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機械工具商社「現場」レポート①

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機械工具商社「現場」レポート①
機械工具商社「現場」レポート①
~ 今、機械工具商社の現場に忍び寄る危機! ~
「ちょっと、おたく高いんじゃないの?」
地域中堅の機械工具商社に勤める営業主任A氏は、客先で生産技術キーマンの担当者
から声をかけられました。
えっ、何がですか、と、慌てる営業主任A氏。
「これ見てよ!」
見せられた大手通販会社M社の画面をみると、ボールベアリングが定価の35%くらいで
売られています。
客先の生産技術キーマン担当者は続けます。
「ずっとおたくと取引していて、代理店で安いと思って買っていたのに、通販より高いだなん
て俺の立場がなくなっちゃうよね」
それまで、機械工具商社の営業主任A氏は、定価の38%で販売していました。
同社は某大手ベアリングメーカーと直取引なので、もっと安く売ることはできます。
しかしそれほどの購入量も見込めないので、20%近いマージンをのせて売っていたので
す。
「すいません・・・。上司と相談して、M社の価格に合わせます・・・。」
結局、機械工具商社の営業主任A氏は、定価の34%で売ることにしました。おかげでマー
ジンは10%に半減です。
「あーあ・・・」
営業主任A氏はため息をつきました。
「ウチはまだメーカー直取引だから何とかなるけど、問屋経由だと絶対にM社通販に勝て
ないよな」
やり手の営業主任A氏は顧客キーマンをしっかりと押さえているため、通販に負けるという
ことはありえません。
しかし価格を比較されてしまうと合わせざるをえません。
「この業界、どうなっちゃうのかな」
この道15年のA主任もさすがに不安になってきました。
-1-
機械工具商社「現場」レポート②
~ 「地域密着」が「全国通販」に負ける日が来る? ~
「おたく、いったいどういう管理をしてんの!」
普段は温厚な大手自動車部品メーカー保全部門キーマンの担当者が声を荒げます。
「申し訳ありません」
と、機械工具商社の営業主任A氏は平謝りです。
要は、営業主任A氏の新人アシスタントのミスで、部品を発注し忘れていたのです。
部品を発注できていないことがわかったのは、納入予定日の前日でした。
しかし、そこはやり手のA主任。納期遅れへの対策ストーリーは描けています。
「今から私がメーカーに部品を取りにいって、何とか明日の夜までにはお届けします」
メーカーの工場までは車で半日近くかかります。取りに行って戻るだけで1日仕事です。
「まあ、そこまでやってくれるのなら・・・」と、保全部門キーマンも少し穏やかになりました。
「ところで、これ知っている?」と、保全部門キーマンが同社の指定伝票をA氏に見せました。
「最近は、通販M社さんも指定伝票に対応してくれるんだよ」
えっ、A主任は驚きました。
通販M社といえば、現金決済かカード払いしか応じないものと思い込んでいました。
だから自社の様な商社が間に入れるのだ、と。
保全部門キーマン担当者が続けます。
「おたくには悪いけど、M社さんは納期も早いし、発注漏れなんてミスも無いよ。よく考えて
もらわないと、通販に負けちゃうよ」
今でも『フットワーク』を売りにしている機械工具商社が大半です。
しかし現実は、こと納期面については、今や常時在庫している通販の方が「フットワーク」が
良いのです。
-2-
経営者向けレポート
株式会社船井総合研究所 ファクトリービジネスグループ
グループマネージャー 片山和也(中小企業診断士)
株式会社船井総合研究所
ファクトリービジネスグループ グループマネージャー
片山 和也
Profile
工業高校・工業大学機械工学科を卒業後、大手専門商社の工作機械部門に
てトップクラスの実績を上げる。船井総研入社後は一貫して生産財分野のコ
ンサルティングに従事。機械工具商社に代表される地域密着型販売店向け
コンサルティングで成果を出し続ける。通算20年以上にわたり機械業界に携
わっており、技術とマーケティングの両面を理解する超エキスパートとして、
同分野では船井総研でも指折りである。著書多数。仕事のポリシーは、国内
で生き残る製造業モデルを追及することである。
機械工具商社「経営者」の皆様へ
皆様、『機械工具商社「現場」レポート』をお読みいただき、いかがでしたでしょうか。
今、機械工具商社業界は激変しています。
例えばこんな話があります。
先日、ある大手空圧メーカーの代理店会で、その大手空圧メーカーの経営トップが代理店
を前にして、「直販比率を現在の10%から40%に上げる」と宣言したそうです。
そして、思った様に直販を進められない営業本部を解体して、営業責任者を更迭する、と
いう人事処分を行ったといいます。
残念ながら今や業界の主要メーカーで、従来の卸・販売店チャネルに期待している経営
トップはほぼ皆無です。
実際、スペック・インの流れ品がメーカー直取引に切り替わる、あるいはEDIにより全国区
大手商社ルートに切り替わる、というのはどこの機械工具商社でも少なからずある話だと
思います。
ちなみに、こうした業界の激変は機械工具商社だけの話ではありません。
音楽業界ではアップルの配信サービスにより、世界的にCDが全く売れなくなりました。また
アメリカではUber(ウーバー)というサービスが広く浸透し、タクシーが一般ドライバーに顧
客を奪われるという現象が起きています。
宿泊業にしても、膨大な手数料を払って予約サイトに加入していないと予約が集められな
い世の中です。
こうしたあらゆる業界を揺るがす根幹は、21世紀の技術革新である「ビッグデータ」と「ICT
技術」によるものです。
かつてのイギリスの馬車業界は、自動車という技術革新に抵抗して滅びましたが、技術革
新は時流ですから、抵抗するのではなく適応していかなければなりません。
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経営者向けレポート
株式会社船井総合研究所 ファクトリービジネスグループ
グループマネージャー 片山和也(中小企業診断士)
では、地域密着型の機械工具商社は、現在の時流に適応する為に何をするべきなので
しょうか?
それはズバリ、「部品加工」です。
「部品加工」は、既に皆様の会社でも何らかの実績があるものと思います。
その実績をさらに伸ばして、1つの事業といえるレベルにまで成長させる、ということです。
まず大体でも良いので、自社の部品加工関連の売上がどれくらいあるのか、数値データを
とってみてください。
過去1年間の売上実績で良いでしょう。そして、その部品加工の売上が売上全体の何%あ
るのか(=部品加工売上高比率)を計算してみてください。
この部品加工売上高比率が1%前後以下の機械工具商社の場合は、まずは5%を目標
としてください。既に5%前後あるならば10%を目標としてください。
私が主宰している ファクトリービジネス研究会 機械工具商社経営部会 は、全国各地3
0社近くの会員企業様がおられます。
その中で業績が好調な会社の共通点は、この部品加工売上高比率が高い、ということで
す。
部品加工売上高比率が高ければ高いほど、生産性も高くなる傾向があります。
例えば ファクトリービジネス研究会 機械工具商社経営部会 某社の場合、従業員は12
名に過ぎません。
しかし部品加工売上高比率が4割を超えている同社の社員1人あたり粗利益(=生産性)
は、年間900万円を超えています。
生産性900万円というのは、従来であれば従業員50名以上の地域一番店クラスの水準
です。
逆に、地域一番店クラスの従来の「勝ち組」企業ほど苦戦している場面も見受けられます。
従来の特約店権・代理店権に伴う販売ノルマや過去のしがらみにしばられ、本来打つべき
手が打てていない、ということなのかもしれません。
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経営者向けレポート
株式会社船井総合研究所 ファクトリービジネスグループ
グループマネージャー 片山和也(中小企業診断士)
機械工具商社が部品加工に力を入れるべき理由として、次の8つを挙げることができます。
① 従来の機械工具や設備と異なり、「部品加工」は必需品なので景気が悪くなっても一
定の需要はある。
② エンドユーザーの製品の中に「部品」として組み込まれるので、エンドユーザーの出荷
が続く限りは需要がある。
③ 円安・原油安による海外輸出の好調は当面続く。前述②のニーズが取り込めれば、国
内の設備投資が落ち込んでも、その分をカバーできる。
④ リピートしやすい上に、本業の機械部品(ベアリング・モーター・油空圧機器など)の販
売にもつながりやすい。
⑤ 機械工具商社が間に入ったからといって、価格的に不利になるとは限らない。いわゆ
る町工場(部品加工業)が外注に出すと、3割~5割もの管理費(マージン)を取るのが
普通であり、場合によっては機械工具商社の方が価格競争力はある。
⑥ 同業と競合するのではなく、町工場(部品加工業)との競合になるので、営業面で優位
に立てる。大半の町工場に専任の営業はいない。いたとしても機械工具商社の方が
営業会社なので営業力が高い。
⑦ 中堅・大手エンドユーザーが設備の内製化を進めており、部品加工の外注ニーズが
高まっている。中堅・大手企業の場合、設計・組立は社内で対応するが、部品加工は
チャージが合わない上に設備投資が必要になるので、加工は内製をしたがらない。
⑧ 中堅・大手エンドユーザーの担当者の「若手化」が進んでおり、ややこしい町工場の職
人との対応を嫌がるケースが増えている。少しくらい高くなっても、納期管理を代行し
てくれる商社を望む現場が増えている。
いかがでしょうか。機械工具商社が部品加工を手がけない理由は無い、と言っても過言で
はないのではないでしょうか。
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経営者向けレポート
株式会社船井総合研究所 ファクトリービジネスグループ
グループマネージャー 片山和也(中小企業診断士)
ではここで、皆様からよくある質問が、「設備(工作機械)も無いのに、部品加工を事業の柱
として成り立たせることができるのか?」ということです。
答えは明確に「YES!」です。設備(工作機械)など全く必要ありません。外注を活用すれ
ば良いのです。
ただし、自社の「ブランド化」は必要です。つまりエンドユーザーから「あの会社なら部品加
工を安心して任せることができる」というブランドです。その為に必要なことは次の6つです。
① 社内の部品加工事例共有
② 特徴・競争力のある、部品加工外注の発掘
③ 部品加工Webサイト(ソリューションサイト)の立ち上げ
④ 部品加工営業ツール(アプローチブック)の整備
⑤ 社内業務体制の整備
⑥ 営業マン教育・加工へのモチベーションアップ
この6つをいかに進めていくかが、まさに今回のセミナーのテーマです。
そして今回のセミナーでは、御社の部品加工事業を強力に推進してくれるパートナーにも
なり得る、また自身が多品種少量の部品加工事業で大きな成果を上げている、深江特殊
鋼株式会社の代表取締役である木村氏を特別ゲスト講師として、お招きしています。
深江特殊鋼株式会社
代表取締役 木村 雅昭 氏
Profile
広島県福山市の本社を置き、岡山・関西に拠点を展開する。従業員110名。特殊鋼を中心とす
る金属材料の商社であるが、「加工」機能を強みとする。ガンドリル・BTA加工機・大型旋盤・門形
マシニングセンタを社内設備として多数保有している。また膨大な外注先をネットワーク化してお
り、熱処理・表面処理についても国内有数の技術を持つ、中堅企業の協力を得られる体制を築
いている。現在は全取引の7割が加工込みの仕事となっており、その結果2014年度は年商52
億円、経常利益5.2億円という、業界でも極めて高い利益水準を実現している。昨今では機械
工具商社とのアライアンスを進めており、ともに日本の製造業に貢献していきたいと高い志を持
たれている。船井総研ファクトリービジネス研究会 部品加工業経営部会メンバー企業でもある。
本セミナーは会場の関係により、また密度の高い内容とさせていただくため先着25名様限
定となっております。セミナーの開催は2015年11月12日(木曜日)東京会場です。
ぜひ、今すぐ手帳を開いて、日程を確保ください。
皆様とセミナー会場でお会いできることを、心から楽しみにしております。
株式会社船井総合研究所 ファクトリービジネスグループ
グループマネージャー シニア経営コンサルタント
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片山 和也
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