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105 ホソオチョウ Sericinus montela Gray,1852 【概要と選定
節足動物・昆虫類 <チョウ目 アゲハチョウ科> ARTHROPODA INSECTA <LEPIDOPTERA PAPILIONIDAE> ホソオチョウ 条例,要注意 Sericinus montela Gray,1852 【概要と選定理由】 アジア大陸からおそらく人為的に持ち込まれた種。幼虫の餌であるウマノスズクサは,在来種で あるジャコウアゲハの唯一の餌にもなっており,その競合が指摘されている。故意による放蝶の可 能性が指摘されており,周知する必要がある。国の要注意外来生物とされており,愛知県の条例公 表種でもある。 【形 態】 開張43~47mm。尾状突起が長く,雌雄によって斑紋が異なる。 後翅外横帯には赤色の帯が発達しその外側に青色帯が見られる。 【分布の概要】 【世界の分布】 日本のほか朝鮮半島,中国など大陸に分布。 【国内の分布】 東北の宮城県,関東地方,岐阜県,愛知県,滋賀県,京都府, 大分県など。 【県内の分布】 名古屋市(守山区),春日井市,一宮市光明寺,豊田市(笹俣・ 間野 2008;中根・浅岡 2009)。 ホソオチョウ(間野撮影) 【生息地の環境/生態的特性】 明るい開けた草地に生息する。愛知県の確認地の多くは河川敷の草地である。ウマノスズクサ科 ウマノスズクサが唯一の食草で,成虫は 4 月から秋にかけて見られ,しばしば高密度で発生する。 特に第 1 世代成虫は,ジャコウアゲハより早く発生する。 【侵入の経緯/現在の生息状況】 日本では1978年に東京で確認されたのが初記録で,人が故意に放したと考えられている。その後 関東地方を中心に,おそらくまた放蝶によって分布地が増え,現在東北,関東,中部,近畿の各地 方で生息が確認されている。愛知県では名古屋市守山区の庄内川河川敷からの記録(山田2006)が 最初の記録で,各地で散発的に確認されているが,そのいくつかは明らかに放蝶と考えられる。名 古屋市の名古屋城でも発生していたという(高橋匡司氏私信)が,公園管理に伴う食草の除去のためか, 現在は見られない。 【被害状況/駆除策と留意点】 ウマノスズクサは,在来種であるジャコウアゲハの唯一の食草でもあり,餌の競合が起こってい る可能性がある。食草に産まれた卵を除去することが最も確実な駆除法で,食草被害も最小限に抑 えることができる。 【引用文献】 中根吉夫・浅岡孝知. 2009. 旧小原村・西萩平町でホソオチョウを採集. 虫譜 48(1): 24. 笹俣泰彦・間野隆裕. 2008. 愛知県豊田市からのホソオチョウの記録と愛知・岐阜両県の既存データの整理. 佳香蝶 60(235): 243-244. 山田芳郎. 2006. 名古屋市でホソオチョウの発生を確認. 佳香蝶 58(225): 19. (間野隆裕) 105