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第1回
第1回 2010 年度立命館大-理系 A・薬学 A(2/2) ◆解答◆ [1](A)-(4) (B)-(4) (C)-(1) (D)-(2) [2](1)-1 (2)-2 (3)-2 (4)-3 (5)-2 [3]-(2) ◆全訳◆ 《直観利用のすすめ》 うちの祖母は、感覚でわかるなじみの世界を超えた物事を知っていた。私が子どものこ ろ、うちの母に「でも、おばあちゃん、今日私たちが何時に着いたか、どうしてわかった の。行くって言っていなかったのに」と、聞いてみた。 「わかっちゃうのよ」と、母は答えた。 うちの祖母は、綿花農場に電話なしで暮らし、少なくとも 10 時間の距離があった。私た ちの来訪が計画的なことは一度もなかった。祖母は、私たちが彼女の家に向かっていると いうことを、前もって知らされたことは一度もなかったのである。うちの父は、母親を驚 かそうと、古い自家用車のエンジンを切って、玄関までの私道をゆっくり進んでいくこと がよくあった。効き目はなかった。祖母を不意打ちすることは決してできなかった。祖母 はいつでも、私たちがいつ行くのかがわかっていて、待ちかまえていた。ベッドには新し いシーツ、夕食は料理ずみ、祖母が玄関でお出迎え、なのだった。 うちの祖母は、誰かが困っているときもわかった。祖母は、戸棚の扉をたたく音がする とよく言っていた。私はその音を聞いたことがなかったが、祖母の言うことを信じていた。 そして祖母が魔法やお化け、霊魂のことを話しているときも祖母の言うことを信じた。そ れぞれの訪問の間、私は祖母のひざの上に座り、うっとりと聞き入り、私の目には見えな い驚異を巡るお話をもう一度してと祖母にせがんだのだった。 大学時代のいつのころからか、 「味わったり、触ったり、体感したりできないものは、存 在しない」という世界が、私の中で優位に立つようになった。私は、論理に重きを置く教 育制度に安住して、祖母がいる目に見えないものの世界を忘れた。とりわけ、心理学の分 野で科学的な職業をめざそうと決心した後では。 しかし、1983 年に、現実の本質に関わる私の専門家としての想定は、ひっくり返ってし まった。私は精神的健康の分析家として弁護士のところに勤務していて、ある朝、所長か ら、審理に必要な書類の一覧表を求められた。改めて考えることもせず、私は文書番号を 書きとめて、表を秘書に手渡した。秘書はすぐに私のところまでやって来て、「これはカレ ン所長が求めていた文書ではありませんよ。それって、私が今朝、文書保管所に送ろうと 梱包していた文書ですよ」と、言った。私は自分の耳が信じられなかった。自分の不始末 に動転しながら、私は急いで正しい文書番号を書き記して、昼食に出かけた。 戻ると、秘書が玄関で私を出迎えた。突然、国に対する新しい訴訟が始まったのだった。 私が最初に一覧表にした文書は、その新訴訟に必要な文書そのものであることがわかった。 私の不始末のおかげで、小包は文書保管所へは送られず、文書はすぐに取り戻すことがで きた。このたった一つの出来事で、ほとんど消え失せてよいと私が思っていた、生まれつ いての直観的な一面が再び呼び覚まされたのだった。 知識は書物に由来すると、厳格に教えられてきたので、私は自分がどうしてわからなか ったのかの答えを求めて、心理学の教科書を調べた。答えは何も見つからないので、私は 幼少期のことを考え始めた。4 歳のころ、私はかなりの時間を祖母とともに過ごした。祖母 は直観力を使っていた。科学者は、私が祖母とともに時を過ごしていたぐらいの年齢に、 脳がにわかに発達を始め、より多くの神経結合が生じることを発見した。こうした結合に は、直観や音楽の潜在能力が含まれる。 子どもの直観力や創造力は、発達していなければ、7 歳くらいで衰えるように思われる。 私は一人っ子だったので、うちの両親は私の創造力を多種多様な仕方で支援してくれ、私 の寝室をクリスマスの照明で飾りつけたり、居間に古い毛布でテントを立てたり、絵を描 いたり、切ったり、色をつけたり、絵の具を塗ったりするように促してくれた。思いつけ るなら、私はそうしたのだ。そして、祖母に関する私の問いに対する、うちの母の単純な 答え、 「わかっちゃうのよ」によって、なかなか説明のつかない仕方で知識を得るのも、容 認してもらえるのだと私は学んだったのだった。 もしもある考えが自分の意識にやってくるなら、その知識が有効かどうか知るために点 検してみなくてはいけない。直観は静かに語り、辛抱強く、何度か同じ内容を繰り返すだ ろう。直観的な発想はいつなんどき、頭にふと思い浮かぶかもしれないのだ。直観が語り かけるのはたいてい、まるで思いもかけないときなのだ。 職場でのあの運命的な日以来、私が見出したのは、直観は内に秘めた強烈な力であって、 私たちのあまりに多くが脇に押しやろうとする感覚なのである。自分の生来の直観力を培 えば、新たな世界が現れる。使ってみよう。信頼してみよう。