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果物のタンパク質分解パワー!
果物のタンパク質分解パワー! 生物班 澤之向里代子 川端雪那 鹿間明里 指導担当 宮垣結衣 島﨑隼一 【実験動機】 果物は弁当のおかずと一緒に入れない方がいいと聞く。特に、お肉などとは 分けるように言われる。タンパク質分解酵素が関わっているということだが、 もし一緒に入れたらどうなるのか気になったため、実際に調べてみた。またそ うした酵素の性質を調べるため様々な方法で検証を行った。 【研究目的】 目的① タンパク質を多く含む食べ物と果物を一緒に置き、果物のタンパク 質への作用を調べる。 目的② タンパク質と反応させる果汁の濃度を変え、果汁の濃度とタンパク 質の分解量の関係について調べる。 目的③ 酵素のタンパク質への反応時間と分解量の関係について調べる。 1 実験① 4種類の、タンパク質を含む食べ物に対して、パイナップル、キウイの2 種類の果物を一緒に置き、それぞれの変化を観察した。 ◎使用した材料 ・タンパク質を含む食品 ハム、チーズ、かまぼこ、ハンペン ・使用した果物 パイナップル、キウイ ◎使用した器具 透明なトレイ、まな板、包丁、ラップ ◎実験方法 タンパク質を含む食品に対し、次の操作を行い 24 時間後の結果を観察した。 ・キウイをのせる ・パイナップルをのせる ・何も加えていない 2 実験前の食品の様子 果物と一緒に一定時間放置した 3 ◎キウイの実験結果 食品 変化の様子 ハム 粘り気があり、すぐほぐれた チーズ 変化なし かまぼこ 最初は弾力があったが、触れたらくぼみができるほど柔らかくなっていた はんぺん 最初は弾力があったが、次第にぬめりがでてきた 4 ◎パイナップルの実験結果 食品 変化の様子 ハム 表面が液状化していた チーズ 変化なし かまぼこ キウイと比べると、より柔らかくなっていた ハンペン キウイと比べると、よりぬめりがでてきた ◎考察 ほとんどの食品で果物によって変化が起きたことが分かった。特にパイナッ プルが一番変化が大きかった。これはパイナップルに含まれている『ブロメラ イン』というタンパク質分解酵素の働きによるものだと考えられる。この酵素 は消化を促進し、タンパク質の分解を促している。 チーズで変化があまり見られなかったのは、他の食品と違い発酵食品である ため、発酵時にタンパク質は分解されてアミノ酸になっており、これ以上タン パク質の分解が起きなかったのだと推測した。 これらの結果から、タンパク質を含む食品と果物を一緒に置いた場合、実際 に変化が起きることが分かった。 5 実験② ゼラチンを入れた試験管に濃度を変えたパイナップル果汁を加え、その後の様 子を観察した。 ◎使用した材料 ゼラチン(10%) パイナップル果汁 赤色の食紅 ◎使用した器具 試験管6本 試験管立て ◎実験方法 ・試験管にゼラチンを 10ml ずつ分注し、固める。 ・試験管に濃度を変えたパイナップル果汁(0,20,40,60,80,100%)を加え、 変化の様子を観察する。 このときパイナップル果汁には赤色の食紅を加え、観察しやすくした。 果汁添加直後の様子 6 ◎実験結果 添加 5 分後の様子(左から、果汁 0,20,40,60,80,100%) ◎考察 この結果から、パイナップル果汁の濃度が高いほどゼラチンが分解されやす く、時間がたつほど分解が進むことがわかった。 7 実験③ 1%スキムミルク溶液を基質として、酵素を加えてからの反応時間と分解量の関 係を調べた。 ◎使用した材料 基質溶液:1%スキムミルク水溶液 酵素液:コンタクトレンズ洗浄液(タンパク質分解酵素入り) ◎使用した器具 試験管、ビーカー、ウォーターバス、ストップウォッチ、スポイド、カメラ ◎実験方法 ・スキムミルク 0.5gを純水 50ml に溶かして 1%のスキムミルク水溶液を 8 本 作る。 ・ウォーターバスを 70℃に保って 8 本の試験管を入れ、5 分間置く。 ・それぞれの試験官に、2 滴ずつ 25 秒間隔で酵素液を添加する。 ・8 本目の試験管に滴下終了後、試験管の様子をデジカメで撮影する。 ・デジカメの画像をパソコンに取り込み、白黒のデジタル数値に変換し、 エクセルで反応時間と分解量のグラフを作成した。 (このとき事前に濃度を変えたスキムミルク溶液を調整し、濃度と輝度の 関係を調べ、検量線を作成し、これと比較した) 1%濃度のスキムミルク水溶液 8 70℃のウォーターバスで5分間温める ◎実験結果 タンパク質分解酵素添加後の様子 (左から、添加後0秒~200秒) この画像をパソコンで処理し、次のページのグラフを作成した。 9 分解量 (%) 反応時間 (秒) ◎考察 ・パイナップル果汁で同様の実験を行ったが、相関のあるグラフができなかっ たため、今回実験③ではコンタクト洗浄液を用いて実験を行った。パイナップ ル果汁が純粋な酵素液ではなく不純物が混ざっているため正確なグラフになら なかったのだろうと判断した。 ・実験の結果、反応時間が短いほど白くスキムミルクが残り、長いほど分解が 進み透明になっていることが分かる。時間の経過に伴って分解量が増加するの はグラフからも読み取れた。 ・同じように酵素をパイナップルに変えて実験したところ、白い沈殿ができた。 推測だが、パイナップルの酸によってタンパク質が固まり、白い沈殿ができた のではないかと考える。その後時間がたてば消えてなくなったので酵素反応は 起きたのだろうと判断したが、パイナップル果汁での反応は見た目以上に複雑 な反応が起きていると考えられる。 白い沈殿 10 【まとめ】 ・パイナップルはタンパク質分解酵素を持つので練り製品と一緒に保存するの はよくない。 ・チーズが分解されなかったのは、ほかの食品と違い発酵食品であるため発酵 時にタンパク質は分解されてアミノ酸になっており、これ以上分解が起きなか ったのだと推測した。 ・酵素による反応は、濃度が高いほど、また時間がたつほど反応が進む。 【感想】 ・酵素の新しい一面を知ったり、今まで知っていたこともより深く調べたりす ることができて、楽しかった。 ・いろいろな実験をして失敗もあった。しかし、その失敗から次どうするべき か考えることができた。 ・実験③について、加える酵素液をパイナップルに変えたところ、分解はした が、それが終わると同時に白い沈殿が起きた。それについて私達は、パイナッ プルの酸によってタンパク質が固まり、白い沈殿ができたのではないかと推測 した。しかし、真実かどうか分からないため、この現象について改めて調べる 必要がある。 11 【参考文献】 ・パイナップルの中にある酵素の研究 岐阜市長良中学校 1 年 笠原 竣介 ・果実によるタンパク質分解酵素の活性検査 神戸女子短期大学 論攷 森内 安子 ◎謝辞 この課題研究を進めていく中で、多くの方々からご助言やご指導をいただきました。丁寧 かつ熱心にご指導をしていただきました島﨑隼一先生はじめ、実験道具を準備していただ き、実験場所を提供していただいた吉田先生、船坂先生に深く感謝申し上げます。 12