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アルコール依存症-ご家族へのアプローチ

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アルコール依存症-ご家族へのアプローチ
 アルコール依存症
−ご家族へのアプローチ−
アルコール依存症の経過
逃避期
自問自答期
病識醸成期
Stage 1
Stage 2
Stage 3
サークル1
協調型受動期
Stage 4
サークル2
結実安定期
人格変容期
Stage 6
Stage 5
アルコール依存症のサークル1から抜け出る方策
早期発見、早期対策が重要であることは当然ですが、いかに早くこの
サークルから抜け出すことができるかが最大の課題です。身体、こころ、
家庭、子孫、社会における生か死かをかけた戦いです。すべてに当て
はまるとは思いませんが、抜け出る方策は次のようになります。
家族の立ち直りと対応の変化が
必要条件
アルコール依存症者が自問自答期を
どう乗り越えるのかが
十分条件
社会(地域や職場)が病気を
理解しているかどうかが
付帯条件
回復のシナリオの出発点は、
家庭に健常者を確保すること!
回復する必要条件、しかしご家族は
① 精神的変調をきたしている
戸惑い、不安、混乱、落胆、絶望、企死念慮、自信喪失、憎しみ、不幸
などを経て、正常な精神状態ではなくなっており、思考は歪曲している。
家庭の中での正常者を確保しなければならない。
② 飲める環境を作っている
借金の返済、酔いつぶれたときの介護、職場や学校への対応、事故の
後始末、警察署に迎えに行く、飲酒時の相手をしてしまうなど飲酒する
上での支え手になっている。
③ また飲酒できるようにしている
一般科の病院での治療を受けさせて体調を整え、また飲める体にして
しまう。「依存」が根本的問題であるのに精神科への受診をためらう。
④ 精神的に追い詰め、飲酒を促している
自問自答している時期を見逃し、逃避期と同じ対応をしてしまう。
やめたいと考え始めたときを逃さず、医療機関や断酒会につなげていかな
ければならない。
⑤ 子供たちを巻き込んでしまう
家族病の発端はアルコール依存症者にあるが、家族は依存症者を中心に
据え、混乱の中に子供たちを巻き込んでいく。結果として子供たちの正常
な精神発達を共同作業として妨げていく。
アルコール依存症のメカニズム
〔Ⅰ〕アルコールは依存性(身体および精神)がある
〔Ⅱ〕共依存
長年にわたって飲酒し、病的な状態を継続できるのは
家族システムにおける共依存によるものと考えられている
依存
コントロールされながら
振り回してコントロール
役割や責任を果たすことがで
依存症者に成り代わって役割や
責任を果たす きなくなった 支えの手(他の家族) e
nablar
アルコール依存症者
支配しコントロール
依存
〔Ⅲ〕対人関係パターンの世代間伝達
ご家族心理のポイント
1.アルコール依存症者の性格を見据えて子供扱い
ex)怖い話(体が悪いなど)を医者からしてもらえばやめる
2.過保護か逃避かの両極的行動
3.疑り深い
疑りの対象は依存症者だけではなく周囲に及ぶ
4.被害者意識が強く、共依存を自覚していない
5.自分は悪くないと否認する
依存症者を抱えるご家族へのアプローチ
1.認知療法的対応
a.不安、恐怖、絶望、自信喪失に陥っているため耳を傾け、話を
じっくり聞いてあげる
b.これまでの行動に誤りがなかったことを伝え、支持する
c.「疑り深い言動」に気づいたらそれをはっきりと指摘する
d.考えがまとまらず混乱していることが多く、問題点を一つ一つ
列挙して整理できるよう支援していく
e.箇条書きされた個々の問題点について話し合い、優先順位
あるいは問題の絞込みを行う
2.状況の分析
依存症者の精神および身体的状態、飲酒行動の実態、生活状況、
社会的立場、暴力等の有無、非社会的行為の有無、家族内力動、
経済状況、生活環境など
3.アルコール依存症に関する正しい知識を伝える
4.飲酒時の対応について話し合う
5.誤ったこれまでの対応について確認しあう
6.ご家族の断酒会への参加を促す
アプローチの留意点
1.結果を焦らず、ラポールを優先する
2.巻き込まれて混乱しないよう冷静に
3.批判ではなく、解決方策の検討であることを明確に
4.諦めかけたらこころの支えを
5.依存症者が憎いのではなく、病気が憎いことを再確認
6.相手が変わらなければ自分が行動すると決意させる
7.頑張らなければならないと考える動機は(子供を守る
ことや家庭崩壊を防ぐなど)何でもよい
8.ご家族自身の精神的、身体的健康を気遣う
ご家族自身が考えてみてください
1.異常な状況が続き自分が正常であるはづがないことに気づいていますか
2.人が信じられなくなっていませんか
3.焦ったり、不安になったり、パニックになったり、自信喪失あるいは
自暴自棄に陥ったりしませんか
4.自分だけが不幸だと思っていませんか
5.人前に出るのがつらくなり、人と会うのもいやになっていませんか
6.考えの視野狭窄を起こしていませんか
7.いつも同じような批判や愚痴を言っていませんか
8.相手は病気を認めませんが、自分には非がないと思いますか
9.酔って問題を起こす人、その人ばかりをみていませんか
10.飲酒しているとき知らず知らずその相手をしていませんか
11.飲酒している時の言動にこころが傷ついていませんか
12.家庭はアルコール依存症者中心に廻っていませんか
13.じっくり、真正面から子供たちの話を聞いてあげてますか
ご家族自身が考えてみてください
14.離婚してしまったら子供たちはどんな思いをしますか
そして今、アルコール問題を解決しないと子供たちが同じような人生を
たどってしまうとしたらどうしますか
15.アルコール依存症は子や孫にまで影響を及ぼすことを知っていましたか
16.アルコール依存症は病気だと知っていましたか
17.アルコール依存症の正しい知識がないことを認められますか
18.仕方ないとしながら依存症者を子供のように過保護にしていませんか
19.体の治療ばかりして、また飲酒できるよう段取っていませんか
20.ダメといいながら飲酒できる仕組みに加担していませんか
21.依存症者がこのままではダメだと気づくような作業を行っていますか
22.抗酒剤というお薬があるのをご存知ですか
23.あきらめる前に専門的医療を受けたことがありますか
24.自分が行動しなかったら誰がやりますか
誰が病気に立ち向かいますか 他の人がやってくれますか
25.駆け込み寺と思って断酒会に通ってみませんか
アルコール依存症は家族病
〔Ⅰ〕家族病であることの証拠
①アルコール依存症者の子供のうち、男子はゆくゆくアルコール
依存症と診断されることが多い
②アルコール依存症の夫をもつ妻の25%は、親が大酒家かアル
コール依存症患者である
③アルコール依存症者を親にもつ子は情緒的、社会的な問題行動
が多くみられ、思春期になると、過食症や拒食症、不登校、家
庭内暴力、引きこもり、神経症になることが多い。
〔Ⅱ〕理由として考えられること
対人関係パターンの世代間伝達
①幼児期から培われた望ましくない対人関係パターンを有し、
日常生活の中で「生きづらさ」を感じ、悩み続けて大人になる。
(Adult Children of Alcoholics ACOA)
②親の対人関係パターンのコピー
アルコールの呪縛を断ち切る契機
① 妻(配偶者)が本気で別居すると依存症者が思った
② 自我を押さえていた子供たちが本音をぶちまけた
③ 友人がアルコールのために亡くなったのを知った
④ 飲酒して崩れていく人の経緯を見て怖くなった
⑤ 幾度も入院を重ねたとき
⑥ 断酒しようとして失敗を繰り返したとき
⑦ 妻(配偶者)に引きつれられて断酒会に通い出した
⑧ 入院後断酒会につながった
⑨ 医師からアルコール依存症ときっぱり言われた
⑩ 入院中「どうせやめられない」と言われた
気づく瞬間
どのような名言もその人のこころの準備状態が頂
点に達していなければ何の意味もなさない
だから大切なことは安全にそしてより早くこころ
の準備をどう高めるかだ
こころの準備が極に達したとき一言で考えが変え
られる
アルコール依存症者への接し方10ケ条
1.酩酊時には接しない
2.飲酒しているときの「相手」をしないで無視する
3.興奮しているときにはその場から去る
4.翻弄に巻き込まれないよう注意する
5.大切な話は飲酒していないときに行う
6.批判や愚痴、冗談を言うのではなく、本音で話をする
7.依存症者の言い分もよく聞き出してあげる
8.必要に応じて毅然とした態度を示す 9.憎いのは依存症者ではなくアルコールであることを銘記する
10.苦しみながら断酒を続けている病む人であることを忘れない
アルコール依存症の病院受診について
1.内科など一般科への受診が多い
a.アルコール依存症者は一般科であれば受診を承諾しやすい
b.ご家族は医師から異常を指摘されればやめるものと期待する
c.ご家族は一般科でアルコール治療が行えると考えている
d.ご家族はアルコール依存症の本質を知らない
e.治療を断念し、長期入院を希望して精神科を受診させる
2.重症化(身体的には肝硬変,精神的には認知症等)しての専門医療機関受診が多い
3.徐々に一般科病院からの紹介が増えてきている
a.離脱症状等で対応困難に陥ったケースではなく、依存症の治療目的で紹介されるケースが
増えてきている
b.一般科医師の認識が高まってきていると考えられる
4.飲酒している状況では通院が不規則あるいは中断する
5.酔った状態での診察は意味をなさない
6.振戦せん妄(離脱症状)発症時は入院治療が必要
7.断酒後、身体合併症の発症または増悪をみることがある
8.断酒を継続している際は通院をこまめに行う(2回程度/月)
9.スリップした場合は7日間の連日、通院してもらう
アルコール依存症者の回復困難例
1.反社会的行為、迷惑行為を繰り返す人格に障害を
有する患者さま(非社会性人格障害)
2.麻薬や覚醒剤等の複合依存を呈する患者さま
3.アルコール性認知症の状態にある患者さま
4.好ましくない環境にいる患者さま
ex)家族の理解が得られない
正常化を促す人が周囲にいない
酒びたりを助長する劣悪な環境
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