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小水力エネルギーが地域を変える
3 特集 農学部 植物生産環境科学科 ひよし けんじ 日吉 健二 助教 ※1 インバーター インバータ(Inverter)は、直 特 集 流電力から、一般の家庭用の電 化製品等で使われている交流電 力を電気的に生成する電源回路 や電力変換装置のこと。 ※2 ケーシング ケーシングは、効率よく発電で きるよう水をランナ ※ 3 に導く 装置である。ランナを取り巻く ように渦巻状の形をした管で、 ランナへ均等に水を導く。断面 は入口部から終端部にかけて流 速が一定またはやや増速するよ うに設計されている。 ※3 ランナ ランナは水を受けて軸を回転さ せるプロペラなどの羽根車のこ と。ケーシングに導かれた水は、 ランナに当たり、水の流れる力 を回転する力に変えます。その 回転する力が軸を通じて発電機 に伝えられる。 6 枚羽 3 枚羽(丸型) ※4 コーン ケーシングの中に空洞ができる のを防ぐ装置で発電効率が向上 する。 14 水の落差を利用してエネルギーを生 み出す超小型水力発電装置の研究に ついてお聞きしました。 超小型水力発電装置とは? 大きなダムや大きな落差を必要と せず、養殖場の排水や水路の小さな 落差で発電する装置です。その分発 電量も小さく、100W(エアポンプ 1 台分)から 1kW(一般家庭の 3 分の 1)程度です。 日本に昔からある水車は「開放周 流水車」と呼ばれ、上から水を当て るのを「上掛け水車」、下から水を 当てるのを「下掛け水車」と呼びま す。今回開発した装置の水車は「プ ロペラ式」と呼ばれ、プロペラの軸 と水流が同じ向きになります。 開発のきっかけは? 農業や水産業の現場には、小規模 ですが、水の落差が生じている場所 など、未利用エネルギーがあります。 これら小規模・低落差の水を利用し、 水車を回して発電すれば、その農業 施設や養殖場で電気を自家消費で き、生産の低コスト化に役立つかも しれないと考え開発しました。 開発当時は、二酸化炭素の排出量 を減らすために電気を使わないとい う発想から、1号機は発電装置では なくプロペラの回転軸をつかって養 殖場のエアポンプを稼働させる装置 でした。しかし、現場サイドからは 「電気が欲しい」という要望があり、 発電機をつけ、電気をバッテリーに ため、インバーター※1で 100V の 電力を供給できるようにしました。 これにより利用の用途も広がり、面 白い研究になりました。 宮崎大学内の実内実験装置 発電効率高めるコーンの開発 本来プロペラ式の水車は、空気が 入らないようになっていますが、こ の発電装置は、シンプル、低コスト でメンテナンスがしやすいようオー プンにしていました。このため、空 気が入りやすい構造になっていまし た。空気が入ると発電効率が落ちま すが、当初はケーシング※2で渦の回 転を作りランナ ※3 にあてると効率 よく発電できると思っていました。 ところが空洞ができてしまい、水の 引っ張る力が伝わらず、逆に発電効 率が悪くなりました。 これを解消したのが円錐状のコー ン※4です。渦の中心に設置すること で、空気を吸い込まず、コーンがな い場合と比べて発電効率が約2倍に なりました。現在、ケーシングとコ ーンの関係で特許を申請しています (特願 2009-016357)。 淡水養殖施設以外の活用は? 宮崎県綾町では、水路から湧水が 流れ落ちている落差を利用して設置 しました。 特集 製品化した超小型水力発電装置 のリーフレット 特 集 超小型水力発電施設 【設置例】宮崎県綾町の水路 宮崎県五ヶ瀬町で、水路に設置し てシカやイノシシから作物を守る電 気柵の電源に使えるか調査をしまし た。 宮崎県五ヶ瀬町の水路 下水処理場からも要望がありまし たが、予算の関係で設置できません でした。処理水は流量がちょうどよ く、固形物も混じっていないのでメ ンテナンスがしやすいと思います。 さらに、海水養殖施設の方からは 「フグやヒラメなど海水魚の方が市 場が大きいぞ」と助言をいただきま した。 開発で苦労したところは? 落ち葉対策です。ある養殖場では 池にたまった落ち葉がすべて、発電 装置を設置している排水槽に集まっ てくるので、その除去に苦労しまし た。さらに落ち葉対策は、設置した現 場の状況に合わせて対応するため、す べてオーダーメイドになります。 今後の展開は? ごみ対策が必須で、設置する現場 の状況に対応できるよう発電装置の バリエーションを増やしたいと思っ ています。 課題① ごみ対策 ある程度の大きさのごみが通過で きるようなプロペラの開発。羽を3 枚にすればカニも通過でき、回転も 速くなるが、多くの水量が必要。 課題② メンテナンスの簡易化 ごみを除去しつつ、メンテナンス が楽な装置の開発。 課題③ より少ない水量での発電 水量が少ない場所でも発電できる 装置の開発(現状の発電装置は 30 ~40 ㍑/秒の水量が必要)。 課題④ 発電装置の大型化 大型化して発電量を増やす。 発電装置を科学技術館や浄水場な どに設置し、子どもたちに再生可能 エネルギーをこうやって使えば電気 が作れるんだということを直接見て もらいたいです。 落ち葉やごみ対策 (ネットやスクリーンを設置) 発電装置の設置風景 15