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第32回 資料
第32回 2014.10.24 腎嚢胞 単純性腎嚢胞 主に腎皮質に発生する後天性嚢胞であり,尿細管の閉塞に起因する二次性の病変と考えられている. 小児では稀であり,30歳以降加齢とともに頻度が増加し,50歳以降には約50%に認められる.発生頻 度に性差はほとんどない.超音波では内部無エコー,境界明瞭で平滑,後部エコーの増強を示す.CT では内部のCT値がほぼ水に等しく,造影されない境界明瞭な類円形腫瘤である.嚢胞に出血や感染な どを伴った場合,非定型嚢胞(complicated cyst)となる.通常,治療の必要はないが,圧排による病的 所見(水腎症,高血圧など)が認められる場合,手術,穿刺排液,硬化療法などが行われることがある. (外方増殖性) (傍腎盂嚢胞) 腎嚢胞の難しいところ 外⽅増殖性の⼩さい嚢胞は⾒逃しやすい 外方増殖性の小さい腎嚢胞 髄質と嚢胞との鑑別が必要な場合がある medulla 髄質の傍の嚢胞 髄質が嚢胞様に 見える cyst 嚢胞は無エコー 髄質は実質エコーを認める 嚢胞 嚢胞 髄質 髄質 medulla 嚢胞の前壁と後壁のstrong echo medulla medulla 髄質が嚢胞様に描出 髄質が嚢胞様に描出 m m m 髄質・皮質と解剖学的配列になっている 嚢胞であれば後方エコー増強があるはず 弓状脈管が描出されている m m m 髄質と腎嚢胞との鑑別 髄質・皮質と解剖学的配列になっている 嚢胞であれば無エコーで後方エコーの増強が描出されるはず 髄質と腎嚢胞との鑑別 m m m m m 髄質・皮質と解剖学的配列になっている 嚢胞であれば無エコーで後方エコーの増強が描出されるはず 弓状血管 arcuate artery and vein 弓状血管 m 弓状血管 m m CECの背側の嚢胞 CECの背側の嚢胞 CECの背側は音場が乱れるため、まともな超音波が ⼊射されていないので判りづらく⾒逃しやすい 何かがあるようであればCECを避けて 超音波を入射して確認が必要 傍腎盂嚢胞と水腎症との鑑別 水腎症 傍腎盂嚢胞 単純性腎嚢胞と傍腎盂嚢胞 単純性腎嚢胞 傍腎盂嚢胞 単純性腎嚢胞と傍腎盂嚢胞 単純性腎嚢胞 尿細管由来 内容は原尿に近い成分(血清に近い) 傍腎盂嚢胞 内容はリンパ液に近い成分 リンパ管由来 尿細管 構造の単位︓腎葉 機能の単位︓ネフロン(腎⼩体+尿細管) 腎⼩体︓ボウマン嚢+糸球体 構造の単位︓腎葉 機能の単位︓ネフロン(腎⼩体+尿細管) 腎⼩体︓ボウマン嚢+糸球体 腎葉 構造の単位︓腎葉 c m m 腎柱 m 構造の単位︓腎葉 機能の単位︓ネフロン(腎⼩体+尿細管) 腎⼩体︓ボウマン嚢+糸球体 ネフロン(腎⼩体+尿細管) 近位尿細管 遠位尿細管 腎小体 (ボウマン嚢+糸球体) ヘンレのループ 集合管 腎乳頭へ なぜ腎嚢胞はできるのか なぜ腎嚢胞ができるのか 嚢胞とは,液体の入った 嚢(ふくろ)を意味する.腎においては尿細管あるいは糸球体Bowman嚢が拡張して できる.多くの遺伝性の嚢胞性腎疾患の解析から,そのメカニズムが明らかになってきた. 嚢胞腎を起こす原因分子は尿細管細胞の線毛(cilia)に局在する. Ciliaは尿の流れを感知することにより尿細管径を調節する働きをもっており,その機能が破綻すると嚢胞が形成 される. なぜ腎嚢胞ができるのか 著者: 望月俊雄 医学のあゆみ 2006年 腎臓の尿細管上⽪細胞の⼀次繊⽑に異常が⽣じると、 尿細管が拡張して嚢胞が形成される 一次繊毛 非遺伝的要因による増大 常染色体優性遺伝におけるのう胞の形成 嚢胞液の分泌 病態生理学的仕分け 細胞増殖 遺伝子変異 ネフロン 尿細管 常染色体優性遺伝におけるのう胞の形成 非遺伝的要因による増大 嚢胞ができるためには、ふだんより尿細管で細胞が増え、 内腔に液がたまって水膨れになることが必要 尿細管との交通がなくなり、1つの袋になる 嚢胞液の分泌 病態生理学的仕分け 細胞増殖 遺伝子変異 ネフロン 尿細管 嚢胞性腎腫瘤の鑑別 嚢胞性腎腫瘤の鑑別 1)単発性腎嚢胞 • • • • 単純嚢胞 complicated cyst 腎癌の嚢胞変性 感染性嚢胞(膿瘍) 2)多発性腎嚢胞 • • 多嚢胞腎(先天性、後天性) 系統疾患で合併する多発嚢胞 3)多房性腎嚢胞 • • • • • 嚢胞型腎細胞癌 隔壁を有する単純嚢胞 腎膿瘍 multilocular cystic nephroma :MLCN (多房性嚢胞腎腫) その他、限局性の多嚢胞性異形成 4)嚢胞性病変と鑑別が問題となる疾患 • • 腎杯憩室内 水腎症 泌尿器画像診断update 臨床画像 vol.25 No11,2009 腎嚢胞性疾患 1.遺伝性嚢胞性腎疾患 腎嚢胞を主体とする疾患 ・常染色体優性(多発性)嚢胞腎 ・常染色体劣性(多発性)嚢胞腎 2.非遺伝性嚢胞性腎疾患 先天性腎嚢胞 ・多嚢腎(多嚢胞性異形成腎) ・多房性腎嚢胞(multilobular renal cyst) ・海綿腎 腎嚢胞をともなう疾患 ・結節性硬化症 ・von Hippel-Lindau病 先天性?/後天性? ・単純性腎嚢胞 ・傍腎盂嚢胞 後天性 ・後天性嚢胞性腎疾患 ⼩児泌尿器科 ② 尿路の発生とその異常 北海道⽴こども総合医療センター ⼩児泌尿器科 ⻄中⼀幸 ボスニャック 腎嚢胞分類 Bosniak classification - Renal Cysts カテゴリー 1 は単純嚢胞 カテゴリー 2 は薄い隔壁や軽度の壁⽯灰化を伴う場合やCTで⾼濃度を⽰すもので、 半年から 1 年の経過観察が望まれる。 カテゴリー 2F カテゴリー 3 は、嚢胞壁や隔壁が不整あるいは厚く良悪性の判断が困難な病変、 多房性嚢胞が含まれる 疾患としては、嚢胞性腎癌、多房性腎症、出血性嚢胞、感染性嚢胞などがあり カテゴリー 4 は明らかに悪性と考えられる病変で、嚢胞性腎癌であり手術治療が選択される Bosniak classification - Renal Cysts ボスニャック 腎嚢胞分類 カテゴリーI いわゆる単純性腎嚢胞 カテゴリーII 嚢胞の数2つ以下、1mm厚以下の隔壁、薄くて小さな石灰化を伴うもの、 直径3cm以下の造影増強効果のない⾼濃度嚢胞 カテゴリーIIF 明らかなカテゴリーII、IIIとは言いがたく、経過観察を要する非定型的腎嚢胞 カテゴリーIII ⼀様な嚢胞壁の肥厚、結節状構造、粗⼤あるいは不整な辺縁の⽯灰化、 多くの濃染される隔壁あるいは1mm厚以上の隔壁を有する多房性嚢胞 カテゴリーIV 濃染される厚い嚢胞壁や嚢胞壁に大きな結節状構造あるいは充実成分を有するもの •Bosniak 1 cyst – <1% risk of cancer, does not require follow-up •Bosniak 2 cyst – <5% risk of cancer, does not require follow-up •Bosniak 2F cyst – 5% risk of cancer, requires follow-up imaging to assess progress •Bosniak 3 cyst – 50% risk of cancer, should be surgically removed or biopsied •Bosniak 4 cyst – 80%-95% risk of cancer, should be surgically removed Bosniak classification - Renal Cysts カテゴリーI カテゴリーI いわゆる単純性腎嚢胞、単房性、薄い嚢胞壁 Bosniak I cyst Bosniak Ⅰcyst Bosniak Ⅰcyst 単純性腎嚢胞 Bosniak Ⅰcyst 単純性腎嚢胞 Bosniak classification - Renal Cysts カテゴリーII カテゴリーII 嚢胞の数2つ以下、1mm厚以下の隔壁、薄くて小さな石灰化を伴うもの、 直径3cm以下の造影増強効果のない高濃度嚢胞 Bosniak Ⅱcyst Bosniak Ⅱcyst Bosniak Ⅱcyst Bosniak Ⅱcyst Bosniak Ⅱcyst ドックでの症例 隔壁薄い腎嚢胞 ドックでの症例 隔壁薄い腎嚢胞 石灰化した壁と腎嚢胞 石灰化した壁と嚢胞 石灰化嚢胞腎 薄い石灰化の壁と腎嚢胞 超音波では判別困難な石灰化嚢胞 Bosniak classification - Renal Cysts カテゴリーIIF カテゴリーIIF 明らかなカテゴリーII、IIIとは言いがたく、経過観察を要する非定型的腎嚢胞 3つ以上の薄い隔壁、最小限の増強効果、3cm以上の高吸収嚢胞。中等度異型 Bosniak IIf cyst Bosniak ⅡF cyst Clear cell papillary RCC ドックでの症例 2011年 2014年 2014年 2012年 精査し問題なし、2013年、2014年と変化なし Bosniak classification - Renal Cysts カテゴリーIII カテゴリーIII 一様な嚢胞壁の肥厚、結節状構造、粗大あるいは不整な辺縁の石灰化、 多くの濃染される隔壁あるいは1mm厚以上の隔壁を有する多房性嚢胞 厚い不整な嚢胞壁や隔壁、明瞭な造影効果、粗大な石灰化。高度異型 疾患としては、嚢胞性腎癌、多房性腎症、出血性嚢胞、感染性嚢胞などがある Bosniak III cysts Bosniak Ⅲ cyst Bosniak 3 cyst with an irregular lobulated cyst with irregular vascularized septations Bosniak Ⅲ cyst Bosniak 3 cyst in a patient with polycystic kidneys Bosniak III and an inflammatory cyst 炎症性嚢胞 Bosniak III cyst (Inflammatory cyst) 炎症性嚢胞 Bosniak 3 cyst renal cell carcinoma 厚い不規則な隔壁 カテゴリーIII カテゴリーIII 多房性腎嚢胞について 多房性腎嚢胞 multilocular renal cyst 多房性腎嚢胞 multilocular renal cyst ・嚢胞型腎細胞癌 ・隔壁を有する単純嚢胞 ・腎膿瘍 ・multilocular cystic nephroma(MCLN︓多房性腎症) ・その他、限局性の多嚢胞性異型性 嚢胞性腎癌(cystic renal cell carcinoma)と良性の多房性嚢胞腎腫(mulitilocular cystic nephroma) との鑑別は大変困難 多房性嚢胞性腎腫 MLCN(MultiLocular Cystic Nephroma) 腎上皮により裏打ちされた嚢胞から成る良性病変 非遺伝性のほとんど片側・孤立性に発生する 4歳以下の男児と40歳~60歳の女性に頻度の高い multilocular cystic nephroma の診断基準 1951年にPowell らの提唱 片側性 単独性 多房性 腎盂との交通性がない 房間の非交通性 房の上皮細胞による構成 • main cyst 内に腎要素がない • 正常腎の残存 • • • • • • の計8 項目から構成されている これらすべての条件が満たされない場合はmulticystic renal cell carcinoma やcystic dysplastic kidney の存在が指摘されている multilocular cystic nephroma ミュラー管由来の間質細胞が発生時に腎原基に組み込まれ,ホルモンバランス異常を 起因として間質細胞が刺激を受け増殖が誘導されるという説が有力とされてる Cystic nephroma は病理学的所見によって最終的に診断される.組織学的に上皮成分の内側を 被覆する細胞にhobnail 様の好酸性細胞が見られることや間質成分に卵巣様間質が認められることで 診断される. 復習です 卵巣様間質 ( mucinous cystic neoplasm:MCN ) ( mucinous cystic neoplasm:MCN ) 中心部は大きな嚢胞、辺縁部は小嚢胞(mural cyst)、 壁内嚢胞(intramural cyst, cyst in cyst) 卵巣様間質(ovarian-like stroma) 粘液性嚢胞腫瘍は嚢胞性腫瘍で,嚢胞壁を覆う上皮は粘液産生能を有し, 胃・腸・膵上皮への分化傾向を示す上皮より構成され, また間質には特徴的な卵巣様間質(ovarian―like stroma:OS)が存在する腫瘍と定義した. この定義に従うと,粘液性嚢胞腫瘍の特徴は殆ど例外なく中年女性の膵体尾部に好発する. 卵巣型間質を伴うMCN の臨床病理学的特徴と予後 日本膵臓学会 良 性 多房性嚢胞性腎腫 multilocular cystic nephroma 多房性嚢胞性腎腫 Bosniak 3 cyst 54歳 女性 嚢胞の内部は一部が出血性の内容を含んでいながら、大多数は、漿液性物質を含んでいた、 滑らかな内石灰を示した。組織学的所見は多房嚢胞性腎(MCN)と一致していた 多房性嚢胞性腎腫 多房性嚢胞性腎腫 多房性嚢胞性腎腫 Cut section of multilocular cystic nephroma 多房性嚢胞性腎腫 多房性嚢胞性腎腫 Multilocular cystic nephroma 多房性嚢胞性腎腫 Multilocular cystic nephroma 多房性嚢胞性腎腫 Multilocular cystic nephroma 悪 性 多房性嚢胞性腎癌 multilocular cystic renal carcinoma 嚢胞性腎癌像の基本パターン 嚢胞内の一部または嚢胞内全域に充実性腫瘍を認めるものには,透析腎の多嚢胞化萎縮腎から発生する腎癌が多い(a, a, b). b 嚢胞壁の一部,もしくは太い隔壁を認めた場合,腎癌を疑う(c, c, d) d 「腎癌のスクリーニングから鑑別診断まで」 Jpn J Med Ultrasonics Vol. 38 No. 4(2011) 嚢胞性腎癌 (cystic renal cell carcinoma) 嚢胞を伴った腎癌は全腎癌の約10%に⾒られる 予後は良好 嚢胞状腎癌の予後については,比較的良好とする報告が多い これは,腫瘍が繊維性被膜を有しており,腫瘍の腎外および腎実質への浸潤がほとんどなく, また細胞異型度も大部分がGlであるためと考えられる. 嚢胞性腎癌 multilocular cystic renal carcinoma 初めてのドック 多房性嚢胞性腎癌 多房性嚢胞性腎癌 嚢胞性腎癌 嚢胞性腎癌 嚢胞性腎癌 嚢胞性腎癌 cystic necrosis 嚢胞壊死 origin in wall of simple cyst 厚い壁 Bosniak classification - Renal Cysts カテゴリーIV カテゴリーIV 濃染される厚い嚢胞壁や嚢胞壁に大きな結節状構造あるいは充実成分を有するもの 嚢胞壁や隔壁から隆起あるいは浸潤する造影される充実部分の存在。悪性 Bosniak IV cyst Bosniak Ⅳ cyst Bosniak Ⅳ cyst Bosniak Ⅳ cyst cystic RCC Bosniak Ⅳ cyst cystic RCC complicated renal cyst 非定型腎嚢胞 complicated renal cyst ( 非定型腎嚢胞) エコー源 : 出血、感染、嚢胞内出血 complicated renal cyst ドックでのcomplicated renal cyst 症例 complicated renal cyst complicated cyst complicated renal cyst 体位変換 移動(+) 血流(ー) 2010年 2011年 2012年 2014年