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化学の力で夢を形に ——三井化学工場見学報告

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化学の力で夢を形に ——三井化学工場見学報告
化学の力で夢を形に
——三井化学工場見学報告
外交学院学生代表
見学日時:2011年6月3日(金)10:00~13:00
見学場所:千葉県三井化学市原工場
見学の流れ
東京湾を横切り、千葉県京葉工業地帯の三井化学市原工場にやって来た。京葉工業地帯は消費活動の
最も活発な首都圏に隣接した日本最大のエネルギー産業拠点だ。三井化学市原工場は工業地帯の中心に
位置し、出光興産や住友化学等と京葉工業地帯の各種設備を共用している。市原工場の会議室で工場の
詳細について説明を受けた。三井化学と市原工場の紹介では、環境、安全管理、地域社会への貢献につ
いての話しや今回の東日本大震災とも関係のある工場の地震対策についての話があった。その後、再び
バスに乗り工場見学へと向かった。3EPT充填倉庫では作業員が丁寧に生産ラインの説明をしてくれた。
1時間の見学が終了すると、豪華な昼食が用意され、社員の人たちと話しをすることができた。
概要
三井化学は1997年10月1日に設立された日本最大の化学工業グループである。日本国内に64の子会社
と海外に27の支社を持ち、従業員数は12,000人を超える。三井化学は地球環境との調和を図りながら、
材料・物質のイノベーションと創造によって高品質の製品とサービスを提供し、広く社会に貢献するこ
とを企業理念として掲げている。
日本国内には、樹脂加工を中心とした名古屋工場、基礎化学品と機能性材料の生産を中心とした岩国
大竹工場、有機合成技術により機能性化学品を生産する大牟田工場、有機・無機材料複合化装置の主力
工場である大阪工場、機能性樹脂と電子情報部品を生産する茂原分工場、そして今回見学した石化製品
の主力工場である市原工場がある。三井化学はさまざまな製品を生産しているが、大きく分けて自動車
部品、電子・情報部品、日用品や環境・エネルギー材料、包装材の4つに分けることができる。
三井化学の環境、安全、衛生、品質についての基本方針は以下の通りである。
環境:新技術や新製品の研究開発によって環境保全に貢献する。製品の研究開発から廃棄に至る全ての
ステップで環境に与える影響を評価し、環境負荷を低減する。
安全・衛生:安全確認を徹底させて無事故・無災害を目指す。良好な作業環境を創出し、従業員の健康
意識を高める。化学物質の安全処理を徹底させる。
品質:顧客が満足、安心して使える信頼される高品質な製品とサービスを提供する。
こうした一連の基本方針の下、三井化学は自主管理を重んじ、安全で衛生的な労働環境と品質の向上
に努めている。
近年、三井化学は海外市場の開拓に力を入れている。海外に生産拠点を設けている以外に、中国では
技術譲渡を進めている。また、国際シンポジウムを開催し、世界の企業や専門家、ノーベル賞受賞者と
議論を重ね、少しずつ夢を形にして来ている。現在、三井化学には中国石油化工股份有限公司とフェ
ノール等の合弁事業のほか、世界最大のエチレン開発拠点である袖ヶ浦センターがある。三井化学は技
術革新を重ね、新材料と新技術を導入して製品品質の向上に努めている。
今、日本の大手企業は企業の社会的責任を非常に重視している。三井グループは社員が誇りを持って
働くことのできる「優良企業」を目指し、経済・環境・社会の3者のバランスのとれた経営を模索してい
る。企業というものは利益や経済効果のみを追求するだけでなく、環境を護り社会に貢献してこそより
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良い経営ができるというのが三井化学の考え方だ。その一例として、同社は日本の環境基本法を遵守す
ると同時に、工場では廃水の処理状態を常時分析器を使ってモニタリングし、廃水の水質管理を行って
いる。なお、こうした企業理念は三井化学の中国事業にも活かされている。内モンゴル自治区で進めら
れている砂漠の緑化活動がそれに当たる。
また、三井化学は防災にも力を入れている。独自の防災システムがあり、海上保安庁とも連携して普
段から防災訓練を実施している。また、同社は地域社会との交流も大切にしている。一般市民の工場見
学の受け入れ、工場紹介のパンフレットの配布、清掃活動やペットボトルの回収、子ども化学実験教室
の開催等、社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。
知っていますか?
◇ 三井化学のある工業地帯は各社工場がパイプラインを共用している。万が一、ある工場で原料が不
足しても、電話一本でこの共用パイプラインを通じて他社の工場から原料を融通してもらう仕組み
になっている。
◇ トヨタとホンダの車の材料の70%を三井化学が提供している。
◇ 「アインシュタイン」工場。私たちを乗せたバスが三井化学の工場敷地内に入っていくと、左手の
大きな壁一面にアインシュタインが描かれているのが目に入った。このアインシュタインは、従業
員がイノベーションの励みにしようと1997年に描いたものだという。
◇ 今回の工場見学では三井化学の王果さんが解説と通訳をしてくれたが、王さんは来日当初は日本語
が全くできなかったそうだ。初めの3ヶ月間というもの、三井化学の上層部は王さんの教育に熱心で、
仕事の合間を縫っては王さんを旅行に誘うなどして日本語力のアップに力を貸してくれたという。
感想
三井化学市原工場の見学を終え、多くのことを考えさせられた。中国で化学工場と聞くと真っ先に思
い浮かぶのは、煙突から吐き出される黒煙、悪臭を放つ汚水、鼻を突く悪臭といった汚染問題だが、三
井化学は環境に非常に配慮しており、市原工場には黒煙や鼻を突く臭いもなく、敷地内には青々とした
芝生が茂り、東京湾の青い海を臨むことができた。
化学工場でもこんなに環境と調和できるのだということに本当に驚いた。また、三井化学は地域や社
会貢献活動にも非常に熱心に取り組んでいる。ゴミ拾いや清掃を行ったり、子どものための化学実験教
室を開いたり、少年野球大会を支援したりと、本当に感心した。化学メーカーと社会貢献活動には必然
的な関係はないが、三井化学の社会貢献活動を重視し積極的にそれに取り組む姿勢はとても素晴らし
く、血の通った温かみのある企業経営が感じられた。利益だけを追求するのではなく、社会貢献を重視
するこの姿勢を中国の化学メーカーや企業も見習うべきだと思う。利益だけにとらわれることなく、広
い視野を持ち、社会的責任を果たすことが成熟した企業の証だと思う。
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