り も前 者 に於 い て 甚 し く多 量,後 者 に 於 い て甚 し
く寡 量 を示 す こ とが 特異 で あ る. Ca量
も亦No.
6
と 同傾 向を 示 す が,そ の 含有 量 に就 い て は他 の 家兎
に比 して 大 な る懸隔 を認 め ない. Na/K比
如 きNa多
量, K寡
は 上記 の
量 の関 係 も加 わつ て 甚 しい 高
値 を 示 し,そ の変 動 経 過 も初 期 に低 下,第7日
日目に 於 いて 稍 々減 少,以 後 は増 加 に転 じて 第7目
目更
目を最 高 値 と して
に著 明 に低 下,第14日 目急 昇,第21日 目再 び低 下 と
一 貫 しな い .こ れ に 対 しK/Ca比
は第7日 目迄 上
第21日 目 には健 常 値 に復 す る,こ れ に対 しK量 は 初
昇,以 後 徐 々 に 低 下 す る が 容 易 に健 常 値 に 復 さな
期 よ り増 加 して 第7日 目に は甚 しい 高 値 を 示 し,以
い.
目に は僅 に健 常 値 を超 え,第14日
後 漸減 して 健常 値 に 接 近 す る. Ca量
は第3日
目の
本 家 兎 の皮 膚 中Na量
の 変 動 は や や 特異 で,初
み 僅 に 増 加 し,以 後 急 激 に 減 少 して 第14日 目に は最
期 よ り急 激 に増 加 して 治 癒 期 に 至 る も尚高 値 を維 持
低 値 を示 し,第21日
す る. K量 も亦 比 較 的 急 速 に増 加 し第7日
Na/K比
目 に 至 る も 尚 低 値 に 留 る.
は 初 期 よ り低 下 して 第7日 目に 最 低 値 を 示
目 に最 高
値 に達 し,以 後 急 減 して 速 か に健 常 値 に接 近 す る.
7902 Ca量
国
原
角
三
で は 初 期 に於 い て 軽 度 の 増 加 を み る外 大 な る
変 動 を認 あ な い. Na/K比
は第3日
o.
目僅 に 上 昇,第
第10表N
9
7日 目 に は僅 に低 下,以 後再 び上 昇 す る. K/Ca比
は 第7日 目 まで 上 昇 す るが 以 後第21日 目ま で に 旧 に
復 す る.
No.
8(第9表
に 於 け る 血 清Na量
は 第3日
目
第9表
No.
8
るが 第21日 目 に於 いて も尚 高 値 に 留 る. Ca量
期 よ り漸 減,第14日
は初
目に は最 低 値 を 示 し,以 後 漸 く
増 加 に転 ず る. Na/K比
は第7日
目 を最 低 値 と し,
前 半 に低 下,後 半 に上 昇 を 示 す. K/Ca比
は反 対 に
第7日 を最 高 値 と し,前 半 に 上 昇,後 半 に低 下 を 示
す.
に僅 に減 少,以 後増 加 して 第14日 目に最 高値 を示 し,
次 に本 家 兎 の 皮 膚 中Na量
はNo.
8と 全 く同 様
第21日 目 には既 に健 常 値 に復 す る. K量 は初 期 に減
の経 過 を 示 す が,そ の 含有 量 に於 い て は 両 者 の 間 に
少,次 い で増 加 して 第7日
約2meq/lの
目に最 高値 を示 した後 減
少 に傾 くが 容 易 に健 常 値 に復 帰 しない. Ca量
は初
懸 隔 が 認 め られ,本 家 兎Naの
が 注 目 され る. K量 は第7日
寡量
目 まで増 加,以 後 急 減
期 に僅 に 増 加 す るが 後 急 激 に減 少 して 第14日 目に最
して速 か に健 常 値 に復 帰 す る. Na/K比
低 値 を 示 す.次 い で増 加 に転 ず るが 治 癒 期 に 至 る も
ま で に徐 々 に低 下,以 後 急速 に上 昇 して 旧 に復 し,
尚健 常 値 に遙 に及 ば な い. Na/K比
K/Ca比
第7日
目低 下,第14日
転 す る. K/Ca比
した 後 第7日
は第3日
目再 び急 昇,第21日
は第3日
目上昇,
低 下 と変
目 に於 い て 一旦 や や低 下
目に は急 昇 して 高 値 を 示 し,以 後 徐 々
K量 は 急 増 して 第3日 目 に於 いて 最 高 値 を 示 し,第
7日 目 尚 高値 を維 持 す るが 以 後 急 減 して 速 か に健 常
るが,第7日
は第3日
目 に 於 い て 僅 に増 加 す
目以 後 は や や 低 値 を 維 持 す る. Na/K
比 はK量 の 急増 に 影響 され 第3日
目 に於 い て甚 し く
低値 を示 す が,以 後 漸 次上 昇 して 第14日 目に は健 常
値 に復 す る. K/Ca比
は 初 期 よ り急 昇 して 第7日
目
に最 高 値 を 示 し,以 後 徐 々に低 下 して 健 常 値 に接 近
す る.
No. 9(第10表)に
於 け る血 清Na量
は 第3, 7,
14日 と徐 々に 増 加,以 後漸 く減 少 に傾 く. K量 は 第
3日 目僅 に増 加,第7日
目 ま で上 昇,以 後 徐 々 に低
下 す る.
No. 10(第11表)に
於 け る血 清Na量
中最 も増 減 の振 幅 が 少 く,第7,
は 初 期 よ り増 加 して 第7
日目 に最 高 値 を 示 し,以 後徐 々 に健 常 値 に 接 近 す る,
値 付 に近 く.Ca量
目
は 本群 家兎
14日 目 に僅 に 増 加
を 認 め るの み で あ る. K量 は7日 目に 高値 を 示 した
に 低 下 す る が容 易 に旧 に 復 さな い.
本 家 兎 の皮 膚 中Na量
は 反 対 に第7日
は第7日
目急 増,以 後 緩 か に減 少す
第11表
No.
l0
皮 膚 疾 患 に於 け る血 中並 び に皮 膚 中電 解質 に関 す る研 究 後 急 減 して 速 か に健 常 値 に 復 す る. Ca量 はNo.
錦12表 第2群
6
7903
平 均 値
の変 動 傾 向 と全 く軌 を 一 にす るが,そ の含 有 量 は寡
く,両 者 の 間 に 約0.5meq/lの
Na/K比
相 違 を 認 め る.
は 第3日 目僅 に低 下,第7日
低 下,つ い で第14日 目急 昇,第21日
る. K/Ca比
は第7,
目更 に 急激 に
目に は 旧 に復 す
14日 目に高 値 を 示 し,第21日
目漸 く低 下 に 傾 く.
本 家 兎 の 皮 膚 中Na量
は第7日
目 まて 漸増,以 後
徐 々に減 少 す るが, K量 に初 期 よ り芝明 に
第7,
加 して
14日 目 と尚 高値 を維 持 し, 第21日 目に は 急 転
して健 常 値 に 速 か に復 帰 す る. Ca量
は 第7日 目に
於 い て僅 に減 少 を示 す の み で大 な る変 動 を 認 め な い.
Na/K比
は第7日
目ま て低 下, K/Ca此
に反 対 に上
昇,以 後 何 れ も夫 々上 昇又 は低 下 して健 常 値 に 接近
最 高 値 を経 て第21日 目 には健 常値 に復 帰 す る.こ れ
す る.以 上第2群 家兎 の全 測 定値 を各 電 解 質毎 に グ
に 対 しK量 は初 期 よ り著 増 して第7日
目 に最 高値 を
ラ フに描 き,第1群
示 し,以 後漸 減 して 旧 に復 す. Ca量
は第3日
の場 合 に倣 つ て第3,
4図 と し
た.
目に
於 い て一 旦 僅 に増 加 す るが,以 後 急 速 に減 少 して第
第3図 第2群 家 兎 に おけ る血 清電 解質 の変 動
14日 目 に最 低値 を 示 す.そ の後 は増 加 に転 ず るが第
21日 目 に於 い て も尚健 常 値 に復 帰 す るに は 至 らな い.
Na/K比
は第7日
目 に於 い て 最 低値 を, K/Ca比
は
第14日 目 に 於 いて 最 高 値 を 示 し,そ の前 後 に於 い て
夫 々低 下,上 昇 又 は 上 昇,低 下す る.
次 に皮 膚 中Na量
平 均 値 も 亦 第1群 の 場合 と略
々 同様 の経 過 を 辿 り第7日 目迄 速 か に増 加,以 後 漸
減 に転 ず るが,健 常 値 復 帰 の苒 延 は第1群 の 場 合 に
比 しや や 異 る点 で あ る. K量 は初 期 よ り急増 して第
7日 目に最 高値 を示 し,以 後 急 減 して健 常値 に復 す
るが,こ れ 亦第1群
に対 してCa量
に於 け る程 急 速 で は な い.こ れ
に於 け る変 動経 過 は第1群 の 場 合 と
全 く同 一 の 傾 向を 示 し, Na/K,
K/Ca比
も亦 数 値
の多 寡 に僅 か の差 異 を認 め るの み で その 変動 傾 向 は
全 く第1群 に 一致 す る.要 す るに第1,
2群 家 兎 に
於 け る各 電 解 質 量 の消 長 を そ の平 均 値 に よつ て 比 較
検 討 す るな らば,治 癒 期 に於 け る健 常 値 復 帰 の遅 速,
或 は全経 過 を 通 じて の変 動 振 幅 の 大 小(第2群
に於
い て 稍 々大)に 僅 か の差 異 を 指 摘 し得 るのみ で あつ
て両 者間 に著 明 か つ 有 意 の 相違 を認 め難 い.従 つ て
更 に之 等 全 被 検 家 兎 の 測定 値 を 一括 して 得 た平 均 値
に就 いて 検 討 を 加 え て み る と(第13表),先
に於 いて はNa量
は第3日
ず血清
目 に 軽 度 減 少,次 い で
増 加 に 転 じて 第7日 目 に は健 常 値 を超 え,第14日
更 に本 群家 兎 に於 け る各 電 解 質 量 の 平均 値 を 一括
して 第12表 に収 め たが,こ れ に よ る と先 ず 血 清Na
量 は 略 々第1群 の 場合 と同 じ く第3日
目 に於 い て軽
度 な が ら一旦 減 少 を 示 し,以 後 漸 増 して第14日 目の
目
には 更 に増 加 を続 けて 最 高 値 に達 し,以 後 は 減 少 し
て 第21日 目 に は略 々健 常 値 に復 す る. K量 は第3日
目に 稍 々増 加,第7日
目に は 更 に増 加 して最 高 値 を
示 す が,以 後 減 少 して 第14日 目 には 早 くも健 常 値 に
7904 国
第13表 接 近 す る. Ca量
(総
は第3日
平
原
均)
角
三
第4図 第2群 家 兎 に おけ る皮 膚 電 解 質 量 の 変 動
第5図 皮 膚 炎 家 兎に 於 け る血 清 電解 質 量 の変 動
目 に 一旦 僅 に増 加 した後
急 激 に減 少 して 第14日 目に は最4値 を 示 し,以 後 増
加 に 転 ず るが第21日 目 に於 い て も尚健 常値 に は 達 し
な い. Na/K比
K/Ca比
は第7日
目 ま で低 下,以 後 上 昇 し,
は第14日 目ま で上 昇,以 後 低 下 して何 れ も
健 常 値 に接 近 す る.次 に病 巣 皮 膚 に於 いて は, Na,
K量 共 に最 初 よ り増 加 して第7日
目 に は最 高値 を 示
し,以 後急 速 に減 少 して 第14日 目 に於 い て は 早 くも
健 常値 に近 付 く. Ca量
で 減 少 に 転 じて第7日
は 第3日
目軽度 増 加,次
い
目 に最 低 値 を 示 し,以 後 増 加
に 移 行 して 徐 々に健 常値 に接 近 す る. Na/K比
は第
3日 目の み 低下 を示 し,以 後 上 昇, K/Ca比
は第7
日目 ま で上 昇 して 後 低下 に 転 じ,何 れ も健 常 値 に復
帰 す る.
Ⅳ
総 括 並 び に 考按
前 項 に 述 べ た 実験 成 績 に基 き,家 兎 クロ トン油皮
膚 炎 の経 過 に伴 うNa,
K,
Ca各 電 解 質 量 の 消長 を
そ の 平均 値 に拠 つ て綜 合 的 に観 察 す るな らば(第13
表,第5,6図),先
ず 血 清 に 於 い て はNa,
Ca量 の
微 増,こ れ に対 す るK量 微 減 の 関 係 が先 ず 初 期(第
3日)に
Na量
現 われ,次 い で最 盛 期(第7日)に
は増 加, Ca量
は減 少 の 傾 向 に転 じ, K量 は
更 に 増 加 を 続 け る.更 に緩 解 期(第14日)に
K量 は減 少 に 傾 き, Na量
移れば
は 尚 増 加 を, Ca量
減 少 を続 け,次 い で治 癒 期(第21日)に
K量
至れば
は何 れ も健 常 値 に復 帰 し, Ca量
は尚
入 れ ばNa,
の み は 之等 に
稍 々遅 れ て健 常 値 に接 近 す る.こ れ に対 し病 巣 皮 膚
に於 い て は血 清 の 場 合 に異 り, Na量
はK量
と共 に
初 期 よ り増 加 を示 し,つ い で最 盛 期 に一 致 して最 高
値 に 達 し,以 後共 に 急 激 に 減少 して 治癒 期 に入 るを
待 た ず して 速 か に健 常 値 に復 帰 す る. Ca量
に於 け
(平均 値)
皮 膚疾患 に於け る血 中並びに皮膚中電解質に関す る研究 第6図 皮 膚 炎 家 兎 に 於け る皮 膚 電 解質 量 の 変 動
(平 均値)
7905
増 加,後 者 の急 性 期 よ り亜 急 性 初 期 に か けて の減 少
を 報 じ これ亦 著 者 の成 績 に 全 く背馳 す る.し か し乍
ら榎 本 の実 験 は耳 翼 皮 膚 炎 に依 る もので あ り,堀 の
それ は 著者 と同様 背 皮 を 利 用 して い る もの の 血清 中
のみ の 検 索 に 留 つて お り,又 塗布 液 の濃 度,従 つ て
病 巣 に 於 け る炎 症 の 程 度,或 は観 察 期 間 の長 短,被
検 無 機 イ オ ンの種 類 等 そ の実 験 条 件に於 いて 種 々の
相 違 が介 在 して お り,之 等 を その 儘 同列 に置 いて 比
較検 討 す る こと は 適 当 で な い と考 え られ る.又 三
宅 ・楢 原5)は 家 兎皮 膚 炎 旺 盛 期 に 於 け る血 中Ca量
の減 少 を 記 載 し,そ の他 高 田6)Nathan等7)の
家兎
人 工 皮 膚炎 病 巣 皮 膚 に於 け る水 分 含水 量 の増 加 に つ
い て の報 告 等 が 散 見 され るが,概
して 皮 膚 科領 域 に
於 け る電 解 質 代 謝 の 綜合 的検 索 は他 領 域 に比 して甚
しい遜 色 を 示 して い る.火 傷 は皮 膚 に 対 して直 接 外
的 刺 戟 を加 え る と云 う意 味 に 於 いて 皮 膚 炎 とや や類
似 す るが,こ れ に就 い て も主 と し て他 科 領 域 に 於
い て 取 上 げ られ, Wilson8), Charles9),滝 野10),福
田11),渋 沢12)等 多 数 の 業 績 が あ り,夫 々血 清 又 は
皮 膚 中Naの
増 量9),同 減 量8).12),或 は不 変12), K
の増 量8).10)Ca量
の減 少 等 互 に 必ず し も一 致 しな い
主 張 が 述 べ られて い るが,火 傷 の如 き例 え それ が 小
範 囲 の もの で あつ て も直 接 且 つ急 速 に毛 細 管 壁 透 過
性 を 強 度 に 障碍 す る外 的 刺戟 を,ク
ロ トン油 或 は 辛
る初 期微 増,最 盛 期急 減 の 傾 向 は 血 清 の場 合 に異 ら
子 油等 の植 物 性 刺 戟 と同 一視 して 論 ず る こ とは 妥 当
な い が,以 後 血清 に 於 い て は更 に 減 少 を継 続 す るの
で は あ る まい.
に対 し皮膚 に於 いて は増 加 に転 じて 健 常値 え の接 近
が よ り速 か で あ る.
榎 本3)は 家 兎耳 翼 に クロ トン油原 液 を塗 布 して 惹
起 させ た皮 膚 炎 に就 い て,塗 布 後48時 間(潮 紅 期),
同4日(炎
Na,
症 極 期),同8日(恢
Cl, K量
飜 つて 前 項 に述 べ た著 者 の実 験 成 績 を 顧 み れ ば,
皮 膚 炎 初 期 に 出現 す る血 清Na減,
復 期)を
を測 定 した 結果,血 清Na,
K増 の 関係 は,
ク ロ トン油 の皮 膚 脈 管 系 え の侵 襲 に基 く血 管 壁透 過
性 の上 昇 に よ る血 清 中Naの
病 巣組 織 液 えの 游 出 と,
劃 して
これ に 対す るKの 細 胞 内 区 よ り脈 管 内 区 え の代 償 的
Clは 潮
移 動 に よつ て 招 来 され た 一 過性 の現 象 で あ り,次 い
紅 期 及 び炎 症極 期 に亘 つ て 次第 に減 少,恢 復 期 に 向
で皮 膚 炎 の 進 行 に伴 いNaは
うに従 い 漸 次増 量, Kは これ と逆 の 関係 を示 し,他
べ 血清 内 に於 い て 増 量 し,そ の平 衡を 果 せ ばKは 脈
方病 竈 皮 膚 に 於 い て はNa,
Clは 次 第 に 上 昇 して
管 内 区 に於 い て 減 量,更 に病 勢 緩 解 に対 応 して漸 次
炎 症 極 期 に至 つ て最 高 値 とな り,次 い で 漸 次 減少 し
両 者 は並 行 を 保 ちつ つ健 常 の状 態 に復 帰 す る もの と
て 回 復 に 向 うが, Kは これ と全 く逆 の 関係 を 示す と
解 され る.一 方 病 変初 期 よ り最 盛 期 に亘 る病 巣皮 膚
述 べ,堀4)は
中 に於 け るNa,
家 兎 背 皮 に 於 け る クロ トン油 皮膚 炎
(原 液)に 於 い て,血 清Naは
に著 増,亜 急 性 初期(7又
は急 性 期 に 減 少,亜
急性 期(塗 布 後3日)
は13日)に
軽 度 減 少, K
急 性末 期(17日)に
上 昇, Ca
Kの
本来 の平 衡 関 係 に復 す
平 行 的増 量 に就 い て は,猶 著
者 の憶 測 の 域 を 出 な い が炎 症 に起 因 す る病巣 皮膚 含
水 量の 増 加 に 伴 うNaの
組 織 液 え の移 動 が 本 来 細 胞
外 区 に多 量 に 存 す るNa量
の 一層 の増 加 を招 来 し,
急 性 期 に軽 度 増 又 は 減,亜 急 性 初 期 に減,同 末 期 よ
これ に加 う るに 濃 縮状 態 に あ る細 胞 内区 乃 至 脈 管 内
り漸増 して 健 常 値 に復 す る と述 べ て お り,何 れ も著
区 由来 のK及 びNaに
者 の成 績 に必 ず し も 一致 しな い.又Na/K,
た もの と解 され る.し か し乍 ら人工 皮 膚 炎 に於 け る
比(血
K/Ca
清)に 就 い て も4)堀 は前 者 の 急 性 期 に於 け る
重 積 して か か る現 象 を 示 し
か か る電 解 質 代 謝 の 変動 を単 な る外 的 刺 戟 の 影 響 に
7906 国
原
角
三
基 く直 接 的結 果 と して のみ 解 釈 し去 る こ と はで きな
に於 いて 湿疹 皮 膚 炎居 者 の 血 中 電 解 質 量 を検 討 し,
い.周 知 の如 く体 内諸 臓 器,殊 に 内分 泣臓 器 と電 解
Na増,
質代 謝 との閥 に は 密 接 な関 係 が存 し,中 で もNa,
向を 指 摘 した が,こ れ を如 上 の 人 工皮 膚 炎 に 於 け る
Kは
変 動 傾 向 に比 較 して,必 ず しも完 全 な 一致 が み られ
体 内酸 塩 基 平 衡 の 維 持 に不 可 欠 の械 能 を 営 む
K,
Ca, Na/K増
減 不 定, K/Ca低
下 の傾
腎 の細 尿 管 を 場 と して副 腎 皮質 ホ ル モ ン,就 中塩類
ない と云 う事 実 も亦 ひ と と家 兎 間 に於 け る体 内機 能
代 謝 ホル モ ンの 調 節 を受 け る もの で あ り13)14),し か
環 境 の相 違 に基 くもの と解 され よ う.
も細 胞 内,外 区 に於 け るNaとKと
の 間 に は逆 相 関
が通 常 証 せ られ る こ とか ら14), Na/K比
V
の増 減 は体
結
論
内に 於 け る副 腎 皮質 機 能 の状 態 を 窺 う指 標 とな し得
家 兎 背 皮 ク ロ トン油 皮 膚 炎 の を 経 過 に 伴 う血 清 中
る もの と主 張 され4).15).16),堀4)は ク ロ トン油 皮 膚
並 に 病竈 皮 膚 中電 解 質 量 の 変 動 を 追求 し,次 の成 績
炎 急 性 期 に於 け る血 清Na/K比
を 得 た.
の 増 加 を 指 摘 し,
これ を 以 て 下 垂体 副 腎皮 質 系 の機 能亢 進 を推 定 して
1.
血 清Na量
は,初
期 に は 軽度 減少,最 盛 期
い るが,著 者 の実 験 成 績 で は全 くこれ に相 反 し,初
に は増 加,緩 解 期 に は更 に増 加 して 治癒 期 に至 り健
期 よ り急 性 期 に亘 つて 血 清Na/K比
常 値 に 復 帰 す る.
の 低 下 を証 し,
又 病巣 皮 膚 中 同比 も亦 略 同 様 の傾 向を 示 した.次 い
でK及 びCaと
の 関 係 に就 いて はKraus-Zondek17)
態 で はKの
減 量 を,副 交 感 神 経 緊 張 状
減 量 を 招 く も の で あ る こ とが 認 め ら
れ17).18).19).
20),従 つ てK/Ca比
thicotoniaを,同
の 上 昇 はsympa
比 の 低 下 はvagotoniaを
は,初 期 よ り増 加,最
盛 期 に は著増
して 最 高 値 を 示 し,以 後 急 減 して 緩 解 期 に は略 々健
以 来 種 々の 紆 余 を経 て は来 たが,概 ね 今 日交 感 神 経
緊 張 状 態 で は血 中Caの
皮 膚Na量
常 値 とな る.
2.
血 清K量 は,初 期 に は微 増,最 盛 期 に は 著増
す るが,以 後急 減 して緩 解 期 に は既 に健 常 値 に接 近
す る.
意味す
る もの と解 され る.著 者 の実 験 成 績 で は病 変 初 期 よ
り最 盛 期 に か けて 血 中 並 に 病 巣 皮 膚 中K/Ca比
の
皮 膚K量 は,皮 膚Na量
と 同 傾 向 の 消 長 を示 す
が,初 期 に於 け る増 量度 が よ り高 度 で あ る.
3.
血 清Ca量
は,初 期 に微 増,最 盛 期 に は 急減,
上 昇 を 証 した が,こ れ に対 し堀4)は 急 性 期 に 於 け る
緩 解 期 に は最 低 値 を示 し,以 後 漸 増 す るが健 常 値 復
血 中K/Ca比
帰 は遅 延 す る.
の減 少 よ り副 交 感 神 経 緊 張亢 進 を,
亜 急性 夫期 に於 け る 同比 の 増 加 よ り交 感 神経 緊 張 亢
皮 膚Ca量
は,初 期 に 微増,最
盛期 に は急 減 して
進 を主 張 し,楢 原21)も 亦 人 工 皮 膚 炎 に於 け る交 感
最 低 値 を示 し,以 後増 加 に 転 じて 徐 々に健 常 値 に接
神 経 のHypotonie,副
近 す る.
交 感 系 のHypertonieを
報
じて い る.し か し乍 ら何 れ に せ よ血 液 中 のNa,
K
4.
血 清Na/K比
は最 盛 期 に 於 い て,皮 膚 同比
両 カ チ オ ンの 分 配 関係 が 自 律 神経 の 調節 を受 け る も
は初 期 に於 い て 各 々最 低値 を示 し,そ の前 半 期 に低
の で あ る こ とは最 早 否 み難 い事 実 で あ り22),し か も
下,後 半 期 に 上 昇 を み る.
自 律 神経 系 は 内 分 泌臓 器 と互 に 密接 な依 存 関 係 に結
5.
血 清K/Ca比
は 緩 解 期 に 於 い て,皮 膚 同 比
ば れ,且 両 者 相 俟 つて 生 体 生 活 機 能 の 運 行 を 二 重 支
は 最 盛 期 に 於 い て夫 々最 高 値 を 示 し,そ の 前半 期 に
配 して い る もので あ る22).更 に この他Na,
上 昇,後 半 期 に低 下 す る.
各 固 定 塩 基 は肝23)と,又Caは
K,
Ca
上 皮 小体,腎 等 体
6.
血 清,皮 膚 両 者 に於 け る変 動傾 向 は 略 々類 似
内諸 臓 器 と密 接 な関 聯 を 持 つ もの で あ る こ と も既 に
す るが,後 者 に於 け る変 動 は 前 者 に比 して や や高 度
明 らか に され 或 は又 明 らか に され つ つ あ る.こ の よ
で あ る.
うに 体 内 に 於 け る電 解 質代 謝 は種 々 の臓 器 機 能 の 複
雑 な 規 制 下 に そ の 平 衡 が維 持 されて お り,著 者 の観
察 した人 工 皮 膚 炎 家 兎 に於 け る血 中 並 に 皮 膚 中電 解
質 代 謝 の 変 動 も,外 的 刺 戟 に由 る急 性 皮 膚 炎 症 の単
な る直 接 的 表 現 を 意 味 す るの み で は な くて,内 分 泌
腺 を 中 心 とす る諸 臓 器 機 能,並 に 自律 神経 機 能 の 密
接 且 つ 複 雑 な 支 配 乃 至 影 響 下 に 誘 起 され た生 体 反 応
と して解 す るの が 妥 当 で あ ろ う.著 者 は糊 に第1篇
(御 指 導,御 校 閲 を賜 つ た 大村 教 授 並 に 野原 助教
授 に 感 謝 致 します)
皮 膚 疾 患 に 於 け る血 中並 び に皮 膚 中電 解 質 に 関 す る研 究 引
1)
Stolte:
2)
吉 川 3)
榎 本:皮
4)
堀:同
5)
三 宅:東
京 医 事 新 誌,
6)
高
泌 誌,
7)
Nathan,
田:皮
135,昭31.
272,
104,
文
234,
86,昭29.
33,
2587,
W.
C.
1383,
1833,昭3.
Charles,
吉 川:電
解 質 の 臨 床,
15)
Bloom,
R.:
16)
黒 田 等 17)
Kraus,
17,
FR.:
Dermat.
18)
Z
Stewart,
C. P..
The
Lancet,
1939.
L.
F.
etal.:
Am.
J.
Physiol.,
151,
1947.
10)
滝 野:神
11)
福 田 経 学
雑 誌,
12)
渋 沢 他:内
分 泌,
13)
Williama,
R.
31,
日 本 外 科 会 誌,
1.
H.:
2.
1929.
175,昭23.
of
A.,
61,
u. Zondek,
707,
111,
2281,
125,昭26
S. G..
1938.
.
Kl.
Wochenschr.,
1924.
G. S. et
Therap.,
109,
al.:
453,
日 新 医 学,
星 20)
島 田:熊
40,
Exper.
353,昭28.
21)
楢 原 22)
呉
23)
吉 利:電
解 質 の 臨 床,
24)
江 原:岡
山 医 会 誌,
本 医 誌,
29,
406,昭30.
皮 泌 科 雑 誌,
30,
825,昭8.
自 律 神 経 系,
日 野 原:綜
Pharmacolo.
1953.
19)
・沖 中 J.
106頁,
54,
合 臨 床,
51頁,昭28.
78頁,昭28.
1323,昭17.
6,
2281,昭32.
Endocrinology,
on
Electrolytes
On
the
Rabbits
日 皮 会 誌,
F,
16∼23頁,昭28.
J. A. M.
O'Brien,
25)
260,昭29.
Textbook
Studies
Part
616,
47,
1955,
14)
878,昭8.
Stera,
&
献
1911,
80頁,昭30.
1930,
Wilson,
1,
51,
u.
35,
験 編,
50,
E.
236,
9)
Ztsch.,
化 学,実
科 紀 要,
誌,
57,
8)
Biochem.
臨 床 医
用
7907
in Blood
Varition
Having
and
Skin
of Electrolytes
Dermatitis
in Skin
in
Caused
Blood
with
Diseases
and
Croton
Skin
of
Oil
By
Kakuso
Kunihara
From the Department of Dermatology , Okayama University Medical School, Okayama.
(Director: Prof. Dr. J. Omura)
Following
the course
of the dermatitis
sodium,
potassium
and calcium
in sera and
1.
The
quantity
dermatitis,
stage
the
showed
and
stage,
nearly
2.
The
in the
severe
stage.
The
initial
stage,
3.
in the
to
normal
the
showed
normal
quantity
stage,
variation
increase
in sera
in
returned
initial
showed
of sodium
increase
the
marked
value
in its
of potassium
showed
severe
value
retrogressive
potassium
more
In skin,
showed
a slight
increase
oil in the back of rabbits ,
spectrophotometrically
.
in the initial
stage of the
increased
in tho
retrogressive
recovering
severe
stage . In skin,
increasing
stage and then decreased
rapidly
stage .
slightly
rapidly,
showed
skin showed
the
was
decrease
moreover
increased
Calcium
in sera showed
aslight
increase
rotrogressive
stage and then
gradually
was delayed.
and
the
in the
in sera
a slight
stage
in
increase
but , decreasing
of potassium
in
of
caused
with croton
skin were determined
remarkable
showed
almost
normal
same tendency
than
in the initial
increased
but
in the
and
initial
remarkable
increase
value in retrogressive
as sodium
but,
in the
sodium .
stage, showed the lowest
returning
to the normal
stage,
from
and
showed
the
lowest
value
value
value
7908 国
原
角
三
in the severe stage but thereafter was elevated gradlualy.
4. The value of Na/K in sera showed the lowest in the severe stage and in skin tho
lowest was showed in the initial stage and the both declined early and were eleavtatad later.
5. K/Ca in sera showed the highest value in the retrogressive stage and, in skin, the
highest was showed in the severe stage and the both were elevated in early period and dro
pped in the latter half.
6. Almost similar tendency of the variation of electrolytes was showed in the sera and
the skin, but in latter more remarkable.
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