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多角的経営方式 - 中国日本商会
多角的経営方式 北京郵電大学学生代表 見学日時:2011年 12月2日(金)16:00-19:30 見学場所:三井物産株式会社 東京都千代田区大手町一丁目2番1号 見学概要: 12月2日午後4時、第9回「走近日企・感受日本」中国 大学生訪日団一行は三井物産を見学した。三井物産 戦略研究所国際情報部アジア室の平塚室長が案内を してくれた。まず平塚室長から30分間ほどの三井物産 の概況についての紹介があった。三井物産の事業は 「資源·エネルギー」「物流ネットワーク」「生活産業」「イン フラ」といった4つの分野で構成され、人権、環境、消費 者問題、コミュニティへの参画とその発展という4テーマ を自らの社会的責任として位置づけている。三井物産 は総合商社としての活動を通じて社会に貢献し、企業 の社会的責任を果たしているが、同時に事業の振興、新しい価値の創出、人と人との関係構築に取り組み、日本を含 む世界経済とコミュニティの健全な発展と生活水準の向上に直接または間接的に貢献していくことを目指している。 次に、平塚室長がパワーポイントを使って三井物産の最近の状況を説明してくれた。日本の輸出と対中投資に関 する説明を聞いて、中日両国の貿易が増加傾向にあることが分かった。その代表的なものに内モンゴル自治区の鄂 爾多斯公司との提携がある。提携当初は羊毛とカシミヤの貿易が中心だったが、現在は石炭産業への投資計画もあ るという。 さらに三井物産の歴史と変遷についての説明があった。創業から明治維新にかけては安定成長を維持し、その 後、事業投資と物流ネットワークをベースにした多角的経営方式に転換していった。 最後に、三井物産の多角化と国際化 についての説明を聞いた。三井物産は原 子力エネルギー、農業生産事業、穀類物 流事業、水利事業、在庫管理及び物流配 送、低温物流事業、アジアにおける医療ネ ットワークなどの各種事業を世界規模で発 展させてきている。さらに環境の維持と改 善、再生可能エネルギーの開発、実現可 能なビル電気設備のインテリジェント・ソリュ ーションとエンジニアリングサービスの提供 にも取り組んでいる。三井物産の多角化と 国際化戦略に心から共感した。 -31- 会社紹介の後、三井物産の社員と一緒に食事をした。大勢の人と乾杯し、いろいろな話題について語り合った。中 日両国の友好と親睦を十分に深めることができたと思う。三井物産には是非これからも発展し、人類文明の発展のた めに貢献してもらいたいと思う。 4.知っていますか? 1)三井物産はどのように社会的責任を果たしているのか 見学した他の企業と同様に、三井物産は世界の一流企業として、日本ひいては世界的規模で企業の社会的責任 を果たしている。自社の発展だけでなく、進出先の環境についても配慮し、エネルギーの再生利用などの分野で大き く貢献している。 消費者問題における取り組みとしては、金属が不可欠となっている現代生活を維持するために、ブラジルのVale社 などの大手資源開発会社との大型プロジェクトに投資を行い、埋蔵されている金属資源の長期的かつ安定的な確保 を図り、世界各国の市場に安定供給している。また、三井物産は地下資源の開発と同時に環境にも配慮し、循環型 社会の実現に向けて「都市鉱山」または「地上資源」とも呼ばれる都市部に蓄積された金属資源のリサイクル事業にも 積極的に取り組んでいる。2007年には金属リサイクル分野の世界最大手-SIMS社の株式を取得している。なお、金 属廃棄物を中心に廃棄家電、電子廃棄物、電気製品などのリサイクルを含む総合リサイクル事業を展開している。ま た、三井物産は政府機関と自治体が主導する小型家電製品(携帯電話など)を含むレアメタルのリサイクル事業にも 積極的に参画し、今後も行政機関と提携・協力を推進し、消費者の生活環境の保護に努めている。 環境方面の取り組みとしては、バイオ マス資源から始まるバリューチェーンを 構築している。化石資源の代替品として のバイオマス資源の需要が今後増えて いくことが予想されるが、三井物産はこ うした需要に対応するため、バイオマス 資源から始まり、油脂や砂糖、中間体を 原料とするグリーンケミストリーのバリュ ーチェーンの構築を積極的に進めてい る。また、食品部門などの横の連携によ って総合力を発揮し、東南アジアや北 南米地域でのバイオマス資源の安定供給を確保し、バイオマス資源の収量を増やし、発酵と触媒の新技術を開発す るなどしてバイオマス資源を使った各種化学製品の生産を行っている。また、高効率な物流システムによってCO2排 出量と燃料使用量を削減すると同時に、環境調和型設備の使用にも心がけてもいる。中継地点の例では、主要イン フラでもある第1・第2国際貨物ビルの大部分の屋根に太陽エネルギーを利用したソーラーパネルが取り付けられてい る。面積約28,000平方メートル、発電容量約2,000kWの太陽光発電システムは、中継地点全体の約1割の電力供給 が可能である。 2)三井グループのような大組織はどのように意思決定をしているのか グループとしては「二木会」が三井グループの最高意思決定機関である。主要企業26社で構成され、定例会、情 報交換、一元的意思決定、戦略調整、懇親を主な目的にしている。このうち三井銀行、三井物産、三井不動産がグ ループ3大支柱企業で、この3社の経営トップが中心になって三井グループを代表して対外的業務をこなしている。一 -32- 見、二木会は社長クラブのようにも見えるが、実は緊密に連携し合っている実質的組織であり、それは最高指導者の 任命の仕方からも分かる。東芝は三井グループの重要メンバーの一つで、東芝の「再建請負人」とも呼ばれた土光敏 夫元社長は、三井グループの石川島播磨重工の会長を務めていたが、経営難に陥っていた東芝の石板泰三会長が 直々に土光敏夫に社長就任を依頼した経緯がある。 こうしたグループ内部の経営トップの人事異動は、当時も今も日常的に行われている。グループが大企業に資本 参加する場合は、商社から経営陣が何人か派遣されるが、出資比率の小さい場合は、商社から経営陣が派遣さるこ ともなく、社名に「三井」を使用することも禁じている。また、グループの会長に就任するのは必ずしも大株主というわけ ではなく、グループ内からキャリアと人望のある人物が選ばれる(通常はグループに属する企業を定年退職した元社 長)。日本企業の社員は「年功序列」に基づいて一般社員から徐々に昇格していくが、グループの会長も例外ではな い。 三井グループの中で日常的な調整と意思決定を行うのが総合商社としての三井物産である。上述したように、三井 物産の事業部門に投資プロジェクトがあるときは、それについての分析と判断をし、グループ企業担当部門の主管者 と職能部門の社員とともに約1年かけて視察と調査を行う。視察終了後は、視察レポートに基づき三井物産の部長に 報告し、投資を行うかどうかの決定権は部長にある。通常、三井物産はグループ企業に要請して共同投資を行う場合 が多い。要請された企業が当該プロジェクトへの参加意向がなくてもかまわない。グループ企業が多数あるので、視 察済みプロジェクトに興味を示す企業は必ずあるというわけだ。また、三井グループがプロジェクトへの協力を他のグ ループ傘下の企業に要請することも珍しくない。当然、三井物産が単独で出資するケースもある。したがって、三井物 産がグループ企業を強制的に管理しているとうわけではなく、またその必要もないのである。三井物産自身は一方で グループに所属する他企業の株主であり、これらの企業の川上から川下までの資源を管理している。どのグループ企 業も一種の需給関係に裏打ちされた利害関係にある。 感想: 三井物産の見学を通じて、資金の潤沢な企業の必要条件とメリットについての認識を深くした。最も印象的だった のは、三井物産が進めるプロジェクトが上は「空」から下は「地中」に至るまでさまざまな分野に及んでいる点である。こ れほど多くのプロジェクトを展開していても、各企業の足並みが乱れることはない。「二木会」を三井グループの最高意 思決定機関とし、主要グループ企業26社で構成されている。定例会、情報交換、一元的意思決定、戦略調整、懇親 がその主な目的である。このように企業マネジメントの権限を集中させる方法は、士気の乱れから起こる破産を効果的 に防ぐことができる。 なお、一例として、三井物産と中国内モンゴル自治区の鄂爾多斯公司は貿易面で良好なパートナーシップを築い ている。両社の関係は1980年代にカシミヤ事業からスタートしたが、今では信頼関係がますます深まり、三井物産は 石炭産業への参入も考えている。このような多角的経営方式は、三井物産により多くのビジネスチャンスと利益をもた らすことになるだろう。こうした経営理念とモデルは中国も参考に値するように思う。現代の大学生にとっては、イノベ ーションと多角化のどちらもコアコンピタンスと言えるが、全方位的な認識と技術を持ってはじめて、人口の多い現代 社会において優位性を得ることができるのであり、自分自身が成長することによって中国と日本の友好関係が促進で きるのだと思う。 -33-