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日本人の飲酒行動と規範
日本 人 の飲 酒行動 と規範 市 Norm and Regulation 川 孝 一 on Drinking Koichi Behavior of the Japanese Ichikawa は じめ に 飲 酒 とい う観 点 か ら 日本 と欧 米 諸 国 を比 較 した 際 に 、 欧 米 が"ア い 社 会"で あ る の に対 し、 日本 は"酔 ル 中が 多 く、 酔 っ払 い が少 な っ払 い が 多 く、 ア ル 中 が少 ない 社 会"で あ る と言 わ れ る こ とが あ る。 こ れ は 、 一 般 に 日本 人 が 欧 米 人 に比 べ て 「酒 に弱 い」 こ と もそ の 一 因 だ が 、 日本 とい う社 会 が 「酔 っ払 い 天 国 」 と呼 ば れ る よ う に 、 「酒 に甘 い」 社 会 で あ る こ と も大 きな 理 由 で あ る。 そ こで こ こで は 、 日本 人 の 酒 と飲 酒 行 動 に 関 す る広 い 意 味 の 「規 範 」 に つ い て 、 若 干 の考 察 を し て み た い 。本 稿 で は特 に 、 未 成 年 飲 酒 の 原 因 と もみ な さ れ 酒 に対 す る寛 容 さの 象 徴 と もい え る酒 類 の 自動 販 売 機 の 問 題 と、 酒 類 の広 告 の実 態 に焦 点 を 当 て て 、 検 討 して い きた い 。 1.日 本 人 は 「酒 に 弱 い 」 わ れ わ れ の 生 活 に は飲 酒 の機 会 が 非 常 に多 く、 身 の 回 りに は ア ル コー ル 飲 料 が あ ふ れ て い る と い う印 象 が あ る 。確 か に年 次 変 化 で 見 る と、 日本 人 の ア ル コ ー ル飲 料 の 消 費 量 は 年 々 増 加 し続 け て い る。 と りわ け戦 後 の 増 加 ぶ りは 著 しいi)。 しか し、 日本 人 の 一 人 当 た りの ア ル コー ル飲 料 消 費 量 は 国 際 比 較 で 見 る と、 予 想 外 に低 位 にあ る(図 図1国 民1人 一1)。 日本 は 世 界 で20位 程 度 で 、 フ ラ ンス 、 当 た り の ア ル コ ー ル 消 費 量(各 国 の 酒 消 費 量 を100%ア 出 所)『 東 京 新 聞 サ ン デ ー 版 』1996.12.1 17 ル コ ー ル に 換 算,1994年) ポ ル トガ ル、 ドイ ツ な どの ヨー ロ ッパ 諸 国 が 上 位 を 占め 、 そ れ らの 国 に比 べ る と消 費 量 も約 半 分 で あ る。 日本 人 の ア ル コー ル飲 料 の 消 費 量 が 、 国 際 比 較 で 見 る と低 い と こ ろ に あ る こ と の単 純 な 理 由 は 、 日本 人 が 体 質 的 に 「酒 に弱 い 」 とい う こ とで あ る 。 日本 人 は体 質 的 に、 大 量 飲 酒 が で きな い とい う事 実 が 良 く知 られ て い る 。 こ の 問 題 につ い て は、 以 前 に もふ れ た こ とが あ る が2)、 ア ル コー ル が 体 内 に 摂 取 さ れ た 時 に起 こる 生 理 的 な メ カニ ズ ム に まで さ か の ぼ って 考 え な け れ ば な らな い 。 ア ル コー ル が体 内 に 吸 収 され た後 、 どの よ うな 変 化 をた どる か を簡 単 な 図 式 で 表 す と、 図 一2 の ようになる。 アル コール → ア セ トア ル デ ヒ ド O ADH (ア ル コ ー ル 脱 水 素 酵 素) ②一[圃 一 囎 ガス ALDH ◎ (ア ル デ ヒ ド脱 水 素 酵 素) 図 一2 体 内 に吸 収 さ れ た ア ル コ ー ル は 、 まずADH(ア ル コ ー ル 脱 水 素 酵 素)に よ っ て 、 ア セ トア ル デ ヒ ドに 変 え られ る 。 こ の ア セ トア ル デ ヒ ドが 、 顔 が 赤 くな っ た り、 動 悸が した り、 吐 き気 が し た り、頭 痛 が した り とい う悪 酔 い の 原 因 とな る物 質 で あ る。 ア セ トア ル デ ヒ ドは 、ALDH(ア デ ヒ ド脱 水 素 酵 素)に 酔 い や 酒 に 対 す る 強 さ に は 、 第 二 段 階 で 働 く酵 素ALDHが ALDHに ル よ っ て酢 酸 に変 わ り、 最 後 に水 と炭 酸 ガス に分 解 さ れ排 泄 され る。 深 く関 わ っ て い る と 言 わ れ る 。 は 、 低 濃 度 の ア セ トア ル デ ヒ ドで も対 応 す る 高 感 度 の酵 素(1型)と な ら ない と対 応 しな い酵 素(1型)の あ る程 度 高 濃 度 に 二 種 類 が あ る。 欧 米 人(白 人)は 全 員 が こ の 二 種 類 を持 っ て い るが 、 日本 人 の 場 合 は 約 半 数 が 、 そ の うち の 一 つ(1型)を 欠 い て い る。 つ ま り、 日本 人 の 場 合 に は、 高 性 能 の 酵 素 が 欠 落 して お り、 生 理 学 的 に酔 い の 「元 凶」 で あ る ア ル デ ヒ ド処 理 能 力 が 低 い とい う こ と に な る 。 こ の た め 、 日本 人 は す ぐ悪 酔 い し、酒 を大 量 に飲 め な い 、酒 に 「 弱 い」 とい う こ と に な る 。 な お 、 この 生 理 的 な体 質 は 中 国 人 な ど東 洋 人 に共 通 の もの で あ り、 酒 を飲 む とす ぐ に顔 が 赤 く な る現 象 をあ らわす 英 語 の 表 現 に"orientalflash"と 2.酒 い う言 い 方 が あ る。 と規 範 こ う した 、 生 理 的 な 条 件 が 自然 な ブ レー キ役 を果 た し歯 止 め役 と な っ て い る せ い か 、 日本 人 は 酔 っ払 い や 飲 酒 に対 して は 、 一 般 的 に極 め て 寛 容 で あ る。 「酒 の 上 の こ と」 とい う表 現 に集 約 的 に表 わ され て い る よ う に、 伝 統 的 に飲 酒 の 際 の 失 態 や 無 礼 な振 舞 い に対 し て寛 容 で あ る 。 「無 礼 講 」 とい うこ と ば も、 現 代 人 の飲 酒 行 動 の 中 に文 字 どお りの 意 味 で残 って い る 。 サ ラ リー マ ン な どの 飲 酒 にお い て も、 「無 礼 講 」 の 段 階 で は部 下 の 非 礼 な 振 舞 い や 失 態 に対 して も、 上 司 が 寛 大 な 態 度 で 対 処 す る こ とが む しろ期 待 され て い る 。 酒席 で の 振 舞 い に対 す る許 容 度 は 、 も ち ろ ん社 会 に よ っ て 大 き く違 っ て くる が 、 日本 社 会 の 許 容 度 は 最 も大 きな 部 類 に 属 す る と思 わ れ る。 日本 人 の 場 合 、 「酒 を飲 ん だ 時 の 人 格 」=「 酔 っ払 っ た 時 の 人 格 」 と 「し らふ の 時 の 人格 」 を別 物 と して 考 え る 。 と こ ろが 、 欧 米 人 の 場 合 は、 酔 っ た時 と し らふ の 時 の 人 格 をそ ん な風 に都 合 よ く使 い分 け られ る もの とは考 え な い 。 パ ー ソ ナ リテ 18 イは 一 貫 して い る も の で あ っ て 、 酔 っ て い よ う と さめ て い よ う とそ の 人 は そ の 人 で あ る 。 従 って 、 酒 の 上 で の 失 態 が あ れ ば 、 そ れ は そ の 人 の 人格 全 体 の 非 難 を招 くこ とに な る 。 ど ち らが 良 い か は一 概 に言 え な い が 、 ス トレス 解 消 の手 段 と して は 日本 人 の 飲 酒 の 方 が 好 都 合 で あ る。 飲 酒 の 機 会 が 、 心 置 きな くホ ン ネ を吐 露 す る こ とが で き、 ス トレス や フ ラ ス トレ ー シ ョ ン発 散 の場 と な る こ とは 、 精 神 衛 生 上 は大 変 結 構 な こ とな の で あ る。 この 違 いが 、 日米 の 心 臓 疾 患 の 差 とな って 現 わ れ るの だ とい う俗 説 もあ り、 酒 の席 で も フ ラ ス トレー シ ョ ン を発 散 で きな い ア メ リ カ人 は、 や む な く精 神 科 医 や セ ラ ピス トの と ころ へ 行 くの だ とい う説 もあ る 。 一 方 、 日本 人 の 場 合 は 飲 酒 の 機 会 が 、 愚 痴 や 悩 み の は け 口 と な り、 お 互 い に"巷 の 精 神 分 析 医"と な って、 相 互 カ ウ ン セ リ ン グ を行 うの で あ る。 日本 人 が 、 飲 酒 や 酔 っ払 い に対 して極 め て寛 容 だ とい う こ とは 以 上 の 通 りだ が 、 酒 を め ぐ る規 範 とか 規 制 とか い う観 点 か ら見 た時 も、 日本 は極 め て ア ル コー ル類 に 関 して ル ー ズ な社 会 だ とい え る。 まず 、 日本 に は20歳 未 満 の者 は 酒 を飲 ん で は い け な い とい う 「未 成 年 者 飲 酒 禁止 法 」(大 正11年)と い う立 派 な 法 律 が あ るが 、 こ れ ほ ど有 名 無 実 な もの も な い 。 喫 煙 の 場 合 もそ うだ が 、 法 的 規 制 と実 態 との 問 の 乖 離 、 ホ ンネ と タ テ マ エ の 間 の ギ ャ ッ プが こ れ ほ ど大 きい ケ ー ス も珍 し いQ デ ー タ と して は ち ょっ と古 い が 、 『暮 し の手 帖 』 が1985年 谷 区 の 成 人 式 に 出 席 の 男918人 、 女665人 、 計1583人)の に新 成 人 を対 象 に行 っ た調 査(世 結 果 は そ の こ と を 良 く示 して い る3)。 「あ な た はお 酒 を飲 ん で い ます か」 とい う 問 に対 し、 「 飲 む」 と答 え た 者 は 、 男 性 で96%、 で も94%だ 田 女性 っ た 。 「飲 ま な い 」 と答 え た 人 で も、 ほ と ん ど 「以 前 は飲 ん で い た 」 と答 え て お り、 本 当 に飲 ん だ こ とが な い とい うの は男 女 と も1%だ った 。 20歳 に な る ま で に 、 ほ とん どの 人 が 飲 酒 の 経 験 は あ る とい う こ と に な る が 、 最 近 で は 若 年 者 の飲 酒 は、 中 高 生 ま で広 が っ て い る こ とが 各 種 の 調 査 で 明 らか に され て きて い る。,東京 ・神 奈 川 の 高 校 生 を対 象 と した 「飲 酒 実 態 調 査 」4)で は 、 全 体 の4分 の3は 抵 抗 な く酒 を飲 ん で い る とい う結 果 が 出 て い る。 さ ら に深 刻 な の は 、 「ア ル 中」 と言 っ て い い 「重 篤 飲 酒 者 」 が0.8%お い わ ば 「ア ル 中 予 備 軍 」 の 「問題 飲 酒 者 」 も12%近 い る(表 り、 くに達 し、10年 前 の 約10倍 の数 字 に な っ て 一1参 照)。 表 一1 ① 重篤 問題飲酒者 ② 問題飲 酒者 1980年 1990年 0 0.8% 1.3% 11.9 最 新 の 中高 生 対 象 の 調 査 で も、 飲 酒 経 験 の あ る もの は 、 約8割(77.8%)、 もの も約1割(9.7%)と 週 に1回 以 上 飲 む な っ て い る5)。 そ れ で は 、 「未 成 年 者 飲 酒 」 につ い て の 一 般 の 意 見 は ど うな っ て い る の だ ろ うか 。新 聞 社 の全 国 世 論 調 査 の 結 果 か ら 、 まず そ の全 体 的 な 傾 向 を見 て お こ う,6)。 未 成 年 者 が 飲 酒 す る こ とにつ い ては、 「 飲 ま な い 方 が よ い」42%、 れ ば 問 題 は な い 」10%、 「許 さ れ な い 」19%を 「 少 しな らか まわ な い」28%を 19 合 わ せ 、 反 対 派 が61%。 合 わせ た 容 認 派 は38%で 厂飲 み す ぎな け あ る 。全 体 で は、 反 対 派 が 容 認 派 を大 き く上 回 っ て い る 。 男 女 別 で 見 る と、 反 対 派 は、 男 性56%、 女 性64%で 、 女 性 の 方 が 未 成 年 の飲 酒 に対 して は 厳 しい見 方 を して い る 。 さ ら に 、 年 代 別 に見 る と20歳 代 は、 反 対 派30%に しか し、30歳 代 に な る と反 対 派58%、 容 認 派40%と 対 し、容 認 派68%で 容 認派が多 数 を占めた。 賛 否 が逆 転 。 年 齢 が 上 に な る に つ れ て 反 対 派 の 占 め る割 合 が 大 き くな り、60歳 代 、70歳 以 上 で は反 対 派 が7割 を超 え て い る 。 一 般 的 に は 厳 しい 意 見 が 主 流 の よ う に 思 わ れ る が 、 先 に引用 した、 中高生 対 象 の調査 で は、 「飲 酒 」 に 関 して 、 「本 人 の 考 え を尊 重 す る」 と答 え て い る もの が6割 以 上(60.8%)い る7)。こ う し た 当 事 者 自 身 の 回 答 や 、 彼 ら に最 も近 い 年 齢 層 の20歳 代 の 回答 の 方 が よ り ホ ン ネ に近 く、 残 念 なが ら こ ち らの 方 が 実 態 を正 確 に 反 映 した数 字 とい う こ とが 言 え る だ ろ う。 なお 、 上 記 の全 国 世 論 調 査 で は未 成 年 飲 酒 が 増 え て い る原 因 に つ い て も尋 ね て い る が 、 そ の結 果 は次 の よ う に な っ て い る。 厂自動 販 売 機 な どで 酒類 が 簡 単 に買 え る 」68%、 「家 庭 で の し つ け や教 育 が 不 十 分 」40%、 「若 者 向 け の 酒 類 が 増 え て い る」 厂テ レ ビ コ マ ー シ ャル な どで 情 報 が あ ふ れ て い る」 各26%(複 数 回答)8)。 この 調 査 結 果 も踏 まえ て 、 本 稿 で は特 に 「酒 の 自販 機 問 題 」 と 厂酒 の 広 告 」 の 問 題 を以 下 で 少 し詳 し く検 討 して み た い 。 3.「 酒 の 自販 機 」 の 問 題 酒 の 自動 販 売 機 の 存 在 は、 「酒 に 野 放 図 な 国 」 の 象 徴 で あ る と もい え る 。 そ の お か げ で何 の チ ェ ック も受 け ず 、 誰 で もい つ で も容 易 に酒 が 入 手 で き るか らで あ る。 もっ と も、 日本 は 酒 類 に 限 らず 、多 種 多 様 な商 品が 自動 販 売 機 で 手 に入 る世 界 で も類 の な い 「自販 機 大 国 」 で あ る 。 そ して 、 この よ うな 「自販 機 文 化 」 の 隆 盛 は実 は 日本 が 治 安 の 良 い 社 会 で あ る こ との 良 い 証 明 だ とい う説 もあ る。 治 安 の悪 い 国 だ っ た ら、 た ち まち 自販 機 は破 壊 さ れ商 品 は盗 難 に あ って しま う とい うわ け で あ る 。 こ の よ う に、 自販 機 に は利 便 性 を は じめ もち ろ ん肯 定 的 な側 面 も多 々 あ る の だ が 、 こ こで は ア ル コ ー ル飲 料 の 自販 機 に限 っ て そ の 問 題 点 を見 て い く こ と に した い 。 酒 の 自販 機 規 制 の動 きの 中 で 早 い 時 期 の も の と して ほ 、 例 え ば次 の よ う な もの が あ る 。1986 年5月 、 国 税 庁 の 中 央 酒 類 審 議 会 ・ア ル コ ー ル 飲 料 部 会 は 、 酒 類 自動 販 売 機 の 規 制 を取 り上 げ 、 以 下 の 提 言 を 行 っ て い る。 ① 午 後11時 か ら翌 朝5時 ま で の 深 夜 販 売 の 自粛 と徹 底 、 違 反 店 に は警 告 書 を出 す 。 ② 酒 類 と清 涼 飲 料 の販 売 機 を で き る だ け分 離 す る よ う 自販 機 業 界 、 酒小 売 店 を指 導 す る 。③ 低 ア ル コ ー ル 商 品 の 容 器 に は 、 子 ど もの 好 きな動 物 や マ ス コ ッ トを使 用 しない 。 ④ 清 涼 飲 料 との 区 別 を 明 確 に す る た め 、 酒 類 の 容 器 に は ア ル コ ー ル度 数 を 大 き く表 示 す る か 、 「酒 」 の シ ンボ ル マ ー ク をつ け る9)。 こ れ らの 提 言 は 十 分 な形 で 実 行 に 移 され た とは 言 い 難 く、 そ の 後 も、 主 婦 連 や ア ル コ ー ル 問題 全 国市 民 協 会 な どの 消 費 者 団体 や 市 民 団 体 に よっ て 、 酒 の 自販 機 全 面 撤 廃 を求 め る 運 動 が 続 け ら れ て きて い る 。 そ う した 中 、 厚 生 省 の 公 衆 衛 生 審 議 会 ア ル コ ー ル 関 連 問 題 専 門委 員 会 は、1993 年6月 に、 酒 類 自販 機 の 撤 廃 の提 言 を行 っ て い る。 この委 員 会 は1990年 に 設 置 さ れ 、 医 療 専 門家 や 社 会 学 、教 育 の専 門 家 、 企 業 の 健 康 管 理 担 当 者 な どが メ ンバ ー と して名 を連 ね、 飲 酒 問 題 の協 議 を重 ね て きた 。 この 提 言 は 要 す る に、 「酒 の販 売 業 者 は、 責 任 を も っ た販 売 を心 が け るべ きで 、 対 面 販 売 を原 則 と し、 自販 機 は 一 定 の移 行 期 間 を設 け て段 階 的 に撤 廃 す べ きだ 」 とい う こ と で あ り、販 売 者 の 責 任 を 強 調 して い る と こ ろ が特 徴 で もあ る'°)。 さ ら に、 国 税 庁 の 中 央 酒 類 審 議 会 は 、1994年10月 20 に 、 「現 金 を使 っ た 自販 機 撤 廃 と、 暗 証 番 号 入 りの磁 気 カ ー ドを使 う 自販 機 の 開 発 ・導 入 」 を提 言 した 中 間報 告 を出 して い る 。 これ らの提 言 や 要 望 を受 け て、 全 国 小 売 酒 販 売 組 合 中 央 会 は 、1994年12月 の 臨 時 総 会 で 「将 来 は ア ル コ ー ル の屋 外 自動 販 売 機 を撤 廃 す る こ と」 を決 議 した 。 しか し、 撤 廃 の 期 限 に つ い て は 、 「相 当 な 周 知 ・移 行 期 間 の経 過 後 」 とな うて い た11)。翌 年5月 の総 会 で 、 よ うや くそ の 期 限 が 、 「2000年5月 ま で に全 廃 」 と明確 に さ れ た 。 た だ し、屋 外 自販 機 へ の 依 存 度 が 高 い 都 市 部 の小 売 店 対 策 と して、 未 成 年 者 の 購 入 を防 ぐ こ との 出 来 る 「IDカ ー ド利 用 の 自販 機 の設 置 を検 討 す る 」 との付 帯 条 件 が つ け られ たiz)。 先 の 全 国調 査 で も、 未 成 年 飲 酒 の最 大 の 原 因 の 一 つ とみ な され た潭 の 自販 機 につ い て の 意 見 が 求 め られ て い る 。 「酒 の 自動 販 売 機 の 撤 廃 につ い て 望 ま しい か ど うか 」 聞 い た と こ ろ、 全 体 で は 「望 ま しい 」41%に 対 し、 「必 要 な い 」 が54%と 反 対 意 見 の 方 が 上 回 った 。 さ らに意 外 な の は 、 自販 機 で簡 単 に酒 類 が 買 え る こ と を未 成 年 飲 酒 増 加 の 理 由 に挙 げ た 人 に 限 っ て み て も、 「必 要 な い 」(50%)が 、 「望 ま しい 」(46%)を 酒 の 自販 機 に対 す る意 見 は世 代 差 が 大 きい(図 上 回って い る ことであ る。 また、 一3)。 若 い 世 代 ほ ど 自販 機 を 支 持 す る者 は 多 い 。 この 結 果 に見 られ る よ う に、 そ の マ イ ナ ス 面 は十 分 認 識 しなが ら も、 自販 機 の持 つ利 便 性 は手 放 した く ない とい う広 範 な潜 在 的 ニ ー ズ の存 在 を考 え る と、 上 記 の全 国 小 売 酒 販 売 組 合 中央 会 の 決 定 が ス ム ーズ に 実 現 で きる か 、 疑 問 が 残 る とこ ろ で もあ る。 20歳 代 30歳 代 40歳 代 50歳 代 60歳 代 70歳 代 以 上 図3お 酒 の 自動 販 売機 は撤 廃 が望 ま しい 出所)『 読 売 新 聞』1994.7.30 4.酒 の 広 告 ・CMの 問題 酒 類 の 宣 伝 広 告 とい う点 に 注 目 した場 合 も、 日本 ほ ど規 制 の ル ー ズ な 国 は な い とい う の が 定 説 に な っ て い る 。 も ち ろ ん先 にあ げ た 、 審 議 会 の提 言 に も 自販 機 と並 ん で酒 の広 告 に関 す る 言 及 も あ る こ と は あ る 。 例 え ば 、 中 央 酒 類 審 議 会(1986年)は 、 酒 類 の 宣 伝 広 告 の あ り方 に つ い て 、 「中高 校 生 向 け の新 聞 、 雑 誌 に は広 告 を 出 さ な い こ と、 テ レ ビ コマ ー シ ャル で は 『未 成 年 者 の 飲 酒 は 禁 止 され て い ます 』 な どの 警 告 文 を流 して 注 意 を喚 起 す る」 こ と を要 望 した14)。公 衆 衛 生 審 議 会 ア ル コ ー ル 関連 問 題 専 門 委 員 会(1993)年 の提 言 で も、 「ビ ー ル のCMを を美 化 す る宣 伝 広 告 が 増 加 して い る こ とか ら、CMの たCMの 中心 と して 、飲 酒 放 映 時 間 の 配慮 や 人 気 タ レ ン トな ど を使 っ 見 直 し を求 め る方 針 」 が 盛 り込 ま れ て い る15)。しか し、 こ れ ら は い ず れ も あ くま で も 「提 言 」 「要 望 」 の レベ ル に と ど ま っ て お り、 業 界 の 自主 規 制 に委 ね られ て い る 。 実 現 した の は 、 1993年4月 か らテ レ ビ コマ ー シ ャ ル に 「二 十 歳 未 満 は飲 酒 で きな い」 と の メ ッセ ー ジ の 表 示 が 行 わ れ る よ う に な った く らい の もの だ ろ う。 これ に対 し、 欧 米 諸 国 に は 、 酒 の広 告 に 関 す る厳 しい 規 制 が あ る。 ア メ リカ で は、 ウ イ ス キ ー 21 や ジ ンな どの 強 い 酒 の場 合 は テ レ ビ ・ラ ジ オ と もCMは 全 面 的 に禁 止 さ れ て い る とい う。 飲 んで い る 場 面 や 酒 を注 ぐ 「トク トク」 とい う効 果 音 が 入 っ たCMも 許 され な い 。 ヨ ー ロ ッパ 諸 国 も、 国 ご とに多 少 の違 い は あ る が 、厳 しい規 制 が しか れ て い る点 で は 共 通 して い る 。 例 え ば 、 イ ギ リス の ア ル コ ー ル に関 す る 広 告 コー ドは 、 「広 告 は若 者 向 き の もの で あ っ て は な ら な い し、 い か な る 方 法 で も飲 酒 の 開始 を促 す よ う な もの で あ っ て は な ら な い。(後 略)」16)と 明 確 に若 者 向 け の 酒 の広 告 を禁 止 して い る。 また 、 酒 が 社 会 生 活 に不 可 欠 だ とか 、 仕 事 を う ま く運 ぶ の に必 要 で あ る とい う よ う な 印 象 を与 え るCMは だ め だ と言 っ て い る。 特 に 、 次 に 引 用 す る 「社 会 的成 功 」 と題 され る項 目の 内容 は 興 味 深 い 。 広 告 は アル コ ー ル飲 料 に結 び つ い た仲 間 づ きあ い や社 会 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 楽 し さ を 強 調 して も よ いが 、飲 酒 が 社 会 的 あ る い は 商 売 上 の成 功 や 卓 越 さ に必 要 で あ る とか 、 酒 を飲 ま ない 人 間 が 、 飲 む 人 間 よ り も受 け入 れ られ に くい とか成 功 しに くい とか い う こ と を暗 示 し て は な ら な い 。 広 告 は ま た、 飲 酒 が 性 的成 功 に貢 献 す る こ とや 、 飲 む 人 を異 性 に対 し、 よ り 魅 力 的 に す る と い う こ と を主 張 や 暗 示 す べ きで は ない'7)。 こ う した 厳 しい 規 制 と比 較 す れ ば 、 日本 の 酒 類 の広 告 宣 伝 は 「無 法 地 帯 」 と言 っ て も過 言 で は な い 。 そ こで 、次 に は 日本 の 酒 の 広 告 の 実 態 を見 て い くこ とに した い 。 5.酒 の広告の実態 日本 の テ レ ビで は 、 い っ た い どの く らい の 酒 の コ マ ー シ ャ ルが 放 映 され て い る の だ ろ うか 。 こ れ につ い て は 、 先 に 紹 介 した 『暮 しの 手 帖 』 で 全 日分 の コマ ー シ ャル を調 査 した もの が あ る 。 そ こ で は 、1985年4月8日(日)放 の 中 で 酒 のCMが 映 の 民 放 各 社 の 酒 のCMの チ ェ ッ クが 行 わ れ て い る 。 民 放5社 最 も多 か っ た テ レ ビ朝 日の 場 合 、1日 の 酒 のCMの これ は本 数 で 、CM総 本 数 の14%を 占 め 、 時 間 に換 算 して も13%に 本 数 は92本 だ っ た とい う。 当 た る とい う18)。 こ れ は 貴 重 な デ ー タ だ が 、10年 以 上 も前 の古 い もの な の で 現 状 が ど うか を調 べ る た め に、 最 新 の 放 映 状 況 をチ ェ ッ ク して み た 。 調 査 対 象 に し た の は 、 日本 テ レ ビ と フ ジ の二 局 で 放 映 され た テ レ ビCMで 、 時 間 は18:00か ら24:00の6時 間 に限った。 表 一2日 本 テ レビ 酒 のCM CM総 本数 1997年11月16日(日)19本(総 本 数 の8.8%) 216本 1997年11月20日(木)14本(総 本 数 の6.4%) 219本 1997年11月21日(金)16本(総 本 数 の7.4%) 217本 表 一3フ ジテ レビ 酒 のCM CM総 本 数 1997年11月9日(日)8本(総 本 数 の5.6%) 143本 1997年11月10日(月)22本(総 本 数 の9.0%) 245本 1997年11月14日(金)14本(総 本 数 の6.5%) 214本 22 結 果 は、 表_2、 表 一3に 示 した 通 りで あ る。 調 査 の 時 間 帯 が 違 うの で単 純 な比 較 は で き な い が 、 先 の 『暮 しの 手 帖 』 の調 査 よ りは 、 酒 のCMの 占 め る割 合 は低 い 数 字 と な っ て い る 。 いず れ も、 ひ とけ た代 の 後 半 とい う数 字 だ が 、 一 品 種 の 品 目のCMと 次 にCMの 具 体 的 な 中味 を見 て い き た い 。CMの して は 決 して小 さい 数 字 で は な い 。 な か に は 当 然 の こ とな が ら、 複 数 回 繰 り返 し 放 映 され る もの が あ る の で 、 そ れ ら を 除 く と作 品数 も限 定 さ れ て くる 。 そ の よ うな ダ ブ り を除 い た 二 局 の 放 映作 品 を リス トア ッ プ した もの が 、 表 一4及 び表 一5で あ る 。 対 象 と な っ た 時 間帯 に 放 映 され た も の は 、 これ らの表 で す べ て網 羅 さ れ て い る こ とに な る 。 表4ア ル コ ー ル 飲 料 テ レ ビCM(日 商品名 メ ー カ ー 本 テ レビ) メ イ ン キ ャ ラ ク タ ー(タ 1黄 桜 山廃 仕 込 旬 一 献 黄桜酒 造 中村 勘 九 郎 2月 桂 冠 定 番 酒 ・月 月桂冠 風 吹ジ ュン 3ス ーパ ー ス タ ー サ ッポ ロ 江角 マキ コ 4ド ラフテ イ サ ッポ ロ 江 口洋介 5ふ じ りん ご酒 サ ン トリ ー 吉 岡秀隆 6ス ーパ ー ホ ッ プ ス サ ン トリ ー 中居 正 広 ・岸 谷 伍 朗 サ ン トリ ー 外 人 男 性 ・日本 人 女 性 7WineCafe 8バ ドワ イ ザ ー 梅 宮 ア ンナ ・東 幹 久 場 編) アサ ヒ 9ス ー パ ー ド ラ イ(工 10フ ァー ス ト レデ ィ アサ ヒ 樹木 希 林 ・松 本 孝 美 11黒 生 アサ ヒ 吉 田拓 郎 12焼 酎 かのか 協和 女性 タ レン ト 13一 番搾 り キ リン 沢 田研 二 ・田村 翔 子 14一 番 搾 り(お キ リン 15松 竹梅 宝酒造 16そ ば焼 酎 雲 海① 雲海酒造 川 中美幸 17そ ば焼 酎 雲 海② 雲海酒造 川 中美幸 18エ ビス ビー ル サ ッポ ロ 前 田吟 歳 暮 編) 渡哲也 ・渡 瀬恒彦 酒井法子 19キ リ ン ラ ガ ー(お 歳 暮 編) キ リン 20キ リ ン ラ ガ ー(オ リ ン ピ ッ ク 編) キ リン 荻原健 司 21冬 物語 サ ッポ ロ 木村佳 乃 22ジ ヨニ黒 23デ リカ メ ゾ ン サ ン トリ ー 24月 桂冠 純米 月桂 冠 日本 人男性 25ビ ール工場 キ リン 竹中直人 26ビ ール職人 キ リン 日本人男性 レ ン ト) 表5ア ル コー ル 飲 料 テ レ ビCM(フ ジテ レ ビ) 商 品名 メ ー カ ー 1ス ー パ ー ホ ッ プ ス* サ ン トリー 中居 正広 ・岸谷伍朗 2ザ ・カ ク テ ル バ ー サ ン トリー 長 瀬正敏 メ イ ン キ ャ ラ ク タ ー(タ 3リ ザ ーブ サ ン トリー 佐藤 浩市 4ウ メ ッ シュ 蝶矢洋酒醸 造 水 野真紀 5チ ョー ヤ梅 酒 紀 州 蝶矢洋酒醸造 松本 明子 6ふ じ り ん ご 酒* サ ン トリー 吉 岡秀隆 7キ リ ン ラ ガ ー(オ キリン 荻原健 司 8ス ー パ ー ドラ イ アサ ヒ 湯原信 光 9月 桂 冠 純 米* 月桂 冠 日本 人男性 リ ン ピ ッ ク 編)* 10バ ド ワ イ ザ ー* 11サ ン ト リー ホ ワ イ ト サ ン トリー 12サ ン トリー 角 瓶 サ ン トリー 13モ ル ッ サ ン ト リー とん ね る ず ・鈴 木 京 香 14さ ら り と した梅 酒 蝶 矢洋酒醸造 黒谷友香 15一 番 搾 り* キ リン 沢 田研 二 ・田村 翔 子 16一 番 搾 り(お 17黄 桜 黄桜 酒造 18カ ッパ 大 吉 黄桜 酒造 19ス ー パ ー ス タ ー* サ ッポ ロ 江角 マキ コ 20エ ビ ス ビ ー ル* サ ッポ ロ 前 田吟 21サ ン ト リー レ ッ ド サ ン トリ ー 南 果 歩 ・きた ろ う 22モ ルッ サ ン トリ ー 石 橋 貴 明 ・鈴 木 京 香 レ ン ト) 梅宮 ア ンナ ・東幹久 鹿 賀 丈 史 ・片 岡鶴 太 郎 井 川 比 佐 志 ・酒 井 和 歌 子 歳 暮 編)* キ リン 高 島礼子 山本 浩 二 ・原 辰 徳 23EARLYTIMES 外 人 カゥボーイ 24デ リ カ メ ゾ ン* サ ン トリ ー 25い い ち こ 三和 酒類 261.W.HARPER 27ニ ュー オール ド サ ン トリ ー 28一 番 搾 り(製 キ リン 造 説 明) (注)*印 石 田 ゆ り子 ・長 塚 京 三 は 日本 テ レ ビ放 映 作 品 と 同 じ もの この リ ス ト を見 て ま ず 気 が つ くこ とは 、 女 性 の 登 場 す るCMが 多 い とい う こ とで あ る 。CMの 主 要 な構 成 要 素 と して 、 人 物 を登 場 させ る作 品 は全 部 で35作 品 あ る が 、 メ イ ンキ ャ ラ ク タ ー と して何 ら か の 形 で 女 性 が 出 て くる もの が20作 品 あ る。 これ は 、57%に が 「若 者 」 世 代 とみ な され る もの(こ あ た る。 ま た 、登 場 人 物 こ で は30歳 代 前 半 ま で を 若 者 と考 え る)も21作 24 品 あ り、 これ は人 物 中 心 の 作 品 の60%を 占め ている。 こ こ10数 年 来 の 酒 類 メ ー カー 側 の販 売 戦 略 は 、〈若 者 に 、 女 性 に 、 そ して昼 間 に 〉 の ス ロ ー ガ ン に要 約 で き る と言 わ れ て い る。 若 者 、 女 性 は 販 売 側 に と って は ま だ 未 開拓 の 有 望 な市 場 で あ り、 そ こ に タ ー ゲ ッ トを絞 っ た マ ー ケ テ ィ ン グ が 主 流 と な っ て きて い る。 酒類 の ソ フ ト化 、 ラ イ ト化 、 フ ァ ッ シ ョ ン化 は ま さに この 戦 略 の路 線 上 に あ る。 実 際 に放 映 され て い る テ レ ビ コ マ ー シ ャ ル か ら も、 こ の事 は まず 再 確 認 で き た と言 っ て い い だ ろ う。 明確 に 女 性 ・若 者 を タ ーゲ ッ トと した広 告 の 占 め る ウエ イ トが 大 きい こ と は、 上 に示 した 全 体 の 数 字 か ら も明 らか で あ る が 、 さ ら に 具 体 的 な事 例 に即 し て この 点 を 補 足 し た い 。 例 え ば 、 「チ ョ ー ヤ梅 酒 紀 州 」 の 場 合 は 、 メ ー カ ー 側 も 「女 性 を ター ゲ ッ トに して お り、 全 く男 性 を考 え て お りま せ ん」 と断 言 して い る19)。松 本 明 子 が 登 場 す る こ の作 品 は、 「女30梅 酒 に ハ マ る」 と い う コ ピ ー の も と に、 彼 女 が 「母 が 好 きな も の で 」 「父 が好 き な もの で 」 「ば あ や が … 」 と何 度 も酒 屋 に足 を運 び 、 梅 酒 を大 量 に購 入 す る 。 見 方 に よ っ て は 、 女 性 の 「問題 飲 酒 」 や 「ア ル コ ー ル依 存 」 を連 想 させ る よ う な仕 上 が り に な っ て い る。 ま た 、 「フ ァー ス トレデ ィ」(ア サ ヒ)は 商 品 自体 が 最 初 か ら女 性 向 きの もの とな っ て お り、CMで て い る。 「ス ー パ ー ス タ ー」(サ ッ ポ ロ)のCMで は母 娘 が と も に楽 しむ とい う設 定 に な っ は、 女 戦 士 に扮 した 江 角 マ キ コが 、 男 た ち を相 手 に勇 猛 に 闘 う。 「す ご い 奴 が や っ て き た 」 の コ ピ ー と と もに 、 ア ル コ ー ル度7%と い う 「強 い ビー ル 」 と 「強 い 女 」 が 重 ね 合 わ さ れ る。 一 昔 前 の 「女 だ て ら に酒 を飲 む」 とい う よ うな感 覚 は 一 掃 さ れ、 女 性 の 飲 酒 の 関 す る タ ブ ー や 抵 抗 感 は ほ と ん どな くな っ た と言 っ て よい が 、 これ ら の CMは さ ら に一 歩 進 んで 、 女 性 の 飲 酒 は 「フ ァ ッシ ョナ ブ ル で カ ッコ い い こ と」 とい う イ メ ー ジ を打 ち 出 そ う と して い る 。 一方 、 酒 類 広 告 の若 者 志 向 も確 認 で き た と言 って い い だ ろ う。 す で に ふ れ た よ う に、 人 物 が 主 とな るCMの6割 に は若 者 が 登 場 す る 。 タ レ ン ト自 身 が 若 者 で あ る こ とは も と よ り、彼 ら ・彼 女 らは い ず れ も若 者 や 子 ど もた ち に人 気 の 高 い タ レ ン トば か りで あ る。 こ れ に よ って 同世 代 の 受 け 手 は広 告 を よ り身 近 な もの と感 じる こ とが 出 来 、広 告 さ れ て い る商 品 も身近 な もの に感 じ られ る。 例 え ば 、 「ス ーパ ー ホ ッ プ ス 」(サ ン ト リ ー)、 「ドラ フ テ ィ」(サ ッポ ロ)、 「バ ドワ イ ザ ー 」 の CMな どで は 、 若 者 た ち が 集 う楽 しい飲 酒 場 面 が 印 象 的 に描 か れ て い る 。 先 に引 用 した 高 校 生 対 象 の 調 査 で も、31.1%の 回 答 者 が 、 酒 のCMを 「面 白い 」 「飲 み た くな る」 と肯 定 的 に受 け取 って い る2°)。 こ う して 見 て くる と、 日本 の酒 類 の 広 告 は 、先 に紹 介 した イ ギ リス の広 告 コ ー ドな ど に照 ら して み る と 、 そ れ ら に大 い に抵 触 す る もの ば か りだ とい う こ と に な っ て し まい そ うで あ る 。 そ もそ も 日本 の 酒 の 広 告 は 、 「若 者 を 明確 に そ の ター ゲ ッ トに して い る」 わ け で あ る し、 飲 酒 の魅 力 を提 示 す る こ と に よ っ て、 積 極 的 に飲 酒 の 開 始 を促 して い る か ら で あ る。CMの す み に流 され る、 「飲 酒 は20歳 を過 ぎて か ら」 「お 酒 は20歳 を過 ぎて か ら」 「お 酒 は節 度 を守 って 適 量 を」 な どの 警 告 文 の テ ロ ッ プは 、 い か に も言 い 訳 じみ て い て む な し く感 じら れる。 調 査 結 果 で 見 る 限 りで は 、酒 類 の テ レ ビCMに 対 す る 日本 人 の世 論 も全 般 的 に は 決 して 好 意 的 で あ る とば か りは 言 え な い 。何 度 も言 及 し た全 国調 査 で も 「酒 のCM」 い るが 、 「何 らか の措 置 が 必 要 」 と考 え て い る 人 は65%で につ い て の 意 見 を 聞 い て 、 「規 制 ・改 善 の必 要 は ない 」 の32% を大 き く上 回 っ て い る 。具 体 的 な規 制 ・改 善 策 で は 、 「 飲 酒 を あ お る 内容 は や め るべ きだ 」36% が 最 も多 く、 以 下 「適 正 な 飲 酒 を呼 び か け る 内 容 に」26%、 「放 映 回 数 を制 限 す べ きだ」12%(複 「放 映 時 間 を限 定 す べ きだ 」.14%、 数 回 答)と 続 い て い る21)。 しか し、 これ らは ど ち らか とい う と タ テ マ エ の レベ ル に と ど ま っ て い る よ う に思 わ れ る。 酒 の 広 告 に対 す る 苦 情 や 抗 議 の声 は今 の と こ ろ大 きい とは い え ず 、 酒 の広 告 撤 廃 へ 向 け て の 運 動 も高 ま っ てい る と は い え ない 。 お わ りに 本 稿 で は 、 酒 の 自販 機 の扱 い や 酒 の 広 告 を通 して 、 「酒 に甘 い 社 会 」 日本 の特 徴 の 一 端 を探 っ て き た。 こ の 二 つ の い ず れ の場 合 に も、 酒 に対 す る 日本 人 の 寛 容 さ は 再 確 認 で きた 。 た だ、 最 近 で は そ の寛 容 さ が 裏 目 に 出 る ケ ー ス も増 え て きた こ と も認 め な い わ け に はい か な い 。 若 年 層 の 飲 酒 が もた らす 健 康 障 害 、 女 性 の アル コ ー ル依 存 症 な ど、飲 酒 を め ぐる社 会 病 理 が社 会 問 題 化 しつ つ あ る。 本 来 、 嗜 好 品 とい う もの はそ れ を た しな む 人 間 が 節 度 を持 って 味 わ う と こ ろ に そ の 本 来 の 意 味 が あ り、 飲 酒 に規 制 や制 限 を加 え る こ とは、 基 本 的 に は野 暮 で 無 粋 な こ とで あ る。 しか し、最 近 の飲 酒 を め ぐる 環 境 に は鷹 揚 に こ の よ う な 「理 想 」 を語 っ て い る こ とが 許 され な い 状 況 も生 ま れ つ つ あ る よ うだ 。例 え ば 、 若 年 層 の薬 物 に対 す る驚 くほ どの無 防備 さ、 薬 物 と酒 の 親 和 性 な ど を考 え る と、 何 らか の 教 育 や啓 蒙 は不 可 欠 な もの と思 わ れ る。 日本 人 は伝 統 的 に他 の 文 化 に ひ け を取 ら ない 豊 か な 酒 文 化 を 築 き上 げ て きた わ け だ が 、 新 しい意 味 の 成 熟 した飲 酒 文 化 を作 り上 げ て い くこ とが 、今 日の 日本 人 に課 せ られ た 大 きな課 題 と な っ て い る と言 え よ う。 注 1)「 日本 の 酒 2)拙 生 産 と消 費 の 現 状 」 『東 京 新 聞 サ ン デ ー 版 』1996年12月1日 稿 「酒 の 生 活 学 日本 人 の 飲 酒 行 動 と飲 酒 文 化 」 『 生 活 科 学 研 究 』 第9集 、 文 教 大 学 生 活 科 学 研 究 所 、1987。 本 稿 は 、 内 容 的 に こ の 論 文 と重 な る部 分 が あ る 。 3)「 酒 を甘 くみ る な と く に 若 者 と女 の 人 へ 」 『 暮 しの 手 帖 』No.90、1985、8-9頁 4)東 京 ・神 奈 川 の 高 校 生8500人 5)総 務庁 「 青 少 年 の 薬 物 認 識 と非 行 に 関 す る研 究 調 査 」、1997、 全 国 の 中 高 生2150人 聞』1997年11月16日 全 国 の 有 権 者3000人 対 象 。 『読 売 新 聞 』1994 。 7)前 出 、 総 務 庁 調 査(1997)。 8)前 出 、 読 売 新 聞 調 査(1994)。 9)「 青 少 年 の 飲 酒 防 止 」 『 東 京 新 聞 』1986年5月28日 10)『 朝 日新 聞 』1993年6月25日 。 。 11)『 朝 日新 聞 』1994年12月9日 。 12)『 朝 日新 聞 』1995年5月19日 。 13)前 。 対 象 。 『読 売 新 。 6)「 『酒 ・た ば こ 』 全 国 世 論 調 査 」、 読 売 新 聞 社 、1994、 年7月30日 。 対 象 、 国 立 久 里 浜 病 院 、1990、 『朝 日新 聞 』1991年8月28日 出 、 読 売 新 聞 調 査(1994)。 14)『 東 京 新 聞 』1986年5月28日 。 15)『 朝 日新 聞 』1993年6月25日 。 16)ジ リ ア ン ・ダ イ ヤ ー 、 佐 藤 毅 監 訳 17)同 上 、267頁 。 18)前 掲 、 『暮 しの 手 帖 』。 『 広 告 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン』、 紀 伊 国 屋 書 店 、1985、266頁 19)「 飲 み す ぎ キ ャ リア 女 性 」 『AERA』1997年5月19日 20)前 出 、 国 立 久 里 浜 病 院 調 査(19940)。 21)前 出 、 読 売 新 聞 調 査(1994)。 号。 。