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ディジタルホログラフィーの解像度解析 II : 像再生アルゴリズムによる制限 北見工業大学 1 ° 和賀 秀平, 土田 賢二, 満岡 直城, 原田 康浩 はじめに ディジタルホログラフィーでは,取得したディジタ ルなホログラムデータに対して,計算機内での数値的 なフレネル変換を施して再生像を得る.そのため,再 生像も空間的にサンプリングされた離散点の情報しか 与えない.また,その空間分解能は,採用する数値的 フレネル変換のアルゴリズムに依存して変わる.本報 告では,再生像の空間分解能を理論的に解析し,数値 的フレネル変換アルゴリズム毎の理論式を導出した. 2 理論解析および考察 2.1 コンボリューション法 コンボリューション法は,フレネル回折積分をホロ グラムデータとフレネル回折の自由空間伝播カーネ ルとの畳み込み積分と見做して,それぞれのフーリエ 変換の積を逆フーリエ変換することで再生像を得る 方法である.この場合,数値的には離散フーリエ変換 (DCT) を 2 回施すことになる.これより,元のディ ジタルホログラムデータでの隣り合うデータ点の間隔 (ホログラム記録時に使用した CCD カメラのピクセ ル間隔) を px とすると,再生像のデータ間隔 ∆x は ∆x = px (1) となり,再生像の空間分解能はホログラム記録の際に 使用した CCD カメラのピクセル間隔 px と同一と なる. 2.2 フーリエ変換法 フーリエ変換法は,フレネル回折積分をホログラム データと 2 次位相関数との積のフーリエ変換と見做 し,1 回の DCT で再生像を得る方法である.この場 合のフーリエ変換は,空間周波数領域 x/λz への変換 であるため,再生像は 1/λz によりスケーリングされ たものになる.また,フーリエ変換した結果のデータ の空間周波数分解能 ∆x/λz は,ホログラムデータの データ幅 Nx px (N は CCD カメラの総ピクセル数) の逆数で規定される [1].したがって,再生像の空間 分解能 ∆xR は λz ∆x = (2) N x px となる.この式は,空間分解能の高い (∆x の小さい) 再生像を得るためには,1) 波長 λ の小さい光源を使っ てホログラムを記録する,2) チップサイズ Nx px の 大きい CCD カメラを使ってホログラムを記録する, 3) 物体–CCD カメラ間の距離 z を小さくしてホログ ラムを記録する必要があることを意味している.1), 2) に関しては,ホログラム記録に使用する機材で決 Fig. 1: 物体の大きさ Dx の変化に対する達成可能な 再生像空間分解能 ∆xmin の変化. まる因子であり,改良の余地はない.一方 3) はホロ グラムの記録配置で z を小さくすることで対処可能 である.しかし第 I 報での解析結果の通り,z にはホ ログラムを正しく記録するための最小値 zmin が存在 する [2].その z に関する条件を使用すると,フーリ エ変換法で再生した場合の空間分解能の条件式は ∆x ≥ px + Dx Nx (3) となり,記録時に使用した CCD カメラの分解能 (px ) よりも必ず低下することを意味している. Fig.1 は,第 I 報の検証実験で使用した CCD カメ ラ [2] を対象として計算した達成可能な再生像の最小 空間分解能 ∆xmin の物体サイズ Dx 依存性を調べた 結果である.この図から,大きさが 6[mm] 程度の物 体のホログラムからフーリエ変換法で再生した像の空 間分解能は約 11.5[µm] で,使用した CCD カメラの 空間分解能の約 0.6 倍に低下することが分かる.この 場合の再生像で見える物体の細かな構造は,標本化定 理より 2∆xmin = 23[µm] 程度であり,これよりも細 かな構造は再生像として得ることはできない. 発表においては,物体サイズを変えて取得したホロ グラムデータに対して 2 つの像再生アルゴリズムを 適用し,導出した再生像空間分解能の理論式について 検証を行なった結果も報告する予定である. 参考文献 [1] 谷田貝 豊彦:光とフーリエ変換 (朝倉書店, 1992), pp.57–60, 72–75. [2] 和賀 秀平 他,第 41 回応用物理学会北海道支部学術講 演会 予稿集 C-13 (2006).