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“男の作法”を極める家 - 家づくり見える化プロジェクト

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“男の作法”を極める家 - 家づくり見える化プロジェクト
うようになった。以前は渋谷という若者の街で働い
入を進めていたこともあり、今度の新居は、蕎麦が
ちょうど、賃貸マンション住まいから一戸建て購
理の楽しさを覚えていった。
ていたが、神田は昔ながらの下町。老舗のうまい蕎
本格的に打てて、自分が快適に料理できるキッチン
神田の会社に転職してから、足しげく蕎麦屋に通
代半ば
麦屋や飲み屋が何軒かあり、自分ももはや
にしようと計画をたてはじめた。
食べたくなって」と「男の作法」という本だ。池波
書フェア」で、ふと手にとった「散歩のとき、何か
響もある。近所の書店で開催されていた「男の教科
そこには、多分に、池波正太郎氏のエッセイの影
した油から火が出たのだった。
くと、大きな炎が上がった。いつのまにか高温に達
いい感じでできていると思ったとたん、はっと気づ
に次々とつけていく。頃合を見てサッと引き上げ、
戦していた。茄子や舞茸、海老に衣をつけ、油の海
そんなある日、僕はキッチンで初めて天ぷらに挑
氏の食に対する愛着と、男としての美学がつづられ
「わーっ!」
すぐにフタをして、火は消えたが、僕の声を聞い
」
た妻が何事かとキッチンに飛んできた。
「どうしたの
事態を説明すると、妻の顔が青ざめていった。
妻は翌日、早速、新居の建築を依頼している工務
止」を言い渡されてしまったこともきつかった。
僕も不安になってきた。妻から「しばらく料理禁
とあったら大変よ。木造だし。火事になっちゃう」
てみたら、店構えも、店内の空気も、昔の東京をし
まねで自分のつまみを作ったりするようになり、料
ンに立ったこともなかったのに、徐々に、見よう見
いった。それまで料理は妻任せで、ほとんどキッチ
へ 何 度 か 足 を 運 び、 蕎 麦 打 ち の 道 具 も 買 い 揃 え て
打ちたいと思うようにもなった。蕎麦の打ち方教室
妻にそう言われたせいか、やはり、蕎麦を自分で
「ここまできたら、自分で打ってみたら?」
となった。
夕方から蕎麦屋で過ごすひとときが、至福の楽しみ
いただく。そして最後は〝もり〟で締める。休日の
や板わさで一杯やり、そのあと、天ぷらを台抜きで
屋めぐりに精を出すようになった。最初に蕎麦みそ
平日だけでは飽き足らず、休日も妻を誘って蕎麦
ではの洗練を感じさせた。
「大事にならなくてよかったけど、新居でこんなこ
は、会社のすぐ近くにあるとわかった。ためしに行っ
本の中に紹介されていた須田町の蕎麦屋「まつや」
んな男の粋を、自分も身につけたいと思ったのだ。
ており、いっぺんでその世界のファンになった。こ
なあ、などと思い始めた。
だし、こんな店で渋い飲み方ができるってのもいい
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のばせ、さらりとした上品な蕎麦は、江戸っ子なら
!?
“男の作法”を極める家
◆ その5 ◆
木 造 住 宅 を 建 築 中 で す。 冬 は 火 事 の ニ ュ ー ス も 多
く、消防車の音を聞いて、防火対策をしたほうがい
いなと気づきました。何かいい方法がありますか。
かつては木造住宅というものは燃えやすいと思われて
いましたが、それは、「防火対策を施していない木造
住宅は燃えやすい」ということです。防火対策さえきちんと
していればいいのです。木は、全てが燃焼して建物が倒壊す
るまでの時間は、むしろ鉄骨などより長いといわれています。
逆に鉄は、熱を加えると、ある瞬間にグニャッと変形してし
まい、そうなったら早いようです。
今は、グラスウールの断熱材を、壁面や部屋と部屋との間
仕切り、 階と 階の間など家全体に入れることで防火対策
にする方法もあります。グラスウールは、素材がガラスなの
で、燃えにくく、たとえ火がついても燃え広がらないという
特徴をもっているので、防火対策として検討されてみてはい
かがでしょうか。
木造住宅を計画中ですが、丈夫さを考えると、やは
り 鉄 筋 に し た ほ う が い い だ ろ う か と 迷 っ て い ま す。
木造住宅のメリットを教えてください。
木造住宅のメリットは、なんと言っても「将来の可変
性」。家族のライフスタイルやサイクルに変化が生じ
た場合、木造住宅はその構造上、対応がしやすいのです。ま
た、骨組みの一部を交換するなど部分的な交換に対応できる
のも木造住宅ならでは。鉄骨の場合などはそうはいきません。
「木造住宅は鉄骨造より弱い」というのも今となっては過去
のものといっていいでしょう。どんな構造であっても、設計
に配慮がなかったり、いい加減な工事をしていればひとたま
りもありません。かつての木造住宅には、手抜かり工事も散
見されたため、このようなイメージがついてしまったようで
いつまでも健やかで心 地よさを実 感できる住まいを。
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店にこのことを伝えたらしい。そしたら、防火対策
として、グラスウールの断熱材を入れることを勧め
られたという。
階
「素材がガラスだから燃えにくいんですって。それ
を外壁だけじゃなく、部屋と部屋の間仕切りや
と 階の間にも入れれば、万が一、火が出たとして
も燃え広がらずに済むって」
昨日のことがあってから、
「新居ではあなたは揚
げ物禁止!」と妻は言っていたが、やはり、蕎麦に
天ぷらはつきものである。困ったな、どうやって説
得しようかなと思っていたのだが、この防火対策に
妻は納得して、
安心したようだ。これで心置きなく、
新居で僕も料理ができるというものだ。
池波氏は、
〝食べる〟作法についてはたくさん書
いているが、自分で〝作る〟作法についてはあまり
言及していない。けれど、肩肘はらないごく日常的
な衣食住を大切にすることこそが、人生を豊かにし
て く れ る の だ と 池 波 氏 は 教 え て く れ た。 今 の 僕 に
とっての〝男の作法〟は、自分で作り、自分で食す
ことだと思っている。そのために、キッチンや住ま
いを自分にとって完璧な場所にすることも男の美学
2
すが、現在の木造住宅の構造や設計については、格段に進化
していますよ。
■ 文:柴田麻里 ■ 絵:上田英津子 ■ デザイン:リリーフ・システムズ
■ 発行元:家づくり見える化プロジェクト
だと思うのだ。ボヤなんか出していたんじゃどうに
も格好がつかない。今度妻からキッチンに立つ許可
が出たら、
こんなヘマをしないように気をつけよう。
「男の作法を極めるなんて、一朝一夕にはいかない
んじゃない?」
妻はそう言うが、
「千里の道も一歩から」とも言
うではないか。まずは、新居のキッチンを完璧に計
画して、僕なりの〝男の作法〟を磨くべく、精進し
たいものだ。
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家 作り の 基本 知 識
専 門 家 に 聞 く!
長嶋 修(ながしまおさむ)氏
不動産コンサルタント・株式会社さくら事務所代表取締役
家づくり見える化プロジェクト主任研究員
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