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の
金属材料の高温における強化
に関する研究
-積層強化と固溶強化-
森川龍哉
目次
1
.1 本 研 究 の 背 景 と 目 的
.................
1
.
1
.1 巨 視 的 な 材 料 強 化 法 ( 積 層 強 化 )
11247
1 序論
1
.
1
.2 微 視 的 な 材 料 強 化 法 ( 固 溶 強 化 )
1
.2 概 要
-・. . . . . . ・
.・
.・
.・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . . . . . . . .
2
.
1 緒言
2
.
2 実験方法.
2
.
2
.
1 試験片の作製
2
.
2
.
2 熱疲労試験
2
.
3 実験結果と検討.
2
.
3
.
1 サイクル数と銅層の伸び.
2
.
3
.
2 熱 残 留 応 力 の 評 価 . • • • • • • .• • •
2
.
3
.
3 残留内部応力の緩和過程.
2
.
3
.
4 ボ イ ド の 発 生 機 構 . ....
2
.
4 結論
-・・. . . . ..
................
I
99000225613
111111122
2 人工積層複合材料の熱疲労
24
3 人工積層複合材の高温変形
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
4
3
.
2 実験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
4
3
.
1 緒言
..• ..• ...........
2
4
3
.
2
.
2 圧 縮 試 験 . ..............• ....
2
7
3
.
2.
1 試験片の作製
3
.
3 実験結果と検討..
3
1
3
.
3
.
1 応力ーひずみ線図
3
1
3
.
3
.
2 異相界面すべりのその場観察
3
3
3
.
3
.
3 界面拘束による複合材料の強化
3
5
3
.
3
.
4 界面近傍の構造
44
3
.
4 結論
-・・・・・・
・・・・
・・・・・・・・・
ー
ー・・・・・・・・・.
A古
4
.
2 回溶硬化合金の高温変形挙動による変形機構の判別
AVO
A斗
4
.
1 緒言
991
4 固溶硬化合金の高温変形機構の判別
4
6
4
.
2
.
1 実 験 方 法 . ...................
5
1
4
.
2
.
2 実 験 結 果 . .....• ..........• ..
5
2
4
.
3 固溶硬化合金の高温における刃状転位の易動度・・・
5
5
4
.
3
.
1 計 算 法 . .......• ......• ...•.
5
5
4
.
3
.
2 計 算 結 果 と 検 討 . ..............•
5
8
4
.
4 電気抵抗測定による固溶硬化合金の高温変形機構の
判 別 . ........• .....• ......• .• • . 6
2
4
.
4
.
1 実 験 方 法 . ........• .• .• ..• ..•
6
2
4
.
4
.
2 実 験 結 果 と 検 討 . .........• ..• •.
6
6
1
1
4
.
5
結論
..................• .....••
7
2
77
5 固溶硬化合金の高温変形挙動の予測
5
.
1
緒言
5
.
2
実 験 方 法 . ...............• ..• .• .•
7
8
5
.
2
.
1
高温引張試験
.............• .••
7
8
5
.
2
.
2
応力緩和試験
...............••
8
1
5
.
3
5
.
4
5
.
5
....................• .....
7
7
実 験 結 果 と 検 討 . ...................
8
2
5
.
3
.
1
応力緩和試験
8
2
5
.
3
.
2
高温変形応力の変形経路依存性
.................
.......
8
3
変 形 挙 動 の 予 測 . ...................
8
7
5
.
4
.
1
予 測 法 . ....................
8
7
5
.
4
.
2
パ ラ メ ー タ の 決 定 . ..............
9
3
5
.
4
.
3
実 験 結 果 と 計 算 結 果 の 比 較 . .........
9
6
..........................
1
0
2
結論
6 総括
103
謝辞
109
参考文献
110
牙
ヨ
1
早
序論
1
.
1 本研究の背景と目的
ジェットエンジンの部材や空力加熱にさらされる航空機の外皮部
材などには高温で高い強度を保つことのできる材料が必要となる。
高温で強度の高い材料にはセラミックスがあるが、延性に乏しく、
強度のばらつきが大きいという問題があり、構造用材料の主流は依
然として金属材料である。
金属材料の強化のために既にいろいろな方法が開発され、実用に
供されている。材料の塑性変形は転位の運動によって担われている
ので、材料の強化とは転位の運動を阻止することであると考える
ことができる。そこで、この阻止をどのような手段で行うかによっ
て、材料の強化法は巨視的な方法と微視的な方法に大別することが
できる。
1
1.
1
.
1
巨 視 的 な 材 料 強 化 法 (積 層 強 化 )
航空機等の構成材料の軽量化のために、材料の 複合化という考え
方 が 生 ま れ 発 展 し て き た 。 そ の 成 果 の 1っとし て 、軽 量 で し か も 強
繊維強化プラ
い 、 す な わ ち 高 比 強 度 、 高 比 剛 性 の 材 料 で あ る FRP(
スチック)がすでに実用化されている。強化繊維にはガラス、ボロ
ン、炭素などが用いられ、さらに高強度を実現する繊維が追求され
ている。しかし、 FRPに は リ サ イ ク ル が 困 難 で あ る 、 耐 熱 性 が 著
しく劣るといった問題がある。超高温用材料として炭素ー炭素複合
材料の開発も進められているが、主流は金属をマトリックスとした
金属基複合材料であると言える。
金属基複合材料にも、比強度、比剛性に優れていることが要求さ
れるが、耐熱用には高温において強度低下の少ないことが重要であ
る。また、高温で延性に富むことも、高温用複合材料の満たすべき
条件である。比強度の点、で優れていても延性の著しく劣る材料は大
きな衝撃力が付加されたときに破壊しやすいからである。延性に富
む母相を持つ金属基複合材料はこの条件を満たすことができる。
さらに、 2種 以 上 の 異 な る 材 料 を 用 い て い る こ と か ら 、 複 合 材 料
には異相間の界面の安定性や密着性の良いことが必要である。これ
は、強化相に外力を伝達させて強度を上げるという複合化の利点を
確保する上で重要である。
複 合 材 料 は 強 化 相 の 分 布 の 形 態 に よ っ て 次 の 3種 類 に 分 類 で き
る 。 母 相 中 に 第 2相を分散させた分散強化材(析出強化材を含む)、
繊維状の強化相を複合させた繊維強化材、および板状の強化相を複
2
合させた積層強化材である。
3種 に 分 類 し た 複 合 材 料 の 中 で 、 分 散 強 化 材 で は 、 母 相 の 転 位 が
分 散 粒 子 に 到 達 し た 際 に 、 転 位 は 上 昇 運 動 に よ る 乗 り 越 え (1)_(3)、あ
るいはオローワン機構 (
4
)
(粒 子 の 周 り に 転 位 ル ー プ を 作 っ て 転 位 が
粒子聞を通過する機構)等によって通過することが可能である。ま
た、繊維強化材の場合もオローワン機構によって転位は繊維聞を通
過可能である。しかし、積層強化材では、母相の転位が強化相に到
達したとき、その運動は完全に阻止される。
以上のように、積層強化材は転位論的な強化の効果が最も大きい
複合材料であると考えられる。このような観点から、本研究では巨
視的な材料強化法の典型的な例として、積層複合材料を取り上げた。
金属基の複合材料を作製する際には、母相と強化相の界面密着性
の問題や構成相聞の化学反応により反応相が界面に形成されるなど
の問題があるが、技術的には強化相表面の処理(コーテイング等)な
どによってこれらの問題は克服されている。また、金属同士を複合
させて積層材を作製する場合には、共品系を利用することにより化
5
)。 し か し 、 高 温 用 に 使 わ れ
学的に安定な界面をつくる方法もある (
る複合材料は、高温から低温(室温)、またその逆の温度履歴を繰り
返し与えられるのが一般で、そのような使用条件のもとでも界面の
安定性が保持されなければならない。このとき、上に述べたような
界面の化学的安定性も必要であるが、構成相の熱膨張係数の相違に
由来する熱応力によって界面すべりや軟相の変形などが発生すると
いった物理的な不安定性を阻止することも、複合材料を高温で使用
する上で重要な課題である。高温で使用中に界面すべりなどの物理
3
的な不安定性が露呈すると、外力を強化相に伝達する効果が著しく
減ずる。そこで、本論文の前半では、金属基の人工積層複合材料に
ついて、界面すべりを中心にした異相界面の高温における物理的な
不安定性を、熱サイクルによる熱疲労と高温変形によって検討し、
その原因を考察した。
本研究では、積層複合材を構成する材料として母相(軟相)には
銅、強化相(硬相)にはタングステンを選択した。銅とタングステ
ンは銅を溶解して接合すると密着性の非常に良い界面が得られる。
しかも、化学反応による化合物が形成されず、互いに固溶すること
もない。すなわち、この組み合わせを用いると、化学的に安定で強
固な界面を持つ積層複合材料を作製することができ、熱疲労や高温
変形の挙動を調べる上で、界面の物理的な性質のみに絞って検討す
ることができるという利点がある。
1
.
1
.
2
微視的な材料強化法(固溶強化つ
前節の複合強化も強化相の分布を密にして行けば微視的になる
が、本研究では微視的な材料強化法の代表として固溶強化事を取り
上げた。合金元素が原子レベルで均一に分布する固溶体は十分微視
的であるといえる。
合金化による回溶硬化は、結晶粒の微細化などと並び、代表的な
金属材料の強化法の一つである。国溶硬化の研究は過去において多
数行われ、その機構に関する知見は多い (
6
)。 固 溶 硬 化 合 金 で は 、 高
事国溶強化は寸実に固溶硬化と呼ばれているので、以下では統ーして固溶硬化
と呼ぶ
4
温において転位の周りに溶質原子の雰囲気が形成される。置換型固
溶体の場合には、この雰囲気は、溶質原子が母相の格子点に置換す
ることによって格子をひずませ、生じた応力場と転位の応力場との
相互作用によって溶質原子が流動
(
d
r
i
f
tf
l
o
w
)す る こ と に よ り 形 成
されるものである。したがって、高温で変形する際には、転位は溶
質原子の雰囲気を引きずって運動する。この引きずり抵抗が硬化の
7
)。 こ の と き の 転 位 の 運 動 は 粘 性 的 で あ り 、
原因と考えられている (
溶質原子の拡散を媒介とする熱活性化過程である。このような変形
様 式 で は 、 巨 視 的 に は 、 ひ ず み 速 度 の 応 力 指 数 が 約 3になる(純金
属では 4から 5)(8)、 加 工 軟 化 す る (
9)、逆遷移クリープ現象が見られ
る (10)な ど の 特 有 の 現 象 が 起 こ る 。
金属加工の分野で大きな割合を占める熱間圧廷では、材料に複雑
な変形履歴が与えられる。このとき、圧延する材料の変形抵抗の変
動を、上に述べたような回溶硬化の機構に関する知見を利用して予
測できれば、より効率の高い操業が可能になると考えられる。
この予測法の適用は、まず面心立方品の
AI-Mg合 金 を 対 象 に 行
わ れ た (11)(12)。 い ろ い ろ な 温 度 と 変 形 経 路 の 条 件 で 得 ら れ た 実 験 値
に対して予測が行われ、予測結果は実験値を概ね再現することがで
きた。しかし、変形条件によっては予測値が実験値を上回る場合が
あった。この相違は、その変形条件では転位の運動速度が大きく、
一部の転位が溶質雰囲気から離脱し始めていることに起因するので
は な い か と 考 え ら れ た (11)。 転 位 が 雰 囲 気 か ら 離 脱 し て い れ ば 、 予
測法の前提になっている変形機構が変化していることになるからで
ある。実際、計算で求められた転位速度と、理論的に推定された雰
5
囲 気 離 脱 開 始 転 位 速 度 を 対 応 さ せ る と 、 前 者 が 後 者 を 上 回る領域と
予 測 値 が 計 算 値 よ り 大 き な 領 域 と が 対 応 す る こ と が わ か っ た (11)。
以上に述べた変形応力の予測および変形機構の変化の検討は、 い
I-Mg合 金 に つ い て 行 わ れ た も の で 、 他 の 種
ずれも面心立方品の A
類の合金や結晶系において、この方法が適応できるか否かは未だ明
らかにされていない。そこで、本論文の後半では、材料の変形を微
視的視野から見て構築された変形応力の予測法を用い、この方法が
異なる結品系の材料にも汎用し得るか否かについて検討した。
.
0
8
本研究では、原子半径差に基づくミスフィットパラメータが 0
と大きい典型的な固溶硬化合金であり、実用に広く使われている鉄
をベ ー スにした Fe-Mo合 金 を 体 心 立 方 晶 合 金 の 中 か ら 選 択 し た 。
以上のように、本研究では材料の巨視的な強化法として積層強化
法を、微視的な強化法として合金化による固溶硬化を選び、それぞ
れの高温変形挙動の特徴を調べたものである。高温変形には拡散が
関与するという共通点があるが、その関与の重点が積層強化材料で
は界面すべりと硬相の拘束下での軟相の塑性変形にあり、固溶硬化
材料では転位の溶質雰囲気引きずり運動にあるという大きな違いが
ある。それ故、本論文では前半で積層強化について述べ、後半で固
溶硬化について述べることとし、最後に両研究成果を総括すること
とした。
6
1
.
2 概要
本 論 文 は 、 以 下 の 6章 よ り 構 成 さ れ る 。
第 1章 序 論
第 2章 人 工 積 層 複 合 材 料 の 熱 疲 労
第 3章 人 工 積 層 複 合 材 料 の 高 温 変 形
第 4章 固 溶 硬 化 合 金 の 高 温 変 形 機 構 の 判 別
第
5章 固 溶 硬 化 合 金 の 高 温 変 形 挙 動 の 予 測
第 6章 総 括
第 1章 に は 、 本 研 究 の 背 景 と 目 的 お よ び 各 章 の 概 要 を 記 し た 。
第 2章 と 第 3章 に は 、 積 層 複 合 材 料 の 高 温 変 形 挙 動 に つ い て 記
した。
第 2章 で は 、 銅 ー タ ン グ ス テ ン 人 工 積 層 複 合 材 料 に 3つ の 異 な る
熱サイクルを与えたときに、軟相である銅相が界面方向に伸び、銅
相中にボイドが発生することを示し、これらの実験結果と、熱サイ
クル中に熱膨張係数差に起因して試料内部に発生する熱残留応力と
の関連を検討した。
第 3章 に は 、 銅 ー タ ン グ ス テ ン 人 工 積 層 複 合 材 料 を 高 温 で 圧 縮 試
験し、変形挙動を調べた結果を示した。このとき、タングステンの
圧 延 方 向 と 界 面 の せ ん 断 応 力 方 向 が 平 行 な と き と 垂 直 な と き の 2つ
の実験条件で圧縮して、前者では複合材料の変形はもっぱら銅相の
変形で担われること、後者では界面すべりを伴う変形が生じること
を示し、界面すべりの方向によって変形挙動が大きく異なることを
7
明らかにした。また、変形が銅相に担われる場合については界面拘
束による母相(銅相)の強化機構を考察し、界面すべりが生じる場
合については、界面すべりと界面構造との関連を検討した。
第 4章 と 第 5章 に は 、 固 溶 硬 化 合 金 の 高 温 変 形 挙 動 に つ い て 述
べた。
第 4章では、まず、 Fe-Mo合 金 を 用 い て 、 転 位 の 溶 質 雰 囲 気 引 き
ずりが変形を律速するときに観測されるひずみ速度の応力に対する
べき乗則 (
3乗 則 ) と ひ ず み 速 度 の 増 大 に 伴 う 3乗 則 か ら の ず れ を
実験的に明らかにした。また、固溶硬化合金中の溶質原子と転位の
弾性的相互作用(寸法効果による)に基づいて、転位速度の変化に
よる転位の運動抵抗の変化を算出し、ひずみ速度の増大に伴う変形
の律速機構の変化との関係を検討した。さらに、
AI-Mg合 金 に つ い
て、溶質雰囲気形成によって合金の比抵抗が変化する可能性を検討
し、これを利用して変形の律速機構の変化を実験的に直接とらえる
ことを試みた。
第 5章 で は 、 ま ず 、 体 心 立 方 品 固 溶 硬 化 合 金 (
Fe-Mo合金)の高
温における変形応力の変形経路依存性を実験的に明らかにした。ま
た、これまで面心立方品の合金に有用であった、固溶硬化合金の変
形機構(転位の溶質雰囲気引きずり機構)に基づいた変形応力の予
測法を示し、この予測法を使って体心立方品固溶硬化合金の実験値
の再現を試み、予測法の汎用性とその適用限界を明らかにした。
第 6章 で は 本 研 究 で 得 ら れ た 主 な 結 果 を 要 約 し て 示 し た 。
8
弟
2
早
人工積層複合材料の熱疲労
2
.
1 緒言
高温で使用される複合材料には、高温と低温を往復するサイクル
型の温度履歴が繰り返し与えられる。このとき、複合材料の開発に
あたり克服すべき重要な課題は、母相と強化相の異相界面における
反応相の生成などの化学的不安定性と界面すべりなどの物理的な
不安定性である。本章では、モデル積層複合材料として銅とタング
ステンによる界面密着性の良い複合材料を作製し、異相界面の化学
的安定性が満たされている条件で、熱サイクルによる複合材料の形
状変化を調べ、温度履歴を与えたときに各相に生ずる熱応力が複合
材料の異相界面の物理的な劣化に及ぼす影響を検討した。その結果
に基づき、母相に延性に富む金属材料を用いた場合でも、高温で使
用するときには構成相の熱膨張率の適合性が重要になることを示す
(
1
3
)
9
2
.
2 実験方法
2
.
2
.
1
試験片の作製
積層複合材料の硬相のタングステンには、粉末焼結の後圧延され
た純度
99.9wt%、厚さ O.lmmのタングステン箔((株)東芝製)を用
いた。これを
酸
25x10mmの 寸 法 に 切 り だ し た 後 、 フ ッ 酸 30%、 酢
30%及 び 硝 酸 40%の 体 積 比 の 溶 液 を 用 い て 酸 洗 し た 。 こ の 寸 法
の タ ン グ ス テ ン 箔 の 4隅 に 銅 溶 浸 用 の ス ペ ー サ ー と し て 同 じ 厚 さ で
2mm角 の タ ン グ ス テ ン 箔 を 点 溶 接 し 、 こ れ ら を 1
0枚積層させて、
タングステン線で縛った。
この積層体をアルミナ製のるつぼの底に立て、その上に純度
の銅箔(日本電球工業(株)製)約
9
9
.
9
9
w
t
%
1
7
0
gを 詰 め た 。 こ の る つ ぼ を 、
4
1
.0x1
0
-Paの真空下で、高周波誘導加熱によって銅の融点 (1356K)直
上で
2時 間 保 持 し 、 積 層 体 中 に 銅 を 溶 浸 さ せ た 。 溶 浸 後 は 、 20rnm/h
の速度でるつぼをワークコイル中で降下させ、一方向凝固させた。
これは、凝固の際に銅層内にマイクロポアが発生するのを防ぐため
である。
2
.
2
.
2
熱疲労試験
溶浸法で作製した積層材から
4x4x3mmの 寸 法 に 切 り だ し た 試 験
片に、赤外線瞬間加熱ゴールドイメージ炉(真空理工(株)製 RHLE
4
1
0
P
)を 用 い 、 こ れ を 点 滅 さ せ る こ と に よ り 図 2
.
1に 示 す 3種 類 の
熱サイクルを与えた。熱サイクルの最高温度は 1
073Kとし、サイ
クル 1、 2で は こ の 温 度 で
6
0
0秒 保 持 し 、 サ イ ク ル 3で は 保 持 時
1
0
A
C
B
D
E
F
表 2
.
1 3種 の 熱 サ イ ク ル の パ タ ー ン
1
0
7
3
K
-一
C
y
c
l
e1
C
y
c
l
e2
600s
S盟主
C
y
c
l
e3
O
s
一一疋
s
一
一
一
万
Kパ
q
u
7I
マI
JV
473K十一-1
2
3
0
s
図 2
.
1与 え た 3つ の 熱 サ イ ク ル の パ タ ー ン
690s
聞を O秒 と し た 。 ま た 、 熱 サ イ ク ル の 最 低 温 度 は サ イ ク ル 1、 3で
は 473Kと し て 最 高 温 度 と 600Kの 温 度 差 を 与 え 、 サ イ ク ル 2では
7
7
3
1
<と し 温 度 差 を 3
0
0
1
(に し た 。 こ れ ら の 熱 サ イ ク ル を 与 え る こ
と に よ り 、 熱 疲 労 挙 動 に つ い て サ イ ク ル 1、 3で 高 温 保 持 時 間 の 影
響 、 サ イ ク ル 1、 2よ り 温 度 差 の 影 響 を 調 べ る こ と が で き る 。 い ず
れのサイクルにおいても冷却速度は温度が下がると小さくなり、冷
却中で一様ではなかった。表 2
.
1に 示 し た 冷 却 速 度 は 冷 却 開 始 点 で
のイ直である。
2
.
3 実験結果と検討
2
.
3
.
1
サイクル数と銅層の伸び
図 2
.
2は 、 図 2
.
1に 示 し た サ イ ク ル 3を 442回 与 え た 後 の 試 験 片
5
1
0型)写真である。
端部の走査型電子顕微鏡(日立製作所(株)製 8
熱膨張係数の相違により、軟らかい構成相の銅層が塑性変形し、界
面に平行に伸びが生じた様子がわかる。また、端部の一部よりク
ラック(界面剥離)が生じている。
.
3
(
a
)に 熱 サ イ ク ル を 与 え た 回 数 と 積 層 方 向 に 平 行 な 方 向 へ
図 2
の銅層の伸びとの関係を示す。伸びの量はサイクル数とともに単調
に 増 加 し て い る が 、 そ の 増 え 方 は サ イ ク ル 1を 与 え た 場 合 が 最 も 大
き く 、 つ い で サ イ ク ル 3、 サ イ ク ル 2の 順 に 小 さ く な っ て い る 。 表
2
.
1と 対 比 す る と 、 温 度 差 が 大 き い ほ ど 、 高 温 で の 保 持 時 聞 が 長 い
ほど伸びが大きくなることがわかる。
1
2
図 2
.
2熱 サ イ ク ル ( サ イ ク ル 3
:
4
4
2回 ) を 与 え た 後 に 複 合 材 料 の 端
部で観察された銅層の伸びと界面剥離
1
3
(
a
)
a ThermalCycle2
口 ThermalCycle3
4
c
f
!
.
0 ThermalCycle1
2
、
、
、
。
、
'-
E
〉U
。
。
。』 I
コ
←
-
c
。
.
-
(
b
)
4
c
・
u
d
c
。
0)
Cycle1
w
。
500
Numbero
fThermalCycles
図 2
.
3熱 サ イ ク ル の 回 数 と 銅 層 の 伸 び の 関 係
(
a
)実 験 値 (
b
)界 面
すべりのみで残留応力が緩和されると仮定したときの理論値
1
4
2
.
3
.
2
熱残留応力の評価
熱膨張率の異なる材料を積層させた複合材料において、その界面
での接合が強固であるときには、加熱および冷却の際に界面応力が
生ずる。熱膨張率の大きい構成相(本複合材料では軟相の銅)は加
熱の際に熱膨張率の小さい構成相(本複合材料では硬相のタングス
テン)から圧縮応力を受け、冷却の際には引張応力を受ける。この
応力は次のように見積もられる。
今、銅箔とタングステン箔を積層接合し、これに内部応力零の温
度(基準温度)からの温度差
D
:
.Tを 与 え た と き を 考 え る 。 銅 と タ ン
グ ス テ ン の 熱 膨 張 係 数 を そ れ ぞ れ αCu、 α w、 温 度 差 ム Tに よ る 銅 の
拘 束 の な い と き の 伸 び 率 (e
i
g
e
nひずみ)を εCu、 複 合 材 料 の ひ ず み
を εと す る と 、 界 面 す べ り や 塑 性 変 形 が な け れ ば 、 ε-ε Cuが 弾 性 ひ
ず み と な る の で 、 銅 に 働 く 応 力 σCuは
σC
u=
=E
c
u
(ε-ε C
u
)
となる。ここで、
(
2
.
1)
E
c
uは 銅 の ヤ ン グ 率 で あ る 。 同 様 に 温 度 差 ム Tに
よ る タ ン グ ス テ ン の 無 拘 束 下 で の 伸 び 率 を εw、 タ ン グ ス テ ン の ヤ
ング率を
Ewと す る と 、 タ ン グ ス テ ン に 働 く 応 力 σwは
σw=
=E
w(ε-ε w
)
である。これらの応力は界面を通して構成相が互いに他に及ぼすも
のである。本複合材料ではこれらの相の体積分率が等しいので、つ
りあいの条件より
σCu+σw =
=0
1
5
となる。したがって、複合材料の伸び率は
ε-
Ec〆C
u+Ewεw
Ecu+Ew
で与えられる。また、 εC
u==αC包ム T、 εw==αwム T な の で
ε-
EC
uαC
u+Ewα wムT
Ecu+Ew
凶
H
H
である。上式と式 (
2
.
1
)か ら 熱 膨 張 係 数 差 に よ る 応 力 σ(==σC
u=
=
w
)は
一σ
ECuEw
σ = - ( α w一 αC
u
)ムT
u+Ew
(
2
.
2
)
で与えられる。これより、残留内部応力は熱膨張率の差と材料に与
える基準温度との温度差に比例することがわかる。
本研究では銅とタングステンの複合化を銅の融点直上で行って
356Kとしてよいであろう。また、
いるので、基準温度は銅の融点 1
αC
u
(
=
=1
.41x10-5K-1) ど αw (
=
=
0
.
4
4
4X 1
0
-5K-1) 、 ム T 三 O な
ので、作製した複合材料には、銅相に引張応力、タングステン相
に圧縮応力が作用しているであろう。ヤング率として室温の値、
2
ECu==1
.2
3x1
0 GPa、Ew=
=
4
.
0
7
x1
02GPa、ム Tとして銅の融点 1356K
と室温 298Kとの差 1
058Kを 用 い る と 、 式 (
2
.
2
)か ら 室 温 で の 本 複
合 材 料 の 残 留 内 部 応 力 は 約 970MPaと な る 。 ま た 、 サ イ ク ル 1と
600K)を t
J
.Tと し た と き の 内 部 応 力 は 、 約
サ イ ク ル 3の 温 度 差 (
530MPaとなる。
2
.
3
.
3
残留内部応力の緩和過程
前節に述べたように、本複合材料の作製温度から室温までの温度
差による界面での残留内部応力は、銅の降伏応力 4
8MPa(14),こ比べ
1
6
て非常に大きし, 0 そ の た め 、 室 温 に お い て こ の よ う な 内 部 応 力 が 残
留しているとは考えにくく、冷却の過程で塑性変形により緩和され、
内部応力はほとんど零に近くなっているものと思われる。このこと
は、熱サイクルの最高温度に保持しただけでは銅層の伸びやボイド
.
3
(
b
)に お い て 熱 サ イ ク ル 数 の
の発生が見られなかったことや、図 2
増加に伴う銅層の伸びがほぼ一様であること、すなわち、各サイク
ル毎に内部応力状態がほぼ同じになったと考えられることからもわ
かる。それ故、本複合材料の銅層の伸びは、各サイクルごとに温度
差による残留内部応力が塑性緩和され、その塑性変形がサイクル数
とともに累積することによって生じたものと考えられる。
.
4は 、 本 複 合 材 料 の 熱 サ イ ク ル 中 の 残 留 内 部 応 力 と そ の 緩 和
図 2
過程を説明した模式図である。先に述べたように、試料作製温度か
ら室温まで冷却したときに発生した内部応力は塑性緩和したと考え
られる(この状態で試験片を作製)。熱サイクルの最低温度と最高温
度をそれぞれ
T1,T2と し た と き 、 温 度 T1の 状 態 1から T2(三T1)
に加熱すると、タングステン層には引張応力、銅層には圧縮応力の
か か っ た 状 態 2に な る 。 図 2
.
4の 銅 と タ ン グ ス テ ン の 層 中 に 示 し た
矢印の方向は、それぞれの層に作用している残留内部応力の方向を
示している。
これらの応力を緩和するには、各層において応力を緩和する方向
に変位が生じればよい。ここで、高温下であるため銅層とタングス
テン層の界面ですべりが起こると考えれば、界面における両層のひ
ず み εの 連 続 性 は 失 わ れ る の で 、 銅 層 に 作 用 し て い る 圧 縮 応 力 と タ
ングステン層に作用している引張応力は緩和される。界面すべりに
1
7
、
ーー
・
ー
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1
H
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・1・
川一!!同一同l川一!l
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図 2
.
4熱 サ イ ク ル に よ る 残 留 内 部 応 力 の 発 生 と 緩 和 の 説 明 図
1
8
よ り そ れ ぞ れ の 層 が 拘 束 さ れ る こ と な く 熱 膨 張 し た 結 果 、 状 態 2に
比べて銅層が伸びタングステン層が縮んだ様子を表したのが状態 3
である。
このようにして
T1から T2へ加熱し、 T2に 保 持 す る こ と に よ り 、
残留応力が零の状態が得られたとする。この状態から冷却して、初
期 温 度 T1に 達 す る と 、 タ ン グ ス テ ン 層 に は 圧 縮 応 力 、 銅 層 に は 引
張応力がかかった状態
4になる。 T1ま で の 冷 却 は 速 や か で 、 か っ
T1は 低 温 で あ る か ら 、 界 面 す べ り は ほ と ん ど 起 こ ら ず 、 こ れ ら の 応
力は銅層の塑性変形によって緩和されると考えられる。その様子を
示 し た の が 状 態 5で あ る 。 タ ン グ ス テ ン 層 に は 温 度
T1に お け る 界
面 の 拘 束 が な い 状 態 へ と 弾 性 的 な 伸 び が 生 じ 、 層 の 長 さ は 状 態 1と
同 じ に な る 。 こ の よ う に 、 1サ イ ク ル に お け る 銅 層 の 伸 び は 、 高 温
保持では圧縮応力を緩和するための界面すべり、低温では引張応力
を緩和するための塑性変形によるものと考えられる。
1サ イ ク ル ご と に こ の 機 構 が 繰 り 返 さ れ る こ と に よ っ て 、 連 続 し
た銅層の伸びが観察されたのであろう。このことは、熱サイクルを
与えた後の試験片には銅層に塑性変形したことを示す多くのすべり
線が見られ、界面すべりによると思われるけがき線のずれも観察さ
れ た こ と か ら も 裏 付 け ら れ る ( 第 3章参照)。
高 温 保 持 時 間 600秒 の サ イ ク ル 1と 高 温 保 持 時 間 O秒 の サ イ ク ル
3と は 温 度 変 化 幅 が 等 し い の で 、 こ の 2つ の 結 果 を 比 較 す る こ と に
よって、高温保持中の界面すべりによる残留内部応力の緩和の程度
を知ることができる。
図2
.
3
(a
)に 示 し た よ う に 、 サ イ ク ル 1で の 銅 層 の 伸 び は サ イ ク ル
1
9
3よ り 大 き く 、 こ れ は 高 温 保 持 時 間 が 長 い ほ ど 界 面 す べ り に よ る 残
留応力の緩和がより進んだことを意味している。しかし、サイクル
3で も 銅 層 の 伸 び が 観 察 さ れ た こ と か ら 、 界 面 す べ り は 最 高 保 持 温
度でのみ起こるのではなく、保持温度近傍ですでに起こっているも
のと思われる。
サ イ ク ル 1と サ イ ク ル 2で は 、 温 度 変 化 幅 の 大 き い サ イ ク ル 1の
方 が よ り 残 留 内 部 応 力 が 大 き い た め に 、 銅 層 の 伸 び も サ イ ク ル 1の
方が大きかったのであろう。
銅とタングステンの熱膨張率の差で生じた界面拘束が高温保持中
(銅層に圧縮応力)にはすべて界面すべりによって緩和され、降温中
(銅層に引張応力)にはすべて銅層の塑性変形によって緩和されると
い う 極 端 な 仮 定 を す る と 、 1サ イ ク ル 当 た り の 銅 層 の 伸 び は 1サイ
クルの昇温時の界面すべり量に等しいことになるが、このすべり量
は半サイクルの温度差で生ずる銅とタングステンの熱膨張の差にな
る 。 こ れ に 熱 サ イ ク ル の 回 数 を 乗 じ 、 銅 層 の 伸 び を サ イ ク ル 1とサ
イクル
2に つ い て 計 算 し た も の を 図 2
.
3
(
b
)に 示 す 。 ど ち ら の サ イ ク
ル に お い て も 、 実 験 値 に 比 べ て 計 算 値 は 絶 対 値 で ほ ぼ 2けた大きく
.
4も 同 様 ) は 成 立 た な い こ と が
なっており、上述の極端な仮定(図 2
わ か る 。 し か し 、 熱 サ イ ク ル 数 の 増 加 に 伴 う サ イ ク ル 1と サ イ ク ル
2に お け る 銅 層 の 相 対 的 な 伸 び 方 に つ い て は 、 実 験 値 と 計 算 値 は 同
じ 傾 向 に あ り 、 サ イ ク ル 数 当 た り の 伸 び 速 度 は サ イ ク ル 1がサイク
ル 2の 約 2倍 に な っ て い る 。
高温保持と降温で銅層の変形が非対称となるのは、塑性変形に比
べて界面すべりは高温で長時間を必要とするためである。上述の
20
極 端 な 仮 定 で は 銅 層 の 伸 び が 2け た も 大 き く 見 積 も ら れ た こ と は 、
1073K,
6
0
0
8の 高 温 保 持 で も 内 部 応 力 が 完 全 に 緩 和 す る の に 十 分 な
界面すべりが起こらなかったことと、昇温時にも塑性緩和(圧縮変
形)が大きかったこと、すなわち、界面すべりよりも塑性変形の効
果の方がはるかに大きいことを示している。以上のように、塑性変
形を起こす残留応力は、銅層に加熱の際に圧縮方向に、冷却の際に
引張方向にかかると考えられる。このことは、積層複合材料に大き
な温度変動を繰り返し与えたときには、繰返し圧縮、引張の塑性変
形をすることにより、軟相内部に疲労損傷(亀裂等)が与えられる
可能性があることを示唆している。
2
.
3
.
4
ボイドの発生機構
熱 サ イ ク ル を 与 え た 試 料 に は 、 わ ず か 5サ イ ク ル 与 え た だ け で も
.
5に サ イ ク ル 2を 100回 与 え た も の
ボイドの発生が見られた。図 2
の走査電子顕微鏡像を示す。このボイドの発生が、真空における赤
外線加熱による銅の昇華によるものではないことを確認するため、
熱サイクルと同じ時問、同じ真空条件で高温保持を行ったが、ボイ
ドの発生は認められなかった。したがって、ボイドの発生が熱サイ
クルを与えたことによって生じたことは明らかである。
ボイドの発生機構は以下のように考えられる。銅とタングステン
の熱膨張率の違いから発生する内部応力を緩和するために、銅相中
で塑性変形が起こる。このため、転位の上昇運動、交差すべり、対
消滅などによって、空孔が形成される。また銅相中に多数のすべり
線が観察されたことから、転位がすべり面上を運動し、界面近傍に
2
1
W
t
'
h
.,,,
fF'
-EaESE-e
ハ
リ
図 2
.
5熱 サ イ ク ル ( サ イ ク ル 2
:
1
0
0回 ) を 与 え た 後 の 複 合 材 の 界 面
と観察されたボイド
22
堆積したと考えられる。このとき、堆積転位による応力集中が界面
上にボイドを発生させた可能性が大きい。
また、銅相の界面に平行な伸びは界面すべりを伴っており、これ
が界面転位の運動によるものとすると、銅相中を運動し界面に到達
した転位が界面転位になり、界面に垂直なノてーガースベクトルの成
分 が 上 昇 運 動 す る こ と に よ り 空 孔 を 形 成 す る 可 能 性 も あ る (15)(16)。
このようにして形成された空孔が前述の交差すべり等により生成し
た空孔とともにボイドの成長を促したものと考えられる。
2
.
4 結論
銅ータングステン人工積層複合材料を、熱履歴(高温保持温度、保
持時間)の異なる 3種 類 の 熱 疲 労 試 験 に 供 し た 後 、 複 合 材 料 の 形 状
の変化を観察し、各々の層における熱残留応力の発生および緩和と
関連づけて検討を行い、以下の結論を得た。
1.熱疲労試験後に複合材料に生じた形状変化として、軟相である
銅層の変形、銅層の界面方向への伸びの進行および界面の銅層側で
のボイドの発生が観測された。
2
.熱サイクルの温度変化の幅が大きく、高温保持時間の長いものほ
ど、熱サイクル数の増加にともなって銅相の伸びが著しく進行し、
界面でのボイド生成が促進された。これらの複合材の形状変化は、
銅とタングステンの熱膨張率の違いから生ずる残留内部応力が界面
すべりと銅層の塑性変形によって緩和されるというモデルで、定性
的に説明できる。
23
東
3
早
人工積層複合材の高温変形
3
.
1 緒言
前章 において、温度変動によって積層複合材料中に生じる熱残留
応力が緩和される際に、界面すべりと軟相の塑性変形が生じること
がわかった。そこで本章では、圧縮試験を用い、高温で複合材料の
界面に平行にせん断応力をかけたとき、複合材料がどのような変形
挙動を示すかについて調べ、変形条件との関連を検討した。その結
果、界面すべりは界面構造の制御によって抑制できる可能性のある
ことと、界面すべりが抑制されたときには高温においても複合化に
よ る 強 化 が 持 続 で き る 可 能 性 の あ る こ と を 示 す (13)。
3
.
2 実験方法
3
.
2
.
1
試験片の作製
ここでは、前章で用いた溶浸法より簡便な溶着法によっても、比
較的層厚を均一にでき、界面を強固に接合することのできることが
2
4
知られたので、以下に示すように溶着法により積層複合材試料の作
製を行った。
9.99wt%の 銅 箔 (
0
.
1x20x15mm)と 純 度 99.9wt%の タ ン グ
純度 9
.
1x2
0x1
5mm)の 表 面 を 酸 洗 し 、 銅 箔 と タ ン グ ス テ ン 箔
ス テ ン 箔 (0
を交互に積層させた。タングステンの酸洗は前章と同様としたが、
銅箔の酸洗には硝酸 1
0%i
溶液を用いた。用いたタングステン箔は、
bcc金 属 の 典 型 的 な 圧 延 集 合 組 織 を 持 ち 、 圧 延 面 が {100}、 圧 延
1
0
)である (17)。 こ の 積 層 体 を タ ン グ ス テ ン 線 で 縛 っ た 後 、
方 向 が (1
4
1
.0x10-Paの 真 空 下 で 赤 外 線 瞬 間 加 熱 ゴ ー ル ド イ メ ー ジ 炉 ( 真 空
-410P)を 用 い て 銅 の 融 点 (1
3
5
6
I
<
)直 上 ま で 加 熱
理工(株)製 RHLE
して約 3分 間 保 持 し 、 溶 着 一 体 化 さ せ た 。 こ の と き 積 層 体 に 与 え た
温度履歴を図 3
.
1に 示 す 。 圧 縮 試 験 に 用 い た 試 料 は 、 す べ て こ の 方
法によって作製したものである。得られた複合材料の光学顕微鏡写
.
2に 示 す 。 得 ら れ た 複 合 材 料 の 銅 相 の 厚 さ は 約 O.lmmで
真を図 3
あり、溶着前の銅箔の厚さとほぼ同じであった。
.
3の 説 明 図 に 示 す
試験片は、得られた積層複合材料より、図 3
ように、異相界面が高さ方向(応力負荷方向)に対して 4
5の 角 度
0
に な る よ う に 低 速 切 断 機 ( ア イ ソ メ ッ ト T M、 ビ ュ ー ラ 一 社 製 ) を
用 い て 切 り 出 し 、 エ メ リ ー 研 磨 の 後 、 試 験 片 の 表 面 を 粒 度 約 1μm
のダイヤモンドペーストを用いたノマフ研磨により鏡面仕上げして、
2x2x3mmの 寸 法 に し た 。 異 相 界 面 を 4
50に 傾 け た 理 由 は 、 界 面 に
せん断応力をかけ、複合材の変形に及ぼす界面すべりの効果を調べ
るためである。
予 備 実 験 で 、 本 Cu-w複 合 材 料 の 高 温 変 形 挙 動 は 、 タ ン グ ス テ ン
2
5
. .
園 田 ー一 一
モ 3min~
20QKJmi
n
1223K
﹂
包
20
﹂
。
ω
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と
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h
、
300K/min
ト
戸
hd
。
1
0
了;meI
min
図 3
.
1積 層 体 に 与 え た 温 度 履 歴
2
6
1
5
箔の圧延方向とせん断変形方向とのなす角によって著しく異なる
0
00 に な る よ う な 2種 類 の 試 験
ことが知られたので、この角が 0
と9
片を用意した。図 3
.
3の 矢 印 は 、 タ ン グ ス テ ン 箔 の 圧 延 方 向 を 示 し
0, (
b
)は 00の も の で あ る 。 こ れ ら の
たものでい)は上述の角が 9
0
試験片は、溶着法を用いて一体化させた同じ積層材より切り出し方
を変えて作製したので、それぞれの試験片における界面の密着性の
ばらつきは少ないと思われる。この後、図 3
.
3に 示 し た (a
)と (
b
)
の 試 料 を そ れ ぞ れ 試 料 (a
)お よ び 試 料 (
b
)と呼ぶことにする。
また、変形中の界面すべりの挙動を直接観察するために、界面に
垂直にダイヤモンド針によりけがき線をつけた。
3
.
2
.
2
圧縮試験
強度および変形特性は圧縮試験によって調べた。圧縮試験には
サーボノマルサ- EHF2型 疲 労 試 験 機 ( ( 株 ) 島 津 製 作 所 製 ) を 改 良
し た も の (18)を 用 い た 。 定 速 圧 縮 試 験 は 、 7
73 973Kの温度範囲、
",,
SX 1
0
-6
",,
2X 10-48-1の 初 期 ひ ず み 速 度 範 囲 で 、 定 荷 重 圧 縮 ク リ ー
プ試験は 7
7
3
"
"1073Kの温度範囲、 11.3""S4.4MPaの 応 力 範 囲 で 行 っ
4
0-Pa以 下 の 真 空 下 で 行 っ た 。
た 。 試 験 は い ず れ も 1 .3x1
.
4の 説 明 図 に 示 し た タ ン グ ス テ ン 製 の サ ス
試験片の加熱は、図 3
セプターを高周波誘導加熱して、間接的に行った。通常、圧縮試験
では、変形を開始するとともに試験片の温度が急激に低下するが、
試験片を圧縮する治具に熱伝導率の小さなクロセラム〈黒崎窯業
(株)製、反応焼結法によって作成した窒化珪素〉を用いることによ
り試験中の温度低下を 1
0
I
(以 下 に 抑 え る こ と が で き た 。 ま た 、 試 験
2
7
F
-
100μm
図 3
.
2溶 着 法 に よ っ て 作 製 し た 積 層 複 合 材 料 の 断 面
28
ー
~
(
a
)
(
b
)
EEの
2mm
図 3
.
3圧 縮 試 験 片 の 説 明 図 。 矢 印 は タ ン グ ス テ ン 箔 の 圧 延 方 向 を
表す。
2
9
F
-
s
p
e
c
l
m宇n
v
a
c
u
u
π
1
•
。品
。
20
IR
-l
c
o
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r
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i
o
n
一
irosco;
。
↑
.
♂
図 3
.4圧 縮 試 験 中 の そ の 場 観 察 の 方 法
30
‘
ー
ー
一
一
一
一
一
ーF
中 の 温 度 は Pt-13%Rd熱 電 対 を 試 験 片 に 点 溶 接 し て 直 接 測 定 し た 。
さらに、図 3
.
4の 加 熱 用 の サ ス セ プ タ ー に 開 け た 穴 ( 直 径 約 3mm)
から、真空チャンパーのガラス窓を通して、試験片上の界面に垂直
につけたけがき線の動きを、実体顕微鏡を用いてその場観察するこ
とにより、変形中の異相界面すべりの様子を観察した。
試験片の形状から、圧縮の際には圧縮治具と試験片の上面と下面
が接するため、銅、タングステン各層の端面の一部が拘束される。
そ の た め 、 変 形 に 寄 与 す る 層 は 銅 、 タ ン グ ス テ ン そ れ ぞ れ 3層 で
あった。
3
.
3 実験結果と検討
3.3.1
応力ーひずみ線図
図 3
.
5に 773Krv973Kに お け る 圧 縮 試 験 で 得 ら れ た 応 力 ー ひ ず み
曲線を示す。圧縮の途中で試験機のクロスヘッド速度を変えたひず
みを矢印で示し、それと対応するひずみ速度を図中に示した。
タングステン箔の圧延方向が圧縮試験のせん断方向に垂直な試
料 (a
)は、 773Kと 873Kで は 、 変 形 の 進 行 と と も に 変 形 応 力 が い っ
たん増加した後に急激に低下し、その後変形応力はほぼ一定の値と
)の 873I(に お け る 曲 線 B に よ っ て 示
な っ て い る 。 た だ し 、 試 料 (a
されるように初期ひずみ速度が最も低い 5
.
1X 10-6s
-1においては、
急 激 な 変 形 応 力 の 低 下 は 見 ら れ な し¥
'0 973Kで は 変 形 応 力 の レ ベ ル
が 低 く 、 急 激 な 低 下 は 見 ら れ て い な い が 、 加 工 硬 化 の 後 約 10MPa
の鋸歯状の応力変動が見られる。
3
1
ー
ι
F
i /σ
1も-1
60
/E¥
773K
LU
70
speClmen
、lノ
speClmen (
a
)
i/1
σ
¥・1
6 .1 ~4 .75
1
.
7
62
.33-3
.
0
9
・・6.38
50
40
30
20
1
0
0
70
ABCDEF
I
873K
6
0
何 仏 ︾ JH
50
40
、
、
、
30
b
20
873K
正 /1
0
も
・-1
E /
1
σ
¥1
・
A 2.09・.2.75・~3 . 66-7.55
B2
.
1
5
3.
0
5
0
.
5
1
ら3
.ω-7.
41
2
.
0
4
2
.
7
47-0.
9
3
0
.
6トD.
1
.7
7
0
.
9
4
1
0
0
70
I
973K
正 I1
0
・
も
・1
1
.7
1
.
.
2
.
2
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3
.
α
)
6
.
1
8
6
0
973K
正 /1
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"
¥
・1
1
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8
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.
.
2
.
3
8
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・3.
16
ー
・6.51
50
40
30
20
。
5
1
0
1
5
20
25
3
00
ε
5
1
0
1
5
20
25
%
.
5 Cu-W積 層 材 料 の 773Krv973Kに お け る 圧 縮 試 験 で 得 ら
図 3
れた応力ーひずみ曲線
32
-
ー
一方 、 タ ン グ ス テ ン 箔 の 圧 延 方 向 と 圧 縮 試 験 の せ ん 断 方 向 が 平 行
な試料 (
b
)で は 、 試 料 (a
)に 見 ら れ た 応 力 の 急 激 な 低 下 は 、 行 っ た
実験のどの温度、どのひずみ速度でも観察されなかった。 9
7
3
I
(で
)と 同 じ く 、 変 形 応 力 は ひ ず み 約
は 試 料 (a
5%まで加工硬化した後、
鋸歯状に変動している。この変動は動的再結晶によるものと思わ
7
3
I
(と 873Kでは、
れるが、ひずみ速度の影響が見られなかった。 7
9
7
3
I
(で の よ う な 変 形 応 力 の 大 き な 変 動 は 見 ら れ な か っ た 。
3
.
3
.
2
異相界面すべりのその場観察
圧 縮 試 験 中 に 変 形 応 力 が 急 激 に 低 下 し た 試 料 (a
)の 873K、 ひ ず
.
0X 10-5S-1に お け る け が き 線 の そ の 場 観 察 の 結 果 を 図 3
.
6
み速度 2
に示す。図の各写真中に矢印で示したように、ひずみの増加ととも
に銅層とタングステン層のけがき線に異相界面上でずれが見られ、
界面すべりを生じていることがわかる。
.
7は 、 試 料 (a
)の 圧 縮 試 験 で 観 察 さ れ た け が き 線 の ず れ 量 S
図 3
を 、 時 間 tに 対 し て プ ロ ッ ト し た も の で 、 873Kの 例 で あ る 。 図 中
の破線は、圧縮変形がすべて界面すべりによるものと仮定して、圧
縮変形量から求めた理想的なずれ量と変形時間との関係を示したも
のである。また、同図には変形応力の変化も併せて示した。
変形応力は、界面すべりが観察されない変形の初期には単調に増
加しているが、界面すべりが起こり始めると急激に低下している。
他の温度、ひずみ速度の条件でも界面すべりが明確に観察され始め
ると同時に応力一ひずみ曲線上で急激な応力の低下が観察された。
)の 圧 縮 試 験 で 観 察 さ れ た 変 形 応 力 の 低 下 は 異 相
こ れ よ り 、 試 料 (a
3
3
図 3
.
6試 料 (
a
)の 異 相 界 面 す べ り の そ の 場 観 察 。 873K、 ひ ず み
5
速度 2
.
0x 10-S-l
34
.
.
.
.
.
.
.
.
-
界面すべりが原因であることがわかる。
界面すべりの量の実測値と、変形がすべて界面すべりによるもの
と仮定して変形量から求めた計算値は、それらの時間依存性が互い
にほぼ平行であることから、界面すべりがいったん起こり始めれば、
本積層複合材料の変形はほとんどこのすべりによって生ずることが
b
)で は こ の よ う な 界 面 す べ
わかる。応力低下を示さなかった試料 (
りは観察されなかった。
)の 変 形 挙 動 は 温 度 と ひ ず み 速 度 に よ っ て 異 な り 、 大 き く
試 料 (a
3つ の 領 域 に 分 け ら れ る 。 す な わ ち 、 主 に 軟 相 の 銅 層 の み が 変 形 す
る領域、主に界面すべりによって変形する領域、界面が剥離してし
.
8は、融点、で規格化した温度の逆数とひずみ
まう領域である。図 3
速度の図上に、それぞれの変形挙動を示した領域を示したものであ
る。界面すべりは、比較的低ひずみ速度、低温のときに生じている。
これは、界面すべりが起こるときは、変形によって銅層中の転位密
度が高い状態にあることを示しており、界面すべりが界面への転位
の落ち込み、あるいは界面に落ち込んだ転位の運動によって進行し
ていることを示唆している
3
.
3
.
3
(15
。
)
界面拘束による複合材料の強化
次に、図 3
.
5の 応 力 ー ひ ず み 線 図 に お い て 、 変 形 応 力 が ほ ぼ 一 定
となったときの変形応力を定常変形応力と見なし、これをひずみ速
度に対してプロットした結果を図 3
.
9に 示 す 。 図 中 に は 定 荷 重 圧 縮
クリープ試験の結果も、最小ひずみ速度をクリープ応力に対してプ
ロットして示した。界面すべりによって変形が進行する場合には著
3
5
600r
k 2
.
0x
10・5S1
ir
ー
ノ
田
50
i 1.8x10・5S1
1
:
:
:
40
σ
ε
ミ
え
、
、
、
c
/
)
30
除
,
20
1
。
10
C
t
S
9
:
三
句
、
、
600~ ~
川f
t
/
)
s
正=9.
4x10・651
正=6.
1x10・6S-1
30
20
j
,
/
,
。
5
'
10
‘
15
'
20
Jt~~
25 0
5
'
10
'
15
'
20
'
25
k
s
図 3
.
7 圧 縮 に 伴 う 異 相 界 面 す べ り 量 Sと 変 形 応 力 σの時間変化。
873K。 破 線 は 変 形 が す べ て 界 面 す べ り に よ る と 仮 定 し た と き の 界
面すべり霊
3
6
4
1
0
-
D
e
l
a
m
i
n
a
t
i
o
n
AAA
x
・
.・
.
ぞ105
・
.
C
J
J
o
I
n
t
e
r
f
a
c
e
S
l
i
d
i
n
g
Deformationo
fCuphase
、
、
、
、
10・6
1
.
2
1
.
3
1
.
6
1
.
4
1
.
7
1
.
8
T
m/ア
図 3
.
8融 点 で 規 格 化 し た 温 度 の 逆 数 と ひ ず み 速 度 の 図 上 に 示 し た
変形挙動の異なる領域
37
しく強度が低下し(図中の・)、このときの複合材料の変形応力は、
界面すべりに必要な応力で決まるものと思われる。しかし、本実験
では、すべりが起こったときの応力に変動があり、そのため応力値
を正確に定めることができたのは図 3
.
9に示した 4点のみであった。
すべりが起こらないときの各測定点は直線で近似でき、直線の勾
.
4である。図中には、
配より求めたひずみ速度の応力指数は 6
B
a
r
r
e
t
t
ら(
1
9
)の得た 770Kに お け る 銅 単 相 材 料 の ク リ ー プ 試 験 に よ る 結 果 も
示したが、本複合材料の強度の方が大きいことがわかる。これは、
界面による強化が働いていることを示唆している。
図 3
.
1
0は、図 3
.
9を も と に し て 得 た 変 形 応 力 σが 39.8MPaのとき
のひずみ速度をアレニウスプロットしたものである。図中の直線の
72kJ.
m
o
l
-1で、あり、
勾 配 よ り 求 め た 変 形 の 活 性 化 エ ネ ル ギ - Qは 1
これは銅の自己拡散の活性化エネルギーの値 (
2
0
8
k
J'
m
o
l
-1(20)) に
近い。したがって、界面すべりが起こらないときの変形は単相金属
材料と同様の一般式 (
3
.
1
)によって表せる。
、
‘
,
,
,
〆
υ
tよ
句
今、
ここで、
(
計
二xp(会)
/111
i=A
Aは 温 度 と 応 力 に 依 存 し な い 定 数 、 nは 応 力 指 数 で 、 本 複 合
材では 6
.
4、純銅では 4
.
8
(
1
9
)、Rは気体定数、 Tは絶対温度、
Qは活性
72kJ.
m
o
l
-1、純銅で 208kJ.
m
o
l
-1(20)
化エネルギーで、本複合材では 1
である。
.
1
1は 、 銅 の 自 己 拡 散 係 数
図 3
ヤング率
Dで、規格化したひずみ速度と銅の
Eで 、 規 格 化 し た 定 常 変 形 応 力 の 関 係 を 両 対 数 プ ロ ッ ト で 示
したものである。銅のデータは図 3
.
9と同じく
3
8
B
a
r
r
e
t
t(
1
9
)らが得た
。
1073K
creept
e
s
tCu-W
・ ・ ∞ mpressiont
e
s
tCu-W
1
0
・
4
(
1
9
)
A
creept
e
s
tCu,
770K(Barretteta{ '
)
ω
:U10
・5
•
•
•
873K
n= 6.
4
(
C
u
:n=4
.
8
)
1
0
・6
。
1
0
σ/MPa
100
図 3
.
9ひ ず み 速 度 と 定 常 変 形 応 力 と の 関 係 。 ・ は 界 面 す べ り で 変
形した試料 (
a
)の 測 定 点
39
10・2
σ=39.8MPa
0=172kJ/mol
(Cu:0 = 208kJ/moり
,
10・3
c
n
、¥
.ω10
斗
10・5
。
13
ー
ア1
/
1
04
K
1
・
図 3
.
1
0ひ ず み 速 度 の ア レ ニ ウ ス プ ロ ッ ト
40
ものを示し、複合材料のデータは本実験で得たものである。複合材
料における両者の関係はほぼ直線関係にあり、式
(
3
.
1
)が成立する
ことを裏付けている。また、いずれのひずみ速度においても、複合
材料の強度は単相の銅に比べて大きいことがわかる。
図中の曲線は、各ひずみ速度における複合材料と銅単相材料の定
常変形応力の差をプロットしたもので、複合化による強化の効果を
示している。曲線の形状から、複合化による強化はひずみ速度が大
きくなるにつれて頭打ちの傾向を示すことがわかる。
以上のことから、界面拘束による強化の機構を次のように考える
ことができる。図
3
.
1
2は そ の 説 明 図 で 、 タ ン グ ス テ ン に 挟 ま れ た 銅
層 1層 に つ い て 示 し て い る 。 図 に 示 し た 銅 層 の 内 部 の 曲 線 は 、 銅 層
中の転位に働く界面からの抵抗の大きさを表す。前章に示したよう
に、銅の弾性定数に比べてタングステンの弾性定数が大きいため、
図に示すように界面近傍ほど鏡像力による抵抗は大きくなると考え
られる。
外部荷重が負荷され、銅層中の転位に応力がかかるとき、その大
きさが界面からの抵抗に比べて小さければ、転位は運動できない。
すなわち、界面近傍において界面からの抵抗の大きな領域が強化に
寄与していると考えられる。外部応力が大きくなると、界面からの
抵抗の大きさとの差が小さくなり、強化に寄与する領域は小さくな
る。このため、図
3
.
1
2に 示 し た よ う に 、 ひ ず み 速 度 が 大 き く な る
とき、すなわち変形応力が大きくなるとき、複合化による強化分が
減少したものと思われる。
以上のように、界面すべりが起こらないときには、本複合材料の
4
1
1011
OしCu-w-O'
c
二
u
Cu
¥
E
れj
1
09
ε
ι
,/ぷ
/l ぷ
コ
、
、
、
Q
、¥
.~
106 ト
105 ト
/
/
10-4
Cu-W
。
。
σ/E
10・3
図 3
.
1
1ヤ ン グ 率 で 規 格 化 し た 定 常 変 形 応 力 と 拡 散 係 数 で 規 格 化 し
温度補償したひずみ速度との関係
4
2
w
羽7
Cu
τ
a
8τa
。
』
∞dロHH
ω
~
図 3
.12界 面 拘 束 に よ る 強 化 機 構 の 説 明 図 。 アαは 負 荷 応 力 、 九 1>九
4
3
変形は界面で拘束された銅相の変形として理解される。圧縮試験時
の試験片表面のけがき線の様子からも、タングステン相は塑性変形
していないようである(図 3
.
6参照)。
3.3.4
界面近傍の構造
図 3
.
1
3に 、 界 面 近 傍 の 銅 相 の 透 過 電 子 顕 微 鏡 像 を 示 す 。 試 料 の 薄
I
T
1
0
0型(日本電子(株)製)
膜化は、イオンビーム薄膜作製装置 J
を用い、アルゴンイオン照射によって行った。観察に使用した電子
EM-2000EX(日本電子(株)製)である。図中右下の白い
顕微鏡は J
部分は薄膜化の際にできた試料の穴で、左上の写真の枠外にタング
ステン相がある。したがって、界面は左下から右上の方向に入って
いるわけである。
図中に
Cu-w界 面 に 垂 直 に 向 か つ て 伸 び る ( 左 上 か ら 右 下 ) 結 晶
粒界が見える。また、電子線回折図形の解析により、銅の観察面は
1
1
0
}で 、 粒 界 は 双 品 面 で
粒界を挟んだいずれの結晶粒においても {
c
c金 属 の 双 品 面 は {
1
1
1
}な の で 、 こ の 粒 界
あることが知られた。 f
と観察面に垂直な
以上の結果より、
Cu-w界 面 は {211}で あ る こ と が わ か る 。
Cu-w界 面 に は 、 銅 側 に {211}面 が 優 先 的 に 表
われていることがわかった。また、タングステン箔の圧延集合組織
1
0
0
}
(
1
1
0
)で あ る こ と か ら 、 こ れ で 異 相 界 面 の 両 側 の 原 子 面 の
は {
情報が得られたことになる。これをもとに異相界面の原子マッチン
.
1
4で あ る 。 こ の 図 よ り W の (
1
1
0
)方
グの様子を調べたものが図 3
向(圧延方向)と
Cuの (1
1
1
)方 向 を 一 致 さ せ る と 原 子 マ
y
チングに
明 ら か な 異 方 性 の あ る こ と が わ か る 。 こ の 異 方 性 が 試 験 片 (a
)と試
4
4
〆
500μm
図 3
.13異 相 界 面 近 傍 の 銅 相 の 透 過 電 子 顕 微 鏡 写 真
45
験片 (
b
)の 界 面 す べ り に 大 き な 差 を 生 じ さ せ た 可 能 性 が 強 い 。 し か
し、本研究では界面において
w箔と
Cu箔 が こ の よ う な 方 向 性 を
持っているという確証は得られなかった。原子マッチングの異方性
による強度の違いについては、単結品を用いて精綴に接合された界
面による実験が必要であろうが、今後の課題としたい。しかし、本
研究で界面構造設計の重要性が示唆されたものと思われる。
3.4 結論
銅ータングステン人工積層複合材料を、 773Kから 1
0
7
3
I
(の 温 度
範囲で、種々の初期ひずみ速度範囲と応力範囲での定速度圧縮試験
と定荷重圧縮クリープ試験を行い、その高温変形挙動について、界
面拘束による強化の機構の検討および異相界面の微細構造と界面す
べりとを関連付けた検討を行い、以下の結論を得た。
1.高温圧縮試験により、異相界面にかかるせん断応力とタングステ
ンの圧延方向とが垂直の場合と、平行の場合とで、複合材料の強度
に大きな差のあることが知られた。垂直な場合には、変形とともに
変形応力はいったん上昇するが、その後急激に低下するのに対し、
平行な場合にはそのような低下は生じない。
2
. 界面のその場観察により、強度の低下は異相界面すべりによる
ことがわかった。また、 1の 結 果 と 界 面 近 傍 の 構 造 の 観 察 か ら 、 異
相界面すべりは界面構造の制御により阻止できる可能性のあること
が示唆された。
3
. 界面すべりが抑制されているとき、本複合材の高温変形挙動は、
界面で拘束を受けた銅相の変形として理解でき、その場合の強度は
46
﹀
区
2H
︿
00000000(
00000000
00000000
00000000
00000000(
00000000
00000000(
00000000
00000000
00000000
00000000(
00000000
1rJ00000000(
nuO0000000
000000000(
1J00000000
7L00000000
x内 0 0 0 0 0 0 o o
--00000000(
00000000
00000000
00000000
00000000
00000000
00000000
00000000
00000000
0000000o
l00000000
a, 00000000
/l¥00000000(
︿
︿
︿
︿
ハ
ハ
︿
︿
、
B﹄J''
、
、
11
〆
I
。
可
Cu{211}
﹀口。
HHH
︿
•••••••••• •••••••••••••••••
••••••• •••• ••• ••••••••••••••
•••••• ••• •• ••••••••••••••••
•••••• •••••••••••••••••••••
•••• •• •••••••••••••••••••••
•••••••••••••••••••••••••••
(
c
)
付夕、内旬、ダげがハヂザザハハ内
、
ぎ
て
も
夕
、
コ
ー
、
、
君
、
夕
、
@
、
、
きc
‘
8
、
コ
ー
、
、
君
、
夕
、
コ
ー
0 000 0000 0 0000 0 0
.
<
e
.
. .
.
・
・コ ・
・
・・
・
〉
・
・
・
⑩
依・
‘
河
・・
叡‘
・・
・
・
・
叡・
〉
o
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 O' 0 0 0 0
コ・ê)・~ .G・ 6コ・ê)・~ .G 6 6
o 0 コ・06 ・~.<è
0 0 0 0 0 0 0000 0 0 0
0000 0000 0 000000
3
e
0
0 0 0 030 0p0 0 30 M0 0 030 0
Q _
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
・夕食~~・ e ・夕食声、・ e ・夕食芳、・ e ・夕食3・~・
o0 0000 0 0 0 0000000
-~~~~、)~~~~~~qザいれ~0'tJ~がいSザ、
図 3
.14(a)Wの {
10
.0}面、 (b)Cuの {211}面 、 (
c) Wの (
1
1
0
)
方向と Cuの (
1
1
1)方向 が 平 行 に な る よう に (
a)と (
b)を 重 ね た
もの
47
銅単相のときより大きくなることがわかった。
48
牙
ヨ
4
早
国溶硬化合金の高温変形機構の
判別
4
.
1 緒言
固溶硬化合金は、高温において、加工軟化、逆遷移クリープ、ひ
ずみ速度の応力指数が約
3
(純 金 属 で は 4 5
)な ど の 特 有 の 変 形 挙 動
,
"
,
,
を 示 す (21)ー (23)。 こ れ は 、 変 形 が 溶 質 原 子 の 雰 囲 気 を 引 き ず っ て 運
動 す る 転 位 の 粘 性 運 動 に 律 速 さ れ て い る た め と 説 明 さ れ て い る (23)。
これまで、固溶硬化合金の高温における変形応力の予測が、この溶
質雰囲気引きずり機構が働いている条件のもとではよい精度で行わ
れ て き た (11)(12)。
しかし、高速度の変形条件では転位の運動速度が大きくなり、高
温でも溶質原子の流れが転位に追いっけなくなるため、転位の溶質
雰 囲 気 離 脱 (24)が 始 ま る と 考 え ら れ る 。 こ の 条 件 で の 変 形 に 上 に 示
した変形応力の予測法を用いると、予測値の方が実験値より大きく
なる (12)。 変 形 中 の 転 位 速 度 変 化 の 予 測 か ら 、 実 際 こ の 予 測 値 と 実
49
験値の不一致がおこる条件は溶質雰囲気離脱が始まる転位速度と対
応 す る と 報 告 さ れ て い る (12)。 雰 囲 気 か ら 転 位 が 離 脱 す る と 、 転 位
の粘性運動に基づく有効応力はほとんど零となり、変形は転位の回
復律速となるであろう。
上に述べた変形機構の変化は、転位が粘性運動を行える限界の転
位速度を知ることでわかる。まず、次節では典型的な固溶硬化合金
である Fe-Mo合 金 を 、 高 温 に お け る 定 速 引 張 試 験 に よ っ て 定 常 状 態
(変形が進み、変形応力が変化しなくなる状態)に入るまで変形させ
て、ひずみ速度と定常変形応力との関係を調べることにより、変形
機構が変化すると考えられる臨界変形条件が存在することを示す。
変 形 機 構 の 変 化 を 推 定 す る 第 2の 手 段 と し て 、 転 位 と 溶 質 原 子 の
弾性的な相互作用エネルギーが両者の相対位置に依存することを考
慮 し て 、 溶 質 原 子 が 格 子 点 、 の 間 を ジ ャ ン プ す る 頻 度 を 計 算 (25)(26)し
て、溶質濃度分布の時間変化を求め、定常状態に達した濃度分布か
ら転位が溶質雰囲気から受ける抵抗を温度と転位速度との関数とし
て求めた。この方法によって、溶質雰囲気を持った転位の易動度が
求まり、その変化から、転位が溶質雰囲気から離脱する条件を推定
した。第 4
.
3節では、 F
e
N
I
o合 金 に つ い て 、 こ の 方 法 に よ っ て 求 め
た計算結果を示す。
変 形 機 構 の 変 化 を 捉 え ら れ る と 考 え ら れ る も う 1つ の 方 法 が 、 電
気 抵 抗 測 定 法 で あ る (27)。 こ の 方 法 は 、 材 料 の 平 均 的 内 部 構 造 を 巨
視的にとらえることができることから、これまでにも格子欠陥の定
量 的 な 評 価 に 用 い ら れ て き た (28)。第 4
.
4節 で は 、 変 形 挙 動 に 関 す る
知見の多い
AI-Mg合 金 に こ の 方 法 を 適 用 し て 、 そ の 有 効 性 を 検 討
50
した結果を示す。具体的には、まず、室温変形で転位を導入した合
金を、高温に保持して溶質雰囲気を形成させ、比抵抗が変化する可
能性を検討した。次に、転位が溶質雰囲気を離脱する臨界条件近傍
の変形条件で変形し、変形前後の比抵抗の変化と変形応力との関係
を調べることにより、離脱したと考えられる変形条件と離脱しない
と考えられる変形条件で、変形による比抵抗の変化に違いが生ずる
か否かを検討した。
4
.
2 固溶硬化合金の高温変形挙動による変形
機構の判別
4
.
2
.
1
実験方法
引 張 試 験 に は 、 新 日 本 製 鉄 ( 株 ) よ り 供 与 さ れ た 両 端 に M6の ネ ジ
e-3.5at%Mo合 金 丸
部 を 持 つ ゲ ー ジ 部 長 さ 20mm、 直 径 3.5mmの F
棒試験片を用いた。この試験片を 7
.0mPaの 真 空 下 で 1
1
2
3
K
1
4
.
4
k
s
再結晶処理した後、引張試験に供した。再結晶処理後の試験片はほ
ぼ等軸品で、平均結晶粒径は l
i
n
e
a
ri
n
t
e
r
c
e
p
t法 (29)で、測定した結果
約 0.6mmであった。
試験機には島津サーボノマノレサ- EHF2型((株)島津製作所製)を
.
5X 1
0
-6S-1rv l
.5x1
0
-4S-1の 初 期 ひ ず
改 良 し た も の (18)を用い、 2
み速度範囲での定速引張試験を、 1
0
5
0、 1
1
0
0お よ び 1150Kの 各 温
度、一気圧のアルゴンガス(純度
5
N
)雰 囲 気 中 で 行 っ た 。
5
1
4
.
2
.
2
実験結果
図 4
.
1に Fe-3.5at%Mo合 金 に つ い て 定 速 引 張 試 験 に お け る 定 常
変形応力(飽和応力)をヤング率
Eで 、 規 格 化 し た も の と ひ ず み 速 度
との関係を両対数プロットで示す。このプロットは、金属材料の高
温 変 形 で は 変 形 応 力 、 温 度 お よ び ひ ず み 速 度 の 聞 に 第 3章 に 示 し
た式 (
3
.
1
)の 関 係 が 一 般 に 成 立 す る こ と を も と に し て い る 。 1050K
の高ひずみ速度側で両者の関係は直線性を逸脱するが、その他のと
ころでは両者の聞によい直線関係があり、べき乗則が成り立ってい
る。直線の傾きで表される応力指数は各温度でほぼ等しく、約 3
.
5
であった。この値は同じ合金系において、転位の溶質雰囲気ひきず
3
0
)
_
(
3
2
)
り運動が変形を律速していると考えられる場合に得られる値 (
とほぼ等しい。
.
2に σ/E
また、図 4
=
=2
.
0X 1
0
-4に お け る ひ ず み 速 度 の ア レ ニ
ウスフロットを示す。直線の傾きから得られる変形の活性化エネル
1
ギーは 2
94kJ.mol-で、あった。この値は Fe-Mo合 金 中 の Moの 固
2
8
5
k
J'
m
o
l
-1(
有拡散の活性化エネルギー (
3
3
)
)と ほ ぼ 等 し い 値 で あ
100Kと 1150Kで は 図 の ひ ず み 速 度 全 域 に お い て 、
る。これより、 1
定 常 変 形 は Mo原 子 の 雰 囲 気 を 引 き ず る 転 位 の 運 動 に 律 速 さ れ て
いると考えられる。しかし、図 4
.
1に 示 し た よ う に 、 1
0
5
0
I
(で は
5
1
0
-S- 以 上 の ひ ず み 速 度 で べ き 乗 則 か ら ず れ る こ と (
p
o
w
e
r
約 4X 1
a
kdown)か ら 、 変 形 の 律 速 機 構 が 変 化 し て い る も の と 思 わ
l
a
wb
r
e.
れる。
5
2
o1150K
1
:
t
.1100K
n
=
3
.
5
ロ1050K
マ∞
ロ
ノ
q
、
、
、
J
U
噌EA
、
声ハ
ω
n
=
3
.
4
4
.
11050Krvl150Kに お け る 引 張 試 験 に よ っ て 求 め た ひ ず み 速
度と定常変形応力との関係。 Fe-3.5at%Mo合 金
図
5
3
内、}
1Eム
σ/E
ハU
4
1
0
-
4
1
0
-
Q=294kJ/mol
~o
2
8
5
k
J
/
m
o
l
σ厄 =2.0X1
0
-4
-t
∞
J
Ei
噌
ω
ハU
、
声
、
、
、
9
.
0
T-1
/
9
.
5
1
0
-4K-1
4
.
2 ヤ ン グ 率 で 規 格 化 し た 定 常 変 形 応 力 σ/
Eが 等 し い と き
4
(2.0xl0-) の ひ ず み 速 度 の ア レ ニ ウ ス プ ロ y ト
。
図
54
4.3 固溶硬化合金の高温における刃状転位の
易動度
4
.
3
.
1
計算法
溶媒原子と大きさの異なる溶質原子が母相に置換型で回溶すると
き、寸法効果による相互作用エネルギーは、刃状転位による静水圧
場と溶媒原子に溶質原子が置換したことによる体積変化との積で与
えられる (34)。 z
u
zの 直 交 座 標 系 に お い て 、 刃 状 転 位 の 転 位 線 方 向
軸 に 、 パ ー ガ ー ス ベ ク ト ル の 方 向 を z軸に、 U軸 を す べ り 面 に
を z
垂 直 に と る と き 、 相 互 作 用 エ ネ ル ギ - V(X,
y
)は 位 置 の 関 数 と し て
次式で表される。
4
(
1+ν)rtL _ n3 Y
V(Z?U)=3(1-u)GbR2 2 + U 2 ( 4 1 )
ここで νはポアッソン比、 G は剛性率、 bは 転 位 の パ ー ガ - ス ベ ク ト
ルの大きさ、
εは 寸 法 不 適 合 因 子 (C
o
t
t
r
e
l
lの 用 い た ε
bとは ε
=
=3
(
1-
v
)εb
/
(
l+ν
)の 関 係 に あ る (35))、 さ ら に
Rは 溶 媒 原 子 半 径 で あ る 。
吉永らは、転位近傍の溶質濃度が平均濃度から変化したとき相互作
用エネルギーが緩和されることを考慮して、相互作用エネルギーが
レ
4
(
1+νIr!J,,-D
3f Y
6
7
r(
1-ν)ε(C-Co))
V(川 ニ 3(1-fd3
+J(1-2ν)
b
j(1-C)
(
4
.
2
)
と な る こ と を 示 し て い る (25)。 こ こ で Cは 位 置 の 関 数 と し て 与 え ら
れる溶質濃度、 Co
は平均溶質濃度である。本研究では、上記の式
(
4
.
1
)と (
4
.
2
)で 示 さ れ る 2つ の 相 互 作 用 エ ネ ル ギ ー を 用 い て 刃 状 転
位の易動度を求めた。
5
5
拡 散 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を Q 、 隣 接 す る 格 子 点 1と 2の 相 互 作
用 エ ネ ル ギ ー を そ れ ぞ れ 町 、 % と す る と 、 格 子 点 1から 2、 格 子
点 2から 1へ 溶 質 原 子 が ジ ャ ン プ す る の に 必 要 な 活 性 化 エ ネ ル ギ Q1→ 2、 Q 2→ 1は そ れ ぞ れ
V
'
>-v
.
;
Q1→2=Q 十 42i
Q2→ 1=Q 十
,
v -1
ん
(
4
.
3
)
i24
で与えられる。
転 位 は 直 線 で あ る と 仮 定 し 、 転 位 に 垂 直 に ジ ャ ン プ 距 離 sの 正 方
形の仮想格子を考える。各格子点の溶質原子の存在確率はその原子
濃 度 に 等 し い の で 、 格 子 点 1に 2か ら 溶 質 原 子 が 流 れ 込 む こ と に よ
る 濃 度 の 増 加 速 度 は 、 格 子 点 2に 溶 質 原 子 の あ る 確 率
(
C
2) と格子
点 1に 溶 質 原 子 の な い 確 率 (
1-C1)お よ び 格 子 点 2から 1へのジャ
p
g
fexp(-Q2→ l
/
k
T
))の 積 で 表 さ れ る 。 こ こ で お は 幾 何
ンプ頻度 (
学的因子、
fは エ ン ト ロ ビ ー 項 を 含 む 原 子 の 振 動 数 、 kTは 通 常 の 意
味 で あ る 。 ま た 、 格 子 点 1から 2へ 溶 質 原 子 が 流 れ だ す こ と に よ る
C1) と 格 子 点
濃 度 の 減 少 速 度 は 、 格 子 点 1,こ溶質原子がある確率 (
2に 溶 質 原 子 が な い 確 率 (
1- C2) お よ び 格 子 点 1から 2へ の ジ ャ ン
プ頻度 (
p
g
fe
x
p
(-Q1→ 2
/んT
)
)の 積 で 表 さ れ る 。 格 子 点 1に お け る
溶質濃度変化はこれらの差になる。
固有拡散係数
Dは 溶 質 原 子 の ジ ャ ン プ 距 離 を sとすると
ω2叫一三)
D=
(
4
.
4
)
で 与 え ら れ る 。 そ こ で 、 格 子 点 聞 の ジ ャ ン プ を 上 下 左 右 の 4方 向 の
隣接格子点について考え、転位が速度
56
Uで 動 い て い る と き の 転 位 に
対する溶質原子の相対的流れによる濃度変化を加えると、ジャンプ
距 離 sを単位とした座標。, j
)に お け る 溶 質 原 子 濃 度 C
i,
jの 時 間 変
化は次式で与えられる。
全阜ょ
dt
1J(/'1
/V;-!-1 ,
;
1
!
:
.
.
.
¥
= ~2 1.Ci
+
j
(
1-C
i
,
j
)exp(
‘+
1)
1,
.-'
"
',
•
2kT
}
t
1..
"""'
'J /
一CM(1
ー
~
¥
Ci+1,
j
)exp(九一九叶
~
2kT )
J /
¥
V,
1
"
+・+・+・ +}+:(C
川 ,
j - Ci
,
j
)
上式第 1
項 と 第 2項 は 座 標
(
i,
j
)と (i+l,
j
)の 聞 の 溶 質 原 子 の ジ ャ ン
プを示しており、・・・は座標
および
(
4
.
5
)
(
i,
j
)と そ の 周 り の い ,
j+1
)、 (i-l,
j
)
(
i,
j-1)と の 聞 で 行 わ れ る ジ ャ ン プ を 示 す 。 ま た 、 最 後 の 項
は転位が
Z 方 向 に 速 度 Uで 動 い て い る こ と に よ る 濃 度 変 化 を 表 す 。
式 (4
.
5
)に よ る 濃 度 変 化 の 計 算 は 、 初 期 条 件 と し て 各 格 子 点 に 平
均溶質濃度を与え、境界条件として計算領域の最も外側の格子点の
濃度に平均溶質濃度を与えることによって行った。
時間を少しづっ経過させて各仮想、格子点の溶質原子濃度を求め、
(
4
.
6
)で 示 す 溶 質 雰 囲 気 ひ き ず り 抵 抗 Tdの 値 が 収 束 す る ま で 繰
Q
2
η
山
山
一s
り返し計算した。
ω一
次式
ここで Qは原子容であり、 b
ccでは D=α3/2で あ る 。 ま た ム
(
4
.
6
)
v
h
j
/
sは
ぐ3
3=(K-+1J転 位 の 運 動 方 向 の 相 互 作 用 エ ネ ル ギ ー の 勾 配 で 、 ムl
V
i-l,j
)
/
2と し て 計 算 し た 。 な お 、 こ の 計 算 で は 、 寸 法 不 適 合 因 子
εには 0
.
0
8
(
3
6
)、 格 子 定 数 と 関 係 す る 定 数 に は α=2.28x10-10m(14)、
57
b
=
=
(1
3
/
2
)α、 R==b/2、 弾 性 定 数 に は
C4、 C払
C
4
4の 値 (
3
7
)カヨら (
C
l
l-
4
4の 幾 何 平 均 値 を G 、 ν
=
=
0
.
3
4
(
3
7
)、 拡 散 係 数 Dに は 野 原
C
1
2
)
/
2と C
ら(
3
3
)の報告値を用いた。
以上の計算を
よび
1100Kに お い て 平 均 溶 質 濃 度 が 0
.
5、1.0、 2
.
0お
3.5at%Moの そ れ ぞ れ に つ い て 行 っ た 。 ま た 3.5at%Mo合 金 に
ついては
1050Kと 1150Kの 2温 度 で も 行 っ た 。 ジ ャ ン プ 距 離 sは
ノてーガースベクトル bと 等 し く と り 、 計 算 に は こ れ を 最 隣 接 原 子 間
距離とした仮想正方格子を用いた。格子の大きさは仮想格子点の数
で
34x34とした (26)。 こ の 大 き さ の 計 算 領 域 で 、 計 算 で 求 め ら れ る
溶質雰囲気の濃度分布はほぼ飽和する(領域依存性を示さなくなる)
ことが知られている。 (26)
4
.
3
.
2
計算結果と検討
図4
.
3に Fe-3.5at%Mo合 金 に つ い て 得 ら れ た 1050K、 1
1
0
0
I
(お
よび
1
1
5
0
I
{に お け る 転 位 速 度 υと 溶 質 雰 囲 気 ひ き ず り 応 力 Tdの 関 係
を両対数プロットで示す。
い ず れ の 温 度 に お い て も 、 り が 小 さ い 領 域 で 直 線 の 傾 き は 1とな
り
、 υと Tdに は 比 例 関 係 の あ る こ と が わ か る 。 v
が大きいとりと
比例関係は崩れ、
Tdの
Tdは 極 大 値 を 通 っ た 後 減 少 す る 。 こ れ は 、 理 論 的 に
転位の易動度を導出した
C
o
t
t
r
e
l
lと J
a
s
w
a
nの 結 果 (
7
)
(
3
4
)、や AI-Mg
合 金 に つ い て 本 研 究 と 同 様 の 計 算 を 行 っ た 中 島 と 吉 永 (26)ゃ
v-C合
金 に つ い て 行 っ た 吉 永 と 諸 住 (25)の 結 果 と 定 性 的 に 一 致 す る 。
図
4
.
3に 示 し た Tdの υ
依存性は、次のように理解される。
Uが小さ
いときは、溶質雰囲気の大きさが静止転位にできるものとほとんど
58
』 聞 圃 園 圃. .
2
1
0
d
w
仏 WJR
、、
~
て
ヨ
い
o1150K
∞
A1
1 K
ロ1050K
ζUli
・
3
,II
V
4
.
3
1m
EA
噌
0
。
ロ.nu
E
a
-
n
u
n
u
ウ 酎 噌 EA
句BA
.
n
u
図
転位速度と転位にかかるせん断応力との関係。
Fe-3.5at%Mo合金
59
同じ大きさで雰囲気の中心が
くため、
Uの 増 加 と と も に 転 位 後 方 に ず れ て 行
Tdはりとともに増加する。一方、
υが 大 き く な る と 、 溶 質 原
子の拡散速度 (
d
r
i
f
tv
e
l
o
c
it
y
)が 転 位 か ら 遠 い と こ ろ か ら 転 位 速 度 に
追随できなくなり、雰囲気の大きさが小さくなってゆくため、
Uの
増 加 と と も に Tdが 減 少 す る
実際の材料中では、多数の転位が異なった広い内部応力分布(転
位同士の弾性的相互作用により生じる)のもとで運動すると考えら
れるので、各転位に働く有効応力が場所によって異なり、したがっ
て変形中の雰囲気の大きさはそれぞれの転位で異なるであろう。そ
のため、前節において実験的に示したように、巨視的には変形機構
は急激に変化することなく、ひずみ速度の増大に伴い徐々に変化す
るものと思われる。
転位の易動度
Bは、
Tdと Uが 直 線 関 係 に あ る 領 域 で 、 そ の 勾 配
B==υ/Tdの 関 係 よ り 求 め た 。 そ の 値 と C
o
t
t
r
e
l
lに よ る 理 論 値 (34)を
表 4
.
1に 示 す 。 本 研 究 の 計 算 で 得 ら れ た Fe-3.5at%Mo合 金 中 の 転 位
o
t
t
r
e
l
lの 理 論 値 と 比 べ る と 3
.
3倍 か ら 3
.
5倍 大 き な
の易動度は、 C
値となっている。
図 4
.
4は、 1100Kに お け る 転 位 の 易 動 度 の 逆 数 l/Bと 溶 質 濃 度
C
oの 関 係 を 示 し た も の で あ る 。
2本 の 曲 線 は 前 節 で 示 し た 式 (
4
.
1)
、
(
4
.
2
)で 示 さ れ る そ れ ぞ れ の 相 互 作 用 エ ネ ル ギ ー に 基 づ い て 計 算 し た
もので、直線は C
o
t
t
r
e
l
lの 理 論 式 (34)か ら 求 め た 値 を 示 す 。 式 (
4
.
1)
の相互作用エネルギーは雰囲気形成による相互作用緩和の効果を含
o
t
t
r
e
l
lの
まないにもかかわらず、これを使って計算した易動度は C
理論値と一致しない。これは、溶質原子のジャンプの計算において、
60
ジャンプ先の格子点の溶質原子の存在確率を考慮に入れていること
が 主 な 理 由 で あ る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 式 (4
.
2
)の 相 互 作 用 エ ネ ル
ギ ー を 使 っ て 計 算 し た 場 合 、 AI-Mg合 金 で は Mgの 濃 度 が 約 5at%
以上になると易動度の逆数はほぼ一定値に近づくことが報告されて
2
6
)が、 Fe-Mo合 金 で は 、 図 4
.
4に 示 し た よ う に 、 易 動 度 の 逆
いる (
数 は 平 均 濃 度 と と も に 増 加 し 続 け る 。 こ れ は 、 Fe-Moの 寸 法 不 適 合
.
0
8と AI-Mg合 金 の ε
(
0
.
1
1) よ り 小 さ い た め 、 雰 囲
パ ラ メ ー タ εが 0
気形成による相互作用緩和の効果がその分少なくなるためと考えら
れる。この溶質雰囲気引きずり抵抗の計算結果と測定された変形挙
動 と の 関 係 に つ い て は 次 の 第 5章 で 詳 述 す る が 、 両 者 の 比 例 関 係 が
崩れる条件が転位の雰囲気離脱条件とほぼ一致する。
4
.
4 電気抵抗測定による回溶硬化合金の高温
変形機構の判別
4
.
4
.
1
実験方法
試験片
純度 9
9.99'wt%の 純 ア ル ミ ニ ウ ム と 純 度 99.97wt%の 純 マ グ ネ シ
l
3
.
1a
t%Mgと AI-5.7at%Mgの 組 成 に 秤 量 し た 後 、 高 純 度
ウムを A
:
K
C
I
:MgF2
=
=
5
:
3
:
2
)を
ア ル ミ ナ ル ツ ボ と フ ラ ッ ク ス ( 重 量 比 MgCI
2
023Kで 十 分 撹 持 し た 後 、 ス テ ン
用いて大気溶解し、溶融温度約 1
レ ス 製 の 金 型 に 鋳 込 み 、 直 径 15mm、長さ 170mmの 丸 棒 状 イ ン
ゴ ッ ト を 得 た 。 こ の イ ン ゴ ッ ト の 表 面 を 約 1mm皮 む き し た 後 、 約
523Kで 熱 間 ス ウ ェ ー ジ を 行 い 、 直 径 約 7mmの 丸 棒 と し た 後 、 冷
6
1
表 4
.
1 Fe-3.5at%Mo合 金 の 1050Krv1150Kに お け る 転 位 の 易 動 度
10
ζJ
E
S∞・ 6仏2
ト
、
、
、
間¥︻
。
0
.
0
1
0
.
0
2
0
.
0
3
0
.
0
4
Co
図 4.41100Kに お け る Fe-Mo合 金 中 の 転 位 の 易 動 度 と の 逆 数 と
平均溶質濃度の関係。ロは式 (
4
.
1)、。は式 (
4
.
2
)の相互作用エネ
ルギーで計算した値。
62
間 ス ウ ェ ー ジ に よ り 直 径 約 4mmの 丸 棒 と し た 。 さ ら に 、 切 削 加 工
.8rv3.0mm、 平 行 部 長 さ 22rv25mmの 両 端 部 に M6の
により直径 2
ネジ切り部を持つ丸棒状試験片とした。この試験片の平行部に、直
9.98wt%の 純 ア ル ミ ニ ウ ム 線 (
N
i
l
a
c
o製)を測定
径 0.5mm、 純 度 9
端 子 間 距 離 約 20mmに ス ポ ッ ト 溶 接 し 、 電 圧 測 定 の た め の リ ー ド
端子とした。このようにして作製した試験片を 7
2
3
K
1
0
.
8
k
s再 結 晶
処理した後、以下の試験に供した。
室温引張変形および雰囲気形成処理
引 張 変 形 に は オ ー ト グ ラ フ AG-10TA((
株)島津製作所製)を用
い 、 大 気 中 室 温 で 初 期 ひ ず み 速 度 約 6X 1
0
-5s
-1の 定 速 引 張 に よ っ
て、 11%の ひ ず み を 与 え た 。 そ の 後 、 試 験 片 を ア ル ミ ナ る つ ぼ に 入
0分 間 保 持
れ、 473Kに 保 っ た 大 気 炉 中 に 迅 速 に 挿 入 し 、 1分 か ら 1
した後に炉から引き出して空冷し、溶質雰囲気の形成を計った。
高温引張試験
73Kに お い て 大 気 中 で 初 期 ひ ず み
前節と同様の試験機を用い、 5
速度 8
.
3X 1
0
-6s
-1 r
v1
.5x1
0
-2s
-1で・定速引張試験を行った。変形は、
ほ ぼ 定 常 変 形 応 力 が 得 ら れ る ま で 行 い 、 与 え た ひ ず み は 最 大 15%
、
で
あ っ た 。 試 験 片 の 温 度 制 御 に は 3段 式 抵 抗 加 熱 炉 を 用 い 、 上 下 の 炉
は ス ラ イ ダ ッ ク で 手 動 に よ り 操 作 し 、 中 央 の 炉 の 温 度 は PID制 御
を 行 っ た 。 こ の 方 式 に よ り 、 試 験 片 の 平 行 部 に 沿 っ た 温 度 差 は 土 1K
以内、試験中の温度変動は士1
.
5
I
(以 内 に 制 御 す る こ と が で き た 。 引
張試験終了後は、試験片の高温変形組織を凍結させるため、除荷後
6
3
試 験 片 を 迅 速 に 送 風 冷 却 し た 。 573Kか ら 室 温 ま で の 冷 却 時 間 は 1
分以内であった。
電気抵抗の測定
電 気 抵 抗 の 測 定 に は 、 直 流 四 端 子 法 を 採 用 し た (38)。 直 流 定 電 流
電源装置
(
R
6
5
6
1デジタルマルチメータ一、(株)アドパンテスト製)
から発生させた直流電流を、試験片のネジ部からグリップを介して
通電させ、ゲージ部両端に溶接したアルミニウム端子を介して、微
小直流電圧測定器
(TR6143、(株)アドパンテスト製)を用いて電圧
を測定することによって電気抵抗を求めた。試験片の電圧測定端子
間距離と直径は、寸法による系統的誤差を少なくするため、高温保
持前にマイクロメーターを用いて数十回測定した。
雰囲気形成処理および高温引張試験前後の電気抵抗測定は、液体
窒素中 (
77K)で、 0
.
5、1.0、1.5お よ び 2.0Aの 各 電 流 を 瞬 間 負 荷
し、回路内接点、での分極や温度差による起電力の影響を避けるた
め極性を反転しつつ 1
4
r
v
1
5回 行 っ た (39)。 こ の 際 、 液 体 窒 素 が 沸 践
することによる温度変動を抑えるため、液体窒素浴は二重構造にし
た。また、通電によるジュール熱の発生に伴う電気抵抗の増加を考
慮し、通電後約
3
.
6
k
s保 持 し て 抵 抗 変 化 の な い こ と が 確 認 で き た 電
流値を抵抗の評価に用いた。これらのす法と電気抵抗より雰囲気形
成処理および高温引張試験前後の比抵抗を算出した。
雰囲気形成処理に際しては、再結品処理したままの同形状の試験
片を、目的の試験片と同じ時間高温保持し、保持前後の電気抵抗を
同様に測定した。これは、温度履歴によらず、変形を与えて転位を
6
4
導入した効果のみが、電気抵抗変化に表れていることを確認するた
めである。この試験片をこれよりダミー試験片と呼ぶ。
高温引張試験の際も、ダミー試験片を毎回炉内に設置し、引張試
験と同じ温度履歴を与えて、ダミー試験片の比抵抗が測定誤差範囲
内で変化しないことを確認した。
変形後の試験片の寸法は、測定精度をよくするため、変形前後の
室 温 で の 電 気 抵 抗 変 化 か ら 求 め た (40)。 こ れ は 、 室 温 で は 、 内 部 構
造の変化に起因する比抵抗変化より、温度に依存する比抵抗の方が
はるかに大きいことを利用したものである。以下にその概要を述
べる。
今 、 試 験 片 の 比 抵 抗 を p、 そ の 中 で 温 度 に 依 存 す る 項 を ρT、 内 部
oとすると、 ρ=ρ T+ρ
oで、ある。室温では、
構造に依存する項をρ
P
t ~ρo より P は p 竺 PT となり、変形に依らず一定であると考えら
れ る の で 、 変 形 前 後 の 測 定 さ れ る 電 気 抵 抗 を そ れ ぞ れ Roお よ び R、
0お よ び 人 断 面 積 を
試験片の標点間距離を [
前 後 の 体 積 Vが 不 変 で あ る
R
J
SOお よ び
sと し 、 変 形
(
v==[s==[oso)と仮定すると、
J2Jol02
=ρT;=P17?Ro=ρ TO-= = ρ γ ( 4 . 7 )
So
~
となり、
R
R
o
[
2
2
[0
(
4
.
8
)
によって標点間距離が求められる。室温での電気抵抗測定は、温度
変動をできるだけ小さくするため、エチルアルコール浴中で行った。
0分 間 で 土 0
.
0
5
I
(であった。
このときの温度の安定度は、 1
6
5
k
園田園圃圃圃・
4
.
4
.
2
実験結果と検討
溶質雰囲気形成と比抵抗変化
図
4
.
5は、 AI-3.1at%Mg合 金 を 室 温 で 11%引 張 変 形 さ せ 、 そ の 後
4
7
3
I
(で 保 持 し た と き の 比 抵 抗 の 変 化 を 7
7
I
(に お い て 測 定 し 、 保 持
時間に対してプロットしたものである。比抵抗の変化は保持前の値
で規格化した変化率で表している。
Dは 焼 鈍 後 変 形 を 与 え て い な い
ダミー試験片、 Sは 変 形 を 与 え て 転 位 を 導 入 し た 試 験 片 を 示 し 、 エ
ラーパーは 8回から 1
0回の測定値の標準偏差で、データ点、はそれ
らの平均値である。
ダミー試験片では 473K保持による比抵抗の変化はほとんどなく、
0
s
(
1
測 定 誤 差 範 囲 内 に あ る が 、 変 形 を 与 え た 試 験 片 で は 473K保持 6
分)で既に大きな比抵抗の減少が生じ、その後はほとんど変化しな
い。これより、試験片の転位密度が高いことが、高温保持による比
抵抗減少の原因になることがわかる。その原因として、回復による
転 位 密 度 の 減 少 と 転 位 の 周 り で の 溶 質 原 子 の 雰 囲 気 形 成 の 2つ が 考
えられる。
6
0
0
s
(1
0分 ) 保 持 後 の 比 抵 抗 の 減 少 量 は 1
.8x10-10Dmであった。
これがすべて回復による転位密度の減少によるものと仮定すると、
C
l
a
r
ebrough ら(41)の 求 め た 比 抵 抗 の 変 化 ム ρと 転 位 密 度 Nの 換 算
6
ρ/
N=
=3
.
3x10-2sDm/m-2) を用いることにより、
係数 (
5
.
5x
1
014m -2の 転 位 密 度 減 少 に 相 当 す る こ と が わ か る 。 完 全 焼 鈍 の 状 態
から
11%引 張 変 形 し た と き の 転 位 密 度 の 増 加 は 、 上 記 の 換 算 係 数 を
用 い る と 、 実 験 で は 1 .2x1
01Sm-2となり、上記の減少分を除くと、
6
6
473Kで 6
0
0
s保持後も 6
.
5
x1
014m-2の 転 位 が 残 存 し て い る こ と に な
る。また、比抵抗の減少量は保持後 6
0
sで ほ ぼ 飽 和 し て お り 、 そ の
後は大きな減少が見られない。これらのことから、約半数の転位が
保 持 1分 で 消 滅 し 、 残 り 半 数 の 転 位 は 1
0分 保 持 で も ほ と ん ど 減 少
しないことになるので、測定された比抵抗の減少は転位密度減少の
みによるとは考え難い。
転位の周りに溶質原子の雰囲気が形成され、転位近傍の溶質濃度
が増加することによって、母相中の溶質濃度が減少するために、比
抵抗の減少が起こった可能性が大きいと考えられる。
変形機構の遷移と比抵抗の変化
で 11%
図 4
.
6は、 573Kに お い て 初 期 ひ ず み 速 度 7
.
2X 1
0
-5S-1、
変
形後、送風冷却した試験片について、室温放置後液体窒素中で比抵
抗を測定し、室温放置時間に対してプロットしたものである。図よ
k
s
(
3
0分 間 ) で 比 抵 抗 が 急 激 に 減 少
り、放置し始めてから最初の1.8
することがわかる。これは変形および急冷によって導入される空孔
が室温での熱平衡濃度へ減少することを示すものと思われる。それ
.1%
以内である。この知見により、試験後の
以降の比抵抗の変動は 0
電気抵抗測定は試験後約 3
.
6
k
s
(
1時間)室温で放置した後に行った。
.
7に Al-5.7at%Mg合 金 を 573Kで 、 い ろ い ろ の ひ ず み 速 度 に
図4
より定速引張試験して得られた応力ーひずみ曲線を示す。ひずみが
以上になると、いずれのひずみ速度においても定常変形域に
約 10%
.
4X 1
0
-4S-1以 下 の ひ ず み 速 度 で は 、 変
入ることがわかる。また、 2
.
3X 1
0
-3S-1以 上 の ひ
形初期に明瞭な高温降伏現象が見られるが、 2
6
7
Aト3
.
1at%Mg
h
o
l
da
t 473K
。 ~.....~.....................!I!.~~~.~.~.......................~
(
ポ
)
ス¥ミぐ)
0
.
5
ー
1
.
0
8-77K
0
1
.
5
3
t/102s
6
図 4
.
5室 温 で 11%変 形 し た Al-3.1at%Mg合 金 に つ い て 測 定 し
た、
473Kで の 保 持 時 間 と 比 抵 抗 の 変 化 率 の 関 係 ( ・ ) 。 ・ は 同 組
成のダミー試験片の測定値
6
8
・
・
・
・・
回 E
4k
。
1
5
.
7
a
t
%
M
g 573K
e=7.2X1σ561
・
・
・
・
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
40
(
l
j
c
.
.
E
(
ポ
)
0
.
1
b
20
(史¥円札
。
。
d)
0
.
2
5
ε/0/0
10
0
.
3
0
0.
4
ー
0
.
5
1
.
5
2
t /ks
5S-1
図 4.6573Kに お い て 初 期 ひ ず み 速 度 7.2x10で・約 11%変 形
させた
AI-5.7at%Mgの 室 温 放 置 時 間 と 比 抵 抗 の 変 化 率 の 関 係
69
ずみ速度では、定常状態に入る前に大きく加工硬化している。
.
8に 定 常 変 形 応 力 と ひ ず み 速 度 の 両 対 数 プ ロ ッ ト を 示 す 。 矢
図4
印で示した応力以下では両者に直線関係が見られ、その傾きから
.
3で 、 転 位 の 粘 性 運 動 で 変 形 が 律 速 さ れ る
求められる応力指数は 3
と き に 得 ら れ る 値 と 等 し い (22)。 矢 印 で 示 し た 変 形 応 力 ( 約 90MPa)
は、応力ーひずみ曲線において高温降伏現象が不明瞭になるひずみ
4
1
速度 (
7
.
9X 1
0
-5- )で 得 ら れ た 値 で あ り 、 こ れ よ り 大 き な ひ ず み 速
度では定常変形応力との関係が勾配 3
.
3の 直 線 か ら ず れ て い る 。 こ
のことから、矢印の変形応力以上では転位が溶質雰囲気を離脱して
運動することにより変形が進んでいると考えられる。
図4
.
9は 、 変 形 前 後 の 比 抵 抗 の 変 化 率 を 定 常 変 形 応 力 に 対 し て プ
ロットしたものである。図中の矢印は図 4
.
8に お い て 矢 印 で 示 し た
変形機構が変化すると考えられる臨界応力に対応している。図よ
り、矢印で示した転位の溶質雰囲気からの離脱の始まる応力以下と
以上とで比抵抗の変化率の応力依存性が逆転することがわかる。
矢印の応力以下では、定常変形応力が大きくなるに従って比抵抗
の変化率は小さくなっている(負で絶対値が大きくなる)。溶質雰
囲気引きずり機構で変形が律速される固溶硬化合金においても、定
常変形状態では転位同士の相互作用に起因する内部応力の変形応力
に占める割合は比較的大きいことが知られており
(
4
2
)、 ひ ず み 速 度
の増加に対応する定常変形応力の増大は転位密度が増えていること
を表していると考えられる。したがって、比抵抗の減少は転位密度
が大きくなるのに伴い雰囲気を形成する溶質原子の割合が増したこ
とに起因し、この効果が転位密度の増加による比抵抗の増大の効果
70
ー
ー
ーー.
.
.
且‘
:
E=1.5X10261
・
150
:
i=2.3X10・3S・1
何丘三
100
¥hu
・
4S
・1
止=2.2X10
止=2.4X10
・
461
50
:
i=4.3X10・5S・1
e=8.3X10・6
S
7
1
。
。
Aト5
.
7a
わ
ら Mg 573K
5
10
15
ε/0
1
0
図 4
.
7573Kに お け る 種 々 の 初 期 ひ ず み 速 度 で の 引 張 試 験 で 得 ら
れた応力ーひずみ曲線。
Al-5.7at%Mg合 金
7
1
V
『司
を上回ったものと考えられる。
一方、矢印の応力以上では比抵抗の増加が見られる。この応力域
では前述のように少なくとも転位の一部が溶質雰囲気から離脱して
いると考えられる。そこで、この応力域での比抵抗の増加には、溶
質雰囲気から離脱した刃状転位密度の増加による影響が大きくなっ
ているように見える。しかし、前節で推定したように、高温では溶
質原子の流れが速やかに起こり雰囲気を形成することを考慮する
と、引張試験後の冷却中に雰囲気形成が行われる可能性が高い。そ
こで、この場合は刃状転位の雰囲気からの離脱後に、溶質雰囲気を
もたないらせん転位の割合が増加し、比抵抗の増大に寄与している
と考えるのが妥当であろう。
以上のように、転位の溶質雰囲気離脱が起こり始めたと思われる
変形応力では、比抵抗の変化率と変形応力の関係に変化が見られ
た。これは、電気抵抗測定法によって変形機構の遷移をとらえるこ
とのできる可能性を示唆している。
4.5 結論
固溶硬化合金の高温変形機構の変化を判定する手段として、高温
における巨視的な変形挙動、溶質原子の格子点間ジャンプの計算に
よる転位の易動度の算出、比抵抗測定法の適用可能性について検討
し、以下の結論を得た。
1
. F
e
3
.
5
a
t
%
M
o合 金 を 1
0
5
0
r
v1150Kに お い て 種 々 の ひ ず み 速 度
72
ー『司~
102
A
I
5
.
7
a
t% Mg 573K
•
・
・
ω
'
F
6 ・・
4
汁 l
10
・3
-//
ε学 Aσn
.
/
o e=Aσn
ω104
・
10
・5
106
10
_
L
j3.3
・
50
σ / MPa
100
図 4
.
8573Kに お け る 定 常 変 形 応 力 と ひ ず み 速 度 の 両 対 数 プ ロ ッ
ト
。
AI-5.7at%Mg合 金
7
3
可~
0
.
2
.
7
a
t% Mg 573K
Aト5
0
.
2
ー
TIEO--ム
(
ポ
)(
ミ¥ミヨ
。
0
.
4
ー
。
50
100
150
σ /MPa
図 4
.
9573Kで の 定 常 変 形 応 力 と 変 形 前 後 の 比 抵 抗 の 変 化 率 の 関
係。 AI-5.7at%Mg合金
74
4h
『司~
で定速度引張試験を行い、定常変形応力とひずみ速度の関係を求め
た。 1
100Kと 1150Kで は 両 者 の 対 数 の 聞 に は 直 線 関 係 が あ り 、 そ の
勾配より求めたひずみ速度の応力指数は約
3
.
5で 、 典 型 的 な 固 溶 強
050Kで は ひ ず み 速 度 が 約
化合金で得られる値と同様であったが、 1
5X 1
0
-5S-1以 上 で 直 線 関 係 か ら ず れ 始 め 、 変 形 機 構 が 変 化 し て い る
ことが示された。定常変形応力とひずみ速度に直線関係が成立する
ときは、変形の活性化エネルギーは
2
9
4
k
J.
m
o
l
-1で、 F
e中の Mo原
子の固有拡散の活性化エネルギ-(
2
8
5
k
J
.
m
o
l
-1) に 近 い 。 こ の 結 果
は、この合金の変形には
Mo原 子 の 拡 散 に 律 速 さ れ る 溶 質 雰 囲 気 引
きずり抵抗の寄与が大きいが、低温、高ひずみ速度では転位が雰囲
気から離脱し、変形機構が回復律速に変化することを示している。
2
. Fe-Mo合 金 に つ い て 、 転 位 と 溶 質 原 子 の 弾 性 的 な 相 互 作 用 エ ネ ル
ギーに基づいた溶質原子の格子点間ジャンプを計算することによっ
て 、 転 位 の 運 動 速 度 υと 転 位 に か か る 分 解 せ ん 断 応 力 Idと の 関 係 を
算出した結果、
これは従来
Idは U と と も に 増 加 し 、 極 大 値 を 示 し た 後 減 少 し た 。
AI-Mg合 金 で 得 ら れ て い た 結 果 と 定 性 的 に 一 致 す る 。
3
. 室温変形で転位を導入した A
I
3
.
1
a
t
%
M
g合金を、 4
7
3
I
{で 保 持
することによって、
Mg原 子 の 雰 囲 気 形 成 処 理 を 行 う と 、 比 抵 抗 の
低下が見られ、その低下量は保持時間約 6
0
sで ほ ぼ 一 定 に な っ た 。
このときの比抵抗を転位密度に換算すると、回復が完了したとは考
14
2
えにくい大きな値 (
6
.
5
x1
0 m-)が 得 ら れ た 。 こ れ よ り 、 比 抵 抗 の
減少は、回復による転位密度の減少の効果の他に転位の周りに
N
I
g
原子の雰囲気が形成された効果によるものと思われる。
4
.高温において A
l
5
.
7
a
t
%
M
g合 金 を 種 々 の ひ ず み 速 度 で 定 常 変 形
7
5
可~
し て 、 ひ ず み 速 度 と 定 常 変 形 応 力 と の 関 係 を 求 め 、 い わ ゆ る 3乗 則
か ら の ず れ か ら 変 形 機 構 が 変 化 す る 変 形 応 力 ( 約 90MPa)を求めた。
この応力以下では、変形前後の合金の比抵抗の変化率は定常変形応
力が大きくなるとともに減少し、これを越えると逆に比抵抗は増加
した。この結果は、前者は変形速度が遅いため溶質雰囲気を形成し
た転位が増加し、母相の溶質原子濃度が減少する効果によって、後
者は変形速度が速いため雰囲気をもたないらせん転位の割合が増加
する効果によって説明できる。
76
~
弟
5
早
国溶硬化合金の高温変形挙動の
予測
5
.
1 緒言
金属材料の高温における変形応力は定常変形状態では温度とひ
ずみ速度によって一義的に決まるが、ひずみ速度が刻々変化する条
件のもとでは変形の前歴に強く依存する。金属材料の熱間加工はひ
ずみ速度や温度が変化する複雑な変形履歴を伴うので、変形応力の
変形履歴依存性を明らかにし、この予測を行うことは重要な課題で
ある。
前章までに述べたように、固溶硬化合金の高温変形挙動について
は、これまでに多くの研究がなされてきた。それらの知見をもとに、
宮 川 ら (11)(12)は 最 近 、 変 形 の 基 礎 理 論 に 基 づ い た 変 形 応 力 の 予 測 法
を提案し、 f
c
cの 固 溶 硬 化 合 金 で あ る
AI-Mg合 金 に つ い て 、 変 形 応
力の経路事依存性を再現し得ることを示した。しかし、この方法が
.ひす柿み・時間空間における経路
77
可~
結品構造の異なる合金系にも汎用し得るか否かについては未だ実証
さ れ て い な い 。 そ こ で 本 章 で は 、 実 用 材 料 と し て 用 途 が 広 い bc
cの
鉄 系 合 金 の 中 か ら 固 溶 硬 化 の 大 き い Fe-Mo合 金 を 選 び 、 変 形 応 力
の経路依存性を実験的に明らかにするとともに、上述の予測法によ
り 実 測 結 果 を 再 現 し 得 る か 否 か を 調 べ た (43)(44)。
5
.
2 実験方法
5
.
2
.
1
高温引張試験
引張試験には、第 4
.
2節と同様な、新日本製鉄(株)より供与され
た 両 端 に M6の ネ ジ 部 を 持 つ ゲ ー ジ 部 長 さ 20mm、 直 径 3.5mmの
Fe-3.5at%Mo合 金 丸 棒 試 験 片 を 用 い た 。 こ の 試 験 片 に 、 第 4
.
2節と
同じ条件で熱処理を施し、引張試験に供した。
試 験 機 は 島 津 サ ー ボ パ ル サ - EHF2型((株)島津製作所製)を改
良 し た も の (18)を用い、 3つ の 経 路 で 引 張 速 度 を 変 化 さ せ る 試 験 を 、
1
0
5
0、 1100お よ び 1150Kの各温度において、 1気 圧 の ア ル ゴ ン ガ ス
(純度
5N)雰囲気中で行った。 3つ の 変 形 経 路 は 比 較 の た め AI-Mg合
金 の 場 合 に 使 わ れ た も の (11)と同じにした。これを図 5
.
1に示す。すな
.
2X 10-55-1で、、これを
わち、定ひずみ速度引張試験のひずみ速度は 7
経 路 1の 試 験 と す る 。 ひ ず み 速 度 を 大 き い 側 か ら 小 さ い 側 へ 連 続 的 に
変化させる (
3
.
6X 10-45
-1→ 2
.
4X 10-65
-1)引 張 試 験 を 経 路 2の試験、
小さい側から大きい側へ変化させる (
2
.
4X 1
0
-65
-1 → 3
.
6X 1
0
-45
-1)
引 張 試 験 を 経 路 3の試験とする。ただし、これらはいずれも 1
8
0
0
5
(ひ
.
1
3
)ま で の 平 均 ひ ず み 速 度 が 経 路 1の 試 験 と 同 じ に な る よ う
ずみ 0
7
8
可~
0
.
2
3
.
6X 1
0
4s1
(
1
8
0
0
s,
0
.
1
3
)
何
ω 0
.
1
2
.
4X 1
0
6s-1
。
1αm
図
2αm
5
.
1引 張 試 験 で 用 い た 3つ の 変 形 経 路
79
3
α
)
(
)
~
に し て い る 。 す な わ ち 、 ひ ず み 速 度 が 変 化 す る 2つ の 変 形 経 路 は 次
式で表せるようにした。
α
ε=
A{叫合)-叫-l~ot)}
た だ し 、 定 数 A 、 B、 Cの 間 に は
A=
=
e
x
pB-e
x
p(
-C
)
の関係がある。ここでらは制御できる見かけのひずみ(試験片及び試
験機の弾性変形を含む)、
tは秒を単位とする時間である。定数 B、C
の値は、経路 2の場合 (B,
C)=
=(
0,
5
)、経路 3の場合 (B,
C)=
=(
5,
0
)
としている。
用いた試験機はステッピングモーターを介してクロスヘッドを定
速で動かす機構をもつので、ステッピングモーターを計算機からの
パルスによって上式のひずみと時間の関係を満たすように駆動させ
る こ と に よ っ て 、 ひ ず み 速 度 を 制 御 で き る 。 経 路 2、 3の試験では、
変 形 後 に 経 路 1と 同 じ ひ ず み 速 度 に 急 変 さ せ 、 さ ら に
いずれも 13%
5%
程度変形した。
試 験 片 の 加 熱 に は 上 、 中 、 下 の 3つ の 部 分 か ら な る カ ン タ ル 線 に
よる抵抗加熱炉を用いた。上段と下段はスライダックによる手動操
作により制御し、中段は
PID方 式 に よ り 自 動 制 御 し た 。 温 度 の 測
定 に は 白 金 一 白 金 13%ロ ジ ウ ム 熱 電 対 を 用 い 、 試 験 片 ゲ ー ジ 部 の 上
端、中央および下端に直接スポット溶接し、試験ごとに毎回温度を
測 定 し た 。 上 記 の 温 度 制 御 法 に よ り 、 平 行 部 の 温 度 差 を 土 2K以下、
試 験 中 の 温 度 変 動 を 土 1K以 下 に 抑 え る こ と が で き た 。
80
『司~
5
.
2
.
2
応力緩和試験
本合金中の転位運動が粘性的であることを確認するためと、変形
応力に占める内部応力成分(転位同士の長距離相互作用による非熱
活性化応力成分)を測定するために、応力緩和試験も行った。ここで
得た内部応力の値は、後節での変形応力の予測の際に用いられる。
050K、 1100Kお よ び 1150Kのそれぞれの温度で、
緩和試験は、 1
ひずみ速度 7
.
2
x1
0
-5s
-1で、定常変形状態に入った後にクロスヘッド
を停止して行った。
一般に、試験機系の弾性変形を含む見かけのひずみ速度らは、試
験 片 の 塑 性 ひ ず み 速 度 tと弾性ひずみ速度。 /!<の和として次式で表
される。
σ
εα=ε+!
<
ここで、 σは変形応力の変化速度、 K は 試 験 機 系 の 弾 性 変 形 を 含 む
試験片の見かけのヤング率 (
combinedmachines
t
i
f
f
n
e
s
s
)である。
ク ロ ス ヘ ッ ド を 停 止 す る と ら が Oに な る の で 、 試 験 片 の 真 の 塑 性
ひ ず み 速 度 tは次式で示される。
σ
ε-一一一
!
{
緩和中の各応力に対して、緩和曲線の勾配より上式から塑性ひずみ
速 度 が 求 め ら れ る 。 測 定 に は ア ナ ラ イ ジ ン グ レ コ ー ダ - AR1100(
横
河電機(株)製)を用い、 1msの サ ン プ リ ン グ 時 間 で 緩 和 開 始 後 約 6
秒 間 、 荷 重 変 化 を 記 録 し た 。 得 ら れ た 緩 和 曲 線 を 3次から 5次の多
項式により近似し、解析的に勾配を求めた。
8
1
~
転位が粘性的に運動しているならば、応力緩和開始直前と直後の
4
5
)
(
4
6
)。 そ こ で 、 こ
塑性ひずみ速度は一致することが知られている (
れらの塑性ひずみ速度が一致するか否かを調べるとともに、一致す
るものについて内部応力を求めた。内部応力は、緩和中の各応力に
対するひずみ速度をプロットし、応力緩和開始点近傍の直線部分を
ひずみ速度i
==Oに 外 挿 す る 方 法 ( 菊 池 法 (47)(48))を用いて求めた。
5
.
3 実験結果と検討
5
.
3
.
1
応力緩和試験
図 5
.
2は 応 力 緩 和 開 始 点 直 前 直 後 の 塑 性 ひ ず み 速 度 、 t
。
と
GrQ、の
rv7回 行 っ た 測 定 結 果 の 範 囲
関係を示したものである。図の縦線は 5
150K
を示し、データ点はその平均値を示す。ぱらつきはあるが、 1
と 1
100Kで は 両 塑 性 ひ ず み 速 度 は ほ ぼ 一 致 し て い る と 言 え る 。 し
050Kで は 緩 和 直 後 の 塑 性 ひ ず み 速 度 は 直 前 の 値 よ り 低 く 、
かし、 1
緩和開始点において塑性ひずみ速度が不連続に減少することを示し
050Kにおける変形では、 7
.
2X 1
0
-5S-1の ひ ず
ている。これより、 1
み速度で、少なくとも一部の転位は溶質雰囲気から離脱したと考え
られる (
4
5
)。 こ れ は 、 図 4
.
1
(第 4
.
2節 参 照 ) に 示 し た べ き 乗 則 が 成 立
しなくなる条件と一致する。したがって、前節で述べた内部応力の
測定法はこの試験条件の変形には適用できない。
.
3に 、 経 路 2と 3の 終 点 、 に お い て 、 見 か け の ひ ず み 速 度 を
図 5
7
.
2X 1
0
-5S-1に 急 変 さ せ た 直 前 直 後 の 塑 性 ひ ず み 速 度 、
GQと今、の
関係を示す。見かけのひずみ速度を 2
.
4X 1
0
-6S-1から 7
.
2X 1
0
-5S-1
8
2
可~
に急増させた前後の塑性ひずみ速度は各温度ともほぼ一致してい
る九しかし、見かけのひずみ速度を 3
.
6X 1
0
-4s-1から 7
.
2X 1
0
-5s
-1
に急減させたところでは、 1
150Kで の 値 が 不 連 続 に 変 化 し 、 急 減 前
の値よりかなり小さくなっている。したがって、 1
150Kに お け る ひ
ずみ速度急減点直前では溶質雰囲気から離れて運動していた転位が
多く、変形応力は内部応力がほとんどを占めていたと考えられる。
5
.
3
.
2
高温変形応力の変形経路依存性
図 5
.
4に各温度、各変形経路の応力ーひずみ曲線を示す。 1050Kと
1100Kに お け る 経 路 1で は 、 変 形 初 期 に 変 形 応 力 が 最 大 と な り 加 工
9
)が 見 ら れ 、 そ の 後 加 工 硬 化 せ ず 変 形 応
軟化を起こす高温降伏現象 (
力 一 定 の 定 常 変 形 状 態 に 入 っ て い る 。 1150Kで は 加 工 軟 化 は 見 ら れ
ないが、変形初期の加工硬化がほとんどない。これらはいずれも固
溶強化合金に特有の挙動である。
ひ ず み 速 度 が 初 め 大 き く 次 第 に 減 少 す る 経 路 2で は 、 い ず れ の 温
度でも変形初期において変形応力は増大するが、高温降伏現象は見
られず、変形応力はひずみとともに単調に減少している。ひずみ速
度 が 初 め 小 さ く 次 第 に 増 加 す る 経 路 3で も 、 変 形 初 期 の 加 工 軟 化 は
見 ら れ ず 、 変 形 応 力 は 単 調 に 増 加 し て い る 。 そ の 結 果 、 ひ ず み 13%
での変形応力はそれぞれの経路によって大きく異なり、明瞭な変形
経路依存性を示している。
13%
変 形 後 は 経 路 2と 3の ひ ず み 速 度 も 経 路 1と 同 じ に な る た
・内挿した拡大図で一致しない測定点があるように見えるが、ひずみ速度が低
いため、測定誤差が大きかったためと思われる。
8
3
可~
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
o1150K
A 1100K
ロ1050K
10
C
Z
l
o
・
F
4
E
ω
5
4P/
fy/
/
/
/
/
/
/
、¥
レ令 T
E
E
O
/
y
。
y/
・
開
'4
¥r)
1i
d
c
。
ベ
噌
n
u
i
E
ε
。
図 5
.
2応 力 緩 和 直 前 と 直 後 の 塑 性 ひ ず み 速 度 の 関 係
84
可~
o Aロ
4
3
.
.・
4
。
1150K丸
1100K '~2.5
1050K -
/
/
/
/
/
/
/
。
c
/
:
)
寸
・
4
F
、
、
、
2
=7.2xl0
Ea
・5S
l
ω
.
匂吋
。
2
。 10-
ε
3
4
4S
-1
図 5
.
3経 路 2と 3に お け る ひ ず み 速 度 急 変 直 前 と 直 後 の 塑 性 ひ ず
み速度の関係
85
可~
80
1
1
5
0
K
40ト
2
。
80
∞
1
1 K
"
.
.
皇
、
、
、
40
~,,...〉
~F
b
0
80
1
0
5
0
K
3
40
1i
ハU
。
0
.
0
5
ε
a
図 5
.
43つ の 変 形 経 路 で の 引 張 試 験 に よ る 応 力 ー ひ ず み 曲 線
86
0.
15
可~
め 、 各 変 形 応 力 は 急 速 に 経 路 1の 定 常 変 形 応 力 に 近 づ い て い る 。 こ
れより、ひずみ速度一定での定常変形応力はいろいろな変形の前歴
に 依 存 し な い こ と が わ か る 。 以 上 の 変 形 挙 動 は AI-Mg合 金 (11)(12)に
おいて見られたものと定性的に一致している。
5.4 変形挙動の予測
5
.
4
.
1
予測法
本節では変形応力の予測式の導出を行う。
国 溶 硬 化 合 金 の 高 温 に お け る 変 形 応 力 σは 、 転 位 の 長 距 離 相 互 作
用による内部応力引と転位の溶質雰囲気引きずり抵抗に基づいた有
eの 和 で 与 え ら れ る
効応力 σ
(
4
9
)。
U
.
.,/
、
、 i
〆
'aE
,
ー
、
戸 、、‘
σ=σi
+σe
転 位 の す べ り 運 動 に 関 す る Orowanの式 (50)よ り 微 小 せ ん 断 ひ ず み
d
γは
dγ=ρ b
d
x
(
5
.
2
)
で示される。ここで、 pは転位密度、 bは パ ー ガ ー ス ベ ク ト ル の 大 き
さ
、 d
xは転位の微小変位である。ここで、 ρe、 ん を そ れ ぞ れ 刃 状 転
位とらせん転位の密度、 d
X
e、 d
x
"を そ れ ぞ れ 刃 状 転 位 と ら せ ん 転 位
の微小変位とし、それぞれの転位から成る長方形の転位ループを考
えると、
P
e
p
"
d
x
"
d
X
e
87
(
5
.
3
)
可~
が 成 り 立 つ (51)。 ら せ ん 転 位 は 静 水 応 力 場 を 持 た な い の で 、 固 溶 硬
化合金ではらせん転位の熔質原子との相互作用はわずかである
(
5
2
)。
したがって、雰囲気から大きな抵抗を受ける刃状転位に比べて雰囲
気をほとんどもたないらせん転位の速度は大きく、式
(
5
.
3
)におい
て、 d
X
$ ~ dX e と考えられる。すなわち、 ρ e~ρs と考えられる。
よ っ て 、 全 転 位 密 度 を P=
=P
e+ρ
sとすると、 ρ=ん と し て よ く 、 変
形は専ら運動速度のおそい刃状転位の運動によって律速されること
になる。
式
(
5
.
2
)を 刃 状 転 位 と ら せ ん 転 位 に 分 け て 考 え る と 、 以 上 の 考 察
より、微小せん断ひずみ d
γは
d
γ
P
e
b
d
x
e+ρ$
b
d
x
$
(ρsdzs)
P
e
b
d
x
eI
I+ρ
~:d
e
a
X
e
ρ
2 bdx
と表せる。ただし、 d
Xe=
=dxと し た 。 こ の よ う に 、 式
して、式
(
5
.
4
)の 右 辺 に 係 数
(
5
.
4
)
(
5
.
2
)と比較
2が つ く の は 、 高 速 で 運 動 す る 少 数 の
らせん転位による変形への寄与が、低速で多数の刃状転位の寄与と
同じになるからである。
これらの転位が粘性的な運動をするとき、転位速度りは転位の易
動度
(=
Bと 有 効 せ ん 断 応 力 Teの積 υ
=B Te) で表される事。従って、
εの 関 係 と 、 式
テ ー ラ 一 因 子 M を用いると、 dγ==Md
(
5
.
4
)より、
申引張応力を σ、分解せん断応力を 7、伸びひずみを ε、せん断ひずみを γで
・
表
す
。
8
8
可~ー
引 張 ひ ず み 速 度 εは
2 .d
x
1_ _
e==今/
M=
= ~-
b-J~
r
Mp
t
- d
I
(
5
.
5
)
r
で表される。ここで、転位速度 d
x
/
d
tを uと す る と 、 前 章 で 述 べ た
溶質雰囲気引きずり抵抗(これが有効応力九として測定される)と
転位速度が比例する条件のもとでは
(
5
.
6
)
v=
=BT
e
M の関係を用いると、
e
/
が 成 立 す る の で 、 九 =σ
£
t=
(
5
.
7
)
ρbBσe
と な る 。 す な わ ち 、 引 張 ひ ず み 速 度 tは 、 有 効 引 張 応 力 σeと 転 位 密
度 ρお よ び 刃 状 転 位 の 易 動 度
Bによって表すことができる。
一 方 、 内 部 応 力 引 は 転 位 密 度 ρの 関 数 と し て
σi
=
=αMGbゾ
戸
(
5
.
8
)
で与えられる (12)。ここで、 αは定数、 G は 剛 性 率 で あ る 。 式 (5
.
1
)、
(
5
.
7
)と (
5
.
8
)から pと σeを 消 去 す る こ と に よ り 、 変 形 応 力 σは σ
iのみ
の関数として
σ=σ;+
α2 M4G2b(
'
2
2
σ;
B
寸¥
IE~
-- -
¥
~
I
]
{)
(
5
.
9
)
/
]
(の関係 (
と表せる。ただし、 e==ら - a
5
.
2
.
2参照)を用いた。し
たがって、内部応力がわかれば、与えられたらに対する変形応力と
その変化速度との関係が求められる。
8
9
可.",.-
内部応力の増分は、 B
a
i
l
e
y
(
5
3
)と Orowan(54)が 示 し た よ う に 加 工
硬化と回復の競合として次式で表せる。
、、.,,
nU
Ei
噌
ヘ
Fυ
、
、
‘
〆
'aE
J
d
σi=hd
ε- r
d
t
θ
σ
i
/
θ
ε
)は純粋な加工硬化率、ァ=一 (
θ
σ
i
/
θt
)は純粋な
こ こ で ん =(
回復速度である。
内部応力の増加(加工硬化)は変形に伴う転位密度の増加による。
ρ は 、 転 位 密 度 pと 転 位 の 移 動 し た 距 離 d
xに比例
転位密度の増分 d
ρ ==s
ρdxとおけ
すると考えられるので、 sを そ の 比 例 定 数 と し て d
るであろう。したがって、式 (
5
.
4
)と d
γ =Md
εの関係より、
i
司自
i
、、,,,,,
F
ヘU
,
噌
,‘、、
〆
'
e
dp=F22dε
2
6
が得られる。
回復の効果がないとしても、転位密度が増加すれば逆方向に運動
する正負転位の会合の頻度が増し、対消滅による転位密度の減少が
お こ る と 考 え ら れ る 。 こ の 減 少 量 -dpは 転 位 密 度 と 転 位 の 運 動 距 離
に比例し、平均転位間隔
(
1ん/戸)に逆比例すると考えられるので、
Orowanの 式 を 用 い る と
M
-d
p==αρ vpdx=
=avp
五d ε ( 5 . 1 2 )
が得られる。ただし、
αは 比 例 定 数 で あ る 。 式 (
5
.
1
1)と (
5
.
1
2
)より
転位密度の増加は
lf
90
噌
で表される。ただし、 s
oは 対 消 滅 が な い と き の 増 殖 係 数 で あ る 。
、
、qJ
14
F
h
υ
、
目
〆
'E
d
p==仇一 αJ)gdε
可 F炉
「
転位密度が増加してくるといずれ d
ρ
=
=
0に な る 飽 和 状 態 に 達 す る
sと す る と 、 式 (
5
.
1
3
)から
と考えられる。このときの転位密度を ρ
s
o=
=
αゾ 瓦 の 関 係 が 求 め ら れ 、 式 (
5
.
1
3
)は
(
1
/p¥M
d
p=
=s
o(1-¥
/
_
c
_)~:
¥ V
ρ 2b
(
5
.
1
4
)
!J}
と書き換えられる。
回 復 の 効 果 を 含 ま な い 純 粋 な 加 工 硬 化 率 hは
、
ん=生 =dσiθρ
(
5
.
1
5
)
θεdρθε
であるが、式 (
5
.
8
)より
生一
d
p
αMCb_ α
(MCb)2
2
V
P
(
5
.
1
6
)
2
σ
z
λ
)と す る と 、 式
また、 P!Jに 対 応 す る 飽 和 内 部 応 力 を σi!J(
=
=
α Gbゾ
(
5
.
1
4
)より
。==M五角〔
(
J
ι f σょ¥
o
e
1-z;;j
が 得 ら れ る 。 式 (5
.
1
6
)を 式 (5
.
1
5
)に代入することにより、
h
=
A
(七
の
(
5
1
7
)
hは
(
5
.
1
8
)
で与えられる。ここで、
3
2
A=
=(
α 2M C b
s
o
)
/
(4σi
!
J)
(
5
.
1
8
'
)
である。
一方、回復は時間に依存した転位密度の減少による。高温での転
位の上昇による対消滅の速度 θ
ρ
/
θ
tは 、 転 位 密 度 の 二 乗 と 拡 散 係 数
9
1
可~.
D,
こ比例すると考えられるので、
、、.,,,,
噌Ei
vhu
/a11
っ
nwd
θp
友==-rolDp~
(
5
.
8
)か ら 、 回 復 速 度 は
と表される。上式と式
dσ
i
θP
dpθ
t
θ
σ
i
θt
3
r
=
=一 一 = 一 一 一 = =r
lD(J{)
1¥
(
5
.
2
0
)
と表せる。ここで、
ア1
=
=r
O
l
/
{
2
(αMGb)2}
(
5
.
2
0
'
)
である。
焼きなまし時にネットワークを形成している初期転位の減少速度
:
:
:
=
は 、 ネ ッ ト ワ ー ク の リ ン ク 長 さ を l-
1
/、/戸とすると、単位体積中
/
[
3=
=(ゾ戸)
3
)と 拡 散 係 数 に 比 例 す る と 考 え ら れ
のリンクの数(== 1
るので、
十
一
向2D(vp)3
と表せるであろう。上式と式
θ
σ
i
ァ==- d
t
(
5刈
(
5
.
8
)よ り 、 ネ ッ ト ワ ー ク の 回 復 速 度 は
d
σ
i
θ
ρ
っ
=
=-dp友==r2 D σ i~
(
5
.
2
2
)
と表せる。ここで、
r
2=
=r
0
2
/
(
2αMGb)
(
5
.
2
2
'
)
である。
以上の加工硬化率と回復速度および式
(
5
.
1
0
)よ り 、 内 部 応 力 の 時
間変化は
d(J;
σ
μ 一 σ /_
ず ==A~ σi
a¥
いーが -r
lDσi3-ψσi2仰 (-6ε)
9
2
(
5幻)
可V 炉
一
で与えられる。
e
x
p
(8
ε
)の 項 は 、 こ の 回 復 の 効 果 が 変 形 初 期 に の
は減衰係数である。
みあることを考慮した減衰項で、 6
5
.
2
3
)を 変 形 経 路 に 沿 っ て 積
変形に伴う内部応力の変化は、式 (
分することによって得られる。予測に必要なノマラメータは、宮川ら
(
1
1
)
(
1
2
)と同様、
1つの定ひずみ速度試験で求めた応力ーひずみ曲線と、
同 じ 材 料 を 用 い て 得 た 中 島 ら (36)の 回 復 速 度 の 測 定 結 果 お よ び 本 研
究の応力緩和試験によって求めた内部応力の測定値を参考にして次
節で述べるように決定した。
050Kで は 実 験 条 件 が 転 位 が 溶 質 雰 囲 気
前章に示したように、 1
から離脱すると考えられるひずみ速度域を含んでいることから、変
形応力の予測は 1
100Kお よ び 1150Kに つ い て の み 行 っ た 。 刃 状 転
位の易動度
Bの 値 は 、 前 章 に 示 し た よ う に 、 計 算 機 上 で 仮 想 格 子 中
の転位を動かし、転位と溶質原子との相互作用エネルギーの勾配か
ら 、 溶 質 雰 囲 気 引 き ず り 抵 抗 を 算 出 す る 方 法 に よ っ て 求 め た (25)(26)。
予 測 に 用 い た 各 温 度 で の 、 G 、 Dお よ び Bを表 5
.
1に示す。なお、
テーラ一因子丸グは 2として計算した。
5
.
4
.
2
パラメータの決定
前節で導出した予測式中のパラメータは、転位密度と内部応力を
関係づける α、 回 復 速 度 式 中 の r01と r02、 加 工 硬 化 率 式 中 の sOとの s、
および 6
の 5個である。
αは本研究で行った応力緩和試験の結果を参考にして求めた。 1
1
0
0
I
(
と1
150Kで の 定 常 変 形 状 態
(
i=
=7.2x1
0
-5S-1)に お け る 応 力 緩 和 試
100Kでは 24.3MPa、
験より、菊池法で求めた内部応力の平均値は 1
9
3
.
.
.
,
.
炉「
1150Kでは 12.0MPaで あ っ た 。 中 島 ら (36)が 応 力 急 変 試 験 か ら 求 め
たム
i
/ムσ(=(2/M2)pbB)の 値 に 、 表
5
.
1に 示 し た Bの 値 を 用 い て
ρを 求 め 、 こ れ と 本 研 究 で 測 定 し た σ
zと の 関 係 か ら 、 式 (
5
.
8
)によっ
て αの 値 を 求 め た 。 得 ら れ た αは 1
100Kで 0
.
5
3、 1150Kで 0
.
6
4で
あ っ た 。 し か し 、 本 来 αは 内 部 応 力 の 発 現 機 構 に 関 係 す る パ ラ メ ー
タであるので、温度に依存するとは考えられない。したがって、温
度 に よ る αの 相 違 は 実 験 誤 差 に よ る も の と 考 え 、 こ れ ら の 平 均 値 を
=0.58と し 、 両 温 度 で 同 ー の 値 を 用 い た 。
とり、 α
r
0
1は 次 に 示 す 内 部 応 力 σiと 回 復 速 度 Tの 関 係 か ら 求 め た 。 ア に は
中島ら (36)が 本 研 究 と 同 じ F
e-3.5at%Mo合 金 に つ い て 応 力 急 変 法 に
よって求めた値を用いた。彼らによれば、
Tは
会=
R
o
(
2
)
3引金)
で与えられる。ここで、
(
5
.
2
4
)
Eはヤング率、 Ro=1
.3X 1
021S-1、Qr=290
k
J
.
m
o
l
-1、 RTは 通 常 の 意 味 で あ る 車 。 上 式 に 内 部 応 力 の 測 定 値 を 代
入すると、 1
100K と 1150Kで の 回 復 速 度
r= r
1Dσi3は そ れ ぞ れ
16.9MPa's-1お よ び 6.31MPa's-1と な る 。 こ れ ら の 値 か ら ア01を 式
(
5
.
2
0
)と η = r
0
1
/
2
(αMGb)2の 関 係 に よ っ て 求 め る か01 = 2
(
α MGb)2r/Dσi3)
100Kで1.57X 1
03、 1150Kで1.5
と
、 1
1X 1
03となる。
宮川ら
(
1
2
)
i
r
t
hと Lotheの 理 論 (55)
は、転位の上昇運動に関する H
に基づき、吉永ら
(
5
6
)
が導いた式を用いて、回復速度係数を
r
0
1=
2.2DG
(
1_ν )
k
T
l
n
(
l
/
b
)
式(
5
.
2
0)に用いられている Tlと R
oの聞には、
る。ただし、 D
oは拡散係数の頻度因子
9
4
T
l
5
.
2
5
)
(
=Ro/(DoE2)の関係があ
表
I
T
(
K
)
i
j
1050
1100
1150
5
.
1 計算に用いた物理定数
2
G
(
9
P
a
5
1 D(m
s
-1)-_nT-B(m(~~~_~-ln
4
3
.
0
3
9
.
6
3
7
.
3
8
.
2
2X 10-17
3
.
4
0X 10-16
1
.
2
5X 10-15
9
5
3
.
8
7X 10-15
1
.
8
4X 10-14
7
.
5
9X 10-14
可~
で 与 え て い る 。 こ こ で Q は原子容、 l
は平均転位間隔である。これに
よると、
rOlは剛性率に比例し、絶対温度に逆比例することがわかる。
この温度依存性を用いると、 1
150Kと 1100Kでの
となるが、上述のようにして求めた
には約
rOlの 比 は
rOlの 比 は
0
.
9
0
0
0
.
9
6
1で あ る 。 両 者
7%の 差 が あ る が 、 ほ ぼ 一 致 し て い る と 見 る こ と が で き る 。
5
.
2
3
)に お い て 、 定 常 変 形 状 態 で は &==0、。i==Oであり、
式 (
r2
を含む項は変形が進行するにつれ消滅するので、次式が得られる。
A=
=rlDσi3σi 1
σ
t
j一 σ
i
ε
α
Aと
rlに そ れ ぞ れ 式
(
5
.
1
8
'
)と (
5
.
2
0
'
)を代入すると、
σ
i4
sO =
=r012D 行
s
α4M5G4b3σ
t
j一σパα
- A
が得られる
(
5
.
2
6
)
o sOの 値 は 前 述 の
αと
(
5
.
2
7
)
rOlよ り 上 式 に よ っ て 求 め た 。
t
jの値は AI-Mg合 金 に お け る 値 (
σ
i
j
=
=
3
0
0
M
P
a
)を参考に、
なお、 σ
ij==500MPaとした。ア02と 6の 値 は 各 温
弾性定数の相違を考慮して σ
度での定ひずみ速度引張試験において、変形初期の変形応力の変化
を最もよく再現する値を重回帰法で決定した。表 5
.
2に 1100Kと
1150Kにおける各ノマラメータの値をまとめて示す。
5
.
4
.
3
実験結果と計算結果の比較
図 5
.
5に 1100Kと 1150Kに お け る 応 力 ー ひ ず み 曲 線 の 予 測 結 果 を
100Kに お い て は 、 経 路 2の 変 形 初 期 を
実験結果と比較して示す。 1
除くと、大幅な変形応力の不一致はなく、計算結果はよく実験結果
を再現している。 1
150Kに お い て は 、 経 路 2の 変 形 中 期 以 降 に お い
9
6
可~
て は 計 算 結 果 は 実 験 結 果 を よ く 再 現 し て い る が 、 経 路 2の 初 期 、 経
路 3の 変 形 後 期 に お い て は 実 験 結 果 と の 不 一 致 が 大 き い 。 計 算 で 求
めた変形応力が実験で得た変形応力を上回る領域は、下に述べる理
由で生じたと考えられる。
.
6と図 5
.
7に そ れ ぞ れ 1100Kお よ び 1150Kに お け る ひ ず み
図 5
)と 転 位 速 度 の 変 化 (
b
)、 お よ び 転
の 変 化 に 伴 う 転 位 密 度 の 変 化 (a
位速度と溶質雰囲気引きずり抵抗の関係
(
c
)の 予 測 結 果 を 示 す 。 (a
)
の転位密度変化の曲線はその形状が計算で得られた変形応力の変化
とほぼ対応している。
(
c
)は 転 位 の 易 動 度 Bの 評 価 に 用 い た 計 算 結 果 で 、 Bの 値 は 図 中
の直線部の勾配の逆数である。溶質雰囲気引きずり抵抗と転位速度
の 比 例 関 係 が 成 立 し な く な る 転 位 速 度 VCTは 転 位 が 雰 囲 気 か ら 離 脱
しはじめる速度と
の場合、
VCTは
であるが、図
AI-Mg合 金 で は よ く 対 応 し て い る (11)(12)。 本 合 金
1100Kで 約 2x10-7ms-1、 1150Kで 約 5x10-7ms-1
(
b
)に見られるように、 1100Kで の 経 路 2の 変 形 初 期
における転位速度および 1
150Kで の 経 路 2の 変 形 初 期 と 経 路 3の
変形後期の転位速度がこれを大きく上回っている。以上の検討によ
り、変形応力の計算値と実験値の不一致は、いずれの場合もひずみ
速度が大きいために転位の一部が溶質雰囲気から離脱して運動し始
めることに起因しているものと思われる。
1150Kの 経 路 3の 変 形 後 期 に お け る 計 算 値 と 実 験 値 の 不 一 致 は 、
図 5
.
5に 示 し た 実 験 結 果 と も 対 応 し て お り 、 こ の こ と は 本 予 測 法 の
妥 当 性 を 示 す も の と 考 え ら れ る 。 こ の よ う に 、 経 路 3の 終 点 で の 転
100Kでは
位速度が 1
VCTに 達 せ ず 、 よ り 高 温 の
97
1
1
5
0
1
<で
VCTを 越 え
表
5
.
2 予測に必要なノマラメータ
98
可~
80
一
一-ma
easured
---c
l
c
u
l
a
t
e
d
1100K
3
40
£2
、
、
、
一
一
一
-m
easured
c
a
l
c
u
l
a
t
e
d
1150K
園 田 園
3_
A"""1
I
_
.
.
.
.
.
.
_
.
-
b
。
0
.
0
5
εa
0
.
1
0
.
1
5
図 5
.
51100Kと 1150Kに お け る 3つ の 変 形 経 路 で の 変 形 応 力 の
予測結果
9
9
可~
噌BA
n
u
H¥nL-b吋
∞
ロω匂ロ。Z803弓
下EC
N、
肉
(a)
。
2
1100K
V
0
.
1
εa
EE--w
40
0
.
0
5
‘
.
0
••
、
圏
、
圏
包
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3
込
国句圃
回句園
句園
圃句園
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圃
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,
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一
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句
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、
、
、
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一
包
、
一
、
.
α
、
.
b、
、 -a------
J
5
p、
3
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4
c
n
1100K
0
.
1
5
(c)
仏︾
MW
1100K
J︻
、
、
、
20
.
可
い
。
5
v
1
07ms-1
1
0
・
図 5
.
61100Kに お け る ひ ず み の 変 化 に 伴 う 転 位 密 度 の 変 化 (
a
)と
転位速度の変化
関係
(
b
)、 お よ び 転 位 速 度 と 溶 質 雰 囲 気 引 き ず り 抵 抗 の
(
c
)の 予 測 結 果
1
0
0
可~ー
(a)
1150K
d
8Ego-∞壱
-hZ
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A斗 司 、
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S
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2
唱
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1150K
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、
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.
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1
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6
(c)
1150K
~
N
。
2
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Pu
a
A
唱
ぷU
m
噌EA
n
u
v
図 5.71150Kに お け る ひ ず み の 変 化 に 伴 う 転 位 密 度 の 変 化
転位速度の変化
関係
(
a
)と
(
b
)、 お よ び 転 位 速 度 と 溶 質 雰 囲 気 引 き ず り 抵 抗 の
(
c
)の 予 測 結 果
1
0
1
~
るのは、転位密度が減少する効果によるものと考えられる。
5
.
5 結論
体心立方品固溶硬化合金の変形挙動の予測法を確立するために
F
e
3
.
5
a
t
%
M
o合 金 の 高 温 変 形 挙 動 の 経 路 依 存 性 を 調 べ 、 面 心 立 方 晶
固溶硬化合金に適用された変形挙動予測法が適用可能であるか否か
を検討し、以下の結論を得た。
1.変形経路を変化させる実験で得られた応力ーひずみ曲線は経路に
大きく依存した。しかし、定常変形状態に入ったときの変形応力は
変形の前歴によらず一定であった。
2
. 溶質雰囲気引きずり機構を前提とした変形応力の予測法によっ
て 算 出 し た 3つ の 変 形 経 路 に 沿 う 変 形 応 力 は 、 溶 質 雰 囲 気 引 き ず
り機構が働くと考えられる変形条件では、おおむね実験値を再現し
f
こ
。
3
. 実験値と計算値で変形応力に不一致が見られた部分は、ひずみ
速度が大きく、本予測法で求めた転位速度と溶質雰囲気引きずり抵
抗の比例関係が崩れている部分に対応している。これより、変形応
力の不一致は転位の溶質雰囲気離脱に起因するものと思われる。こ
れらの結果は
AI-Mg系 合 金 の 結 果 と 一 致 し 、 本 予 測 法 が 、 固 溶 硬
化合金の高温変形が転位の溶質雰囲気引きずり運動で律速されてい
る場合に、広く使用できることを示すものである。
1
0
2
可 F炉
一
弟
6
早
総括
本論文では、前半では耐熱材料として期待されている積層複合材
料の高温における異相界面の物理的な劣化の問題をとりあげた。ま
た、後半では高温変形挙動の知見の豊富な固溶硬化合金について高
温変形機構の変化の判別と高温変形挙動の予測に関する検討を行っ
た。本研究で得られた主な結果を以下にまとめて記す。
1 . モ デ ル 複 合 材 料 と し て 用 い た Cu-w人 工 積 層 複 合 材 に つ い て 、
いろいろな熱サイクルを与えて熱疲労試験を行った結果、軟相であ
る銅層が塑性変形して伸び、伸びの進行につれて界面の銅層側にボ
イドの発生が観測された。
2
. 熱サイクルの温度変化の幅が大きく、高温保持時間の長いもの
ほど、熱サイクル数の増加に伴う銅相の伸びが著しく進行し、界面
でのボイド生成が促進された。これらの複合材の形状変化は、銅と
タングステンの熱膨張率の違いから生ずる残留内部応力が界面すべ
りと銅層の塑性変形によって緩和されるというモデルで、説明でき
ア
こ
。
1
0
3
~
3. CuW 人 工 積 層 複 合 材 の 高 温 圧 縮 試 験 に よ り、異相界面にかか
る せ ん 断 応 力 と タ ン グ ス テ ン の 圧 延 方 向 と が 垂 直 の場合と 、平 行 の
場 合 とで、複合材料の強度に大きな差のあることが知られた。 平行
な場 合 に は 、 変 形 と と も に 変 形 応 力 は い っ た ん 上 昇 す る が 、 そ の 後
急激に低下するのに対し、垂直な場合にはそのような低下は生じな
し¥0
4
. 同積層材の変形中のその場観察により、強度の低下は異相界面
す べ り に よ る こ と が わ か っ た 。 ま た 、 3の 結 果 と 界 面 近 傍 の 構 造 の
観察から、異相界面すべりは界面構造の制御により阻止できる可能
性のあることが示唆された。
5
. 界面すべりが抑制されているとき、本複合材の高温変形挙動は、
界面で拘束を受けた銅相の変形として理解でき、その場合の強度は
銅単相のときよりかなり大きく、複合効果のあることがわかった。
6
.F
e
3
.
5
a
t
%
M
o合 金 を 1
0
5
0
r
v1
15
.
0
Kに お い て 種 々 の ひ ず み 速 度 で
定速度引張試験に供し、定常変形応力とひずみ速度の関係を求めた。
1100Kと 1150Kで は 両 対 数 プ ロ ッ ト で 両 者 の 聞 に 直 線 関 係 が あ り 、
その勾配より求められるひずみ速度の応力指数は約
3
.
5で 、 典 型 的
な固溶硬化合金で得られる値と同様であった。しかし
1
0
5
.0Kでは
0-55-1以 上 で 直 線 関 係 か ら ず れ 始 め 、 変 形 機 構
ひ ず み 速 度 が 約 5X 1
の変化していることが示された。
定常変形応力とひずみ速度に直線関係があるときは、変形の活性
化エネルギーは
・
、 F
2
9
4
k
J.
m
o
l
-1で
e中の Mo原 子 の 固 有 拡 散 の 活 性
化エネルギ-(
2
8
5
k
J
.
m
o
l
-1) に 近 い こ と が わ か っ た 。 こ れ よ り 、 こ
の合金の変形には
Mo原 子 の 拡 散 に 律 速 さ れ る 溶 質 雰 囲 気 引 き ず り
1
0
4
可~
抵抗の寄与が大きいが、低温、高ひずみ速度では変形機構が変化す
ると考えられる。
7
. Fe-Mo合 金 に つ い て 、 転 位 と 溶 質 原 子 の 弾 性 的 な 相 互 作 用 エ ネ ル
ギーに基づいた溶質原子の格子点間ジャンプを計算することによっ
て 、 転 位 の 運 動 速 度 uと 転 位 に か か る 分 解 せ ん 断 応 力
算出した結果、
7dとの関係を
7dは Uと と も に 増 加 し 、 極 大 値 を 示 し た 後 減 少 す る
ことがわかった。これは従来
A
I
M
g合 金 で 得 ら れ て い た も の と 定
性的に一致する。
8
.室温変形で転位を導入した A
l
3
.
1
a
t
%
M
g合金を、 473Kで 保 持
することによって、転位のまわりに
Mg原 子 の 雰 囲 気 が 形 成 さ れ る
熱処理を行うと、比抵抗の低下が見られ、その低下量は保持時間約
6
0
sで ほ ぼ 一 定 に な っ た 。 こ の と き の 比 抵 抗 を 転 位 密 度 に 換 算 す る
と回復が完了したとは考えにくい比較的大きな値 (
6
.
5
x1
014m-2)が
得られた。これより、比抵抗の減少は、回復による転位密度の減少
の効果の他に転位の周りに
Mg原 子 の 雰 囲 気 が 形 成 さ れ た 効 果 に よ
るものと思われる。
9
. 高温において
A
l
5
.
7
a
t
%
M
g合 金 を 種 々 の ひ ず み 速 度 で 十 分 定
常状態にはいるまで変形して、ひずみ速度と定常変形応力との関
係を求め、 3乗 則 か ら の ず れ か ら 変 形 機 構 が 変 化 す る 変 形 応 力 ( 約
9
0
M
P
a
)を 求 め た 。 こ の 応 力 以 下 で は 、 変 形 前 後 の 合 金 の 比 抵 抗 の
変化率は定常変形応力が大きくなるとともに減少し、これを越える
と逆に比抵抗は増加した。この結果は、前者は変形速度が遅いため
溶質雰囲気を形成した刃状転位が増加し、母相の溶質原子濃度が減
少する効果によって、後者は変形速度が速いため雰囲気を作らない
1
0
5
らせん転位の割合が増加する効果によって説明できる。
1
0
. Fe-3.5at%Mo合 金 に つ い て 変 形 経 路 を 変 化 さ せ る 実 験 を 行 い 、
得られた応力ーひずみ曲線が経路に大きく依存することを明らかにし
た。しかし、定常変形状態に入ったときの変形応力は変形の前歴に
よ ら ず 一 定 で あ っ た 。 こ の 結 果 は こ れ ま で に 報 告 さ れ て い る AI-Mg
合金の結果と定性的には同じである。
11 . 溶 質 雰 囲 気 引 き ず り 機 構 を 前 提 と し て 変 形 応 力 を 予 測 し 、 3つ
の変形経路に沿う変形応力は、溶質雰囲気引きずり機構が働くと考
えられる変形条件では、よく実験値を再現できることを示した。
1
2
. 実験値と計算値で変形応力に不一致が見られた場合も見出さ
れたが、そのときの変形条件は、ひずみ速度が大きく、上記の予測
法で求めた転位速度と溶質雰囲気引きずり抵抗の比例関係が崩れ
る変形条件に対応していることを明らかとした。これより、変形応
1
力の不一致は転位の溶質雰囲気離脱に起因するものと思われる。 1
と1
2の 結 果 は こ れ ま で に 報 告 さ れ て い る AI-Mg合 金 の 結 果 と 符 号
し、用いた予測法が、固溶硬化合金の高温変形が転位の溶質雰囲気引
きずり運動で律速されている場合に、広く使用できることを示した。
上に列挙したように、積層複合材料では、構成相の熱膨張係数の
相違が熱サイクルによる材質劣化の主因であり、その劣化は主に構
成相聞の界面すべりによるものである。しかしい高温変形の際に生
じる界面すべりには、その発生の仕方に顕著な異方性があり、それ
は界面構造の異方性によるものと推定することができた。したがっ
てもし、界面の整合性を高めることができれば、すべての方向への
1
0
6
界面すべりを抑制することができるであろう。そのとき、本研究の
ように熱サイクルの周期が短ければ、軟相は繰返し引張ー圧縮の応力
変動を受けて劣化するが、軟相だけが伸びてしまうというようなこ
とは起こらないと思われる。また、複合材料の受ける熱サイクルが
緩慢であれば、応力変動によって生じる欠陥は高温下で消滅し、蓄
積しないということも考えられる。以上のことは、熱膨張係数の差
がある程度大きい場合でも、界面構造の制御によって熱疲労を低減
できる可能性があることを示している。今後の高温用複合材料(特
に積層複合材料)の開発には界面構造の制御が重要な研究テーマと
して取り上げられるべきである。
また、界面でのボイドの発生は、軟相内の転位が界面に堆積して
生じる応力集中によるものと考えられるので、負荷重が積層方向に
かかるような条件で複合材料を使うようにすれば、応力集中は緩和
されボイドの発生が抑制されるであろう。このときも、熱サイクル
による塑性変形は避けられないが、サイクルの周期が長ければ高温
下で転位は回復消滅し、材質の劣化は起こらないと考えられる。
以上のように、熱膨張係数の差が問題となる複合材料でも、その
材質の劣化を防止する対策が残されていることを本研究結果は示唆
している。
固溶硬化材料に対する問題は、複合強化材料の場合と全く異な
る。熱膨張の問題はないが、変形による転位の増殖、回復による転
位の消滅、溶質雰囲気の形成とその転位運動に対する抵抗が問題と
なる。しかし、本研究により、上述の諸問題に対する理論と実験に
基づいて、任意の変形経路に対する変形応力がかなりよい精度で予
1
0
7
測できることが明らかになったことは、これらの問題の主要部分は
解決されたことを示すものと思われる。ただし、上述の予測になお
実験的に定めなければならない幾つかのパラメータを必要としてい
るところに問題が残されている。それらのパラメータもすべて理論
的に求められなければ、予測法は完成したと言えず、今後の研究に
待たなければならない。
実用上もっと重要な問題は、実際の塑性加工が、多くの場合、転
位が溶質雰囲気から離脱する変形速度の速い条件で行われることで
ある。この条件下での変形応力の予測には未だ成功しておらず、こ
れは今後の重要な課題である。しかし、限られた条件下とはいえ、
従来、材料毎、変形条件毎に求められていた変形応力を、変形機構
に基づいた基礎理論から推定できる汎用性の高い方法によって予測
することができたことは、大きな一歩であろう。
1
0
8
謝辞
本研究を遂行するにあたり、吉永日出男教授には終始懇切丁寧に
御指導いただいた。さらに、論文の執筆の際には有意義な御意見を
数多くいだだいた。
中島英治助教授には研究の指針、また研究生活全般について多く
の助言、叱陀激励をいただいた。
後藤正治教授(現在、秋田大学鉱山学部教授)、栗下裕明助教授
(現在、東北大学金属材料研究所助教授)には、研究生活に入りたて
の時期に、適切な助言を数多くいただいた。
有明高等工業専門学校
宮川英明教授には特に本研究の後半につ
いて貴重な御意見をいただいた。
連川貞弘助手、吉田冬樹助手には、事あるごとに多くの助言と手
助けをいただいた。
九州大学大学院総合理工学研究科
部
沖
憲典教授、九州大学工学
小野寺龍太教授には、本研究に対し貴重な御意見をいただいた。
また、この研究は、共同実験者の村上浩章氏、大津山隆氏、岡崎
俊宏氏、竹盛英昭氏の大いなる努力のたまものである。
ここに御名を挙げ、この研究に御協力頂いた方々に甚大なる感謝
の念を表す次第である。
1
0
9
『守〆
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出男:九州大学総合理工報告, 1
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1
9
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),
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) 堀内
良,吉永日出男:日本金属学会誌, 2
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) 吉永日出男:日本金属学会会報, 10(
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(
2
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) 中島英治,吉永日出男:日本金属学会誌, 5
6
(
1
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), 2
5
4
.
(
2
7
)森 川 龍 哉 , 竹 盛 英 昭 , 中 島 英 治 , 吉 永 日 出 男 : 日 本 金 属 学 会
誌(投稿中).
(
2
8
)紀
隆雄:日本金属学会会報, 1
2
(
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), 6
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) A.W.Thompson: M
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) 日 Oikawa: P
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A37(1978),
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(
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) H.OikawaandS.Nanba: T
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,
27(1987),
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.
(
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2
)佐 伯 真 事 , 及 川
洪,辛島誠一:日本金属学会誌, 4
3
(
1
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9
),
1
3
5
(
3
3
) 野原清彦,平野賢一:日本金属学会誌, 40(1976), 1
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5
3
.
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) A.H.Cott日 1
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(
1
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),
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.
5
(
3
9
) 長 村 光 造 , 中 村 藤 伸 : 軽 金 属 , 33(1983), 5
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.
3
(
1
9
8
9
),
(
4
2
) 早川弘之,中島英治,吉永日出男:日本金属学会誌, 5
1
1
1
3
(
4
3
) 中島英治,森川龍哉:変形特性の予測と制御 7 日 本 鉄 鋼 協 会 特
基研究会変形特性の予測と制御部会編, (
1
9
9
4
)
4
0
8
.
(
4
4
)森 川 龍 哉 , 岡 崎 俊 宏 , 中 島 英 治 , 吉 永 日 出 男 : 日 本 金 属 学 会
9(1995), 8
.
誌
,5
0
(
1
9
7
6
),
(
4
5
) 阿部勝憲,吉永日出男,諸住正太郎:日本金属学会誌, 4
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9
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18(
1
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),
(
4
6
) K.Abe,H.Yoshinaga,andS.Morozumi: T
4
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9
.
1
1
3
(
4
7
)菊池潮美,富田邦和,元山義郎,足立正雄:軽金属,3
0
(
1
9
8
0
),
480
1
9
8
0
), 4
4
9
.
(
4
8
) 菊 池 潮 美 , 元 山 義 郎 , 足 立 正 雄 : 軽 金 属 , 30(
(
4
9
) K.Abe, H.Yoshinaga, and S.Morozumi:
M
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,
・4
1(1979),6
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.
(
5
0
) 木村宏:転位論?丸善, p36
(
5
1
) W.G.Johnson: J
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(
5
3
) R.W.Baily: J
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(
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(
5
6
)吉 永 田 出 男 , 当 摩
建,諸住正太郎:日本金属学会誌, 3
8
(
1
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