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配付資料 - 日本学術振興会
学術フォーラム 「責任ある研究活動」の実現に向けて 「研究者の行動規範と研究不正の防止 に向けた日本学術会議の取組」 日本学術会議副会長 小林良彰 2013 年 2 月 19 日 日本学術会議講堂 日本学術会議とは ○ 我が国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的 として設置(昭和24年1月) ○ 内閣総理大臣の所轄の下、独立して職務を行う「特別の機関」として内閣府に設置 日本学術会議 我が国84万人の科学者の代表機関 会長 :大西 隆 副会長(組織運営等担当) :武市正人 副会長(政府との関係等担当):小林良彰 副会長(国際活動担当) :春日文子 第一部 (人文・社会科学) 第二部 (生命科学) 第三部 (理学・工学) ・勧告 ・要望 ・声明 ・提言 ・報告 ・答申 ・回答 政府 (各府省庁) 社 会 日本学術会議の役割 ○政府からの諮問に応じ答申 ○科学者としての見解を政府や社会に 対し提示(勧告、答申、要望、声明、 提言、報告など) ○各国アカデミーとの交流 ○国際学術団体への貢献 ○国際会議・シンポジウムの開催 ○地区会議を組織し、地域に応じた 活動を実施 ○学術研究団体と協力関係の構築 ○学術フォーラムの開催 ○サイエンスカフェの企画・実施 * 続発する「責任ある研究活動」に関わる問題 ・研究費の不正使用 ・論文捏造・偽造・盗用 ・科学研究の利用の両義性 本人の意図に反した目的に悪用される可能性 ・オーサーシップ 著者:「発表された研究の内容に責任を持ち、 研究において十分な貢献を果たした人々」 国際医学雑誌編集者委員会(1985) ・東電福島原発事故以降の科学に対する信頼変化 * 諸外国の取組 ・米国 2000年12月に科学技術政策局(OSTP)が連邦政 府規律採択。 公衆衛生総局(PHS)に研究公正局(ORI)を 設置し、全ての研究機関が研究不正事例申立てや告 発がなされた場合に受理、調査照会すると公式調査 (10年間で告発総数1777中259)。 改ざん40%、捏造22%、改ざん・捏造27%、 盗用6%、他5%。 * 諸外国の取組 ・ドイツ 1997年6月にドイツ研究協会(DFG)が国際的な 「科学における自律性委員会」設立し、同年末に 16項目の提言作成 → 欧州の基準として参照 全ドイツ学長会が上記提言に基づき、研究不正の申 立てを処理するモデルガイドラインを作成 ・フランス 1998年4月に国立保健医学研究所(INSERM) が委員会設立し、データ処理・論文・実験のクライ テリア保全のガイドラインを作成 * 諸外国の取組 ・デンマーク 1992年11月に科学的不誠実に関する委員会設立。 デンマーク研究省に属し、受け付けた申立てを 適切なレフェリーに送付して審査。 ・英国 英国科学技術局(OST)と研究評議会(RC)が 協力して、研究機関に対してガイドラインの策定と 周知を勧告。 医学評議会(MRC)をはじめ、多くの大学で、 予備的検討、査定、公式調査の手続きを作成。 * 日本学術会議の取組 第19期 学術と社会常置委員会 ・報告「科学におけるミスコンダクトの現状と対策―科学者コミュニティの 自律に向けて―」発出(平成17年7月) 第20期 科学者の行動規範に関する検討委員会設置(平成17年10月) ・声明「科学者の行動規範について」発出(平成18年10月) 第21期 ・幹事会声明「東日本大震災からの復興と日本学術会議の責務 」発出 (平成23年9月) 第22期 幹事会附置 日本学術会議改革検証委員会 学術と社会及び政府との関係改革 検証分科会設置(平成24年5月) ・声明「科学者の行動規範-改訂版-」発出(平成25年1月) * 改訂版のポイント ・論文捏造・偽造・盗用 Ⅱ. 公正な研究 で下記を再録 7(研究活動) 「科学者は、自らの研究の立案・計画・申請・実 施・報告などの過程において、本規範の趣旨に 沿って誠実に行動する。 (中略)研究・調査データの記録保存や厳正な取 扱を徹底し、ねつ造、改ざん、盗用などの不正 行為を為さず、また加担しない」 * 改訂版のポイント ・論文捏造・偽造・盗用 Ⅰ. 科学者の責務 に下記項目を追加 2(科学者の姿勢) 「科学者は、常に正直、誠実に判断、行動し、自ら の専門知識・能力・技芸の維持向上に努め、科学 研究によって生み出される知の正確さや正当性を 科学的に示す最善の努力を払う。」 * 改訂版のポイント ・論文捏造・偽造・盗用 Ⅰ. 科学者の責務 に下記項目を追加 3(社会の中の科学者) 「科学者は、科学の自律性が社会からの信頼と負 託の上に成り立つことを自覚し、科学・技術と 社会・自然環境の関係を広い視野から理解し、 適切に行動する。」 * 改訂版のポイント ・教育啓発の徹底 Ⅱ. 公正な研究 8(研究環境の整備及び教育啓発の徹底) で下記を加筆 「ならびに不正行為抑止の教育啓発に継続的に (取り組む)」 * 改訂版のポイント ・科学研究の利用の両義性 Ⅲ. 社会の中の科学 で下記項目を追加 6(科学研究の利用の両義性) 「科学者は、自らの研究の成果が、科学者の意図に 反して、破壊的行為に悪用される可能性もあるこ とを認識し、研究の実施、成果の公表にあたって は、社会に許容される適切な手段と方法を選択す る。」 * 改訂版のポイント ・オーサーシップ Ⅱ. 公正な研究 7(研究活動)に下記を加筆 「科学者は研究成果を論文などで公表すること で、各自が果たした役割に応じて功績の認知を 得るとともに責任を負わなければならない。」 * 改訂版のポイント ・科学者の社会的責任 前文で下記を加筆 「学問の自由の下に、特定の権威や組織の利害から 独立して(中略)また、政策や世論の形成過程で 科学が果たすべき役割に対する社会的要請も存在 する。」 * 改訂版のポイント ・科学者の社会的責任 Ⅰ.科学者の責務 に下記項目を追加 4(社会的期待に応える研究) 「科学者は、社会が抱く真理の解明や様々な課題 の達成へ向けた期待に応える責務を有する。 研究得環境の整備や研究の実施に供される研究 資金の使用にあたっては、そうした広く社会的 な期待が存在することを常に自覚する。」 * 改訂版のポイント ・科学者の社会的責任 Ⅲ. 社会の中の科学 を新設 11(社会との対話) 「科学者は、社会と科学者コミュニティとのより良 い相互理解のために、市民との対話と交流に積極 的に参加する。また、社会の様々な課題の解決と 福祉の実現を図るために、政策立案・決定者に対し て政策形成に有効な科学的助言の提供に努める。 その際、科学者の合意に基づく助言を目指し、意 見の相違が存在するときはこれを解り易く説明す る。」 * 改訂版のポイント ・科学者の社会的責任 12(科学的助言) 「科学者は、公共の福祉に資することを目的として 研究活動を行い、客観的で科学的な根拠に基づく 公正な助言を行う。その際、科学者の発言が世論 及び政策形成に対して与える影響の重大さと責任 を自覚し、権威を濫用しない。また、科学的助言 の質の確保に最大限努め、同時に科学的知見に係 る不確実性及び見解の多様性について明確に説明 する。」 * 改訂版のポイント ・科学者の社会的責任 13(政策立案・決定者に対する科学的助言) 「科学者は、政策立案・決定者に対して科学的助言 を行う際には、科学的知見が政策形成の過程にお いて十分に尊重されるべきものであるが、政策決 定の唯一の判断根拠ではないことを認識する。 科学者コミュニティの助言とは異なる政策決定が 為された場合、必要に応じて政策立案・決定者に 社会への説明を要請する。」 * 参考文献 日本学術会議学術と社会常置委員会作成 ・報告「科学におけるミスコンダクトの現状と対策―科学者コミュニティの 自律に向けて―」(平成17年7月) 日本学術会議科学者の行動規範に関する検討委員会作成 ・声明「科学者の行動規範について」(平成18年10月) 日本学術会議幹事会作成 ・声明「東日本大震災からの復興と日本学術会議の責務 」(平成23年9月) ご清聴有り難うございました。