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開発パートナーシップ

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開発パートナーシップ
実施体制:協力の形態
開発パートナーシップ
世界中の援助機関と協調し、
開発効果のスケールアップを目指す
近年の課題
JICAの対応
21世紀に入り、日本をはじめ各国ドナーおよび国際
2015年のMDGsの達成期限まで4年を切っており、
機関
(以下、ドナー)
はMDGsという枠組みで貧困削減
徐々に2015年以降を念頭においた議論も高まってい
への取り組みを強化し、
「モンテレー開発資金国際会議」
ます。JICAは
「MDGsフォローアップ会合」
(2011年6
(2002年)や
「ドーハ開発資金国際会議フォローアッ
140
─
月)
を日本政府等と共催するなど、事業の経験と知見
プ会合」
(2008年)
ではMDGs達成に必要な開発資金
の共有を通じて、ポストMDGsの議論に参画しています。
の確保が国際的に確認され、グレンイーグルス・サミッ
戦略的に連携および協力して効果的かつ効率的に
ト
(2005年)以降は、ドナーによる援助の大幅な増額
支援を行い、事業効果のスケールアップを図るため、
が合意されてきました。また、MDGs達成には援助の
JICAは従来から欧米ドナー国や国際機関とも緊密な
質を高めることも求められ、
「援助効果向上にかかるパ
パートナーシップを構築しています。 世界銀行、アジ
リ宣言
(パリ宣言)
(
」2005年)
によって援助効果の議論
ア開発銀行
(ADB)
、米州開発銀行、アフリカ開発銀行、
が高まり、「アクラ行動計画」
(2008年)
以降は具体的
欧州復興開発銀行については、年次総会への参加や
な取り組みが加速されました。
相互訪問を通じて、開発課題や地域別・国別の援助
しかし、ドナーによる開発援助の取り組みはさまざ
に関する包括的な協議を実施し、 援助戦略の共有に
まな点で変化が起きています。 MDGs国連首脳会合
より協調融資といった現場における具体的な連携が促
の成果文書
(2010年)
によると、MDGs達成に向けた
進されるなど、 効果的かつ効率的な援助の実施につ
状況は国によって進展が一様ではなく、さらなる取り
ながっています。また、開発経験や知見の発信として、
組みが求められています。 またMDGsに加え、近年
ADB総会では気候変動セミナーをADB、フランス開
は貧困削減に対する経済成長の役割やあり方、紛争・
発庁
(AFD)
と共催し、IMF・世銀総会の公式セミナー
脆弱国支援、気候変動、食糧安全保障、アラブの春
「緊急援助と復興支援」
には緒方理事長
(当時)が登壇
を契機とした雇用の創出、防災への取り組みなど開発
しました。 世銀の世界開発報告書2011年
(紛争、安
課題はグローバル化、多様化しています。
全保障と開発)
の作成においては副理事長
(当時)
が諮
リーマン・ショック以降、OECD/DAC加盟国の援
問委員を務め、JICAが推進する人間の安全保障に関
助額はほぼ横ばいであり、限られた資金をさまざまな
する知見を提供しており、さらにJICA研究所の調査研
開発課題に充てるため、ドナーは開発成果の発現と効
究と合同で報告書の発表セミナーを公開しました。同
果測定など説明責任への取り組みがいっそう求められ
報告書2012年
(ジェンダーと開発)
についても作成段
ています。 パリ宣言の総括となった
「釜山パートナー
階からJICA研究所が関わるなど、質の高い議論に貢
シップ・ドキュメント」
(2011年12月)
では、開発課題
献しています。
の多様化、新興国や民間企業など開発主体の広がりと
国際通貨基金
(IMF)
とも新たなパートナーシップを
いった新しい援助構造への対応や、援助効果の測定よ
開始しています。 アジアの低所得国の財務省や中央
りも開発そのものの成果を重視するといった、新たな
銀行の幹部を交え、JICA-IMF合同セミナーを初めて
議論が展開されました。
開催し、マクロ経済運営の安定、インフラ投資と金融
近年は民間企業や財団、NGO、新興国が開発援助
セクター開発のあり方について議論しました。 IMFと
において欠かせない役割を担っており、このように開
の対話と情報共有はJICA自らの事業戦略強化にもつ
発援助に参画する主体の多様化や援助のあり方につい
ながります。
て、G20など国際会議でも頻繁に取り上げられるよう
国連機関や欧米のドナーとも連携しています。国連
になりました。 援助を取り巻く世界的な環境の変化を
開発計画
(UNDP)
とは定期協議のほか、毎年南南協
把握し、国際会議における情報収集や発信を強化する
力局長級会議を共催し、ドナー国・新興国・途上国と
こと、またドナーとの事業連携や知的貢献を進めるこ
ともに、南南協力・三角協力に関する知見の共有促進
とは、開発援助を進めるうえでとても重要です。
と発信の強化に努めています。 UNDPが人間開発報
告書作成の過程で行うコンサルテーション会合を東ア
新たな協定の枠組みを活用して、組織間の共通の関
ジアで初めて JICAの支援のもと開催し、各国の専門
心分野に相互補完的に協力することで、より質の高い
家が集い活発な議論が行われました。 国連難民高等
支援を実現していきます。
弁務官事務所
(UNHCR)
とは、従来から取り組んでき
た帰還民支援やホストコミュニティ支援分野での連携
新興国とのパートナーシップ
に加え、「アフリカの角」干ばつに際してケニアとエチ
韓国がOECD/DACに加盟し、「第4回援助効果向
オピアの難民キャンプ向けにJICAが緊急援助物資を
上に関するハイレベル・フォーラム
(HLF4)
」
の開催国
供与しUNHCRが配布する新たな連携に取り組んだほ
となり、また中国が初めて対外援助白書を発表するな
か、チュニジアとコートジボアールに支援プログラム
ど、新興国の援助提供国としての姿勢が明らかになっ
計画作成のための合同調査団を派遣しました。
ています。 タイやブラジルなど、 南南協力に取り組
アメリカとは
「アフリカの角」
干ばつ対策、フランスと
む国は増えており、これら国々の動向を抜きに援助の
は気候変動対策プログラムローンへの協調融資、ドイ
議論はできなくなりつつあります。 長くアジア唯一の
ツとはアフリカの水分野での連携などを、両機関トッ
DACドナーであった日本の経済発展と援助国としての
プや事務レベルの協議を通じて、推進しています。
経験を背景に、JICAは新興国との対話を通じ、さま
JICAは2011年9月に発足した19の二国間・ 地
ざまな援助アプローチや開発課題への取り組みの共有
域開発金融機関による相互協力のためのネットワー
を積極的に進めていく考えです。具体的には
「第1回ア
ク
(International Development Finance Club:
ジア開発協力会合」
(2010年、韓国主催)への参画に
IDFC)
に加盟し、運営委員を務めています。気候変動
続き、
「第2回アジア開発フォーラム」
(2011年6月)
を
対策ファイナンスにおける二国間・地域開発金融機関
日本政府と共催し、中国・韓国・タイの政府・援助機
の実績や今後の取り組み方針について、COP17等の
関、東南アジア諸国、欧米ドナーなどとともに、アジ
国際会議で共同発信に取り組んでいます。
アのドナーの役割やアジアの開発課題等を議論しまし
2011年には新たに国連パレスチナ難民救済機構
た。また中国・韓国・タイの援助機関との定期協議や
(UNRWA)
、オーストラリア国際開発庁
(AusAID)
、
合同協議、相互訪問の機会を通じて、グリーン成長な
国際NGOのBRACやアガ・カーン開発ネットワークな
ど昨今の開発課題への取り組みや個別の連携事業の
どと、包括的な組織間業務協力協定を締結しました。
推進など、パートナーシップを一層深化させています。
特
集
事
業
の
目
的
と
概
況
活
動
報
告
援助効果から開発効果へのパラダイムシフトを目指して
−韓国・釜山で
「第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム
(HLF4)
」
開催−
156カ国の政府代表団と約40の国際
して支援を受ける途上国の発展・開発の
た基調スピーチでは、中国やブラジルな
機 関 や N G O など の 首 脳らを 含 む 約
ために行う三角協力は、各国・地域経済
ど新興国との協働の重要性を指摘し、日
3,500人が一堂に会し、 効果的な開発
間の社会・文化的背景の類似性や、新
本とブラジルによって開始されたモザン
援助のあり方などについて話し合う閣僚
興国をはじめとする中所得国の経済成長
ビークへの農業開発に関する三角協力
級の国際会合が釜山で開催されました
を主たる背景に、先進国から途上国に対
のプロジェクトが、具体的な優良事例と
(2011年11月)
。 パリ宣言
(2005年)
と
する伝統的な援助を量的・質的に補完す
して紹介されました。
アクラ行動計画
(2008年)
の成果を総括
るアプローチとして、重要課題のひとつ
本会合は、先進国による途上国援助と
し、 南南協力・三角協力、 官民連携、
として高い注目を集めています。本会合
その効果
(援助効果)
というこれまでの枠
気候変動等、 開発効果のさらなる向上
やセミナーの開催を通じて、日本がコロ
を超え、幅広い主体による開発への参画
を目指した新たな課題について議論され、
ンボプラン加盟時から南南協力を実践、
とその成果
(開発効果)
を重点としたこと
新興国やNGOも合意した成果文書として
蓄積してきた知見を紹介し、南南協力・
が注目されます。
「釜山パートナーシップ・ドキュメント」
が
三角協力の教訓とよりいっそうの推進の
採択されました。
重要性を訴えました。
途上国が自国の開発経験を基に他の
開会式には議長国
(韓国)の李明博大
途上国を支援する南南協力と、 先進国
統領、 国連の潘基文事務総長などが出
や国際機関と、支援を行う途上国が連携
席し、米国のクリントン国務長官が務め
実
施
体
制
資
料
編
第4回ハイレベル・フォーラム
141
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