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農業環境技術研究所が所蔵するリモートセンシングデータ
農業環境技術研究所が所蔵する リモー トセンシングデー タ Remote Sensing Data in NIAES Posscssion * 今川 Toslli〔 ld 俊明 lmaga、 va l.は じめに リモー トセ ンシン グデ ー タは 、観 測時 の 瞬間 では あるが 、そ の 時 の地表 面 の状 態 を忠実 に とらえ て い る。 そ の た め 、地表面 の 土地 被覆 、土地利用 、植 生 、 土壌 、水、大気 な ど、農業分野 で も幅広 い 分野 で活用 され て い る。農業環境技術研 究所 では 、 1983年 発 足 当初 か ら、農業 生 態系 あるい は農 業環境資源 の 定量的な解析 を 目指 して 、衛 星 リモー トセ ンシ ン グ研究 が先駆的 に実施 され て きた (秋 山 ほか ,1996、 今川 ,2005)。 当初 、 ラ ン ドサ ッ トデ ー タが主 として用 い られ 、 日本列 島をカ バ ー す るデ ー タが計画 的 に購 入 、整備 され た。 そ して 、所 内ばか りでな く、国あ るい は都 道府 県 の農業 関 係試 験研究機 関 の研 究者 に も広 く利用 され た。 そ の後 もラ ン ドサ ッ トデ ー タだけではな く、 よ り高 解像度 のス ポ ッ ト、 ア ス ター 、イ コ ノス 、解像度 は劣 るが、 よ り高頻度 のモ デ ィス な どの画像 が 随 時整 備 され て い る。 ここでは 、 これ まで所 内 で整 備 され た 衛 星デ ー タ とそ の利用方法 につい て紹介 す る。 2.リ モ ー トセ ンシングデー タの種類 リモー トセ ンシン グ研究 に用 い るデ ー タは時 代 とともに変化 して い るが 、所 が所蔵す る主 な デ ー タについ て簡単 に紹介す る。 1)ラ ン ドサ ッ ト (LANDSA丁 )デ ー タ リモー トセ ンシン グ研 究 にお い て 、最 も代表 的なデ ー タで あ る。ア メ リカ航 空宇宙局 (NASA) に よつ て 打 ち上 げ られ た ラ ン ドサ ッ ト衛 星 によって観沢Jさ れ 、デ ー タには MSSと TMの 解像 度 の異 な る 2種 類 のデ ー タがあ る。 1972年 か ら MSSセ ンサ に よる観 測 が 開始 され 、 1984年 か らは TMセ ンサ を加 えて 、今 日まで観測 (現 在 は 7号 機 )が 継続 され てお り、農 業環境研 究 の 基本 の 1つ で ある経 時変化 を とらえるため の 貴重 なデ ー タを 観 測幅 、 16日 周期 で提 供 して い る。 MSS(多 重分 光走査計 )デ ー タは可視 、近赤外各 2波 長 の反射 スペ ク トル の数値 デ ー タ として地上 分解 能 80mで 取得 され て い る。 これ に対 して 、TM(セ マ テ ィ ックマ ッパ ) デ ー タは 、地 上 分解 能 が 30mの 可視 3、 近赤外 1、 1 101cllの 中間赤外 2(図 1-a)と 120mの 熱赤外 1 のデ ー タ として 取得 され てい る。 2)ス ポ ッ ト(SPO丁 )デ ー タ ス ポ ッ トは 、 フ ラ ンスの地球 観 測衛 星 で 、 1986年 に *地 球 環 境 部 長 (現 :研 究 コー デ ィネ ー タ ) DirectOr,Department of Global Resources(presenti Research C00rdinator) イ ンベ ン トリー ,第 5号 ,p12-16(2006) -12- 1号 機 打 ち上 げ られ 、現在 は 4号 機 が イ ンベ ン トリー :農 業環境 技術研 究所 が 所蔵 す る リモ ー トセ ンシ ングデ ー タ 観 測 を続 け てい る。解 像度 20mの 可視 2、 近赤 外 1(図 1-b)と 解 像度 10mの パ ン ク ロマ テ ィ ック 1の デ ー タを観 測幅 60km、 26日 周期 で提 供 して い る。 4号 機 はそれ らの デ ー タの ほ か短 波長 赤外 の 1デ ー タも提 供 して い る。 3)ア ス ター (ASTER)デ ー タ ア ス ター は 日本 が 開発 した セ ンサ を 1999年 に打 ち上 げ られ たア メ リカ NASAの 衛 星テ ラに 搭載 して取得 して い るデ ー タで あ る。 3つ の 可視 。近 赤外 バ ン ドのほか全 14バ ン ドの デ ー タ を最 大解像 度 15m(図 1-c)、 観 測幅 60kln、 16日 周 期 で提 供 され てい る。 4)レ ー ダサ ッ ト (RADARSAT)デ ー タ レー ダサ ッ トはカナ ダか ら 1995年 以 降打 ち上 げ られ た衛 星 に搭載 され 、 これ まで のセ ンサ とは異 な り雲 が あ っ て も地上 を観 測 で き る全天候型 の マ イ ク ロ波 セ ンサ で観 測 して い る。 セ ン サ の 分解 能 は最 大 5)イ 10mで 、24日 周期 でデ ー タを提 供 して い る。 コノス (IKONOS)デ ー タ ア メ リカ の 商業衛 星 に搭載 され た セ ンサで 、解像 度 ン ク ロマ テ ィ ック 4mの 可視 1デ ー タを提供す る超 高解像 度 のデ ー タで (図 。近 赤外 4、 1-d)、 解像度 都 市域 で は車 1台 毎 を判別 で き る。 1999年 以 降観 沢1を してお り、 11日 周 期 でデ ー タを提 供 して い る。 b a.ラ ン ドサ ッ トTM c d アス ター 図 スポッ ト 1 農環研周辺 の各種 衛星画像 -13- イ コノ ス lmの パ インベ ン トリー 6)モ デ ィス 第 5号 (2006) (MODIS)デ ー タ モ デ ィス は 、 :イ メ リカ NASAか ら)打 ち上 げ られ′たア クア、 テ ラ の 2つ の衛 星 にセ ンサ が搭 載 され て い るため、同一 の 地点 を昼 と夜 一 日 1-ヽ 2回 観測 を行 うこ とがで きる。 そ して 、観測 頻度 が 高 いの で 、観測周期 が短 いデ ー タが得 られ るが 、36バ ン ドの うち解像度 は最 大 250m (2バ ン ド)と 若千 粗 いが 、 広域観測 に適 し′ 、土地被 覆 、 土地利 用変化 、植 生 、地表 温度 、気 温 、湿度 な どの観 測 を行 うこ とがで きる。 3.所 蔵す る リモー トセ ンシングデー タ 上 記 の デ ー タをは じめ 、現在 、所 で所蔵す る主な リモ ー トセ ンシ ン グデ ー タは 日本 、中国 お よび 東南 アジア地域 をカ バ ー してお り、表 1に まとめ られ る。 表 1 所蔵する主なリモー トセンシングデー タ 名 称 可 0 2 0 2 つくば周辺のイコノスデータ 中国のランドサット丁Mデ ータ 中国のSPO丁 データ フィリピンのSPO丁 データ タイのランドサットTMデ ータ タイのSPO丁 データ ベトナム等 のASttERデ ータ タイロ ラオスのLANDSA丁 データ ラオ ス の IKONOS,QUICKBIRDデ ー タ インドネシアのランドサット丁Mデ ータ 18シ ー ン 可 200シ ーン 共同研究なら可 共同研究なら可 共同研究なら可 4シ ーン 4シ ーン 10シ ーン 2シ ーン 38シ ーン 35シ ーン 4シ ーン イ ン ドネ シ ア RADARSA丁 デ ー タ つ くば を 中 心 とす る 東 ア ジ ア の MODISデ ー タ バンコクを中心とする東南アジアのMODISデ ータ 可可可 250シ ーン 0 8 利用 の 可否 ンンン 一 一 一 ンヽ ンヽ ン ヽ 日 本 の LANDSA丁 デ ー タ 日本 の SPOTデ ー タ 日 本 の ASttERデ ー タ 日 本 RADARSA丁 デ ー タ 数量 1シ ーン 16シ ーン 135セ ット 73セ ット 可 可 可 可 可 可 一部可 可 日本 国内 に 関 しては 、 1980年 代後 半 か ら 90年 代初 めにかけて ラ ン ドサ ッ トTMデ ー タで全 )を 利 用 して 、 全 国 60地 域 を とらえた ラ ン ドサ ッ 国 をカバ ー す るデ ー タが整備 され た。 それ た ト画像 を用 い て それ ぞれ の農 業 地域 の 特色 が解 説 され,た (福 原 ・ 今川 ,1993)。 全 国 をカ バ ー す る これ らのデ ー タの ほか 、 当所 の農 業 リモー トセ ンシン グ研究 の対象地域 とな つ た つ くばを 含 む 関東平野 、十勝 平野 、石狩 平野 、根釧台 地 、沖縄本 島は季節別 、年次別 のデ ー タが今 日ま で 多次期 にわた つて所蔵 され て い る。 ス ポ ッ トデ ー タに 関 しては 、 主 と して 1990年 代 以降 に 観 測 され た九州 北部地方 中心 に 、愛知県、つ くば周辺 、石狩 平野 な どの画像 が所蔵 され てい る。 この ほか 、 よ り解像度 の 高 いア ス ター や レー ダサ ッ トデ ー タはつ くば周辺 の ほか佐賀平野 、岡 山平野お よび石 狩 平野 のデ ー タが あ る。 さらに、2005年 、研究所内の多 くの分野 で研究対象 とし │1流 域、牛 久沼流域 を含 む つ くば市 ∼牛久市 の広 い範囲 をカバ ーす る超高 てい る筑波 山東部 の恋瀬り 解像度 のイ コノスデ ー タを整備 した (図 2)。 この ほか 、生物 多様性研究領域 で 関東平野 を対象 に 植 生モ ニ タ リング調査 を行 ってい る地点でのイ コノスデー タの整備 も進 んでい る。 外 国 のデ ー タに 関 しては 、 中国 の デ ー タが最 も多 い。 これ は 中国東部 を対象 に実施 され た砂 漠化研 究 、東 北部 での温暖 化 に伴 う食料 生産 変動予測研 究 で整備 され た もの で 、 内モ ン ゴル 自 -14- イ ンベ ン トリー :農 業環 境技術研 究所 が所蔵す る リモ ー トセ ンシ ングデ ー タ 治 区 ホル チ ン沙 地 、フフホ ト周辺 お よび黒 竜江省 の 1980年 代 か ら今 日まで の ラ ン ドサ ッ トTM デ ー タが多時期 にわた つ て所 蔵 され てい る。 このほか 、北京周 辺 、浙 江省 、雲南省 な どの一 部 地域 の 画像 も整備 され て い る。 さらに、 フ ィ リ ピン は ピナ ツボ火 山、 タイ はチ ャオ プ ラヤ川 下 流域 、 ベ トナ ム は メ コ ン川 下流域 、 ラオ ス は北部 山岳地域 、 イ ン ドネ シア は スマ トラ島 の デ ー タが所蔵 され てい る。 また 、広 域 をカ バー す るデ ー タ として モ デ ィ スデ ー タが あ る。 バ ン コ クを中心 とす る画像 は 2001年 7月 ∼ 2004年 8月 に受信 され た信 号 を 8日 ご とに合 成 し、北緯 30度 、東経 75度 と北 緯 0度 、東経 125度 を対角 とす る範 囲 (イ ン ド西 半分 、 中国南部 、 イ ン ドシナ 半 島、 フ ィ リピ ン を含 む )で 整 えた 135枚 の 画像 セ ッ トを所蔵 して い る。また 、つ くば を中心 とす る画像 は 2003 年 2月 ∼ 2004年 8月 につ くば市 の農林水 産研 究計算 セ ン ター で 受信 され た信 号 を同様 に合成 し、北緯 50度 東 経 115度 ∼ 北緯 25度 東経 165度 を対角 とす る範 囲 (中 国東部 、朝鮮 半 島、 日 本 を含 む )で 整 えた 73枚 の 画像 セ ッ トを所蔵 して い る。 図2 4 所蔵 す る つ くば周辺 の イ コノ スデー タ (右 :つ くば ∼ 牛久 、左 :恋 瀬 川流域 ) リモー トセ ンシ ングデー タの利用 に つ いて 所蔵す る リモー トセ ンシ ン グデ ー タは、基本 的 には所 内で使 用 で き るよ うリモー トセ ンシン グ解 析 室 の デ ー タサ ー バ に各種デ ー タを集積 しす る よ う作業 を進 めて い る。 そ の結 果 、 つ くば 周辺 の イ コ ノス 、国 内 のスポ ッ ト、ア ス ター に つ いて は、http:/111x57 niacs affrc gojp/satcllitcに 、 モ デ ィ ス デ ー タに つ い て は、hip:/ん lx57 niaes attc gojpに ア クセ ス す れ ば利 用 可能 で あ る。 な お 、画像 の検 索方 法 な どにつ いて も Web上 で 閲覧 で きる よ うにな つてい るが、詳 しくは生態 系計測研 究領域 の 関係 メ ンバ ー にお 問 い 合 わせ いた だ きた い。 また 、 ラ ン ドサ ッ トデ ー タにつ い て は、 リモー トセ ンシ ング解析 室で検 索 し、利用 で き るよ うにな っ て い る。 しか し、 イ コ ノ スデ ー タ の よ うに、農 環研職 員 は フ リー で使 え るライ セ ンス を所得 して い る -15- イ ンベ ン トリー 第 5号 (2006) が 、著 作 権 は 日本 ス ペ ー ス イ メ ー ジ ン グ社 (JSI)に あ るた め 、画像 を転 載 す る際 に は CJSIの 表 示 が必 要 とな る こ とや 外 部 へ の 提 供 は で き な い こ とは ご注 意 い た だ きた い 。 ま た 、研 究 目的 配 布 で 購 入 した 一 部 デ ー タは 、利 用者 、 目的 、期 間 が 限 られ て い るた め 、 必 ず しも 自由 に利 用 で きず 、共 同研 究 で あれ ば利 用 で き る とい うデ ー タ もあ る こ とも ご承 知 お き い た だ き た い 。 な お 、 デ ー タ の 利 用 に あ た つ て リモ ー トセ ン シ ン グ解 析 室 で は 、 画 像 編 集 、解 析 の た め の Erdas lmagine、 ER… mapperな どの ソフ トウエ ア と関連 す る地 理 情報 シ ス テ ム解 析 ソフ ト(ArcGIS) な ども利 用 可 能 とな つ て い る。 ま た 、基盤 とな る地 図情 報 と して 国 内 の 各 種 数 値 地 図 も利 用 す る こ とが で き る の で 、 お た ず ね い た だ きた い 。 5.お わ りに 利 用 で き る リモ ー セ ンシ ン グデ ー タは 、 セ ン サ ー の 多様 化 と ともに年 々 増 大 して い る。 セ ン サ ー の 種 類 、解 像 度 お よび 観 測 波長 の 違 い に よ つ て 、単 純 に比 較 す る こ とはで き な い が 、最 初 の観 測 が 始 ま つ て 以来 、 30年 以 上 が 経 過 して い る。 1つ の デ ー タは観 測 時 の 地 表 面 の 状 態 を 客 観 的 に と らえて い るにす ぎな い が 、時 間 の 経 過 と ともに繰 り返 し観 測 され たデ ー タは農 業 生 態 系 を含 む 地 表 面 の 変 化 を ダイ ナ ミックに語 つ て い る とい え る。利 用 目的 は違 っ て い る と して も、 農 業 環 境研 究 を進 め るに は 貴重 な資料 とな る こ とは 間違 い な い とい え る。 今 回 は 、 主 と して リ モ ー セ ンシ ン グデ ー タ を取 り扱 っ て い る生 態 計 測領 域 が 所 蔵 す るデ ー タ を 中 心 に 紹 介 した が 、 所 内 に は これ まで 蓄積 され たデ ー タが 存在 す る こ とは確 か で あ る。 実 際 、 これ を執 筆 して い る 筆 者 が 取 り扱 っ た ア メ リカ 、 ブ ラ ジル 、 ア フ リカ な どの デ ー タ も リス トに は な い こ とに気 づ い て い る。それ らの デ ー タ を 含 め 、今 後 デ ー タサ ー バ の 充 実 を図 っ て い きた い と考 えて い る の で 、 み な さま方 の 積 極 的 な活 用 を期 待 した い 。 さ らに 、所 外 の 方 にお い て も所 内 の 関係 者 と共 同研 究 を行 うこ とに よ つ て 利 用 は可能 とな る の で 、 あわ せ て 積 極 的 な活 用 に 関す る提 案 を い た だ く こ とを期 待 して い る。 引用文献 秋山侃・福原道 ― 齋藤元也・深山 ^弥 編著 (1996)農 業リモー トセンシングー環境 と資源の定量的解析一,pp166, 養賢堂 福原道一 。今川俊明編著 (1993)宇 宙から見た日本の農業,pp130,養 賢堂 . . 今川俊明 (2005)空 間情報に基づ く農業環境資源のモニタリングと評価,農 業環境技術研究所編『農業環境研究 20 年の歩み』 ,p52… 64,農 業環境技術研究所。 問 い合わせ先 研究 コーデ ィネ ー タ 今川俊明 電話 :029… 838… 8200,E― m五 1:imagtta@niaCS affrc.gojp -16-