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ECコンサルが語る最新トレンド ECコンサルが語る
ネット販売を取り巻く環境は
∼深読み、先読み、斜め読み∼
日進月歩で変化を遂げて
ECコンサルが語る最新トレンド
第4回
います。当コーナーでは急
変するEC業界についてネ
ット販売事業者の売り上げ
拡大支援を行う企業のコン
サルタントが毎回、旬なトピ
ックを選んで紐解きます。
EC 事業、再構築のススメ
こんにちは。ネットショップ支援を手がける「株式会社
いつも.
」のチーフコンサルタント・立川哲夫です。今回
はEC事業の再構築についてご説明したいと思います。
例えば2、3年前であれば、とにかく売り上げの拡大を
目指せばよかったわけです。実際、昨年対比で1.5 ∼2倍
という伸び率も珍しくはなかったです。自社サイトの対応
としては、簡単に言ってしまうとSEOとリスティングだけ
をやっていれば良く、それに加えて楽天を中心とした多店
舗展開、デバイスはほぼパソコンで、CRM(顧客育成)
などを気にすることなくただ売るのみ──といった状況だ
ったと記憶しています。
ところがこの半年程は明らかに変化が見られます。トピ
ックを挙げると、WiFi やLTEといった通信環境の整備、
楽天の独走とアマゾンの台頭、中高年によるネット通販の
れていたのが、ここにきて巻き返しを行っているというイ
利用拡大、大手小売り企業のEC参入と(並行して)一部
メージです。
EC専業企業の苦戦、顧客情報の活用などのCRM対応、さ
伸ばしている企業は、パソコン、店舗、紙、電話受注、
らには人材の流動──といった具合に様々な事象が発生
SNS、スマホなど様々な要素を連携させて顧客を増やして
しています。とはいえ、上記に挙げたトピックのほかにも
います。スマホなどは顕著で、売り上げをどんどん伸ばし
スマートフォン、SNS対応などECに大きく関わるビッグニ
ています(上図を参照)
。
ュースが出ていましたが、それも今や“出そろった”感が
もちろん「うちはやらない」というのも選択肢の1つで
あります。
す。その分、伸びシロは減りますがECというものの従来
ECがどんどん小売業化していく
からの特徴にこだわるというパターンです。いろいろな
“打
ち手”が出そろった中で「やらない」というのも、戦略の
このように一通り駒が出そろった現状について、私の印
ひとつだと思います。
象ではECがどんどん小売業に近づいている気がします。
それでも、例えば今私のもとに再構築の依頼が来れば、
加えて、従来の小売業者がECにどんどん参入している状
「短期ではなく2、3年を見据えてできることを全部やり
況を見ると、ECと小売りの境界線があいまいになり、そ
ませんか」と提案します。電話の受け口もそうですし、ス
のうちECも普通に小売業化していくに違いないと思えて
マホの強化も必要です。O2Oの一環としてショールームの
きます。裏を返すと、EC専業店が伸び悩んでいるという
ような展開もその1つでしょう。こうしたことに着手しな
ことです。
いと、ECに“事業らしさ”が出てきません。月に1000万
小売企業は、今のトレンドであるO2O(オンライン・ツ
円くらい売るのであれば良いのですが、もっと事業を大き
ー・オフライン)と絡めてうまくEC事業を展開している事
くしたいのであれば、やるべきことはたくさんあります。
例が見られます。リアルとネットでのポイントや在庫連携
事業者にとって検討すべき選択肢が出そろった現状にあ
といった取り組みも増えてきました。EC専業企業は大変
って、少なくとも事業を大きくしたいのであれば、出そろ
な時期に差し掛かっていますが、実店舗を持っている企業
った選択肢に対して2、3年後を見据えて「やる」と決め
はチャンスだという気がします。これまでEC専業に押さ
るか、
「やらない」と切り捨てるのか、今は各事業者にそ
14 ネット販売 VOL.14 No.7
■再構築の視点 (小売業における売上を伸ばす上での「影響度が高い順」をもとに作成)
売上を伸ばす要素
EC成長におけるこれからのポイント
戦略
1.立地
主力店舗を決める(リソースの集中)、O2Oへの取組み
(1∼3年)
(多店舗、主力店舗)
2.規模
新ジャンルへの挑戦(カテゴリーの付加)
(カテゴリ数・アイテム数)
3.ブランド(知名度)
「自社店舗名検索」「オリジナル商品名」検索を増やす
4.システム・物流、人材
自社サイトのシステム変更、幹部の育成、物流拠点変更
戦術
5.商品
自社企画品比率アップ、在庫管理(主力アイテム絞る・回転率視点)
消費税対策、円安対応、高単価品販売へチャレンジ
(1年以内) 6.価格
7.販促
広く・きめ細かく投資(大型広告は効果が低い)、モール内検索に注力
8.売場
スマホ+タブレット対応(レスポンシブWebデザイン)、動画活用
9.分析
顧客の購入履歴分析(リピート策強化)
10.顧客サービス
送料無料への対応、電話対応増やす(年配層の取り込み)
うした選択が求められています。そして、
「やる」と決め
組んでカテゴリーを増やすという選択肢があります。
「ブ
た場合は人手も必要になり、結果的にいよいよ小売業化し
ランド」戦略では“自社店舗名”
“自社オリジナル商品名”
ていきます。
による検索数を増やし、最後に「システム・物流、人材」
かつては営業利益率で夢のような値を出すEC事業者が
というシステムの変更や幹部の育成が挙げられます。
存在していましたが、そんなところはもはやありません。
再構築の視点について触れましたが、確実なのは手駒
小売業の営業利益率は総じて5%前後といったところです
がそろった今だからこそ、社内で真剣に事業の再構築に
が、ECの収益構造も今では小売業に似てきました。
ついて検討すべきタイミングだということです。それは体
一方で、月商3000万円くらいの規模で一切広告費を使
力のある大手だけでなく、中小規模の事業者も実行項目を
わずに、それ以上規模を拡大するつもりがないといった企
決定すべきだということです。
業もあります。そうしたところは営業利益率が今でも15%
従来の「ECは小売りとは異なりどんどん伸びる」とい
という数字を出しています。つまり他社から目を付けられ
う神話を見直して、ECも小売業のグループに入ったとい
ないゾーンとでも言いますか、
“生き残りゾーン”でこっ
う現実は認識しておくべきでしょう。かつて大手ショッピ
そりと事業を展開しているようなケースです。大手が参入
ングモールの参入で地方の商店街が苦境に立たされまし
してこないようなゾーンで息をひそめつつちょこちょこと
たが、EC業界における大手小売りの参入も同じイメージ
山を作ってECらしく儲けるという可能性もまだ残ってい
です。地方の商店街はどう生き延びるか知恵を絞ってやっ
ます。
ていますが、EC事業者も次の成長に向けて現状をどう打
今は再構築に最適のタイミングに
開するか考え直す時期に来ています。もはや奇策はありま
せん。自社の得意分野を再認識して、やるべきことを絞っ
そこで再構築の進め方です(上表を参照)
。ここ1年以
て、より深くやりきることで活路は必ず見えてくると確信
内のスパンで考えると、まず「商品」ですが、他社と差別
しております。今年は「EC再構築の年」と位置付けて取
化を図って利益も生み出せる自社企画型商品の比率を高
り組んでいただければと思います。
め、在庫管理を見直します。次に「価格」面では、前回
ご説明した消費税対策などが必要になります。さらに「販
促」
、スマホやタブレットを見据えた「売場」の整備、購
入履歴の「分析」
、
そして送料無料や電話対応といった「顧
客サービス」が挙げられます。
さらにここ1∼3年を見据えると、
例えば店を構える「立
地」では、多店舗展開するのであれば楽天・ヤフー・アマ
ゾンなどが挙げられますし、自社も含めどの店を主軸にす
るかといったことをきちんと考える必要があります。加え
て小売業系のところは、O2Oによってネットを効果的に活
用することで従来からの実店舗を伸ばすという戦略も良い
筆者プロフィール
立川哲夫(たつかわ・てつお)
30店 舗・ 年 商100億 円 の 小 売
専門店チェーンの営業統括部長
の経験を生かし、東証1部上場
コンサルティング会社で新規事
業立ち上げの支援を多数経験。
その後、株式会社いつも。にて
1000社を超えるノウハウやデ
ータをベースにしてネット通販
で年商1∼ 10億円を目指す企
業の支援実績を多数持つ。ヤフ
ー主催のショッピング出店者向
けのセミナーで常に満席となる
人気講師でもある。
と思います。次に「規模」ですが、新しいジャンルに取り
「無料公開記事」
「読者限定コンテンツ」は「http://nethanbai.co.jp」にて
ネット販売 VOL.14 No.7 15
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