Comments
Description
Transcript
DATA DRIVES OUR WORLD
[特集] DATA DRIVES OUR A ND INFORM AT ION IS T HE NE W CURRENC Y Part1 大量データが生み出す新たな価値は 企業・社会をどう変革するか メールやドキュメント、画像、動画などのいわゆる非構造化データ、さまざまな機器に取り付けられたセンサーから発信されたデータ、スー パーマーケットやコンビニのレジが出力するPOS(Point of sale system)データ、携帯電話の操作や利用の過程で生成された履歴 データなど、多様なデータを効率的かつ長期にわたって大量に蓄積し、さまざまな分析や活用に役立てていく。そのためのインフラとして、 無限大とも言えるスケーラビリティを持つクラウドインフラを利用していこうという機運が高まっている。これこそ、知識化サービスの出発 点であり、膨大なデータから新たな価値を生み出し、企業、そして社会に活性化と最適化を促していく。 小山健治 知識化したデータの 活用基盤となるクラウド えたときに始まるのではないだろうか。 ここ数年、「クラウドコンピューティング」という言葉が急 サービス化する」取り組みである。簡単に振り返っておこう。 速に浸透し、その導入への関心が高まっている。厳しい経 ここで言うデータとは、データベースに正規化されて蓄 済情勢の中、企業は、さまざまな局面でコスト削減を余儀な 積された、いわゆる構 造 化データのみを指 すわけではな そうした中で浮上しているのが、本誌でも折に触れ取り上 げてきた「さまざまなデータを知識化し、さらにその知識を くされる一方で、ライバル企業との競争に勝ち抜くための い。メールやドキュメント、画像、動画などの非構造化デー 競 争 力 強 化や 新 規ビジネス への投 資を怠ることはできな タ、さまざまな機器に取り付けられたセンサーから発信され い。こうしたジレンマを解消する手段として、効率性を最大 たデータ、スーパーマーケットやコンビニエンスストアのレ 限に高めた IT インフラとしてクラウドが注目され始めたわけ ジが出力する POS データ、携帯電話の操作や利用の過程で である。 生成された履歴(ログ)データなど、ありとあらゆるデータ ここで、あらためてクラウドのメリットを考えてみたい。 が対象となる。 さまざまなメリットが考えられるが、企業が自社の IT インフ これらのデータを大量に蓄積し、多角的・複合的な分析 ラをクラウド化することを考えると、必要なときに必要なだ を行うことによって、それを意味のある情報に変換するのが けの ITリソースやサービスを柔軟に調達できる「スケーラビ 「知識化」だ。さらに、その知識をさまざまな分野で必要と リティ」、ハードウェアや OS 、ミドルウェアなどのメンテナン される付加価値として提供していくのが「知識のサービス スやトラブル対応などを大幅に効率化する「運用の自動化」 化」である。 といったことに集約される。本当の意味でのクラウドの活用 こうした多様な大量データを効率的かつ長期にわたって は、これらのメリットを最大限に生かせる明確な使い道が見 蓄積し、分析や活用を支えるためのインフラとして、クラウ 2 Hitachi Storage Magazine Vol.5 WORLD ドへの期待が高まっているのである。 〜データは世界を動かす そして、情報は新しい価値を生み出す〜 データを蓄積・分析することで、どんな稼働パターンが出現 したときに故障が発生するのかが明らかになり、故障の予 多方面で進行する 知識化サービスの構想 る。さらに、機 器 の 故 障などの 予 兆 が 分かれ ば 、先 手を それでは、具体的にはどのようなシナリオが描かれてい なる。 知や原因の検出を容易に行えるようになると考えられてい 打って保守を行うなど、新しい付加価値サービスが可能に るのだろうか。いくつかの例を挙げておきたい。 鉄道分野では、電子乗車券による乗車履歴や電子マネー まずは交通分野におけるデータの知識化の例として、都 による購買履歴を蓄積しようという動きが起こっている。こ 市を走る 1 台 1 台のタクシーをセンサーに見立てようという れらの履歴データを分析することで人の動きをモデル化で 構想がある。各車両が持っている ID 番号、位置情報(緯度・ きれば、次の動きを予測することも可能になるだろう。さら 経度)および時刻情報、実車・空車状態、走行状態(高速道 に、その予測と列車の運行情報、あるいは沿線の店舗情報 路走行中、一般道路走行中)などから構成される「プローブ を組み合わせることで、個人別の乗り換え情報やピンポイ 情報」と呼ばれるデータを収集・蓄積し、分析することで、 ントの購入ガイドなどを提供することができる。 渋滞情報をきめ細かく予測することが可能になると考えら 昨今話題となっているスマートグリッドの構想では、建物 れている。さらに、その情報をサービス化して周辺を走行 や家屋単位の電力消費量や発電量をリアルタイムに取得で 中 の 他 の自動 車に提 供 することで 、最 適なル ートのナビ きるインフラ構築を目指している。そこから収集されたデー ゲーションや交通渋滞の緩和に貢献できる。 タを蓄積・分析することで、一般家庭まで含めた消費電力 発電機器やエレベーター、建設機械などの機器の保守分 の見える化ならびに配電制御や設備配置の最適化が可能に 野では、対 象となる機 器 の 稼 働 状 況やメンテナンス履 歴 なり、社会全体として省エネ化を推進することができると考 Hitachi Storage Magazine Vol.5 3 [特集] DATA DRIVES OUR WORLD A ND INF OR M AT ION IS T HE NE W C UR R E NC Y えられているのである。 め想定しない。それは、期待していた以上に高レベルな分 データを資金のように 信託する時代へ ない。 上記のようなデータの知識化ならびに知識のサービス化 もしなかった価値が提供されるかもしれないという可能性に 析の“精度”かもしれないし、新たな事実の“発見”かもしれ いずれにせよ、ユーザーが望んだサービスを、望んだと おりの形で提供するのは当たり前のことにすぎない。思い が進んだ将来を考えてみると、データが貨幣と同様の価値 対して、企業や人々は自分たちのデータを託す意義を見出 を持って流通する時代になると言えるのではないだろうか。 すわけである。 そうした時代が到来すれば、IT を取り巻くビジネスの形態も もっとも、それは口で言うほど簡単なことではない。大量 大きく変化していくはずだ。 のデータから価値の高い情報、すなわち知識を生み出す IT 例えば、クラウドには IT の「所有」から「利用」への変化と インフラには非常に高度な技術が要求される。大量データ いう一面があるが、この考え方がさらに発展し、所有や利 を高速処理する分散処理技術、リアルタイムの知識活用を 用のほか「信託」という形態が生まれるという仮説が立てら 可能にするストリームデータ処理技術、知識を生み出す源 れる。さまざまな IT システムがクラウド上で連携するように となる分析アルゴリズム、さらにはこれらの技術の容易か なる将来を考えたとき、各種 ITリソースだけではなく、セン つ安全な運用をサポートするフレームワークや標準データ サーなどが発信するデータや、さまざまなシステム利用に モデル、セキュリティ技術など、どれをとっても現在のエン 伴って発生する履歴データなどもクラウド側に預けて信託 タープライズシステムをはるかに超えるレベルが求められ 運用するという新たな形態である。事業の売り上げを銀行 ることになるだろう。 に預ける、あるいは逆に銀行から運転資金を調達するのと こうした大規模かつ高度なテクノロジーが要求される知 同様に、データをクラウドに信託することでビジネスを回し 識化のための基盤を従来どおりの手法で運用していくのは ていく時代が到来するという考え方だ。 困難だ。だからこそ、知識化サービスの担い手となっていく ここで言う「信託」というコンセプトを理解するには、現 であろうクラウドに対する期待が高まっているわけである。 在、携帯電話会社が提供しているユーザーエージェント機能 (レコメンド型サービス)がヒントになる。このサービスを携 帯電話の GPS 機能と連動させると、ユーザーの現在位置が 数分間隔で計測され、自動的に携帯電話会社のセンターへ コラボレーションを土台に 新たな価値が創出される 送られる。ユーザーエージェント機能は、こうしたユーザー 一方で重要度を増しているのが、高い価値を持つデータ の位置情報や属性情報を分析し、今いる場所の関連情報や やそこから生み出された知識を流通させ、幅広い領域にお お勧めレストランのクーポン情報、現在地から自宅への終 いて活用を促していくためのビジネススキームの確立、さ 電時間など、さまざまな情報をプッシュ配信するのである。 らにはそのマーケットを立ち上げていく取り組みだ。 これはすなわち、ユーザーが自分自身のさまざまな個人情 そこでの土台となるのは、電力、鉄道、自動車、産業機 報を携帯電話会社に信託することで、はじめて可能になっ 械、物流、金融など、さまざまな業界の企業が、ビジネスを たサービスだと言える。 通じて培ってきた実績と経験そのものである。各企業がそ 実際にこうした信託をベースとしたサービスを企業や社 れぞれのビジネス領域の中で蓄積してきた膨大なデータか 会全体を巻き込んだ形で展開していこうという構想が、多 ら、例えばトレーサビリティやスケジューリング、メンテナン 方 面 で 進 行して いる。従 来 の I T システム は 、あらかじめ スなどの業務プロセスを最適化するための知識を抽出し、 ゴールを設定したうえで開発が行われてきた。確かに業務 顧客に提供する。言い方を変えれば、IT と実業のシナジー の効率化や合理化といった課題解決には貢献するものの、 によって知識化サービスが推進されていくのだ。 要求仕様で取り決めたこと以上の価値が生み出されるとは 将来的には、業界や業種の垣根を越えた橋渡し役を担う 考えにくい 。これに対して、信 託をベースとしたクラウド 知識化サービスへの期待も高まっていくと考えられる。例え は、そこからどのような価値が生み出されるのかをあらかじ ば、道路情報と鉄道のダイヤ情報を組み合わせた最適ルー 4 Hitachi Storage Magazine Vol.5 Part1 トの案内サービス、電力業界の発電計画と製造業のサプラ 大量データが生み出す新たな価値は 企業・社会をどう変革するか がコラボレーションを通じて運 用していく中から、知識化 イチェーン計画を結ぶインフラといったものだ。こうしたク サービスのマーケットが成立していくと考えられる。この取 ロスインダストリの「知の融合」によって、新たな価値が生 り組みの主な舞台として想定されるのが、スマートシティ構 まれてくるだろう。 想だ。スマートシティとは、大規模な電力系統システムの 一方、知識化サービスの運用を支えるうえで必要とされ 最適化を目標とするスマートグリッドをはじめ、社会インフ る IT 基盤やソリューションを提供する IT ベンダーの側には、 ラを構成するさまざまなシステムを協調させて運用・制御す 今ある SI サービスの延長線上で知識化サービスの基盤を製 ることにより、ビジネスおよび生活の最適化や活性化を目 品として提供するケース、知識化サービスの基盤そのもの 指す地域社会である。このスマートシティを運営していくう をサービス化して提供していくケースという 2 つのアプロー えでの前提となるのが、実は先に述べた信託のコンセプト チが想定される。 なのである。 いずれにせよ、業務システムの適用範囲の拡大や多様な スマートシティ内の企業や学校、公共施設、店舗などに センサーの活用、携帯電話をはじめとするモバイル端末の 構築された IT システム、家庭から道路まで街中のいたる所 急増などによって、クラウドに集約されていくデータは今後 に埋め込まれたセンサーなど、異なる情報源から発生する も爆発的に増えていくとともに、その中身も激しく変化して データを信頼できるプロバイダーに信託するのである。プ いくと予想される。リアルタイムにやりとりされるこれらの ロバイダーは、こうした信託された大量のデータを、例えば 膨 大なデータを、いかに効 率よく収 集し、安 全に蓄 積し、 日立が提唱する「 KaaS( Knowledge as a Service )」のよう 有益な知識を抽出し、高度な活用をサポートすることがで な知識化基盤の上で相互に関連付けながら分析・予測する きるか。そのノウハウが、これらからの IT ベンダーの存在意 ことで、スマートシティに必要な付加価値サービスとして 義を決定すると言っても過言ではない。 フィードバックする。具体例を挙げると、商品の販売計画や そして、こうしたデータの収集から蓄積、知識の抽出、 生産計画、保守などの業務プロセスにおいて、そこに従事 活用までの一連のプロセスを、ユーザー企業と IT ベンダー するスタッフや顧客の動き、さまざまなオペレーションから 発生するジャーナルデータや履歴データ、商品の在庫状態 などを収集、さらに天候やイベントなどの周辺情報を組み 合わせて分析を行うことで、最適な需要予測や新商品の提 案を行うことが可能となる。 そしてもう 1 つ、スマートシティを実現するうえで重要な テーマとなるのが、社会インフラを支える制御システムと 情報システムの融合である。同じ IT の利用であっても、こ れまでは発電設備や列車の運行、信号設備などの機械やモ ノの動作を最適に調整することを「制御」、端末やセンサー から集 めたデ ータをもとに処 理 の 結 果をオペレーター や ユーザーなどの人に返す領域のことを「情報」と呼び、それ ぞれ独立した発展が促されてきた。この 2 つの異なるシス テムを有機的に結び付け、そこにスマートシティから抽出さ れた知識を融合していくことで、社会インフラのライフサイ クル全体をワンストップで把握できるようになる。 信託というコンセプトを取り入れたクラウド、さらに、そ れを基盤とするスマートシティで繰り広げられる多様な企業 や人々のコラボレーションを通じて、今後の企業および社 会の発展に向けた新しい価値の創出やイノベーションが誘 発されていくのである。 Hitachi Storage Magazine Vol.5 5 [特集] DATA DRIVES OUR WORLD A ND INF OR M AT ION IS T HE NE W C UR R E NC Y Part2 情報からの新たな価値創出を推進する 日立のソリューション戦略 日立は現在、全世界に向けて“DATA DRIVES OUR WORLD AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY” というメッセー ジを打ち出している。大量に蓄積されたデータから新たな価値を創出していこうというのが、このメッセージが訴えるところだ。同社は、こ のビジョンの具現化に向けて、ストレージをはじめとするソリューション体系の整備を着々と進めている。そうした一連の取り組みについ て、RAIDシステム事業部 事業企画本部の本部長を務める熊沢 清健氏に話を伺った。 多くの業界・企業で高まる データの知識化へのニーズ と、多くの企業が考え始めたのです。 ── 最 近 、日立 は 全 世 界 に 向け て“ D ATA D R I V E S O U R という WORLD AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY ” ます。売り場のレジで会計を行う際に、品名や個数だけで 情報、すなわち「知識」を抽出することができないだろうか 例えば、スーパーマーケットやコンビニなどの流通業で は、かなり前から毎日発生するレシートの情報を蓄積してい メッセージを発信し始めました。このメッセージには、どのよ はなく、買い物客の性別や大まかな年齢層などの属性も入 うな意味が込められているのでしょうか。 力しており、「どんなお客さまが、いつ、どんな商品を、ど 熊沢 日本語に意訳すると、 「今やデータは世界を動かす力 れくらい買っていくか」といった購買傾向を分析するために を持っている。情報はあたかも新しい通貨のように世界中 使われています。さらに、気象に関する情報や地域のイベ で交換され、保管され、使われるようになる。情報こそが新 ントに関する情報なども蓄積しておけば、天気や気温の変 しい価値を生み出す原動力であり、企業にとって最も重要 化と売れ筋商品の相関関係、あるいはお祭りが行われた期 な資産である」といったところになります。 間はどうだったかなど、より多彩な切り口で分析できるよう このメッセージは、日立の考え方だけを言い表している になります。 わけではありません。クレジットカード会社や証券会社を含 携帯電話事業者でも、各ユーザーのアクセス履歴ととも めた金融、流通、携帯電話事業者など、世界各国のさまざ に端末の GPS( Global Positioning System )機能と連動した まな業界・業種のお客さまが、表現の差はあれ同じ意味の 正確な位置情報、ハンドオーバー(基地局の切り替え)履歴 ことをおっしゃっています。すなわち、多くの企業の間に湧 などのデータを蓄積しておくことで、電波状態の悪い場所 き上がってきているニーズを簡潔にまとめたのが、 “ DATA をピンポイントで特定し、基地局の新設や再配置を含めた DRIVES OUR WORLD AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY”なのです。 れてきました。 ──多くの企業から、そうしたニーズが出てきた背景には、 ただ、こうした多岐にわたる大量のデータを長期間蓄積 どのような課題があるのでしょうか。 するには、非常にスケーラブルなストレージが必要となりま サービスレベル の改善に役立たせることができると考えら 熊沢 今日の企業内には膨大な量のデータが蓄積されてお す。加えて、戦略的かつ効率的にデータを収集するための り、その大半を占めているのがドキュメントや画像、動画な 仕組み、大量データに対して的確な分析を行うためのツー どの非構造化データと呼ばれるものです。これらのデータ ルも不可欠です。われわれ日立には、これらをソリューショ をただ蓄積しておくだけでは何の意味もありません。しか ン化して提供してほしいという要望が、数多く寄せられるよ し、そこに何らかの処理を施すことで、ビジネスに役立つ うになりました。 6 Hitachi Storage Magazine Vol.5 大量データの効率的な蓄積から 分析までを一貫してサポート ──日立では、そうした一連のソリューションをすでに提供 しているのでしょうか。 熊沢 まだ万全とは言えませんが、日立としてもデータの知 識化は重要なテーマとして尽力しており、段階的にソリュー ション体系を固めつつあります。昨年リリースした「 Hitachi ( 以 下 、VFP )や「 Hitachi Virtual Virtual File Pla tform 」 (以下、VSP )といった新型ストレージも Storage Platform 」 日立製作所 RAIDシステム事業部 事業企画本部 本部長 熊沢 清健氏 その一環と言えます。 VFP は、企業の支店や営業所、店舗、あるいは SOHO な Resonance Imaging system )などの画像診断装置による精 ど、ネットワークのエッジ側に設置するストレージで、デー 緻な画像データが大量に蓄積されています。多くの患者か タセンター側のストレージ へのデータの自動収集ならびに ら集めたこれらの画像データを横断的に分析したり、時系列 透過的なアクセスを行う Cloud on-Ramp(クラウドへの入り で分析したりすることで、ある患者の特定の部位が将来的 口)としての役割を担います。 にガン化する可能性が高いといったことを推測できるように 一方の VSP は、クラウドのデータセンター側に位置するス するための研究が進められています。このほか、画像検索 ケーラブルなストレージです。このストレージの最大の特長 と顔認識の技術を組み合わせた犯人捜査やテロ対策など、 は、「階層ストレージの仮想化機能」を搭載したことです。 セキュリティ系のシステムでも一部応用が始まっています。 この機能では、外部ストレージ や SATA( Serial Advanced Technology Attachment )、SAS( Serial Attached SCSI )、そ して近年普及が加速している SSD( Solid State Drive )など、 多様な物理ディスクを混在させてプール化します。そして、 知識のサービス化を 見据えた将来ビジョン このストレージプールを構成するディスク間で、データをア ──データを知識化するソリューション体系をさらに進化さ クセス頻度などに応じて自動再配置します。アクセス頻度 えていくために、どのようなことに取り組んでいるのでしょ の高いデータは高速なディスク、そうではないデータは安 うか。 価なディスクに保管するわけです。これによって、高いパ 熊沢 大量に蓄積されたデータの中から知識を抽出し、さら フォーマンスを確保しながら大量データをコスト効率よく蓄 にその知識をサービス化し、ビジネスや社会で役立たせて 積することが可能となります。 いく知識の再利用サイクルを築いていくためには、その運 そして 、蓄 積された大 量デ ータの 中から価 値 のある情 用基盤となるデータベースが不可欠です。しかしながら、PB 報、すなわち知識を抽出するためのソリューションとして、 (ペタバイト)や EB(エクサバイト)、さらには ZB(ゼタバイト) 「 Hitachi Data Discovery Suite 」という検索ツールを提供し といった天文学的な単位にまで膨らんでいくと予想される ています(現在は海外のみ)。現時点で検索対象となるのは 大規模なデータを、効率的に運用できるデータベースはま テキスト系のデータのみですが、画像や動画の検索にも対 だ存在しません。 応すべく開発を進めています。テキスト検索も、大きく統計 ストレージについても一定の年月を経過したハードウェア 学的な分析と言語学的な分析(概念検索)の 2 つのアプロー をリプレースする際に、そうした大量のデータを新しいスト チがあり、この両方に対応したいと考えています。 レージにどうやって移行するのかという問題があります。容 ──テキスト系データだけでなく画像や動画といったデータ 量が膨大だからと言って、データのコピーに何ヵ月もかかる にも検索対象を広げていくことで、どんな知識抽出が可能 ようでは話になりません。これらの問題を解決すべく日立で となるのでしょうか。 は、ハードウェアとソフトウェアの両面からさまざまな研究 熊沢 例えば医療分野では、CT スキャンや MRI( Magnetic 開発にチャレンジしています。 Hitachi Storage Magazine Vol.5 7 Technology Focus Hitachi Virtual Storage Platform に実装された信頼性強化のポイント データ量の爆発的な増加に対応しようと、ストレージの大規模化を検討しているIT部門は多いのではないだろ うか。そうした検討の際には、ディスク容量やデータ処理性能ばかりに目を向けがちだが、忘れてならないの は信頼性である。ミッションクリティカルな運用に耐える高度な信頼性に裏付けられてこそ、新たな価値を生 み出す情報活用が可能となるのだ。今後のコアセンター向けのエンタープライズストレージとして開発された 「Hitachi Virtual Storage Platform」には、日立が長年にわたって培ってきた高信頼・高可用性技術の すべてが注ぎ込まれている。 99.999%以上の SLAを保証する エンタープライズストレージ わけではない。 クラウドが保証している SLA はせいぜい パブリッククラウドのサービス の多く スリーナイン( 99.9 %)程度である。この は、数千から数万台、場合によっては数 ように 2 桁ものレベル差という現実がある 十万台といった膨大な数の低価格なスト ため、特に重要なデータに関しては、や 企業にとって重要な資産である情報を レージやサーバを仮想化・プール化して、 はり、オンプレミスのデータセンターにお 多角的・複合的に分析して高い価値を持 あたかも 1 台の巨大なコンピュータがネッ けるプライベートクラウド環境で運用する つ“知識” を抽出し、ビジネスや社会に役 トワークの向こう側に存在しているかのよ のが望ましいということになる。そうした 立 て て いく――“ D A T A D R I V E S O U R うに見せている。言いかえれば、コモディ 今 後のプライベートクラウドを支えるべ WORLD AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY ”のビジョンを実現するには、 ティハードウェアを核とする仕 組みによ く、日立が投入したエンタープライズスト り、大容量のストレージを安価に提供す レ ージ が「 H i t a c h i V i r t u a l S t o r a g e 膨大なデータを長期にわたって蓄積し、 ることが可能となっているわけである。 (以下、VSP )である。 Platform 」 必要時にはデータをすぐに取り出せる大 しかし、その水面下で行われている超 容量・高性能のストレージが必須となる。 並 列の分 散 処 理において高 度な SL A そこで 1 つの選択肢となりうるのが、外 ( Service Level Agreement ) を確保する 部のサービスプロバイダーが提供するパ ことは簡単ではない。金融業や製造業な ブリッククラウドから必要なストレージ容 どのミッションクリティカルなシステムで VSP には、これまで日立が長年にわた 量を臨機応変に調達するという方法だ。 は、ファイブナイン( 9 9 . 9 9 9 %)以 上 の るストレージ開発を通じて培ってきた高 ただ、この方法にもまったく問題がない SLA が要求されるが、一般的なパブリック 信頼・高可用性技術のすべてが注ぎ込ま ●図1:VSPが搭載するストレージコントローラの内部構成 キャッシュ ●図2:物理ディスクのデュアルポート化による障害対策 SAS×4 キャッシュ CHA 高信頼・高可用性を実現する ストレージ・アーキテクチャー CHA クラスタ1 SAS×4 クラスタ2 DKA DKA PCI-Express スイッチ MPB DKA クラスタ1 S MPB クラスタ2 DKA S S S RAIDグループ CHA:Channel Adapter MPB:Processor Blade DKA:Disk Adapter 8 Hitachi Storage Magazine Vol.5 物理ディスク スペアディスク SAS れている。同社 RAID システム事業部 事 期的に読み取りテストを実施。その過程 業企画本部 製品企画部の部長を務める で発生したエラー回数をカウントするとと 大枝 高氏は、VSP の信頼性強化における もに、不良セクタを交替セクタへ自動的 基本コンセプトを次のよう語る。 に割り当てることで回復を図る。 「ストレージを構成する各モジュールを また、カウントしたエラー回数があらか 可能な限り局所化し、冗長化することで じめ 設 定されたしきい 値を超えたとき、 SPOF( Single Point of Failure:一点故障) すなわちディスク障害の予兆が検出され による全面障害を排除します。また、各 た場合、そのディスクの内容を自動的に 主要部品を分離化することで障害時の縮 スペアディスクに退避させる。このダイナ 退単位を最小化し、ホットスワップを実現 ミックスペアリングと呼ばれる仕組みによ します 。加えて 予 防 保 守 の 機 能を搭 載 り、業務を停止することなくデータを保護 し、障害の発生を事前に防いでいます」 するのである。 今日のストレージ製品にとって、ディス ちなみに、万が一予兆が検出されずに クの 冗 長 化( R A I D )や 電 源 の 冗 長 化と いきなりディスク障害が発生した場合で いったことは、それほど珍しいことではな も、ホスト I/O 処理を継続しながら自動回 い。それらは当然のこととして、VSP はよ 復することが可能となっている。障害の り詳細なレベルでの冗長化が行われてい 発生していないディスクならびにパリティ るのである。 から当該ディスクのデータのコレクション 例えば、ストレージ製品の内部において コピー(復元)を行い、スペアディスク上 “頭脳”の役割を担っているコントローラ に自動的に再構築するのである。もちろ を見 てみよう。図 1 に示 すとおりコント ん、障害が発生もしくは予見されたディス ローラは、CHA( チャネルアダプタ)、DKA クについても、ホットスワップによる交換 (ディスクアダプタ)、MPB(プロセッサブ が可能だ。 日立製作所 RAIDシステム事業部 事業企画本部 製品企画部 部長 大枝 高氏 レード)、キャッシュ、PCI-Express スイッチ 「日立はストレージ本体のみならずディ (データバス) といった主要モジュールか スクそのものを自社開 発してきたため、 ら構成されており、VSP ではそれらのす 記 憶 媒 体として の 特 性を熟 知して いま て、このデータ保証コードの自動チェック べてが完 全に冗 長 化されているのであ す。ディスクの品質監視やダイナミックス を行い、アレイ固有のデータ分散・集合 る。 ペアリングといった予防保守機能は、ま 制御によるデータ誤りを防止します。す 「これらのモジュール のいずれかに障 さにそうした中で洗練化されてきた日立 なわち、データへのアクセスや移動が発 害が発生したとしても、クラスタを閉塞せ 独自のノウハウを結集したものです」 (大 生するたびに自動的にチェックが行われ、 ずにホットスワップが可能です。例えば、 枝氏) 仮にディスクが誤ったデータを返したとし データの真正性を保証する 自動チェックの仕組みを搭載 るのです」 (大枝氏) 壊 れ た C H A を交 換 す る場 合 でも、スト レージ全体の運用にはまったく影響を与 えません」 (大枝氏) RAID 構成についても、同様の思想が ても、その場で検出され、補正が行われ そのほかにも細かいところでは、キャッ シュに対して バッテリーならびにキャッ 貫かれている。すべての物理ディスクは さらに、VSP はディスク上に保存される を搭載し、停電時な シュフラッシュ ( SSD ) デュア ル ポートを装 備して おり、1 つ の データの真正性の保証に対しても徹底し どにおけるデータ消失を防 止している。 ポートに障害が発生した場合でも、別の た配慮がなされている。 さらに、PCI-Express スイッチの内 部で DKA を経由したパスによりアクセスが可 能。RAIDグループは正常に動作を続ける 「 ホストから受け 取ったデ ータに対し も、データのフローと制御のフローを完 て、VSP は 512 バイトのブロックごとに 8 全に分 離 するなど、ありとあらゆるレイ ことができる (図2)。 バイトの CRC( Cyclic Redundancy Check ヤーでのデータ保護が図られている。 そして、予防保守機能が特に重要な役 code:データ保証コード)を自動生成して 付加し、520 バイトのデータとしてディス クに書き込みます。コントローラ内の CHA や D K A といった 主 要 モジュー ル にお い 膨大なデータの蓄積・運用を支えるコ 割を果たすのが、物理ディスク障害への 対応である。VSP では、RAID を構成する ディスクの記録エリア全体に対して、定 アセンターのストレージ基盤として、VSP は卓越した信頼性に裏付けられたスケー ラビリティを提供するのである。 Hitachi Storage Magazine Vol.5 9 関連事例 日立製作所 RAIDシステム事業部 先進ストレージ仮想化技術の 導入効果を実業務で自ら実証 急速な勢いで増加するデータを安全かつ効率的に運用し、より高度な情報活用を促す“DATA DRIVES OUR WORLD AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY” 。このビジョンを先取りしたシステム戦略が日立のRAIDシステム事業部で進展している。 情報資産を効率的に運用管理し活用するという目的の下に、ストレージ仮想化技術をフル活用して構築・運用している「ストレージセントリッ クシステム」がそれだ。同社は、そのシステムを自ら実業務において実践し、そこから得た成果や課題をモノづくりにフィードバックしてきた。 ストレージセントリックを 実現するストレージ仮想化技術 の名称も“ストレージセントリックシステ が獲得した効果や発見した課題を新しい ム”で通っている。 ストレージ製品の開発に反映させてきた 日立の RAID システム事業部 開発本部 のです」 急 速な勢 いで増 加 するデータを安 全 システムインタフェース設計部の主任技 例 え ば 、 2 0 0 5 年 に 運 用 開 始し た かつ効率的に運用し、より高度な情報活 師である渋谷 廣二氏は、同システムの 「 Hitachi Universal Storage Platform 」 狙いを次のように語る。 (以下、USP )では、ストレージデバイス 用を促 す“ DATA DRIVES OUR WORLD A N D I N F O R M AT I O N I S T H E N E W CURRENCY ”。このビジョンを先取りした システム戦略が日立の RAID システム事 業部で進展している。 うした乱立状況は、リソースの利用効率 管理の一元化など数多くのメリットがあ 同シ ステ ム の 基 本となるの が 、スト の低 下や運 用 管 理の煩 雑 化を招くのは る。日立 の R A I D システム事 業 部 では、 「 2000 年代前半、RAID システム事業 仮想化を採用。これは、異なる複数のス 部 で 運 用 するストレージ 開 発 のため の トレージを USP 本体のコントローラで共 サーバは、数十台に達していました。こ 通プー ルとして 統 合 する機 能 で 、運 用 レージを中心に据えて IT インフラを構築 もちろん、バックアップや災害対策を含 同機能もいち早く実運用環境に投入し、 し、拡張を図っていく “ストレージセント めたデータ保護の観点からも問題があり そのメリットや課題を実体験の下に明ら リック”の考え方だ。日立はいち早くこの ました 。そこで 、サ ー バ 統 合と同 時 に かにしてきた。 コンセプトを提唱するとともに、早期か データ統合を進めていくことを決定し、 らストレージ製品の開発を支えるシステ ストレージ製品のさまざまな設計データ ム を 対 象として 自ら実 践して い る。な を一元的に管理していくことになりまし お、同事業部内では、このシステム自体 た。そして、実運用を通じて私たち自身 品質保証の評価作業と並行して VSPを先行導入 2010 年 10 月、日立の RAID システム事 ●日立製作所 RAIDシステム事業部における各種ストレージ仮想化技術の活用状況概要 業部は、USP を最新のエンタープライズ ストレージ「 H i t a c h i V i r t u a l S t o r a g e (以下、VSP )にリプレースし Platform 」 た。日立の RAID システム事業部 開発本 開発サーバ群 Linux® Solaris® Windows® HP-UX 部 システムインタフェース設 計 部の部 SAN Hitachi Virtual Storage Platform (内蔵30TB) 仮想ボリュームの階層化 Tier-1:SSD Tier-2:SAS Tier-3:SATA ストレージ容量30%削減 (従来導入実績比) 新機種 設計データ 長である小林 正明氏は、こう語る。 旧機種 設計データ 部門共有 データ 仮想ストレージ用プール 旧機種 設計データ 「今回のリプレースは VSP のリリース の約 1 年前から準備してきたものです。 製品マスタ データ 品質保証部門で進められていた評価作 ボリューム容量仮想化 業と並行しつつ、お客さまへの提供に先 だって、VSP の導入効果や移行手順をき SSD SAS SAS SAS SATA SATA SATA SATA ストレージ階層仮想化 ちんと実証しておくことを目的としてい 論理ボリューム設計の容易化 (容量設計・性能設計が不要) ※一部、 今後の 予定を含みます ました。特に今回は、ストレージデバイ ス仮想化機能を司るコントローラを切り ストレージデバイス仮想化 替えることになります。お客さまに安心 して使っていただける製品であることを 遠隔 部門共有 データ 旧機種 設計データ 旧ディスクアレイ (37TB) 製品マスタ データ 設計データ 設計データ バックアップ バックアップ 旧ディスクアレイ (48TB) 旧ディスクアレイ (66TB) ストレージ総容量 約191TB 10 Hitachi Storage Magazine Vol.5 設計データ バックアップ 遠隔バックアップ(約500km) (10TB) 実証するために、シングル構成のサーバ やクラスタリング 構 成 の サ ー バ 、仮 想 サーバなど、多様なサーバ接続パターン を含んだシステムを自分たちで構築・運 日立製作所 RAIDシステム事業部 開発本部 システムインタフェース設計部 部長 小林 正明氏 日立製作所 RAIDシステム事業部 開発本部 システムインタフェース設計部 主任技師 渋谷 廣二氏 日立製作所 RAIDシステム事業部 開発本部 システムインタフェース設計部 技師 永松 和重氏 用するようにしました」 こで、どのようなバランスで SSD 、SAS 、 また、ボリューム容量仮想化機能につ SATA の各ドライブを搭載すれば最もコス いても、VSP の導入とともに運用を開始 トパフォーマンスが高くなるのかといった した。この機能は、物理容量よりも大き “さじ加減”も見極めていきたいと考えま な論理容量を各サーバに割り当てるもの 日立製作所 RAIDシステム事業部 開発本部 システム第一設計部 主任技師 高田 豊氏 した」 だ。従来のように詳細なボリューム容量 設計を行わずとも、業務ごとに必要な容 量を 持った ボリュー ム を 簡 単 にプ ロビ ジョニングして使用できるようになる。し ストレージ容量を30%削減し 運用管理の負荷を1/4に軽減 かも、データは複数のドライブに自動的 現在、RAID システム事業部において に 分 散 配 置 さ れ る た め 、安 定し た パ 運用しているストレージ設計・開発シス フォーマンスを得ることができる。 テムの概要は図に示したとおりである。 もう 1 つの注目ポイントが、VSP で初め 既 存 の U S P から今 回 の V S P へ のスト て搭載されたストレージ階層仮想化機能 レージ変更、すなわち当初からの課題と の 実 運 用における評 価である。同 機 能 されていたストレージデバイス仮想化機 の開発にあたってきた日立の RAID シス 能を 司 るコントロ ーラ の 切り替え 作 業 日立の RAIDシステム事業部が実業務で利用して いるVSP(左)、USPほか(右) た。また、容量比率で数%しか搭載され テム事業部 開発本部 システム第一設計 は、非常にスムーズに行われた。「シン ていない SSD を有効活用するためには、 部の主任技師である高田 豊氏は、この グル 構 成サーバ のケーブル の差し替え 従来であれば詳細なチューニングを重ね ように説明する。 などもあり、すべてのサーバを完全にノ なければならないところですが、そうし 「ストレージ階層仮想化機能は、SSD ンストップとはいきませんが、業務を停 た手間もなく最大限のパフォーマンスが ( S o l i d S t a t e D r i v e )や S A S( S e r i a l 止した時間は 1~2 時間で済みました」と 引き出されています。もちろん、今後ボ Attached SCSI )、SATA( Serial Advanced Technology Attachment )といった価格容 小林氏は言う。 リュームの追加を行った場合も自動的に な お 、同シ ステ ム に 搭 載され たスト ロードバランシングが行われるため業務 量比および価格性能比が異なる複数種 レージ の総容量は約 191T バイトと非常 を停止する必要はありません。ストレー 別のディスクでストレージを構成し、そ に巨大な規模となっているが、それでも ジの運用状況をダッシュボード的にモニ れぞれのデータをアクセス特性に応じた 「従来導入実績比で、ストレージ容量を タリングする機能を強化した新バージョ 適切なディスクに自動配置することで、 (渋谷氏)という 約 30%削減しています」 ンの「 Hitachi Storage Navigator 」との相 コストを抑えながら性能向上を図るもの 大 幅な効 率 化を実 現して いる。もちろ 乗効果により、ストレージ運用管理に費 です。ディスク種別を隠蔽してしまうた ん、これはストレージデバイス仮 想 化 、 やされる工数は、4 分の 1 程度に省力化 め、複雑な管理やチューニングの手間は ボリューム容量仮想化、ストレージ階層 されました」と永松氏は語る。 不要で、より最適化されたシステム運用 仮想化といった一連のストレージ仮想化 「ますます増大していくデータ量に対 を実現します」 技術による成果である。 応するスケーラブルなクラウドの基盤と さらに、日立の RAID システム事 業 部 さらに、これらのストレージ仮想化技 して 、ストレ ージ に 求 められ る理 想 像 開 発 本 部 システムインタフェース設 計 術は、運用管理の面でも大きなメリット は、その存在を可能な限り意識させるこ 部の技師である永松 和重氏が、次のよ を発揮している。 となく、インテリジェントな機能を提供し うに言葉を続ける。 「ボリューム容量仮想化の採用ととも ていくことにあります。日立のストレージ 「当然、SSD をたくさん搭載すれば高 にストレージ階層仮想化が可能となった 開発のビジョンは、お客さまに対してよ い性能を得られますが多額のコストがか ことにより、どの業務に対して、どれくら り大きな安心感をお届けすることにある かります。一方、SATA であれば低コスト いの容量を割り当てるのかといった RAID のです」と渋谷氏が語るように、同社は で大容量を搭載できますが、SSD や SAS グループの初期設定に際して、厳密なボ さらなるストレージ の進化に向けてチャ に比べると性能は劣ってしまいます。そ リューム設 計を行う必 要がなくなりまし レンジしていく構えだ。 Hitachi Storage Magazine Vol.5 11 日立ストレージソリューション 製品ラインアップ ストレージシステム ファイルストレージ Hitachi Content Platform クラウド向けバックアップ/ アーカイブストレージ VFP500N VFP300N VFP100N ストレージセットモデル ゲートウェイモデル VFP2010 VFP2300 VFP2100 ミッドレンジストレージ ストレージサービス ストレージ管理ソフトウェア Hitachi Virtual File Platform 従来のNASを超える仮想ファイルプラットフォーム Hitachi Virtual File Service SANストレージ エンタープライズストレージ AMS2500 AMS2300 AMS2010 AMS2100 Hitachi Adaptable Modular Storage ボリューム容量の仮想化を全モデルに標準搭載 する高性能ストレージ Hitachi Command Suite 7 Hitachi Virtual Storage Platform ストレージ階層の仮想化およびボリューム容量の 仮想化、 ストレージデバイスの仮想化という3つ の先進の仮想化ソリューションを同時に提供する Hitachi Virtual Storage Service ストレージ管理ソフトウェア Hitachi Command Suite 7 データセンターのストレージリソースを統合管理 運用効率向上により、増え続ける運用コストの削減を支援 ストレージ階層 ビジネス継続 情報の利用価値に合わせた ストレージリソースの 有効活用を実現 業務データのバックアップと ディザスタリカバリ運用の 一元化を実現 階層ストレージリソース管理 Hitachi Tiered Storage Manager ストレージレプリケーション管理 Hitachi Replication Manager ストレージ統合 データセンター全体のストレージの 構成・性能を統合管理 Hitachi Command Suite 7 とても使い易い 大規模環境でも安心 仮想化にも対応 12 Hitachi Storage Magazine Vol.5 ストレージシステム稼働管理 Hitachi Tuning Manager ストレージハードウェア管理 Hitachi Device Manager データ入出力パス管理 Hitachi Dynamic Link Manager Advanced DATA D R I V E S O U R W O R L D A N D I N F O R M AT I O N I S T H E N E W C U R R E N C Y 新 機 能 紹 介 自部門の“蔵”は、全社の“蔵”への入り口となる ── Cloud on-Ramp ■対象ストレージ Hitachi Virtual File Platform 収穫した作物を効率よく保存するには、自分専用の蔵があったほうがよ い。ただ、いつまでもそこに置いておくだけでは、利益を生み出さない ばかりか、品質の維持に手間がかかるばかりだ。皆の収穫した作物を 1ヵ所に集めて管理することで、はじめて商品価値は生まれるのだ。自分 専用の蔵でありながら、皆の共通の蔵とも境目なくつながっており、しか も自分の作物をいつでも自由に出し入れできる仕掛けがあったなら・・・。 NASのアイランド化を解消する決定打 クラウド対応のファイル仮想化を実現 拠点や部門単位で NAS( Network Attached Storage )が個別に導 VFP は、全社的なコンテツクラウド(データセンター)に置かれた 入され、容量や性能の不足とともに増設されていく──いわゆる ストレージにデータを自動バックアップ/アーカイブすることがで NAS のアイランド化やサイロ化といった問題だ。これらの NAS の き、拠点や部門に設置されたファイルストレージ内のデータをコン バックアップやメンテンスのために拠点ごとに運用担当者を置く必 テンツクラウドに集約する。VFP が、Cloud on-Ramp(クラウドへの 要があり、コストと人材活用の両面から企業にとって大きな負担と 入り口) としての役割を果たすのだ。 なっていた。 コンテンツクラウドには、大 容 量ファイルストレージ「 H i t a c h i もっとも、だからと言って NAS を廃棄することはできない。ビジネ (以下、HCP )が設置される。データの管理は Content Platform 」 スで大きな役割を果たすデータは、どこからか与えられるものでは HCP 上で行えばよいため、管理者にとっては、従来のような拠点ご なく、常に現場から生み出される。販売や営業、顧客サポート、設 とのデータ管理の負荷が削減されるという点がメリットだ。 計・開発、製造といった、現場から生み出された企業活動の履歴や そして、この VFPと HCP の組み合わせがもたらす最大のメリットと 成果が NAS に蓄積されているのだ。こうしたデータこそ、自社の競 言えるのが、クラウドのデータでもローカルのデータと同様に扱え 争力を高め、付加価値をもたらす源泉となる。 るという点である。VFP 上で運用されていたデータが HCP にアーカ そこで NAS の抱える課題を抜本的に解決しつつ、さらなる高度利 イブされた後でも、それぞれの拠点や部門のエンドユーザーは VFP 用を推進していくため、日立がリリースしたのが「 Hitachi Virtual にアクセスすれば、HCP 上に移動したデータにもシームレスにアク (以下、VFP )である。 File Platform 」 セスできる。つまり、エンドユーザーは、保管場所を意識せずに、 VFP は、ファイルストレージとして業界トップ・クラスのスケーラビ 従来どおりの使い勝手でクラウド上のデータも活用できるというわ リティ (最大 1P バイトのファイルシステム・サイズ)と高いパフォーマ けだ。 ンスを誇る。さらに、NAS のアイランド化に対する決定的な解決策 このように VFP は、 「クラウド対応ファイル仮想化」と言える機能 となる機能を備えており、各拠点に乱立していた多数のファイルス を提供するファイルストレージであり、こうした特長こそ、同製品が トレージを統合し、管理の一元化を実現する。 Cloud on-Rampを称する理由である。 ●VFPとHCPによるCloud on-Rampが実現するクラウド対応ファイル仮想化の利用イメージ 拠点A 拠点B VFP VFP ユ ー ザ ー が 書き込 んだ データをセンターのHCP に自動集約 テナントA 拠点C VFP センター のHCPに あ る データもローカルのデー タと同様に利用可能 テナントB ポリシーベースでデータ を 自 動 バック アップ / アーカイブ テナントC HCP コンテンツクラウド (データセンター) Hitachi Storage Magazine Vol.5 13 先 進 事 例 株式会社 フジテレビジョン www.fujitv.co.jp 「Hitachi Storage Solutions」と「Xsigo VP780」で、 サーバ・ストレージ・I/Oの全面仮想化を実施。情報戦略を支 えるITインフラ全体の最適化を加速 株式会社 フジテレビジョン(以下、フジテレビ)は、業務システムの仮想統合を実施。大量の物理サーバをヴイエムウェア社の仮想化プラッ トフォーム「VMware® vSphere™」による仮想環境に集約し、コスト削減を図るのが狙いだ。プロジェクトの実施にあたっては、サーバ だけでなくITインフラ全体の最適化がテーマとして掲げられた。そこで同社は、 「Hitachi Storage Solutions」とシーゴシステムズ社 の I/O仮想化コントローラ「Xsigo VP780」を活用。サーバ・ストレージ・I/Oの全面仮想化により、サーバ台数やケーブル本数の大幅な 削減と、ストレージリソースの有効活用やストレージデバイスの一元管理など、数多くのメリットを実現している。 業務サーバが大幅に増加 仮想化による統合を決断 会社フジミックと、同社の IT インフラを長 年支援してきた日立をパートナーとして、 仮想統合に向けた取り組みに着手した。 フジネットワーク全 28 局の中核を担う キー局として、テレビ放送事業を展開す るフジテレビ。その情報戦略を担うのが、 同社の IT 部門である情報システム局だ。 放送事業に関わる IT インフラの整備・拡 的な I/O 統合が実現できる。サーバとコン トローラ の 接 続には 、低 遅 延 で 広 帯 域 ( 20/40Gbps )の InfiniBand ® が利用されて いるため、非常に高速な通信が可能だ。 I/Oの仮想化で ケーブル数を1/12に システムのパフォーマンスも向上 帯域制御機能も備わっており、重要な通 信を優先させることもできる。 「 Xsigo VP780 を含め、日立からワンス トップでサポートを受けられる点も、採用 充を通じて、ビジネスの成長を支え続け 今回のプロジェクトで注目されるのが、 のポイントでした」と福井氏は語る。 ている。 I/O の仮想化にも取り組んだ点だ。 新システムでは、冗長性を確保するた もっとも、業務を遂行する上では、いく 「ラックにサー バをフル 実 装 すると、 めに、1 サーバあたり 2 枚の HCA を搭載。 つかの課題もあった。 ケーブル類が滝のようになってしまいま サー バ 側には、1 台あたり 2 0 枚 の 仮 想 「特に懸念していたのが、サーバ台数 す。保守性も悪化するので、なんとか改 NICと 4 枚の仮想 HBA を認識させている。 の大幅な増加です。設置スペースは逼迫 善したいと考えていました」 (松原氏)。 これにより、物理 NIC/HBA 環境では本来 してくる上に、電力消費量も増すばかり。 とはいえ、 「セキュリティ上、ネットワー 氏は振り返る。 いった要 件を満足させようとすると、大 24 本必要だったはずのケーブルを 2 本に 集約。大量の物理 NIC/HBA を搭載する必 要がないので、サーバも 1Uタイプの日立 アドバンストサーバ「 HA8000/RS210 」を そこで同社が注目したのが、ヴイエム 量の NIC/HBA が必要となり、拡張スロット 採用できた。 ウ ェ ア 社 の 仮 想 化 プ ラ ットフォー ム の物理的な制約で理想の仮想環境は実 「物理 NIC/HBAと同じような感覚で運用 「 VMware ® vSphere™ 」による仮想統合で 現できなかった。その結果、本来の要件 できて、スピードも非常に速い。 『 VMware ® IT インフラの最適化を図るためにも、抜 本的な改革が必要と考えました」と松原 クのセグメントを NICレベルで分離したい」 「データ通信経路の冗長化を図りたい」と ある。 を制限 することになりながらも、大 量の vMotion™ 』が、わずか 2 秒で処理できる 「本番システムに適用する前に、パイ ケーブルが伸びていた。 のには驚きました」と持丸氏は評価する。 ロットシステムで十 分な評 価・検 証を実 こうした問題を解決する製品として日 施。その結果、性能・信頼性に問題がな 立が提案したのが、シーゴシステムズ社 いことが確認できたので、本番システム の I/O 仮想化コントローラ「 Xsigo VP780 」 への全面展開を決断しました」と大瀧氏 だ。同製品は、サーバに搭載する物理ア は説明する。 ダプタ( H C A )に対して 、仮 想 的に N I C / 同社は、グループの IT 企業である株式 HBA を提供する機能を備えており、効率 14 Hitachi Storage Magazine Vol.5 ボリューム/デバイスの 仮想化でストレージ基盤の 最適活用を推進 もう一つ見逃せないのが、ストレージ ●(株) フジテレビジョンのサーバ・ストレージ・I/Oの仮想化基盤概要 VM MSCS VM VMware ® ESX VM VMware ® vMotionTM VMware ® ESX VM VMware ® HA 日立アドバンストサーバ 「HA8000/RS210」 VMware ® ESX I/O仮想化コントローラ 「Xsigo VP780」 FC-SW FC-SW 日立ディスクアレイシステム 「Hitachi Universal Storage Platform V」 Hitachi Dynamic Provisioning Hitachi Universal Volume Manager 日立ディスクアレイシステム 「Hitachi Adaptable Modular Storage 2300」 基 盤 の 最 適 化 だ 。以 前より同 社 で は 、 コストの最適化も図っている。 「 Hitachi Storage Solutions 」の性能や信 「ボリューム/デバイスの仮想化によ 頼性を高く評価しており、重要なストレー り、ストレージ基盤に潜むムダを効果的に ジ基盤として活用してきた。今回もその 省くことができました。運用管理の効率 機能を活かし、さまざまなメリットを実現 化も図れていますので、コスト削減にも している。 大きく貢献しています」 (大瀧氏)。 「Hitachi Dynamic Provisioning」 1 点目は、 さらに、効率化という点で、新たに導 によるボリューム容量の仮想化だ。 入された「ゼロデータ破棄機能」が威力を 本機能を利用すれば、各サーバに対し 発揮。これは、実際に物理容量を消費し て、実際の容量に制限されることなく、自 ている仮想ボリュームに対し、ゼロデー 由に容量を割り当てることができる。 タのみのページを破棄し、容量を効率化 「サーバ の追加や更新が発生しても、 する機能だ。ストレージ間でデータ移行 ストレージ側での対応は極めて容易に行 を実施した際にも強力に効果を発揮し、 えます。ストレージ設計の自由度も格段 仮想化されたストレージプールの容量を に増加しました」と小原氏は話す。 有効活用する上で、大きな効果をもたら 現在は約 60TB の実容量が管理されて してくれる。破棄作業もユーザー側で容 おり、基幹系業務が稼働するストレージ 易に実施できるため、同社も積極的に活 プールでは、実際の約 2.5 倍の仮想容量 用している。 を割り当てている。 「 Hitachi Universal Volume 2 点目は、 Manager 」によるデ バイスの仮 想 化だ。 同社では複数のストレージ製品を導入し ているが、これらを「 Hitachi Universal Storage Platform V 」の配下へ仮想統合 I/O仮想化コントローラ「Xsigo VP780」 の採用により、スッキリしたサーバラック 背面(左) と、ストレージ基盤の最適活用を 推進する「Hitachi Universal Storage Platform V」 (右)。 しかし、日立の支援を活用し、着実に課 ITインフラ全体を 効果的に仮想化 サーバラック数も 1/10以下に削減 題を解決。その結果、IT インフラ全体を 効果的に仮想化。最終的には、十数ラッ クに収 容され ていた約 15 0 台 のサー バ が、わずか 1ラックに集約される予定だ。 「ビジネス環 境の変 化に即 応できる、 し、運用管理の一元化を実現。また、高 これほど大規模な仮想統合は同社とし 柔軟な IT インフラを作り上げていきたい」 速 性 が 要 求され るデ ータは ハ イエンド ても初の試みだった上に、VMware ® 上で と松原氏は抱負を語る。フジテレビの IT ディスクに、そうでないデータは安価な 「 Microsoft ® Cluster Service 」を稼働させ インフラの整備・拡充を、Hitachi Storage ディスクに配置することで、データ保管 るなど難しい要件も多かった。 Solutionsと Xsigo VP780 が支えていく。 Hitachi Storage Magazine Vol.5 15 先 進 事 例 中外製薬株式会社 http://www.chugai-pharm.co.jp/ Hitachi Universal Storage Platform VMを活用し 基幹システムを仮想化、同時に災害対策用システムを再構築 中外製薬は、保守期限の満了が迫ってきた SAP® R/3® 4.7からSAP® ERP 6.0へのバージョンアップに合わせ、基幹システムを支え るインフラの全面的な仮想化に踏み切った。そこでのプラットフォームとして採用したのが、日立のブレードサーバ「BladeSymphony」 ならびにストレージ「Hitachi Universal Storage Platform VM」 (以下、USP VM)であり、将来のプライベートクラウドへの展開 を見据えた基礎を築いた。 SAP ERP 6.0への バージョンアップを機に 基幹システムのインフラを刷新 ただ、この基幹システムも歳月の経過 グループマネジャーの岡村真吾氏は、そ とともに次第に老朽化し、ハードウェアや の狙いを次のように語る。 中外製薬は、 「がん」 「腎」 「骨・関節」 SAP ® R/3 ® 4.7 から SAP ® ERP 6.0 への や周辺機器と合わせてラック 4 本を占め という領域を中心とした医療用医薬品の バージョンアップに合わせ、基幹システ るまでになっていました。これらの業務シ 研究開発・製造・販売・輸出入を行ってい ムを支えるインフラの全面的な刷新に踏 ステムを仮 想 化 することで 少 数 の 物 理 る。特に、新しい治療方法が強く望まれ み切った。 サーバに集約し、ハードウェア資源を効 ® ® の保守サポート期限の満了が 「旧基幹システムの物理サーバ台数は 迫ってきた。そこで 2010 年 8 月、同社は 本番系だけで 21 台に膨らみ、ストレージ ® SAP R/3 率化するとともに SAP ® ERP 6.0 へのバー ている「アンメットメディカルニーズ」の高 災害対策用のリモートサイトで 仮想化とUSP VMを先行導入 した。また、基幹システムの安定運用の の創出に取り組んでいる。 基 幹システム の再 構 築に際して中 外 る必要があります。その意味でも仮想化 い 疾 患 領 域において、同社の最 大の強 みである「バイオ・抗体技術」のような最 先端技術を駆使し、独自性の高い医薬品 ジョンアップコストを削減したいと考えま ためには、サーバ構成の標準化を徹底す 一方、グローバル化という観点から大 製薬がチャレンジしたのが、仮想化の本 は、ハードウェア構成への依存度が低く、 きな転機となったのが、2002 年 10 月に締 格的な導入である。新たなプラットフォー 有益なアプローチになると考えました」 結したエフ・ホフマン・ラ・ロシュ (以下、 ムとして選定した日立のブレードサーバ もっとも、同社の基幹システムは医薬 ロシュ)との 戦 略 的アライアンス だ。ロ である BladeSymphony ならびにストレー 品の供給を支えるものである。重大なト シュ・グループの一員として協働すること ジ USP VM で構成されたインフラに対し ラブルによるシステムダウンは医薬品の で、中外製薬は「世界に通用する日本の て、仮想化ソフトウェア「 VMware ® ESX 安定供給を損ないかねないだけに、仮想 トップ製 薬 企 業 」への飛 躍を目指してい Server 」を適用し、従来、1 業務システム 化という新たな仕組みをいきなり導入す る。そして、このロシュとのアライアンス に物理サーバ 1 台を割り当てていた運用 るわけにはいかず、綿密な検証が必要に 締 結を機に中 外 製 薬は、SAP ® R /3 ® を 形態をあらため、サーバ の集約・統合を なる。 ベースとした基幹システムを構築し、約 進めていくという取り組みだ。 そこで同社は 2006 年ごろから、試験的 40 台の物理サーバで運用していた。 中外製薬 情報システム部 IT インフラ に「 VMware ® ESX Server 」を導入。安定 中外製薬株式会社 情報システム部 ITインフラグループ マネジャー 岡村 真吾氏 16 Hitachi Storage Magazine Vol.5 中外製薬株式会社 情報システム部 ITインフラグループ 基幹システムチーム 田上 定佳氏 中外製薬株式会社 情報システム部 ITインフラグループ 基幹システムチーム 松田 浩一郎氏 性や可 用性に関する調査や検 証を重ね ●中外製薬における災害対策のシステム構成 ながら、そ の 実 用レベ ル を見 極 め てき 本番サイト リモートサイト た。そして、 「これなら大丈夫」という確 仮想サーバ (業務システム/ 21台) 仮想サーバ (業務システム/ 14台) 信を持つに至ったのが、2009 年初頭のこ とである。 「災害対策を強化するために開設した VMware® ESX Server VMware® ESX Server リモートサイトのインフラを、仮想化アー 本番サイトからリカバリサイトへの切り替えは 「VMware vCenter Site Recovery Manager」 で実行 キテクチャーに基づいて構築しました。こ の運用実績に基づいて、Windows ® 系の 業務システムは仮想化環境に移行しても 何ら問題ないと判断したのです」と岡村 氏は振り返る。この時点において、リモー システム領域 トサイトに先行導入したストレージが USP システム領域 「Hitachi Universal Replicator」 による 常時リモートコピー VM であった。 「 USP VM を選んだ直接の理由は、本 データ領域 番サイトとリモートサイトの間でデータの データ領域 USP VM USP VM リア ルタイム 同 期を 実 現 す る H i t a c h i Universal Replicator の提案を受けたこと (Recovery です。USP VM は、災害時の RPO Point Objective:復旧時点目標)を極小 に働いており、コントローラのプロセッサ 可能にすると大きな期待を寄せている。 化、すなわちデータ損失をほぼゼロにし の処理能力にもまだまだ余裕がある』 とい 中外製薬では、まだこの技術を利用し た いという当 社 の 要 求に 応えると同 時 う報告を受けており、USP VM は安定した ていないが、岡村氏は将来的な利用開始 に、仮想化環境における運用にもフィット 基盤サービスの提供に貢献しています」 を見据えたうえで、プライベートクラウド するという点で、当社にとって最適なスト さらに、主に業 務アプリケーションの を目指す同社インフラのビジョンを次の 運用に向けてインフラサポートを担当す ように語る。 る立 場から、同チーム の 松 田 浩 一 郎 氏 「もともと今回の仮想化を指向した時 レージでした」 (岡村氏) 当初の予想を超える I/Oパフォーマンスを発揮 が、このように語る。 点から、クラウド化のイメージを持ってい 「アプリケーションチームからは、新し ました。まだ構想段階ですが、将来的に い開発環境や検証環境を提供してほしい は USP VM が持つストレージデバイス仮 こうして中外製薬の本番サイトにも導 という要望も多数寄せられているのです 想 化 の 機 能を活 用したいと考えて いま 入 され ることに なった U S P V M は 、 BladeSymphonyとともに仮想化インフラ の運用を支え、これまで 21 台の物理サー が、今回構築した仮想化環境では標準化 す。それによって、基幹システム以外の されたテンプレートをコピーする形で、簡 さまざまなシステムのストレージ、さらに 単かつ迅速に仮想サーバを提供すること はコスト容量比にすぐれたミッドレンジの バに分 散していた本 番 系 基 幹 業 務シス ができます」 ストレージなども 1 つのプールに統合する テムを、3 分の 1 の台数となる 7 ブレード ことができます。そうなれば、さまざまな プライベートクラウドを見据え ストレージデバイス 仮想化に期待 プールから切り出して提供することが可 「 2010 年 8 月に旧環境からの移行を完 「今はサーバ集約による成果を収穫す 期待しています」 了し、本番運用を開始して以来、USP VM る時期」 (岡村氏) としつつ、中外製薬は 田上氏も、今回の基幹システム仮想化 は 1 度も重 大なトラブ ルを起こしておら す でにその 先 のステップも見 据えて い プロジェクトを振り返り、次のように語る。 ず、とても安心感があります。加えて、当 る。 「プライベートクラウドを目指すうえで に集約した。同社 情報システム部 IT イン フラグループ 基幹システムチームの田 上定佳氏は、その運用面から得た手応え を次のように語る。 サーバ で必要とされるストレージをその 能になり、業務サイドからの要求に、より 迅速かつ柔軟に対応できるようになると 初予想していた以上に良好だったのがパ そうした中での重要なテーマと位置付 インフラ設計の中心に据えて考えるべき フォーマンスです。仮想化環境への適用 けているのが、インフラサービスの “プラ はストレージ であるというのが、今回の ということで、I/O のレイテンシーがネック イベートクラウド化 ”である。岡村 氏は、 基幹システム再構築プロジェクトから得 にならないかと心配していたのですが、 同社インフラをクラウド化するに際して、 た実感です。その意味でも、USP VMをは まったく問題はありませんでした。日立の USP VM に備わるストレージ仮想化が、効 じめとする日立のストレージ、ならびにそ エンジニアからも、 『キャッシュが効果的 率的かつ効果的なシステム構築・運用を の進化に注目しています」 Hitachi Storage Magazine Vol.5 17 先 進 事 例 オーバーストック・ドットコム( Overstock.com ) http://www.overstock.com/ 米国オンライン小売り大手企業の 競争力を強化したストレージ仮想化技術 膨大な商品を扱うオンラインビジネスを円滑に運営するため、米国オーバーストック・ドットコムは、レガシーなストレージ環境を柔軟性の 高い階層型ストレージインフラに置き換えることを決断。 「Hitachi Universal Storage Platform V」 (以下、USP V)や「Hitachi Adaptable Modular Storage 2500」 (以下、AMS2500)などで構築した新たなストレージ環境では、ストレージ仮想化技術を積 極的に活用し、データ移行作業の所要時間を数時間から数分に短縮するとともに、管理作業の一元化も実現した。 競争力強化の課題は ストレージ環境の効率化 万ドル超となった。同社サイトが扱う商品 ニングや移行が困難になり、これらの作 数 は 創 業 時 の 10 0 未 満から、書 籍 、音 業に伴って何時間ものダウンタイムがし 楽、映画、ゲームが 72 万タイトル以上、 ばしば発生していた。 オーバーストック・ドットコムは米国の そのほかの商品も 6 万 3,000 以上に増え 「以前の IT インフラは柔軟性に欠けて 大手オンライン小売企業で、有名ブラン ている。 いましたし、保守料も上がり始めていまし ドの商品を格安に販売することでも知ら インターネットで日用品や車、さらには た。そこで当社は、古い 機 器を更新し、 れている。同社は、Web サイトのいたると 不動産を購入するのは、当たり前になり 異機種混在のストレージ環境を適切に管 ころに「今日は何を買って節約しますか」 つつあるが、オーバーストック・ドットコム 理する方法を見つけだそうと考えたので というキャッチコピーを掲げている。ユタ は、ダイナミックな消費者向け市場で競 す。ビジネスの観点から見て、コスト効率 州ソルトレークシティに本 社を置く同 社 争 力を発 揮していくには、消 費 者 1 人 1 の高い運用を実現し、ダウンタイムをなく は、メーカーの高品質な過剰在庫や処分 人、取引 1 件 1 件が重要だと考えている。 すことは、競争力を保ち、顧客を満足さ 品を、Web ベースのアウトレット・モール このため、同社は優秀な技術スタッフを せるために不可欠です。われわれには、 やオークション・サービスを通じて消費者 採用し、顧客の期待以上のサービスを提 われわれの足を引っ張るのではなく、わ に提供している。 供するとともに、新ビジネスの開拓に向 れわれの役に立つ先進的な技術が必要 多数のパートナーがオーバーストック・ けた開発調査プロジェクトを継続的に実 でした」と、オーバーストック・ドットコム ドットコムのサプライチェーンに参加して 施している。 の技術担当上級副社長、サム・ピーター いるが、購入手続きや返品、配送、問い ここ数年、オーバーストック・ドットコム ソン氏は語る。 合わせといった、顧客が体験する買い物 では、データが急激に増大し、ストレージ のプロセスは一元化されている。 インフラの大幅な増強が行われてきた。 10 年前に立ち上げられたオーバース しかし、短期間に急成長した企業にはよ トック・ドットコムの Web サイトは現在、消 くあることだが、同社では、ローカルディ 費財のオンライン販売で大手の一角を占 スクとサーバ全体に渡ってデータが分散 オーバーストック・ドットコムの IT 部門に め、2009 年の商品販売総額は 8 億 5,000 していた。そのため、データのプロビジョ は主要なグループが 2 つあり、それぞれ “ 18 USP Vの仮想化機能で 異機種ストレージを集約 USP Vのおかげで、多様な機種が混在するデータセンターを 柔軟に運用できるようになりました。 オーバーストック・ドットコム 技術担当上級副社長 サム・ピーターソン氏 Hitachi Storage Magazine Vol.5 ” 運用と開発を担当している。運用チーム 能を豊富に備えたエンタープライズスト が本番データのコピーを作成し、そのコ レージだ。仮想化の対象になった配下の ピーを使って開発チームがコードのテスト ストレージをすべてカバーする単一の管 やプロジェクトの展開を行っている。 理インタフェースも用意されている。 管理作業の簡素化とともに スペースの削減にも貢献 USP V を中心とする新ストレージ環境 「従来は、ホストのサービスを停止しな USP V により、オーバーストック・ドット に移行して以来、オーバーストック・ドット ければ、ストレージ間でデータを移行で コムは、すべての異機種ストレージを 1 つ コムは、本番運用でのデータ移行にかか きませんでした。われわれは、サービス の仮想化プールに集約して統合できるよ る時間を数時間から数分に短縮し、スト を稼働させたままストレージ間で、そして うになった。この仮想化プールは、最大ス レージを個別に管理する必要もなくなっ 同じストレージ内の階層間で、データを トレージ容量 247P バイトまで拡張できる。 た 。そして 、顧 客との やり取りや 顧 客 移行できるアーキテクチャーを必要とし 「 USP V のストレージデバイスの仮想化 サービスも、信頼性の高い形で迅速に行 ていました」と、同社の技術運用担当副 機能を最初に適用したときでも、ほとん えるようになり、オーバーストック・ドット 社長、カーター・リー氏は語る。 ど時間はかかりませんでした。しかも今で コム はこれまでと同 様に、オンライン・ パフォーマンスの向上やデータ移行能 は、外部ストレージを各製品固有のツー ディスカウント市場での優位性を堅持し 力の強化、プロビジョニングの簡易化と ルから管理する必要はなくなっています。 ている。 いう観点から、オーバーストック・ドットコ いったん仮想化すれば、データのプロビ 「スペースを切り詰めて、無駄が出な ム の I T 部 門は 、日立 デ ータシステムズ ジョニング、移行、階層化は USP V から実 いようにすることは、われわれにとって重 行できるからです」 (リー氏) 要なテーマです。USP V で管理を一元化 ションを導入することを決定した。 U S P V の 配 下には 、ミッドレンジスト す ることで 、わ れ わ れ は 、作 業 の オー 「 われ われ は ベンダ ー 数 社 にデ モを レージの AMS2500 、と旧製品の「 Hitachi バーヘッドを軽減し、データセンターを大 行ってもらいましたが、HDS のデモでスト 幅に簡素化することに成功しました。今 レージ仮想化が実環境でどう機能するか (以下、 Adaptable Modular Storage 500 」 AMS500 )がそれぞれティア 2 、ティア 3 ス では、ホストを停止することはなくなり、 を理解できたのです。また、われわれは トレージとして接続されている。 Web サイトは常時稼働しています。アプリ (以下、HDS )のストレージ仮想化ソリュー HDS の既存ユーザーとも話し、彼らの環 「 AMS2500 は、実に強力です。われわ ケーションも、データが移動していること 境における稼働状況について聞くことも れはティア 2 のデータのほとんどを、一時 を 知ら ず に 済 むように なって い ま す 」 できました。これは、とてもな有益な経験 的に AMS500 に保存していました。このス でした。HDS の評判やアプリケーションの トレージ の日中 のビジ ー 率 は 平 均 5 0 ~ (リー氏) 「 USP V のおかげで、多様な機種が混 可用性の保証も加味して考えたら、われ 80%でした。AMS2500 にすべてのデータ 在するデータセンターを柔軟に運用でき われにとって最適なベンダーを選ぶのに を移行したところ、パフォーマンスが格段 るようになりました。特 定 の 機 種 のスト に向 上しました。同じ量 のロードでのビ レージに依 存することなく、必 要に応じ ジー率は、終日平均で 5%に満たなかった てベンダー各社のストレージを導入して のです。仮想化もフェールオーバーの構 きましたが、それらをすべて仮想化でき トコピー、ボリューム容量の仮想化、スト 成も手 動で 行わずに済むようになりまし るうえ、プロビジョニングや管理も USP V レージデバイスの仮想化、無停止マイグ た。AMS2500 がわれわれの代わりに処理 のフレームワークに基づいて行えるので レーションといったインテリジェントな機 してくれるからです」とリー氏は説明する。 す」 (ピーターソン氏) そ れ ほど 時 間 は か かりませ ん でし た 」 (ピーターソン氏) 同社が選んだ USP V は、非同期リモー Hitachi Storage Magazine Vol.5 19 T O イベントレポート P I C S 「Virtualization World 2010」が開催 ──日立のお家芸、ストレージ仮想化のメリットを力説 クチャを構築できるというのだ。 2010 年 12 月 8 日、仮想化コンファ レンス「 Virtualization World 2010 」 宮崎氏は、各機能の概要とともに、 (主催:IDG ジャパン/ IDG インタラク それらのメリットについて語った。スト ティブ)が開催された。同コンファレン レージデバイスの仮想化は、本体に スには、日立製作所 RAIDシステム事 接 続した複 数のストレージを仮 想 化 業部 事業企画本部 製品企画部で主 し、論理プール化する機能。他社製 管 技 師を務 める宮 崎 聡 氏 が 登 壇 。 品の接続にも対 応しており、異機 種 「 サ ー バ 統 合・仮 想 化 に 向 け たスト 混在環境の一元管理や既存資産の レージソリューションの進 化 」と題し 有効活用などが可能になる。 て、仮想化環境におけるサーバとスト ボリューム容量の仮想化は、アプリ レージ の連携について、同社の取り ケーションに割り当てるボリューム容 組みを披露した。 日立製作所 RAIDシステム事業部 事業企画本部 製品企画部 主管技師 宮崎 聡氏 高効率のIT環境を包括的に支援する 「One Platform for All Data」 量を仮想化することで複雑なボリュー ム容量設計や性能設計を簡素化する。 これらは、それぞれ 2004 年、2007 年 力な IT プラットフォーム製品群を取り揃え に開発されたもので、仮想化を行わない ている。加えて近年は、仮想化/クラウ 一般のストレージと比較して、TCO( Total 冒頭で宮崎氏は、調査会社のレポート ド環 境 へ の 対 応を強 化して おり、 「One を引用し、IT プラットフォームの市場動向 Platform for All Data 」の実現に向けて着 Cost of Ownership )をストレージデバイス の仮想化の適用により約 29%、さらにスト について説明した。それによると、2009 実に歩を進めている状況だ。 レージデバイスの仮想化とボリューム容 成長率は 28.1%に達し、2011 年には、仮 ITプラットフォームの課題を という。 想サーバ 数が物理サーバ 数を上回る規 多彩なストレージ仮想化で解消 年から 2013 年の仮想サーバ設置台数の 量の仮想化を適用すると約 40%削減する 一 方 、ストレ ージ 階 層 の 仮 想 化 は 、 2010 年に発表された VSP が搭載する機能 模に成 長 する。こうした背 景を受けて、 「 急 激 に 変 化 す るビジネス 要 件 へ の 対 宮崎氏は、仮想化/クラウド環境の構 である。同機能は、アクセス頻度に応じて 応、継続的に増加・多様化するデータ量 築を強力に支援する各種ストレージ仮想 データを最適な記憶媒体へ配置する。同 への対応、既存資産の有効活用と余剰コ 化機能について解説を進めた。同氏は、 機能では、アクセス頻度の高いデータを ストの削減といったことが、IT 部門にます まず「 DATA DRIVES OUR WORLD AND ます求められている」と同氏は指摘した。 INFORMATION IS THE NEW CURRENCY 」 日立では、多 様・大 量な情 報の集 積・ という日立のストレージソリューションビ 活 用を一 元 的 か つ 効 率 的に 実 現 する ジョンを示したうえで、同社のソリューショ 「 One Platform for All Data 」というコンセ ンには、企業が膨大なデータから価値あ SSD(Solid State Drive)階層に、次にアク セスが高いデータを SAS( Serial Attached SCSI)階層に、アクセスの少ないデータは S ATA( S e r i a l A d v a n c e d Te c h n o l o g y Attachment)階層に自動配置することでパ プトで、そうした課題を解消しようとして る情報を創出することを支援する狙いが フォーマンスを最大化する。 いる。このコンセプトを簡単に説明する あると強調した。 宮崎氏は、 「物理環境から仮想環境に と、運用管理ミドルウェアやサーバ、スト その核となる技術が、日立ストレージ 移行するのに伴って、ディザスタ・リカバ レージ、ルータ/スイッチ、システム運用 が得意とする各種の仮想化機能である。 リや バックアップ、仮 想マシン のマイグ や製品保守サポートまで含んだ高付加価 同社のストレージは、 「ストレージデバイ レーション/複製など、サーバとストレー スの仮想化」 「ボリューム容量の仮想化」 ジの連携が重要になる」とし、そのために 値の垂直統 合 型プラットフォームによる 高効率のクラウド環境の実現である。 「ストレージ階層の仮想化」など多彩なス 日立が提 供しているソリューションを解 周知の通り日立は、エンタープライズ トレージ仮想化機能を有しており、それら 説。また、ボリューム容量仮想化を導入 ストレージ「 H i t a c h i V i r t u a l S t o r a g e を活用することで、膨大なデータからの したユナイテッド航空などのユーザー事 (以下、VSP ) をはじめとする強 Platform 」 価値創出を可能とする IT インフラストラ 例を披露し、講演を締めくくった。 20 Hitachi Storage Magazine Vol.5 調査レポート 米国CTO Edgeによる2010年の重要IT製品ランキングに 「Hitachi Virtual File Platform」がランクイン 企業 IT 情報を取り扱う米国のオンライ 効率化に寄与すると同サイトが判断した とファイルストレージのギャップを埋める ンメディアである CTO Edge が発表した、 ものが取り上げられている。 橋渡しとなる」と VFPを評しており、Cloud 2010 年に発表された企業向け IT 製品の 重 要 度 を 示 す ラ ン キ ン グ「 1 0 M o s t Important Enterprise IT Products of 2010」 において、 「 Hitachi Virtual File Platform 」 (以下、VFP:米国における同製品の名称 は「 Hitachi Data Ingestor 」)が 6 位にラン このランキングには、アップルの「iPad」 ( 4 位) と ( 2 位)サムスンの「 Galaxy Tab 」 いったタブレット端末や、シトリックスの デ ス クトッ プ 仮 想 化 ソリュ ー シ ョン ( 7 位)など、話題のテク 「 XenDesktop 5 」 ノロジ ー がランクインして い る。また 、 「 Hadoop 」に特化したソリューションを提 クインした。 CTO Edge は、米国 NarrowCast Group 供する米 Cloudera のようなスタートアップ が運営する IT Business Edge の姉妹サイ 企業も含まれている。 on-Ramp(クラウドの入り口)としての役 割が評価されたものと思われる。 CTO Edgeによる「2010年に発表された 10の最重要IT製品」ランキング 1 位 Brocade VDX 6720 Data Center Switches 2 位 Apple iPad 3 位 Microsoft Lync Server 2010 4 位 Samsung Galaxy Tab 5 位 Karmasphere Analyst トで 、企 業 向け I T 関 連 の 製 品 およびソ こうした多彩な製品群を対象にしたラン リューションに関する情報を発 信してい キングに、VFP は企業のコスト削減や効率 7 位 Citrix XenDesktop 5 る。今 回 発 表 され たラン キング に は 、 化に寄与する製品としてランクインした。 8 位 IBM zEnterprise 2010 年に発表された IT 関連製品の中で CTO Edge は「 Hitachi Content Platformと 9 位 Cloudera Enterprise も、企業におけるコスト削減、ビジネスの 併用することで、オブジェクトストレージ アワード Hitachi Virtual Storage Platformが 「iFプロダクトデザイン賞2011」を受賞 日立は、エンタープライズスト アワード 10位 Convirture ConVirt 2.0 界中の工業製品を対象にすぐれたデザイ ンを備えた製品を選定している。2011 年 は 16 の評価分野で 2,756 点の応募があ り、そのうち 993 点の製品が受賞した。 レージ「 Hitachi Virtual Storage 今回、コンピュータ部門において同デ (以下、VSP )が、工業 Platform 」 ザイン賞を受賞した VSP は、筐体前面に デザインの分野において世界的 陰影のある連続面を採用している。この に権 威のある「 iF プロダクトデザ デザインは、同製品の拡張性の高さを表 イン賞 2011 」を受賞したことを発 現するとともに、見る角度で単一色が複 表した。 数 色に見える効 果によって 仮 想 化 のイ iF プロダクトデ ザイン賞 2011 メージを表現している。 は、ドイツ・ハノーヴァーにあるデ また、連続面の奥に配されたパンチン ザイン振興機関 iF International グメタルにモスグリーン色を採用すること Forum Design GmbH が主催する で、グリーン IT を表現している。さらに、 工業デザイン賞。設立は 1953 年 同 製 品が複 数 台 並んだ際のデータセン で 、すでに半 世 紀を超える歴 史 ター内の壁面の美しさも考慮したデザイ を持っている。同団体が毎年、世 ンになっている。 日経コンピュータのパートナー満足度調査で 日立のストレージが4年連続のNo.1に 日経コンピュータ (発行:日経 BP 社)が 6 位 Hitachi Data Ingestor, Hitachi Data Systems (HDS) 日経コンピュータ 2011年 第13回 パートナー満足度調査 ストレージ部門1位 第 13 回 パートナー満足度調査は、日 された。2010 年 11 月11 日から 12 月 9 日に 2011 年 2 月 3 日号で 発 表した「 第 13 回 経 BP 社のメディアおよび調査モニター会 かけ てインターネットで 回 答を依 頼し、 パートナー満 足 度 調 査 」において、スト 員のうち、ソフトウェアベンダーやシステ レージ部門の満足度 No.1 ベンダーに日立 ムインテグレーター、コンサルティング会 860 件の有効回答を得た。同調査におい 「製品」 て日立は、12 の評価項目のうち、 が選定された。日立は、4 年連続で同部 社、VAR( Value Added Reseller:付加価 門の No.1 ベンダーとなった。 値再販業者)などの勤務者を対象に実施 「技術支援」 「商材の開発」 「営業支援」な ど、10 項目でトップの座を獲得した。 Hitachi Storage Magazine Vol.5 21 column 日立製作所 RAIDシステム事業部 ファイルストレージ開発本部 本部長 松田 芳樹 モノづくりは、芸術ではなく、 工業デザインである 1985 年の入 社 以 来 、一 貫してソフト ンジを仕掛けることが必要だと私は考え ンドです。お客さまがクラウドのメリットを ウェアの研究開発に従事してきた私が、 ています 。ファイルストレージ すなわち 享受できるファイルストレージはどのよう RAIDシステム事業部への異動を命じられ NAS( Network Attached Storage )という な姿か──この問いへの答えであると同 「ファイルストレージを、 たのは 2008 年。 従来のイメージを覆す新たな価値で市場 時に、市場にゲーム・チェンジを仕掛ける エンタープライズ、ミッドレンジに続く、 を変革しなければ、状況は変わりません。 という課題への答えが Cloud on-Ramp を 日立グローバル・ストレージ・ビジネスの 3 ただし、新たな価値と言っても、斬新 実現する VFP なのです。 本目の柱にせよ」というミッションを与え さだけでは市場に通用しません。かつて この新たなコンセプトを作り出すには、 (以 られ、 「 Hitachi Virtual File Platform 」 私は、文書管理システムの開発に携わり 私たち自身にもゲーム・チェンジが必要で 下、VFP )の開発プロジェクトに着手しまし ました。初めての製品開発ということもあ した。そのために別々だったハードウェア た。 り、意気込んで開発しましたが、多くのお 開発、ソフトウェア開発、製品企画の各 突然の辞令に驚きはありましたが、ソフ 客さまから「とっつきにくい」という評価を 部門を小田原に集結し、部門間の距離を トウェアで付加価値を実現している今日 いただいたのです。その開発で私は、一 近づけました。そうすれば情報共有が促 のストレージは、私がこれまで得てきた 定 の 思 想 の 下 に 整 合 性 があり、美しく され、引いてはメンバー全員とお客さま 経 験を存 分に生か せる分 野 だと言えま 整っていることを重視していましたが、そ との距離も近づけることになると考えた す。私は、新たな事業に挑戦できる喜び の結果、お客さまが使いなれた従来のソ のです。 に胸が高鳴りました。 フトウェアとは操作性などが大きく異なる もちろん、チームとしての一体感を作 とは言え、日立はファイルストレージ市 ことになったのです。そこで私が思い知 り出そうという狙いもありました。実際に 場で後塵を拝している状況です。この市 らされたのは「モノづくりは、芸術ではな われわれのチームは、非 常に士 気が高 場でトップの競合製品は確かにすぐれて く、工 業デ ザ イン である」ということで く、国内でも突出した実力を持っていると おり、その牙城を切り崩すのは容易なこ す。お客さまの経験価値や文化を踏まえ 自負しています。VFP は生まれたばかりな とではありません。優秀な先行製品があ なければ、受け入れられないのです。 ので、さまざまな試行錯誤が続くと思い るなら、それを踏襲すればよいという考 私は、このことを心にとどめ、VFP の開 ますが、このチームであれば、あらゆる え方もありますが、当社が躍進するには 発に臨みました。その視点で現在のニー 障壁を克服して勝利を収められると確信 他社に追随するのではなく、ゲーム・チェ ズを考えると、クラウドは見逃せないトレ しています。 22 Hitachi Storage Magazine Vol.5 V o l . 5 DATA DRIVES OUR WORLD AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY 〜データは世界を動かす そして、情報は新しい価値を生み出す〜 データは世界を動かす力を持っています。データに息吹を吹き込むことで、情 報に生まれ変わります。そして、情報は通貨のように世界中で交換され、格納 され、使われることで新しい価値を生み出します。 データと情報は、企業にとって最も重要な資産といえるのです。 DATA DRIVES OUR WORLD AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY このビジョンの下、日立ストレージソリューションは、企業が膨大なデータから 価値ある情報を生み出すことを支援していきます。 編集後記 ストレージ製品の多様性 今日のIT業界の中でも、ストレージは最 では、テクノロジーフォーカスで「Hitachi も動きが活発な市場です。昨年も、ベン V ir t u a l S t o r a g e Pl a t f o r m 」 (以下、 ダー各社が多くの製品を発表しました。 VSP) を取り上げ、信頼性の面から解説し それらの製品群を詳しく調べてみると、 ました。新 機 能 紹 介では、 「Hitachi 一口にストレージと言っても、十把一絡げ Virtual File Platform」 ( 以下、VFP) に にしては語れないことがわかります。SAN よるCloud on-Ramp(クラウドへの入り (Storage Area Network) ストレージと ファイルストレージの違いや、各製品が想 口) について解説しました。 記事にあるように VSPは、細部に至る 定している利用規模の違いもありますが、 まで耐障害性を高めるための配慮がなさ それら以上に製品を開発するうえでの考え [発 行] 株式会社アイ・ディ・ジー・インタラクティブ Hitachi Storage Magazine編集部 〒108-0074 東京都港区高輪8-18-10 日石高輪ビル8F [企画協力] 株式会社 日立製作所 RAIDシステム事業部 〒140-8573 東京都品川区南大井六丁目26番2号 大森ベルポートB館 本誌に記載している会社名・製品などは、それぞれの会社の商標または登録商標です。 本誌記載の内容について社外からの寄稿や発言は、必ずしも当社の見解を示している わけではありません。画面表示をはじめ、製品仕様は改良のため変更することがあります。 れ、エンタープライズ・ストレージと呼ぶに 方が大きく違うことが、ユニークな製品が 相応しい信頼性を実現しています。一方 数多く登場している大きな理由です。 のVFPは、コモディティ・ハードウェアを利 いずれのストレージも、ユーザーにとっ 用しながらソフトウェアで付 加 価 値を高 てのメリットを最大化するために各社が技 め、Cloud on-Rampのような先進機能 術の粋を投入して開発した製品であるとい を実装しています。 う点は変わりません。しかし、そのメリットを このように同じ日立のストレージであって 追 求するアプローチは千 差 万 別であり、 も、メリットを追求するアプローチは大きく それが搭載する技術や機能に反映され、 異なります。今号を通じて、日立ストレージ 製品ごとの独自性が生まれるのです。 製品群のそうした多様性が、読者の皆様 今回の Hitachi Storage Magazine にご理解いただければ、幸いです。 Hitachi Storage Magazine Vol.5 23