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英作文を通して見た中学生の英語の発達 - SUCRA

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英作文を通して見た中学生の英語の発達 - SUCRA
埼玉大学紀要
教育学部,57(
2
):1
71
-1
81(
200
8)
英作文を通 して見た中学生の英語の発達
及川
賢 *・ 三 富 美 悠 紀 *
*・新 井
智久 *
*・囲 井
あゆ*
*・横 須 賀
功*
*
キーワー ド :英語教 育、英語力 、発 達
1
.研究の背景
が所属 している東京学芸大学附属世田谷中学校
で収集 していた生徒のさまざまなデータを語嚢、
英語授業の改善は英語教師の大 きな責務のひ
文法、会話等の観点か ら分析 したものである。
とつであ り、 また、英語教育に携わる者すべて
語桑習得 に関する生徒の実態やい くつかの文法
に課せ られた仕事で もある。 この 日的達成のた
項 目の習得状況 を綿密に調べた上で、 2年生の
め、学校現場 をは じめ、学会や研究会などさま
後半に英語力に差が出て くる可能性があると論
ざまな機会 を通 して授業アイデ ィアが発表 され、
じている。
伝達 されている。 しか し、新たな指導技術や教
小泉 ・山内 (
2
0
0
3
) は中学生 にモノローグ形
材の開発 において、学習者の実態 を知ることが
式のス ピーキ ングタス クを異 なる時期 に課 し
必須ではあるが、多 くの場合、勘や経験のみに
頼っているのが実態ではなかろうか。 もちろん、
(
合計 2回)、11の指標でその変化 を観察 した。
その結果、 1回目である 2年生期 と 2回 目であ
勘や経験 を非科学的 と排除 しているわけではな
る 3年生期の間には語嚢 と流暢 さに伸 びが見 ら
い。む しろ積極的に利用すべ きものであるが、
れ た と報告 してい る。 また、 リスニ ング ・ス
それ らのみに頼 るのではな く、何 らかの客観的
ピーキ ング能力の分析結果か ら 「
ス ピーキング
データを補完 して事 を進めるべ きであろう。学
能力の発達過程には段階があ り、最初に語嚢 ・
習者の実態、すなわち 「
いまどのような状態か」
流暢 さを伸ば し、後 に複雑 さが加わるという過
を正確 に把握す るこ とが、指導法、す なわち
程があるのか もしれない」 とい う推測 を加 えて
「
次に何 をすべ きか」 を考える上での大前提で
いる。
あろう。
Ta
ki
guc
hi(
2
0
0
3
) は1
7
名 の中学生 を対象 に
本研究のテーマである英語力の発達は英語学
ス ピーキ ングカ を調査 し、その結果、「
対象生
習 ・教授の研究に関わる中心的テーマであるが、
徒たちはス ピーキ ング能力発達 において、当初
近年、スピーキ ングの分野を中心 に、研究報告
主に発話の量的側面 (
発話量 :(
中略)
)の上昇
が増えつつある。
を獲得 し、その後主に発話の質的側面 (
ここで
中学生の英語力発達の過程 を広範囲に記述 し
は統語的複雑 さ) を変化 させていった」 と結論
た ものに太田他 (
2
0
0
3
)がある。 これは著者 ら
付 けている。それを受けて生徒めスピーキ ング
カ を検証 した瀧 口 (
2
0
0
4
)では、語数や節数 な
事 埼玉大学教育学部英語教育講座
‥ 埼玉大学教育学研究科大学院生
e
nC
yや 1ユ ニ ッ ト内の単語 数 な どの
どの ml
c
o
mpl
e
xi
t
yは上昇 したが、エ ラーの割合 な ど
-1
71-
のa
c
c
ur
a
c
yは上昇が確認 されなか った。 しか
では、ライティングのデータを通 して、学習者
し、生徒の発話 をさらに詳 しく調べたところ、
の英語力発達過程 を明 らかにするためのデータ
1、 2年生時は教科書に出て くる表現等 を定型
を提供することを目的 とする。
句 としてそのまま使 っていたのに対 し、 3年生
になって くると、それを利用 し、 自らの力で英
2
.調査
文を作 り出そ うとするため、エラーが発生 して
J、
ることが明 らかになった。 この点か らも、正
2
.1.日的
確 さの上昇にはある程度の期間が必要であるこ
とが十分推測で きる。
本調査の 目的は、中学生の英語力が学年に応
じて どのように発達 ・変化するのかを、英作文
これ らの研究結果か ら、中学生のスピーキン
を通 じて検証することである。 また、その結果
グ能力において、 まず語桑などの発話量が増え、
が、 これまでのス ピーキ ング研究の結果 とどの
次に複雑 さや正確 さが上昇 してい くという段階
程度類似性があるのか も併せて検証する。
を踏んでいる可能性が指摘で きよう。
一方、ライティングを通 して学習者の英語力
2
.2
.被験者
の発達 を検証 した ものはか な り限定 される。
3
0
名 (1年生 :
4
4
教育学部附属中学校の生徒 1
I
s
hi
ka
wa(
2
0
0
5
)は ラ イテ ィ ングの熟 達 度 を
名、 2年生 :
4
3
名、 3年生 :
4
3
名)。英語力 は全
扱った研究ではあるが、発達指標その ものの検
体的に高い と推測 される。データを収集 した時
証が 目的である。太田他 (
2
0
0
3
)は基本的にはス
期は、 1、 2年生が 3学期初旬、 3年生が 2学
ピーキングデータを扱 っているが、文法の分析
期の未である。
においてはスピーチの原稿 を使用 してお り、あ
る意味では、 これはライティングデータといえ
2
.3
.研究素材
る。分析か ら、接続詞、代名詞、WH疑問文の
使用状況などにおー
いて、学習段階や英語力の違
いによる変化が見 られると報告 されている。
被験者には指示の入った用紙が 1枚渡 された。
そこには 「
あなたの周 りの人 (
友達、家族、先
生など)か ら一人選び、その人の事について英
英語力の発達研究でライティングがモー ドと
語 で書 いて くだ さい。あなたの知 っているス
して選択 されない理由は、ライティングの場合、
ポーツ選手や芸能人、歴史上の人物などの有名
学習者のモニターカが働 くか らではないだろう
人についてで も構 いません (
後略)
」とある。1
0
か。 これは Kr
a
s
he
nの a
c
qui
s
i
t
i
o
n/l
e
a
r
ni
ngの
分間の制限時間の中には、書 く内容を考える時
発想で、a
c
qui
r
eされた もののみが真 の英語力
間や実際に書 く時間も含 まれている。 このテー
である、 という考え方が根底 にあると思われる。
マを選んだ理由は、短時間で p
l
a
nni
ngを行い、
o
mmuni
c
a
t
i
o
ns
t
r
a
t
e
gyの研究等か ら、
しか し、c
また、実際に書かなければならないため、で き
自身の発話 をモニターする力 も言語の力のひと
るだけ書 きやすい と思われる題材 を選んだ。辞
つ とされている上、事実、小泉 ・
山内 (
2
0
0
3
)の
書の使用 は認めていない。 また、英語がわか ら
ス ピーキングの調査で も 「自己訂正の割合」 を
ない部分は 「
Hel
i
ke
s体育 ve
r
ymuc
h.
」のよう
指標のひとつに設けている。
に日本語 を使用 しても構 わない。
また、 ライティングはスピーキングに比べ、
データ収集が比較的容易であるという事実 も見
2.4.分析の観点
逃せない。 より多 くのサ ンプルを扱 うことで、
文献調査 で挙 げたス ピーキ ング研 究や ライ
学習者の英語力発達過程が より明 らかになる可
ティング研究で採用 されている分析観点を概観
能性 も十分にあると言えよう。そこで、本研究
し、「
総語数」「(
英語の)正確 さ」「(
英語の)複
-1
7
2-
雑 さ」および Tuni
t関連の 「
その他」を観点 と
2
.4
.2
.正確 さ
して設けた。以下に詳 しく説明する。
正確 さの検証においては、エラーを考慮に入
2
.4.1.総語数
1
0
0
れることが必須条件である。本研究では、「
ス ピーキ ングの研 究では、f
lue
nc
yをひ とつ
語あた りのエラーの数」で分析 を行った。エラー
の観点に挙げ、具体的には総語数で表 している
の同定においては、調査者 1名がエラーを判別
03
)。ライティ
ことがある (
例:
小泉 ・山内、20
し、別の調査者 1名がチェックを行 うという方
ングで も、例 えば夏苅 (
2
0
06
)が分析 において
式を用いた。チェック者が疑義 を感 じた部分は
ml
e
nC
yを観点 として挙 げ、具体 的 には捻語数
両者による話 し合いで判定 を行った。
で表 している。 しか し、 ライティングで総語数
一般 にエ ラーは gl
o
ba
le
r
r
orとl
oc
a
le
r
r
o
rに
lue
nc
yとす るには問題がある。ス ピーキ ン
をf
大別 されるが、本研究において もこの点を考慮
a
nni
ngの時間 と実際 に話す時 間
グの場合、pl
し、全エラーをカウン トする場合 とgl
o
ba
le
r
r
o
r
が分けられている場合が多いが、ライティング
のみをカウン トする場合の 2パ ター ンで行った。
の場合必ず しもそうではない。 また、 もし分け
両者の識別基準 は 「
読み手に意味が通 じる範囲
たとして も、実際に書 く段階になって、被験者
か否か」 とした。 また、本研究では、被験者が
が 途 中 で 筆 を 止 め て 考 え た・
りす る こ と
日本語 を使用することが認め られているが、そ
(
-pl
a
nni
ng)を禁止す る こ とは難 しい。 ライ
のうち、カタカナで、なおかつ音が比較的原音
nc
yを測 るのであれば、
ティングにおける且ue
oc
a
le
r
r
o
rに、漢字
に近いと判断されるものは l
実際に書いている様子 を観察する必要がある。
やひらがななどで書かれていて、 日本語 を知 ら
さらに言えば、これは作業の 且ue
nc
yであ り、
ない英語 na
t
i
ves
pea
ke
rが判 断で きない もの
yではない。この 且ue
nc
y
書かれた ものの 且uenc
は gl
oba
le
r
r
o
rとした。なお、正確 さの分析 に
も、稔語数のみで判断するのは危険であろう。
おいては、被験者の半数をランダムに選 らんで、
1
99
9
、大修館書店)によ
『
英語教育用語辞典』(
その対象 とした。
lue
nc
yは 「目標言語 を話 した り、幸いた
る とf
2
.4.3
.複雑 さ
りする際の滑 らかさ、流暢 さ、および機能的な
より複雑な文を書けるようになることは、英
適切 さ」 と定義 しているが、明確 な定義 とは言
語力の上昇を示すひとつの指標 とな りうる。そ
い難い。 また、音声言語の例はい くつか挙げて
こで、本研究では、以下の 3つを採用する。
いるが、 ライティング等の文字言語については
O Tuni
tあた りの平均語数
触れていない。
○ 従属節の数
01
0
0
語あた りの従属節の数
これ らの点 を踏 まえる と、且ue
nc
yとい う用
.
語をライティングにおいて採用することには、
Tuni
t
はHunt(
1
9
7
0)の概念で ライテ ィング
まだ議論の余地があると考えられ、本論ではよ
の分析 で頻繁 に使用 され る単位 で あ る。「
T-
り定義が明確 な 「
総語数」 を用いることにした。
uni
t
あた りの平均語数」が増 えるということは、
0分間という同
今回の調査では、被験者全員が1
単語間の修飾関係が より複雑 になる可能性があ
じ時間で作文 を書いているので、総語数が多い
るo例 えば、Weha
veadog.
よ りもWeha
vea
被験者ほどより速 く書 くことがで き、ひいては、
t
eの分だけ語数が増 え
whi
t
edog.のほうが whi
より多 くの情報 を伝 えることがで きるといえる。
ているが、dogにwhi
t
eが加 え られ、修飾関係
実際のカウン トでは、各作文の英語部分のみを
がひとつ増 えていることになる。 もちろん、語
対象 とした。すなわち、 日本語部分はすべて対
数の増減がそのまま複雑性 に直結するわけでは
象外 となっている。
ないが、 1つの資料 として分析する価値 は十分
にあるものと思われる。
-1
7
3-
「100語あた りの従属節の数」や 「
従属節の数」
たが、「
分散が不均一」 との判定が出たため、
な ど、従 属 節 を使 用 した指 標 は小 泉 ・山 内
Kr
us
ka
l
Wa
l
l
i
sの順位検定 (
以下 「
KW検定」)
(
2003)で も採用 されている。従属節のある文
を採用 した。その結果 (
表 1)、項 目間に有意
はより複雑であると考えられるため、指標 とし
差が認め られた (
危険率 :5%)。
て有 効 で あ る と考 え られ る。本研 究 で は、
表 1 :総語琴の平均の差 (
KW検定)
be
c
a
us
e
、whe
n、i
fの 3つを分析の対象 とした。
ただ し、使用法を間違っていると思われるも'
の
N
平均
S.
D.
(
今 回は 1例 のみ)は除外 した。なお、被験者
のなか には be
c
a
us
e節 を独立 させ て使用 して
1年生
44
2年生
3
47
.
ll
9
23
.
1
7
43
36
.
3
4
7
2
43
3
7
2
8
8.
66
5
年生
いる者が多かったが、今回は、意味が通 じる範
囲であれば、使用 したもの としてカウン トした。
「百高
P度
0
.
2
00
'
'
2
.4
.5
.その他
小泉 ・山内 (
2003) などい くつかのスピーキ
ング調査 や ライテ ィング調査 で、Tuni
tとエ
Wh
2
i
t
項
n 目間 の差 異 を検 定 す る た め に Ma
nn-
ラーの両者 を考慮 に入れた分析観点を用いてい
、
以下の結果を得
られた
(
危険率
:5%)
0
ろ(
表2
)
検定
(
以下 「
MW
検定」)
を行ったとこ
e
y
る。エ ラーが 1つ もない e
r
r
o
r
血e
eTuni
tが使
表 2 :項 目間の差異 (
M
用 されることが多いが、エラーが入っているT-
uni
t
はエ ラーが 1つで も 2つ以上で も同 じもの
として扱 われるため、安定 した指標 とは言い切
れない。 しか し、正確 さの簡便 な指標 として役
立っていることは事実である。そこで、本研究
で も、以下の 2つ を用いることとした
ラー」の場合 と
W模定)で
すなわち、各学年間の関係 を不等号
(
「
全エ
「
Gのみ」があるので、実際 に
は 4つ)。
「1年生か
年生 <ら
22
年生
年生の間に稔語数が増
- 3年生」で、換 言す
え、
る
2年
表す
と
生か ら 3年生の間は有意
O Er
r
o
r
re
f
eTuni
t
の数
○ 全 Tuni
t数 に対 す るEr
r
o
r
re
f
eTuni
t数
の割合
なお、上記 2種類 (4つ)の分析では、「
正確
さ」と同一の被験者 (
全体の半分)を対象 とした。
2
.5
.調査方法について
本来であれば、 1つの集団を 3年間かけて追
跡調査を してゆ くべ きだが、本研究においては、
同時期 に 1年生- 3年生のデータを収集 ・分析
することで、英語力の変化 を見 ることとした。
3
.2
.正
な変化がない」 となる。
確0
さ
3.2.1.1
0語あたりのエラーの数
ラーを
(
全てのエ
2項 目間の差異 を検 定す るため にMW検定
を行 った ところ (
表 4)、以下の結果 を得 られた
(
危険率 :5%)。
3.3
.複雑
1
.Tさ
u
学年 ごとの平均の差
mi
t
あた りの平均語数
を
表 4:項 目間の差異
た ところ (
表 7)、項 目間
一元分散分析 で検定 し
(
MW検定)
た(
危険率 :5%)0
に有意差が認 め られ
表 7 :T
u
n
i
t
あた りの平均語数 (
分
1年生
すなわち、学年間の関係 を
「1年生 < 2年生 < 3年生」(
不等号で表す
エ ラーが少 と、
ほうを 「
値が大 きい」 とみなす) と
すると 「1年生 、
ない
平均
N
S.
D.
自由度
2年生
散分析)
3年生
4
2
.
2
23
22
1.
40
5.
38
5.
82
24
6
0.
92
1
.
27
な り、換言
2年生 、 3年生の順 にエ ラー
数が有意 に減少
2項l
目間の差異
P
に関す
0.
0
0 る
6
あた りのエラーの数
となる。
3
.2
.2
.1
0
0
語している」
(
g
l
o
ba
le
r
r
o
r
のみ、以下
**
「
G
のみ」
)
学年 ごとの平
表 8 :項 目間の差異
である (
表 8)。
検定結果 は以下の通 り
たが、「
分散が不
均の差 を一元分散分析 で検定 し
KW検 定 を採用 均一」 との判定が 出たため、
した。その結果
表5
間に有意差が認め
られた (
危険率 (
:5
%)
)
、項 目
表 5 :1
00
語 あた りのエラーの数 (
Gのみ)(
KI
検定)
W。
1年生
2年生
N
平均
S.
D.
22
8.
68
23
自由度
.
35
2項 目間の
P
4
3年生
22
5.
31
1
.
90
4.
13
3.
87
0.
㌻
00
「'
'
を行 った ところ
(
表を検 定す るため にMW検 定
差異
(
危険率 :5%)
6)、以下の結果 を得 られた
0目間の差異
表 6:項
(
M1
Ⅳ検定)
す なわち、学年 間
2項 目間の差異 を検定す るため にMW検定
を行ったところ (
表1
0
)
、以下の結果を得 られた
(
危険率 :5%)0
表1
0:項 目間の差異
(
MW検定)
すなわち、学年間の関係 を
と、
「1年生 < 2年生 -3年生」不等号で表す
とな り、換言する
と 「1年生か ら 2年生の間に従属節の数が
るが、 2年生か ら 3年生の間は有意な変化がな
増え
3. 3
.3. 1
00語あ
い」
となる。
従属節 を単純に数だけで比較
たりの従属節の割合
あた りの
すると、一作文
語数に影響 される可能性があるので、
1
0
0
語あた
の平均の差りの平均で比較
を
を行った。学年 ごと
散が不均
一元分散分析 で検定 したが、「
分
一」 との判定が出たため
採用 した。その結果
W検定を
(
衣ll
)、 、Kが認め
項 目間に有意差
表1
:5%)0 (
られた
(
危険率
1
:1
0
0
語 あた
りの従属節の割合
KW検定)
1年生
N
44
平均
S.
D.
8.
6
7
自由度
P
0
.
33
0
.
0
2
02
'
'
2
4
年生
3
34
年生
3
87
.
37
89
.
89
1
.
25
1
.
35
「
平均」は
%で
表
示検
2項 目間の差異 を検定す るため に
MW
を行ったところ(
表1
2
)
、以下の結果を得 ら 定
(
危険率 :
れた
すなわ 表 1
5
2
%)
:項0
目間の差異 (
MW模定)
学年間の関係
と「1
年生 < 2ち、
年生
- 3年生」 を不等号で表す
とな り、
1
行った。一元分散分析 を行 ったところ (
表15)、
項 目間に有意差が確認 された (
危険率 :5%)0
表
1
8:項 目
8
)0
表1
5:Er
r
o
r
f
r
e
eTun
i
t
の数 (
Gのみ)(
分散分析)
N
平均
S.
D.
自由度
P
1年生
2
2
2年生
3
年生
7
.
6
4
4
.
3
5
2
3
1
0
.
7
8
4.
1
3
2
2
1
0
.
8
6
3
.
8
7
間の差異
す なわち、学年 間の関係
を不等号
で表す と
「1年生 <2年生 -3年生」 とな り、換
と 「1年生か ら 2年生の間に正確 なTu言する
0
.
6
0
6
1
6
'
合が増 えるが、 2年生か ら 3年生の間に有
の割
ni
t
2項 目間の差異に関す る
りである (
表 16)0
検定結果は以下の通
表1
6
す
3
.4.4.全 T変化はない」
となる。
意な
u
ni
t数に対するErrorf
reeTuni
t
同様の分析
数の割合
を、エ
(
Gのみ)
ラーが gl
obaler
:項 目間の差異
なわち、学年
間の関係
で表す と
「1年生
<2年生 -3
年生」を不等号
とな り、換言す
と 「1年生か ら 2年生の間に正確 なTuni
t る
が増えるが、 2年
化はない」 と
の数
生か ら 3年生の間は有意な変
3.4.3. 全 なる。
Tuni
t数に
対する ErrorreeTf
uni
t数の
割合
(
全エラー)
Er
r
or
f
r
eeTu
n
被験者のほうが多 くなるので、割合
の数だけでは、語数の多い
を指標
i
t
散分析
て、検証
まず、全てのエラーを考慮に入れて、一元分
を行った。
にし
を行
った ところ (
表17)、
表1
:5
%)0
差が確認
された
(
危険率
項 目間で有意
7:
全Tu
m
i
t数に対する
Er
r
orf
(
全 エラー)(
分散分析)
i
t数の割合
re
eTu
n
1
平均
N
S.
D.
3
4
年生
2
.
2
9
5
0
.
21
自由
P度
0
6
.
0
6
0
*
5
2
.
83
2
年生
2
3
0
.
2
1
6
1
.
46
3
年生
2
2
0
ユ7
「
平均」は%で表示
りである (
表
4
.考察
上記の検定結果に考察 を加 えてみたい。 まず
、
稔語数だが、検定 を通 して 「1年生か ら 2年
生の間に稔語数が増 え、 2年生か ら 3年生の間
は有意 な変化がない」 (1年生 <2年生 -3年
坐) とい う結果が得 られた。 1年後半か ら 2年
生後半の間に一定時間内に書ける英語の量が有
意に増大する可能性があるということが示 され
た。 これはい くつかのス ピーキ ング研究の調査
結果 と通 じるところがある。
正確 さは 「
1
00語 あた りのエ ラーの数」で検
定が行われたが、エラー全てを考慮する場合は
「1年生、 2年生 、 3年生の順 にエラー数が有
「1年生 <2年生 <3年生
意に減少 している」 (
(
エラーが少ないほうを 「
値が大 きい」 とみな
している)
」
)ことが、一方gl
o
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r
r
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rのみを考
慮 に入 れ る場合 は 「1年生 と 2年生 の間にエ
ラーは減少 しないが、 3年生 になる と減少す
(
「1年生 -2年生 <3年生 (
エ ラーが少な
る」
■
いほうを 「
値が大 きい」 とみなしている)」) と
いう点が明 らかになった。「
全エラー」はgl
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rとl
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rの合計か ら成っているので、
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oc
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r
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rのみの変化 を算出 してみると、以下
の通 りとなった (
表21、危険率 :5%)0
表2
1:100語 あたりのエラーの数
(
分散分析)
N
平均
S,
D.
1年生
2
2
2年生
3
年生
ll
.
0
4
2
3
6
5
1
3
.
7
9
2
2
6
.
3
7
6
.
4
3
4
.
7
9
自
由度
P
(
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le
r
r
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r
のみ)
・0
.
6
0
6
0
4
+
2項 目間の差異 に関す る
りである (
表22)。
検定結果は以下の通
1年生か ら 2年生の間により正確 な英語が より
附属中学校の生徒が書いた英作文を対象 にした
多 く書けるようになっているということを表 し
が、全体的に英語の レベルが高 く、 日本の平均
ている。
的な中学生像 とは必ず しも一致 しない可能性が
上記の結果を以下のようにまとめることがで
きる。
ある。調査者が読んで意味がわか らない という
英文はほとんどな く、それゆえ、g
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r
o
r
は
ほ とん どが 日本語 でかかれた部分 になって し
「
1年生か ら2年生にかけての時期 に、単位時
まった。同一の生徒の伸びを比較するため、今
間内に書 ける英語の量が増 え、l
o
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r
o
rは減
後 も引 き続 きご協力 をお願い してゆ く所存であ
少 し、複雑な構文を用いることがで きるように
るが、同時に、他の中学生のデータも収集 し、
なる。 2年生か ら 3年生 にかけての時期 は、
より多 くの中学生の実態 を明 らかにしてゆきた
g
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r
o
rが減少 し、正確 さが よ り確かな も
い。
のになる」
次に、 日本語使用の問題点である。 日本語 を
使用することで、被験者が言いた くて も言えな
この結果は、「
量の変化が先行 し、続いて質の
かった部分が明 らかになるという利点 を得 られ
変化が起 きる」 とい うスピーキング研究結果の
たが、同時に、分析 において、これ らをエラー
一部 と通 じるものがあるが、今後 もさらに詳細
として扱ってよいか という問題 もあった。特 に、
な調査 を重ねて、中学生の英語発達過程 を明 ら
上で も述べたように、今回g
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r
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rとして分
かに してゆ く必要がある。
類 されたものはほとん どが 日本語で書かれた部
分であったことを考 えると、 日本語 を許可する
5
.指導 への提案
ことの意義について も再考察が必要 となるであ
ろう。
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まず、量 と複 雑 さが 上 昇 し、同 時 に l
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rが減少 して、その後、g
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rの減少
謝
により、正確 さが上昇するという傾向が観察 さ
辞
れたが、ここか ら、以下の点が指導手順が可能
データ収集において、教育学部附属中学校英
ではないだろうか。 まず、初級段階である 1、
語科の遠藤敵意先生、牛久裕介先生、大沢裕先
2年生は量 を重視 し、 より多 くの英語 を書 くこ
生にお骨折 りをいただいた。記 して謝意を表 し
とを奨励 し、 3年生へむけて徐 々に正確 さを求
た く存 じます。 また、英語専修の学生である清
める指導に切 り替えてゆ く。特 に、定期試験等
水直志君にはデータ入力でお世話になった。同
で英作文 (
和文英訳ではな く自由英作文のよう
じく感謝の意を表 したい。
な形式)を課す場合、 1、 2年生では正確 さよ
りも書いた量に重 きをお く採点基準 を採用 し、
参考文献
3年生に向かい、徐 々に正確 さに重 きを置 く採
点基準に移行する必要があるだろう。
石川智仁 (
2
0
0
5
)「
EFLライティングにおける構造
的複雑さの発達指標と熟達度の関係の検証 :タ
6
.今後 の調査への課題
スクに基づ くアプローチ」
『
大学英語教育学会
紀要 』No
.
41,pp.51
6
0
.
本研究は今後 も継続 してゆ く予定であるが、
太 田洋 ・金谷憲 ・小菅敦子 ・日量滋之 (
2
0
0
3
)『
英
現時点での問題点を整理 し、今後の改善に役立
語力はどのように伸びてゆくか一中学生の英
てたい。第一に被験者についてである。今回は
語習得過程を追う』(
大修館書店)
-1
7
9-
小泉利恵 ・
山内逸美 (
2
0
0
3
)「日本人中学生のス ピー
キ ング能力 の発達 :自己紹介 の タス クを用 い
て」『
関東 甲信越英語教育学会紀要 』Vo
l
.1
7,pp.
33
4
4.
瀧 口均 (
2
0
0
4
) 「日本人EFL中学生のス ピーキ ング
」
」
能力の発達研究 -「
流暢 さ 「
複雑 さ 「
正確 さ」
」
の指標 を用 いて - 『
関東 甲信越英語教育学会
紀要』Vo
l
.1
8,pp.ト1
4
.
Unpubl
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瀧口 (
2
0
0
4)で引用)
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夏苅佐宜 (
2
0
0
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『
昭和女子大学大学院言語教育 ・コミュニ
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ケーシ ョン研究』Vo
l
.
1
,pp.
6
5
7
0
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-1
80-
(
2
0
0
8年 3月31日提 出)
(
2
0
0
8年 4月2
5日受理)
Developmental patterns of English proficiency in the case of
Japanese junior high school students
- seen through their compositions
Ken
OIKAWA.
Ayu
Miyuki MITOMI. Tomohisa
and Isao YOKOSUKA
ARAI.
MARUI
The purpose of the present research is to investigate developmental patterns of English
proficiency of Japanese junior high school students. A writing task was assigned to a group of
students to collect data for the analyses. The results show that whereas there were improvements
between the first year and second year students in terms of 1) amount of vocabulary. 2)
complexity, and 3) amount of local errors, between the second and the third year students. there
was improvement in terms of 4) global errors. Several educational implications are discussed
after the analyses.
-181-
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