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報告書[PDF:625KB]
調 査 地
調 査 日
調査概要
北海道函館市
平成 26 年 7 月 7 日
函館市地域交流まちづくりについて
○函館市の概要
函館市は、南側を津軽海峡(日本海)、東側を太平洋、北側を内浦湾(太平洋)
に囲まれ、漁業および海運が盛んである。津軽海峡を流れる対馬海流(暖流)
の分流の津軽暖流の影響もあり、道内では比較的温暖な気候で亜寒帯と温帯の
境界線に位置する。
市面積は、677.95 ㎢、人口 27 万余を数え北海道第 3 の都市であるが、近年
人口減少が著しいことから、市全域が過疎地域に指定されることとなった。
日本三大夜景の 1 つである函館山からの夜景、元町・末広町の重要伝統的建
造物群保存地区、函館港周辺、五稜郭、湯の川温泉、トラピスチヌ修道院など、
市内には多数の観光スポットがあり、函館市電などで繋がれている。
2015 年度末までに北海道新幹線・新函館北斗駅(現函館本線・渡島大野駅)
が完成予定である。
○「函館市地域交流まちづくり」について
大正 12 年に丸井今井呉服店函館支店として建設された建物を昭和 44 年に市
が買い取り市役所分庁舎として使用。
その後、水道局等に移転されたが、創業当時の面影を残しながら、現在の地
域交流まちづくりセンターへと整備された。
外観は、洋風建築を基調としており、内装は、大理石貼りの床と玄関部分の
モザイクタイル貼りという当時の意匠をそのまま使い、エレベーターも手動式
と、貴重な歴史的資産としても価値がある。函館市の景観形成指定建築物に指
定されている。
地域交流まちづくりセンターとしての機能は、市民交流や NPO など市民活動
の支援、観光案内をはじめ地域情報の発信を通じ、函館地域のコミュニケーシ
ョンやまちづくり活動をサポートすることとしている。
活用としては、
(1)市民の親しみと懐かしさを保つとともに、西部地区の歴史、文化、建物の
立地特性を十分に活かした施設とする。
(2)西部地区の振興とまちづくりの拠点施設として活用するとともに、新たな
まちの魅力の創造や情報を発信する施設とする。
(3)市民活動やサークル活動などの多様な交流活動を促進、支援し、人と人の
ふれあいを大切にする施設とする。
(4)地域住民をはじめ市民の意見、要望などを取り入れた活用方策とする。
以上の考えに基づき、情報発信・市民交流・市民活動支援の三つの機能を
有する施設となった。
開館時間は、9 時から 21 時。休館日は、1 月 1 日∼3 日及び 12 月 31 日。
事業としては、
ア、設置目的に資する事業の実施
1、市民活動支援事業
2、市民の社会参加促進事業
3、移住者サポートデスク事業運営
4、総合窓口の設置・運営に関すること
5、施設・設備の提供に関すること
6、その他センターの設置目的を達成するために必要な事業
イ、センターの施設の使用の許可及び制限に関すること
ウ、センターの維持管理に関すること
エ、その他業務に関すること
としている。
運営費としては
212,390,000 円 函館市より管理委託
20,500,000 円 利用料収入
合計 232,890,000 円。
支出
128,760,000 円 人件費
13,940,000 円 事業費
26,250,000 円 光熱費
56,690,000 円 維持管理等
7,250,000 円 事務費
合計 232,890,000 円である。
入館者数合計 122,079 人
利用団体 230 団体、
月平均 10,173 人
運営は、NPO 法人が指定管理者としている。
地域交流まちづくりセンターが、市民活動レベルと市の施策との中継基地と
なるような取り組みがなされている。
○主な質疑
Q1.センターの事業として「しゃべるべさ」があるが、その内容と効果は?
A. 函館市が進めている移住者政策の支援策として行っている。移住者は函館
市を魅力に感じ移住してくるが、市内に知り合いがいない場合が多く、生
活に必要な情報に事欠くことが多い。そのため移住者が市役所で転入届を
行う際に、「しゃべるべさ」を紹介し移住者同士の情報交換の場として運
用している。効果としては、やはり知り合いがいない中で、まず、友人が
できる点が挙げられる。その友人から生活上の様々な情報が得られ、孤立
しないなどのメリットが挙げられる。例えば、今の時期に移住された方が、
秋口になりそろそろ冬支度が気になり出す頃、何を用意すべきかなどや、
家族が病気になった際に良い病院を紹介するなど、移住者の先輩が細かく
教えており好評である。
Q2.センターを介して移住された方はどのくらいおられるか?
A. 140∼150 人である。毎月 1∼2 家族が移住されてくる。3・11 直後は原発
の関係もあってか、福島から若いご夫婦が多かった。また東海地域からも
地震を心配されて引っ越されてくる方もあった。
Q3.移住アドバイザーとはどういう人が行っているのか?
A. 主に市内不動産業の方にお願いをしている。住む場所とともにその保証
人や仕事の問題など、専門的なアドバイスを行い、移住をしやすくして
いる。
Q4.センターと市役所との関係は?
A. 総務部総務課の所管となっており、市役所内には市民協働に関する部署は
ない。業務の企画運営はすべて任されている。市民からの相談窓口もセン
ターにあり、税務や法務の相談も行っている。センター職員は全て NPO
法人職員である。市より 4,200 万円の委託費と 300 万円の補助金で、人件
費、光熱費、管理費等すべてを賄っている。
Q5.指定管理者としての評価や課題は?
A. 500 点満点で評価している。そのうち 200 点が費用面である。事業を細か
く評価し、アピールしている。毎年多くの視察者を迎えるが、それぞれの
市での実施状況をこういった質問の中からお聞きし、センターの実態と比
較しながらさらに良い運営を目指している。課題は、やはりスタッフの給
与額である。センター長の自分が 49 歳であるが、大卒初任給に欠ける程
度である。有能な人材を多く採用することがかなり厳しい。せめて市職員
給与と同等になれば、もっと効果が出せる体制が組めると考えているが、
そのようにはいっていない。
Q6. 市の進める市民協働の方向性と、センターの方向性との整合性はどう取
っているのか?
A. 市の中期プランの審議の際に、センター長や職員がその審議員に入ってお
り、市の進める方向性を掴むと同時に、センターの日頃の研究成果をその
場で提案するなどして、市の方向性に加えてもらうなどして、整合性を確
保している。
○所感
伊勢原市においても、いせはら市民活動サポートセンターが設置されている。
市民が自主的かつ自立的に営利を目的とせずに行う、地域社会に貢献する公益
性のある活動を支援する施設として数多くの市民団体、ボランティア団体が利
用しているが、その中身は、会議場所としての提供が主で、市民活動に積極的
にかかわっていくような姿勢は残念ながら見ることができない。
函館市の取り組みは、運営を NPO 法人に任せて、場所の提供のみならず、市
民活動、NPO について設立から運営方法をサポート、事務所の貸し出し、情報
提供等に留まる事なく、函館市の地域の問題を解決するためには、何が必要で、
どう活動したらいいのかまで、踏み込んでいる。
特に、道外から函館市に移住を希望する人に対するサポートや生活保護受給
者に仕事をさせ、勤労意欲を惹起して自立支援することまでしている。
函館市は、道内第 3 位の人口規模と豊富な観光資源を持ちながらも、近年、
年間 3000 人規模の人口減に悩んでいるところである。
市民活動に積極的に関与しながら、移住サポートの取り組みなど、行政の手
が及ばない部分を、運営に当たる NPO 法人が行っているところに、その志の高
さを見た。
伊勢原市も目前に迫っている少子、超高齢化社会に向けて、市民活動の存在
は重要性がさらに高まってくることは確実である。
市民活動をいかに市の施策にリンクさせ、相乗効果をもたらすものとするた
めにも、いせはら市民活動サポートセンターのさらなる取り組みが求められる
と考える。
函館市地域交流まちづくりセンター前
調 査 地
調 査 日
北海道芦別市
平成 26 年 7 月 8 日
調査概要
合宿の里事業について
センター内で説明を受けている様子
○芦別市の概要
北海道空知地方中部・空知川流域に位置し、面積は 865.02 ㎢と広大な市域を
有している。このうち 88 パーセントを山林が占める豊かな自然に恵まれた地域
であるとともに、自然災害の極めて少ない安全な生活環境を有している。
かつて石炭産業で栄え最盛期には人口 75,000 人を超えたが、閉山に伴い激減、
基幹産業である農業・林業も担い手不足になり、平成 26 年 6 月現在 15,559 人
と過疎化が深刻な問題となっている。
基幹産業の衰退により、まちを再活性化するために、基幹産業である林業を
中心に企業誘致に取り組み、観光産業の基盤整備に力を入れて、地域経済立て
直しをはかっている。
「星の降る里」宣言をして、自然と澄み切った空、美しい星が瞬く夜空といっ
た自然環境を生かした観光のまちづくりを目指している。環境省からも「星空
の街」に認定され、市のイメージアップに貢献している。
○合宿の里事業について
平成 10 年 2 月に全日本女子バレーボールチームのホームタウン合宿地に認定
されたことを契機に、全日本男子・女子バレーボールチームやキューバ男子・
女子ナショナルチーム、JT サンダーズなどの合宿が実施されている。
第 5 次総合計画においても、合宿を市の重要施策として掲げて、
「合宿の里構
想」を積極的に推進し、
「あしべつ宿泊交流センター」や「なまこ山総合運動公
園」などを拠点としながら、交流人口増による地域経済の活性化を図るために、
スポーツを中心とした各種の合宿誘致及び学校誘致を重要施策として積極的に
取り組んでいる。
平成 17 年度から 22 年度においては、毎年 2 万人の合宿を受け入れている。
平成 10 年に全日本バレーボール協会から全日本女子バレーボールのホ−ムタ
ウン(長期合宿地)として指定され、油谷体育館が JOC から 2000 年シドニーオ
リンピックに向けた「バレーボール競技強化センター」として認定された。
これを契機に油谷体育館を中心としたエリアでバレーボールチームの強化合
宿が実施されるようになった。
スポーツ拠点としては、
「なまこ山総合運動公園」の整備がすすめられ、平成
11 年度陸上競技場、平成 12 年度は総合体育館、平成 15 年度は市民球場、平成
16 年度パークゴルフ場北コース、平成 17 年度芝生広場、パークゴルフ場南コ
ースと施設が整備された。
合宿誘致にあたり、体育館使用料の減免(全日本クラスは無料)、レンタカー
の貸与、空港までの送迎、市が専用の担当者を 2 名派遣、市民が主体となって
バレーボールサポーターの結成をして、万全の支援体制を整えている。
特に、全日本女子バレーボールチームに対しては、市職員が、送迎、球拾い、
買い出し等のマネージャーの仕事も請け負い、官民一体となって支援している。
全日本の合宿地に選ばれたことにより、実業団チームが合宿地として芦別市
に来るようになり、その取り組みが広がりを見せ、実を結んでいる。
事業単独では採算が合わないが、町に活気を与え、交流人口の増加、知名度
のアップ、経済効果を考えると十分に元が取れるのではないかと推測される。
○主な質疑
Q1. この事業による経済効果額は想定されていると思うが、それが市税増に
つながっているという実態はあるのか?
A. 目に見える数字としては宿泊費が主であると考えており、その金額は一
人当たり 500 円と想定している。普通の自治体は 1,500 円を経済効果額
としているが芦別市ではそこまでは見ていない。その金額が市税にどう
つながっているかは掴んではいない。ただ、本日お泊り頂く全日本女子
バレーボールチームの合宿所となっているスターライトホテルでは、そ
こでお出しするお食事の食材はなるべく芦別産を使っており、クリーニ
ング店も芦別業者、従業員は全員芦別市民となっているため、そこでお
客様がお支払いいただいた金額は、順番に市内に落ちていくようにはな
っている。
A2. そうすると市民の雇用確保などで貢献していると判断しているのか?
Q. そうである。また大型の合宿となると 700∼800 人が来られるため、市内
のバス業者にも良い影響が出ている。その他、市長の発案により年に 1
∼2 回は大きなイベントを行おうということになり、昨年はバレーボール
のVリーグ、プレミアムVリーグ、バスケットボールWリーグを行って
いる。また合宿地として活用をされているフットサルのエスポラーダ北
海道も試合会場として使っておりそれなりの効果は出ている。その他、
経済効果以外に、市民がトップレベルの選手の試合を地元で生で見られ
るというメリットがあると考えている。また、子供たちにもいい刺激に
なると同時に、合宿に来て頂いたときには子供たちへのスポーツ教室を
開いていただいている。
Q3. 全日本女子バレーボールチームの合宿の際は、スタッフを含め総勢どの
くらいで来られるのか?
A. 選手以外のスタッフは 7∼8 名ぐらいです。ドクターはまれで、トレーナ
ー、マネージャー、監督、コーチが 2∼3 人で、昨年は 10 名で来られまし
た。全日本の場合はバレーボール協会から役員が来られることは無いので、
チームのみが来られます。
Q4.そうすると市がチームをサポートすることなどはあるのか?
A. 合宿の期間は職員 2 名が専任で張り付いています。行っている内容として
はマネージャーと一緒に、買い出し、選手の洗濯物の手配、練習や食事等
様々な会場セッティング。選手の個々のお世話には入りませんが、チーム
に対するあらゆることをサポートします。いわゆる、練習が開始から終了
まで、また、夜練習が終わるまでは、ほとんど何か声を掛けられたら対応
できるように、常に張り付いています。
Q5.逆に言えばそのように張り付くほどサポートしないと、合宿地を変更され
るのでは、と考えているのか?
A. 全日本バレーボール協会では、芦別市を合宿地と定めていただいているの
で、変更は多分ないとは思っています。ただ、最初の 2∼3 年はかなり気
を使った。ただ、今になっては、選手やスタッフの方々も設備などあらゆ
ることを知り尽くしておられるので、やりやすい状況になっていると思わ
れる。新しいところに行くと勝手が違うなど、新たにすることが多いので
時間のロスが多くなる。そういったことから、ここまで使いこなしておら
れるので、変更になる事はないのではないかと考えている。
Q6.子どもたちが一流の選手と触れ合っている結果、特に、中学校のバレーボ
ールチームが強くなり、全国大会へ出場するなどの効果が表れたりしてい
るのか?
A. 残念ながらそのようにはいっていない。中学にはそれぞれバレーボールチ
ームがあるが、地区予選を勝ち抜けられていない。そこは日頃の指導が全
日本のようには、なっていないのだと思う。ただ、強い中学や高校のチー
ムが合宿に来ているので、その際は、芦別市の小中学生もお手伝いに行っ
ているので大いに刺激は受けている。
Q7.オリンピックの際に外国チームを誘致したようだが、大使館などにこちら
から出向いて誘致したのか?
A. 誘致の際には大使館へ行ってアピールした。特に大使館に出入りしている
企業が沢山あるため、人脈をたどって入った。市長がその点は得意で積極
的に行った。
Q8.東京オリンピックに向けて外国チームを合宿地として誘致する手法は?
A. オリンピック直前合宿誘致準備委員会を立ち上げるとか、官民一体となっ
てそういった組織を立ち上げると、意外と関連ある人脈が出てきたりする。
その人を起点に大使館との連携を強くして誘致を実現させる方法を作る
べきである。また市長が日本クレー射撃協会などに足しげく通って、各国
のチームを紹介していただくことも必要だと思う。芦別市長もまた来たか
というほど通っており、その結果誘致が実現できたと考えている。うちの
市長は商売柄、飛び込み営業が得意中の得意のため、チャンスがあればど
こへでも出向いて行く人である。
Q9.今回の視察テーマとは異なるが、映画のロケ地を誘致されているようだが、
どうやって誘致されたのか?
A. 市職員で大林監督を敬愛しているものがおりまして、もう亡くなっている
のですが、その職員が当時大林監督は尾道で良くロケをしておられていて、
それに感銘を受けた職員が是非芦別市を題材に映画を作ってほしいと懇
願して、彼が熱い思いで監督を追っかけまわした。その思いをついには大
林監督が感じてくれて、映画を作る前に芦別市で「芦別映画学校」という
学校を作っていただきました。そこでは素人が自作映画を持ち寄り、監督
が審査をするという映画学校であった。それにより芦別市と映画がつなが
るようになり、今回芦別市を題材とした映画に結実していったのである。
Q10.お話を伺っていると、様々な事に対して市の職員のとっても強い熱意を
感じる。もちろん市長も同様である。それはどういった背景でそうなっ
たのか?
A. 市のイベントは市職員が中心となってやって行かなければ進まない環境
にある。若い人が街にあまりいないので、どうしても若い人を動員させ
ようとすると、市職員からしか出ないことになる。それゆえ職員が入っ
て行かなければ多くの事が必然的に実施できないということになる。数
年前にまちづくり基本条例をつくり住民主体のまちづくりを目指してい
るが、芦別の実情からすると職員がかなり動かないと何事も始まらない
ということになってしまっている。こういった環境が、先ほどのような
ことを生んでいると考えている。
Q11. 芦別の歴史の中で炭鉱閉山などを経てまちづくりを考えるうえで「合宿
の里」ということが出てきたと思うのだが、そもそも「合宿」を誘致し
ようと考えたのはどのような理由か?
A.
実は「合宿の里」を立ち上げてバレーボールチームが来たわけではない。
バレーボールチームが来るようになって「合宿の里」を立ち上げようと
考えたのである。バレーボールがきっかけとなって「合宿の里」は後か
ら出てきた発想である。
○所感
2020 年に開かれる東京オリンピックに向けて、伊勢原市も県立射撃場を利用
したナショナルチームの事前合宿地の構想を持っているようであるが、はたし
て芦別市のような、かゆいところまで手の届く体制づくりが出来るのであろう
か心許ないものがある。
また、合宿先に選んでもらうのを座して待っているだけでは決して実現しな
い。伊勢原市の取り組みを積極的に IOC、JOC、競技団体へとアピールする必
要がある。市長をはじめとした職員一体となった「熱意」をアピールする必要
があろう。
伊勢原市がオリンピックに向けての合宿地として立候補するのであれば、ま
さに官民一体となった芦別市のような取り組みが必要である。誘致活動ととも
に課題は山積している。一つ一つクリアしていきながら、今後の誘致活動の参
考にしていく必要がある。
芦別市総合庁舎前
芦別市総合体育館
調 査 地
調 査 日
調査概要
北海道富良野市
平成 26 年 7 月 9 日
14 種分別収集と再資源化について
○富良野市の概要
富良野市は、大雪山国立公園の一部である十勝岳連峰と、芦別岳などの夕張
山地に挟まれた富良野盆地に位置する。石狩川支流の空知川と富良野川の合流
点に市街地が広がっている。北海道のちょうど中央に位置し、
「へその町」とし
て知られている。
市の南東部には、1899 年(明治 32 年)にひらかれた東京大学演習林もある。
布部川上流の麓郷の森はドラマ『北の国から』の舞台としても有名である。
内陸性気候のため年較差が大きく、1 月の最高気温が-4℃程度であり、冬の寒
さは非常に厳しい。冬の晴れた朝には放射冷却により、-32.6℃の冷え込みを記
録し、ダイヤモンドダストが見られる。
面積は、600.97 ㎢。市域の 7 割は山林が占めている。
人口は、平成 26 年 3 月 31 日現在、23.283 人。昭和 40 年の 36,627 人をピー
クに、その後官公庁の統廃合、企業の撤退、農家戸数の減少、少子高齢化など
により平成2年では 26,665 人、平成 22 年には 24,259 人に減少。
一方、世帯数は、平成2年では 8,961 世帯、平成 22 年では 10,074 世帯と増
加の傾向にある。
年齢別人口構成では、平成 7 年と平成 17 年を比較すると幼年人口比率は
15.6%から 14.2%まで減少し、生産年齢人口比率は 65.4%から 61.2%とやや減
少となっているが、老齢人口比率は逆に 17.7%から 24.6%まで増加し、少子高
齢化が進んでいる。
○14 種分別収集と再資源化について
脱焼却・脱埋め立てを旗印にごみの減量と資源リサイクルに取り組み、平成
13 年 10 月 1 日より、ごみを 14 種類に分別し収集する取り組みを始めた。
清掃事業の沿革は、
S47.8 八幡丘埋立処分場開始
S52. ステーション方式で収集を始める
S58. ごみの 3 種分別(生ごみ、その他ごみ、乾電池)を試行
S60.4 ごみの 3 種分別収集を本格的に開始、有機物供給センター稼動
S62. ごみの 6 種分別モデル地区を設置
S63.7 ごみの 6 種分別収集を本格的に開始(生ごみ、固形燃料ごみ、
一般ごみ、空き缶、空きびん、乾電池)
農業廃棄物処理施設稼動
御料埋立処分場開始
H1.12 一般廃棄物処理施設(焼却施設 2 基)稼動
H3.3 夏期間(5~11 月)農家地区のごみ収集を開始
有機物供給センター増設
H5.4 廃棄物処理条例(改正)施行「家庭ごみ」、「事業所ごみ」に
区分ごみの一部有料化(粗大ごみ、多量ごみ、事業系焼却ごみ)
H6.6 農家地区のごみ収集を通年とする(一般ごみ、固形燃料ごみ月 2 回)
富丘埋立処分場使用開始
H9.4 空きびんの共同処理開始
H9.12 富良野生活圏一般廃棄物広域分担処理検討協議会の設置
H12.6 ペットボトル分別収集開始(共同)
H13.1 プラスチック類分別収集開始(共同)
H13.10 14 種分別収集開始
H14.3 固形燃料化施設設備更新
H14.12 衛生等ごみ広域共同処理開始(上富)
H15.4 空きびん、プラスチック、ペットボトルを資源回収センター(中富)
で広域共同処理開始
環境衛生センターに生ごみ搬入開始
H16.4 動物死体の広域共同処理開始(南富)
H16.11 農村地区生ごみ収集開始(冬期間)
H19.4 プラスチック類の分別区分を変更
H20.9 レジ袋有料化
この基本理念は、資源リサイクルシステムと廃棄物の適正処理体制の確立に
より、限りある資源の有効利用と身近な生活環境の保全及び公衆衛生の向上と
合わせて、廃棄物の排出量の削減を図るとしている。
昭和 59 年までは、ごみの全量を埋め立てていたが、ごみの分別収集を始めた
昭和 60 年のごみ資源化率は 27%、ごみリサイクルの取り組み(平成 13 年)後の
平成 14 年 90.3%と確実に成果を出している。
生ごみは分別して堆肥として、富良野市の基幹産業である広大な農地の肥料
として利用している。
○主な質疑
Q1. 資源化されたもので市内販売できないものは、業者が引き取っているの
か?
A. それぞれの業者が引き取っている。
Q2.ごみ収集は委託か。それとも直営か?
A. 収集も中間処理もすべて委託で行っている。平成 19 年までは直営でやっ
てきたので、そのノウハウを生かして業務委託を行っている。
Q3.収集業者は複数に委託しているのか?
A. 目的によって取集するため、収集業者が組合を作っている。市はその組合
に委託している。
Q4.ごみ袋の有料化を伊勢原市でも検討してきたが、なかなか実現していない。
袋はどのように購入するのか?
A. コンビニや一般の商店で販売している。開始当初は一般家庭によく出る袋
を無償配布していたが、家庭によってごみの量や種類も違うので配布量を
減らしてきた。ごみの袋の価格は、生ごみ袋は 30 円だが、その他の袋は
15∼16 円であるので、袋の価格は一般の市で行っている価格よりは、か
なり低い価格に設定している。北海道でのごみ袋の有料化は、約 9 割が実
施している。富良野市では袋の有料化より、分別をきちんとしてもらう方
を優先に考えているので、そのことにより分別処理の経費やごみ総量の減
量化による効果の事を考えれば、ごみ袋価格はこの程度でいいと考えてい
る。
Q5.リサイクル率が高いことに大変驚いている。これを導いた最大の原因は何
か?
A. 焼却炉の問題が出た時に、新たに焼却炉を作らなかったことである。焼却
によらない方法論を考え実施した結果、リサイクル率が高くなったわけで
ある。それには当時の市長の考え方がある。市長は焼却場や処分場を建て
てくれなかった。そのため、その対応をみんなで知恵を絞った結果がこう
なったわけである。
Q6.生ごみを堆肥化する際に、生ごみに含まれる塩分が作物に影響するのでは
ないかと考えるが、その点はどうしているのか?
A. その点はよく話に出ますが、使い方によって問題になる事もあるが、畑に
使う分には問題とならない。塩分は 1%前後入っているが畑に堆肥を散布
した後、ひと雨降ればほとんどが流れてしまい問題となっていない。ただ
し、ハウス栽培の場合はずーっと入れて、濃縮するような使い方をすると
影響が出る可能性はある。富良野市では間違いなく使っていただくために、
堆肥の成分と使い方、使う量、使う時期を薬と同じように処方箋を作って
いる。そこには間違って使った場合の注意事項も記載している。また土壌
の成分分析をするようお勧めしており、使用すべきかの判断をどのように
するかも示している。これらにより販売後の塩分による問題は、現在まで
発生していない。
Q7. 1 ㎥あたり 1,000 円との話だったが、それは一般の肥料と比べて安いの
か?
A. かなり安い。1 袋 10ℓ で 100 円というのもあるが、これもかなり安い。
Q8. 堆肥化は専用の施設内で行っているのか?
A. 専用施設内で 2 段階の行程で行っている。全体で 12 日間かかる。
Q9.
堆肥は顆粒状か?匂いはどうか?
A. 出てくるときは水分がかなり飛んだ乾燥した状態になっている。粉末で
はないが、木の粉砕した状態で出てくる。匂いはない。
Q10.環境衛生センターで処理する経費はどのくらい必要なのか?
A. 約 240,000 千円である。これには建設コストも乗っているので、かなり
の高額となっている。維持管理のみにすると 6,000 万円ぐらいである。
Q11.リサイクルを成功させる秘訣は、分別をどれだけ徹底するかのように思
ったが、それを成功させたのはどういうやり方か?
A.
富良野市では分別収集をやってから 30 年になる。この期間事あるごと
に、分別を自治会に協力していただき徹底してきた。その事が唯一の方
法と思う。
Q12. 5 市町村の歩調はあっているのか?
A. 全体としてはまだあっていない所もあるが、富良野がリードして歩調を
合わせるように進めている。日常的に出てくるものはだいぶあってきて
いる。その種類が増えるように各自治体とは連携を強化したい。
Q13.紙おむつも分別収集しておられ、また、それを固形燃料化されていると
のことだが、実効性を検討中ということか。紙おむつは、紙と高分子ポ
リマーで出来ていると思うが、どうやって固形燃料化するのか?
A. まだ試験を実施している。ほぼ技術的には何とか実現できるところまで
来ている。基本的にはそれを細かくして乾燥させる。そうすると紙部分
はフワフワなプラスチックの状態になる。また、高分子ポリマーは乾燥
させると粉状態になる。それを固形燃料ごみと合わせて燃料化する。紙
おむつ自体は燃料的に考えると良質の紙やプラスチックであり、木質よ
りも若干高い発熱量を持っているので、異物もそう多くはないので水分
さえ取れれば燃料化できる。ただし、高分子ポリマーは水分をできるだ
け離さない物質であるため、水分を蒸発させるためにはそれなりのエネ
ルギーを使用する。その分はかかるのだが、焼却処分するためには油を
使用するのであれば後に固形燃料が残った方が良いのではないかと考え
ている。
Q14.コストはそれなりにかかるのですか?
A. 確かにかかります。ただ、焼却処理もこの辺りでは 100t焼却炉で行って
おり、実施する際には 50t分しか燃やしておらず、稼働率が悪くそのコ
ストはかなりのものになっている。おまけに大きな施設で実施するので、
メンテナンスや管理費は莫大な経費が掛かることを考えれば、衛生用品
だけを小型の設備で処理している方が、メンテナンス費や管理費も安く
済むことになる。さらに、リサイクル品を燃料として活用できれば全体
のコストの削減となり、寒冷地の北海道にとってはこのうえない産物と
言える。
Q15.固形燃料になったその燃料は、普通の石炭ストーブでも使用できるのか?
A. 基本的にはボイラー燃料に使用している。専用のボイラーで温水や蒸気
などを家の中に回して使用している。
Q16.北海道内の製紙会社へそういった固形燃料を卸している都市もあったよ
うに記憶しているが、そういったことは行っているのか?
A. ほとんどが電力会社や製紙会社へ持って行っている。どちらかというと
引き取ってもらうという方が正しいと思う。北海道ではそういった企業
に引き取ってもらうということが多いが、富良野市では、そうではなく
積極的に地域で活用するということでやってきている。ボイラーも過去
ダイオキシンの問題などもあったため、その辺の対策のきちんとしたも
のが出ているので、それらについて、ボイラーの燃焼試験も始めている。
バフフィルターをきちんと設置して行おうとと計画している。そういっ
た施設での暖房が可能になれば、固形燃料も見直しされることになると
思う。
Q17.ボイラーの燃焼試験は自治体で行っているのか?
A. 北海道総合研究機構という工業試験場とかがすべて入った機構と 5 ヵ年
の共同研修を行っており、地域のエネルギー自給モデルを構築しようと
やっている。当然電気や石油とかも必要ではあるので、それをうまく、
少しでも減らすように努力している。それらには民間も加わり、ノウハ
ウを入れて研究を進めている。これは道総研の業務として行っている。
Q18.それらを実施することを決めたということがすごいと思う。議会と執行
者が良い関係にあるように思うがどうか?
A. リサイクルの問題は議会としても拒むものは何もなかった。ただ市民側
にどうやってご理解いただくかは工夫したところである。また子供たち
にごみ分別やリサイクルの事を学校で学ばせるため、副読本を作り活用
した。子どもたちが「お母さん、それそこじゃないよ」って言うとこれ
は効果覿面。家庭内の分別普及に絶大な力を発揮したと考えている。こ
ういった分別がきちっとできているということが、後に出てきた紙おむ
つのリサイクルにも、異物が入っていないからすぐに使えると、施設を
見学した際に係員が解説していた。やはりそれらがきちんとできている
ということは、将来のことを考えても何をやるにも大事な基本となると
改めて感じたことがあった。
○所感
伊勢原市は、ごみの焼却処分を原則としているが、
「伊勢原市一般廃棄物(ご
み)処理基本計画」を策定し、ごみの減量や資源化を推進し、焼却処理量の低
減化と最終処分場の延命化を図ることにより、自然と調和した快適で安全な環
境のもと、
「リサイクル社会の実現」を目標とし、市民・事業者・行政の協働に
よるごみの排出抑制や資源化の取り組みを推進することを基本に定めた。市民
一人あたりのごみの排出量は、平成 14 年の 1,039g/日から平成 22 年の 912g/日
と徐々に下がってきているが、ごみの排出量は、景気動向にも左右され、その
取り組みを確実に実行していかなければならない。
秦野クリーンセンターと共に運用している伊勢原クリーンセンター90t 炉は、
老朽化しており、現在、秦野、伊勢原両市で出るごみ量は、90t 炉を廃炉にした
場合、新クリーンセンター単独では対応できない量のごみが出ている事実もあ
る。
富良野市のような、生ごみを堆肥としての利活用は、産業構造が違うので同
じようには出来ないが、資源リサイクルの取り組みを一層進めて、また市民に
一層の理解を深めてもらい、環境に負荷をかけない循環型社会の形成を推し進
める必要がある。
そのためにも、幼少期の環境教育を含めて、子供から大人、企業も含め自ら
のより一層の努力が必要である。
富良野市役所前
庁舎内で説明を受けている様子
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