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CDを利用した簡易分光器

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CDを利用した簡易分光器
高
校
物
理
CD を利用した簡易分光器
奈良県立高取高等学校
田 中 敏 弘*
目 的
教材・教具の製作方法
CD を使った反射干渉型分光器を、生徒の工作に利
用できるように小型化し、観察の新しい方法を導入し
て高次の干渉像を見ることができるようにする。実験
が終了しても、興味をそのまま持続できるように装置
に化粧紙をかぶせて工夫をこらし、見栄え良くする。
I. 反射型 C D 分光器(生徒工作用)
概 要
この装置は、約 3 年の間に数回の改良を重ねて完成
した内容である。新開発の CD 分光器はスリット幅を
3 ∼ 4cm と広くしたため、左右に種類の異なる光源を
置いて導き入れ、異なったスペクトルを簡単に並べて
見せることができる。たとえば蛍光灯とナトリウム灯
のスペクトルも比較することができるようになった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
また目との距離に関係なく光源の光を観察できるの
で、のぞき窓を CD のすぐ近く 1 ∼ 2cm とし、スリッ
トからの入射角を大きく変化させて 1 ∼ 3 次の干渉像
を確認できる装置となった。たとえば新型蛍光灯のス
ペクトルを、Hg のスペクトルデーターを公式に代入
し、1 次∼ 3 次の回折像とピッタリ一致させることも
可能である。
図 1 新型 CD 分光器の干渉像
設計図にも工夫をこらし、点対称のシンプルな設計
図とし、30 分で完成する工作の授業となった。
*
1. 材 料
①黒色厚画用紙:暗箱とするため、黒い紙にそのまま
設計図を印刷する。色調の違いでハッキリ見える。
②包装用模様紙:きれいな模様で、製作した装置に愛
着を持たせる。組立前に斜め帯状に貼り付ける。
③ CD :コンピューター用をカットして利用する。
④アラビック液のり:のりで乾いた紙が固化する目的
で利用。
2. 道 具
①ハサミ:設計図のカット用。
②カッターナイフ:のぞき窓とスリットの切り込み
用。
3. 工 作
順序は次の①∼⑨で行う。
①設計図の中の数字 1 ∼ 4 を切り込む。
図2
設計図/寸法入り
②楕円形のぞき窓を切り抜く。
③折り込み線をボールペンできつくなぞり(前処理)、
折り込みやすくしたところで△型に折る。
④再度設計図を平らに開き、中央の帯に化粧紙(包装
用包み紙)を貼り付ける(写真 1)。
たなか としひろ 奈良県立高取高等学校 教諭 〒 635-0131 奈良県高市郡高取町佐田 455-2
☎(0744)
52-4552
③ SONY マビカ 90 より上位機種には AV 端子が付いて
いるので、AV 端子を TV モニターに接続する。
図3
CCD カメラ用暗 BOX
写真 1 設計図と化粧紙の貼り方
⑤のぞき窓がふさがるので、再度切り抜く。
⑥装置の組立は、サイドの△部分 2 ヶ所と底の長方形
部分をのり付けし、△おにぎり型を完成させる。
⑦はみ出した化粧紙を巻きつけて暗箱完成。
⑧紙の「ノリ」が乾いて固くなったところで、スリッ
トを頂点から 1/3 の所にカッターナイフで切り込む。
⑨カットした CD をのぞき窓から入れ、両面テープで
貼り付けて装置完成(写真 2)
。
学習指導方法
1. 生徒が製作した分光器でスペクトルを観察
①生徒が工作した CD 分光器で、元素のスペクトルを
観察する。
・ Na 灯/Hg の光源/蛍光灯/白熱灯の観察
②反射型分光器のスリット幅を広く採っているので、
2 つの光源を並べて CD 分光器のスリットに導くと
き、光源のスペクトルを比較する。
・写真 3 のように左右に同じ波長が並ぶ。
③ 1 次∼ 3 次干渉像の観察には、下方の観察窓のさら
に下方を手前側にのぞく。
・写真 4 のように 1 次・ 2 次は簡単に見える。
④入射角と干渉角の計算値をグラフに書き出し対比。
d(sinα− sinθ)
= mλ
∴θ= sin − 1(sinα− mλ/d)
CD の d = 1.6μm のデーターで入射角αを変化。
赤= 623nm、黄= 577nm、緑= 546nm、青= 435nm
・図 4 のグラフの中の台形部分が観察されている。
表 1 公式からの干渉像が見える角度
写真 2 CD をセットした CD 分光装置
I.演示用
I
C D 反射型分光器
①生徒用 CD 反射型分光器の× 2 倍サイズで製作。
(面積は× 4 倍となる)
② CCD カメラ(SONY マビカ 90 を利用)用暗箱装置
の高さは低く作る。(4cm の高さ)
1次
入射角 70 ゜
60 ゜
50 ゜
40 ゜
0゜
2次
入射角 70 ゜
60 ゜
50 ゜
40 ゜
0゜
3次
入射角 70 ゜
60 ゜
50 ゜
40 ゜
赤
33.4 ゜
28.5 ゜
22.1 ゜
14.7 ゜
− 23 ゜
赤
9.3 ゜
5.0 ゜
− 0.7 ゜
− 7.8 ゜
− 51 ゜
赤
− 13.2 ゜
− 17.6 ゜
− 23.7 ゜
− 31.7 ゜
黄
35.4 ゜
30.4 ゜
23.9 ゜
16.4 ゜
− 21 ゜
黄
12.6 ゜
8.3 ゜
2.6 ゜
− 4.5 ゜
− 46 ゜
黄
− 8.2 ゜
− 12.5 ゜
− 18.4 ゜
− 26.0 ゜
緑
36.8 ゜
31.7 ゜
25.1 ゜
17.5 ゜
− 20 ゜
緑
14.9 ゜
10.6 ゜
4.8 ゜
− 2.3 ゜
− 43 ゜
緑
− 4.8 ゜
− 9.1 ゜
− 14.9 ゜
− 22.4 ゜
青
41.9 ゜
36.5 ゜
29.6 ゜
21.8 ゜
− 16 ゜
青
23.3 ゜
18.8 ゜
12.8 ゜
5.7 ゜
− 33 ゜
青
7.1 ゜
2.9 ゜
− 2.8 ゜
− 10.0 ゜
実践効果
図 4 干渉像のグラフ
・生徒がのぞき窓から観察した干渉像は一定した方向
のようには感じられない。しかし、CCD カメラを
CD 分光器にセットしてモニターで観察すると、分
光器をどんなに移動させてもモニター上では、赤や
緑・青の線が固定された場所で見えることがわか
る。
・ CD 円板による干渉像は、スリット側が青で赤が遠
くとなる。波長の長いスペクトルが遠いところで強
めあうことから、赤の波長が長いことがわかる。
・のぞき窓の観察方向を上下に振ると、計算通りの角
度に 1 ∼ 3 次のスペクトルを観察できる。
・ CD には目には見えないが幅の揃った細線が描かれ
ているということを、公式を使い見えない細線の間
隔を求めることができる。d = 1.6μm を確認するこ
とも可能である。
その他補遺事項
○生徒工作のためのアイデア
・時間短縮のため、設計図(図 2)はシンプルな点対
称。
・紙の材料には黒色厚画用紙を利用して暗箱とする。
・今までの厚紙をさらに 2 重の張り合わせとする。
○今までの反射型分光器との大きな変更点
・ CD 覆いを無くし「△おむすび型」で小型化。
・のぞき窓を上部から下部に移動。
・ 8 等分 CD をのぞき窓から挿入・固定。
参考文献
1)市野,二階堂:オーディオ機器,テレビジョン学
会編,(コロナ社)
.
写真 3 比較スペクトル
写真 4
1 ・ 2 次干渉像
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