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<がん特集>
胃がん
手術療法
∼外科∼
検査のご案内
VSRAD( ブイエスラド )・DatScan(ダットスキャン)
平成28年
6月
第157号
FUCHU HOSP
I
TAL
< が ん特 集 > 胃 がんについて 手術 療 法 外 科 副 部 長 中 澤 一 憲
初めに
我が国における 2013 年の胃癌の死亡者数は、男性は肺癌についで第 2 位、女性
では大腸癌、肺癌についで第 3 位です。2013 年の胃癌による死亡者数は、48,632 人
でした。
また、2011 年の胃癌の罹患数は、132,033 人で、男性では第 1 位、女性では乳癌、
大腸癌についで第 3 位です。国際比較では、東アジアで罹患率が高く、アメリカ
白人は低く、我が国は東アジアの中でも罹患率が高く、世界で最も胃癌に罹患し
やすい地域とされています。昨今、食事との関係やヘリコバクターピロリの関与
も言われるようになり、罹患率は減少傾向にありますが、尚、死亡者数の多い癌
腫であることは変わりません。
世界の状況(胃がんの疫学)
GLOBALCAN 2012
胃癌の国別死亡率(男女合計)
http://globocan.iarc.fr/Pages/Map.aspx
GLOBOCON 2012
http://globocan.iarc.fr/Pages/summary_table_site_sel.aspx
部位別がん死亡率
日本の状況(胃がんの疫学)
胆のう・胆管 8,929
食道
9,667
胃 結腸 直腸 肝臓 31,978 16,233 9,575 19,816
前立腺 11,560
膵臓 肺 その他 15,873 52,054 29,595
甲状腺 550
大腸 25,808
食道 1,876
子宮体部
2,107
子宮頸部 甲状腺
直腸 5,397 胆のう・胆管 9,296 2,656 1,192
胃 結腸
肝臓 16,654 16,449 10,359
(2013 年)
子宮
6,033
白血病 4,806
悪性リンパ腫 5,001
卵巣 4,717
胆のう・胆管
年齢部位別がん
死亡数割合
胃
直腸
結腸
白血病 4,806
膵臓 肺 乳房 その他 14,799 20,680 13,148 18,969
大腸 21,846
食道
悪性リンパ腫 6,339
前立腺
悪性リンパ腫
胆のう・胆管
食道
膵臓
甲状腺
肝臓 膵臓 肺
その他
悪性リンパ腫
白血病
胃 結腸
子宮体部
肺
乳房
子宮頸部
直腸 肝臓
その他
白血病
卵巣
甲状腺
(2013 年)
部位別がん罹患数
食道
19,728
胃 90,083
結腸
直腸 肝臓 肺 43,974 28,127 29,192
大腸 72,101
食道
3,391
直腸 肝臓 膵臓
14,526 14,648 15,922
胃 結腸
41,950
(2011 年)
胆のう・胆管
12,250
38,294
大腸 52,820
肺
36,425
胆のう・胆管
11,356
20,680
75,433 悪性リンパ腫 13,766
前立腺 78,728
膵臓 17,173
その他 77,300
甲状腺 白血病
3,490 7,060
子宮頸部 子宮体部 卵巣 白血病
11,378 14,763 9,314 5,209
乳房 その他 72,472 43,723
子宮 甲状腺 悪性リンパ腫
26,741 10,250 11,012
資料:国立がん研究センターがん対策情報センター
Source:Center for Cancer Control and Information Services,
National Cancer Center,Japan 部位別がん年齢調整死亡率の推移
(主要部位・対数) 【男性・女性 1958 年∼ 2013 年】
胃
胃
肺
子宮
肝臓
大腸
肝臓
直腸
肺
大腸
乳房
結腸
(2013 年)
結腸
前立腺
直腸
卵巣
資料:国立がん研究センターがん対策情報センター
Source:Center for Cancer Control and Information Services,
National Cancer Center,Japan 発生、危険因子
胃癌の原因とし ては環境的要因(高塩食、不規則な食事、胃癌の家族内発生など)
が報告されています。近年、Helicobactor pylori(H.pylori、ピロリ菌 ) 菌が胃癌の発生
に関与している可能性が高いとの報告が相次ぎ、ピロリ菌と胃癌との関連性が注目
されています。
胃癌の進行度(ステージ)
胃癌の進行度とは、壁深達度つまりは癌細胞が胃壁のどの層まで浸潤しているか、
ほかには転移の有無により総合的に判断するもので、転移に関しては、リンパ行性
転移によるリンパ節転移、血行性転移による他臓器(肝、肺、脳、骨など)への転移、
その他には直接、癌細胞が腹腔内にばらまかれる腹膜播種転移が存在します。
これらを総合的に判断し、進行度が決まり、進行度に応じて治療方針を決定します。
治療方針決定のための病期分類
壁深達度に関して
早期胃がん
癌の浸潤が粘膜下層
までにとどまっている
進行胃がん
癌の浸潤が固有筋層
以上に進行している
TX
がんの浸潤の深さが不明なもの
T0
がんがない
T1
がんの局在が粘膜 (M) または粘膜下層 (SM) にとどまるもの
T1a
がんが粘膜にとどまるもの(M)
T1b
がんの浸潤が粘膜下層にとどまるもの(SM)
T2
がんの浸潤が粘膜下層を越えているが、固有筋層にとどまるもの(MP)
T3
がんの浸潤が固有筋層を越えているが、漿膜下層にとどまるもの(SS)
T4
がんの浸潤が漿膜表面に接しているかまたは露出、あるいは多臓器に及ぶもの
T4a
がんの浸潤が漿膜表面に接しているか、
またはこれを破って遊離腹腔に露出しているもの(SE)
T4b
がんの浸潤が直接他臓器まで及ぶもの(SI)
上部内視鏡像
早期胃がん
進行胃がん
治療方針決定のための病期分類
転移に関して
N0 領域リンパ節に転移を認めない
N1 領域リンパ節に 1 ∼ 2 個の転移を認める
リンパ節転移
日時
肝転移
会場
腹膜転移
定員
腹腔細胞診
定員
遠隔転移
N2 領域リンパ節に 3 ∼ 6 個の転移を認める
N3 領域リンパ節に 7 個以上の転移を認める
N3a 7 ∼ 15 個の転移を認める
N3b 16 個以上の転移を認める
H0 肝転移を認めない
H1 肝転移を認める
P0 腹膜転移を認めない
P1 腹膜転移を認める
CY0 腹腔細胞診でがん細胞を認めない
CY1 腹腔細胞診でがん細胞を認める
M0 肝転移、腹膜転移および腹腔細胞診陽性以外の遠隔転移を認めない
M1 肝転移、腹膜転移および腹腔細胞診陽性以外の遠隔転移を認める
以上を総合的に判断し、胃がんの病期分類を行います。
Stage(進行度)分類に関して
N0
リンパ節
転移がない
T1a, M
胃の粘膜に限局している
N1
N2
N3
肝、肺、腹膜
1 ∼ 2 個の
3 ∼ 6 個の
7 個以上の
など遠くに転
転移を認める 転移を認める 転移を認める 移 している
IA
IB
IIA
IIB
T2
胃の漿膜下層まで
IB
IIA
IIB
IIIA
T3
漿膜を越えて
胃の表面に出ている
IIA
IIB
IIIA
IIIB
T4a
胃の表面にがんが出ている
IIB
IIIA
IIIB
IIIC
T4b
他臓器にもがんが続いている
IIIB
IIIB
IIIC
IIIC
T1b, SM
胃の粘膜下層に達している
肝、肺、腹膜など
遠くに転移している
IV
IV
この表のように Stage IA ∼ IV 期に分類され、治療方針の決定を行います。
治療
癌の治療は、手術、抗がん剤、放射線治療に大別されますが、胃がんに関しては、
手術、抗がん剤が中心になります。
胃癌治療法選択のアルゴリズム
cT1
cN0
cT1a(M)
分化型
2cm以下UL(-)
Yes
No
EMR
ESD
胃癌
胃癌
M0
M0
cT2/T3/T4a
M1
M1
cT4b
cN(+)
cT1b(SM)
分化型
1.5cm以下
Yes
No
胃切除
D1郭清
胃切除
D1+郭清
定型手術
D2郭清
pStageⅠ
【手術後】
pStageⅡ、Ⅲ
〔pT1およびT3(SS)/N0を除く〕
経過観察
補助化学療法
胃切除
合併切除
D2郭清
化学療法
放射線療法
緩和手術
対症療法
pStageⅣ
化学療法
対症療法
※ただし、T/N/M および Stage の定義は、胃癌取扱い規約第 14 版による。
日本胃癌学会:胃癌治療ガイドライン医師用 2014 年 5 月改訂 第 4 版 , p6, 金原出版
胃がんの外科治療
胃がんの治療に関しては、先の進行度に応じて内視鏡治療、手術、抗がん剤治療
のいずれかを選択します。従来は、胃がんの手術では、腫瘍の局在、進行度により、
開腹手術による幽門側胃切除術、胃全摘術、噴門側胃切除術が行われていましたが、
腹腔鏡下による胃切除術が増加してきました。これには、手術機器の進歩が大きく
関与しています。また、腹腔鏡にて手術を行うことは、一般的に言われている創部
の縮小による術後疼痛の軽減、美容面で優れているなどがありますが、実は、それ
以外にもモニターに映し出された拡大された解剖を認識しながら手術操作を進める
ことによる緻密な操作を可能とし、手術中の出血量を減少させ、緻密なリンパ節郭
清を可能とします。今後さらに全国的にも、腹腔鏡下胃切除術の適応は拡大されて
くると思われます。
府中病院の胃癌手術症例の年次推移
(症例)
100
90
80
60
46
40
69
68
36
36
33
36
50
51
2009
2010
67
50
32
20
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2011
2012
2013
2014
2015(年)
胃がんに対する腹腔鏡下手術の内容
腹腔鏡下胃全摘術 術後の創部
腹腔鏡下胃切除術リンパ節郭清後
門脈
門脈
肝臓
(尾状葉)
下大静脈
固有肝動脈
固有肝動脈
総肝動脈
総肝動脈
腹腔鏡下胃切除術リンパ節郭清後
左副腎
残胃
左胃動脈断端
脾静脈
脾動脈
左胃動脈
左胃動脈の断端
の断端
左胃静脈の断端
我が国における胃がんの幽門側胃切除術 腹腔鏡下手術の年次推移
(%)
50
40
30
20
10
0
2000
2001
2002
2003
府中病院の胃癌手術症例
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011(年)
腹腔鏡下手術の割合(年次推移)
100
80
60
40
20
0
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015(年)
府中病院における胃癌の手術の変遷と現況
2003 年に早期胃癌の手術症例に対して安全性、根治性を担保しながら腹腔鏡下
胃切除術を導入しました。その後、難易度が高いと言われている腹腔鏡下胃全
摘術を 2010 年から導入、さらには腹腔鏡下噴門側胃切除術を 2013 年から導入し
てきました。
2015 年末現在、腹腔鏡下胃切除術を 251 例の患者に施行してきました。その間、
手技を確立しながら 2008 年からは進行胃癌に対しても腹腔鏡下手術を導入し、
現在では、stageⅣの症例に対する胃空腸バイパス術に対しても積極的に鏡視下
手術を行ってきています。
最後に
当院では、根治性、安全性を担保し、定型化した胃癌手術を行っています。
また、手技に関しては、腹腔鏡下手術も多数行うとともに、高度進行胃癌に対し
ても術前の抗癌剤加療を施行した上で、根治を目指した手術を行っています。
今後も地域の先生方と連携をとらせて頂きながら、泉州地区の胃癌治療を担える
ように精進努力していきたいと考えています。今後も、ご指導、ご鞭撻の程何卒
よろしくお願い申し上げます。
今 月 の 担 当 医 師
外科 副部長 中澤 一憲(なかざわ かずのり)
<資格等>
日本外科学会専門医
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医、専門医、指導医
近畿外科学会評議員
<専門領域>
上部消化管、肝胆膵領域
病診オープンカンファレンス開催報告
6 月 4 日(土)に当院セミナーホールにおいて、病診
オープンカンファレンスを開催いたしました。
今回は開業医の先生方からご紹介頂きました消化器内
科の症例についてディスカッションしました。
心窩部痛・
腰背部痛から上部∼中部胆管癌の診断に至った症例、
腹痛から胆石性膵炎の診断に至った症例など、開業医
の先生方と当院の医師とが電子カルテを使用して画像や検査データー等を自由に
閲覧して頂きながら、緊張感のないリラックスした雰囲気の中行われました。こ
のような症例提示は初めての試みでしたが、実のある充実した時間となり、今後
も継続して行っていきたいと思います。
次回の開催は 12 月頃を予定しております。先生方からご興味ある症例をご連絡頂
き、治療経過・治療効果などの情報を共有することで、病診連携の充実をしてい
きたいと考えていますので、是非ご参加お願い申し上げます。
地域医療連携室 森 舞子
地域医療連携室より 検査のご案内
MRI 検査でわかる!
VSRAD
ブイエスラド
早期アルツハイマー型認知症診断支援システム
MRI 画像を使って脳の委縮度をみる検査です!
もの忘れが気になる方で
54 歳∼ 86 歳 の方が対象になります。
当院では地域の医療機関の先生方より頭部 MRI+MRA 単純検査に追加撮影
VSRAD( ブイエスラド ) のご依頼を承っております。
VSRAD 検査をご希望される場合は、画像検査申込書の備考欄に「VSRAD 希望」
とご記入いただくか、もしくはお電話での検査予約時にお申し出ください。
RI 検査でわかる!
Dat Scan 認知症の新しい検査 DatScan(ダットスキャン)
ダットスキャン
を使った認知症検査
Dat Scan はドーパミントランスポーターを画像化したものです!
この検査はパーキンソン症候群およびレビー小体型認知症の診断を目的と
しています
当院では地域の医療機関の
先生方より DatScan(ダット
スキャン)のご依頼を承って
おります。
色が薄くなっている部分で
ドパミン神経が変性・脱落
日本脳神経核医学会監修資料参考
DatScan(ダットスキャン)検査をご希望される場合は、画像検査申込書の
RI 検査欄その他に「ダットスキャン希望」とご記入いただくか、もしくは
お電話での検査予約時にお申し出ください。
seminar
当院にて下記のセミナー・勉強会を開催いたします!
※詳細は同封の別紙にてご確認ください。
手術部位感染(SSI)対策:最新エビデンスから現場での管理まで
感染対策レクチャー
※事前のお申し込みは不要です。
当日受付にてご記名ください。
浮腫治療を考える会
第 25 回
府中循環器セミナー
日時:平成28年 7 月 1 日(金)18:00∼19:00
場所:府中病院 西館地下1階セミナーホール
講師:神戸大学医学部附属病院 感染症科 講師 大路 剛先生
食中毒・感染性胃腸炎による下痢患者と入院中の下痢発生
日時:平成28年 7 月 22 日(金)18:00∼19:00
場所:府中病院 西館地下1階セミナーホール
講師:神戸大学医学部附属病院 感染症科 講師 大路 剛先生
体液管理におけるトルバプタン使用経験からの考察
日時:平成 28 年 7 月 6 日(土)18:30∼
場所:府中病院 西館地下1階セミナーホール
講師: 大阪府済生会中津病院 腎臓内科 嶋津啓二先生
見逃せない深部静脈血栓症と肺塞栓症
日時:平成28年 7 月 30 日(土)14:00∼16:00
場所:府中病院 西館地下1階セミナーホール
講師: 循環器内科 部長 田口 晴之
紹介実績<平成 28 年 5 月>
1634
1340
1000
500
0
紹介実施件数
紹介・逆紹介件数
1500
14
1
診察
MRI
132
95
122
181
上部内視鏡
下部内視鏡
940
149
紹介
発行責任者:院長 竹内 一浩
編集責任者:地域連携部 松田 有裕
編 集 者:地域医療連携室 麻生 恵美
〒594-0076 和泉市肥子町1丁目10番17号 府中病院 地域医療連携室
TEL:0725-40-2147 予約専用フリーダイヤル:0120-40-2147
FAX:0725-40-2148 E-mail:[email protected]
生理検査
RI
MCV
骨密度
逆紹介
2016年 6 月・157 号 ね っと わ ー く
CT
≪私たちの理念≫
愛の医療と福祉の実現。
地域と職員と共に栄えるチーム
Yu・ki・to・do・ku ゆき届いたサービス
≪私たちの基本方針≫
チームとして、そしてパートナーとして
チャレンジします。
3つのベストにチャレンジします。
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