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情報と社会 - RISTEX 社会技術研究開発センター

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情報と社会 - RISTEX 社会技術研究開発センター
戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)
「情報と社会」研究開発領域
研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」
追跡調査報告書
平成25年11月
独立行政法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター
目
次
1.追跡調査実施要領 ...........................................................................................................................1
1.1. 経緯・背景 ..............................................................................................................................2
1.2. 追跡評価項目・基準...............................................................................................................2
1.3. 追跡調査対象 ..........................................................................................................................3
1.4. 調査内容と方法 ......................................................................................................................4
2. 研究開発領域・研究開発プログラムの概要、評価の経緯 ......................................................7
2.1. 「情報と社会」研究開発領域の概要・目的 .......................................................................8
2.2. 研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」の概要 .......................................8
2.3. 「情報と社会」研究開発領域 研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」
に関する評価の経緯について...............................................................................................9
3. 調査結果の概要 ........................................................................................................................... 11
3.1.「ケータイ技術の知識不足から生じる危険の予防策」
(研究代表者:玉井 克哉) ...............................13
3.2.「ユビキタス社会における情報信頼メカニズムの研究」
(研究代表者:曽根原 登) ...............................35
3.3.「企業における情報セキュリティの 実効性あるガバナンス制度のあり方」
(研究代表者:林 紘一郎) ...............................71
3.4.「ユビキタス社会にふさわしい 基礎自治体のリスクマネジメント体制の確立」
(研究代表者:林 春男) ................................. 103
3.5.「カントリードメインの脆弱性監視と対策」
(研究代表者:三上 喜貴) ............................. 137
1.追跡調査実施要領
1
1.1. 経緯・背景
独立行政法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(以下、
「センター」という)
が実施する戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)において、事前・中間・事後に
実施した評価に加え、
「研究開発終了後一定期間を経過した後、副次的効果を含めて研究開
発成果の発展状況や活用状況等を明らかにし、事業及び事業の運営の改善等に資すること
を目的」として、追跡調査及び追跡評価を実施することとしている。
追跡評価は、研究開発終了後一定期間を経た後、研究開発成果の発展状況や活用状況、
参加研究者の活動状況等について、研究開発プロジェクトの追跡調査を行い、追跡調査結
果を基に、外部専門家により構成される委員会による評価を集約し、合意を以て評価結果
とすることとしている。
このたび、
「情報と社会」研究開発領域 研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナ
ンス」において、平成 17 年度から平成 19 年度に採択され、平成 22 年度までに終了した研
究開発プロジェクト(5 課題)について、終了後約 3 年が経過したことを契機として、追
跡調査・追跡評価を実施することとした。
なお、本追跡調査は、それらの現状を把握し、追跡評価の基礎資料とすることを目的と
して、独立行政法人科学技術振興機構より調査を委託した株式会社リベルタス・コンサル
ティングが研究代表者への書面調査等により調査を実施した結果を取りまとめたものであ
る。
1.2. 追跡評価項目・基準
追跡評価を実施するための情報を取りまとめるにあたり、研究開発終了後一定期間を経
た後の研究開発成果の発展状況や活用状況、参加研究者の活動状況等について追跡調査を
実施した。追跡評価の項目・基準については、独立行政法人科学技術振興機構の「戦略的
創造研究推進事業(社会技術研究開発)に係る課題評価の方法等に関する達(平成 25 年 3
月 27 日 平成 25 年達第 39 号)
」第 18 条(追跡評価)に定める評価項目及び基準を基本と
し、センターの事業及び事業運営の趣旨をふまえて、以下のように整理した。
1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1)研究開発内容の進展状況
① 研究開発はプロジェクト期間終了後にどのように進展・発展したか。
② プロジェクト期間終了後の社会状況や環境の変化に対して、どのように対応し、研究
開発が新たな進展・展開へと繋がったか。
(2)研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献
2
状況
① 研究開発成果は実社会でどのように活用され、広く適用・定着(社会実装)されてい
るか(されていない場合、どのような条件が揃えば社会実装の可能性が出てくるか)
。
② 社会状況や環境の変化の中で、社会実装へ努力したプロセスはどうであったか。
③ 社会への実装の結果、
プロジェクト実施時及び終了後に想定した社会的課題の解決に
貢献できたか(できなかった場合、その要因は何か)。
2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1)研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの開
拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
(2)研究者・関与者の活動は、社会の幅広い人々及び関与者(ステークホルダー)にどの
ような社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会で
の活用・拡大・定着に繋がっているか。
1.3. 追跡調査対象
平成 17 年度から平成 19 年度に開始され、平成 22 年度までに研究開発が終了した「情報
と社会」研究開発領域(領域総括:土居 範久 慶應義塾大学名誉教授)研究開発プログラ
ム「ユビキタス社会のガバナンス」の研究開発プロジェクト(5 課題)を追跡調査の対象
とした。
調査対象となる研究開発プロジェクトは、表 1 の通りである。
表 1 調査対象研究開発プロジェクト(平成 17~19 年度採択 5 課題)
研究開発プロジェクト
ケータイ技術の知識不足から生じる危険
の予防策
ユビキタス社会における情報信頼メカニ
ズムの研究
企業における情報セキュリティの実効性
あるガバナンス制度のあり方
ユビキタス社会にふさわしい基礎自治体
のリスクマネジメント体制の確立
カントリードメインの脆弱性監視と対策
研究代表者(所属・役職)
玉井 克哉(東京大学 先端科学技術研究セン
ター 知的財産権大部門 教授)
曽根原 登(国立情報学研究所 情報社会相関研
究系 教授)
林 紘一郎(情報セキュリティ大学院大学 副学
長)
林 春男(京都大学 防災研究所 巨大災害研究
センター 教授)
三上 喜貴(長岡技術科学大学大学院 技術経営
研究科 教授)
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
3
1.4. 調査内容と方法
追跡調査は、以下の方法で平成 25 年 4 月~10 月の間に実施した。
1.4.1. 基礎データの把握と確認
調査対象研究開発プロジェクトの研究代表者について、現在の所属・役職・連絡先を確
認した。
また、
「研究開発実施終了報告書」
「研究開発実施成果報告書」および事後評価結果等の
内容を参考に、研究開発期間中の研究開発の目標・内容・成果を整理した。
1.4.2. 研究代表者への書面調査票の作成
研究開発プロジェクト別に、
「研究開発実施終了報告書」
「研究開発実施成果報告書」お
よび事後評価結果等を基に、研究開発期間終了後の研究の継続性・関連性を推察し、研究
の継続・発展状況と研究成果が及ぼした効果・効用・波及効果の内容について、研究代表
者への書面による調査を行う上での調査項目を整理し、
「書面調査票」を作成した。
1.4.3. 研究代表者等への書面調査の実施
研究開発プロジェクトにおいては専門分野や所属機関も異なる複数の研究者・関与者が
参画した研究開発体制により研究開発が進められたが、追跡調査では研究開発プロジェク
ト全体としての発展状況を追う必要がある。そこで、まず研究開発プロジェクト全体を最
も俯瞰的に見られる立場である当時の研究代表者に対して、前項において作成した記述式
の書面調査票を送付し、研究開発期間終了以降の展開状況、社会・経済的な効果・効用や
波及効果等についての回答を依頼した。
また、回答内容についてさらに詳細な情報や根拠となる資料等を必要と判断した場合に
は、研究代表者への往訪ヒアリング等による追加質問調査や追加調査を実施した。
なお、センターの追跡調査・追跡評価の趣旨をふまえて研究開発プログラム「ユビキタ
ス社会のガバナンス」についてご意見や、社会技術研究開発センターの事業及び事業の運
営の改善に関する意見や提案等を記載する項目を書面調査票に設け、回答を依頼した。
1.4.4. 主要な参加研究者の現在の活動状況の整理
主要な参加研究者については、公開情報を基に現在の活動状況について整理をおこなっ
た。調査項目は、
(1)調査時点の研究活動内容、(2)専門分野、
(3)発表論文、(4)講演・
口頭発表等、
(5)発行書籍、
(6)競争的研究資金等による研究実施状況、とした。調査に
あたっては、所属機関等のウェブサイトの他、表 2 の方法を用いてデータ検索を行った。
検索の範囲はプロジェクト終了後から検索時点(平成 25 年 9 月)までとした。
4
表 2 成果データの検索方法
表 2
検索データ
英文
発表論文
和文
英文発表論文の被引用件数
書籍
特許
獲得グラント
プレス報道
受賞





















検索に使用したツール
J-Global(研究者データベース)
Web of Science(Thomson Scientific)
Google Scholar
検索対象者のホームページ
J-Global(研究者データベース)
論文情報ナビゲータ Cinii(国立情報学研究所)
検索対象者のホームページ
J-Global(研究者データベース)
Web of Science(Thomson Scientific)
J-Global(研究者データベース)
Webcat Plus(国立情報学研究所)
J-Global(研究者データベース)
特許電子図書館(特許庁)
European Patent Office(欧州特許庁)
科学研究費補助金データベース(国立情報学研究所)
科学技術振興調整費データベース(科学技術振興機構)
厚生労働科学研究成果データベース(厚生労働省)
戦略的情報通信研究開発推進制度(総務省)、NEDO プ
ロジェクト等の事業
日経テレコン 21(日本経済新聞)
検索対象研究者のホームページ
プレス報道検索結果
1.4.5. 追跡調査報告書の作成
以上をもとに追跡調査報告書をとりまとめた。とりまとめに際しては、研究代表者への
内容確認を行った。
1.4.6. 研究代表者による追跡調査報告書内容の確認
追跡調査報告書のとりまとめ後、内容に関し研究代表者への事実誤認及び非公開事項の
有無の確認を行い、適宜報告書の修正等を行った。
5
6
2. 研究開発領域・研究開発プログラムの概要、評価の経緯
7
2.1. 「情報と社会」研究開発領域の概要・目的 1
情報システムに関連する社会的リスクを解明するとともに、その最小化を目的として以
下の研究を推進する。
研究開発プログラムでは、今後広く社会に展開すると考えられる情報技術のユビキタス
化に関し、
「ユビキタス社会」の「ガバナンス」に係る研究を推進し、法制度、ガイドライ
ン、実装方策等の提案を行う。
計画型研究開発では、
既に社会の重要インフラ等に適用されている情報システムに関し、
想定される脆弱性の解明と解決に係る研究を推進し、リスク対策等の提言を行う。
2.2. 研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」の概要 2
「ユビキタス社会」の到来によって、より創造的で生産的な社会が実現され私達の生活
と社会経済活動の一段の発展が期待されるとともに、情報セキュリティの確保やプライバ
シーの保護などの重要性が問われている。すなわち利便性を優先することに起因する社会
的な脆弱性が心配される。
「ユビキタス社会」の特徴として、
「ユビキタス社会」を支える
技術について、研究開発と社会展開がオーバーラップすることから、最先端の技術が短期
的に社会に次々と導入され、実証と実用が混在しながら展開することが予想される。この
ような特徴により、
従来の社会制度との整合性が十分に行われていないことや、あるいは、
科学技術の発展に社会科学や法制度が追従し切れていないことが問題として露呈してきて
いるといえる。
そこで、
「情報と社会」研究開発領域では「ユビキタス社会」で必要とされる「ガバナン
ス」
はいかにあるべきかを主題として取り上げ、
予測される悪や悲劇の芽を摘み取るため、
あるいは予測されるよい点をよりよく進展させるための手段について研究する。その際、
科学技術だけでなく人文・社会科学などの知見も統合した俯瞰的な視点をもって問題解決
のための研究を行うものとする。
なお、
「ユビキタス社会」としては、
「コンピュータ利用のユビキタス」の視点に限定され
ることなく、人類の持つ情報のすべてが情報システムの上にユビキタスに拡散する状況、情
報システムが人をユビキタスに同定する状況、情報システムが実世界とがユビキタスに結合
する状況を含めて、考え得るすべてがユビキタスになった社会を想定することとする。
1
2
(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センター「情報と社会」研究開発領域ウェブサイト
(http://www.ristex.jp/examin/infosociety/index.html)より抜粋
(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センター「情報と社会」研究開発領域ウェブサイト内、研究開
発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」ウェブページ
(http://www.ristex.jp/result/infosociety/governance/index.html)より抜粋
8
2.3. 「情報と社会」研究開発領域 研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」
に関する評価の経緯について
2.3.1. 中間評価
社会技術研究開発センターの評価委員会は、科学技術振興機構の「社会技術研究開発事
業に係る課題評価の方法等に関する達」
(平成 20 年達第 27 号)に基づき、
「情報と社会」
研究開発領域(領域総括:土居 範久 慶應義塾大学名誉教授)
、同領域研究開発プログラム
「ユビキタス社会のガバナンス」の個別研究開発プロジェクト及び同じプログラム全体の
中間評価を平成 19 年度に実施した(図 1 参照)
。
中間評価結果については、それぞれ下記の社会技術研究開発センター評価委員会による
「中間評価報告書」として取りまとめ、社会技術研究開発センターのウェブサイトを通じ
。
て公開している(http://www.ristex.jp/archives/mid/index.html)
以下、下記の報告書を「中間評価報告書」という。
・
「情報と社会」研究開発領域、同領域研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナン
ス」中間評価、同プログラム平成 17 年度採択研究開発プロジェクト事後評価報告書(平
成 21 年 11 月 9 日)
2.3.2. 事後評価
社会技術研究開発センター評価委員会は、科学技術振興機構の「社会技術研究開発事業
に係る課題評価の方法等に関する達」(平成 20 年達第 27 号 及び 平成 22 年達第 105 号)
に基づき、
「情報と社会」研究開発領域(領域総括:土居 範久 慶應義塾大学名誉教授)の
研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」平成 17 年度採択研究開発プロジェク
ト(2 課題)の事後評価、平成 18 年度採択研究開発プロジェクト(2 課題)の事後評価、
平成 19 年度採択研究開発プロジェクト(1 課題)の事後評価及び研究開発プログラム「ユ
ビキタス社会のガバナンス」の事後評価を実施してきた(図 1 参照)
。
事後評価結果については、それぞれ下記の社会技術研究開発センター評価委員会による
「事後評価報告書」として取りまとめ、社会技術研究開発センターのウェブサイトを通じ
。
て公開している(http://www.ristex.jp/archives/final/index.html)
以下、下記の報告書を「事後評価報告書」という。
・
「情報と社会」研究開発領域 研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」中間
評価、同プログラム平成 17 年度採択研究開発プロジェクト 事後評価報告書(平成 21
年 11 月 9 日)
・
「情報と社会」研究開発領域 研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」同プ
ログラム平成 18 年度採択研究開発プロジェクト 事後評価報告書(平成 22 年 5 月 25 日)
・
「情報と社会」研究開発領域、同領域研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」
9
及び同プログラム平成 19 年度採択研究開発プロジェクト 事後評価報告書(平成 23 年 3
月 31 日)
2.3.3. 追跡調査・追跡評価
追跡調査・追跡評価は、研究開発終了後一定期間を経た後、研究開発成果の発展状況や
活用状況、参加研究者の活動状況等について、研究開発プロジェクトの追跡調査を行い、
追跡調査結果を基に評価を行うこととしている。
研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」においては、平成 17 年度から平成
19 年度に採択され平成 22 年度までに終了した研究開発プロジェクト(5 課題)について、
平成 25 年度に研究開発プロジェクト終了後約 3 年が経過したことを契機に追跡調査・評価
を実施した。
(年度)
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
「情報と社会」
研究開発領域
←研究開発実施期間→
研究開発プログラ
←研究開発実施期間→
H22
H23
H24
H25
ム「ユビキタス社
会のガバナンス」
平成 17 年度採択
プロジェクト
平成 18 年度採択
プロジェクト
平成 19 年度採択
プロジェクト
事後評価
追跡調査
平成 25 年度実施
平成 21 年 11 月
事後評価
平成 22 年 5 月
事後評価
平成 23 年 3 月
計画型※
追跡評価
平成 25 年度実施
← 研究開発実施期間 →
(平成 15 年度~平成 20 年度)
中間評価
事後評価
追跡評価
平成 18 年 3 月
平成 20 年 6 月
平成 24 年 3 月
※計画型…計画型開発研究「高度情報社会の脆弱性の解明と解決」
図 1 「情報と社会」研究開発領域に関する研究開発実施期間と評価実施時期
10
3. 調査結果の概要
11
12
3.1. ケータイ技術の知識不足から生じる危険の予防策
(研究代表者:玉井克哉)
13
3.1.1. 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「情報と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」
研究開発プロジェクト名
ケータイ技術の知識不足から生じる危険の予防策
研究代表者(現所属)
玉井 克哉(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
研究実施期間
平成 18 年 8 月~平成 21 年 3 月(2006 年 8 月~2009 年 3 月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.1.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
本プロジェクトは、わが国で急速に普及し、かつさまざまな機能の複合した携帯情報端
末として独特の進化を遂げてきた携帯電話(以下では、単に携帯可能な通話端末と区別す
る意味で、
「ケータイ」と呼ぶ)が社会に与えるべきマイナスの影響を具体的に予測し、そ
れを未然に防止する策を案出し、それを社会に実装することを目的とする。社会実装のあ
り方としては、強制力を有する法制度としていわば「上から」行う方法と、
「草の根」のレ
ベルで「下から」行う方法の、双方を試みる。
わが国は、この約 10 年間、携帯電話がほぼ全国民に普及するとともに、メール送受信、
ウェブ・ブラウザ、デジタルカメラ、テレビ電話、GPS、動画・音楽視聴、ゲーム、さら
には電子マネーなど、多種多様な機能が一個の機器に統合されるという激動を経験した。
技術革新の成果を社会が十分に咀嚼するには明らかに短期間に過ぎるため、多くの問題が
生じている。その中で重要なものにつき対策を案出し、社会に実装することが、本プロジェ
クトの目標である。
14
3.1.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
(1)政府規制グループ/(2)権利義務法制グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
ユビキタス社会で生じる
東京大学先端科学技術研究
法的問題の検討
玉井 克哉
センター 教授
国に対する政策提言
新規技術に関する知識不
足により社会で生じる法
的問題の検討/国・企業
に対する政策提言、およ
び社会実装の検討、ワー
クショップ開催/新規技
東京大学先端科学技術研究 術に関する知識不足によ
西村 由希子
り社会で生じる法的問題
センター 助教
の検討(運用面)/上記
問題防止対策法及び啓蒙
策に関する新規政策の提
案、海外動向調査、国・
企業に対する政策提言、
および社会実装の検討
新規技術に関する知識不
足により社会で生じる法的
鈴木 雄一
東京理科大学 教授
問題の検討
(3)実態調査・知識向上グループ
氏名
期間中の所属・役職
西村 由希子
東京大学先端科学技術研究
センター 助教
西村 邦裕
特定非営利活動法人 知
的財産研究推進機構 プ
ロジェクト・メンバー
杉村 武昭
特定非営利活動法人 知
的財産研究推進機構 プ
ロジェクト・メンバー
担当
新規技術に関する知識不
足により社会で生じる法
的問題の検討/国・企業
に対する政策提言、およ
び社会実装の検討、ワー
クショップ開催/新規技
術に関する知識不足によ
り社会で生じる法的問題
の検討(運用面)/上記
問題防止対策法及び啓蒙
策に関する新規政策の提
案、海外動向調査、国・
企業に対する政策提言、
および社会実装の検討
研究者とユーザの意識
ギャップに関する調
査、企業における社会
実装の検討
研究者とユーザの意識
ギャップに関する調
査、将来起こりうる不
正利用の予測と解決方
法の検討
15
参加期間
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 3 月
参加期間
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
岩崎 匡寿
特定非営利活動法人 知
的財産研究推進機構 プ
ロジェクト・メンバー
企業における社会実装
の検討、海外動向調査、 平成 18 年 8 月~
ユ ー ザ に 対 す る 社 会 実 平成 21 年 3 月
装の検討
及川 博道
特定非営利活動法人 知
的財産研究推進機構 プ
ロジェクト・メンバー
地域ユーザに対する社
会実装の検討
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
特定非営利活動法人 知
的財産研究推進機構 プ
ロジェクト・メンバー
先端ユーザに対する社
会実装の検討、ワーク
ショップ開催、将来起
こりうる不正利用の予
測と解決方法の検討
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
伊藤卓朗
米川雄基
中川義通
特定非営利活動法人
的財産研究推進機構
ロジェクト・メンバー
特定非営利活動法人
的財産研究推進機構
ロジェクト・メンバー
知
プ
知
プ
平成 18 年 8 月~
平成 20 年 3 月
地域ユーザに対する社
会実装の検討
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
3.1.1.3. 研究開発の内容
「近未来予測」
「政府規制」
「個人間の権利義務」
「国際動向」
「ケータイ知識向上を目的
とする社会実装」の 5 つのサブ・プロジェクトに分けて遂行した。
(1) 近未来予測サブ・プロジェクト(ケータイの変貌)
近未来において予測されるケータイの将来像につき、フィージビリティ・スタディ(準備
調査)の成果を踏まえて、資産化、パスポート化、多重世界へのドア化の 3 方向に整理し、
21 項目の予測事項を立て、その成否を検証した。
(2) 政府規制に関するサブ・プロジェクト(有害サイト規制)
有害サイト規制について現時点でどのような手法が適切かの検討を行い、さまざまな
チャネルを通じて検討成果を提言し、社会実装を図るとともに、そのための社会的検討の
場(フォーラム)を形成した。また近未来における問題の発生を未然に防止するための必
要な施策を具体的に案出し、その社会実装に着手した。
(3) 個人間の権利義務関係に関するサブ・プロジェクト(次世代著作権法制)
2008 年 3 月に民間団体が掲げた「ネット法」構想に対し、プロジェクトとしての態度を明
確化するとともに、近未来の技術動向を見据えた適切な立法を実現するよう、構想を練っ
た。
(4) 国際動向調査サブ・プロジェクト
フィンランド、エストニア、イギリス、アメリカ、韓国に赴き、ユビキタス社会におけ
る各国における現状(法制度・市場)および近未来の課題、RMT(Real Money Trading)等
についてヒアリング調査を実施した。
16
(5) 日本社会における実態調査とケータイ知識向上を目的とした社会実装に関わるサ
ブ・プロジェクト
札幌、仙台といった大都市、青森、弘前、八戸、高崎など地方中核都市、及び農漁村で
ある宮城県南三陸町をのべ 22 回にわたって訪問し、現地の自治体ないしは大学など公的機
関との連携の下に、「定点観測」的な調査を行った。調査結果に対して、1)携帯電話ユーザ
を対象としたスキルレベルの分析、2)携帯電話利用ユーザ分析(年代別・性別調査)
、3)ケー
タイ関連知識移転講習会プログラムの実施を行い、学術的側面から社会実装に至るまで検
討した。
3.1.1.4. 研究開発の成果
有害サイト接続規制や著作権法制の正しい方向性を提示するとともに、ケータイ利用者に
関する講習会を各地で実施しデジタルデバイド減少方法を導いた
① 近未来予測サブ・プロジェクト(ケータイの変貌)

プロジェクト終了時に 21 項目の予測事項中、17 項目がほぼ的中した。

ケータイの近将来像に関して、小型ゲーム機、電子辞書、個人情報端末(PDA)など
との境界線がますます不明確になる一方、通信機能に関しては公衆電気通信回線を介
した通話機能が必須のものではなくなるとの見方を示し、種々の個人用端末が現在の
ケータイと同様の機能を持って社会生活に登場するという現象(ケータイの変貌)を
提示した。
② 政府規制に関するサブ・プロジェクト(有害サイト規制)

有害サイトへの接続規制に対し、6 項目の規定を提言し、2008 年 6 月には、これら 6
項目にほぼ沿った法案が両議院で可決され、法律となった。
③ 個人間の権利義務関係に関するサブ・プロジェクト(次世代著作権法制)

「ネット法」構想に対し、
不適切なものを提示し、
コンテンツ学会等のオープンなフォー
ラムを通じて議論を深め、3 項目の提言を実施。「ネットワーク流通と著作権制度協議
会」における「コンテンツの流通促進方策に関する分科会」および「権利制限の一般
規定に関する分科会」の報告書内容とほぼ一致するものとなった。
④ 国際動向調査サブ・プロジェクト

ケータイに相当するパーソナルな機器が諸外国では多種多様である知見を得た。

エストニアでは「パスポート化」の進化形態、フィンランドで国民のリテラシーの高
さから有害サイト規制へのヒント、英国では基盤的レベルでのスキル向上の重要性、
米国・韓国では RMT に関する知見が得られた。
17
⑤ 日本社会における実態調査とケータイ知識向上を目的とした社会実装に関わるサブ・
プロジェクト

札幌、仙台といった大都市、青森、弘前、八戸、高崎など地方中核都市、及び農漁村
である宮城県南三陸町へ延 22 回訪問した「定点観測」的な調査のデータ分析により、
携
帯電話ユーザを「低利用型」
「コミュニケーション型」
「ウェブ利用型」
「先進機能利用
型」の 4 つの類型化に成功した。

従来(事業者、地域団体および NPO、自治体が展開する講習会)とは異なる「地域内
自立型」かつ「コンテンツ提供型」の一般向けの講習会を立案・開催し、そこで得ら
れたノウハウをすべてウェブ上で公開した。

一般向け講習とは別に、次世代の指導者を養成するための講習を別途 12 回開催し、資
格認定を行った。
3.1.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
本プロジェクトでは、当初研究開発目標の達成、技術的・社会的貢献、成果の社会にお
ける活用・展開という視点を中心に総合的に判断して、一定の成果が得られたと評価する。
本プロジェクトでは、ケータイ(携帯電話が高機能化した状態)の利用に関する法制度
の整備とユーザの知識不足による問題への対処を目標に研究開発を進め、結果としてひと
つは有害サイト接続規制や著作権法制の正しい方向性という観点から不適切な動きに対し
て指導的に是正し具体的に立法に反映させたこと、もうひとつはケータイ利用に関する講
習会を各地方で実施しデジタルデバイドを減少させる方法を導いたことが主たる成果とし
て得られており、ユビキタス社会のガバナンス構築に一定の貢献があったと考える。
有害情報の青少年保護に関する政府規制の動き、および著作権の扱いについて従来の合
意を変えようとするネット法提案の動き、に対して反論し不用意な立法化を留めたことに
ついては、本プロジェクトの期間と時期を同じくした国内での法制化の動きに対応したも
のであり、当初定めた研究開発目標として明記された事項ではなく、本プロジェクトの成
果としての提言が実効的にどの程度影響を与えたか、といった点に関しては必ずしも明確
ではないが、少なくとも立法側の結果は本プロジェクトによる提言の趣旨にほぼ一致して
いることから、ここでは社会的にプラス方向に一定の影響を与えたという意味で、その貢
献を評価することとする。
18
ケータイ講習会については、社会学的方法に立脚したケータイユーザの類型化、ケータ
イ弱者への啓発と知識普及の方法論確立、マニュアル策定、それらの公開、などの「草の
根」的な努力による貢献は評価に値し、また、講習会の前提として実施された利用実態調
査の結果は今後の貴重なデータとなる可能性を持つ。ただし、講習会を実施した結果の定
量的効果測定および危険防止に与えた効果に対する考察、および近年の基本的機能に用途
を限定した携帯電話など技術の進展に対する考慮が不十分であり、今後留意されることが
望まれる。
全体として、社会においてニーズの大きな課題であり、成果をウェブや論文、書籍出版
等により広く情報発信するとともに、国民全体が正しい IT リテラシーを持つために必要な
施策を我が国の IT 政策に対する提言として出していくことが強く望まれる。
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトでは、研究開発目標はある程度達成されたと評価する。
法律が技術の後追いをするという一般的傾向があることから、技術の将来予測を行い、
その予測にもとづいて危険性もあわせて予想し、それを防止する法システムを実装すると
いうアプローチは十分に意義があり、すぐれた着眼と言える。また、「草の根」レベルでの
方策(結果的には講習会の実施)を目標に含めたことについては、地方レベルでの危険予
防策の普及という点で効果的と評価される。
ただし、解決すべき問題(危険性)と目標あるいは目標相互間、目標と実施内容の関係
は必ずしも明らかとは言いがたく、説明不足であることは否定できない。しかしながら、
本プロジェクトはほぼ計画通りに進捗し、有害サイト接続規制、著作権法制、ケータイの
社会的意義・効果の調査、ケータイ弱者向け啓発と知識普及の各面で目標はある程度達成
されたと認められる。ケータイ技術とその利用方法に関する近未来予測およびユーザの利
用動向調査に関しても一定の成果を収め、特に習熟度調査においてケータイの知識がある
かどうか自己評価を問うのではなく、アンケート方式による利用実態調査によって習熟度
等を推測する方法を採ったのは有効であったと考えられる。
なお、携帯電話のテクノロジーとその進化に関し、特に近い将来、第 3.9 世代携帯、第 4
世代携帯の普及がもたらす社会や人々の行動に与える影響に関する考察が不足していると
いう指摘がある。
(3) 技術的貢献
本プロジェクトはユビキタス社会のガバナンスに有用な技術として一定の貢献があった
と評価する。
19
本プロジェクトは、技術自体の伸長を図るというよりケータイ技術の知識不足から生じ
るリスクへの対策の検討であることから、直接技術自体への貢献ということは認められな
いが、技術の安全な利用に関する法制度設計、知識の普及・啓発に対する間接的な貢献が
なされていると言える。昨今この分野においては技術と法律、経済的効用を切り離して考
えることはできず、その意味では、技術的な進化の方向に対する示唆とグローバル環境に
おける整合性を打ち出した本プロジェクトの貢献は、技術的視点からも有用であると考え
る。なお、本プロジェクトの中で行われた近未来予測は、ケータイの近未来像を明らかに
することによりプロジェクト内で法規制の妥当性の検証等に効果を発揮するものとして実
施された。ただし、その後ケータイおよびその活用状況が進展したことにより、研究期間
終了時では過去のものとなり今後の予測に貢献するものではない。
ケータイ利用については、日本は海外に対し数年先んじていることから、先進的かつ独
自の展開を見せており、世界の範たることが期待される。本プロジェクトの提案(特に法
規制)では、3 年毎の見直しや教育プログラムの提案等が行われているなど、今後のグロー
バル情報環境のなかで妥当なものであり、適正な判断に基づき方向性を指し示すものであ
ると言える。また、技術やサービスの新陳代謝が著しいケータイやインターネットに関し
ては、ある時点でのサービスの類型によって法規制を行うことはむしろ新しい脱法的な
サービスの登場を促進し、法規制を無意味にしてしまう蓋然性が高い、という本プロジェ
クトによる指摘は重要である。
(4) 社会的貢献
本プロジェクトで得られた成果は、ユビキタス社会のガバナンスの構築に一定の貢献が
あったと評価する。
法制度に関する研究については、予ねてから論点になって問題について、本プロジェク
トの研究開発遂行と同時期に法制化の動きが顕著となった背景を受け、有害情報の青少年
保護に関する政府規制に対する働きかけ、および「ネット法」提案への反論を行ったこと
で、ガバナンス構築に大きく貢献した可能性がある。前者の有害サイト接続規制において
は、最終的な法律への付帯決議に対して本プロジェクトからの提言がどれだけ実態として
影響を与えたかは必ずしも明確ではないものの、結果として付帯決議の重要部分が提言と
一致していることから、不適切なフィルタリング行為の可能性を持つ規制を留めたことと
して本プロジェクトの一定の影響を認めることができる。また後者の「ネット法」につい
ては、一定の権限を有する主体ではない立法であることから、どれだけ社会的に意義があ
るかは判断が難しいが、著作権法を弱めることにもなる流通事業者への権限集中化の方向
に対し、それを是正する形で影響を与えたと言うことができる。これらはいずれも当初目
20
標に具体的に明示された事項ではないが、逆にこの分野において技術進化はもとより社会
環境は年々劇的に変化していることを考慮すれば、昨今の法規制への動きに迅速に対応で
きたことは、高く評価するに値する。またその過程において、文化の進展に対して大きく
影響すると思われる問題につき社会的にオープンな場で法学者が討論を行ったことも、今
後の政策・世論形成に対して一定の影響を有したと考えられる。
ケータイの利用方法については、多様な利用層対象の教育普及方策を開発し、実際に地
方講習等を多数実施しており、それによりケータイ対応の教育が促進され、デジタルデバ
イドを減少させる観点から社会に貢献したと評価できる。
本プロジェクトで得られた知見、
すなわち、ある時点における一定のサービス類型によっ
てサービスの規制を行うべきではないこと、現行法が十分に活用できるにもかかわらず新
たな抜本的立法を求めることには大きな危険性が伴うこと、などは今後ユビキタス社会の
法システム実装においては重要な基礎として生きていくと考えられる。さらに、どのよう
な形で安全対策を導入するかについても、本報告を基に更に議論が深まることが期待され
る。また、ケータイ利用に関する教育については、教育キットのより効果的な活用により、
教育実践がさらに進むことも期待できる。なお、副次的貢献として、ネット利用に関して
先進国等の調査を行っているが、この内容がまとめられて公表されることにより、今後の
ユビキタス社会の課題に関し関係者の共通認識が形成されることに寄与することが期待さ
れる。すでに公開されている講習会資料も副次的な成果として認められるが、一般市民の
啓発に貢献するためには参照を容易にするなど実務レベルの改善が求められる。
国際的な視点では、ケータイ利用において日本自体が他国より数年進んだ技術実装、市
場経験を持つことから便益、課題認識ともに先進的であることは事実であるが、インター
ネット関連の法規制については海外においても様々な取組みがなされている状況を勘案す
れば、本プロジェクトの社会的貢献は、国際的水準に比し同等もしくは課題によっては上
回るレベルと考えられる。一方、高齢者や児童に対する利用やセキュリティに関する指導
は海外では学校や家庭レベルでの教育が普及していることから、逆にそれらを参考として
取り組むことも有益と考えられる。
(5) 成果の活用・展開・情報発信
本プロジェクトの研究開発成果については、一通り活用・展開・情報発信がなされてお
り、その取組みは経過・努力の観点も含めある程度有効と評価する。
ケータイ講習会が比較的頻繁に開かれてきたことは、ひとつの社会的展開として認める
ことができ、特に草の根レベルの実践を促す趣旨で地方において実施された講習会が参加
21
者に対して効果的であったことも考慮して、社会還元は十分になされてきていると考える。
また、研究代表者が研究会活動や社会的提言を通じて、社会への活用・展開を図ってきて
いる点は、その経過、努力ともに適切と考えられる。
必要な政策的措置として、有害情報に関する法規制については、民間による有害サイト
判断基準についての情報公開と、それに基づく未成年者向けの保護者による制限(ペアレ
ンタルコントロール)に必要な仕組みの構築、および、未成年者を守るために関係組織や
関係者が意思疎通を図る場を様々な形で実現する施策が必要と考える。また、ケータイ講
習会に関しては、今後継続的に実施されることが望ましく、今後の恒常的な実施主体と資
金的支援方法を明らかにすることが必要である。その上で、ユーザニーズの十分な調査を
踏まえた多様かつ効果的な教育実践・技術知識の普及などを組織的に行う施策の策定、お
よび専門のトレーナによるトレーニングプログラム等の立案・実施についての検討が必要
と考える。また、一般向け講習会の実施にあたっては、同種の講習会が通信事業者はじめ
各種組織によって実施されていることから、メリットを生む形でのそれらとの連携につい
ても検討課題と考える。
今後は、従来の研究アプローチにおいて不十分であった定量化可能な指標形成を努力す
ることで説得性を高め、行政、企業、国民などによる合理的な検討が促進されるよう研究・
実証を行うべきと考える。
情報発信の関係では、サイトの再構築等により研究開発成果を適切に提示しかつ参照を
容易にすることが望まれる。例えば法的課題については、実際の法律条文と研究開発成果
から得られたあるべき姿とのギャップや海外の法制度との比較情報などの提示、
また、
ケー
タイ講習会については、調査データの提示、各自治体での開催記録情報へのリンク、住民
の評価などの情報開示、講習会資料ダウンロードの容易化、などが望まれる。
(6) 費用対効果比
本プロジェクトに投入した研究開発費と予想される社会的貢献とはほぼ見合っている
と評価する。
本プロジェクトのような法学を含む人文・社会科学的研究の場合、短期的な成果のみで
評価を行えないことから判断は難しい。直接的効果は見えないものの、ケータイ講習会に
よって新しい機能を盛り込んだケータイや新サービスに対する需要が喚起される可能性や、
仮に誤った政府規制や著作権法制の実装による機会コストの損失を防いだ点まで効果とし
て考慮するならば、投入した研究開発費を上回る可能性がある。
22
(7) 実施体制と管理運営
本プロジェクトの研究開発実施体制と管理運営は、
概ね適正・妥当であったと評価する。
プロジェクトの研究開発体制、および会合や合宿の実施頻度等について大きな問題はな
く、実態調査や講習会の実施とその結果の研究開発へのフィードバック・活用は努力をう
かがうことができる。
ただし、サブテーマ相互の関係が体系的でなく各活動がどのように連携しているかが不
明確である。また、研究開発遂行上の内容チェック体制が十分といえず、研究開発遂行過
程で学会発表や論文投稿を行っているが、外部の見解を得てプロジェクトのアウトプット
をチェックするといったことを心掛けるべきであったと考える。また、ケータイ技術の普
及促進に向けて研究会・シンポジウム等の実施が計画的であったか、
その運営が適切であっ
たかについては確認が必要な状況である。
(8) 特記事項
人文学・社会科学分野での研究開発成果の社会実装に関しては、政策形成過程に直接参
加することだけでなく、世論・政策形成への影響を与えることが重要な手段であると考え
られる。本プロジェクトも同様のタイプの研究開発であるが、世論・政策形成への影響は
計測が難しく、最終的な法律案に提言が盛り込まれたという事実だけでなく(今回の場合
は、法律への付帯決議)
、その他の要素についても考慮することの必要性が考えられる。本
プロジェクトの評価には直接関係しない視点であるが、人文学・社会科学分野での研究評
価に関する問題として指摘しておく。
23
3.1.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.1.3.1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① プロジェクトは期間中に完了
2007 年 11 月時点に公表した 21 の具体的近未来予測は、本プロジェクト終了時の検証で
17 項目が的中した。また有害サイトへの接続規制として 6 項目を掲げたが、2008 年 6 月に
両議院で可決された下記「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整
備等に関する法律」(青少年インターネット環境整備法)において、ほぼその全てが盛り
込まれ、事実上、最終目標である社会実装をプロジェクト期間中に成し得たと言える。さ
らに当時発生した「ネット法」構想に対しても、是正を提言し、その内容が実現した。こ
のように本プロジェクトは、期間中に計画を消化し、かつ目的であった社会実装も実現し
たと言える。
そのため、プロジェクト終了後においては、体制を組んだ形での研究開発は行われてい
ない。特に本プロジェクトは「ケータイ」に焦点を当てての研究であったが、今日のモバ
イル端末は OS を搭載した iPhone 等のスマートフォンへと短期間でシフトしており、もは
や「ケータイ」をテーマとする研究開発では間に合わなくなっている。
ただし、研究代表者は、本プロジェクト内容とはやや離れるものの、現在も「ユビキタ
ス社会」という大きな枠組み要素について問題関心を持ち続けており、その動向について
常に把握に努めている。
「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」の概要
基本理念

青少年にインターネットを適切に利用する能力を習得させる。

フィルタリング機能の普及促進などにより青少年の有害情報の閲覧機会を最小にする。

民間の関係者が行う自主的・主体的な取り組みに対し国が支援する。
保護者の努力義務

インターネットに有害情報が多く流通していることを認識し、青少年がインターネッ
トを利用するときのルールを決めて見守る。

青少年がインターネットの有害情報による悪影響を受けないように、フィルタリング
機能を活用する。

18 歳未満の子どもに携帯電話や PHS 端末を購入・使用させる場合は、事業者にその旨
を申し出る。
インターネット事業者の義務

18 歳未満の子どもが携帯電話や PHS でインターネットを利用する場合、事業者はフィ
ルタリング機能を提供する(保護者の申し出があれば解除できる)。
24

契約件数 5 万件以上のインターネット接続事業者は、利用者の問い合わせに対し、フィ
ルタリング機能を提供したり、提供・販売するサイトを紹介したりする。

インターネット接続ができる機器を製造する事業者は、利用者がフィルタリング機能
を利用しやすいようにする。
特定サーバ管理者の努力義務

自分のウェブサイトや自社サーバから有害な情報発信があった場合、子どもが閲覧で
きないような措置を取る。

保護者などから問い合わせを受けるための窓口を整備する。
「ネット法」構想の概要
角川グループホールディングスの角川歴彦会長らが参加する「デジタル・コンテンツ法
有識者フォーラム」(代表:八田達夫政策研究大学院大学学長)からの提言概要。
資料:デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム提言時資料より
25
② ケータイ講習会における人材育成とコンテンツのウェブ発信
本プロジェクト期間中に展開したケータイ講習会で得られたデータや展開ノウハウ・
ツール等は、終了後全て、研究代表者が理事を務めるNPO法人知的財産研究推進機構(PRIP
tokyo)のサイトにアップされ、誰もが閲覧可能な環境が構築されている 3。
講習会は地域を横断する移動型の展開が重要で、プロジェクト期間中はその形式を用い
た。しかし、本プロジェクト終了後は、旅費ならびにスタッフの人件費の捻出は不可能と
なり、本プロジェクト研究者が直接関わる活動は行われていない。
しかしながら、こうした講習会は今日、地域側人材が主体となって複数地域で継続され
ている。それら講習会は、一部自治体の協力を得て大学が主体となっているケースが多く、
実行者の多くが本プロジェク
ト期間中にインストラクター
として育成した人材(当時学
生)であり、展開目的の 1 つ
であった「地域の核となる人
材を育成するプログラム」の
成果を実現している。また、
本プロジェクトで蓄積し、サ
イトにアップしたコンテンツ
は、それらの講習会はもちろ
ん、他の講習会においても利
活用されている状況にある。
プロジェクト期間中の人材育
成と誰しも利用できるツール
開発が、今日地域事情に適し
た展開を各自で主体的に実
施・発展させる要因の 1 つに
もなっている。
図 2 知的財産研究推進機構(PRIP tokyo)のホームサイト(上)と
ケータイ講習会で得られたコンテンツ・ツール等が格納されたサイト(下)
3
参考 URL:http://www.prip-tokyo.jp/ja/keitaiworkshop
26
【ケータイ講習会講師用マニュアル】
【ケータイ講習会ワークシート】
【携帯電話(ケータイ)講習会 インストラクター育成研修(レベル2) スライド資料】
【携帯電話(ケータイ)講習会 インストラクター育成研修(レベル1) スライド資料】
図 3
PRIP tokyo サイトに格納されている講習会関連ツール類
27
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
① インターネット環境変化に対し、メディアを通じて提言を展開
プロジェクト終了後、研究代表者は、携帯電話による京都大学不正入試事件(2011 年 3
月)、検索エンジンでの地位独占などにより変貌する巨大ネット企業等について、新聞、
雑誌、ウェブの各メディアでコメントを発信している。
特に、検索サービス事業者と検索連動型広告配信サービス事業者の提携話が生じた 2010
年末より、それによる影響と危険性をコメントしている。2010 年 7 月には、御厨貴東大教
授らとともに、提携反対の立場でネット上において署名活動も展開した。また、正式に提
携された 2011 年 7 月以降も、ビッグデータの活用等の問題から、各メディアを通じて将来
像とともに課題を述べている(2012/4/11 の日本経済新聞、2013/5/21 のアゴラのほか、PRIP
tokyoの「研究活動」サイト内 4などでも提示)。
今後のモバイル環境は、従来の「ケータイ」と異なり、急速に普及するタブレット端末
や iPhone、スマートフォン等の機器から見ていく必要がある。その中で、端末としてのセ
キュリティではなく、ビッグデータ活用等におけるネットビジネスとしての規制のあり方
を全世界共通的に問う必要が生まれている。特に AndroidOS を搭載した端末では、GPS 機
能を通じて行動記録も残り、無料通話サービス等では音声認識技術の高度化により通話内
容も解析され、その結果個人の生活行動や嗜好、交友関係等、全ての情報が事業者(グー
グル)に把握されることになる。研究代表者は、メディアを通じて、そうした将来におけ
る利便性と危険性、それに備えた政策のあり方を提言している。
また、PRIP tokyoを事務局として「ウェブ検索とネット社会の将来に関する国民的議論
を」 5と呼びかけている。
4
5
参考 URL:http://www.prip-tokyo.jp/ja/research-ip
参考 URL:http://pcis.webhost4life.com/
28
3.1.3.2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの開
拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
① プロジェクト・メンバーのさらなるレベルアップに寄与
学生も含め、プロジェクトに関わったメンバーは、現在社会の第一線で活躍しているも
のの、彼らは元々高い能力を有した人材であり、本プロジェクトに関わったことで、ポジ
ションアップに繋がったとは言い難い。しかしながら、若手の研究人材にとって、国政に
も関わるプロジェクトに携わったことは貴重な体験であったと言える。
② 東日本大震災の被災地における安否情報サイトの作成
本研究開発のテーマとは離れるが、2011 年の東日本大震災の際、ケータイ講習会プロジェ
クト実施地域の一つであった南三陸地域に対し、本プロジェクト実装メンバーがケータイ
(およびパソコン)から簡便に確認可能な安否情報サイトを作成し、町役場と共同で稼働
させている。ケータイからの確認を主眼としたことで、最終的に町民の約 7 割が確認でき
るサイトとなったことに対し、高い評価が得られた(個人情報掲載関係および役割を終え
たと判断し、現在は稼働していない)。
③ 青少年問題を通じ、新たな交流が生じた
青少年問題において、研究代表者が関わりを持った NPO 法人 CANVAS 理事長で、株式
会社デジタルえほん代表取締役の石戸奈々子氏とは現在も交流が続いている。
IT 分野における業界第一人者として知られる人材とは、プロジェクト開始以前から関わ
りがあったことから、本プロジェクトの結果、新たなネットワークが生まれたとは言えな
い。ただし、それら業界第一人者を通じて出会った若い人材とは、今後共同研究等の形で
関係を継続する可能性はあり得る。
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
① 立法化後、国主導で青少年のネット環境整備が進行
「青少年インターネット環境整備法」への提言において、その内容が盛り込まれたこと
は最終目標の達成であり、そのこと自体が広く社会に影響を与えたと言える。また、その
提言内容も、立法化とその後の整備進行を加速化させる要因になっていると判断される。
本プロジェクトで提言対象とし、2008 年 6 月に成立した「青少年が安全に安心してイン
ターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」は、2009 年 4 月 1 日に施行された。
29
その後、法律で、国および地方公共団体が青少年のネット利用についての施策を策定し、
実施することが求められているため、内閣府は政府の施策を策定するための有識者による
検討会「青少年のネット環境整備に関する検討会」を設置、青少年の適切なインターネッ
ト活用能力の教育および啓発の推進、フィルタリングソフトの性能向上および普及、民間
団体の取り組み支援などの検討を重ねている。同検討会では、2009 年 6 月 30 日に策定し
た基本計画に基づき、政府及び民間団体等による積極的な活動が展開され、青少年が安全
に安心してインターネットを利用するための諸施策は一定の成果を挙げている。官民によ
るフィルタリングの普及活動により、2011 年 6 月に実施された内閣府調査では、青少年の
携帯電話・PHS におけるフィルタリング利用率は、小学生で約 76%、中学生で約 70%、高
校生で約 50%となっており、2009 年 10 月調査時と比べ一定の普及が確認できた。
また、
「親子のルールづくり」などの家庭における教育・啓発活動など、民間による自主
的・主体的な取組も多面的に進められている。2008 年の小・中学校における学習指導要領
の改訂に続き、2009 年は高等学校で学習指導要領が改訂され、情報モラル教育の充実が図
られるなど、年々充実した取組が実施されるようになった。
一方で、フィルタリング利用率は、やや伸び悩み傾向にあるほか、スマートフォンを始
めとする新たな機器が出現し、青少年のインターネット利用の形態、場面も今後変化して
いくことが考えられる。そこで、今後 3 年間に重点的に取り組むべき施策を明らかにする
ため、
特に留意すべき課題として、
①スマートフォンをはじめとする新たな機器への対応、
②保護者に対する普及啓発の強化、③国、地方公共団体、民間団体の連携強化、を掲げた
2012 年 4 月に新基本計画が策定され、政府が、地方公共団体とともに、官民連携して、迅
速かつ効果的に、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための
施策を強力に推進する方向にある。
② ユーザ講習会は自治体等による独自の展開へ
本プロジェクトにおいて実施したユーザのケータイ知識向上に向けた「草の根」レベル
の講習会活動は、期間中で終了した。しかし今日では、各地域の自治体などが警察署なら
びに NPO 法人や通信キャリアなどとの連携下、継続的に啓蒙活動を進めている。
多くの自治体では、インターネット・携帯電話に関する講師派遣制度や補助教材および
冊子等を作成、家庭や学校、地域がパソコンや携帯電話等の利用について考える場を設け
ている。本プロジェクトで完了し、PRIP tokyo のサイトにアップしたデータは、そのよう
な活動の下支えとなっていると考えられる。
③ インターネット社会におけるモバイル利用の利便性と危険性を生活者に認識させた
国政への提言と、草の根的なユーザ講習会という川上と川下への同時アプローチは、短
期間で生活者への理解浸透を促し、さらにモバイル端末利用における将来的な利便性と危
険性双方を認識させる効果があったと思われる。
ただし、端末がケータイからスマートフォン等に代わる今日の環境において、研究代表
30
者等には、今後もメディアを通じ、刻々と変化するインターネット環境における将来像を
継続的に発信していく機能が求められている。
31
3.1.4. 付属資料
3.1.4.1. 主要研究者動静表
氏名
研究期間中の所属・役職
東京大学 先端科学技術研究セン
玉井 克哉
ター 教授
東京大学 先端科学技術研究セン
西村 由希子
ター 助教
鈴木 雄一
東京理科大学 教授
現在の所属・役職
東 京 大学 先端 科学 技 術研 究 セン ター
教授
東 京 大学 先端 科学 技 術研 究 セン ター
助教
防衛省 防衛大学校 人文社会科学群 公
共政策学科 教授
3.1.4.2. 研究開発プロジェクト終了後(平成 21 年 4 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
論文名
著者
掲載媒体
検索エンジン提携をめぐる独禁法上の
問題--グーグルとヤフー・ジャパンの
Harbour Pamela
提携の持つ意味を考える--グローバ
国 際 商 事 法 務
1
Jones、玉井 克哉
ル・インターネット市場における競争,
39(2), 155-164
[訳]
経済及び消費者厚生についての国内的
な視点と国際的な視点
年月
2011
(2) 発表・講演
シンポジウム・セミナー名
(会場)
情報知財研究会シンポジウム
「個人データの活用とプライバ
日本のデータ活用ビジネ
シー~ビジネスと法律の狭間で
1
玉井克哉
スの条件
~」(ステーションコンファレン
ス東京 605)
玉井克哉、川 一橋大学経済学研究会 2012 年度
電子書籍の普及による影
瀬真、鈴木雄 シンポジウム(一橋大学国立
2
響と今後の動向
一
キャンパス東 2 号館 2201 教室)
開放講座「東京オトナ大学」「
( 東
オープンソース・ビジネス
3
玉井克哉
京ステーションコンファレン
の光と影
ス」サピアタワー)
発表・講演名
講演者
(3) 書籍・報告書等
なし
32
年月
2013.6.3
2012.11.3
2011.5.8
(4) 新聞・テレビ等
1
内容
【Web】
「ビッグデータ」をめぐる、ビジネスとプライバシーの接点」
:ア
ゴラ
年月
2013.5.21
2
【Web】
「【短信】欧州でのグーグルの独禁法違反事件が近く決着か」
:PRIP
tokyo サイト内
3
【Web】
「グーグルのプライバシー・ポリシーをめぐる欧州の動き─グロー 2012.10.22・
バル化の中でのプライバシー保護法制をどう考えるか」
:アゴラ
23
4
【雑誌】
「特集-グーグル、アマゾンだけじゃない「ビッグデータ」が切
り開く 売り方革命●2 章-グーグル事件の波紋 巨人が示した“教訓”」
: 2012.05.17
日経ビジネス(一部コメント)
5
【新聞】
「グーグルの個人情報指針を考える」
:日本経済新聞
2012.4.11
6
【Web】
「「カンニングを刑事事件したのはおかしい」なんて的はずれ!
京大入試業務妨害事件「犯人逮捕」は間違っていない」
:現代ビジネス(経
済の死角)
2011.3.7
7
【新聞】
「ネット検索、提携の是非」
(経済教室):日本経済新聞
(5) 特許
なし
(6) 獲得グラント
なし
(7) その他
なし
33
2013.4.12
2010.12.24
34
3.2. ユビキタス社会における情報信頼メカニズムの研究
(研究代表者:曽根原 登)
35
3.2.1. 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「情報と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」
研究開発プロジェクト名
ユビキタス社会における情報信頼メカニズムの研究
研究代表者(現所属)
曽根原 登(国立情報学研究所・総合研究大学院大学 研究主
幹・研究科長 教授)
研究実施期間
平成 18 年 8 月~平成 21 年 3 月(2006 年 8 月~2009 年 3 月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.2.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
電子商取引(e-Commerce、EC)を取り上げ、利用者の「情報信頼性の検算力」の分析、
情報信頼メカニズムの解明、それに基づく Web 信頼性評価のための IdTM(Identity Trust
Management)システムの研究開発、技術検証に基づく電子商取引法制度への提言、EC サ
イトの「危うさの推定(Risk Rating)
」サービスの社会実装について研究開発する。
3.2.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
氏名
期間中の所属・役職
国立情報学研究所
情報社会相関研究系 教授
国立情報学研究所
連携部門 客員教授
国立情報学研究所
連携部門 客員助教授
国立情報学研究所
情報社会相関研究系 助教授
国立情報学研究所
情報社会相関研究系 助手
担当
情報信頼性・信憑性評価
技術の研究
渡辺 光一
関東学院大学 助教授
信頼・信憑モデルの研究
奥野 正寛
東京大学 教授
信頼・信憑モデルの研究
酒井 善則
東京工業大学 教授
山岡 克式
東京工業大学 助教授
安田 浩
東京大学 教授
青木 輝政
東京大学 講師
廣瀬 弥生
国立情報学研究所 教授
曽根原 登
渡辺 克也
野口 祐子
岡田 仁志
上田 昌史
信頼・信憑モデルの研究
信頼・信憑モデルの研究
信頼・信憑モデルの研究
信頼・信憑モデルの研究
情報信頼性・信憑性評価
技術の研究
情報信頼性・信憑性評価
技術の研究
情報信頼性・信憑性評価
技術の研究
情報信頼性・信憑性評価
技術の研究
社会実装方式の研究
36
参加期間
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 18 年 8 月
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 19 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 19 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 19 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 19 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 19 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 19 年 3 月
平成 18 年 8 月~
平成 21 年 3 月
3.2.1.3. 研究開発の内容
(1) Web サイトの信頼性評価の手がかり分析
詐欺や悪徳商法等のネット犯罪が増加している現状を考慮し、より現実に即した形で利
用者が行う信頼性評価メカニズムを検討した。
主な結果として、①商品保証や商品説明等、
商品購入に関連する項目、②会社概要、住所、電話番号等現実世界での存在を示す情報、
が商取引の相手として信用できるかを判断する要素として明らかになった。
(2) Web 情報の第三者情報に基づく評価
電子商取引の情報発信主体である企業や組織の公共的活動に着目し、より公共的な組織
の Web サイトで公開される情報から、その組織の名称がどのように「言及」されているか
を検証した結果、①公共的なドメインを取得している Web サイトで「言及」された割合は
246 社中 91.9%と比較的高い、②公共的ドメインの中で言及されている内容の中にも、信
頼性評価に直結するものとあまり意味がないものもあることがわかり、このような内容の
違いを元に、より正確に信頼性を判断することが可能となることを明らかにした。
(3) Web ハイパーリンク構造解析に基づく信頼性評価
対象サイトへのハイパーリンク構造を解析することにより、信頼性を評価することがで
きるものと考え、信頼伝搬法を検討した。信頼性の高さ、信頼性のないことまたは不健全
であることが分っているサイトからハイパーリンクでつながる周辺のサイトの信頼性、ま
たは不健全さを評価する方法を提案した。その中心は信頼性、または不健全さはリンクを
通じて伝搬するという考えであり、伝搬の方法として減衰法と重みつき拡散法を検討した。
さらに減衰法についてはリンクごとに与える減衰度の求め方、重みつき拡散法については
重みの求め方について検討し、それがどのようなスコアになるか等についてその有効性を
示した。
(4) IdTM(Identity Trust Management)と情報信頼性検証支援サービスの研究開発
特商法で定められている「電話番号・ドメイン名・氏名・住所」等の ID のライフサイ
クル(連続性)が取引の安全性に及ぼす影響について明らかにし、ID 検証を用いた Web
信頼性検証支援サービスを研究開発した。すなわち URL・氏名・住所・電話番号・メール
アドレスなどの ID ライフサイクル管理によって Web サイトの信頼性評価を行う IdTM
(Identity Trust Management)技術を考案した。これにより、リテラシーの低い利用者に対
しても、“Web サイトの危うさ”の通知ができ、サイトへのアクセスや電話を用いた取引等
意思決定の支援が可能となることを検証した。
(5) Web サイトの危うさ(Risk Rating)サービスの社会実装
IdTM システムを用いて、現実世界の EC サイトのリスクファクタ(Web サイトの危うさ)
37
評価の検証実験を実施し、それをリスクスコアの形で表し提供する Risk Rating サービスを
開発した。そのサービス、システムの社会実装に向けて、通信事業者、検索事業者、与信
事業会社、ベンチャー投資会社への説明を実施し、社会実装の見通しをつけた。
(6) 技術検証からの情報制度設計への提言
情報の信頼性の確保を、技術、市場、社会規範によって実現する情報制度設計について
検討した。その社会実装の検討として、Web の信頼性に関わる電気通信事業法、特定商取
引法、古物営業法、プロバイダ責任制限法、知的財産権法(商標法、著作権法)と IdTM
技術との関係を検討した。さらに、IdTM システムを用いて現実社会での実態調査、検証
実験を実施し、違法 EC サイトの抽出、特商法への遵守性の調査を実施した。この結果、
Web の信頼性に関わるリスク評価には、EC サイトの ID 記述標準が現在の特商法に必要と
なることを明らかにした。
38
3.2.1.4. 研究開発の成果
本研究開発では、URL・氏名・住所・電話番号・メールアドレスなどの ID(Identity)の
ラ イ フ サ イ ク ル 管 理 に よ っ て EC サ イ ト の 信 頼 性 評 価 を 行 う IdTM( Identity Trust
Management)システムを研究開発した。また、現実世界の EC サイトの IdTM によるリス
クファクタ(EC サイトの危うさ)評価の検証実験を実施した。その結果としてリスク評
価を利用者に分かりやすくスコアの形で表し提供する Risk Rating サービスとして開発し
た。さらに、そのシステム、サービスの社会実装に向けて、通信事業者、検索事業者、与
信事業会社、ベンチャー投資会社への説明を実施し、実ビジネス運用に繋がる実用化の検
討を行った。
Web の信頼性を確保する仕組みは、技術と市場とともに、社会規範や法制度が連動する
ガバナンスによって解決される。そこで、Web の信頼性の確保を、技術、市場、社会規範
によって実現する情報制度設計について検討した。
Web の信頼性に関わる電気通信事業法、
特定商取引法、古物営業法、プロバイダ責任制限法、知的財産権法(商標法、著作権法)
などの法制度と IdTM 技術社会実装の関係を検討した。
さらに、研究開発した IdTM システムを用いて実社会の EC サイトの実態調査、検証実
験を実施した。具体的には、特商法遵守性の実態調査、IdTM を用いた違法 EC サイトの抽
出実験を実施した。技術からの情報制度提言という社会実装では、EC サイトの ID 記述標
準が現在の特商法に必要となることを明らかにした。
3.2.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
本プロジェクトでは、当初研究開発目標の達成、技術的・社会的貢献、成果の社会にお
ける活用・展開という視点を中心に総合的に判断して、有効性の確認が不十分および適用
範囲に限界があるという点はあるものの、一定の成果が得られたと評価する。
本プロジェクトはウェブサイトの信頼性に関するものであり、EC(電子商取引)に焦点
を当て EC サイトの信頼性評価の方法について研究するとともに、ユーザ向けに信頼性評
価情報を提供する「Web 信頼性評価システム(IdTM:Identity Trust Management)」を開発
し、実験を行ったことが主たる研究内容である。その結果、課題名「ユビキタス社会にお
ける情報信頼メカニズムの研究」からすれば EC という限定された対象ではあるがその限
りにおいて目標に沿う成果が得られひとつの基礎を築いたと言える。
今後の安全な EC の発展に向けてその信頼性を評価する、いわゆるリスクレーティング
サービスは社会的に期待が大きく、その中核となり得る IdTM システムは、消費者・ユー
ザの信頼性判断における意思決定の手段として分かりやすく、社会に貢献できると考えら
39
れる。また、EC により取引を行う上で消費者保護に一定の有効性を有する特定商取引法
の遵守を促すという副次的効果も期待できる。
ただし、今後本システムを社会に実装するにあたっては、信頼性評価の実効性・妥当性
の十分な実証、確信的な不正/詐欺等に対する限界への対処、利用が携帯電話主体に移行
する等の環境変化への対応、ID ライフサイクルを捕捉するためのデータベース構築・運用
コスト増大の抑制、などが解決すべき課題として残る。また、本システムが前提としてい
る ID 記述標準がウェブサイトへの事業者情報(個人名、電話番号等)の明記を義務付け
る特定商取引法の改定を要する課題も残っている。
今後、上述の問題を踏まえた上で、信頼性のプラス評価等の適用性の拡大、海外を含め
た外部の研究との連携にも留意し、安全なユビキタス社会の実現に貢献する信頼性評価シ
ステムとしてさらに発展させることが期待される。
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトでは、研究開発目標はある程度達成されたと評価する。
EC(電子商取引)における問題としてフィッシング/なりすましなどにより代金を騙し
取るという不正な手口などが多発している状況を踏まえ、ユーザに EC 利用時の情報の信
頼性に関する意思決定支援の手段を提供することを目標としたことは適切である。この目
標に沿い本プロジェクトでは、ユーザによるウェブの信頼性評価の手がかり、情報信頼メ
カニズムの解明、Web 信頼性評価サービス等の検討を行い、主たる成果として、実際に EC
サイトの信頼性を測定しその結果をユーザに分かり易すい形でプラウザ上に表示する
IdTM システムを開発した点、およびこのシステムを中核とするサービスの社会実装に向
け関連会社(通信事業者、検索事業者、与信事業会社、ベンチャー投資会社等)への説明
を通じ実運用の見通しを得た点、で達成が認められる。
ただし、信頼性評価の中心が公的機関によるウェブへの言及に依っていることから、こ
の信頼性評価がどの程度真の信頼性を反映しているかという視点では、評価結果の妥当性
や評価システムの客観性、正確性、実際のユーザによる信頼性評価との整合性などについ
ての検証がさらに必要な状況であり、例えば過去の問題サイトのうち今回の成果の適用に
よってどの程度解決され得るのかを示すことが望まれる。また、このシステムが前提とす
る EC サイトの ID 記述標準を特定商取引法で義務付ける提言はこれからという状況であり、
これも今後の課題として残されている。
(3) 技術的貢献
本プロジェクトは、ユビキタス社会のガバナンスに有用な技術として一定の貢献があっ
たと評価する。
従来、社会学的・心理学的に研究開発されてきた信頼・信用という問題に対して、EC
サイトの信頼性をより客観的に評価する手法を開発することを目指し、工学的なアプロー
チ、すなわち、Web の信頼性評価において計量化指標の作成などによる可視化を努力した
40
ことは評価に値する。特に、ID や関連する情報のライフサイクルやそれに準ずる情報(当
該 ID に関するユーザによる評価など)が当該サイトの危険性に関係するとの認識に基づ
き、総合的な信頼性評価を IdTM システムとして開発してユーザインタフェースを実装し、
実証実験の実施にまで至ったことは、ユビキタス社会のガバナンスに有用な技術への貢献
と考える。
ただし、国内外の先行研究や各企業の製品での信頼性評価メカニズムに比べ、範囲や有
効性においては、必ずしも先進性があるとは言い難い状況にある。先行研究の例として、
米国のスタンフォード大学により実施され 1999 年に発表されている PI(Prominence &
Interpretation)理論があり、それに対する本プロジェクトの方法論および住所・電話番号な
どの記載を義務付けるという結論の優位性は明確ではない。
なお、本プロジェクトの中で展開されたリスクレーティング論は本プロジェクトの過程
で得られた副次的成果として挙げられるが、安全度およびその推定コスト、損失の正確な
算定についてはさらに検討を加えることが課題として残されている。また、今後に向けた
副次的貢献として、電子技術・制度・教育・文化など総合的な視点から設計されるべきセ
キュリティの研究のためのフレームワーク構築に貢献し得ると考えられ、政府で行われて
いるセキュリティ研究や信頼性研究、ユビキタス研究との連携を図り、政府や自治体の政
策形成に役立つように提案を行うべきである。そのためには企業、関係行政機関に分かり
やすく研究成果とその費用対効果を情報開示していく必要がある。
(4) 社会的貢献
本プロジェクトで得られた成果は、ユビキタス社会のガバナンスの構築に一定の貢献が
あったと評価する。
ユーザである一般市民に向け EC サイトの信頼性評価の手段を提供するための研究を実
施し、実際にその機能を実装したシステムを開発したことは、この分野でのネットサービ
ス利用の安全性の視点から今後の対策の基礎を構築したものと考えることができる。この
成果が社会に実装されれば EC サイトのユーザが事件に巻き込まれる度合いを下げること
ができるとともに、例えば青少年に対するフィルタリング機能の設定においても有用な手
段として活用でき利用者保護に有効と考えられる。そのような意味から、ネット上での行
為への法制度のガバナンス、国民全体としての信頼感醸成のガバナンスに貢献し、また、
これまであまり関心の払われてこなかった Web Credibility に対して社会の意識を高めるこ
とにも貢献すると言える。国際的な視点からは、各国ともネットワーク上のサービスに対
する信頼性評価に関しては問題意識を持って取り組んでおり、本プロジェクトが目指す信
頼性評価の社会実装については、先行しているとは言えないがほぼ同等の水準に達してい
ると考えられる。
ただし、今回の成果はあくまで EC サイトを対象とするもので、現時点では EC 以外の、
例えばオークションサイトでの売買相手の信頼性確認に適用できるものではなく、今後、
ユビキタス社会における一般的な利用に供すためには本評価システムの適用範囲の拡大が
41
望まれる。また、このシステムを EC サイト向けに実用に供するに際しても現実的な問題
として、
「飛ばし携帯」など他人の電話番号や住所の偽使用に対応できない、オペレーショ
ンコストが膨大、ID 情報の表示の義務付けが個人情報流出に繋がる可能性、信頼できる大
手ショッピングモール事業者経由での購買との優劣、などの問題をなんらかの形で解決し
ていく必要がある。いずれにしても、社会的ニーズは大きく、この成果を踏まえ今後はさ
らに広い視点から、例えば他の研究開発プロジェクトとの連携、海外の研究機関との協業
など発展的に研究を進め実用に供せるものにしていくことを期待する。
また、
社会に対する副次的貢献として、違法有害情報サイトのフィルタリングに対して、
あるいは不法な銀行口座や携帯電話のような犯罪ツールのライフサイクルに対して示唆を
与えたこと、および本研究開発の提案する ID 記述標準が義務付けられれば、利用者保護
に一定の有効性を有する特定商取引法の遵守を促すという効果が期待されることが挙げら
れる。
(5) 成果の活用・展開・情報発信
本プロジェクトの研究成果については、活用・展開・情報発信が一応なされており、そ
の取組みは経過・努力の観点も含めある程度有効と評価する。
リスクレーティングサービスの実現に向け、通信事業者や関係企業への説明を実施し協
力関係の構築を図るとともに与信企業などこのサービスに関心を持つと考えられる業種に
アプローチしており、その努力は社会実装に対し極めて有効と考えられる。また、研究者・
教育者・関連業界のステークホルダーのみならず、書籍や DVD、市民講座での講演等によ
り一般に向けた情報発信を心掛けているのは評価に値し、ユビキタス社会のガバナンス確
立に関与する人たちや国民への啓発に貢献するもの考えられる。ただし、現時点ではまだ
広く周知されるには至っておらず、実際に EC サイトの信頼性を向上させることが可能か、
といった実効性の確認や成果の展開、アピールはこれからという状況であり、これらは今
後に期待される。
今後望まれる政策的措置としては、成果を有効に社会還元するためには Web 信頼性評価
システムが前提とする ID 記述標準に関する提言を策定し特定商取引法の改正を提案する
必要がある。また同システムの社会実装を実現して行くにあたっては、民間コンソーシア
ム等による実証実験を実施するなど関連企業・組織を網羅した取り組みとすることが必要
であり、リスクレーティングのための情報収集などに伴う多くの課題(セキュリティ、個
人情報保護、プライバシーなど)の徹底的抽出と、法制度・技術・運用面の各面での課題
解決に対して、関係組織が協働していく必要があると考えられる。
なお、政策的措置に並行して、一般市民に対して直接影響を与えることが重要であり、
広範なユーザに活用してもらうための措置として、リスクレーティングのソフトを例えば
オンラインで公開してユーザからの意見を集め実効性、有効性を確認することによって、
EC サイト信頼性判断のための資料作成やデータベース構築のための情報共有を図ること
42
が重要である。
(6) 費用対効果比
本プロジェクトに投入した研究開発費と予想される社会的貢献とはほぼ見合っている
と評価する。
現時点においては国内外の類似システムに対する優位性において、またユーザの視点か
ら見たユビキタス社会の信頼性向上の実効性において、卓越した成果とまでは言えず、判
断しがたい部分は残るものの、一定の成果に加え、論文や研究発表本数、研究会開催、関
連企業・組織との連携などの活動状況から判断する限り、研究開発費に対する社会還元と
してはほぼ投下した資金に見合っているものと考えられる。
(7) 実施体制と管理運営
本プロジェクトの研究実施体制と管理運営は、概ね適正・妥当であったと評価する。
主に工学的アプローチによるウェブの信頼性を追究する研究体制としては、研究者の選
定や検討会議の設定などについて十分な配慮がなされているなど、適切であったと考えら
れる。また、NPO、行政、企業、市民の声をよく聞きながら研究開発が運営されたことは
社会実装を目指すプロジェクトとしては極めて適切である。
(8) 特記事項
本プロジェクトの延長上で、IdTM システムなどを活用し、人権その他の価値に対して
配慮しつつ ID の蓄積・管理を実行する第三者機関を構築していくことは意義があると考
える。この第三者機関が十分に情報保護について信頼できるものであり、インターネット
上に実世界と結びつく個人情報を公開せず信頼・信用ができる取引相手と安全に電子商取
引ができるようになれば、多くの消費者は安心であり、今後ますます増加すると考えられ
る個人の EC サイトにもよい影響がもたらされると考える。
昨今では、ユーザによるメディアの制作(CGM)が一般化している環境を反映して、一
般のマーケティング調査ではユーザのプロファイリングを行っているのが基本であり、現
にユーザ層により指標は大きく異なるのが実態である。本プロジェクトでの信頼性評価に
おいても一様に信頼するしないを評価するのでなく、ユーザ層に応じた指標に基づく評価
を考慮することが必要と考えられる。また、ウェブサイト自体の信頼性と、そのサイトに
書かれている情報の信頼性は、別の次元のものであり、その区別にも配慮すべきである。
本評価システムによる信頼性評価の方法は、実績を持つサイトに対する信頼性評価に対
しては有効と言えるが、実績のないベンチャービジネス等のサイトに対する信頼性評価に
おいて同程度に正しい結果が出せるかについては不明である。今後は、ベンチャービジネ
スに対する支援や起業家への参考となるような指標としての役割も重要であり、その視点
での検討が必要と考える。すなわち、信頼できないサイトを摘出するというネガティブな
評価に尽きるのではなく、多様な評価を可能とし、信頼性を高めるためにビジネスを改善
43
して育成するというポジティブな視点を含めて、さらに「信頼」の内容や評価の指標を検
討すべきである。
主要な先行事例であるスタンフォード大や Google に関して、実際には研究開発期間内に
調査済みであるにもかかわらず、その関連が報告書内で全く触れられていない点について
は、比較・分析結果等の情報を示すことが望まれる。
なお、本プロジェクトの課題名の大きさに比べ今回実施された研究は対象が EC に限定
されており、社会においてネットワーク上でのサービス利用全体の安全性を高めるために
は、EC 以外のサービスをも対象とした信頼性評価システムの実現が必要である。今回の
評価とは離れるが、今後何らかの形で範囲を拡大した同様な研究が行われることが期待さ
れる。
44
3.2.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.2.3.1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① IdTM システム、Risk Rating サービスの社会実装は進まなかった一方で、大量の情報・
データから適切な意思決定を行う支援システムの研究を進めた
本プロジェクトにおいて開発された IdTM システムや Risk Rating サービスは、特定商取
引法(EC)の他、消費者保護や通信の秘密、及び個人情報保護法、電気通信事業法等法制
度との関係もあり、その後の社会実装は順調には進まなかった。
一方で本プロジェクト終了後も、高速インターネットや携帯電話、大容量・高精細デジ
タル放送等、情報通信基盤整備が進み、多種多様で異質な情報やデータ、しかも信頼性・
信憑性等質の不透明な情報・データが爆発的に増加してきている。人や社会の情報やデー
タの分析力には限界があるため、大量の情報・データから必要な情報を取捨選択して適切
な政策決定や意思決定を行う際の決定の質の低下が問題となっている。そのため、人間・
社会における合理的な意思決定や判断をデータに基づいて支援するため、急速に普及する
スマートフォンや SNS や多様なセンサから収集される多種多量なビッグデータの収集・保
存・管理と情報サービスの合成を可能とする基盤が必要とされるようになってきている。
これは、災害等の緊急時には極めて深刻な課題となり、大量の情報から必要な情報を取捨
選択し、避難等の適切な行動に関する意思決定に必要となる情報行動制御の科学的方法論
が必要である。
このような社会ニーズに対応し、本研究グループでは、a)逃げるという行動を人に強制
し、確実な実行を伴う災害情報・減災情報のデザイン、b)個人情報を活用した避難・誘導
システム、c)観光ナビ等平常時のサービスが緊急時の避難誘導に境目なく移行する情報
サービス、d)原発事故情報のように専門家と一般市民の間にある情報の非対称性の解消、
デマや風評等 SNS やマスメディアにおける情報の信憑性の確保等、情報の質を確保する社
会基盤を早急に実現する必要があると考え、以下の情報システム・サービスの研究開発を
進めている。
② 個人情報保護利活用を目的とした ID データコモンズの提案
東日本大震災では、個人情報保護法が壁となって、災害時に必要となる個人情報や属性
情報の収集・利活用がしにくく、迅速な避難・救助活動や災害後の調査の阻害要因になっ
た。そこで、本研究チームは、緊急時に対応するために行政や民間と個人のライフログの
利活用が、地域分散型で判断・処理できる情報システムとして「時空間を限定した個人情
報保護利活用基盤」の仕組みを考案した。すなわち、ライフログ 6を中心とするビッグデー
6
ライフログとは、携帯電話やスマートフォンを利用して個人の生活・体験・活動等を映像・
音声・位置情報等のデジタルデータで記録することで、利用者の操作により記録される手動記
録と GPS 機能等による自動記録がある。
45
タの収集・管理・共有・分析・合成等の取り扱いを、利用者自らが決定する仕組みを「ID
データコモンズ(Identity Data Commons)」として提案している。
なお、ID データコモンズに関する検討は、東日本大震災以前の 2010 年頃から開始され
ており、2011 年の「国際会議 ICE-B2011」で発表されている。
ID データコモンズの仕組み
A) 利用者は、ウェブサイトを通じて自分のデータを登録
B) 個人データの取り扱いを自ら決定し、それぞれの情報にライセンスを付与
C) 利用者の意向に従い、適宜匿名化された情報を ID データコモンズに格納・管理
D) 格納・管理された情報はユーザのライセンスに従い、サービス事業者に提供
E)
利用者およびサービス事業者は、サービスの変化に応じて収集情報項目を追加・削除
が可能
図 4
ID データコモンズと ID コモンズライセンス
資料:曽根原登「プライバシー情報保護活用基盤としての『ID データコモンズ』の考案」
(http://www.innovationplus.jp/contest/pdf/id-data-commons-01.pdf)、
曽根原登「人間中心のサイバーフィジカル融合社会のための ID データコモンズ提案」
(http://www.innovationplus.jp/contest/pdf/id-data-commons-02.pdf)
ID データコモンズは、ライフログと行政データを一元管理することで、例えば大災害等
の緊急時には個人情報や個人の属性情報を用いて、その人は被災地のどこに住んでいるの
か、子どもなのか、手助けがいるのか、寝たきりなのか、日本語が分かるのか等の情報に
基づいた、適切な救援や救助計画の迅速な策定に結びつけていくものであり、個人・民間・
行政の保有する個人情報を連携させ、大事故や社会危機等いわゆるクライシスと呼ばれる
事象に対し、強い社会基盤として実現する研究を進めている。
災害時に特定の地域に対して、被災者のプライバシー情報を積極的に開示する等、時間
軸と空間軸が相互に関連するなかで、ユーザのプライバシー情報開示をユーザ自身が制御
46
する基盤を構築することにより、時空間におけるプライバシー情報の保護活用という新し
い情報流の萌芽となることを目指している。
一方、緊急時のみ使用される防災専用のシステムは、災害時に一般市民に利活用されに
くい。そのために平常時には渋滞や混雑通知等の生活情報伝達の仕組みに、災害時には個
人情報と位置情報を活用した災害医療連携サービス、避難誘導サービス、安否確認サービ
スとして機能する情報伝達に自動転換できる形での実装が考えられている。
ID データコモンズでは、個人情報の種別ごとに「発災後の開示期間」、
「開示先、もしく
は開示目的の限定」
、
「救助・救援等への直接利用と被災統計の間接利用の可否」について、
オプトインする機能を実現し、平常時には条件付きでオプトインされた個人情報を利活用
して、省庁や自治体の政策決定や民間のサービスの多様化、利便性の向上に向け部分的に
開示する技術の研究開発が進められる予定である。
日本学術会議への「時空間を限定した個人情報保護活用基盤」の提案
上記の研究開発計画は、日本学術会議「時空間を限定した個人情報保護活用基盤」に提
案されている。本研究計画では、時間軸(災害時等特別な場合)、空間軸(実世界における
特別な場所)におけるプライバシー情報保護活用基盤の構築を提案している。時間軸にお
けるプライバシー情報保護活用基盤として、行政や民間と個人のライフログデータを連携
させて一元管理し、ライフログ利用が自律的に地域分散で判断処理できる情報システムを
実現する。これにより、個人情報保護法制の壁を突破し、具体的なサービスとして、個人
情報や個人属性情報を用いて、被災地のどこに誰が住んでおり、その人は子供か大人か、
手助けのいる人か、あるいは寝たきりなのか等の個人情報を連携させ、適切な救援や救助
計画を素早く策定する方法を実現することを目指す。一方、空間軸におけるプライバシー
情報保護活用基盤については、プライバシー情報の中でも人間の内面的な情報(趣味、嗜
好、行動傾向、購買傾向等)を積極的に開示可能な特別な場所において、ソーシャルメディ
アとセンシングデータの融合、プライバシー保護のためのデータのクレンジング、時空間
DB の構築とマイニング、情報活用・情報推薦の手法を要素技術とし、ユーザのプライバシー
情報の開示とユーザの得る利得がマッチする調和的情報フィールド HIFI(Harmonized
Information Field)を空間軸でのプライバシー情報保護活用基盤として構成することを目指
している。
③ 観光予報システムの開発
政策決定は、客観的なデータを根拠として決定されるべきである一方、客観的データを
社会調査等の手段で得るには数か月単位で時間がかかるという問題に対し、本研究グルー
プは Web データに着目し、実時間で客観的データを得る手法を確立し、観光分野の政策決
定に寄与する研究開発を進めてきた。
公開される社会調査データには網羅性はあるが匿名化されており調査対象施設との対応
関係が不明である一方、「Web データにはデータの信頼性が不明で断片的である」という
問題がある。そこで、宿泊施設の総部屋数と施設数から、地域全体の平均部屋数を求め、
社会調査データと Web データ間の差異を最小にすることで対応関係を推定する手法に関
する研究に平成 22 年度より着手している。
Web 情報の信頼性評価については、Web 空間上の宿泊施設、新幹線、飛行機の予約情報
47
を継続して取得し続け、社会調査データで匿名化された施設名を推定することにより、Web
データの信頼性を推定する手法を確立した。また、京都市と連携し、このデータを基に、
Web 予約データ及び施設情報を利用して、観光客の日々の宿泊状況の把握や、料金、空室
数の推定を行う観光予報システムを開発した。さらに、観光予報システムの成果を基に、
観光イベントの開催時期の決定支援や観光ビジネスでの機会損失、イベント開催による経
済効果の推定方法を確立し、政策決定の根拠となるエビデンスデータを生み出す仕組みを
構築することで新しい観光政策科学の方法論を構築するべく、研究開発に取り組んでいる。
本システムは、災害時には ID データコモンズと連携することにより、個人の位置情報
等から、空室のある近隣の宿泊施設情報を提供し、帰宅困難者の宿泊・避難誘導を支援す
ることへ応用できる。
本研究開発は、京都市観光 MICE(Meeting, Incentive, Convention and Event)推進室との
調査研究協力により実現されている。
Web データと社会調査データとの間の差異を最小にすることで対応関係を推定する手法の
確立
従来の社会データ調査方法では、日ごとの宿泊施設利用データの収集ができなかったが、
複数の Web サイトから横断的にデータを収集し、サイトごとに偏りのあるデータを統合する
ことで、
実世界の宿泊施設利用状況のカバー率を約 10%改善した(京都市ではカバー率が 88%
から 98%に改善)
。また、Web 空間のデータの信頼性が不明という問題に対しては、京都市
観光 MICE 推進室の協力により、収集したデータを分析・合成して、観光統計データと比較
する方法を考案し、Web 予約データは十分に信頼性が確保できることを検証した(京都市で
約 8%の誤差で信頼性を確保)
。この結果、Web 予約データを利用することで、日々の施設ご
との空室状況や料金の現況把握や予測を行うことが可能になった。
図 5 宿泊施設の Web 予約データの収集・信頼性評価方法
資料:情報・システム研究機構 新領域融合研究センター/国立情報学研究所・統計数理研究所共同
人間・社会システムプロジェクト報道資料「Web データからホテルの料金と空室数を予測す
る!『ビッグデータ駆動の観光・防災政策決定支援システムの研究開発』」
(H25.3.6)
48
図 6 予約データの信頼性評価と現状把握及び予測
資料:情報・システム研究機構 新領域融合研究センター/国立情報学研究所・統計数理研究所
共同 人間・社会システムプロジェクト報道資料「Web データからホテルの料金と空室
数を予測する!『ビッグデータ駆動の観光・防災政策決定支援システムの研究開発』」
(H25.3.6)
④ その他の研究開発活動
個人情報保護利活用では、匿名化が必須となるが、個人情報保護と有用性はトレードオ
フの関係にある。
本研究グループでは、
情報の劣化を防ぎつつ匿名化を行う手法を確立し、
匿名化に関する方法を研究している。
また、SNS データの分析に関しては、デマ拡散の心理的メカニズム、デマの拡散モデル
や拡散防止に関する研究を実施している。社会心理学的研究によって、批判情報に接触す
ると全体的には後続のデマ情報の信頼性が低下するが、個人によっては批判情報を見た後
も依然としてデマ情報の信頼性を高くする人もいることを明らかにしている。
中国では、次世代ブロードバンド無線移動通信ネットワークの普及とともに、中国独自
の SNS が急成長している。利用者数は 10 億を超えており、世界最大の個人情報活用市場
49
を形成している。しかし、日本と同様にプライバシー情報の保護と利活用が大きな課題と
なっており、全人代常務委員会は 2013 年 2 月より、「ネット情報保護強化に関する決定」
を定め、中国初の個人情報保護の国家標準「公共および商用サービス情報システムにおけ
る個人情報保護指針」を施行している。本研究グループは、このような状況を注視しつつ、
「国際協力・国際共同研究により、プライバシー保護利活用基盤の ICT ガバナンスによる
市場形成を想定して研究開発を進めている。
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
① 日本学術振興会先導的研究開発委員会「クライシスに強い社会・生活空間の創成」の創設
高度な情報通信技術によって、あらゆる情報機器やセンサがネットワークへ接続され、
情報がデジタル化されて流通し、いつでも、誰もが、どこからでもアクセスすることが
可能となった結果、情報空間(Cyber-space)と実世界(Physical-world)が連携、あるい
は統合したサイバーフィジカル融合社会(Cyber-Physical Integrated Society)が形成されつ
つある。この融合社会は、実世界の現況や人と社会の活動を情報世界に映し出し、情報
通信技術の力によって、人類が直面する環境・エネルギー、医療・健康、食糧問題等の
対策や、大事故や社会危機等いわゆるクライシスと呼ばれる事象に対し強い社会・生活
空間を構築することが期待されている。
そこで、先の東日本大震災で被災した自治体や関係する学識経験者、民間企業の参加
の下、日本学術振興会先導的研究開発委員会「クライシスに強い社会・生活空間の創成」
(
「JSPS クライシス委員会」
)を創設され、被災者の体験を取り入れた減災を目的とした
実証実験を行う取組が行われている。本委員会の委員に曽根原氏が就任しているほか、
国立情報学研究所が事務局を務めている。
本委員会による研究開発では、災害に学ぶ重要な社会・生活データの収集・保管・共
有・復元手法、災害時の情報による避難・退避行動を強制する人間行動制御方法、緊急
時に様々な情報にアクセスしそれを駆使できる仕組みや障害のレベルに応じた機能・
サービス復元手法、物的資源と情報資源の連携を促す地域コミュニティ生成・管理手法、
現実の社会・生活空間を情報空間として構築し、現実社会でのクライシスを分析・評価
する手法、産業界と学生を中心とする大学参加形の共同開発や実証実験を通した人材育
成方法について実証することを目指している。
② 京都市との共同研究を経て、
「観光予報システム」を開発
平成 22 年度から、宿泊施設・新幹線・飛行機の Web 予約情報を収集し続け、分析を行っ
てきたが、Web 情報の信頼性が不明となっていた。そこで、情報・システム研究機構 新
領域融合研究センターと国立情報学研究所・統計数理研究所の共同による「人間・社会シ
50
ステムプロジェクト」は、京都市との共同研究により Web 予約データの信頼性の評価を開
始した。データ信頼性を評価した Web 予約データから、曜日や休日、季節を考慮すること
で、未来の宿泊料金や空室状況の推定が精度よくできることを明らかにし、
「Web データ
駆動の観光予報システム」として開発を行い、平成 25 年 3 月に報道発表を行った。その内
容は、日刊工業新聞、日本情報産業新聞、Web ニュース等に掲載されている。
観光予報システムの概要
観光予報システムは、Web/SNS サイトが公開している施設利用情報を横断的に収集・蓄
積し、分析することで、観光地域の宿泊状況や施設料金の現況や予報を行うシステムであ
る。地方自治体は、観光政策決定で必要となる宿泊利用状況の把握や経済効果の予測、観
光地における災害発生時の宿泊者数の把握や、避難施設の空き状況が把握に利用できる。
また、利用者は、観光案内と同じ使い方で災害対応に利用できる。このことから、本シス
テムは、
情報システムの常用性を実現し、平常時と災害時の対応を両立することができる。
本システムは、自治体の観光政策支援の他、観光協会や商工会議所等の観光産業活性化
支援を目的として開発された。
51
図 7 観光予報システムの概要・用途
資料:一藤裕、曽根原登「Web データからホテルの料金と空室数を予測する!『ビッグデータ
駆動の観光・防災政策決定支援システムの研究開発』」
(H25.3.6)
このように、自治体と連携しての共同研究開発、社会実装の提案活動が行われているほ
か、時空間を限定して個人情報を利活用する「ライフログ特区」
「ビッグデータ特区」構想
の提案も行われている。
③「スマートフォンアプリ開発全国学生コンテスト」の実施
個人情報の利活用及び情報サービスの常用性を実現するためには、それを活用するサー
ビスアプリケーション開発が必要不可欠となる。本研究グループでは、アンドロイドアプ
リ開発プラットフォームを産学連携で共同開発し、これを大学生に公開することにより、
地元の観光や防災に特化したアプリ開発コンテスト「第 1 回スマートフォンアプリ開発全
国学生コンテスト」
(平成 25 年 4~8 月、主催:㈱イノベーションプラス、協力:情報・シ
ステム研究機構、国立情報学研究所等)を実施し、アプリケーションサービスの開発・人
材育成を行っている。
本コンテストは、アプリ開発経験の少ない学生等に、アプリ開発キットを提供し、実践
的な業務やサービスに触れることで、就職に役立つ社会知識や業務知識を吸収でき、より
高度な人材育成を目指している。
52
3.2.3.2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの
開拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
① ユーザのプライバシー情報開示をユーザ自身が制御する新たな基盤・仕組みの構築
本研究開発の学術的意義は、プライバシー情報の保護のみならず開示を考え、このバラ
ンスを情報システムとしてどのように与えていくかという点にある。すなわち、災害時等
における特定地域に対して、個人のプライバシー情報を積極的に開示する等、時間軸と空
間軸が相互に関連するなかで、ユーザのプライバシー情報開示をユーザ自身が制御する基
盤・仕組みを構築し、時空間におけるプライバシー情報の保護活用という新しい情報流の
萌芽を目指す点である。
② アプリケーション開発人材(大学生)の育成
前述の「スマートフォンアプリ開発全国学生コンテスト」の実施により、大学生が、生
の個人情報やビッグデータを取り扱う経験を通じ、個人情報に強い IT 人材育成にも貢献す
る仕組みとしている。このような人材育成の場、新たなアプリケーション情報サービス創
出の機会を創出し、日本発の世界に通じるアプリケーションの開発・提供、人材育成へ貢
献を目指している。
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
Web/SNS データから価値のあるデータを創出し蓄積する基盤、個人情報の利活用のため
の収集・管理保護基盤を実現する防災・観光情報基盤を構築し、提供者の判断で開示する
情報システムを社会実装することで、以下の効果が生まれることが期待される。
① 政策意思決定に必要な情報・データが入手しやすくなり、科学的根拠に基づいた政策
判断が可能となる
行政にとっては、この基盤を利活用することによって、オンラインでの正確・迅速な社
会調査の実施や、ビッグデータに基づいた観光・防災政策決定支援の実現が可能となる。
サービス性や経済性等の科学的根拠が希薄な政策や意思決定は、期待された効果が得ら
れず、持続的運用等に課題を残す可能性も高く、この問題の解決に向けては、客観的根拠
データに基づいた政策決定や意思決定が必要となる。このような人間・社会データを収集
するには社会調査やオンライン調査が必要であるが、近年の個人情報保護に対する意識の
高まりにより、データ収集・管理・利活用への協力を得にくくし、政策決定に用いられる
53
データの質を低下させている。本研究グループが開発している ID データコモンズ及び
Web/SNS データを活用したアプリケーション等は、この問題を解消する可能性がある。
特に、個人情報利活用に対する心理的抵抗感を低下させつつ信頼性の高いデータを収集
することが可能となれば、新たな社会情報インフラとして社会実装が進むことも期待でき
る。
② アプリケーションサービス開発の活性化
「観光予報システム」が関係するような、観光コンテンツの作成やスポットの発掘等に
おいては、地元の人間が最も生きた情報を入手・把握しやすいこともあり、アプリケーショ
ンサービスの地産・地消の仕組みが構築されることが期待される。また、位置情報等の個
人情報や Web/SNS データの連携による新たなアプリケーションサービスの開発が活性化
することが期待される。
54
3.2.4. 付属資料
3.2.4.1. 主要研究者動静表
氏名
研究期間中の所属・役職
国立情報学研究所 情報社会相関研
曽根原 登
究系 教授
国立情報学研究所
渡辺 克也
連携部門 客員教授
国立情報学研究所
野口 祐子
連携部門 客員助教授
国立情報学研究所
岡田 仁志
情報社会相関研究系 助教授
現在の所属・役職
国立情報学研究所・総合研究大学院大
学 研究主幹・研究科長 教授
国立情報学研究所 客員教授
国立情報学研究所 客員准教授
国立情報学研究所
情報社会相関研究系 助教授
関東学院大学 経済学部経営学科
教授
東京大学 名誉教授、武蔵野大学 政治
経済学部 特任教授、慶應義塾大学 経
済学研究科 特任教授
渡辺 光一
関東学院大学 助教授
奥野 正寛
東京大学 教授
酒井 善則
東京工業大学 教授
東京工業大学 名誉教授
山岡 克式
東京工業大学 助教授
東京工業大学大学院 理工学研究科
情報通信システム 准教授
安田 浩
東京大学 教授
東京電機大学 未来科学部 教授
青木 輝政
東京大学 講師
東北大学 電気通信研究所 准教授
3.2.4.2. 研究開発プロジェクト終了後(平成 21 年 4 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
論文名
プライバシーポリシーを用い
1 た Web/SNS サイトの信頼性
推定方法
2
著者
一藤裕, 曽根原登
I. Krontiris, A.
Coupons as Monetary Incentives
Albers, N. Sonehara,
in Participatory Sensing [査読有]
and I. Echizen
EFFICIENT LOCAL
RECODING
ANONYMIZATION FOR
3
DATASETS WITHOUT
ATTRIBUTE HIERARCHICAL
STRUCTURE [査読有]
Jurisdictional Area Minimizing
Welfare Loss Based on
4
Accessibility in Transportation
Network
掲載媒体
電子情報通信学会論文
誌,
Vol.J96-D,No.6,pp.-,Jun
Proc. of The 12th IFIP
Conference on e-Business,
e-Services, e-Society (I3E
2013)
The International
SARRAFI
Conference on Cyber
AGHDAM,
Security, Cyber Peacefare,
Mohammad Rasool,
and Digital Forensics
Sonehara Noboru
(CyberSec 2013),
Koji Okuhara,
Noriaki Koide, Yu
Ichifuji, Noboru
Sonehara
55
システム制御情報学会
論文誌, 第 26 巻 第 2 号
年月
2013.6
2013.4
2013.3.4
-6
2013.2
Md. Nurul Huda,
An Efficient k-anonymization
5 Algorithm with Low Information Shigeki Yamada, and
Noboru Sonehara
Loss
Aggregate Nearest Neighbor
6 Search Methods Using SSMTA*
Algorithm on Road-Network
Htoo Htoo, Yutaka
Ohsawa, Noboru
Sonehara, Masao
Sakauchi
Htoo Htoo, Yutaka
Optimal Sequenced Route Query
Ohsawa, Noboru
7 Algorithm Using Visited POI
Sonehara, Masao
Graph
Sakauchi
Sequenced Route Query in Road Yutaka Ohsawa, Htoo
Network Distance Based on
Htoo, Noboru
8
Incremental Euclidean
Sonehara, Masao
Restriction
Sakauchi
Hoang-Quoc
Nguyen-Son,
Minh-Triet Tran,
Automatic Anonymous
9 Fingerprinting of Text Posted on Dung Tran
Social Networking Services
TienHiroshi Yoshiura,
Sonehara Noboru,
and Isao Echizen,
10
道路網距離での旅行計画の為
のインクリメンタル検索方法
Distributed Auction for
11 Self-Optimization in Wireless
Cooperative Networks
Fast Optimal Sequenced Route
Query Algorithm in Road
12
Network Distance[査読有:採択
率 18%]
13
On Enhancing Utility in
K-Anonymization
Group Management System for
Federated Identities with Flow
14
Control of Membership
Information by Subjects
15
学術機関のためのサーバ証明
書発行フレームワーク
2011 International
Conference on Data
Engineering and Internet
Technology (DEIT 2011),
pp.1028-1031(Bali
Dynasty Resort, Bali,
Indonesia)
Springer Berlin
Heidelberg, Lecture
Notes in Computer
Science Volume 7503, pp
181-194
2012
Lecture Notes in Computer
Science Volume 7418, pp
198-209
2012
Lecture Notes in Computer
Science Volume 7446, pp
484-491
2012
11th International
Workshop on
Digital-forensics and
Watermarking (IWDW
2012)
日本データベース学会
大沢裕, トウトウ,
論文誌, Vol.11, No.2,
曽根原登, 坂内正夫
pp.1-6
the 2012 IEEE 76th
Lei Zhong, Yusheng Vehicular Technology
Ji, and Noboru
Conference
Sonehara,
(VTC2012-Fall), Quebec
City, Canada
The 13th International
Yutaka Ohsawa, Htoo
Conference on Web-Age
Htoo, Noboru
Information Management,
Sonehara, Masao
Harbin, China(Best
Sakauchi
Student Paper 受賞)
International Journal of
Md. Nurul Huda,
Computer Theory and
Shigeki Yamada and
Engineering (IJCTE), Vol.
Noboru Sonehara,
4, No. 4
Computer Software and
Takeshi Nishimura,
Applications Conference
Motonori Nakamura,
Workshops
Makoto Otani,
(COMPSACW), 2012
Kazutsuna Yamaji,
IEEE 36th Annual,
Noboru Sonehara,
pp94-99
島岡正基, 西村健,
電子情報通信学会論文
吉村隆明, 中村素
誌 B, 通信 J95-B(7),
典, 佐藤周行, 岡部
871-882
寿男, 曽根原登
56
2013
2012.10.
31-11.3
2012.10
2012.9.3
-6
2012.8.
18-20
2012.8
2012.7.
16-20
2012.7.1
Web データ駆動型の社会シス
16 テムレジリエンス評価のため
の可視化手法
一藤裕, 曽根原登
ライフログ提供における心理
的抵抗とインセンティブの構 小林哲郎, 一藤裕,
17
造 ~スマートフォン利用者を 曽根原登,
対象とした被験者実験~
Md. Nurul Huda,
Farzana Yasmeen,
Shigeki Yamada, and
Noboru Sonehara,
Sebastian
Schrittwieser, Peter
Kieseberg, Isao
An Algorithm for
IWDW11, Atlantic City,
Echizen, Sven
k-anonymity-based
New Jersey, USA
Wohlgemuth, Noboru
Fingerprinting
Sonehara and Edgar
Weippl,
The Structure of Psychological
The 4th IEEE International
Resistance and Incentives in
Tetsuro Kobayashi,
Conferences on Cyber,
Lifelog Disclosure — An
Yu Ichifuji and
Physical and Social
Experimental Study with
Noboru Sonehara,
Computing (CPSCom
Smartphone Users[査読有]
2011), Dalian, China
The 4th IEEE International
A Proposal of “Identity
Conferences on Cyber,
Memiko Otsuki and
Commons” for Effective ID
Physical and Social
Management and Utilizations [査 Noboru Sonehara
Computing (CPSCom
読有]
2011), Dalian, China
大学間認証連携のためのキャ 谷本茂明, 島岡政
電子情報通信学会論文
ンパス PKI 共通仕様(研究速
基, 片岡俊幸, 西村
誌, 情報通信マネジメン
報,<特集>スマートな社会を支 健, 山地一禎, 中村
ト,Vol. J94-B, No.10,
えるインターネットアーキテ 素典, 曽根原登, 岡
pp.1383-1388
クチャ論文)
部寿男,
島岡政基,片岡俊幸,
大学間連携のための全国共同
電子情報通信学会論文
谷本茂明,西村健,山
認証基盤 UPKI のアーキテク
誌Vol.J94-B,N
地一禎,中村素典,曽
チャ設計
o.10,pp.1246-1260
根原登,岡部寿男
Single-source Multi-target A*
Htoo Htoo, Yutaka
WGIM
Algorithm for POI Queries on
Ohsawa, Noboru
2011,Wuhan ,China
Road Network
Sonehara,
Low-Complexity Resource
IEEE
Lei Zhong, Yusheng
Allocation in MIMOSystems
PIMRC'11 ,Toronto ,Cana
Ji, Noboru Sonehara
with QoS Guaranteed Fairness
da
Sebastian
Using Generalization Patterns for Schrttwieser, Peter
Fingerprinting Sets of Partially
Kieseberg, Isao
ARES2011,Wien
Anonymized Microdata in the
Echizen, Sven
Course of Disasters
Wohlgemuth, Noboru
Sonehara,
An Approach for Short Message
18 Resilience in Disaster-Stricken
Areas [査読有]
19
20
21
22
23
24
25
26
電子情報通信学会論文
誌, Vol.J95-D, No.5,
pp.1100-1109
電子情報通信学会論文
誌 ライフログ処理技術
とその活用システム特
集号, Vol.J95-D. No.4
pp.834-845
International Conference
on Information
Networking (ICOIN)
2012, Bali, Indonesia
57
2012.5
2012.4
2012.2.
1-3,
2011.10.
23-26
2011.10.
19-22
2011.10.
19-22
2011.
10.1
2011.
10.1
2011.9.
14-16
2011.9.
11-14
2011.8.
22-26
User Centric Privacy in Mobile
27 Communication Scenarios [査読
有]
K. Rechert, S.
Wohlgemuth, I.
Echizen, and N.
Sonehara,
11th IEEE/IPSJ
International Symposium
on Applications and the
Internet (SAINT 2011),
IEEE Computer Society
Press
2011.7.
21-22
Time Stamping Preprint and
28 Electronic Journal Server
Environment
Takao Namiki,
Kazutsuna Yamaji,
Toshiyuki Kataoka,
Noboru Sonehara,
Towards a Digital
Mathematics Library,
Bertinoro, Italy, pp19-23
2011.7.
20-21
For Service Creation
Using Communication
2011.7.
Log,ICETE2011” ,Seville , 18-21
Spain (ポスター発表)
Journal of Information
Sven Wohlgemuth,
On Privacy-compliant Disclosure
Hiding and Multimedia
Isao Echizen, Noboru
of Personal Data to Third Parties
Signal Processing,
2011.7
Sonehara and Günter
using Digital Watermarking
Ubiquitous International,
Müller
Volume 2, Number 3
Günter Müller,
Business & Information
Noboru Sonehara,
Systems Engineering,
2011.6.1
Sustainable Cloud Computing,
Isao Echizen and
Vo.3, No.3, pp129-131
Sven Wohlgemuth
Isolation in Cloud Computing
and Privacy-Enhancing
Business & Information
Noboru Sonehara,
Technologies Suitability of
Systems Engineering,
2011.6.1
Isao Echizen and
Privacy-Enhancing Technologies
Vol.3, No.3, pp.155-162,
Sven Wohlgemuth,
for Separating Data Usage in
Business Processes
Interview mit Charley K.
WIRTSCHAFTSINFORM
Watanabe zum Thema „Cloud
Noboru Sonehara,
ATIK, Vol. 53, No.3,
2011.6.1
Computing in Japan – Die Rolle
pp.177-180
der japanischen Regierung
Special Issue 3/2011 of the
international journal
Gunter Muller,
Business & Information
Noboru Sonehara,
Systems Engineering
Nachhaltiges Computing in
2011.6
Isao Echizen, and
(BISE) and the German
Clouds
Sven Wohlgemuth
journal WIRTSCHAFTS
INFORMATIK,Vol.53,
No.3, Gabler, pp. 123-125
Memiko Otsuki,
ECTI-CON2011 ,Khon
2011.5.
ICT Risk Rating of E-commerce C.Katsuya Watanabe,
Kaen ,Thailand
17-19
Noboru Sonehara,
Yutaka Ohsawa,
Real-Time Monitoring of Moving Kazuhisa Fujino,
2011.4.
Htoo Htoo, Aye Thida DASFAA2011, HongKong
Objects Using Frequently Used
22-15
Hlaing, Noboru
Routes
Sonehara,
The 2011 International
Md. Nurul Huda,
On Enhancing Utility in
Conference on Database
2011.3.
Shigeki Yamada, and
k-anonymization[査読有]
and Data Mining (ICDDM 25-27
Noboru Sonehara,
2011), Sanya, China
A Proposal Of “Identity
29
Commons
30
31
32
33
34
35
36
37
Memiko Otsuki,
Noboru Sonehara
58
2011 International
Conference on Data
Md. Nurul Huda,
Engineering and Internet
An Efficient k-anonymization
2011.3.
38 Algorithm with Low Information Shigeki Yamada, and Technology (DEIT 2011),
15-17,
Noboru Sonehara
pp.1028-1031, Bali
Loss [査読有]
Dynasty Resort, Bali,
Indonesia
Dagstuhl Perspectives
Workshop 11061: Online
Privacy: Towards
Privacy in Business Processes – S. Wohlgemuth, I.
Informational
39 Disclosure of Personal Data to
Echizen, N. Sonehara,
2011.2
Self-Determination on the
Third Parties
and G. Müller
Internet, Schloss Dagstuhl
Leibniz-Zentrum für
Informatik, Germany
Yutaka Ohsawa,
Lecture Notes in Computer
Real-Time Monitoring of Moving Kazuhisa Fujino,
Science, Vol. 6588,
Htoo Htoo, Aye Thida Database Systems for
40 Objects Using Frequently Used
2011
Hlaing, Noboru
Advanced Applications,
Routes
Sonehara,
pp.119-133
BS-6-46 Providing Basic
電子情報通信学会ソサ
Communication Services in a
Huda Md. Nurul,
2011.
イエティ大会講演論文
Disaster Stricken Region(BS-6.
Yasmeen Farzana,
41
3.10
集 2011 年_通信(2),
Planning, Control and
Yamada Shigeki,
ppS-120-121
Management on Networks and
Sonehara Noboru,
Services
“Isolation im Cloud-Computing
und Mechanismen zum Schutz
WIRTSCHAFTSINFORM
der Privatsphäre Eignung von
Noboru Sonehara,
ATIK, Vol.53, No.3,
2011
Isao Echizen and
42 Mechanismen zum Schutz der
pp151-158
Privatsphäre für die Trennung der Sven Wohlgemuth
Datenverarbeitung in
Geschäftsprozessen ,
Interview with Mr. Charley K.
Special Issue 3/2011 of the
Watanabe on "Cloud Computing
international journal
in Japan – The Role of the
Business & Information
43
Noboru Sonehara,
2011.3
Japanese Government -The
Systems Engineering
Role of the Japanese
(BISE) ,Vol.3, No.3,
Government"
pp.179-181
Submitted to the
Sebastian Haas, Sven
International Journal of
Wohlgemuth, Isao
Medical Informatics for
Aspects of Privacy for Electronic
Echizen, Noboru
44
2011.2
its special issue on
Health Records
Sonehara and Günter
security, Elsevier,
Müller
80(2) ,p.26-31,
Tananun
Orawiwattanakul,
the International Journal of
User Consent Acquisition System
Kazutsuna Yamaji,
Grid and Utility
45 for Japanese Shibboleth-based
2011
Motonori Nakamura, Computing(IJGUC). Vol.
Academic Federation (GakuNin)
Toshiyuki Kataoka,
2, No. 4, pp284-294
and Noboru Sonehara
59
Usage Control by Data
46
Provenance
Gunter Muller,
Noboru Sonehara,
Isao Echizen, and
Sven Wohlgemuth
Gunter Muller,
Noboru Sonehara,
Isao Echizen, and
Sven Wohlgemuth,
Gunter Muller,
WI – Call for Papers Heft 3/2011 Noboru Sonehara,
48
Nachhaltiges Cloud-Computing Isao Echizen, and
Sven Wohlgemuth
BISE – Call for Papers Issue
47 3/2011 Sustainable Cloud
Computing
Submitted to the special
focus on "Sustainable
Cloud Computing" of the
journal "Business
Information Systems
Engineering
(BISE)/WIRTSCHAFTSI
NFORMATIK", Vol.3,
No.3, pp.129-131
2011
Business & Information
Systems Engineering,
Vol.2, No.1, pp.49-50,
2010
WIRTSCHAFTSINFORM
ATIK, Vol.52, No.1,
pp53-54
2010
Journal of Network and
Sven Wohlgemuth,
Computer Applications
Isao Echizen, Noboru
(JNCA) on Trusted
Sonehara, and Gunter
Computing and
Muller
Communications, Elsevier
Sven Wohlgemuth,
Submitted to the journal
On Privacy-Aware Delegation of
Günter Müller,
"Identity in the
Personal Data in Customer
Noboru Sonehara and Information Society",
Relationship Management
Isao Echizen.
Springer
the IEEE Global
Fair Bandwidth Allocation with Tananun
Communications
Distance Fairness Provisioning in Orawiwattanakul,
Conference (Globe Com
Yusheng Ji, and
Optical Burst Switching
2010) Miami,
Noboru Sonehara,
Networks[査読有]
Florida,USA,
the 5th International
Tananun
Conference on P2P,
Orawiwattanakul,
User-controlled Privacy
Parallel, GRID, Cloud, and
Kazutsuna Yamaji,
Protection with Attribute-filter
Internet Computing
Mechanism for a Federated SSO Toshiyuki Kataoka,
(3PGCIC) Fukuoka
Motonori Nakamura,
Environment using Shibboleth
Institute of Technology,
and Noboru
[査読有]
pp.243-249,Fukuoka,
Sonehara,
Japan
The International
Conference on
Communications,
On Identity Disclosure Risk
M. N. Huda, S.
Information and Network
Measurement for Shared
Yamada, N. Sonehara,
Security (ICCINS 2010),
Microdata[査読有]
Issue71, pp.160-167, Paris,
France
Proc. of 2010 Sixth
J. Tharaud, S.
International Conference
Wohlgemuth, I.
on Intelligent Information
Privacy by Data Provenance with
Echizen, N. Sonehara, Hiding and Multimedia
Digital Watermarking[査読有]
Signal Processing
G. Mueller, and P.
(IIHMSP2010), pp.
Lafourcade,
510-513,Germany
Data Provenance with Digital
Watermarking for an Ex Post
49
Enforcement of Privacy
Obligations
2010
50
2010
51
52
53
54
60
2010.12.
6-10
2010.11.
4-6
2010.10.
27-29
2010.10.
15-17
Japanese Access Management
Federation GakuNin as an
55
eResearch Collaborative
Infrastructure
Tagging Disclosure of Personal
56 Data to Third Parties to Preserve
Privacy[査読有]
Kazu Yamaji,
Motonori Nakamura,
Toshiyuki Kataoka,
Takeshi Nishimura,
Yuki Shoji, Tananun
Orawiwattanakul,
Noboru Sonehara,
Yasuo Okabe,
eResearch Australasia
2010
25th International
Information Security
Conference (SEC2010):,
IFIP Advances in
Sven Wohlgemuth, I. Information and
Echizen, N. Sonehara, Communication
Technology, Volume 330,
G. Mueller,
Security and Privacy –
Silver Linings in the
Cloud, pp.241-252,
Brisbane, Australia
Kobayashi, T.,
Journal of
Ichifuji, Y., Sonehara, Socio-Informatics,
N., & Sakauchi, M., Vol3, No1, pp.55-68
Breakthroughs in
57 socio-informatics through
data-centric science
Privacy in Business Processes -
S. Wohlgemuth, I.
On Enforcement of Privacy
58
Echizen, N. Sonehara,
Policies regarding Usage of
and G. Mueller
Personal Data
Kazutsuna Yamaji,
Attribute Aggregating System for Toshiyuki Kataoka,
Shibboleth based Access
Motonori Nakamura,
59
Management Federation [査読
Tananun
有]
Orawiwattanakul, and
Noboru Sonehara,
沼田 秀穂,池田
振り込め詐欺と地域社会との 佳代,安藤 昌也,渡
60
関連性研究
辺 克也,曽根原
登,
2010.9.
27
2010.9.
20-23
2010.9
日本セキュリティ・マネ
ジメント学会誌(JSSM),
Vol. 24, No. 2, pp21-30
2010.9
the 4th Workshop on
Middleware Architecture
in the Internet (MidArch
2010) SAINT2010,
pp.281-284, Seoul,
KOREA
2010.7.
19-23
情報社会学会,情報社会
学会誌Vol5,No
1,pp.5-17
2010.6
Privacy-compliant Disclosure of
61
Personal Data to Third Parties,
International Journal
S. Wohlgemuth, I.
it-Information Technolojy,
Echizen, N. Sonehara,
Oldenbourg Verlag, ,
G. Müller
pp.350-355
2010.6
On the Performance Evaluation
of Privacy-aware
62
Patient-controlled Personal
Health Record (P3HR) System
Md. Nurul Huda,
Shigeki Yamada, and
Noboru Sonehara
Japan Journal of Medical
Informatics Vol. 29 No. 3,
2009 p.129-137
2010.4
社団法人科学技術国際
交流センター,JISTEC
REPORT,1 月発行 vol.74
号
Communications in
Kanokwan
Computer and Information
Atchariyachanvanich, Science, 1, Vol.23,
Hitoshi Okada ,
E-business and
Noboru Sonehara
Telecommunications, Part
2, pp.98-109
ID ライフサイクル評価による
63 EC サイトのリスク・レーティ 曽根原登
ング・システム
Critical Success Factors of
64 Internet Shopping: The Case of
Japan
61
2009
Performance Evaluation of
Md. Nurul Huda,
65 Privacy-aware Patient-controlled Shigeki Yamada,
Personal Health Record
Noboru Sonehara
Sebastian Haas, Sven
On Privacy in Medical Services Wohlgemuth, Isao
66
with Electronic Health Records
Echizen, Noboru
Sonehara
Leveraging PKI in SAML 2.0
68 Federation for Enhanced
Discovery Service
ON PRIVACY IN BUSINESS
PROCESSES Observing
69
Delegation of Personal Data by
Using Digital Watermarking
IT-enabled Survey and its
71 Problems: Analyses of an
Australian Internet Poll
2009.11.
21-24
Hiroshima Institute of
Technology
2009.11.
21-24
the 3rd IEEE International
Workshop on Performance
Nararat
Modeling and Evaluation
RUANGCHAIJATUP
in Computer and
ON, Yusheng JI,
Telecommunication
Noboru SONEHARA
Networks (PMECT2009),
(San Francisco, CA USA)
Toshiyuki Kataoka,
Takeshi Nishimura,
International Symposium
Masaki Shimaoka,
on Applications and the
Kazutsuna Yamaji,
Internet
Motonori Nakamura, (SAINT2009)(USA)
Noboru Sonehara,
Proportional Fairness
Optimization based Resource
67 Allocation with Minimum Bit
Rate Guarantee in a Multiuser
OFDMA System
A Privacy Management
Architecture for
70
Patient-Controlled Personal
Health Record System
Hiroshima Institute of
Technology
Sven Wohlgemuth,
Noboru Sonehara,
et.al,
No. 78, ICE-B 2009
Journal of Engineering
MD. NURUL HUDA,
Science and Technology
NOBORU
(JESTEC), Vol.4,
SONEHARA,
No.2(June 2009),
SHIGEKI YAMADA
pp.154-170
International Symposium
Memiko Ootsuki,
on Applications and the
Tetsuro Kobayashi,
Internet
Noboru Sonehara,
(SAINT2009)(USA)
2009.8.
2-6
2009.7.
20-28
2009.7.
7-10
2009.7
2009.7.
20-28
(2) 発表・講演
発表・講演名
BS-10-18 On Secondary
1 Uses of Personal Health
Records
BS-4-23 Privacy Issues
Related to Smart Health
Card Systems (BS-4.
2
System, control and design
technologies for emerging
network)
Md Nurul Huda, Shigeki
Yamada, Noboru
Sonehara,
シンポジウム・セミナー名
(会場)
電子情報通信学会ソサ
イエティ大会講演論文
集 2009 年_通信(2)
Md Nurul Huda, Shigeki
Yamada, Noboru
Sonehara,
電子情報通信学会ソサ
イエティ大会講演論文
集 2009 年_通信(2)
2009
EMM 研究会,高知城ホー
ル
2013.
5.24,
講演者
Hoang-Quoc
A Recommendation System
NGUYEN-SON, Hiroshi
for Anonymous
YOSHIURA, Noboru
3
Fingerprinting of Text
SONEHARA, Isao
Posted on Social Networks
ECHIZEN
62
年月
2009
モバイルファースト戦略
に基づく Android 対応シ
4
ステムによる電子カルテ
について
串間 宗夫,田之上 光
一,酒田 拓也,荒木 賢
二,鈴木 斎王,荒木 早
苗,山崎 友義,曽根原
登
7
8
9
10
11
12
13
14
2012.11.
16,
地域医療の情報化コー
ディネータ育成研修(講 2012.10.
曽根原登
義), 国際保健医療科学
17
院
マルチメディア情報ハ
イディング・エンリッ
クライシスに強い社会・
チメント研究会 (EMM)
生活基盤の創生 -ライフ
2012.
曽根原登
マルチメディアのプラ
ログデータ駆動の情報循
10.4,
イバシー保護 最前線,
環とプライバシー保護-
電子情報通信学会, 幕張
メッセ [特別講演]
マルチメディア情報ハ
イディング・エンリッ
チメント研究会 (EMM)
利用者のニーズを満たす
2012.
マルチメディアのプラ
ホテルパッケージ提示方 一藤裕, 曽根原登
10.4,
イバシー保護 最前線,
法の考察
電子情報通信学会, 幕張
メッセ [一般講演]
クライシスに強い社会・ 山田茂樹, 曽根原登, 今 電子情報通信学会,ソサ
2012.
生活空間創成の研究開発 井和雄, 安田浩, 青木利 イエティ大会 BI-10-4,
9.12
の提案
晴
富山大学[特別講演]
ビッグデータ駆動イノベ
クラウドテストベッド
ーションとデータ中心科
コンソーシアム 第二回
2012.
曽根原登
学 Web データ駆動型の
統計情報の勉強会, NICT
7.10
情報循環システム
麹町会議室 [招待講演]
松本賀久・澤田努・曽 情報通信マネジメント
Wi-Fi を利用した 3G 不感
根原登・川内敦文・畠 研究会(ICM), 電子情 2012.7.
エリアにおける救急通信
山豊・倉本秋・奥村誠 報通信学会, 小樽市民会 12-13
システム実証
二
館
個人情報の取り扱い項目
技術と社会・倫理研究
2012.3.
を利用した Web サービス
一藤裕, 曽根原登
会(SITE), 電子情報通
15-16
のリスク推定方法の一検
信学会, 北海道大学
討
情報処理学会 研究報告
Web 予約データを用いた
コンピュータセキュリ
2011.
復興政策決定支援方法の 一藤裕, 曽根原登
ティ(CSEC), Vol.55,
11.28
提案
No.5, pp.1-5
情報処理学会 研究報告
クライシスに強い社会基
コンピュータセキュリ
2011.
盤 -震災に学ぶレジリエ 曽根原登
ティ(CSEC), Vol.55,
11.28
ント社会システム-
No.4, pp.1
情報処理学会, 第 104 回
電子ブックのグループ閲
山地一禎,中村素典,西 情報基礎とアクセス技
2011.
覧を可能にする PKI を活
村健,大谷誠,曽根原登 術研究発表会, 九州大学
11.22
用した DRM 機能の実装
附属図書館
地域における救急医療の
5
情報化
6
インタラクティブ情報
アクセスと可視化マイ
ニング第 2 回研究会,慶
応義塾大学
63
地域生産サービス消費型
ジャパン・クラウド・コ
観光産業と暮らしの安全
ンソーシアム観光クラ
・安心確保につなぐ地域
ウド・ワーキング・グ
15
曽根原登
防災(減災)基盤の連携に
ループ設立総会, タイム
よる観光・防災(減災)情
24 ビル
報連携クラウドへの期待
ネットワーク Voronoi 図の
地理情報システム学会
橋本 知宜、Htoo Htoo、
16 マテリアライズ化に関す
2011 年学術発表大会,
大沢 裕、曽根原 登
る一考察
鹿児島大学
茂木 恭兵,Aye Thida 地理情報システム学会
経路履歴を用いた車両実
17
Hlaing,大沢 裕,曽根 2011 年学術発表大会,
時間モニタリング
鹿児島大学
原 登
地理情報システム学会
西潟 耕治,Htoo Htoo,
道路網上における C‐
18
2011 年学術発表大会,
OSR 探索法
大沢 裕,曽根原 登
鹿児島大学
1st International Forum on
Think-tank Development
“Yesterday, today and
Data-Centric Social
tomorrow of think tanks”
19 Informatics For Public
Noboru Sonehara
上海社会科学院信息研
Policy and Decision
究所,Shanghai, China〔招
待講演〕
スマートフォンを利用し
小林哲郎,Jeffrey Boase, 日本社会心理学会第 52
20 た携帯コミュニケーショ
大会(JSSP2011)
曽根原登
ンログの解析
Providing Basic
Md. Nurul Huda, Farzana IEICE Society
21 Communication Services in Yasmeen, Shigeki Yamada, Conferences, Hokkaido
a Disaster Stricken Region Noboru Sonehara,
University, Sapporo
救急医療情報連携シス
討論:高知発の救急医療情
テム・ワークショップ,
22 報連携システムの全国展 曽根原登 他
高知市総合あんしんセ
開に向けて
ンター
the 8th Asia Pacific
Breakthroughs in
Telecommunication and
telecommunications through
Sonehara Noboru
lCT Development Forum
23
data-centric human and
(ADF-8), Macao, China
social informatics
〔招待講演〕
学術認証連携(学認)によ
る学術資源の有効活用と
NUA 学術情報システム
24
曽根原登
セキュリティリスクの低
研究会
減
松本賀久, 澤田 努, 村
ICT による地方型救急医
田厚夫, 畠山 豊, 庄司 電子情報通信学会, 情報
療支援-映像伝送システ
勇木, 倉本 秋,川内敦文, 通信マネジメント研究
25
ムによる緊急医療支援実
長谷川 学,奥村 誠二,
会 (ICM) , 九州大学
証-
中野 公介,曽根原 登
第 102 回情報基礎とアク
セス技術第 80 回デジタ
ルドキュメント合同研
電子書籍閲覧における組
西村健, 中村素典, 井上 究発表会, 情報処理学会
26 織横断型認証のためのグ
仁, 山地一禎, 曽根原登 研究報告
ループ管理
2011-IFAT-102(5) 筑波
大学春日エリア 情報メ
ディアホール
64
2011.
10.21
2011.10.
15-16
2011.10.
15-16
2011.10.
15-16
2011.9.
27-28
2011.9.
18-19
2011.9.
13-16
2011.8.9
2011.6.
28-30
2011.
6.24
2011.5.
12-13
2011.3.
28-29
Development for a Virtual
Organization Platform:
27 GakuNin-mAP and its Case
Study in a Japanese
Federation.
入力デバイスによるコン
28 ピューターの操作特性の
違いと加齢変化
29
ICT 活用における医療情
報の保護について
学術認証フェデレーショ
30 ンによる知の循環基盤の
創成
コンピュータ操作におけ
31 るポインタの視覚呈示の
効果
32
Fast Optimal Sequenced
Route Query Algorithm
33
携帯電話用いた移動体モ
ニタリング
経路履歴抽出の為のオフ
34 ラインマップマッチング
方式
35
道路網上での距離に基づ
く k-NN 経路探索
学術認証フェデレーショ
36 ンと学術情報サービスに
ついて
37
ICT Risk Rating of e‐
Commerce
38
データ中心科学と保健医
療科学
Privacy in Business
Processes – Identifying
39 Non-Authorized Disclosure
of Personal Data to Third
Parties
リング状画像検索インタ
40
フェース
41
On the Risk Measurement
for Shared Personal Data
TERENA Networking
Conference
2011.3.
2011(TNC2011), Prague,
16-19
Czech Republic (ポスタ
ー発表)
第 6 回日本感性工学会春
金子利佳,金子寛彦,曽根 季大会, 九州大学 大 2011.3.3
原登
橋キャンパス(ポスタ
-4
ー)
「ICT 利活用が拓く医療
・介護の地域連携」研修 2011.
曽根原登
会, 高知県新ロイヤル
2.23
ホテル四万十
Takeshi Nishimura, Kazu
Yamaji, Hitoshi Inoue,
Motonori Nakamura,
Noboru Sonehara,
第 4 回統合認証シンポジ
ウム,佐賀大学
曽根原登
2010.
12.22
日本基礎心理学学会
金子利佳, 金子寛彦, 曽 第 29 回大会, 関西学院 2010.11.
根原登
大学 西宮上ヶ原キャン
27-28
パス(ポスター発表)
Htoo HTOO, Yutaka
第 19 回地理情報システ
2010.10.
OHSAWA and Noboru
ム学会学術研究発表大
23-24
会,1C-1,立命館大学,
SONEHARA
第 19 回地理情報システ
2010.10.
藤野 和久・Htoo Htoo・
ム学会学術研究発表大
23-24
大沢 裕・曽根原 登
会,3D-2,立命館大学
第 19 回地理情報システ
路 琳・藤野 和久・大
2010.10.
ム学会学術研究発表大
沢 裕・曽根原 登
23-24
会,3D-4,立命館大学
橋本 知宜・Aye Thida
第 19 回地理情報システ
2010.10.
HLAING・藤野 和久・ ム学会学術研究発表大
23-24
会,2D-2,立命館大学
大沢 裕・曽根原 登
国立情報学研究所(NII)
講演会-学術情報基盤
2010.
曽根原登
の将来に向けて-, 和歌 10.21
山大学
日本-オーストリア共催
ワークショップ「情報通 2010.10.
曽根原登
信技術」,国立情報学研究 18-19
所
第 1 回 Faculty
Development(教員資質向 2010.
曽根原登
上研修) ,国際保健医療科
10.4
学院
JST Austria-Japan
S. Wohlgemuth, I.
Workshop on “ICT”,
Echizen, N. Sonehara, and
National Institute of
G. Müller,
Informatics, Japan
曽根原登, 梶山朋子
Nurul Huda・Shigeki
Yamada・Noboru
Sonehara,
65
イノベーション・ジャ
パン 2010 出展
電子情報通信学会, 2010
ソサイエティ大会, 大阪
府立大学
2010.10
2010.9.
29-10.1
2010.9.
14-17
トランスポートとモビリ
ティ -未来への挑戦-,
42 Chair:Knowledge-Sharing 曽根原登
for Solving Worldwide
Social Problems
日独交流 150 周年記念キ
2010.9.
ックオフシンポジウム,
13-14
国立オリンピック記念
青少年総合センター
人間文化研究機構, 第 4
回人間文化研究情報資
2010.
源共有化研究会, 国立国
9.10
語研究所
平成 22 年度第 7 回総会
・拡大幹事会・分科会:
シンポジウム「世界をリ
2010.
ードする最先端学術情
曽根原登
7.15
報基盤 学術認証フェ
デレーションの未来を
探る, 東京海洋大学
Annual National
Convention at Senshu
S. Wohlgemuth, I.
University Ikuta Campus,
2010.
Echizen, N. Sonehara, and
Kawasaki City, JSSM
6.26
G. Müller,
(Japan Society of Security
Management), Japan
Exhibition of the NII Open
Sven Wohlgemuth, Isao
House 2010, National
2010.6.
Echizen, Noboru Sonehara
Center for Sciences, 2010.
3-4
and Gunter Muller,
Poster
Kazutsuna Yamaji,
Motonori Nakamura,
the TERENA Networking
2010.5.
Toshiyuki Kataoka,
Conference(TNC2010)
31-6.3
Tananun Orawiwattanakul,
Poster
Noboru Sonehara, and
Yasuo Okabe,
Tananun Orawiwattanakul,
Kazutsuna Yamaji,
the TERENA Networking
2010.5.
Motonori Nakamura,
Conference(TNC2010)
31-6.3
Toshiyuki Kataoka, and
Poster
Noboru Sonehara,
山地一禎,中村素典,片
岡俊幸,西村健,Tananun インターネット技術第
2010.5
Orawiwattanakul,曽根原 163 委員会(ITRC) 27
登, 岡部寿男
米国最新事例に学ぶセ
キュリティソリューシ
ョンセミナー, TKP 大手
2010.
曽根原登
町カンファレンスセン
5.13
ター, ニクサン株式会社
主催
Wissenschaftlicher
Gesprächskreis, Deutscher
Akademischer Austausch
S. Wohlgemuth, I.
Echizen, N. Sonehara, and Dienst (DAAD) und
2010.4
Deutsche Gesellschaft der
G. Müller,
JSPS-Stipendiaten e.V.,
Tokyo, Japan,
世界をリードする学術「知
43
曽根原登
の循環」基盤の構築
産学連携による学術情報
44 サービスの研究開発の進
め方
Privacy and the Disclosure
45 of Personal Data to Third
Parties
Privacy in e-Health Enforcement of
46
Privacy-compliant
Disclosure of Personal Data
Japanese Federation
GakuNin Toward the
47
Production Operation in
2010
User Consent Acquisition
48 System for Japanese
Federation (GakuNin)
49
学術認証フェデレーショ
ン Gakunin の本格運用
50
基調講演, ICT 社会のセキ
ュリティとリスク管理
Privatsphäre und die
Weitergabe
51 personenbezogener Daten an
Dritte am Beispiel der
elektronischen Patientenakte
66
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
マウス操作における運動
感覚と画面の傾き
第 43 回知覚コロキウム, 2010.3.
新潟県(口頭発表)
25-27
BS-7 Network
Tananun Orawiwattanakul,
User Level Export Control
Middleware for
Kazutsuna Yamaji,
of Personal Information in a
Constructing Distributive
2010.3.
Motonori Nakamura,
Cooperative Environment,
16-19
Federated SSO Environment
Toshiyuki Kataoka, and
IEICE 2010, 東北大学
Using Shibboleth
Noboru Sonehara,
川内キャンパス,
電子情報通信学会,イン
Sven Wohlgemuth,
ターネットと運用技術
A Privacy Aspect on the
研究会, 宮城県, IEICE
Disclosure of Personal Data Noboru Sonehara, Isao
2010.3.1
Echizen, Guenter Mueller, technical report 109(437),
to Third Parties
147-152
UPKI サーバ証明書プロジ
島岡政基, 西村健, 中村 信学技報, Vol. 109, No.
ェクトにおける証明書自
2010.3
素典, 曽根原登, 岡部寿 438, IA2009-113
動発行支援システムの開
pp.225-228
男
発
UPKI 証明書自動発行検証 西村健, 島岡政基, 中村 信学技法, Vol. 109, No.
プロジェクトのシステム 素典, 曽根原登, 岡部寿 438, IA2009-114
2010.3
移行における課題と対策 男
pp.229-234
共通認証基盤構築の意義
と学術認証フェデレーシ 庄司勇木, 中村素典, 山
信学技報
2010.1
ョンの直面する政策上の 地一禎, 曽根原登
課題について
第 37 回ディジタル図書
2009.
シボレスシステムを用い 山地一禎, 片岡俊幸, 中 館ワークショップ合同
研究会,筑波大学東京キ
11.19
た属性連携基盤の開発
村素典, 曽根原登
ャンパス
クラウドコンピューティ
第 7 回ソシオネットワー
ングと社会問題, Social
ク戦略研究国際会議,関
西大学 千里山キャン
Simulation Based on Human
2009.
曽根原登
パス 100 周年記念会館,
10.25.
Behavioral Data Collected
討論者, Proceedings
from Web-Based
Experimental System
pp.165-177
SITE/IPSJ-SPT/IPA 合同
2009.
サイバー犯罪と地域社会 沼田秀穂, 池田佳代, 渡
開催研究会, 情報処理推
10.7
との関連性の研究
辺克也, 曽根原登
進機構(IPA) ,.
マウス操作における運動 金子利佳, 金子寛彦, 曽 日本心理学会第 73 回大 2009.8.
感覚の学習特性
根原登
会,立命館大学
26-28
Yamaji K., Kataoka T.,
28th Asia Pacific
Nishimura T., Shimaoka
Advanced Network
2009.7.
UPKI Federation –2009
M., Nakamura M.,
Meeting (APAN), Kuala
20-23
Pilot Operation–
Sonehara N. and Okabe Y. Lumpur Malaysia
NUA 学術情報システム
学術認証連携システムと
研究会(大学 NUA)第
運営モデルの研究開発 曽根原登
32 回研究会, 跡見学園女 2009.7.1
UPKI の Shibboleth 実証実
子大学 文京キャンパ
験についてス
情報信頼メカニズムの研
NII オープンハウス,プ
2009.
究 Web サイトの危うさ 曽根原登
レゼンテーション,一橋
6.11
推定
記念講堂
平成 21 年度 TOPIC 講演
2009.
学術認証連携の進め方
曽根原登
会・研修会, 東北大学百
4.24
周年記念会館
金子寛彦, 曽根原登
67
Session 1 情報基盤センタ
ーにおけるネットワーク
曽根原登 他
66
・グリッド・UPKI に対
する取り組みについて,
67
データ共同利用とデータ
連携研究にむけて
曽根原登
(3) 書籍・報告書等
書籍・報告書名
ビッグデータ時代のライフロ
1
グ ICT 社会の“人の記憶”
インタビュー“データ中心人
2 間・社会科学の創出を目指し
て”
対談“情報学と統計学の融合
3
がもたらすもの”
平成 20 年度 CSI 委託事
業報告交流会(ネットワ
ーク・e-サイエンス系),
学術総合センター
研究・教育のためのデ
ータ連携ワークショッ
プ(第 1 回),国立情報
学研究所主催,一橋記念
講堂
著者
安岡寛道, 曽根原登, 宍
戸常寿
出版社
2009.
5.18
2009.
4.22
東洋経済新報社
年月
2012.7
曽根原登
NII today, No.55
2012.3
曽根原登
NII today, No.55
2012.3
(4) 新聞・テレビ等
1
内容
日経ビジネス「特集-ビッグデータ 本当の破壊力-Suica ショックの教
訓 データを「解放」せよ」
(曽根原登)
年月
2013.9.30
2
日本情報産業新聞「ビッグデータを観光と防災に」
(一藤裕、曽根原登)
2013.3.11
6
日刊工業新聞社 Business Line「情報・システム研究機構、ビッグデータで
2013.3.7
“観光予報”-宿泊施設関連分析」
(一藤裕、曽根原登)
株式会社イノベーションプラスのプレスリリース「スマートフォンアプリ
向け『ID-ECO システム & サービス開発プラットフォーム』を構築 国
2013.2.8
立情報学研究所 人間・社会データ基盤プロジェクトと共同で開発」
@IT「総務省主導のクラウドテストベッドコンソーシアム 政府統計のビ
2012.7.9
ジネス活用目指す団体が勉強会を Ustream 配信」(曽根原登)
日本経済新聞 医療・介護 最前線リポート(高知医療再生機構)「患者
2011.11.18
の映像、救急車から」
7
来源:人民网-上海频道「首届信息智库高层论坛在沪召开」
2011.9.29
8
稿件来源:解放日报「各国专家研讨信息智库发展战略」
2011.9.29
9
高知新聞「救急医療に ICT 活用を」
2011.8.12
3
4
5
10 高知新聞「救急車から患者動画伝送」
11
2011.4.21.
ハミングヘッズ News&Report「クラウド化する、学術ネットワーク環境に
ついて講演」
(学術オープンフォーラムレポート)
68
2010.11
(5) 特許
タイトル名
1
緊急時情報管理システ
ム
情報検索表示装置、方
2 法および情報検索表示
プログラム
情報検索表示装置、方
3 法および情報検索表示
プログラム
情報検索表示装置、方
4 法および情報検索表示
プログラム
出願者
大学共同利用機関法人情報・シス
テム研究機構(発明者:曽根原
登、越前 功)
大学共同利用機関法人情報・シス
テム研究機構(発明者:曽根原
登、梶山 朋子)
大学共同利用機関法人情報・シス
テム研究機構(発明者:曽根原
登、梶山 朋子)
大学共同利用機関法人情報・シス
テム研究機構(発明者:曽根原
登、梶山 朋子)
出願番号
出願年月
特願
2012-093422
2012.4.16
特願
2011-063851
2011.3.23
特願
2011-045666
2011.3.2
特願
2011-027643
2011.2.10
(6) 獲得グラント
グラント名
日本学術振興会議
1 先導的研究開発委
員会
総務省「新 ICT 利
2 活用サービス創出
支援事業」
日本電信電話株式
会社 組織対応型
3
(包括的)連携協
定
総務省「地域雇用
4 創造 ICT 絆プロ
ジェクト」
財団法人セコム科
5 学技術振興財団
研究助成
タイトル
採択者
配分額
クライシスに強い社会・生活空
間の創成
研究・教育機関における電子
情報・シス
ブック利用拡大のための環境整 テム研究機
備
構
NTT 環境エ
IP パケットからの CO2 消費量 ネルギー研
推定と CO2 削減インセンティ 究所・情
ブ制度設計
報・システ
ム研究機構
高知県地域
救急医療における情報連携シス
医療再生機
テムの構築及びCS(コミュニ
構, 情報・シ
ケーションスペシャリスト)育
ステム研究
成事業
機構
ユビキタス情報社会における高
度サービスとプライバシーの両
曽根原 登
立を実現する新たな匿名化手法
と漏えい防止手法の確立
実施
年度
2012.102016.9
2010.112011.3
2011
2011-2013
(7) その他(特記事項)
受賞
受賞名
1 MCPC award 2012
One of the best papers at the
25th IFIP International
2
Information Security
Conference (IFIP SEC 2010)
3
IMIA-WG4 (SiHIS) 2009
workshop
タイトル
高知医療再生機構「救急医療情報連携システム」
年月
2012
受賞者:S. Wohlgemuth, I. Echizen, N. Sonehara, G.
Mueller
2011.1
[3] Sebastian Haas, Sven Wohlgemuth, Isao
Echizen, Noboru Sonehara , On Privacy in Medical
Services with Electronic Health Records
2009.11
69
70
3.3. 企業における情報セキュリティの
実効性あるガバナンス制度のあり方
(研究代表者:林 紘一郎)
71
3.3.1. 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「情報と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」
研究開発プロジェクト名
企業における情報セキュリティの実効性あるガバナンス制度
のあり方
研究代表者(現所属)
林 紘一郎(情報セキュリティ大学院大学 教授)
研究実施期間
平成 19 年 7 月~平成 21 年 12 月(2007 年 7 月~2009 年 12 月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.3.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
日々膨大な情報を取り扱いリスク・テイカーである企業を対象に、情報セキュリティを実
効あらしめるために、いかなる「制度」が望ましいかという視点から、そのガバナンスの
あり方を検討する。リスク類型別のケーススタディにより、消費者の視点に立って問題点
を摘出する。そして、誰がどのような責任を負うべきか、あるいは責任の追及よりも今後
の改善策の検討により多くの資源を投入すべきか等について、判断基準を提供する。また
判断基準が提供できないケースについては、その原因を明確にする。
3.3.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
(1) 総括班
氏名
期間中の所属・役職
情報セキュリティ大学院大
学 副学長・教授
担当
岡村 久道
英知法律事務所 弁護士
同上
国領 二郎
慶應義塾大学 教授
同上
田中 英彦
情報セキュリティ大学院大
学 研究科長・教授
同上
江崎 浩
東京大学 教授
同上
苗村 憲司
駒澤大学 教授
同上
大井 正浩
情報セキュリティ大学院大
学 客員教授
同上
鈴木 正朝
新潟大学 教授
同上
内田 勝也
情報セキュリティ大学院大
学 教授
同上
林 紘一郎
全体の取りまとめ
72
参加期間
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
(2) 法制度班
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
鈴木 正朝
新潟大学 教授
法制度的観点から見た企
業の「情報セキュリティ
ガバナンス」と責任論
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
早貸 淳子
JPCERT 常務理事
同上
岡田 仁志
国立情報学研究所 准教授
同上
城所 岩生
成蹊大学 教授
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
佐藤 慶浩
日本ヒューレット・パッ
カード㈱
同上
新保 史生
筑波大学准教授
同上
湯淺 墾道
九州国際大学 副学長・教授
同上
石井夏生利
情報セキュリティ大学院大
学 准教授
同上
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
内田 勝也
情報セキュリティ大学院大
学教授
経営管理手法から見た企
業の「情報セキュリティ
ガバナンス」と責任論
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
加賀谷哲之
一橋大学 准教授
同上
中尾 宏
東京情報大学 准教授
同上
山川 智彦
NTT データ
同上
藤本 正代
富士ゼロックス
同上
柿崎 環
跡見学園女子大学 准教授
同上
(3) 経営管理班
73
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
(4) 技術班
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
江崎 浩
東京大学 教授
技術的観点から見た企業
の「情報セキュリティガ
バナンス」
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
辻
㈱情報技研 代表取締役
同上
秀典
砂原 秀樹
門林 雄基
小林 克志
奈良先端科学技術大学院大
学 教授
奈良先端科学技術大学院大
学 准教授
産業技術総合研究所
同上
同上
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 3 月
(5) 最終報告書起草グループ
氏名
期間中の所属・役職
情報セキュリティ大学院大
学 教授
担当
最終報告書作成・取りま
とめ
鈴木正朝
新潟大学 教授
最終報告書作成
早貸淳子
JP-CERT 常務理事
同上
佐藤慶浩
日本ヒューレット・パッ
カード㈱
同上
湯淺墾道
九州国際大学 副学長・教授
同上
藤本正代
富士ゼロックス
同上
柿崎 環
東洋大学 教授
同上
辻
㈱情報技研 代表取締役
同上
廣松毅
秀典
田川義博
石井夏生利
情報セキュリティ大学院大
学 セキュアシステム研究
情報セキュリティ大学院大
学 准教授
同上
同上
74
参加期間
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
3.3.1.3. 研究開発の内容
(1) 課題の設定と仮説の定立
本プロジェクトの課題の設定から仮説の定立に至る検討過程で、情報セキュリティの発展
に関する時代区分、情報セキュリティの社会的意義づけ、リスク類型別のケーススタディ
等の事項について検討を行い、知見を得た。
(2) 理論研究
(1)の事項に関する検討を深めるため、その背景となる理論的研究として、情報セキュリ
ティの保護対象である「情報資産」の再定義、流通制御(動態的ガバナンス)の必要性と
方法、情報セキュリティに関する法人責任論、見えないものの品質保証、ガバナンスの現
状とあり方、ガバナンスの類型化、コーポレートガバナンスに関する新しい視点、情報セ
キュリティ研究の基礎的課題等の検討を行い、それぞれについて知見を得た。
(3) 実証研究
実証研究として、セキュリティの実効性と企業風土に関する調査、会社の情報流通実態調
査、IISEC における P マーク取得企業調査、CIO(CISO を含む)調査の 4 調査を行った。
(4) 経営層に向けた提言
企業経営における情報セキュリティの重要性に関して、トップ・エグゼクティブ(特に文
系出身者)が、共有すべきである 5 項目の認識(①リスク・テーカーとしての企業、②業
務のシステム依存、
③経営者自身に課せられた最適化問題、④ガバナンス制度間の整合性、
⑤企業ごとの特色)を提示した。
(5) 個別提言
上記の研究を踏まえ、以下の提言を行った。
ア)情報セキュリティガバナンスのあり方に関する提言
提言 1:外部委託と情報セキュリティ対策
提言 2:アジアへ進出している日系企業の情報セキュリティ・マネジメント対策
提言 3:情報セキュリティと内部統制規制のあり方
イ)シグナル情報に関する提言
提言 4:第三者認証制度に求められる 8 原則
提言 5:見えないものの品質保証
提言 6:表示に伴う責任論
ウ)情報と情報セキュリティの一般論に関する提言
提言 7:情報セキュリティ強化に資する法制度
提言 8:情報法の客体としての「情報」の捉え方
提言 9:情報漏えいと個人情報保護
75
3.3.1.4. 研究開発の成果
企業にとって実効性のある情報セキュリティのあり方の類型化、消費者視点によるガバナ
ンスのあり方の提言等
① 情報セキュリティ文化の醸成のための社会的アピール
企業経営における情報セキュリティの重要性に関して、トップ・エグゼクティブ(特に文
系出身者)が、5 項目の認識(前述)を共有すべきであるという結論に到達した。
これら 5 項目は、本研究から生まれる諸提言を理解する基礎となるとともに、わが国固有
の情報セキュリティ文化の醸成に寄与するものである。
② インシデントの分類と責任のあり方を明らかに
個人情報漏えいやスパムメールなどのインシデントを分析し、リスク対応やガバナンス制
度との間に対応関係があることを解明した。
これを元に、責任のあり方を正負のサンクション(ペナルティが課される場合のほか、報
奨金が得られる場合を含む)として分類した結果、パターンを抽出した
③ ガバナンス制度の類型化
社会科学の 3 分野(法学、経済学、経営学)の理論を下敷きに、多角的検討を行い、社会
全体が共有するとともに、ブレークダウンした「提言」として訴求した。
3.3.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
本プロジェクトでは、情報セキュリティの社会科学的研究のプラットフォームの形成に寄
与した点で一定の成果が得られたと評価する。
本プロジェクトの成果は、情報セキュリティに関する責任の類型化による制度分析のた
めの基盤形成、第三者評価認証制度(品質保証表示制度)に関わる「コミットメント責任」
という新しい概念の提示、情報経済学における非対称性の概念と実証的データとあわせた
分析に基づく情報セキュリティに関する第三者評価認証制度改善の具体的提言など、いく
つかの調査、分析、提言を行ったことであり、これにより情報財の再定義、シグナル情報
(後述)の有用性、必要性が示され、情報セキュリティの社会科学的研究に関してはまと
まった先行研究が極めて少ない中で、昨今の情報環境に見合った基本的なプラットフォー
ムの形成に寄与したものとして価値が認められる。また、情報セキュリティ大学院大学の
カリキュラムに反映した点は一応の社会還元と言える。
76
しかしながら当初目標に照らせば、経営層に向けた提言はまとめられているものの、提
言が政策立案や法制度の設計・実装の場面、もしくは企業ガバナンス制度の設計・運用と
いう現場でそのまま実施できるレベルには至っておらず、達成度は限定される。また、本
プロジェクトでまとめられた理論研究および実証研究の調査内容・分析結果はいずれも興
味深いものであるが、
それらと提言との間の関係は必ずしも明確でないものが多い。特に、
情報セキュリティと責任の分類、ガバナンスの類型化などのきわめて重要な分析枠組みを
提示しながら、それが提言の作成に結び付いておらず、消化不足の面が認められる。
本プロジェクトの目指すところは意義が高く、今後のガバナンスのあり方に参考とすべ
き理論的指針を与えたことから、今後、その問題意識を持続しつつ必要であれば企業を巻
込んだ体制により、あらゆる企業において正しく「情報セキュリティの実効性あるガバナ
ンス制度」が理解され実施されるよう、さらに努力を継続することを強く要望する。
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトでは、研究開発目標はその一部が達成されたと評価する。
企業にとって実効性のある情報セキュリティのあり方をケーススタディで類型化し、消
費者視点で問題点を提示し、ガバナンスのあり方を提言するという目標設定そのものは、
大いに期待されるものであり、現に本プロジェクトにおいて示唆に富む調査・分析ととも
に一定の提言を行ったことは評価に値する。
ただし、調査・分析については目的に照らして行届いたものとなっておらずもう一段の
掘り下げが必要である。提言内容も現実に企業の意思決定者が使用できるレベルに達して
いるとは言い難い状況であり、具体的には当初目標で掲げられた次の2点に関しては、達
成が不十分と言わざるを得ない。
「リスクの類型別ケーススタディの実施」においては、セ
ンシティブな内容を含むこともから調査対象者による十分な協力が得られていない懸念が
あり、ケーススタディと見做せる活動が実施されたとは認められない。計画時にどのよう
な調査方法・体制をつくるかについて十分検討することが必要であったと考えられる。
「責
任追及と改善策検討の判断基準」においても、制度的対応を行うべきか判断基準の目安を
提供していると思われるが、これのみでは経営者や企業における意思決定者がどのような
制度的対応を行うべきか明確な判断ができるとは考えられない。いずれもいくつかの調
査・分析の結果を集めたレベルであり、当初目標とした企業や国レベルの政策に向けた具
体的提言という点では完成に至っておらず、今後の課題として残される。
(3) 技術的貢献
本プロジェクトは、ユビキタス社会のガバナンスに有用な技術として一定の貢献があっ
たと評価する。
情報セキュリティに関する社会科学的研究は、従来ほとんど研究例がなく、このような
状況のもと、法律学・経済学分野の知見を結集してこの分野を開拓したという点で、本プ
ロジェクトの研究は極めて重要なものと言える。その中で情報財の再定義、特に、第三者
77
認証評価制度について、情報経済学におけるシグナル情報(コンテンツ、サービス内容に
関わる、ユーザがそのサービスを評価するに有用なメタデータの総称)の概念を活用して
分析を行った点や、実証データから情報セキュリティにおける逸脱行動の分析を行った点
は評価に値する。本プロジェクトはその性格からして、いわゆる直接的な技術貢献を求め
るものではないが、この視点を今後技術的な取組みにブレークダウン(例えば ISMS 適用
における従業員満足という観点)していくことは大いに意義があると考える。
しかしながら、成果として経営層に向けた提言がまとめられているものの、企業の情報
セキュリティのガバナンスとして企業は具体的にどうするべきかという提言すなわち制度
設計、スキーム、アクションプランの指針といった現場で利用可能なレベルに至っている
とは認められない。また、実施したアンケートの結果も分析が十分とは言えず、今後社会
に向けて成果を発信するに際しては、さらにブラッシュアップが必要な状況である。
情報セキュリティの法と経済学による分析は、国際的にも研究成果がほとんど存在しな
いことを考慮すると、特にシグナル情報概念の第三者認証評価制度への応用やリスク対応
とガバナンス制度の分類、責任と対応するサンクションの分類、ガバナンス制度の類型化
などは新しい成果と言えるが、国際レベルと比較するには至っていないと考えられる。な
お、国内でも CSO が増えている状況を考えれば海外調査においては CIO ではなく CSO に
対して行った方が有益であった。
(4) 社会的貢献
本プロジェクトで得られた成果は、ユビキタス社会のガバナンスの構築に一定の貢献が
あったと評価する。
本プロジェクトでは、企業ガバナンスのための政策立案や法整備を目的として、企業行
動の指針を総括的、理論的にまとめ、現状の企業ガバナンスにおける問題点を明らかにし
た。特に、第三者評価認証制度の分析は重要であり、法律や制度改善の議論への足がかり
を作ったと言える。また、企業ガバナンスと情報セキュリティの逸脱行動に関して、アン
ケート調査とモデル分析によりルールの作成・運用と逸脱行動の関係に実証的背景を与え
たことから、現実のルール作成・運用に対して重要な示唆を与えた。このような形で、各
種の課題の枠組み設定を総合的に、また問題対応のみではなく価値実現の観点から検討し
提示したこと自体は貴重であり、今後さらにこれらを踏まえた活動が進められれば実際に
社会に貢献していく可能性がある。
しかし、情報発信も含め政策や法制度の立案に結びつく活動があまり見られないこと、
現在の成果の状況は企業から見れば既知の情報を超えていないことを考え合わせれば、現
時点での社会に対する貢献は小さいと考えざるを得ない。また、有用な提案はなされたも
のの、実際に社会の現場へどのようにフィードバックするかの道筋についても本プロジェ
クトの中では明らかにされていない。得られた成果をさらにブラッシュアップして発信・
活用していけば、社会に貢献しうる素材であることから、今後の活動の継続を大いに期待
したい。
78
(5) 副次的貢献
本プロジェクトにおいては、一定の副次的貢献があったと評価する。
本プロジェクトで提示されたセキュリティガバナンスに関するプラットフォームは、新
しいデジタルネットワーク環境における社会科学的考察に対する基盤を広範にわたって与
え、また新たな技術体系を生む可能性がある。
本プロジェクトが指摘している「情報セキュリティと法」データベースは、企業の実務
者・意志決定者にとって情報セキュリティにおける法令遵守に関する問題に疑問が生じた
ときに参照できる有用なものと考えられ、きわめて明確な副次的貢献と言える。また、適
切な情報セキュリティガバナンスは、ガバナンス一般と切り離すことのできないものであ
ることが明らかにされたのは有益である。
さらに、文系と理系の研究者が、この課題に対して、同じ場で議論するという機運が生
まれ、目的を一にして成果をまとめることに努力したことには意義があり、副次的貢献の
ひとつと言うことができる。
(6)成果の社会での活用・展開・情報発信
本プロジェクトの研究成果については、活用・展開・情報発信が一応なされており、そ
の取組みは経過・努力の観点も含めある程度有効と評価する。
情報発信の取り組みとしては、書籍、ウェブサイト構築、シンポジウム開催、新聞報道
を行い、
また、
情報セキュリティ大学院大学におけるカリキュラムに、
「統計的リスク管理」
「リスクの経済学」
「組織行動と情報セキュリティ」等の科目の新設、
「ガバナンスとコン
ティンジェンシー」という授業の開始など、これらの活動は社会に向けた啓発に対しある
程度有効である。
ただし、現実に政策や企業ガバナンスにおいて活用・展開する活動までには至っておら
ず、今後、企業における内部統制や社会的における情報セキュリティ文化の醸成を目指し
て、さらに活発な情報発信に努めるとともに、関係者で議論を重ねた上で政府や企業に対
して研究成果を活用するよう継続的に働きかけをしていくことが必要である。具体的には、
関連省庁に対して法律や公的制度を変革する必要のある課題を明確にして提言すること、
企業に対しては自発的行動を誘起する人材の効率的な育成を進めること、さらに関連する
学会・協会においては企業の意思決定者(経営者、CIO、CSO を含む)や情報セキュリティ
担当の実務者が企業ガバナンスの設計・運用に活用できるよう、本プロジェクトの成果を
具体的な行動規範・行動基準等のレベルにブレークダウンすること、などの活動が必要で
ある。
(7) 費用対効果比
本プロジェクトに投入した研究開発費に対する社会的貢献の大小は、今後の活動に依存
する要素が大きく、現時点ではどちらとも言えない状況にある。
79
現時点では、成果の状況が上述のごとく基礎的論点整理とプラットフォームの形成という
意味で価値があるものの具体的な政策立案や企業ガバナンスの提案としては不十分な状況
であることから費用対効果比は判断しがたく、今後の関係者の努力により現実の政策や企
業における情報セキュリティ対策に結び付いてはじめて判断できるものと考えられる。今
後の活動に結びつかない場合、現時点の状態では費用対効果比は高いとは言えない。
(8) 実施体制と管理運営
本プロジェクトの研究開発実施体制と管理運営は、比較的適切・妥当であったと評価す
る。
本プロジェクトにおいて、個々のグループはそれぞれ機能していたと思われるが、研究
代表者の報告に述べられているとおり、目標を大きく設定したことにより全体像が不明瞭
な結果になったようで、報告書の取りまとめにあたって新たに「起草班」を設けざるを得
なかったという事実はプロジェクトの運営にやや問題があったことを示している。しかし、
この対処により最終報告書を完成させ十分に準備された発表を行うことができたのは、実
施上の問題を認識して改善に取り組むという管理運営が機能したことは確かである。
(9) 特記事項
本プロジェクトにより提起された課題は重要であり、今後、提言をさらに公に議論する
場を用意することが必要と考えられる。
第 2 次情報セキュリティ基本計画の検討(2008 年公開)
、同計画案へのパブリックコメ
ント(2009 年)などの機会に本研究成果を踏まえて積極的に提言を行い、第 2 次情報セキュ
リティ基本計画検討委員会などと意見交換をすべきところであった。第 2 次情報セキュリ
ティ基本計画では、二つの方針すなわち、「事故前提社会」への対応力強化(事故が生じ
うることを前提とした形での対応力を強化を実現)および、「合理性に裏付けられたアプ
ローチの実現」(コストと効果のバランスを実現しつつ、利便性を重視した取組み)につ
いて具体的な深堀りがすでになされており、特に合理性を有する計量化可能な指標作成な
どが進展している。本プロジェクトでもそのような動向を機敏に捉え、定量的データとそ
の解析(多変量解析など)
、予測(主観的確率分布など)を行い、先進的な研究成果を提示
されることが望まれた。また、世界的な科学動向にも目を配るべきであり、世界各地で多
数開催されているセキュリティ、ガバナンスに関する国際会議においては、データインテ
ンシブでなければ高い評価を獲得しえないことに留意すべきである。
今後さらに研究を進めるにあたっては、前提となる「責任」や「プライバシー」などの
概念について、十分な分析を行っておく必要がある。本プロジェクトにおいてはプライバ
シーを秘密の情報に関わるものとしているが、昨今の状況では、公共空間において公然と
認められる情報であっても、電子的に保存・活用されるなどの操作によりプライバシー侵
害になり得る(Google Street View の例など)というのが大方の見方であり、このような点
にも留意すべきである。
80
本プロジェクトの体制では、文系、理系さまざまなジャンルの人々が同じ問題意識を持っ
て参加している。
この貴重なネットワークをこれからも維持し、企業におけるセキュリティ
ガバナンスのあるべき姿の実現を目指して協力していけば大きな成果が得られる可能性が
あり、今後の活動に期待される。
81
3.3.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.3.3.1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① 研究の継続・発展
本プロジェクトの終了後も、研究グループメンバーによる研究が継続されている。以下
に 2 例を示す。
クラウド時代の法制度と情報セキュリティ(富士通総研委託研究、2010 年度)
富士通総研から委託を受けた情報セキュリティ大学院大学が、学者や実務家をメンバー
とする研究会を組織し、約 5 ヶ月にわたって集中的に討議した結果を取りまとめた。クラ
ウド・サービス契約、国境を超えるサービス、プライバシー・個人情報保護、著作権、ク
ラウドのユーティリティ(公共事業)性等の面からクラウドにおける法的問題点を検討し
た。ユーザ企業視点から、クラウド環境におけるリスクの分類とガバナンスのあり方を考
察し、クラウド環境にはセキュリティに関する不安が残っていることを明らかにした。
研究の結果、クラウドが騒がれる割には、法的課題は既に検討されていたものか、その
延長上で解決可能なものが多い一方で、同じ問題であっても規模が違ったり、影響の拡散
速度が違ったりすることで、いわば「量が質に転化する」可能性が高いことを指摘した。
また、ユーザ企業視点からリスクの分類とガバナンスのあり方を考察し、クラウドのリス
クは従来のものと大きく異なるものではないが、その社会的影響は従来の比ではないこと
を指摘した。
経済活動のグローバル化に伴う情報セキュリティ管理上の人的諸問題(淺井達雄、2012 年
度)
異文化環境下においてセキュリティポリシーを徹底しようとする際に、本国の文化と現
地の文化との違いによってどのような問題が発生するかを明らかにした。異文化環境下に
おける問題発生のリスクを推定する LoP 理論(潜在的可能性)を提案し、本理論の実用性・
信頼性を確認しつつ、ASEAN 諸国、BRICs 諸国における海外会社において、情報セキュ
リティ上発生すると想定される問題の発生リスク及び発生した場合の問題の深刻さに関す
る国際調査を実施した。
その結果、①上記リスクは LoP 理論によりある程度推定できること、②投資国が進出先
国において共通して遭遇する問題は、現地従業員が「知らないうちに機密情報を共有して
しまっている」問題、
「以前勤務したことのある企業の機密情報を使用する」問題であるこ
と、③最も深刻な問題がどのような問題であるかは投資国と被投資国との組合せにより決
まること等を明らかにした。
82
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
① 情報セキュリティ大学院大学における情報セキュリティ特別講義の実施
平成 22 年度から情報セキュリティ大学院大学の科目として、ガバナンスとコンティン
ジェンシーといった内容にて、実務社会におけるリスクやコンティンジェンシープランの
策定の意義等を学ぶ、
「情報セキュリティ特別講義」を設置した。現在では本科目は、広く
情報セキュリティに関する各界(情報セキュリティ大学院大学連携教授のほか、官公庁、
民間企業、研究機関等)から専門家講師を招き、セキュリティに関する講義を実施し、情
報セキュリティに関する最新情報を習得するとともに受講者の知見を深めることを目的と
したものになっており、講義は毎回、専門家講師によるリレー方式により実施されている。
② 研究成果の総括を書籍「セキュリティ経営」として発刊
本プロジェクト及びその後の主要な研究成
果を総括する書籍として、林紘一郎、田川義
博、淺井達雄 3 氏による共著「セキュリティ
経営」を、勁草書房より 2011 年 12 月に発刊
した。本書では、情報セキュリティを核にし
つつ、リスク管理や事業継続も視野に入れて、
「経営に資するセキュリティ」の観点から研
究の到達点を示し、平時の四原則と非常時の
四原則等、いくつかの新規提案を試みている。
具体的には、インシデントの分類と責任の
所在、ガバナンス制度の類型化、ガバナンス
手法のベストミックス、文化的差異による問
題発生の可能性等、RISTEX の研究プロジェ
クトの成果を一般向けにわかりやすく紹介し
た。一方で、新たなキーワードとして、復元
力(レジリエンス)
、係長セキュリティから社
長セキュリティへ、Need-to-Know の原則、情
報セキュリティのレイヤ構造等、セキュリ
図 8 著書「セキュリティ経営」
ティ経営における日米対照仮説と失敗学非親
和性仮説等を提起している。
③ 情報セキュリティ政策会議普及啓発・人材育成専門委員会における情報セキュリティ人
材育成に向けた提言
「情報セキュリティ問題に取り組む政府の役割・機能の見直しに向けて」
(2004 年 12 月
7 日IT戦略本部決定)を受け、我が国の情報セキュリティ問題の根幹に関する事項を決定
83
する会議として、IT戦略本部の下に設置された「情報セキュリティ政策会議」内の専門委
員会において、
情報セキュリティ分野の人材育成施策の今後の方向性の検討がなされた
(委
員長:林教授)
。本委員会では、情報セキュリティに関する人材を大きく 4 分類し(①企業
等、②政府機関等の情報セキュリティ担当者、③情報セキュリティ産業人材、④先端的な
研究者・技術者)
、必要な施策を整理している(情報セキュリティ政策会議普及啓発・人材
育成専門委員会報告書
「情報セキュリティ人材育成プログラムを踏まえた 2012 年度以降の
。
当面の課題等について」
、2012 年 5 月 7)
本研究プロジェクトから連なる研究成果に関連した事項としては、主に企業等の情報セ
キュリティ担当者向けに、企業トップの意識改革(「係長セキュリティ」から「社長セキュ
リティ」へ)
、広義の情報セキュリティリスクの必要性等を主張しつつ、具体的施策として
下記等を提示している。
・横断的キャリアパス・モデルの策定・普及
・人材育成計画策定促進
・リカレント教育の促進
・経営層向けセミナーの開催・表彰の実施
・CISO 等の設置促進
・情報セキュリティに関する事故事例等の共有化の検討
・情報セキュリティに詳しい法律家の育成
④ 総務省「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」におけるプライバシー・コミッ
ショナー制度創設に向けた検討」
パーソナルデータの利活用の枠組み及びその実現のための方向性を検討した総務省
「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」
(平成 24 年度 8)に、本事業のメンバー
が複数人参加している(鈴木教授、岡村弁護士、新保教授、石井准教授)
。本研究会では、
パーソナルデータの利活用の枠組みの本格的な実施に向け、国際的な調和や永続性・安定
性の確保といった観点から、プライバシー・コミッショナー制度(パーソナルデータの保
護のための独立した第三者機関)の必要性を指摘している。プライバシー・コミッショナー
制度の創設は、RISTEXのプロジェクトにおいて、鈴木教授、湯淺教授が提言をした事項で
あった。
7
8
参考 URL:http://www.nisc.go.jp/press/pdf/jinzai_kadai2012_press.pdf
参考 URL:http://www.soumu.go.jp/main_content/000225513.pdf
84
3.3.3.2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの開
拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
① 研究メンバー同士の交流が継続する中、ステップアップを果たす研究者も
本プロジェクトに参加した研究メンバー同士の交流・連携・協働は、大きく 2 つのグルー
プに分かれながらも(ISMS 9 のような第三者評価制度を正確に満たそうとする考え方
(Satisfy派:十分に満たす)のグループと、要求水準ぎりぎりで満たそうとする考え方
(Satisfice派:必要最小限を満たす)のグループ)
、現在も継続している。
その中で、湯淺墾道氏が情報セキュリティ大学院大学に招聘され教授になる等の動きも
見られている。
② 「経営学は情報学の一部である」という新たな考え方の提起
従来は、
「経営情報学」を、情報を客体としてそれをどのように扱うかを考える学問と定
義し、戦略論、マーケティング論、財務管理論等と同等に位置付けている研究者が多かっ
た。本研究チームでは、戦略論、マーケティング論、財務管理論等はすべて、情報処理を
どのように行うかという理論の上に成立しており、情報が土台にあって、戦略、マーケティ
ング、財務のほか、人事、購買、製造等に至るまでその土台の上にあると位置づけている。
すなわち、経営学は情報学の一分野であるという新たな考え方を提起したと言える。
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
① 著書「セキュリティ経営」の発刊が、IPA「日本的経営と情報セキュリティ研究会」の
設置につながる
前述の著書「セキュリティ経営」に対し、情報処理推進機構(IPA)が関心を示したこ
とから、
「セキュリティ経営」までに到達した地点を出発点に、それを補いあるいは部分修
正するとともに、さらに高みに達するべく、IPA に研究会の提案をして了承され、平成 24
年度に「日本的経営と情報セキュリティ研究会」を発足した。委員 8 名のうち 3 名は本研
究プロジェクトのメンバーである(林紘一郎氏、加賀谷哲之氏、柿崎環氏)
。
研究会では、
セキュリティ経営実現のための企業リスクマネジメントのあり方について、
①リスクに対する経営者の判断のあり方を再考すること、②社内の情報共有において、相
対的剥奪から従業員による不正発生を抑制する観点からも「Need-to-Know」の原則を確立
9
information security management system
85
すること、③企業活動に関わる低確率なリスクを、
「想定外」から「残留リスク」へと変化
させること、④適切なセキュリティ投資の水準を算定すること、の 4 つの論点を示した。
また、今後の課題として、①セキュリティ経営と企業価値向上の因果関係を明らかにする
こと、②伝統的な日本的経営における情報共有と Need-to-Know の原則の間で、いかにして
適切な折り合いをつけていくか、③将来のリスクに対するセキュリティ投資規模をどのよ
うに算定するか、を挙げている。
本研究会の成果は、IPA「情報セキュリティエコノミクスシンポジウム 2013」等で発表
されている。
② 日本的経営の特殊性を踏まえた新たなアプローチを検討中
本研究グループでは、本プロジェクト終了後に生じた企業における個人情報流出等のセ
キュリティ・インシデントや原発事故等への組織の対応方法・内容を分析し、日本の企業・
組織では、誰かをスケープゴートにして「なかったことにする」仕組みが広く観察される
として、この問題を前述の IPA 研究会で提起している。
また、
日本的経営の特殊性を十分に踏まえた上で、どのようなアプローチが有効なのか、
ゼロベースで再検討することを考えている(例:法人の責任を重くする等の新たなアプロー
チの検討)
。
一方、IT 等の若い産業、ベンチャー企業等の若い企業においては、「セキュリティ経営」
の認識が比較的高く、共同研究等を進めている。
③ 政策立案、法制度設計・実装に向けた提案の具現化が期待される
前述のように、IT 戦略本部における情報セキュリティ人材育成に向けた提言や、総務省
研究会におけるプライバシー・コミッショナー制度設置の提言等、政策立案や法制度の設
計・実装等に向けたアプローチを実施しており、今後、これらの提言の実現が期待される。
86
3.3.4. 付属資料
3.3.4.1. 主要研究者動静表
氏名
林 紘一郎
岡村 久道
国領 二郎
田中 英彦
江崎 浩
苗村 憲司
大井 正浩
鈴木 正朝
内田 勝也
早貸 淳子
岡田 仁志
城所 岩生
新保 史生
湯淺 墾道
研究期間中の所属・役職
現在の所属・役職
情報セキュリティ大学院大学 副 情報セキュリティ大学院大学 教授
学長・教授
英知法律事務所 弁護士
英知法律事務所 弁護士
慶應義塾大学 総合政策学部長
総合政策学部 教授
情報セキュリティ大学院大学 研 情報セキュリティ大学院大学 学長・教授
究科長・教授
東京大学 教授
東京大学 教授
慶應義塾大学 教授
情報セキュリティ大学院大学 客員教授
セキュアシステム研究所 特別研究員
情報セキュリティ大学院大学 客 (退職)
員教授
新潟大学 教授
新潟大学 教授
駒澤大学 教授
情報セキュリティ大学院大学 教 情報セキュリティ大学院大学 名誉教授
授
JPCERT コーディネーションセンター専
JPCERT 常務理事
務理事
国立情報学研究所 情報社会相関研究系
国立情報学研究所 准教授
准教授
成蹊大学法科大学院 非常勤講師
成蹊大学 教授
牧野総合法律事務所 顧問
慶應義塾大学 総合政策学部 教授
筑波大学准教授
政策・メディア研究科委員
九州国際大学 副学長・教授
情報セキュリティ大学院大学 教授
加賀谷 哲之
情報セキュリティ大学院大学 准 筑波大学 図書館情報メディア系 准教授
教授
一橋大学 准教授
一橋大学商学研究科 准教授
中尾 宏
東京情報大学 准教授
東京情報大学 准教授
柿崎 環
跡見学園女子大学 准教授
横浜国立大学大学院 教授
砂原 秀樹
奈良先端科学技術大学院大学 教 慶應義塾大学大学院 メディアデザイン
授
研究科 教授
奈良先端科学技術大学院大学 准 奈良先端科学技術大学院大学 准教授
教授
産業技術総合研究所
理化学研究所 計算科学研究機構
石井 夏生利
門林 雄基
小林 克志
廣松 毅
田川 義博
情報セキュリティ大学院大学 教 情報セキュリティ大学院大学 教授
授
情報セキュリティ大学院大学 セ 情報セキュリティ大学院大学 セキュア
キュアシステム研究所 客員研究 システム研究所 客員研究員
87
3.3.4.2. 研究開発プロジェクト終了後(平成 22 年 1 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
1
2
論文名
著者
インターネット利用におけ
るガバナンスのあり方:自
田川 義博
由・創造と秩序・安全のはざ
まのなかで
掲載媒体
年月
コミュニケーション研
2013.3
究 , 43 , pp.27 - 60
電 子 情 報 通 信 学 会
Fundamentals Review 電子情
2013
報通信学会
巻:第 7 号:第 3
ネットワーク社会における
個人情報・プライバシー保護 新保 史生
のあり方
情報システムリスクから考
える事業継続計画(BCP)の 内田 勝也
考え方
金融機関に関連するインシ
4 デントの動向と対策,組織内 早貸 淳子
CSIRT の機能と役割
ソーシャルネットワーク
5 サービスと個人情報・プライ 湯淺 墾道
バシー
門林 雄基、浅
サイバーセキュリティにど
6
沼 宏和、藤原
う取り組むか
礼征
スマートフォン利用者の個
人情報保護 - 安全・安心な
7
新保 史生
スマートフォンの利用環境
確保に向けた取組み ビッグデータの処理と法的
8
岡村 久道
フレームワーク
情報セキュリティにおける
逸脱行動の助長および抑止
要因に関する考察―組織構 浜田 良隆、廣
9
成員による情報持ち出し逸 松 毅
脱行動についてのアンケー
ト調査結果分析―
ビッグデータの取扱いをめ
10
新保 史生
ぐる法的責任の誤解と誤認
東日本大震災における発生
11 事象と課題:情報セキュリ 田川 義博
ティの視点から
3
情報管理
Vol. 55(2012) No. 11
2013.2
金 融 情 報 シ ス テ ム : FISC
2013
(325), 192-210
NPO 法人情報セキュリティ
フォーラム平成 24 年度情報 2013
セキュリティレポート
ビ ジ ネ ス パ ー ト ナ ー San-in
2013
(12), 2-12
情 報 管 理 Vol. 55
P629-637
No. 9
2012.12
「Nextcom」
2012 年 12 月号
2012.12
経営情報学会誌
巻:21 号:3
ページ:205-226
2012.12
IT イニシアティブ 巻:vol16 2012.10
法 と コ ン ピ ュ ー タ (30),
2012.9
133-140
法制度から見たビックデー
12 タの活用とプライバシー― 石井 夏生利
国際的な動向を中心に―
電子情報通信学会技術研究
報告
巻 : 112
号:
2012.9
226(EMM2012 55-62)
ページ:21-25
情報セキュリティ心理学 :
13 人的側面からの情報セキュ 内田 勝也
リティ
情 報 の 科 学 と 技 術 62(8),
2012.8
336-341
88
病院のセキュリティ 最近の
セキュリティに関する考え
14 方 システム依存・標的型攻 林 紘一郎
撃・レジリエンス・許すが忘
れない
阪本 泰男、上
進化する ICT 環境と情報セ 原 哲太郎、石
15
井 夏生利、田
キュリティ
中 絵麻
Municipal Government ICT in
3.11 crisis: Lessons from the Sakurai Mihoko,
16
Great East Japan Earthquake Jiro Kokuryo
and Tsunami Crisis
猪俣 敦夫、松
IT Keys:IT リスク軽減のた
浦 知史、門林
17 めの情報セキュリティ技術
雄基、藤川 和
者・管理者育成
利、砂原 秀樹
『病院』
巻:71 号:7
ページ:518-522
ICT World Rev
号:2
ページ:35-42
2012.7
巻:5
Berkman Center Research
2012.6
Publication No.2012-14
情報処理学会シンポジウム
シリーズ(CD-ROM)
巻:2012 号:1
ページ:ROMBUNNO.2A-1
JSSM 第 26 回全国大会発表
18 不確定性と法的責任
林 紘一郎
要旨
情報処理学会研究報告
ISMS 認証事業所調査からみ
内田 勝也、星 (CD-ROM)
巻 : 2011
19 たセキュリティマネジメン
智恵
号 : 6
ペ ー ジ :
トの課題
ROMBUNNO.DPS-150,NO.26
消費者庁「個人情報の保護に
事業者の方針表示(プライバ
関する事業者の取組実態調
20 シーポリシー等)について改 新保 史生
査報告書(平成 23 年度)」消費
善を促進する施策の在り方
者庁 ページ:169-186
情報セキュリティの今後と
情報セキュリティシンポジ
21
田中 英彦
対策
ウム道後
緊急事態と情報セキュリ
22
湯淺 墾道
『Nextcom』10 号 14-21 頁
ティ政策
コンピュータ・セキュリ
23 ティ・インシデント : 動向 早貸 淳子
警察政策 14, 174-182
と対応の状況
クラウド・コンピューティン
JACIC 情報
24
岡村 久道
27(3), 80-83
グのセキュリティと法律
情報セキュリティ考:
『防止』
『Nextcom』 Vol. 10 ペー
25
林 紘一郎
ジ:04-13
から『耐性と復元』へ
事業継続計画と経営者業績 野田 健太郎、
26
経営財務研究 31(2), 40-55
予想の関係
加賀谷 哲之
情報法の客体論:
「情報法の
『情報通信学会誌』 Vol. 29,
27
林 紘一郎
基礎理論」への第一歩
No. 3 ページ:37-48
情報システム部門の役割の
情報セキュリティ総合科学
28
廣松 毅
3, 107-120
変化に関する一考察
情報セキュリティ事故が企
業価値に与える影響の分析情報セキュリティ総合科学
29
廣松 毅
3, 91-106
イベント・スタディ分析を用
いたリスク評価の試み
89
2012.7
2012.6
2012.6
2012.4
2012.3
2012.2
2012
2012
2012
2012
2011.12
2011.12
2011.11
2011.11
セキュリティ担当者は原発
事故から何を学ぶべきか?
30
林 紘一郎
―統制環境とガバナンスの
視点から―
東日本大震災にみる情報セ
31
田川 義博
キュリティと企業行動
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
情報セキュリティ大学院大
学紀要『情報セキュリティ総 2011.11
合科学』第 3 号
情報セキュリティ総合科学
2011.11
3, 68-90
日 本 社 会 情 報 学 会
情報セキュリティ内部不正 川又 祥正、廣 (JSIS&JASI)合同研究大会研
2011.9
行動のモデル化の試み
松 毅
究発表論文集 巻:2011
ページ:301-304
財団法人防衛調達基盤整備
クラウドと情報セキュリ
林 紘一郎
協会『防衛調達と情報セキュ 2011.6
ティ
リティ』No.9
『災害緊急事態』の概念とス
JSSM 第 25 回全国大会研究
2011.6
林 紘一郎
報告書
ムーズな適用
シャノンからグーグルへ―
CIAJ JOURNAL
2011.3
林 紘一郎
ある法学者の独り言―
DPI とプライバシー・個人情
情 報 通 信 総 合 研 究 所
2011.3
石井 夏生利
報保護・通信の秘密
InfoCom REVIEW 第 53 号
Proceedings
of
ISSI
Institutional Design to Ensure
(Information System for Socail 2011.2
林 紘一郎
Confidentiality of Information
Innovation
情報セキュリティと企業経 廣松 毅、坪根
2011
経済統計研究 39(3), 47-64
営
直毅、栗田 学
「情報セキュリティ事故認
経営情報学会全国研究発表
知地図」の構築~電子メール 齋藤 肇、廣松
大 会 要 旨 集 (Web) 巻 : 2011 2011
によるウィルス感染事故を 毅
ページ:WEB ONLY F2-3
中心に~
BCM の開示が株式市場から
の評価に与える影響-東日
『あらた基礎研究所論文集』
2011
加賀谷 哲之
本大震災の影響にみる有事
4号
価値関連性
日本企業の BCM の実態と課
『あらた基礎研究所論文集』
2011
加賀谷 哲之
題
3号, 42-75 頁
BCM を促進させるコーポ
『あらた基礎研究所論文集』
2011
レート・ガバナンス、開示の 加賀谷 哲之
3号, 76-96 頁
役割
個人情報・プライバシー保護
消費者法ニュース巻:10 月
2011
をめぐる近時の国際的な動 新保 史生
号 号:89 ページ:292
向について
係長セキュリティから社長
情報セキュリティ大学院大
セキュリティへ:日本的経営 林 紘一郎
学紀要『情報セキュリティ総 2010.11
と情報セキュリティ
合科学』第 2 号
礒谷 洋平、廣 日 本 社 会 情 報 学 会
情報セキュリティ投資を促
松 毅、高木 知 (JSIS&JASI)合同研究大会研
2010.9
進するインセンティブの設
陽、伊東 俊之、 究発表論文集 巻:2010
計
川又 祥正
ページ:231-234
90
How to Protect Personal Data:
A Comparative Analysis and
46
林 紘一郎
Beyond,'
International
Telecommunications Society
情報セキュリティ対策を考
47 える--人的側面からの情報 内田 勝也
セキュリティ対策
特定の機微な個人情報(セン
シティブデータ)に みる個
48 人情報保護法と JIS Q 15001 鈴木 正朝
の相違点と個人情報保護法
改正への提言
林 紘一郎、田
情報セキュリティの社会科
49
川 義博、 石井
学のための統一的方法論
夏生利
Proceedings of The
Biennial Conference
18th
日本デ-タ通信 (173), 9-13
2010.5
『日本データ通信 No.172』
2010.5
4-13 頁(2010 年 3 月号)
㈶日本データ通信協会
JISTEC・REPORT Vol. 75、
2010.4
Spring'10
情報処理学会研究報告
情報持出時のセキュリティ 新原 功一、内 (CD-ROM)
巻 : 2009
50
対策についての一考察
田 勝也
号 : 6
ペ ー ジ :
ROMBUNNO.DPS-142,46
情報処理学会研究報告
情報セキュリティ施策にお
鈴木 宏幸、内 (CD-ROM)
巻 : 2009
51 ける有効性評価についての
田 勝也
号 : 6
ペ ー ジ :
一考察
ROMBUNNO.DPS-142,51
情報処理学会研究報告
情報セキュリティ事件・事故 村上 靖、内田 (CD-ROM)
巻 : 2009
52
の分析と対策に関する考察 勝也
号 : 6
ペ ー ジ :
ROMBUNNO.DPS-142,45
情報処理学会研究報告
従業員のリスク行動に対す
大和田 竜児、 (CD-ROM)
巻 : 2009
53 る企業の取り組みモデルの
内田 勝也
号 : 6
ペ ー ジ :
提案
ROMBUNNO.DPS-142,52
早稲田大学グローバル COE
米国における SOX 法内部統
<企業法制と法創造>総合
54
柿崎 環
制の現状と課題
研究所・季刊 企業と法創造
23 号 (頁 101-109)
変容する消費者・企業・社会
の関係性:リスク社会におけ
55
田川 義博
応用社会学研究 52, 103-116
る新しいガバナンスのあり
方を探る
技術士 CPD (社)日本技術士
最近の情報マネジメントと
56
新保 史生
会
課題‐情報倫理ページ:68-80
91
2010.6
2010.4
2010.4
2010.4
2010.4
2010.4
2010.3
2010
Anthony
M.
Rutkowski,
Youki
Kadobayashi,
Inette
Furey,
Damir Rajnovic,
CYBEX: the cybersecurity
Robert Martin, Computer
Communication
57 information
exchange
2010
Takeshi
Review 40(5): 59-64
framework (x.1500)
Takahashi, Craig
Schultz, Gavin
Reid,
Gregg
Schudel, Mike
Hird,
Stephen
Adegbite
経営情報学会全国研究発表
情報セキュリティにおける 伊東 俊之、廣
58
大会要旨集(Web) 巻:2010 2010
リスクコミュニケーション 松 毅
ページ:WEB ONLY B1-4
(2) 発表・講演
発表・講演名
講演者
1
『企業の情報セキュリティを
考える』~最近の情報セキュ 内田 勝也
リティ事件から考える~
2
今日から始めたい IT 内部不
岡村 久道
正行為防止の手引き
3
日本的経営と情報セキュリ
林 紘一郎
ティ
4
CIO/CISO 候補者のためのセ
キュリティマネジメント講座 湯淺 墾道
人文・社会科学系知識体系
5
プライバシー保護の課題と今
鈴木 正朝
後の展望
6
イギリス人の知恵に学び個人
データ保護とプライバシー保 林 紘一郎
護をアンバンドルせよ
92
シンポジウム・セミナー名
(会場)
セミナー「IT に携わる者
として知っておきたい情
報セキュリティの最新情
報」(貸会議室 内海)
セキュリティマネジメン
トセミナー(日本橋三井
ホール)
情報セキュリティエコノ
ミクスシンポジウム 2013
(コクヨホール)
日本セキュリティ・マネ
ジメント学会第 7 回公開
討論会(電気通信大学)
エグゼクティブセミナー
「個人データ保護とプラ
イバシー保護のあり方を
考 え な お す 」( 情 報 セ
キュリティ大学院大学)
エグゼクティブセミナー
「個人データ保護とプラ
イバシー保護のあり方を
考 え な お す 」( 情 報 セ
キュリティ大学院大学)
年月
2013.3.19
2013.3.8
2013.3.5
2013.3.2
2013.2.16
2013.2.16
7
ソーシャルネットワークにお
湯淺 墾道
けるプライバシー問題
8
情報通信技術の発展と情報セ
林 紘一郎
キュリティの重要性
9
情報ネットワークのセキュリ
ティとプライバシーに関する 苗村 憲司
国際規格の意義と課題
10
自治体における個人情報保護
湯淺 墾道
の課題
11
携帯・スマホと個人情報・プ
鈴木 正朝
ライバシー保護
12
13
14
15
16
特別講演プライバシーの権利
鈴木 正朝
と 個人情報保護法
クラウド・コンピューティン
グ時代の情報セキュリティ法 岡村 久道
務
新たな情報通信技術とプライ
バシー・個人情報保護法上の 石井 夏生利
課題
法制度から見たビックデータ
の 活 用 と プ ラ イ バ シ ー ~ 石井 夏生利
国際的な動向を中心に ~
「ダメージコントロール」で
IT セキュリティ新局面に立ち 門林 雄基
向かう
17
個人情報保護法制度の国際動
向と国内動向・現行の法制度 鈴木 正朝
における課題
18
情報セキュリティ経営の視点
林 紘一郎
から
19
攻撃側や利用者側の変化に伴
い、新局面へ突入した IT セ 門林 雄基
キュリティ対策
93
一般財団法人情報通信
ネットワーク産業協会・
モバイルコンピューティ
ング推進コンソーシアム
共催モバイルデバイスセ
キュリティ・セミナー(情
報通信ネットワーク産業
協会)
国民を守る情報セキュリ
ティシンポジウム(三田
共用会議所講堂)
情報ネットワーク法学会
第 12 回研究大会(情報セ
キュリティ大学院大学)
情報ネットワーク法学会
第 12 回研究大会(情報セ
キュリティ大学院大学)
消費者問題ネットワーク
ながの消費者問題学習会
(松本)
内閣官房マイナンバーシ
ンポジウム 岩手
2013.2.14
2013.2.2
2012.12.1
2012.12.1
2012.11.25
2012.11.10
2012 年度優秀保守技術者
2012.11.
表彰式典
平成 24 年度神奈川県個
人情報保護推進会議(横
浜市開港記念会館 講
堂)
マルチメディア情報ハイ
ディング・エンリッチメ
ント研究会
事故前提社会のセキュリ
ティダメージコントロー
ルセミナー
東京大学政策ビジョン研
究センター 在宅医療に
関する課題研究会 第 6
回
シンポジウム「様々な人
と組織から情報セキュリ
ティを考える」
事故前提社会のセキュリ
ティダメージコントロー
ルセミナー(野村コン
ファレンスプラザ新宿)
2012.10.29
2012.10.4
2012.10.
2012.9.24
2012.9.8
2012.9.
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
丸山 宏、井上
第 11 回 情 報 科 学 技 術
克巳、椿 広計、
システムズ・レジリエンス
フォーラム(法政大学小 2012.9.
明石 裕、岡田
金井キャンパス)
仁志、南 和宏
プライバシーやビッグデータ
ソフトウェア技術者協会
2012.8
鈴木 正朝
(SEA)
問題を考える
金融機関に関連するインシデ
FISC セキュリティセミ
2012.7.30
ン ト の 動 向 と 対 策 、 組 織 内 早貸 淳子
ナー
CSIRT の機能と役割
他人任せにしないサイバーセ
トーテック セキュリ
キュリティ
テ ィ フ ォ ー ラ ム
2012.7.9
門林 雄基
~ 一般企業における調達と
2012( ゲ ー ト シ テ ィ
管理の視点から ~
ホール)
個人情報保護法の概要と主要
国土交通省北陸地方整備
2012.7
鈴木 正朝
論点
局法律セミナー
他人任せにしないサイバーセ
キュリティ ~ 一般企業にお
トーテックセキュリティ
2012.7
門林 雄基
フォーラム 2012
ける調達と管理の視点から
~
インターネット、スマート
一般財団法人日本データ
通信協会第 21 回 ICT セミ 2012.6
フォンをめぐる個人情報保護 鈴木 正朝
ナー
法制度の動向と課題
一般財団法人日本データ
通信協会 2012 年度 情報
個人情報保護をめぐる法制度
2012.5
鈴木 正朝
通信マネジメントシステ
の最新動向
ム研究会
一般財団法人ソフトウェ
ア情報センター賛助会員 2012.3
個人情報保護法制とクラウド 鈴木 正朝
セミナー第 8 回
2012 年『セキュリティ経営』
平成 23 年度第 3 回 関東
2012.2.29
林 紘一郎
が必須となる
テレコム講演会
ISMS 認証事業所調査からみ
内 田 勝 也 、 星 第 150 回 DPS・第 56 回
2012.2.29
たセキュリティマネジメント
CSEC 合同研究発表会
智恵
の課題
PM 学会第 1 回関西支部
モバイル・クラウドのセキュ
岡村 久道
大会・シンポジウム(大阪 2012.2.21
リティと法律
大学 中之島センター)
情報セキュリティシンポ
情報セキュリティの法律面と
岡村 久道
ジウム道後 2012(松山市 2012.2.17
最近の話題
立子規記念博物館)
第1回 個人情報保護士
個人情報保護法が果たした役
岡村 久道
会 会員総会(アルカディ 2012.2.6
割と今後の方向性
ア市ヶ谷)
システムズ・レジリエン
レジリエンスのための人材育
ス「想定外を科学する」 2012.2.
岡田 仁志
成
(一橋記念講堂)
94
35
36
最近の情報セキュリティに関
する状況:新たなサイバー攻
湯淺 墾道
撃や震災時における情報セ
キュリティについて
OECD プライバシーガイドラ
イン改正案の全容及び情報セ
新保 史生
キュリティガイドライン改正
の動向
37
Current
Data
Protection
新保 史生
Developments in Japan
38
日本のプライバシー・個人情
報保護とマネジメントシステ 新保 史生
ムの国際標準化
39
自治体におけるソーシャルメ
湯淺 墾道
ディア活用について
40
事業者における個人情報の取
扱いについて
41
震災を通して考える ~個人
情報と IT 利用~
42
政府・自治体のソーシャルメ
ディア利用と情報公開
43
情報の保護と禁止の法システ
ム
44
電子マネー利用におけるプラ
イバシーと利便性のトレード
オフに関する分析
45
ポスト・コンプライアンス時
代の情報セキュリティ
46
Protection
of
Personal
Information: Current Situation,
Problem and Direction in China
and Japan
茨城県平成 23 年度情報
セキュリティ研修会(茨 2012.1.30
城県庁)
第 7 回堀部政男情報法研
2012
究会シンポジウム 2012
CDT-GLOCOM
Joint
Workshop - A better policy
environment
for
the
2012
innovative use of personal
data, issues and views from
the U.S. and Japan 2012
情報ネットワーク法学会
特別講演会「日本のプラ
イバシー・個人情報保護
2012
とマネジメントシステム
の国際標準化シンポジウ
ム」 2012
藤沢市(藤沢市保健所) 2011.11.7
神奈川県「個人情報保護
推進会議」(横浜市情報
鈴木 正朝
文化センター6 階「情文
ホール」)
藤沢市役所コンピュータ
湯淺 墾道
利用管理者等研修会(藤
沢市労働会館)
情報ネットワーク法学会
の第11回研究大会(北
湯淺 墾道
海道大学)
情報ネットワーク法学会
林 紘一郎
の第 11 回研究大会(北海
道大学)
経営情報学会 秋季全国
岡田 仁志、鴨川
大会 F2-2 (愛媛大学 城
隆明
北キャンパス)
第 3 回 今求められる情
報セキュリティセミナー
門林 雄基
(東京ミッドタウンホー
ル&カンファレンス)
対外経済貿易大学亜州経
済共同体研究院発足記念
Harumichi Yuasa
フォーラム(対外経済貿
易大学)
95
2011.10.20
2011.10.19
2011.10.15
2011.10.15
2011.10.
2011.9.27
2011.9.12
47
ソニーの個人情報流出をどう
考えるか-サイバー攻撃に対 鈴木 正朝
する政府・企業・個人の対応
GIE シンポジウム 第 16
2011.8.29
回
48
ウィキリークスが変える世界 林 紘一郎
IGF Japan 第 1 回全体会
2011.7.
議(京都リサーチパーク)
49
経済産業省「個人情報保護法
鈴木 正朝
研修」
経済産業研修所
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
2011.6.29
日本セキュリティ・マネ
『災害緊急事態』の概念とス 林 紘一郎・湯淺 ジメント学会第 25 回全
2011.6.26
国大会(長岡技術科学大
ムーズな適用
墾道
学)
日本マネジメントシステ
ISMS 第三者認証制度への提
ム認証機関協議会(JA
2011.6.23
言~認証取得事業所調査から 内田 勝也
CB )『 ISMS セミナ ー
~
2011』
新潟医療福祉大学 個人情報
2011.2.25
鈴木 正朝
新潟医療福祉大学
保護研修
IT セ キ ュ リ テ ィ ソ
情報流出を踏まえたセキュリ
門林 雄基
リ ュ ー シ ョ ン Live! in 2011.2.23
ティの在り方
Tokyo
2011.2.15
個人情報保護法研修
鈴木 正朝
山形大学
平成 22 年度「情報セキュ
2011.2.9
クラウドと情報セキュリティ 林 紘一郎
リティ技術セミナー」
新潟地区調停協会研修会
2011.1.25
「個人情報保護法」について 鈴木 正朝
(ホテル日航新潟)
クラウド・コンピューティン
情報セキュリティ ワー
グの活用と法的課題-越境デー 新保 史生
クショップ in 越後湯沢 2011.
2011
タ流通と諸外国の法制度Current
Data
Protection
7th Korea Communications
Developments
and
Recent, 新保 史生
2011.
Conference 2011
Relevant Topics in Japan
高等教育機関の情報セキュリ
ティ対策のためのサンプル規 岡田 仁志、曽根 平成 22 年度 情報教育研
2010.12.
程集に準拠した教育用コンテ 秀昭、小川 賢 究集会
ンツの共有
情報漏洩を防ぐ情報セキュリ
平成 22 年度情報モラル
2010.11.26
内田 勝也
ティのあり方
啓発セミナー(長崎市)
日中韓国際シンポジウム
「東アジアの情報セキュ
日本におけるサイバーセキュ
2010.11.19
早貸 淳子
リティの現状
リティを考える」(沖縄
総合事務局2階会議室)
クラウド時代における情報セ
キュリティ~アンケート調査 林 紘一郎
結果を踏まえ
96
ITGI Japan カンファレン
ス 2010(品川ザ・グラン 2010.11.17
ドホール)
63
情報セキュリティの現状と課
題~いま何が起こっているの
か ? 企 業 は 何 に 困 っ て い る 田川 義博
か?企業はどう対応したら良
いか?~
64
情報漏えい時の対応本部の実
石井 夏生利
務と苦労
65
法律と情報セキュリティ
~もしクロード・シャノンが 林 紘一郎
法律を作れば~
66
情報セキュリティの標準化の
苗村 憲司
動向から見た課題
67
個人情報保護をめぐる現状と
鈴木 正朝
課題
68
情報セキュリティへの状況的
内田 勝也
犯罪防止論の適用
69
個人情報の保護研究会
鈴木 正朝
70
教育機関と個人情報保護法
鈴木 正朝
71
個人情報保護法
鈴木 正朝
72
An
interactive
educational
material for information security Hitoshi Okada
learning
73
個人情報保護法
74
情報資産の活用とガバナンス 國領 二郎
鈴木 正朝
97
第 161 回 全国リスクマ
ネ ジ メ ン ト 研 究 会 セ ミ 2010.11.10
ナー
特定非営利活動法人 個
人情報保護有識者会議
平成 22 年度 第 1 回定例
研究会(東京都港区赤坂
区民センター)
CIAJ/MCPC 共催モバイ
ルセキュリティ・ セミ
ナー
第 18 回 ISS スクエア水
平ワークショップ(情報
セキュリティ大学院大
学)
(財)全国市町村研修財団
市町村職員中央研修所
(市町村アカデミー)
「情報公開と個人情報保
護」に関する研修会
第 74 回 日本心理学会
全国大会
日本セキュリティ・マネ
ジメント学会
小学校・中学校・高校教
諭
免許状更新講習
(新潟大学)
国土交 通省 北陸地方整
備局 法律セミナー (新
潟)
The
10th
Annual
International Symposium
on Applications and the
Internet
(SAINT
2010)( Seoul, KOREA)
経済産業省 平成 22 年
度個人情報保護研修(東
京・経済産業研修所)
「情報セキュリティと日
本的経営」セミナー(情報
セキュリティ大学院大
学)
2010.10.25
2010.10.22
2010.10.22
2010.9.29
2010.9.22
2010.8.25
2010.8.18
2010.7.22
2010.7.
2010.6.23
2010. 6.17
75
プライバシー影響評価と PIA
新保 史生
と個人情報保護
76
クラウド時代における越境
データの法律問題
鈴木 正朝
-個人データの委託とEU個
人データ保護指令等を中心に
77
進化するインシデントレスポ
ンス-攻撃の変質への対応、 早貸 淳子
新たな領域への対応
78
クラウドをめぐるセキュリ
門林 雄基
ティ
79
個人情報保護を巡る課題
80
81
82
83
84
情報セキュリティ対策、間
違っていませんか?
~人的側面からの情報セキュ
リティ対策~
Teaching Internet Safety at
Universities Using “Hikari &
Tsubasa’s Information Security
Game”
Education
Materials
for
Interactive
Communication
Security on the Educational
Purpose and Effects of Hikari
and Tsubasas Tutorial for
"Putting Our Heads Together"
about Information Security
個人情報保護とプライバシー
マークの取得
鈴木 正朝
内田 勝也
特定非営利活動法人 個
人情報保護有識者会議
平成 22 年度通常総会(東
京都港区台場区民セン
ター)
第 1 回データベース・セ
キュリティ・コンソーシ
アム春のセミナー デー
タベース・セキュリ
ティ・コンソーシアム(東
京電機大学 7 号館 1F
「丹羽ホール」
)
第 16 回サイバー犯罪に
関する白浜シンポジウム
(和歌山県立情報交流セ
ンター)
クラウドをめぐるセキュ
リティのあり方とは?~
仮想化ソフトウェアと
Webアプリケーションセ
キュリティ~セミナー
(アイビーホール青学会
館)
一般社団法人 EC ネット
ワーク (東京)
2010.6.17
2010.5.25
2012.5.24
2010.5.20
2010.4.21
情報システム・ユーザ会
連盟 (FISA) システム監 2010.4.20
査専門委員会
The 2nd International
Hitoshi OKADA,
Conference on Computer
Hideaki SONE,
2010.4.
Supported
Masaru OGAWA
Education(Valencia, Spain)
The
International
Hitoshi OKADA,
Conference on Education,
Hideaki SONE,
2010.4.
Training and Informatics
Masaru OGAWA
(ICETI 2010)
鈴木 正朝
個人情報保護法と情報セキュ
鈴木 正朝
リティ対策
98
新潟県行政書士会 業務
2010.3.13
研修会 (新潟市)
特定非営利活動法人 上
越地域活性化機構 (新潟
2010.2.25
県上越市)
情報セキュリティセミ
ナー
85
86
87
88
89
法律と情報セキュリティ
~もしシャノンが法律を作れ
ば~
Behavior Shaver: An Application
Based Layer 3 VPN that
Conceals Traffic Patterns Using
SCTP
OECD プライバシーガイドラ
インの改正動向と最新情報
The Meaning and interpretation
of privacy principles - Access
and correction principles Privacy in the Asia-Pacific: 2010
Update - A comprehensive
survey of privacy and data
protection in the region -
林 紘一郎
Computer
Symposium
Okayama
Mamoru Mimura, NTCAA-2010,
Hidehiko Tanaka Japan
Security
2010
in 2010.
Fukuoka,
2010
新保 史生
堀部政男情報法研究会第
2010.
1 回シンポジウム
新保 史生
1st Asian Privacy Laws
2010.
Symposium
新保 史生
The Centre for Continuing
Legal
Education,
2010.
University of New South
Wales
(3) 書籍・報告書等
書籍・報告書名
出版社
年月
1
『IT リスク学:情報セキュ
リティを超えて』IT リスク
林 紘一郎
に対する社会科学統合的接
近
共立出版
2013.2
2
日本的経営と情報セキュリ
柿崎 環
ティ研究会報告書
(独)情報処理推進機構
日 本的経営 と情報 セ 2013.2
キュリティ研究会
3
4
5
6
7
著者
『情報ネットワークの法律
実務』9-9(「学校と情報」担 石井 夏生利
第一法規株式会社
当、石井夏生利)
岡村 久道、鈴木 正朝、
クラウド・コンピューティ
新保 史生、石井 夏生 民事法研究会
ングの法律
利
プライバシー・バイ・デザイ
ン―プライバシー情報を守 新保 史生
日経 BP 社
るための世界的新潮流
セキュリティ経営 ポスト 林 紘一郎、田川 義博、
勁草書房
3.11 の復元力
淺井 達雄
情報セキュリティの法律
岡村 久道
商事法務
[改訂版]
99
2012.10
2012.2
2012
2011.12
2011.11
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
担当:分担執筆, 範
囲
:Chapter
15:
Kanokwan
Inter-Organizational
Atchariyachanvanich,
Information Systems and Hitoshi Okada, Shiro
Business
Management: Uesugi, The Technology IGI Global
Theories for Researchers Acceptance Model: A
(Premier Reference Source)
“Localized” Version to
Predict
Purchasing
Behavior in Internet
Shopping
『情報セキュリティの基礎
(未来へつなぐ デジタルシ
石井 夏生利
共立出版
リーズ 2) 』(第 15 章「法制
度」担当、石井夏生利)
『セキュリティマネジメン 林 紘一郎、加賀谷 哲
共立出版
ト学』
之
(電子書籍)これだけは守り
鈴木 正朝
日本経済新聞出版社
たい個人情報保護
情報化白書 2012 -激動の時
日 本情報経 済社会 推
代の情報化- 個人情報保護 新保 史生
進協会
に関する法制度
IT ビジネス法入門:デジタ
ルネットワーク社会の法と
湯淺 墾道
TAC 出版
制度(第 1 章「IT 社会の推
進法(1)」2-53 頁)
これからの経営学(「IT 時代
の組織と情報戦略」188-204 日本経済新聞社
日本経済新聞出版社
ページ國領 二郎)
堀部 政男、 鈴木 正
朝、石井 夏生利、 岡
プライバシー・個人情報保
村 久道、野 一彦、 新 商事法務
護の新課題
保 史生、 松前 恵環、
小向 太郎
個人情報保護法の基礎知識 鈴木 正朝
ダイヤモンド社
消費者庁研究会「国際
移 転におけ る企業 の
BCR の制度的概要(執筆担
石井 夏生利
個 人データ 保護措 置
当:石井夏生利)
調査報告書」
Information
Securitiy
Kunio Ito, Tetsuyuki
Governance
to
enhanse
SANS Institute
Kagaya, Hyonok Kim
corporate value
瀬戸 洋一、六川 浩明、
プライバシー影響評価 PIA
新保 史生、村上 康二 中央経済社
と個人情報保護
郎、伊瀬 洋昭
情報管理と法 - 情報の利
新保 史生
勉誠出版
用と保護のバランス
100
2011.10
2011.8
2011.8
2011.3.7
2011
2010.9
2010.6
2010.4
2010.3
2010.3
2010.3
2010.3
2010
情報検索の知識と技術(改
訂版) 情報管理の技術,電子
21
新保 史生
政府,情報管理の法規,個人
情報保護
情報科学技術協会
2010
(4) 新聞・テレビ等
.
内容
年月
日本経済新聞経済教室「ビッグデータと個人情報保護」
、林 紘一郎「多様
1
2013.7.19
な利益の比較考量を」
総合的・包括的サイバーディフェンスの考察
2
2012
(学術社団日本安全保障・危機管理学会機関誌 (21), 38-41、内田 勝也)
特別インタビュー「ICT 社会の明るい将来を見つめて サイバー ・セキュ
3
2012
リティーをどう考えるか」
(PROVISION No.73 / Spring 2012、門林 雄基)
個人情報保護法:課題解消されるか 素案を専門家 3 人が分析
4
2011.7.23
(毎日新聞 7 月 23 日朝刊、鈴木 正朝)
「ウィキリークスより怖いダダ漏れ個人情報」(126-7 頁) にコメントが
5
2010.12.19
掲載された(サンデー毎日 12 月 19 日号、鈴木 正朝)
㈶新潟経済社会リサーチセンター『センター月報にいがたの現在・未来
6
12(No.446)
』11 月 27 日発行 「個人情報保護に関するアンケート調査」 2010.11.27
にコメントが掲載された(鈴木正朝)
(5) 特許
なし
(6) 獲得グラント
グラント名
タイトル
採択者
1
基盤研究(C)
ネットワーク社会に適合し
たプライバシーの権利論の
新保 史生
構築とプライバシー保護技
術の活用
2
若手研究(B)
配分額
実施
年度
2012 年度:1820
2012 年 4 月 1
千円、2013 年
日~2015 年
度:1690 千円、
3 月 31 日(予
2014 年度:1690
定)
千円
2011 年度:650
2011 年 4 月
千円、2012 年
ライフログの利用とプライ
28 日~2014
バシー・個人情報保護に関 石井 夏生利 度:650 千円、
年 3 月 31 日
2013 年度:520
する比較法的研究
(予定)
千円
(7) その他
1
2
受賞名
年月
日本ファシリティマネジメント協会「2013 JFMA Special Award」(江崎
2013.3.13
浩)
特定非営利活動法人モバイル・コミュニケーション・ファンド 「第 11 回
2012.9
ドコモ・モバイル・サイエンス賞 社会科学部門奨励賞」
(岡田仁志)
101
一般財団法人日本 ITU 協会「日本 ITU 協会賞国際活動奨励賞」
(門林 雄
基)
情報セキュリティ大学院大学「第 8 回情報セキュリティ文化賞」(早貸 淳
4
子)
情報処理学会「優秀教材賞」
(ヒカリ&つばさの三択教室 制作委員会 岡田
5
仁志)
特定非営利活動法人モバイル・コミュニケーション・ファンド「第 10 回
6 (2011 年)ドコモ・モバイル・サイエンス賞 社会科学部門 奨励賞」
(石
井 夏生利)
7 日本会計研究学会「日本会計研究学会学会賞」
(加賀谷 哲之)
ISC 「 第 5 回 ア ジ ア ・ パ シ フ ィ ッ ク Information Security Leadership
8
Achievements(ISLA)プログラム表彰」
(林 紘一郎)
Asian-Pacific Conference International Accounting Issues ” The Vernon
9
Zimmerman Best Paper Award” (加賀谷 哲之)
10 電気通信普及財団「テレコム社会科学賞 奨励賞」
(石井 夏生利)
3
102
2012.5.17
2012.3.7
2012.3
2011.9
2011.1
2011
2010.10
2010.3
3.4. ユビキタス社会にふさわしい
基礎自治体のリスクマネジメント体制の確立
(研究代表者:林 春男)
103
3.4.1. 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「情報と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」
研究開発プロジェクト名
ユビキタス社会にふさわしい基礎自治体のリスクマネジメン
ト体制の確立
研究代表者(現所属)
林 春男(京都大学 防災研究所 巨大災害研究センター セン
ター長・教授)
研究実施期間
平成 19 年 7 月~平成 21 年 12 月(2007 年 7 月~2009 年 12 月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.4.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
基礎自治体を核とした地域のステークホルダーの「ユビキタス社会の便益を享受しつつ、
リスクの最小化を行うガバナンス」能力の向上を達成目標とした研究開発を行う。具体的
な研究成果は以下の通りである。
1)ユビキタス社会の利点を活用し、基礎自治体が新公共経営(New Public Management)の
考え方に基づき高いレベルの行政サービスの提供を可能にする、平時・非常時にシーム
レスに利用可能な情報処理システム。
2)上記の情報処理システムを利用する事によるユビキタス社会の便益を享受しつつも、そ
のリスクを最小化するための、
「機密性」
(Confidentiality)
・
「保全性」
(Integrity)
・
「可用
性」
(Availability)<C.I.A>の保持を目的とした体制・制度。
3)上記 2 つの成果を統合した①新たな情報処理システム、②CIA 保持のための体制・制度
を利用可能な人材育成のためのプログラム。
3.4.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
(1) 情報処理システム構築グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
吉富 望
京都大学 防災研究所 研究
員
情報処理システム構築
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 9 月
林 春男
京都大学 防災研究所 教授
同上
平成 21 年 10 月~
平成 21 年 12 月
今荘 真樹
宇治市役所 総務部 IT 推進
課
同上
平成 19 年 7 月~
平成 20 年 3 月
吉岡 智之
宇治市役所 総務部 IT 推進
課 係長
同上
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 3 月
田中 真也
宇治市役所 総務部 IT 推進
課
同上
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
104
林 秀哲
宇治市役所 総務部 IT 推進
課
同上
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
渡辺 英明
小千谷市 建設課 都市計画
係 建築係長
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
宇羅 良博
輪島市 都市整備課 建設係
長
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
名和 裕司
ESRI ジ ャ パ ン ㈱ コンサル
同上
ティングサービスグループ
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
竹下 裕明
ESRI ジ ャ パ ン ㈱ コンサル
同上
ティングサービスグループ
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 12 月
外崎 宣宏
ESRI ジャパン㈱ESRI 技術グ
ループ
(2) C.I.A の保持のための体制・制度の構築グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
牧 紀男
京都大学 防災研究所 准教
授
C.I.A の保持のための体
制・制度の構築
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
東田 光裕
NTT環境エネルギー研究所
環境システムプロジェクト 社
会環境システムグループ 主
任研究員
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
中村 俊二
宇治市役所 総務部 部次
長・課長
同上
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
大下 勝宣
宇治市役所・総務部 IT 推進
課 課長
同上
平成 21 年 4 月~
平成 21 年 12 月
田中 真也
宇治市役所
進課
同上
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 3 月
本間 努
柏崎市 総合企画部 企画政
策課 情報政策係 主査
同上
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 12 月
総務部 IT 推
(3) 人材育成プログラム開発ググループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
林 春男
京都大学
授
人材育成プログラム開発
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
塩田 俊樹
㈱ワオネット 代表取締役
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
木下 直紀
宇治市役所 総務部 IT 推進
課 主幹
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
中村 俊二
宇治市役所・総務部 IT 推
進課 課長
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
吉岡 智之
宇治市役所・総務部IT推
進課 係長
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
防災研究所 教
105
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
輪島市総務部企画課 係長
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
新潟大学災害復興科学セン
ター 助教
同上
平成 19 年 7 月~
平成 21 年 12 月
渡辺 辰男
小千谷市
画係長
企画財政課 企
谷口 寛
輪島市総務部
総務部長
倉本 啓之
井ノ口 宗成
総務部長
3.4.1.3. 研究開発の内容
(1) 情報処理システムの構築
新潟県中越沖地震で被災した柏崎市を事例に、災害対応時の業務を可視化し、それに対
応する情報処理システム(GeoWrap 10情報処理システム)の開発を行った。また、GeoWrap
情報処理システムの基盤となるデータベース構築につき、輪島市、柏崎市で、住所情報を
関連させた「位置情報」を共通キーとし、既存の異なる台帳(家屋課税台帳、住民基本台
帳等)や新たに作成されるデータを連結し、被災者支援業務の基盤となる統合された
GeoWrapデータベースとしての被災者台帳の構築を行った。
(2) C.I.A 保持のための体制・制度の構築
柏崎市を事例に、災害時における情報システムの利用とセキュリティの保持に関する調
査を実施した。また、開発された新たな情報処理システムに関する C.I.A の検証ならびに
運用のための体制・制度の構築を行った。
(3) 人材育成プログラムの開発
被災自治体職員の現場での活動体験を調査し、自治体職員が普段からどのような意識・
方法で業務に取り組めばよいのかについて、各組織レベルでの習得内容の検討を実施した。
また、新公共経営の考え方に基づく組織運営・情報処理手法、C.I.A 保持のための体制・制
度に関し、危機対応時と平常時の業務の連続性の理解を図る教育プログラムを開発した。
GeoWrap という名称は、種々のデータを空間的にまた位置を軸として包み込み統合す
るいう意味での Geographical Wrapping に由来する。
10
106
3.4.1.4. 研究開発の成果
ICT を活用し、被災者に対する生活再建支援を効果的に提供する仕組み及びツールを開
発・提供した。また、この仕組み・ツールが、災害時のみならず平常時の自治体の業務効
率化・高度化にも寄与することを実証した。
① 被災者生活再建支援システム
小千谷市(新潟県中越地震)
、輪島市(能登半島地震)、柏崎市(新潟県中越沖地震)で
の災害対応実績に基づき、地理空間情報を通して人・家・被害を結びつける被災者台帳の
構築を可能にする被災者生活再建支援システムを構築。
② 災害時の被災者生活支援のための GeoWrap データベース技術の開発と検証
り災証明申請・発給窓口において地理空間情報を利用したデータ間の「ゆるやかな結合」
を行い、被災者台帳を完成させる手法を開発した。
平常時から危機発生時のシームレスなシステム移行を可能とするデータベース構築手法
(災害時に統合するデータベースへの位置情報付与、位置情報付データベースを新しく効
率的に作成できる仕組み)を開発した。
③ C.I.A の観点からの現状の情報処理システムの検証
「調査・申請受付」フェーズでは「可用性」を重視した「体制によるセキュリティ管理」
が、
「被災者生活再建支援業務の実施」フェーズでは「機密性」を重視した「システムによ
るセキュリティ管理」が重要であり、かつ両フェーズとも「完全性」の確保が必要不可欠
であることを分析。被災者生活再建支援システムに反映させた。
④ 人材育成プログラムの開発
基礎自治体の業務、災害対応業務の可視化手法を習得するためのプログラムの開発(橿
原市、大阪市水道局で採用)
。
GeoWrap データベースを平常業務から上手に利用するためのプログラム(スプレッドシー
トからはじめる GIS)の開発。
災害発生後から発生する災害対応業務の具体的内容と情報処理について習得するための
プログラムの開発(約 50 名の自治体実務者に対して提供)
。
107
3.4.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
本プロジェクトでは、当初研究開発目標の達成、技術的・社会的貢献、成果の社会にお
ける活用・展開という視点を中心に総合的に判断して、十分な成果が得られたと評価する。
本プロジェクトにおいては、基礎自治体における災害発生後の被災者の生活再建支援業
務に情報技術を適用したマネジメント体制とシステム(「Geo-Wrap」)が最終的成果として
得られた。その研究を進めるにあたっては、被災の経験を持つなど意識の高い自治体の担
当者を研究体制に加え、実際に研究開始に前後して発生した能登半島地震、新潟県中越沖
地震での経験を研究に活かすことにより、成果を有用性の高いものとしている。
利用した要素技術は国際的に見て決して先進的なものではないが、被災者や被害を特定
するために必要となる行政のデータベースが個人情報保護法の制約から統合できないとい
う国内の環境において、GIS 上の地図情報を通して実質的に統合する手法を考案し、高い
精度を実現したのは評価できる。また、人材育成システムを構築し、実際の震災復興支援
において利用することで研修プログラムが確立され、それを活用していくつかの自治体で
業務見直しが実施されているのは今後期待できる点である。社会に向けた情報発信につい
ても、論文発表を始め啓発資料の発行やワークショップ、公開展示を通じた社会への啓発
など、適切に実施している。
研究途上で発生した震災への対応等の影響から研究開発目標が見直され再設定された経
緯があり、当初目標から見ると最終成果はかなり限定されたものになっているが、研究過
程で現実的に有効な目標に絞り込むことはむしろ適切であり、投入された費用に照らして
も得られた成果は十分であることから問題にならないと考えられる。
災害発生時においては救済に続き市民ひとりひとりの生活再建が急がれるという重要な
問題であり、本プロジェクトの成果を活用することで迅速かつ正確にこの支援業務を遂行
できるようになったことの意義は大きい。ただし、今回対象とした業務は生活再建支援に
限定され、また関係した自治体も限定されていることから、今後は生活再建支援のみなら
ず平常時の業務を含め各種業務に適用範囲を拡大するとともに他の多くの自治体に向けて
成果を展開していき、さらなる社会貢献につなげていくことが期待される。
今回のシステム実現上障壁となった行政の複数データベースを共通キーで検索できないと
いう法律的問題は、個人情報の保護の方向と拮抗する問題であるが、災害等の緊急時に効
果的に対応できるようにするための立法に向け議論と提言を行っていくことが望まれる。
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトでは、研究開発目標は研究の過程においてより具体的なものに再設定さ
れたが、その目標に対してはほぼ十分に達成したと評価する。
108
当初掲げた「便益の享受とリスクの最小化を行うガバナンス能力の向上」というやや大
振りの目標設定に対し、研究開始後の調査・検討を踏まえ、現実に社会に貢献し得る極め
て明快な目標として「災害時の被災者に対する生活再建支援」を最終的目標として掲げ集
中的に研究を進めた。主たる成果として、災害時の被災者に対する生活再建支援に向けた
罹災証明発行のためのマネジメント体制ならびにそれを効率的に進めるための情報システ
ムの構築を行ったこと、その中で基礎自治体が平常時に目的別に保存・管理しているデー
タベースについて、危機発生時に住民生活再建の支援業務のために統合利用できるように
したことが挙げられる。研究の遂行にあたっては成果の主たる適用先である自治体(宇治
市、柏崎市、輪島市等)とよく連携し、現実に研究開始に前後して発生した能登半島地震・
新潟県中越沖地震の被害者の生活再建支援に当たって得られた経験を踏まえた実効性ある
成果としており、再設定された目標に対してはほぼ十分に達成したと評価する。
なお、比較的抽象的に設定された当初目標に対し再設定された具体的目標を通じて得られ
た最終的成果は乖離を生じているという見方ができるが、むしろ大きな目標を明らかにした
上で現実に研究期間内で達成可能な具体的目標を設定する進め方は合理的である。今回含ま
れなかった業務への拡大や全国の他の自治体への展開は今後の課題として期待される。
(3) 技術的貢献
本プロジェクトでは、既存技術の組合せではあるが、ユビキタス社会のガバナンス構築
に有用な技術の活用方法を示した点で一定の貢献があったと評価する。
本プロジェクトにおいて研究された主たる技術的ポイントは、被災者の生活再建支援に
あたり被災者個人、被災状況、土地、家屋等を特定するための各種データを如何に集約す
るかと言う点にあり、平常時において自治体が保持する各種情報(住民基本台帳、土地課
税台帳、家屋課税台帳データ)の参照が必要となるが、これらは目的別に個別なデータベー
スに保持され個人情報保護の観点から目的外使用を防止するため共通キーを持てない(名
寄せができない)という法律的制約が障害となる。この障害を克服する方法として本プロ
ジェクトでは GIS 上で住所・地番に関するデータを対応付けることによりデータベース相
互の「ゆるやかな」結合を図るシステム「Geo-Wrap」を開発し、最終的には本人確認を必
要とするものの実用的に十分な精度を得たことが確認されており、技術的に一定の貢献が
あったと評価できる。また、ここで蓄積されたシステム構築のノウハウは今後の我が国に
おける電子政府の構築にも参考となるものと考えられる。
利用している要素技術(データベース、GIS 等)自体は先進性において突出したもので
はないが、それらを有効に活用する方法を考案して実用的なシステムを実現し自然災害の
多い我が国の環境で実証したことは国際的にも遜色ない技術的貢献と考えられる。このよ
うな GIS を用いたシステム設計の需要はあらゆる分野で増えていくと考えられ、基礎自治
体の行政経営においても地域や住民の空間把握は大きな課題であり、この技術とノウハウ
が今後も継続して展開されることを期待したい。
なお、今回のシステム構築では利用の最終段階において被災者本人による確認を経て高
109
い精度の認定が実現されたように、この種のシステム設計においてはデータの正確性を高
める現実的方法として人間(今回は住民)とのインタフェースを取る配慮が極めて有効で
あることが示唆され、これも技術的貢献のひとつと言える。
(4) 社会的貢献
本プロジェクトで得られた成果は、ユビキタス社会のガバナンスの構築に相当の貢献が
あったと評価する。
本プロジェクトで蓄積された被災地の空間的把握のノウハウや自治体の作業フローの可
視化などの知見が住民生活再建支援のためのマネジメント体制とシステム構築に活かされ、
従来非常に難しいとされた罹災証明発行が迅速かつ漏れがなく実施できることが実証され
たということの貢献は大きい。また、このシステムを導入することにより、住民に対して
郵便物による罹災証明発行の相談や職員による訪問調査などの働きかけができるように
なったことや、従来の手動による作業に比べ時間短縮(2.48 分/件)とコスト削減(96 円
/件)の効率化が図られ、少なからず災害時業務の改善にも効果をもたらしたと考えられ
る。
また、
人材育成プログラム開発グループを設置して学習パッケージや教授法を開発し、
マネジメントシステムを実際に動かす人材を育成してきたことも評価に値する。
本プロジェクトで確立されたマネジメント体制とシステムは、他の多くの自治体におい
てもそれぞれの事情に応じてカスタマイズすることにより、災害時の罹災証明書の発行や
支援金支給の業務に十分適用していくことができると考えられること、また本手法は複数
のデータベースが個人情報保護の観点から縦割りとなっている情報を空間把握により実質
的に統合するものであり、今回の研究においては対象業務が災害時の生活再建支援に限定
されているが、他の業務(人命救助、食料・住居・生活インフラの保全など)の支援、さ
らには平常時の業務(市民からの苦情・要望対応など)の改善にも本手法が適用できる可
能性を持ち、今後の社会貢献にも繋がると考えられる。
本プロジェクトの研究内容は国際的に見ても初めての試みと考えられるが、多分に複数
のデータベースを共通キーで統合できないという我が国の状況に基づいている可能性があ
り、海外の同種の技術と単純に比較あるいは参考にすることはできないが、一通り調査・
比較することは有益と考えられ、初年度に実施されたと思われる海外情報収集の報告がな
かったのは残念である。例えば、特に非常時における積極的な情報共有に関して、米国に
おける DHS(国土安全保障省)のミッションや、FEMA(連邦危機管理庁)の業務、エマー
ジェンシーに対する多くの大統領令、各自治体で義務付けられている Preparedness(備え)
の内容につき、
リスクマネジメントや自治体行政の観点から比較・考察を行うことにより、
国内での問題提起にもつながり、技術と社会制度の両面からの課題解決につながる可能性
もあり、今後の活動において留意することが望まれる。
(5) 副次的貢献
本プロジェクトにおいては、一定の副次的貢献があったと評価する。
110
具体的な貢献としては、自治体において、今回は限定的ではあるが災害時における統合
的なマネジメント体制の構築を実現したことで今後さまざまな業務へも拡大して応用され
る可能性が生まれたこと、研究の過程で研究員が自治体職員と直接協働することにより現
実の課題を直視しながら開発することによって研究成果の有用性を高める体制が形成され
たこと、また、自治体においても今回ひとつの業務に情報技術の能力を活用できたことに
より今後他の課題にも情報技術を活用しようという機運が高まったと考えられること、が
挙げられる。
さらに、現実の災害事例における実証を通して、データベースの日常的連携が必要であ
ることを明確にできたことは重要であり、日ごろ、データを分離し結合させないことが人
権保護の要請であることの反面、災害発生の際にはこうしたデータベースの統合、融合が
必要であることにつき説得力をもって示したことにより、今後、立法化も含めて、幅広い
議論と認識の必要性が示唆されたことも副次的貢献と見ることができる。
(6) 成果の社会での活用・展開・情報発信
本プロジェクトの研究開発成果については、十分に活用・展開・情報発信がなされてお
り、その取組みは経過・努力の観点も含め有効と評価する。
能登半島地震・新潟中越沖地震において、実際に GEO-Wrap システムを応用するマネジメ
ント体制が構築され、運用された点で、成果の一部はすでに社会に活用されていると言え
る。さらに、宇治市との協働により危機発生時業務や平常業務の支援への適用を目指して
研究成果の実証と検討が実行されていることや、GIS に関する人材育成など今後成果を継
続的に社会へ展開していくための取組みが行われていること、本プロジェクトで開発され
た研修プログラムが他の自治体(奈良県橿原市、大阪市水道局、新潟県新発田市)で災害
時の対応業務マニュアルの見直し作業にも応用されていることなど、社会での活用・展開
はよく推進されていると評価する。
また、本研究チームの主要メンバーにより活発な情報発信活動が展開されており、研究
代表者が所属する京都大学防災研究所においてパンフレット「被災者台帳を用いた生活再
建支援システム」や「コンセプトブック」、災害・防災を可視化するワークショップ「災害
を観る」
、さらには参加者数千名規模の「震災対策技術展/自然災害対策技術展」に出展し
て本プロジェクトの成果である手法やシステムを分かりやすく紹介しているのは社会に還
元するのに有効であると考えられる。ただし、新聞報道などにより震災復興に研究成果が
活用されたことを国民一般への広報する機会が見られなかったのは惜しまれる。
今後、本プロジェクトの成果を有効に社会還元するに当たっては、成果であるマネジメ
ント体制とシステムにつき機能整備、標準化、低コスト化、導入方法策定、継続的人材育
成プログラムの整備等を図ることが必要である。また、他の自治体へ適用可能とするため
の方策などリスクマネジメント体制確立のための指針をまとめることが望まれ、その上で、
多くの自治体へ水平展開していくに際しては、その活動に対し政策的支援を実施すること
が有効と考えられる。さらに生活再建支援のみならず、災害発生時から復興終了に至るま
111
で、シームレスに支援するシステムの構築を可能とするため、より広範な政策提言が望ま
れる。今回のシステム実現にあたり大きな障壁となった法律的問題、すなわち行政が持つ
情報(ほとんどが個人情報)の統合は個人情報保護法に抵触し目的外利用として違法とな
る危険性があることについては、緊急時における統合利用を合法とするなど、立法作業、
条例制定などの法的整備に向け提言していくことが必要である。
(7) 費用対効果比
本プロジェクトに投入した研究開発費に対し予想される社会的貢献は十分であり、費用
対効果比は高いと評価する。
さまざまな問題が複合的に存在する災害時の被災者生活再建の課題に対し、本プロジェ
クトにおいて、多数の関係者がそれぞれのノウハウを共有することにより現実に利用でき
る統合的マネジメント体制と GEO-Wrap システムを限られた予算で構築し、実際の災害の
環境で実証したことは、投入された費用に対し価値が高い。今後さらに他の自治体への展
開や、生活再建支援以外の業務への応用も見込める観点からも費用対効果比は高く、社会
に対するアカウンタビリティーも高いと判断できる。
なお、今回報告されている社会的貢献としての効果は、本プロジェクトの研究成果の活
用主体である自治体担当者の活動との相乗効果として達成されたものであり、その意味で
研究開発費に加え自治体費用が投入され実現したものである。研究開発成果が社会関与者
(今回は自治体)の活動につながり社会貢献に至ることは社会技術としてはむしろ好まし
い形と言える。ただし、両者の活動と費用の対象を明確にして進め、報告することが必要
である。また、このようなケースにおける費用対効果比をどう評価するかはそれぞれの効
果を如何に見極めるかという問題もあり、課題として残った。
(8) 実施体制と管理運営
本プロジェクトの研究開発実施体制と管理運営は、適切・妥当であったと評価する。
本プロジェクトの研究体制においては、この分野の専門家や要求条件を提供し成果を受け
止める立場の関与者(自治体担当者)をよく揃え、坦務を明確にしたグループ構成により
明確な目標に沿って研究を進め、品質の高い最終成果を得たことは一つの成功例と見做す
ことができる。
運営管理においても本来の研究プロセスに加え成果実践の場を臨機に組み込むなど、適
切であったと評価できる。そのひとつとして、2007 年の能登半島地震・新潟中越沖地震の
発生を受けて目標設定の見直しが行われたことは、当初の目標設定は若干絞り込めていな
かったことを示していると考えられるが、研究実施の過程で地震被災者への罹災証明書発
行に向けたマネジメント体制とシステムの構築に的を絞り込んだ目標に再設定し、結果と
して有用な成果を収めたことは、管理運営が機能したことを示している。
112
(9) 特記事項
自治体職員、有識者、企業関係者などで構成される総務省「電子自治体の推進に関する
懇談会」においても、本プロジェクトは注目すべき研究として取り上げられた。今後、利
便性の高い電子自治体構築にあたり、柏崎市の GIS、基幹情報システム、リスクマネジメ
ント等は参考となる有意義な展開であることが確認されている。同時に、本プロジェクト
が、個人情報保護と行政サービスの在り方に抜本的検討を要することを重要課題として具
体的に提起した点で、文系・理系にまたがる極めて有意義な研究であったと考えられる。
以上のとおり本プロジェクトは行政においてすでに大きなインパクトを与えていると言う
ことができる。
113
3.4.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.4.3.1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① 展示会出展によりシステムをアピール
本プロジェクトでプロトタイプを開発した「建物被害認定調査から被災者台帳を用いた
攻めの生活再建支援までを一貫して行えるシステム」を、災害復興期の生活再建業務の効
率化に関心を持つ関係者の方に実演を交えて PR するため、平成 22 年 2 月 4~5 日に横浜
で開催された第 14 回「震災対策技術展/自然災害対策技術展 横浜」に出展した。
同展示会は、2 日間で約一万人の防災関係者が集まる大規模なものであるが、本研究グ
ループの出展ブースにも 700 名以上が集まり、同時に開催した講演会も盛況となった。こ
の後、他の展示会や講演会にも招待を受けるようになった。
② 文部科学省「首都直下地震 防災・減災特別プロジェクト」への参画
文部科学省は、切迫性が高く、推定される被害が甚大である首都直下地震の姿を明らか
にするとともに、建物の耐震構造技術の向上や災害対応体制の確立により被害軽減につな
げていくことを目的として、「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」(平成 19~23
年度)を実施した。
同プロジェクトを構成する 3 つの研究項目のうち「広域的危機管理・減災体制の構築に
関する研究 11」は、発災後の効率的で迅速な災害対応と被災者の生活再建を実現していく
ため、自治体間や行政部局間で災害対応に必要な情報共有が可能となるシステムや、被災
者台帳を用いた生活再建支援システムの構築に関する研究を行うものであり、林教授が研
究代表を務めるほか、本プロジェクト・メンバーから井ノ口氏(新潟大学)
、東田氏(NTT)
等が参加している。
本研究においては、首都直下地震(中央防災会議が想定する M7.3 の東京湾北部地震を
想定)直後の応急対応から、長期的な視野で行われる復旧・復興までにわたる包括的な災
害対応を関連する地方自治体が連携して実施するための、「効果的な行政対応態勢の確立」
について、A)一元的な危機管理対応体制の確立、B)地域・生活再建過程の最適化に関する
研究、C)効果的な研修・訓練システムの確立の 3 つの側面から研究を実施した。A)では生
活再建の基本となる建物被害認定調査の標準化並びに被災者台帳にもとづく生活再建支援
システムを構築し、その成果として実証実験を東京都で実施した。B)では事前復興をテー
マに「被害想定にもとづく復興訓練」の手引きを作成した。C)ではインストラクショナ
ル・デザインの考え方に基づいて、上記の能力を担当者が身に付ける研修・訓練システム
として開発した。
同プロジェクトにおいて実施された、東京都「被災者台帳を用いた生活再建支援システ
11
参考 URL:http://www.drs.dpri.kyoto-u.ac.jp/medr/
114
ムの実証実験」を経て、大都市東京特有の課題に対応し得る実践的なシステム仕様が設定
され、システム開発へとつながっている。
同プロジェクトを経て、新たに、文部科学省委託研究「都市の脆弱性が引き起こす激甚
災害の軽減化プロジェクト」が立ち上がった。林教授らは、サブ・プロジェクト「都市災
害における災害対応力の向上方策に関する調査・研究 12」に参加している。
図 9 被災者台帳による生活再建支援システム
図 10 システム構成
資料:林裕之「QR コードを用いた調査票のデジタルデータ化」
(首都圏直下地震防災・減災特
別プロジェクト平成 22 年度第 3 回成果発表会資料、2011.2.25)
③ RISTEX「研究開発成果実装支援プログラム」による実装に向けた研究の実施
RISTEXの「研究開発成果実装支援プログラム」に、
「首都直下地震に対応できる被災者
台帳を用いた生活再建支援システムの実装 13」事業として採択されている(平成 22~H25
年度予定)
。
12
13
参考 ULR:http://www.drs.dpri.kyoto-u.ac.jp/ur/
参考 ULR:http://www.jst.go.jp/pr/info/info762/besshi1.html
115
同プログラムでは、生活再建支援に関わる膨大な業務量に対応するため、「被災者台帳を
用いた生活再建支援システム」をネットワーク化し、論理位置情報コードや自己申告シス
テム等の新技術を導入している。また、それを東京都等の被害発生が予想される地方自治
体に導入し、各自治体で対応の中心となる中核的な職員および応援人材の養成の仕組みを
構築している。
初年度(H22 年度)は、H23 年度の第 1 弾実証実験に向けて、個別グループの各視点か
ら実装機関の体制、被害想定状況、地域性等に関する実態調査を行ない、実装において解
決すべき課題の整理を行なった。
平成 23 年度はこの成果を受け、基本設計に基づいた具体的な仕組みの開発および実装を
行い、東京都の豊島区・調布市を対象とした第 1 弾の実証実験を実施した。また、平成 23
年 3 月 11 日の東日本大震災の発生を受け、被災者台帳を用いた被災者生活再建支援システ
ムを被災地(岩手県と県下の被災市町村)に導入し、その運用過程を把握し、課題の抽出
と解決策の検討を実施した。特に岩手県と県下の被災市町村を対象として、システム実装
の可能性を追求し、複数自治体で共有可能な仕組み開発のための要件定義と課題抽出を
行った。
平成 24 年度では、これまでの成果をもとに東京都への実装について、第 2 弾の実証実験
に向けて、体制・制度・システムの検討・見直しを行うために、①東京都における合同防
災訓練をフィールドとして「生活再建支援業務に関する業務分析・システム設計・人材育
成に関する研究」の実施、②生活再建支援業務の負荷軽減のための生活再建支援システム
に対する新テクノロジー適用、③被災者台帳システムの「住民情報+家屋情報+被害情報」
確認画面における個人情報を非表示にするための機能を開発しセキュリティポリシーの実
効性をあげることで「情報セキュリティ保持のための体制・制度の構築」を実施した。
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
① 東京都における「被災者台帳を用いた生活再建支援システム」の実証実験
首都直下型地震が起こると首都圏で最大 1,000 万の家屋が被災すると推定されており、
被害調査には約 14 万人を投入しても 1 カ月かかり、証明書発行に 1 年以上かかる可能性も
ある現状を踏まえ、東京都は、生活再建支援システムの導入に向け、平成 23 年度に実証実
験を実施。システムの有効性や問題点を検証した。
具体的には、①「被災者台帳を用いた生活再建システム」における情報セキュリティ保
持のための体制・制度の構築、②「被災者台帳を用いた生活再建システム」の構築のため
の生活再建支援業務に関する業務分析・システム設計・人材育成、③「被災者台帳を用い
た生活再建システム」
に関わる SaaS を用いた生活再建支援に関する情報共有の仕組みの構
築、の 3 点について研究を行った。
平成 23 年 9 月 4 日、
首都直下型地震を想定した都内初の
「り災証明発行訓練
(実証実験)
」
が行われた(主催:豊島区、京都大学、新潟大学)。本訓練は、文部科学省、東京都、RISTEX
116
が共同で実施する研究事業の一環として実施された。訓練には、区民 50 名が参加。都内の
区市町村の防災担当者やシステム・消防関係者、議員等 200 名以上が見学する中、自宅が
被災したという想定の下、参加者の現住所を用いてり災証明発行申請を行い、GIS を用い
た地図で住所を確認、予め用意された被害調査結果(全壊・半壊・火災焼失)に基づき、
行政の窓口がその場でり災証明を発行し、参加者に交付した。同様の実験を 2011 年 11 月
20 日には調布市で実施している。
この実証実験を経て、大都市東京都に特有の課題に対応し得る実践的なシステム仕様が
設定された。東京都は平成 23 年度中に本システムのカスタマイズを完了させ、都内自治体
への導入を働きかけることを決定している。
図 11 東京都実証実験における罹災証明書発行訓練の様子
資料:田村圭子、堀江啓、井ノ口宗成「東京都における『被災者台帳を用いた生活再建支援シ
ステム』の実証実験」
(首都圏直下地震防災・減災特別プロジェクト平成 23 年度第 4 回成果発
表会資料、2012.2.24)
② 岩手県及び県下の被災市町村を対象としたシステム実装
平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災を受け、被災者台帳を用いた被災者生活再
建支援システムを被災地に導入し、その運用過程を把握し、課題の抽出と解決策の検討を
実施した。
特に岩手県と県下の被災市町村を対象として、
システム実装の可能性を追求し、
複数自治体で共有可能な仕組み開発のための要件定義と課題抽出を行った(サーバを盛岡
市に置き、他の被災自治体はデータを提供し、県がデータ整備を行い、Web ブラウザ上で
各市町村に被災者台帳を作ってもらう)
。ただし、地図作成に人手がかかっていたこと、津
波被害のため浸水区域によって自治体の全壊認定が簡便に行われていたこともあり、り災
証明書の発給までは実施しなかった。
これらの取り組みを経て、岩手県復興局では、復興実施計画(第 1 期)に「被災者台帳
システム整備及び運用支援事業」
(平成 23~28 年度)を盛り込み、市町村における被災者
生活再建支援が円滑かつ効率的に実施できるよう、被災者情報や各種支援の実施状況を共
有するためのシステムの整備・運用を開始している。県は基礎データ収集・登録を、市町
117
村は付加的データ収集・登録を担当している。
システムを導入した 8 市町村(久慈市、野田村、宮古市、大槌町、釜石市、大船渡市、
奥州市、陸前高田市)において、きめ細かな被災者支援の促進を図るため、システムの運
用の支援を提供している。
③ 「東京都・目黒区合同総合防災訓練」における「迅速な生活再建支援に向けた都独自の
被災者支援システム活用訓練(り災証明発行等訓練)」
全区民及び全市民に対する証明書発行の確実性を確保するための体制整備とシステム導
入環境整備を目的に、平成 24 年 9 月 1 日に実施された東京都総合防災訓練(於:駒沢オリ
ンピック公園テニスコート)において、被災者台帳システムを用いて、
「平時における建物
被害認定調査、り災証明書発給、生活再建支援相談までの生活再建支援業務の過程を実施
する」訓練を行った(訓練参加者:一般市民約 200 名、区市担当者 59 名、都担当者 2 名、
消防担当者 63 名、研究者等(生活再建支援チーム)23 名)
。
会場には猪瀬直樹・東京都副知事も来場し、り災証明発行までの一連の流れを足早に体
験。
「未導入の市区町村に是非このシステムを入れてもらいたい」とコメントした 14。
なお、東京都防災訓練に先駆けて、
「被災者台帳システムを活用した実証実験」のための
事前研修を平成 24 年 8 月 29 日目黒区役所総合庁舎で実施し、訓練実施過程において研修
の効果測定を実施した。その結果に基づいて、人材育成プログラムの見直しを行い、本シ
ステムを担う中核人材育成システムの整備に努めている。
図 12 東京都・目黒区総合防災訓練の様子
資料:JST・RISTEX 広報資料(http://www.ristex.jp/public/pdf/art08.pdf)
14
参考 URL:http://www.ristex.jp/public/pdf/art08.pdf
118
④ 生活再建支援システムを導入する自治体の増加
PR 活動及び東京都における実証実験等を経て、「被災者台帳を用いた生活再建支援シス
テム」に対する社会的関心は高まっており、システムを導入する自治体が増加している。
【東京都豊島区】区と消防が共通システムを導入
豊島区と豊島、池袋両消防署は平成 25 年 3 月 15 日、大規模災害時の義援金受給などの
手続に必要なり災証明を迅速に発行するため、共通のシステムを導入する協定を締結した。
通常は揺れなどによる建物倒壊は区市町村が、火災は消防署が証明書を発行する仕組みだ
が、今後は豊島区役所で両方が受け取れることになる 15。
その他、東京都では、中央区(平成 24 年度)
、港区(平成 25 年度)がシステム導入を進
めている。
【神奈川県茅ケ崎市】導入済の被災者支援システムに加え、被災者生活再建支援システム
を導入
茅ヶ崎市では、被災者の生活再建のために必要不可欠な「り災証明」の迅速、正確かつ
効率的な発行をはじめ、被災者支援に関するさまざまな業務に対応可能な「被災者生活再
建支援システム」を平成 25 年 8 月 1 日より導入した。
「災害対策基本法等の一部を改正する法律(平成 25 年法律第 54 号)」において、
「り災
証明」の交付が市町村長の義務として規定されたのを受け、平成 24 年 3 月に導入済みの被
災者支援システム(機能:仮設住宅入居管理、緊急物資管理、避難所管理等、開発:LASDEC
財団法人地方自治情報センター)に加えて、
「被災者生活再建支援システム」
(機能:被害
判定調査、被災者台帳の作成、り災証明発行、開発:NTT東日本)を導入する 16。
【神奈川県座間市】被災者生活再建支援システムの導入
座間市は、地域防災計画に「災害状況の把握や各種の支援措置を早期に実施するため、
速やかに住宅等の被害の程度を認定し、被災者にり災証明を交付するため、被災者生活再
建支援システムを導入する」旨を明記し、同システムの導入を進めている 17。
【京都府京都市】円滑な被災者支援のための台帳システムの導入・運用
大規模災害発生後において、被災者支援を迅速かつ円滑に実施するため、被害調査から
被災者台帳の作成、り災証明の発行までの一連の業務を迅速かつ効率的に行う「被災者台
帳システム」を導入した。政令指定都市及び西日本では初の導入となる。
本システムは原則として、被災者生活再建支援法や災害救助法の適用を受ける規模の災
害において運用される。また、被災者支援業務を担える職員を増やすため、職員を対象に
運用基礎研修を実施している。
京都府南部豪雨において、開発中であった本システムが宇治市において緊急活用され、
り災証明書の発行事務が迅速に行われたことを導入根拠の一つとしている 18。
15
16
17
18
毎日新聞 2013/03/16
茅ヶ崎市記者発表資料
座間市ホームページ
京都市広報資料
119
【岩手県大槌町、宮古市】被災者台帳システムの導入
東日本大震災の被災者に生活支援を着実に行うため岩手県が導入した「被災者台帳シス
テム」の試験運用が、大槌町(平成 23 年 7 月~)
、宮古市(同 9 月~)で開始された。宮
古市は翌年に本格稼働へと移行している。
同台帳は、住民基本台帳など基礎データに加え、仮設住宅入居状況や義援金の申請・支
給など被災者支援に関するデータを市町村が県に提供し一つの台帳に統合。県庁にサーバ
を置き希望する市町村が利用できるものである 19。
【その他】
京都府、新潟県が前向きに導入の検討を行っている。
これら「被災者生活再建支援システム」の開発・販売は、NTT東日本が実施している。
導入による経済効果は、京都市約 2,500 万円 20、港区 1,342 万円 21、茅ケ崎市月額リース料
34.4 万円 22等となっている。
⑤ 訓練・研修プログラムの提供
災害対策においては、日々の訓練こそが重要である。本研究グループは、RISTEX「研究
開発成果実装支援プログラム」の支援を受け、被災者生活再建支援システムの訓練・研修
プログラムを構築し、システム導入自治体に対し、年 1 回程度、同プログラムを提供して
いる。また、訓練・研修プログラムが受講者に対してどのような効果をもたらしたかの分
析も進めている。
訓練・研修の教材、レクチャー内容等は DVD で配布している。現在、文部科学省「首
都直下地震 防災・減災特別プロジェクト」の後継プロジェクト、文部科学省「都市の脆弱
性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト」のサブ・プロジェクト「都市災害におけ
る災害対応力の向上方策に関する調査・研究」の中で、多くの人に対して同時に訓練・研
修を提供することを目的に、訓練・研修教材を WBT(Web-Based Training)で提供する仕
組みを構築中である。
19
20
21
22
岩手日報 2011/10/1
京都市広報資料
港区報道発表資料
茅ケ崎市広報資料
120
3.4.3.2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの開
拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
① 本取組を進める中核人材の台頭・活躍
京都大学防災研究所の研究員として林春男教授とともに研究し、柏崎市の生活再建支援
時には中心的メンバーだった田村圭子氏(当時:新潟大学 災害復興科学センター 特任准
教授) 23は、その後新潟大学危機管理室の教授となっている。東京都が被災者生活再建支
援システムに関心を持った際にも、その主担当者として中心的な役割を務めている。現在
はRISTEX「研究開発成果実装支援プログラム」に採択された「首都直下地震に対応できる
被災者台帳を用いた生活再建支援システムの実装」事業の実装責任者を林教授から引き継
いでいる。実学的なアプローチ、社会実装重視の研究姿勢が、短期間でのステップアップ
につながったと評価されている。
また、本プロジェクトの初頭、柏崎市とともに取組を進めていた際には大学院生だった
井ノ口宗成氏は、その後新潟大学災害復興科学センター(平成 23 年 4 月より災害・復興科
学研究所)助教(有期)となり、現在は助教としてのポジションと、柏崎市等における活
動の中心メンバーとしての役割を獲得している。主に技術的な担当者として活躍している。
田村氏、井ノ口氏が中核となって、複数の関係プロジェクトを進める体制が構築されてい
る。
② 行政職員等からなる生活再建支援ネットワークの形成
前述の訓練・研修プログラム等の受講者(市区職員、消防職員等)が、生活再建業務や
生活再建支援システムに習熟するようになるにつれ、
システムの広報の場である展示会や、
訓練の場である防災訓練において、本研究グループメンバーに代わって、システムの効果
や利用法等をプレゼンテーションする役割を担うようになっている。
また、京都府南部豪雨に見舞われた宇治市がり災証明を発行する際には、直前に「東京
都・目黒区合同総合防災訓練」でり災証明発行訓練を受けた東京の市区の職員が 100 人以
上応援に駆け付けている。これに応じて、平成 25 年 8 月に豊島区が大雨に見舞われた際に
23
学歴
1984 年 3 月
2001 年 3 月
2004 年 3 月
2005 年 3 月
職歴
2004 年 4 月
2005 年 4 月
2006 年 4 月
2009 年 4 月
関西学院大学 文学部教育学科 卒業
関西学院大学 社会学研究科 社会福祉学専攻修士課程 修了
京都大学大学院 情報学研究科 社会情報学専攻博士後期課程 単位取得退学
博士(情報学)京都大学
京都大学防災研究所 研究員
京都大学防災研究所 COE 研究員
新潟大学 特任助教授(災害復興科学センター)
新潟大学 教授(危機管理室)
121
は、宇治市の職員が応援に駆け付けている。自治体の垣根を越えた連携・協力関係が構築
されている。
本研究グループでは、今後とも、自治体へのシステム導入を図っていくとともに、被災
者生活再建支援業務を担う人材及び本システムを活用できる人材の育成を図っていく方針
である。
③ 新研究開発領域「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地域の創造」の立ち上げ
本プロジェクトの成果や、社会技術研究開発においてRISTEX が培ったノウハウを活か
し、安全・安心な都市・地域の構築を効果的・効率的に進めていくために、
「コミュニティ
がつなぐ安全・安心な都市・地域の創造 24」という新たな研究開発領域がRISTEXに設置さ
れた。本領域の達成目的は下記の通り。
防災・減災に関わる既存の研究開発、現場における取り組みや施策、制度等の現状を科
学的に整理・分析し、同時に起こりうる様々な危機・災害を一元的に体系化し、効果的な
対応を図るために必要な新しい知見の創出及び方法論の開発を行う。
危機・災害対応に係る都市・地域の現状と問題を把握・分析し、安全・安心に関わる知
識・技術、社会制度、各般の関与者(行政、住民、学校、産業、NPO/NGO 等)を効果的
に連携させることにより、安全な都市・地域を構築するとともに、人々に安心を提供する
ため、現場に立脚した政策提言、対策の実証を行う。
研究開発活動及び得られた研究開発の成果が、当該地域・研究領域の枠を超えて活用さ
れ、普及・定着するよう、情報共有・意見交換や連携・協働のための関与者間のネットワー
クを構築する。
領域統括に林春男教授が、
マネジメントメンバーの一員に田村圭子教授が就任している。
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
① 本プロジェクト参加自治体による取り組みの推進
【新潟県柏崎市】平常業務への GIS 導入と「柏崎市 GIS シンポジウム」
新潟県柏崎市では、
2007 年新潟県中越沖地震の発生後、産官学連携の下で GIS を活用し、
効果的な災害対応業務を実現している。この経験を踏まえて、平常業務への展開を実現す
べく、2009 年度に行政サービスの向上を目指し、職員自らが GIS を活用できる環境と体制
の整備を推し進めてきた。
これらの取り組みを紹介するとともに、防災専門家が全国の教訓の発信や質の高い行政
サービスのあり方について講演するシンポジウム「柏崎市 GIS シンポジウム~2007 年新潟
24
参考 URL:http://www.ristex.jp/examin/anzenanshin/index.html
122
県中越沖地震の経験を踏まえた平常業務への展開~」を平成 22 年 7 月 26 日に柏崎市市民
プラザ(波のホール 新潟県柏崎市東本町)で開催した(主催:新潟大学災害復興科学セン
ター、共催:柏崎市)
。県内外の防災研究者や自治体担当者ら約 150 人が参加した。本シン
ポジウムでは、林教授(
「質の高い行政サービスを目指した GIS 活用のあり方」)及び井ノ
口助教(
「産学官連携による今後の柏崎市の取り組み」)が講演を行っている。
【京都府宇治市】GIS 活用研究会活動及び京都府南部豪雨におけるり災証明の発行
京都府宇治市では、災害時に必要な情報を、GIS を使って処理する体制を築くため、宇
治市、京都府、京都大学防災研究所による研究会を 2010 年度に発足させた。
宇治市では 2008 年から府と府内市町村が共同開発した統合型 GIS を運用しており、全課
の職員が自分のパソコンから GIS にアクセスできる環境を持っていたが、豪雨による浸水
個所や被災家屋の表示等、災害時に必要な情報を GIS で表示するまでには至っておらず、
大災害発生時には災害対策本部に手書き資料があふれ、対応が追いつかない状況に陥る可
能性もあった。本研究会により、災害対策本部で GIS を活用し、多くの情報を分析、整理
できる体制を目指した。
平成 24 年 8 月 13~14 日にかけて京都府南部が記録的豪雨に見舞われ、周辺自治体に
甚大な被害が生じた。最も被害が大きかった宇治市(最大時間雨量 78.5mm、累加雨量
311mm 、全壊 30 棟、半壊 169 棟、床上浸水 775 棟、床下浸水 1,294 棟)では、被災者の
生活再建支援が急務となり、林教授に支援が要請され、被災者生活再建支援システムが全
国で初めて本格使用された例となった。9 月 10 日から、建物被害認定とり災証明の発行を
「東京都・目黒区合同総合防災訓練」でり災証明発行訓
行った 25。生活再建支援業務には、
練を受けた市区の職員が 100 人以上応援に駆け付けている。
【石川県輪島市】位置情報を軸にした全庁情報の共有・活用
輪島市では、本プロジェクトにおいて、2007 年 3 月の能登半島地震時に、災害対応業務
のプロセスで位置情報を付与した被災者台帳データベースを作成し、それを基に災害対応
GIS を構築していた。その後、各部局が参加する GIS 利用促進検討委員会の下で、それを
日常業務で全庁横断的に利用できるシステムへと拡充を進めている。
輪島市の全庁GISの特徴は、日常業務における情報入力の際に、市内の住所をユニーク
なコードに変換する共通のスプレッドシート(Excel)を利用することで、位置情報を軸と
した全庁情報の共有と活用を可能にしているところにある。この全庁GISに基づく同市の
地震防災システムによって、予防段階における要援護者の避難支援計画策定や避難マップ
作成、応急段階における被害情報の集約・共有、復旧段階における被災者情報管理と生活
支援実施、さらに通常時の防災訓練の実施などが可能になっている 26。
25
参考 URL:http://www.esrij.com/industries/case-studies/36625/
参考資料:国土交通省「GIS-『地理空間情報』の活用で拓く豊かで活力ある社会」
(http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/gis/gis/H20panf1-7.pdf)
26
123
3.4.4. 付属資料
3.4.4.1. 主要研究者動静表
氏名
研究期間中の所属・役職
現在の所属・役職
林 春男
京都大学 防災研究所 教授
京都大学 防災研究所 教授
吉富 望
京都大学 防災研究所 研究員
京都大学 防災研究所 研究員
牧 紀男
京都大学 防災研究所 准教授
京都大学 防災研究所 准教授
井ノ口 宗成
新潟大学 災害復興科学センター
新潟大学 災害・復興科学研究所 助教
助教
3.4.4.2. 研究開発プロジェクト終了後(平成 22 年 1 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
1
2
3
4
5
論文名
広域災害を対象としたウェブ配
信型被災者台帳システムの実装
-岩手県・宮古市を中心とした
東日本大震災被災自治体の試み
-
緊急地図作成チームにおける業
務支援のための地理空間情報の
活用-復旧期の岩手県医療・保
健・福祉分野での実践活動を通
して-
ID 理論を活用した東京都におけ
る生活再建支援の知識・技術向
上のための教育・訓練プログラ
ム設計手法の構築
緊急地図作成チームにおける効
果的な現場型空間情報マッシュ
アップの実現に向けた提案 −平
成 23 年東北地方太平洋沖地震を
事例として−
広域災害時における公的機関の
被害・災害対応データの現状と
課題 –東北地方太平洋沖地震に
おける避難所避難者データを事
例として−
著者
掲載媒体
年月
井ノ口 宗成、田村 圭 地 域 安 全 学 会 論 文
子、木村 玲欧、小原 集 、 No.18 、 2012.11
pp.351-361
亜希子、林 春男
古屋 貴司、木村 玲 地 域 安 全 学 会 論 文
欧、井ノ口 宗成、田 集
、
No.17, 2012.11
pp.363-372
村 圭子、林 春男
木村 玲欧、田村 圭
地域安全学会論文
2012.11
子、井ノ口 宗成、堀
集、No.18, p.433-442
江 啓、林 春男
井ノ口 宗成、田村 圭 地 域 安 全 学 会 論 文
子、古屋 貴司、木村 集
、
No.15, 2011.11
pp.219-229
玲欧、林 春男
木村 玲欧、古屋 貴 地 域 安 全 学 会 論 文
司、井ノ口 宗成、田 集
,
No.15, 2011.11
pp.233-242
村 圭子、林 春男
124
6
7
8
9
10
11
12
13
14
論文名
Supporting Life Recovery
with the Management
Based on the Victims
Database –A study of
Management Following
Metropolitan
Near
Earthquake Disaster
Process
System
Master
Crisis
Tokyo
Field
著者
掲載媒体
Keiko
Tamura,
Munenari
Inoguchi,
Reo Kimura, Takashi
Furuya, Haruo Hayashi
15th
World
Conference
on
Earthquake
2012.9
Engineering
Proceedings,
CD-ROM(8pp)
Proceedings of The
Keiko
Tamura,
Building a Victims Master
International
Munenari
Inoguchi,
Emergency
Database Using the GeoWrap
Reo Kimura, Takashi
Method without a Primary Key
Management Society
Furuya, Haruo Hayashi
Japan Chapter, pp.7
首都直下地震の防災・減災を目
電気協会報 (1049),
林 春男
10-15
指して
15th
World
Structure of Web-Based Victims
Munenari
Inoguchi, Conference
on
Master Database of the Life
Keiko Tamura, Reo Earthquake
Rebuilding Process -A Study of the
Kimura,
Takashi Engineering
Great East Japan Earthquake of
Furuya, Haruo Hayashi Proceedings,
2011CD-ROM(8pp.)
Supporting Life Recovery Process
15th
World
with the Management System
Keiko
Tamura, Conference
on
Based on the Victims Master
Munenari
Inoguchi, Earthquake
Database - A study of Crisis
Reo Kimura, Takashi Engineering
Management Following Tokyo
Furuya, Haruo Hayashi Proceedings,
Metropolitan
Near
Field
CD-ROM(8pp.)
Earthquake DisasterGeospatial Information Improves
15th
World
the
Decision-Making
Process
Takashi Furuya, Reo Conference
on
during the Disaster Response: The
Kimura,
Munenari Earthquake
Experience of the Emergency
Inoguchi,
Keiko Engineering
Mapping Team in the 2011 off the
Tamura, Haruo Hayashi Proceedings,
Pacific
Coast
of
Tohoku
CD-ROM(8pp.)
Earthquake
災害から立ち直る力=レジリエ
教 育 と 医 学 60(7),
林 春男
632-641
ンスを
Visualization
Methods
and
Associated Challenges of Disaster
Data for Common Operational
Journal of i-society
Picture — A Case Study of the Munenari
Inoguchi,
2012,
2011 Great East Japan Earthquake Haruo Hayashi
CD-ROM(5pp.)
based on the Activities of
Emergency Mapping Team of the
Cabinet Office —
Implementation of a Web-Based Reo Kimura, Munenari
Journal of i-society
and Cloud-Based Participatory GIS Inoguchi,
Keiko
2012,
System to Certify Property Tamura, Yuji Nawa,
CD-ROM(5pp.)
Damage due to Tsunami
Haruo Hayashi
125
年月
2012.5
2012.9
2012.9
2012.9
2012.9
2012.7
2012.6
2012.6
論文名
How to Construct the Common
Operational Pictures with Dynamic
Maps
Using
the
Mashup
15
Technology - EMT at National and
Municipal Level in 2011 Great
East Japan Earthquake
Clarifying the Function of the
Emergency Mapping Team in order
16 to Allocate the Limited Resources
in the Time of 2011 Great East
Japan Earthquake
著者
Munenari
Inoguchi,
Takashi Furuya, Reo
Kimura, Keiko Tamura,
Haruo Hayashi
Reo Kimura, Munenari
Inoguchi,
Keiko
Tamura,
Takashi
Furuya, Haruo Hayashi
Keiko
Tamura,
Building a Victims Master
Munenari
Inoguchi,
17 Database Using the GeoWrap
Reo Kimura, Takashi
Method without a Primary Key
Furuya, Haruo Hayashi
18
19
20
21
22
23
24
東北地方太平洋沖地震緊急地図
作成プロジェクトについて
広域災害を対象としたウェブ配
信型被災者台帳システムの実装
―岩手県・宮古市を中心とした
東日本大震災被災自治体の試み
―
緊急地図作成チームにおける業
務支援のための地理空間情報の
活用―普及期の岩手県医療・保
健・福祉分野での実践活動を通
して―
ID 理論を活用した東京都におけ
る生活再建支援の知識・技術向
上のための教育・訓練プログラ
ム設計手法の構築
首都直下地震発生後の日本経済
シナリオ~エコノミストを対象
としたエキスパートアンケート
調査~
広域災害時における公的機関の
被害・災害対応データの現状と
課題 : 東北地方太平洋沖地震で
の避難所避難者データを事例と
して
災害時要援護者の個人情報をめ
ぐる政策法務 : 新たな整理・分
析枠組みの構築と違法リスクの
抽出
井ノ口 宗成、田村 圭
子、林 春男
掲載媒体
Proceedings
of
TIEMS
(The
International
Emergency
Management Society)
Japan Chapter, pp.8
Proceedings
of
TIEMS
(The
International
Emergency
Management Society)
Japan Chapter, pp.7
Proceedings
of
TIEMS
(The
International
Emergency
Management Society)
Japan Chapter, pp.7
JACIC 情 報 27(1),
71-76
年月
2012.5
2012.5
2012.5
2012
井ノ口 宗成、田村 圭 地 域 安 全 学 会 論 文
2012
子、木村 玲欧、小原 集,No. 18,
pp.
351-361
亜希子、林 春男
古屋 貴司、木村 玲 地 域 安 全 学 会 論 文
2012
欧、井ノ口 宗成、田 集,No. 18,
pp. 363-372
村 圭子、林 春男
木村 玲欧、田村 圭 地 域 安 全 学 会 論 文
2012
子、井ノ口 宗成、堀 集,No. 18,
pp. 433-442
江 啓、林 春男
永松 伸吾、林 春男
地域安全学会論文
2012
集,No. 18,
pp. 451-459
木村 玲欧、古屋 貴
地域安全学会論文
2011.11
司、井ノ口 宗成[他]、
集 (15), 333-342
田村 圭子、林 春男
山崎 栄一 , 林 春
地域安全学会論文
2011.11
男 , 立木 茂雄 [他] ,
集 (15), 313-322
田村 圭子
126
25
26
27
28
29
30
31
論文名
緊急地図作成チームにおける効
果的な現場型空間情報マッシュ
アップの実現に向けた提案 : 平
成 23 年東北地方太平洋沖地震を
事例として
災害対策本部における状況認識
統一のための主題図作成支援
ツールの開発
巨大災害に対する法整備に関す
る考察--首都直下地震対策を中
心に
災害時要援護者の個人情報をめ
ぐる政策法務―新たな整理・分
析枠組みの構築と違法リスクの
抽出―
首都直下地震における東京都の
住宅再建シミュレーション
災害時の効果的な「状況認識の
統一」の実現を目指した行政職
員の GIS リテラシー向上の試み
被災者台帳に基づく包括的な被
災者生活再建支援業務の実態分
析-2007 年新潟県中越沖地震に
おける柏崎市を事例として-
災害からの被災者行動・生活再
建過程の一般化の試み-阪神・
淡路大震災、中越地震、中越沖
地震復興調査結果討究-
著者
掲載媒体
年月
井ノ口 宗成、田村 圭
地域安全学会論文
2011.11
子、古屋 貴司[他]、
集 (15), 219-229
木村 玲欧、林 春男
浦川 豪、林 春男、大 地 域 安 全 学 会 論 文
2011.3
村 径
集 (14), 99-109
武田 文男、林 春男、 自 然 災 害 科 学
2011
30(1), 105-122
佐藤 翔輔
地域安全学会論文
山崎 栄一、林 春男、
集 , No. 15 , pp. 2011
立木 茂雄、田村 圭子
313-322
自治体危機管理研
2010.12
究 6, 103-110
井ノ口 宗成、田村 圭 第 13 回日本地震工
子、木村 玲欧、林 春 学 会 論 文 集 , 2010.11
pp.636-643
男
牧 紀男
地域安全学会論文
井ノ口 宗成、田村 圭
集
,
No.13, 2010.11
子、林 春男
pp.453-462
木村 玲欧、田村 圭
地域安全学会論文
子、井ノ口 宗成、林
32
集
,
No.13, 2010.11
春男、
pp.175-185
浦田 康幸
都市計画. 別冊, 都
佐藤 慶一、牧 紀男、 市 計 画 論 文 集 =
想定首都地震後の住宅再取得に
33
中林 一樹 [他] , 翠 City planning review. 2010.10.25
関する社会シミュレーション
Special issue, Papers
川 三郎
on city planning
45(3), 571-576
Proceedings of the
International
VISUALIZATION OF VICTIMS INOGUCHI,
M., Emergency
34 STATUS IN LIFE RECOVERY TAMURA,
T., Management Society 2010.6
PROCESS USING GIS
HAYASHI, H.
(TIEMS) 17th Annual
Conference,
pp.327-338
生活再建支援台帳システムの効
井ノ口 宗成、田村 圭 地 域 安 全 学 会 論 文
35 果的運用を目指した被災者確定
2010.3
子、林 春男
集 (12), 81-91
業務の効率化手法
127
論文名
Realization of Effective Disaster
Victim Support by Development of
Victims Master Database with
36
geo-reference -A case study of
2007
Niigataken
Chuetsu-oki
EarthquakeRealization of Local Capacity
Building
for
Managing
Instructional-System-Design-Based
37
GIS – A Case Study of Wajima
City at 2007 Noto Hanto
Earthquake -
著者
掲載媒体
INOGUCHI,
TAMURA,
HAYASHI, H.
年月
Journal of Disaster
M.,
Research,
T.,
2010.2
Vol.5,
No.1.,
pp.12-21
Journal of Disaster
URA, Y., INOGUCHI,
Research,
Vol.5, 2010.2
M., HAYASHI, H.
No.1., pp.22-30
HONMA,
Building Service Oriented GIS
URAKAWA,
System for Local Government
38
INOGUCHI,
-Through the Experience of
TONOSAKI,
Chuetsuoki Earthquake, 2007HAYASHI, H.
The Development of Disaster YOSHITOMI,
Victims Database Utilizing the HAYASHI,
GeoWrap Method -From the 2004 MATSUOKA,
39
Niigata Chuetsu Earthquake to the TERANO,
2007
Niigataken
Chuetsu-oki INOGUCHI,
Earthquake
URAKAWA, G.
Realization of Effective Disaster
INOGUCHI,
Victim
Support
through
40
TAMURA,
Information
Integration
and
HAYASHI, H.
Visualization Using GIS
T.,
Journal of Disaster
G.,
Research,
M.,
2010.2
Vol.5,
No.1,
N.,
pp.98-107
N.,
H.,
Journal of Disaster
K.,
2010.2
Research,
H.,
Vol.5, No.1, pp.74-81
M.,
Third
International
M., Conference on Health
T., Informatics,
2010.1
Proceedings,
pp.381-387
災害からの被災者行動・生活再
木村 玲欧、田村 圭 地 域 安 全 学 会 論 文
建過程の一般化の試み―阪神・
41
子、井ノ口 宗成、林 集 , No. 13 , pp. 2010
淡路大震災、中越地震、中越沖
175-185
春男、浦田 康幸
地震復興調査結果討究―
(2) 発表・講演
発表・講演名
発表・講演者名
1
ウェブサービス型「岩手県被災
者台帳システム」を用いた被災 井ノ口宗成
者生活再建支援
2
都市の脆弱性が引き起こす激
甚災害の軽減化プロジェクト
「3.都市災害における災害対 林 春男
応能力の向上方策に関する調
査・研究」
3
情報処理過程としてとらえた
林 春男
災害対応の仕組み
128
シンポジウム・セミナー名
(会場)
IPS 情報処理学会第 75 回
全国大会
(東北大学川内キャンパ
ス)
第 13 回比較防災学ワーク
ショップ 平成 24 年度第 4
回災害対応研究会 公開シ
ンポジウム
(神戸交際会議場)
ICT 利活用による防災・減
災セミナー(―第 11 回産
学官連携セミナー―)
(エ
ル・おおさか)
年月
2013.3.8
2013.1.21
2012.11.22
発表・講演名
4
5
6
7
災害対応従事者の目線にたっ
た柔軟な空間的情報統合技術
IT を活用したリジリエントな
社会の創造 ~災害に負けない
社会を作るために~
防災研究者から情報システム
研究者に期待すること・知って
おいて欲しいこと
被災地の早期復興に向けた住
所情報の空間情報化に関する
基礎研究
8
首都直下地震による社会の影
響と復旧・復興
9
岩手県における被災者台帳を
活用した生活再建支援の最新
動向
シンポジウム・セミナー名
年月
(会場)
シンポジウム「情報学によ
井ノ口宗成
る未来社会のデザイン」 2012.11.8
(一橋大学 一橋講堂)
IPA グローバルシンポジ
ウ ム ( 東 京 ミ ッ ド タ ウ ン 2012.5.24
林 春男
ホール)
2012 年電気情報通信学会
林 春男
総合大会(岡山大学津島 2012.3.21
キャンパス)
井ノ口宗成、田村 2012 年電子情報通信学会
圭子、木村玲欧、 総合大会、岡山大学(岡山 2012.3.20
林春男
市)
首都直下地震防災・減災特
別プロジェクト最終成果
2012.3.8
林 春男
報告会(東京大学 安田講
堂)
JEITA 知識情報処理技術
に関するシンポジウム(一
2012.3.1
井ノ口宗成
般社団法人 電子情報技術
産業協会 401-403 会議室)
地域防災 GIS「地震災害」
2012.2
井ノ口宗成
研修
地域防災 GIS「地震災害」
2012.2
林 春男
研修
京都市 市民防災 フォー
2012
牧 紀男
ラム
発表・講演者名
状況認識の統一に向けた GIS
の活用方策
GIS を活用した効果的な危機
11
対応の推進
京都市の防災対策
12
~東日本大震災を踏まえて~
中越沖地震新潟県災害対策本
部 GIS プロジェクト「EMC」
13
井ノ口宗成
東日本大震災内閣府 GIS プロ
ジェクト「EMT」について
Munenari
INOGUCHI,
Design
of
Standardized
Keiko TAMURA,
Management System of Victims
14
Ryota
Master Database for Effective
HAMAMOTO,
Victims’ Life Reconstruction
Reo KIMURA and
Haruo HAYASHI
Takashi
FURUYA,
Reo
Practical Utilization of Maps to
KIMURA,
construct Common Operational
Munenari
15 Pictures in Disaster Response - A
INOGUCHI,
Case Study of Eastern Japan
Keiko TAMURA
Earthquake in 2011 and
Haruo
HAYASHI
10
129
空間情報セミナーin 新潟
2012
Conference of Integrated
2011.11
Research on Disaster Risk
Conference of Integrated
2011.11
Research on Disaster Risk
発表・講演名
発表・講演者名
東日本大震災における EMT
16 活動について:クラウドとマッ 井ノ口宗成
シュアップ
17
東日本大震災における GIS の
林 春男
役割
東日本大震災における EMT
18 活動について:クラウドとマッ 林 春男
シュアップ
19
災害に強いレジリエントなコ
林 春男
ミュニティの創設を目指して
シンポジウム・セミナー名
(会場)
第 7 回 GIS コミュニティ
フォーラム in 九州
(アクロス福岡 7 階)
GIS - DAY in 九州 2011
特別講演会(農村整備セン
ター)
『 GIS コ ミ ュ ニ テ ィ
フォーラム』in 北海道(酪
農学園大学)、大阪
(梅田スカイビルタワー
イースト)
地域防災セミナー(北海道
立道民活動センター)
年月
2011.10.19
2011.10.14
2011.9.27(
北海道)、
10.13( 大
阪)
2011.8.1
(3) 書籍・報告書等
著書名
著者
出版社
Mammen
復興の創造 : 9/11 からのニュ ー
富士技術出版
David, 林 春
1
ヨークの価値観とアプローチ
星雲社
男(序文・訳)
日本歴史災害事典(執筆項目:2007
2 年能登半島地震(pp.738-741)
、井ノ 井ノ口宗成
吉川弘文館
口宗成)
「建築と社会」巻:
自然災害に立ち向かう力を求めて
3
牧 紀男
93 号 : 1 ペ ー ジ :
災害のある国の住まい方を求めて
19-20
災害のあと始末 : 「暮らし」を取り
4
林 春男
エクスナレッジ
戻すための復興マニュアル
インタビュー 京都大学防災研究所
リスク対策.com 25,
5 林春男教授 (想定外へ の挑戦) -- 林 春男
pp.48-50
(3.11 の検証 災害対応を問う)
柏崎市 GIS 活用推進ワークショッ
6
井ノ口宗成
プ活動報告書
新発田市避難所運営マニュアル策
7 定報告書~BFD を用いた標準的な 井ノ口宗成
災害対応の実現にむけて~
新潟県における地震災害からの総
井ノ口宗成(分
8 合的な復興支援のための調査結果
担執筆)
報告書
次代の災害復興モデルの構築を目
井ノ口宗成(分
9 指して-にいがたからの知見と教
担執筆)
訓の発信-
新潟県との連携による震災復興に 井ノ口宗成(分
10
向けた調査研究報告書
担執筆)
130
年月
2012.7
2012.6
2012.1.1
2011.5
2011.5.25
2010.3
2010.3
2010.3
2010.3
2010.3
著書名
著者
出版社
新潟県中越沖地震対応における柏 井ノ口宗成(分
11
崎市地図作成班の活動
担執筆)
年月
2010.3
(4) 新聞・テレビ等
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
内容
年月
2013.3.26
フジテレビ
TOKYO MX
2013.3.25
NHK
2013.3.25
産経新聞
「都が地域防災計画修正素案 死者数 3 分の 1 に 減災目標盛り込む」2012.9.13
毎日新聞「都地域防災計画:修正案 総力結集し減災 行政と民間、都民で
2012.9.13
/東京」
2012.9.6
朝日新聞「被災者台帳のシステム稼働 宮古市、県内初/岩手県」
毎日新聞「被災者台帳システム:首都直下地震、被災情報を一元管理 罹災
2012.8.22
証明、迅速に 都が整備、電子地図にデータ集約」
2011.12.18
毎日新聞「
『被災者台帳』試験運用へ 支援状況一目で」
朝日新聞「被災者台帳を作り、支援データ共有へ 宮古市、幹部職員集め研
2011.12.6
修会/岩手県」
2011.12.6
岩手日報「宮古、年内にも本格運用 県が導入、支援着実に」
2011.10.1
岩手日報「県の被災者台帳システム、宮古、大槌の試験運用報告」
2011.9.11
朝日新聞「膨大な被災情報 電子台帳で管理」
読売新聞「り災証明 1 か月で発行 専門知識不要の新システム開発 都内で
2011.9.11
来年度実用化へ」
2011.6.24
河北新報「被災者支援へ『台帳』
」
2011.6.24
岩手日報「県、被災者台帳導入へ」
2010.8.4
京都新聞「GIS 災害時に活用を 宇治市と京都府、京大が研究会発足」
2010.7.27
新潟日報「柏崎 被災者支援に地理情報活用 150 人がシンポ」
日経新聞電子版ニュース「災害時の罹災証明発行を迅速化 京大など新シス
2010.4.17
テム」
日経新聞「生活再建スムーズに、大規模災害時、京大が新システム、都が導
2010.4.17
入検討」
テレビ朝日(インターネット配信のみ
ABC Web News(ANN News:インターネット配信のみ
(5) 特許
タイトル名
出願者
出願番号
ESRI ジャパン株式会社(発明
データベース統合装
1
者:林 春男、濱本 両太、吉富 特願 2011-036592
置
望)
デュプロ株式会社(発明者:東
2 地図印刷/読取装置
特願 2010-095596
田 光裕、林 春男、松下 靖)
131
出願年月
2011.2.23
2010.4.19
(6) 獲得グラント
グラント名
1
2
3
4
タイトル
採択者
文部科学省委託研
究「都市の脆弱性が 都 市 災害 にお ける 災害
引 き 起 こ す 激 甚 災 対 応 力の 向上 方策 に関
害 の 軽 減 化 プ ロ する調査・研究
ジェクト」
GIS を用いた生活再建過
程 に おけ る支 援資 源の
若手研究(B)
推定モデルの構築
首 都 直下 地震 に対 応で
RISTEX「研究開発
き る 被災 者台 帳を 用い
成果実装支援プロ
た 生 活再 建支 援シ ステ
グラム」
ムの実装
文部科学省「首都直
広域的危機管理・減災体
下地震 防災・減災
制の構築に関する研究
特別プロジェクト」
配分額
林 春男
井ノ口宗成
実施
年度
H24~28
2860 千円(総 H22~H25
額)
(予定)
林 春男、
田村 圭子
H22~25
(予定)
林 春男
H19~23
(7) その他
展示会・イベント
展示会・イベント名
1
文部科学省東日本大震災復
興支援イベント~教育・研
究機関としてできること、
そしてこれから~
2
第 14 回「震災対策技術展/
自然災害対策技術展」横浜
概要
これまで取り組んできた復
旧・復興活動等について、一
般国民に対し、その支援活動
のレビューを行い理解増進
を図るとともに、被災地支援
への風化を防ぎ今後を見据
えた支援につなげるための
広報啓発イベントを文部科
学省の場で開催。
「建物被害認定調査から被
災者台帳を用いた攻めの生
活再建支援までを一貫して
行えるシステム」のプロトタ
イプを、災害復興期の生活再
建業務の効率化に関心を持
つ関係者の方に実演を交え
て PR した。
132
会場
年月
文部科学省庁舎
前「霞テラス中央 2013.3.1
ひろば」
パシフィコ横浜
2012.2
研修会、講習会
名称
場所
1
豊島区
豊島区基礎
生活産
研修プログ
業プラ
ラム
ザ
2
防災と危機
市町村
管理~減災
アカデ
と災害対応
ミー
力~①
3
比較防災学 神 戸 国
ワ ー ク 際会議
ショップ
場
4
新潟市
新潟市議会
議会 全
市 政 調 査
員協議
会・研修会
会室
シ
ル
キ
ー
ホール
(長野
県須坂
市)
野村コ
ンファ
レンス
プラザ
日本橋
「
中
ホール
2」
5
第 37 回地方
自治研究 須
坂集会
6
番 号 制 度
ワ ー ク
ショップ~
番号制度の
導入と災害
と地方自治
の立場から
考える~
7
村上市
消防団・自主
ふれあ
防災組織の
いセン
理解促進シ
ター大
ンポジウム
ホール
ステーク
ホルダー
概要
豊島区の職員を対象として
被災者台帳システム全体の
説明ならびに研修プログラ
ムの適用を実施した。
「災害対応策の強化と減災」
との演題で被災者台帳シス
テム全体の説明ならびに東
京都における実証実験を発
表した。
被災者台帳システム全体の
説明ならびに東京都におけ
る実証実験を発表した。
「しなやかな防災社会の実
現」の演題で、被災者台帳シ
ステム全体の説明ならびに
東京都における実証実験を
発表した。
「東日本大震災に学ぶ防災
対策」の演題で、被災者台帳
システム全体の説明ならび
にその必要性と展開の可能
性について発表した。
社会的
イ ン パ ク 年月
ト
豊島区職員
及 び 近 隣 区 50 名
市の職員
2013.3.25
全国自治体
180 名
職員
2013.2.13
一般、自治体
職員、学識研 140 名
究者
2013.1.22
新潟市議会
60 名
委員
2012.12.28
市職員組合
員、防災に関
100 名
心のある市
民
2012.11.30
被災者台帳システム全体の
説明ならびにその実績を発
表するとともに、電子申請の
フレームを活用したシステ 行政、企業、
60 名
ムの展開を踏まえ、「番号制 研究者
度」が「被災者台帳システム」
に与える効力と解決すべき
課題について討議した。
「地震・津波災害対策におけ
る課題と地域防災を考える」
のテーマにもとづいて、「新 新 潟 県 内 地
しい防災訓練のご紹介『被災 方公共団体、
者台帳を用いた被災者生活 消防団、自主
250 名
再建支援システム』」の演題 防災組織、婦
で、被災者台帳システム全体 人 防 災 ク ラ
の説明ならびに住民の両視 ブ
点からとりまとめて発表し
た。
133
2012.10.23
2012.10.13
名称
8
9
場所
災害に係る
住家被害認
定等の効率 東 京 都
的実施に向 庁
けた調査研
究会
概要
ステーク
ホルダー
生活再建支援業務に関係す
るシステムや実証実験結果
などについて発表・検討を
行った。
実験参加自
治体職員、研
約 50 名
究者、企業関
係者
宮古時に実装したシステム
宮古市全庁 宮 古 市
の概要と生活再建過程の全
説明会
役所
体像について発表を行った。
10
調布市実証
実験
11
調布市事前
研修
岩手県被災
者台帳シス
12 テ ム に 関 す
る発表会・検
討会
13
豊島区実証
実験
14
豊島区事前
研修
社会的
イ ン パ ク 年月
ト
宮古市職員
(市長・幹部
職員)、岩手
県職員、マス
約 50 人 2011.12.5
コミ、行政関
係者、研究
者、企業関係
者
調布市職員、
市民、行政職
員、政治家、
約 300 名 2011.11.20
マスコミ、研
究者、企業関
係者
調布市職員および調布市民
双方の災害対応能力向上を
調布市
目的とした訓練を実装した
立第二
システムを用いて行い、同時
小学校
に実装したシステムの実証
実験を行った。
調布市職員を対象として、生
活再建の全体像とシステム
研修参加者
調布市
の仕組みを学ぶことで、災害 調布市職員
約 50 名
役所
時および実証実験における
対応能力向上を図った。
エスポ
マスコミ、行
ワ ー ル 岩手県被災者台帳のお披露
来場・
政関係者、研
参加者
いわて、 目の発表とそれにまつわる
究者、企業関
約 100 名
岩 手 県 関係者間の検討を行った。
係者
庁
豊島区職員及び豊島区民双 豊島区職員、
方の災害対応能力向上を目 区民、行政職
豊島区
的とした訓練を実装したシ 員、政治家、
立文政
約 250 名
ステムを用いて行い、問題に マスコミ、研
小学校
実装したシステムの実証実 究者、企業関
験を行った。
係者
豊島区職員を対象として、生
活再建の全体像とシステム
豊島区
研修参加者
の仕組みを学ぶことで、災害 豊島区職員
役所
約 50 名
時および実証実験における
対応能力向上を図った。
134
2012.3.27
2011.10.17
2011.9.30
2011.9.4
2011.8.11
Web サイトによる情報公開
1
2
内容
豊島区報道発表「り災証明書を迅速・公平に発行するため区民、行政で訓練を実施」
http://www.city.toshima.lg.jp/koho/hodo/23732/023571.html
Hazard Lab(地震予測検証 防災情報)
:
「り災証明書を一元発行 消防庁と豊島区がシス
テム運用開始」
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/8/0/809.html
135
136
3.5. カントリードメインの脆弱性監視と対策
(研究代表者:三上 喜貴)
137
3.5.1 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「情報と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」
研究開発プロジェクト名
カントリードメインの脆弱性監視と対策
研究代表者(現所属)
三上 喜貴(長岡技術科学大学 副学長)
研究実施期間
平成 20 年 5 月~平成 22 年 10 月(2008 年 5 月~2010 年 10 月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.5.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
インターネットのような高度な一体性を有する地球規模のインフラストラクチャーを、
分権的管理という基本原則の下で管理するという事業は前例のないものであり、それが円
滑に機能するためには、カントリードメイン管理に関する適切な目標設定と、目標の達成
状況を多面的に評価できる透明度の高い指標が必要である。
こうした認識にたち、本研究開発事業は、以下の二つの具体的開発課題を実現し、その
社会への実装を通じて安全・安心かつ地球規模でユビキタスなネットワークの実現に寄与
することを目標として取り組んだ。
(1)カントリードメイン・ガバナンスの実態を多面的に評価する指標としての CDG(Country
Domain Governance) Index
(2)望ましいガバナンスのための具体的な諸原則を文書化した Model ccTLD(country code
Top Level Domain) Charter
3.5.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
(1) 研究統括グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
三上 喜貴
長岡技術科学大学 技術経
営研究科 教授
研究統括
平成 19 年 10 月~
平成 22 年 10 月
Chandrajid
Ashuboda
Marasinghe
長岡技術科学大学 経営情
報系 准教授
研究統括補佐
平成 19 年 10 月~
平成 22 年 10 月
村上 直久
長岡技術科学大学 経営情
報系 准教授
利用・管理実態調査
平成 19 年 10 月~
平成 22 年 10 月
湯川 高志
長岡技術科学大学 電気系
准教授
調査・データマイニング手
法開発
平成 19 年 10 月~
平成 22 年 10 月
中平 勝子
長岡技術科学大学 経営情
報系 助教
データ収集と解析
平成 20 年 8 月~
平成 22 年 10 月
138
氏名
児玉茂昭
Chew Yew
Choong
J. R.
Rajasekera
期間中の所属・役職
長岡技術科学大学 産学官
連携研究員
長岡技術科学大学 経営情
報系 産学官連携研究員
国際大学大学院 経営学研
究科 E-ビジネス経営学プロ
グラム 教授
Pavol
Zavarsky
コンコルディア大学(カナダ)
アルバータ校 准教授
Hammam Riza
BPPTeknologi/IPTEKnet ( イ
ンドネシア) CIO
Solomon
Atnafu
Besufekad
アジスアベバ大学 情報科学
部 コンピュータ科学科(エチ
オピア) 准教授
担当
参加期間
研究支援
平成 19 年 10 月~
平成 22 年 10 月
データ収集と解析
平成 19 年 10 月~
平成 22 年 10 月
問題定義,技術的経済的
分析についての助言
平成 19 年 10 月~
平成 22 年 10 月
調査・データマイニング手
法開発
平成 19 年 10 月~
平成 22 年 10 月
アジアにおけるドメインガ
バナンスの実態などにつ
いて、また、技術的経済的
分析についての助言
アフリカにおけるドメインガ
バナンスの実態などにつ
いて、また、技術的経済的
分析についての助言
平成 22 年 1 月~
平成 22 年 10 月
平成 22 年 1 月~
平成 22 年 10 月
(2) 国際リエゾン・グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
上村 圭介
国際大学 GLOCOM 主任研
究員
利用・管理実態の調査・
分析
平成 19 年 10 月~
平成 22 年 10 月
Adam Peake
国際大学 GLOCOM 主幹研
究員
関与者の特定及び国際連
携に関する分析
平成 19 年 10 月~
平成 22 年 10 月
139
3.5.1.3. 研究開発の内容
(1) CDG Maturity Index の開発
CDG Index として、以下に示す 12 の系列からなる指標体系を構築した。この指標体系を
構成するデータは、ドメイン管理者が公表している価格情報及びウェブクロウラーによる
収集データの解析から得られる指標群であり、透明性が高く、また、継続して観測するこ
との可能な指標である。また、これを用いてガバナンスの状態を多面的に評価できること
を確認した。
① RPDM(Relative Price of DNs to Monthly Income)
:ドメインの相対価格(月間所得との比率)
②
RPDG(Relative Price of DNs to the Global Average Price)
:ドメインの相対価格(世界平均価格との比
率)
③ NDPP(Number of DNs (published) Per Population)
:人口当たりのドメイン発行数
④ RSLO(Ratio of Servers Located Outside of the Jurisdiction)
:サーバのドメイン外設置比率
⑤ NOLM(Number of Outgoing Links to Global News Media)
:国際ニュースメディアへのリンク数
⑥ NIDN(Number of Active IDNs)
:国際ドメイン名(IDN)発行数
⑦ LLPP(Number of Local Language Pages per Population)
:人口当たり現地言語ページ数
⑧ RPLL(Ratio of Pages in Local Languages to the Total Pages)
:現地言語ページ比率
⑨ LDLI(Linguistic Diversity measured by Lieberson Index)
:リーバーソン指標で測った言語多様性
⑩ SSMO(Share of Spam Mail Origins)
:スパムメール発信源比率
⑪ RDRA(Ratio of DNs whose Registrant is Anonymous)
:ドメインの匿名登録者比率
⑫ ADRP(Availability of Dispute Resolution Process)
:紛争解決手続きの利用可能性
(2) Model TLD Charter の開発
ccTLD 27は登録されたドメイン名が違法・有害なコンテンツの頒布に使用されている場
合、ドメイン名を強制的に廃止できる体制が必要である。本研究開発では、このような責
務をより積極的な手段で果たそうとしている先進的なccTLDの取組についての調査を行っ
た。また、本研究開発では、現地の利用者にとって利用しやすいccTLDの実現という観点
からccTLDの利用実態や登録料金について調査を行った。
(3) CDG Maturity Index の 12 種類の指標に基づいて、250 のカントリードメインを分析し、
「アクセス」
「言語多様性」
「安全・信頼」の 3 つの観点から視覚化
① アクセスの観点での視覚化
ドメインの価格行動を監視するためのツールを開発し、ドメイン管理者は、自らの価格
設定が、国際的に見て、また、国内利用者の所得水準から見てどのような設定となってい
るのかが分かるようにした。
利用水準を監視するためのツールを開発し、非価格要因が利用水準を向上させる方向に作
27
ccTLD:国名コードに基づくトップレベルドメインである。日本を表す「.jp」などがこれにあたる。
140
用しているのか、あるいは抑制する方向に作用しているのかが分かるようにした。
オープン性を監視するためのツールを開発し、ネットワークのオープン性を評価できるよ
うにした。
② 言語多様性の観点での視覚化
ウェブ上に存在するページの言語について、ローカル言語比率と多様性指標を示すため
のツールを開発した。
カントリードメインごとに言語構成比を示すツールを開発した。
③ 安全・信頼の観点での視覚化
各ドメインのセキュリティ指標を示すツールを開発し、実際に 30 のドメインについて評
価を行った。その結果、管理ポリシーの厳しいドメインにおいてはフィッシュスコアも相
対的に低い(安全である)という結果が得られた。
信頼性の指標として、ドメイン名に関する紛争解決手段の利用可能性を用いてドメインの
信頼性指標を構築することを検討した。
3.5.1.4 研究開発の成果
CDG Maturity Index の 12 種類の指標に基づいて、250 のカントリードメインを分析し、
「アクセス」
「言語多様性」
「安全・信頼」の 3 つの観点から視覚化を行って、ドメイン管
理者が自己をよりよく認識するためのツールを開発した
① アクセスの観点での視覚化
ドメインの価格行動を監視するためのツールを開発し、ドメイン管理者は、自らの価格
設定が、国際的に見て、また、国内利用者の所得水準から見てどのような設定となってい
るのかが分かるようにした。
利用水準を監視するためのツールを開発し、非価格要因が利用水準を向上させる方向に
作用しているのか、あるいは抑制する方向に作用しているのかが分かるようにした。
オープン性を監視するためのツールを開発し、ネットワークのオープン性を評価できるよ
うにした。
② 言語多様性の観点での視覚化
ウェブ上に存在するページの言語について、ローカル言語比率と多様性指標を示すため
のツールを開発した。
カントリードメインごとに言語構成比を示すツールを開発した。
③ 安全・信頼の観点での視覚化
各ドメインのセキュリティ指標を示すツールを開発し、実際に 30 のドメインについて評
価を行った。その結果、管理ポリシーの厳しいドメインにおいてはフィッシュスコアも相
141
対的に低い(安全である)という結果が得られた。
信頼性の指標として、ドメイン名に関する紛争解決手段の利用可能性を用いてドメイン
の信頼性指標を構築することを検討した。
Model TLD Charter の開発を行った
違法・有害コンテンツの抑止のために、より踏み込んだ対策を積極的に果たそうとして
いる先進的な ccTLD の取組についての調査を行った。また、本研究開発では、現地の利用
者にとって利用しやすい ccTLD の実現という観点から ccTLD の利用実態や登録料金につ
いて調査を行った。
また、その結果に基づいて、Model TLD Charter の開発を行った。
3.5.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
本プロジェクトでは、当初開発目標の達成、技術的・社会的貢献、成果の社会における
活用・展開という視点を中心に総合的に判断して、実装についてはやや時間の経過が必要
と考えられるが、十分な成果が得られたと評価する。
本プロジェクトは、特に途上国におけるカントリードメイン下での不用意なドメイン名
発行がインターネットの不適切利用の現状となっていることから、カントリードメインの
管理のため、カントリードメイン・ガバナンス(CDG)の状況の客観的評価指標であるCDG
Indexと、CDGの管理基準であるModel TLD Charterの開発とICANN 28等に提案を行うカント
リードメインの脆弱性監視と対策を目的とした。その結果きわめてユニーク且つ合理的・
説得的観点から、アクセスと言語多様性、安全と信頼という抽象的な目標を達成している
かどうかを見る具体的指標を開発できた。それらの指標のほぼすべてについて実態の測定
が行なわれており、得られたデータはほかには見られないユニークなものであって、その
点においても価値が高い。また、ガバナンス評価のための視覚化を行なう『ガバナンス評
価の「窓」
』というツールを提起しており、実用性が高いと考える。
Model TLD Charterについては、ccTLDの利用実態調査がガバナンスの観点から実施され
ているが、量的な評価による全体的傾向を見るだけでなく、現地調査による.laや.thドメイ
28
The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(アイキャン)はインターネットの IP アドレス
やドメイン名などの各種資源を全世界的に調整・管理することを目的として、1998 年に設立された民間
の非営利法人である。
142
ンやCoCCA 29などの現状、違法・有害コミュニケーションへの対応状況の報告は有効であ
る。また、Model TLD Charterの開発については、ICANNへの提案段階に達した高い水準の
原案が作成されたと考える。さらにCDG Index、Model TLD Charterについて総合的な見地
から評価する考え方・基準を、国際的な協力体制の下に作成し、ICANNやその他の国際的
なインターネット・コミュニティにおいて、継続的に情報発信している。継続的に情報発
信を行い提示したことは社会実証のための大きな成果と考える。国際的水準で考えると、
CDG IndexやModel TLD Charter、およびその調査手法と視覚化のツールは、現在までに提
案されていないユニークなもので報告書を見る限り同僚研究者たちの関心も高く、国際連
合教育科学文化機関(UNESCO)を始め、各国の政策に与える影響も今後さらに大きいも
のになると期待される。
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトでは、研究開発目標は相当程度達成されたと評価する。
カントリードメイン・ガバナンス(CDG)実態を多面的に評価する指標としての CDG
Index と、望ましいガバナンスのための具体的な諸原則を文書化した Model TLD Charter の
2 つの具体的開発課題を実現し、その社会への実装を通じて安全・安心かつ地域規模でユ
ビキタスなネットワークの実現に寄与するという研究開発目標は、明確に設定されており、
目標からの乖離もなく、ほぼ計画通りに進捗したと評価できる。
研究開発の進捗状況において CDG Index の開発は、実態調査と最終的な指標の開発がほ
ぼ遅滞なく進んだと判断するが、ドメインの匿名登録者比率の実態については「未検証」
となっており、この点は、遅滞が見られた。Model TLD Charter の開発に関しては、とくに
遅滞があったと判断されない。CDG Index 、Model TLD Charter を開発し、分析・考察が行
われ、有効な成果が得られたことから、目標は相当程度達成されたと評価できる。
ただし、CDG Index における「オープン・アクセス」と「安全と信頼」に関する信頼性の
基準と、社会への実装という点について更なる検討を要することが、今後の課題として残
された。
(3) 技術的貢献
本プロジェクトは、ユビキタス社会のガバナンスに有用な技術として一定の貢献があっ
たと評価する。
本プロジェクトにおいては、カントリードメインを起点とし、グローバルネットワーク
の社会的ガバナンスに関する多種多様な重要情報を、洗練された手法で解析、整理ビジュ
29
Council of Country Code Administrators(CoCCA)の略称であり、2003 年、クリスマス島(.CX)の国別
ドメイン管理者のイニシアチブによって設立された。現在は、会員制の非営利企業の組織形態をとり、
ccTLD 管理運用主体を中心に 22 の会員を有する。職員数は 5 名である。
143
アル化させ、体系的なグローバルデジタルデバイドに関する理解を促進する客観的情報を
体系的に与え、指標とモデル規約の提案を行い、実際に適用可能な成果を得たことは、問
題意識を持つものは多いが、実際に成果をまとめた事例が無かった点を考慮すると、重要
な貢献である。
本研究開発で見られるデータは他所では未見のデータが多く、
指標もユニー
クでその指標が抽象的尺度を反映していると考えられる合理性・説得性は高い。今後のド
メイン名の管理運用やその利用の実態調査においては十分に活用されていくことが期待で
きる。しかしながら、世界的ネットワーク・リソースの管理問題を考えるときに ccTLD 以
外の要素を考えなくても良かったのか、
「アクセス・オープン性」「言語多様性」「安全・信
頼」の大目的を支える要素の全体像を示し、その中で各要素がどのように大目的に貢献す
るのか、どの要素の改善の重要性・緊急性が高いのか、明確にすることも必要であった。
(4) 社会的貢献
本プロジェクトで得られた成果はユビキタス社会のガバナンスの構築に大いに社会的貢
献があったと評価する。
本プロジェクトが世界的に注目される現象について、総合的な見地から評価する考え
方・基準を、国際的な協力体制の下に作成し、ICANN やその他の国際的なインターネット・
コミュニティにおいて、CDG Index や Model TLD Charter について継続的に情報発信し提示
したことは大きな成果である。その成果は、指標とモデルチャーター(及びその実際の適
用への働きかけ)
の組み合わせとなっており、実現及び行動に結びつくものとなっている。
このような指標及び考え方が示されることにより、カントリードメインのガバナンスにつ
いて比較することが可能となり、関係者による改善、或いは外部者からの批判や改善の促
し等が可能になるものと考えられる。
今後、重要度が確実に飛躍的に増すであろうグローバルなデジタルデバイドに関する問
題提起、問題解決に関し、非常に重要な役割を果たすだろう。さらに、ICANN やその他の
国際的なインターネット・コミュニティにおいて、CDG Index や Model TLD Charter、およ
びその調査手法と視覚化のツールなどが、ドメイン名の運用管理を国際的に見守り、一定
基準以上に保つためのツールとして採用されるならば、(ドメイン名に関する)インター
ネット・ガバナンスに対して大きく貢献すると考えられる。 国際的水準については、CDG
Index や Model TLD Charter、およびその調査手法と視覚化のツールは、現在までに提案さ
れていないユニークなもので報告書を見る限り同僚研究者たちの関心も高く、UNESCO を
始め、各国の政策に与える影響も今後さらに大きいものになると期待する。
(5) 副次的貢献
本プロジェクトにおける副次的貢献は大いにあったと評価する。
144
本プロジェクトの副次的貢献は以下に掲げる点から、安全・安心なユビキタス社会の実
現に向けて貢献が期待できる。
①今後人権や文化の多様性など価値に関わるインターネットの重要な利用状況(デジタ
ルデバイドやインターネットの言語多様性や、その利用・アクセスの自由など)につ
いて測定するのに役立つ評価調査手法を開発した。インターネットの言語多様性に関
する研究については、UNESCO の編集する書籍に掲載される予定である。
②質的調査によって、先進国以外のドメイン名利用の実態の一部を明らかにした。
③国際的なインターネットの運用管理コミュニティに対して、指標や運用管理規則の提
案を行なうことで、日本としての発言力が一定以上認識されたと推測できる。
④今後類似なシステムが作られた場合の模範となる。
⑤この指標及び提示されたガバナンスの在り方を実現するためには、それぞれのカント
リードメインの関係者のみならず、それらの国際的な協調も必要となってくる。
⑥不適切なコンテンツの温床となっているドメインや悪意のある行為者の巣食っている
ドメインを把握するとともに、悪意行為者や犯罪行為者の即時的動的追跡と特定を可
能ならしめるダイナミックな機能の開発
(6) 成果の社会での活用・展開・情報発信
本プロジェクトの研究成果については、活用・展開・情報発信がなされており有効と評
価する。
本プロジェクトのアウトリーチ活動については、ICANN、ITU、UNESCO などとの連携
が進行中で、ICANN やその他の国際的なインターネット・コミュニティにおいて、CDG
Index や Model TLD Charter について理解を得、同意者獲得のためかなり熱心な数多い情報
発信が行われていると評価する。さらに、UNESCO の書籍に本プロジェクトの研究成果に
ついて掲載される予定である。
今後望まれる政策的措置としては、世界に貢献するビジョンとして、「グローバルなデジ
タルデバイドに関する問題提起、解決」という観点から、日本がリーダシップを取ろうと
するあらゆるフェーズ、チャネルにおいて、問題発見、問題解決に資するシステムとして
有効なツールとしての活用を考える。さらに、ドメイン名の管理運用の評価指標や、Model
TLD Charter を普及し、ICANN やその他の国際的なインターネット・コミュニティでの採
用のため、今後の継続した活動と、今回のような公的支援が受けられることが望ましい。
(7) 費用対効果比
評価できる成果が得られていること、得られた成果の活用も行われていることから、本
プロジェクトに投入された研究開発費と予想される効果は相当な効果があったものと評価
する。
本プロジェクトの成果は、
前委託研究開発の成果活用、世界でもユニークな調査と分析、
145
その結果を活用した、世界初ともいえる CDG INDEX や Model TLD Charter の作成、その
内容による世界への情報発信等研究開発費以上の効果があったものと評価できる。
(8) 研究開発体制と管理運営
本プロジェクトの研究実施体制と管理運営は概ね適正・妥当であったと評価する。
研究代表者の三上氏の着想とリーダシップに大きく依存しているチームではあるものの、
意思疎通が図られ、相互の課題間での知見の共有も図られている。また、アドバイザーの
意見を踏まえて海外調査地域の変更が行なわれており、プロジェクト進行中にチェックが
行なわれていたことが推測できる。ただし、どのような助言があったのか、その変更の結
果どのような成果が得られたかも記述して欲しかった。
(9) 特記事項
本プロジェクトは社会技術研究開発センターの役割の重要性を社会に示す好例、公募制
の良い例の現れである。
今後は、米国アカデミーズの全米研究会議(National Research Council)で推奨されてい
るアセスメント三角形も参考に、アセスメントと評価の概念を区別して、検討されること
が求められる。アセスメントとは、目的や目標がどの程度まで達成されているかを評価す
るために、根拠となるデータを同定し、集め、準備する一つまたは複数のプロセスである。
効果的なアセスメントには、目的や目標がどの程度まで達成されているかにふさわしい、
関連する直接、間接、量的、質的測定が用いられる。その際、ふさわしいサンプリング法
がアセスメント・プロセスの部分で用いられる。評価とは、アセスメント・プロセスを通
して集積されたデータを解釈する一つまたは複数のプロセスである。それは、目的や目標
がどの程度まで達成されているかを決定するものであり、その結果は、改善や改革に関す
る決断と実行となって現れる。アセスメントと評価という概念は米英では基本的に対と
なって用いられている概念である。ネットワークという工学技術(engineering technology)
が使われる以上、アセスメントと評価は不可欠な手段である。
146
3.5.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.5.3.1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① 通時的比較の展開
本研究開発の終了後においては、通時的比較をすることを目的にしたデータの収集を継
続している。これにより、2008 年頃と 2012 年頃のカントリードメインのガバナンスの状
況を比較することができるようになる見込みである。関連して、平成 23 年 3 月「新しいトッ
プレベルドメイン名の導入に関する調査研究報告書」(総務省からの受託調査研究)、平成
24 年 3 月 「新たなトップレベルドメインなどインターネット資源管理に関する調査研究」
(総務省からの受託調査研究)などの調査研究を実施した。
② スパムメール発信源分析によるドメイン管理 resiliency の指標化
ドメイン管理におけるセキュリティ側面の評価指標は、研究期間終了後もさらなる検討
を要する課題であった。この領域では、スパムメールはサーバの負荷を大幅に増大させ、
ネットワークリソースとユーザに大きな損失をもたらしている。スパムメールが発生する
根本原因はいうまでもなく悪意ある送信者にあるが、メールサーバやドメイン管理体制に
も問題があると考えられる。本研究終了後、後者に焦点を当て、サーバ/ドメイン管理体
制の実態に迫ることが可能かの分析を行っている。スパムメールのIPアドレスと送信サー
バ/アドレスのTLD 30、IPアドレスから判断したサーバ所在地をそれぞれ所属すると思わ
れるccTLDごとに定量分析を行い、特にresiliency(復元力)という観点から、スパムメー
ルの発信パターンから、ドメイン管理者の介入による何らかの中断があるか否かを、スパ
ムメール継続送信間隔という形で定式化した。
なお、本研究開発期間中に構築した 12 の指標体系の中では、security 指標としてスパム
メール発信比率を提案したが、最終報告書でも記載した通り、ICANN は security を SSR
(security、stability、resiliency)という三つの尺度で捉えようとしている。Resiliency とは
復元力であり、仮にスパム発信の温床となったとしても、ドメインの管理者が適切な管理
を行ってスパムサーバの登録を抹消するなどの適切な措置を講じることがドメイン管理に
おける resiliency に相当する。スパムメールの分析は、スパムメールの発信状態の継続期間
を測定するもので、この resiliency を測定する尺度という位置づけである。従って 13 番目
の指標の追加ではなく、スパムメール発信源比率を更に豊かにした改良研究と位置づけら
れる。
③ リンク解析によるオープン性に関する指標化
インターネットのオープン性に関する研究については、検閲やフィルタリングなど、個
30
インターネットで利用する DNS(ドメインネームシステム)において利用され、ドメイン名をドットで
分割した際の最後の項目の事を指す。例えば、
「ja.wikipedia.org」の場合は「.org」である。
147
人の自由な Web 利用を妨げる要素も増加しつつあり、Web 利用の自由度(オープン性)の
評価は今後の Web 活用にとって重要である。そこで、引き続き、Web の個人利用実態を
SNS サイト等へのリンク数計測により推定し、Web 活用のオープンネスを地域別に評価す
る研究を発展させている。
④ 多言語ウェブ空間におけるセキュリティ
IDN 31の導入に伴い、ドメイン管理における新しい脅威としてspoofing 32の問題がある。
特に特別な用字系を用いる言語の利用ドメインにあってはまだよく調査されていない多く
の課題があると考えられるため、この面での研究を引き続き進めている。
⑤ 言語多様性に関する研究
言語多様性は CDG プロジェクト開始の発端になった研究分野でもあり、研究期間終了
後も調査活動を継続している。最近では、ラテンアメリカ・カリブ海地域の言語多様性に
ついて現地の NGO と協力して調査を進めている。なお、言語多様性の測定は UNESCO の
サイバースペース勧告をはじめ、国際社会が求めるサイバースペース上の言語多様性、母
語利用の促進、言語間の公平さを的確かつ実証的に表現するものである。本研究について
は、UNESCO からも着目されている(UNESCO との協力・連携については後述)
。
⑥ 事後評価における指摘事項への対応
<ccTLD 以外の問題領域について>
ドメインの規模からみれば、gTLD 33に比べてccTLDの規模は小さく、ccTLDだけを取り
上げるのでは完全とは言えない。しかし、gTLDの運営が総じて先進国の経験豊富なオペ
レータたちの運営に任されているのに対して、ccTLDの運営組織は技術レベルにおける格
差も大きく、また程度の差こそあれ、当事国政府による介入が見られること、情報犯罪に
関する刑法規定の相違、知的財産権保護法制の相違、言語の相違を反映した文化的環境の
相違など、多様な管理者による管理の下に置かれている。研究課題の設定に当たり、こう
した事情を考慮してccTLDに的を絞ったテーマ設定が行われた。その時点の事情は基本的
に今も変化していない状況にある。
31
32
33
国際化ドメイン名(Internationalized Domain Name)のこと。インターネットで使われるドメイン名にア
ルファベットや数字以外に漢字、アラビア文字、キリル文字、ギリシア文字なども使えるようにする仕
組み。日本語であれば日本語ドメイン名とも呼ばれる。
IP 通信において、送信者の IP アドレスを詐称して別の IP アドレスに「なりすまし」
(英:spoofing)を
行う攻撃手法を指す。
generic Top Level Domain のこと。インターネットで使われるトップレベルドメイン(TLD)のうち、全世
界の人々にサブドメイン名を取得する権利があるもの。ICANN が管理を行い、ICANN が認定した世界
中のレジストラインターネット上の住所にあたるドメイン名の登録申請を受け付ける組織。申請された
登録データは、そのドメイン領域のデータベースを管理する「レジストリ」という機関に登..と呼ばれ
る業者が割り当て業務を行っている。商用を表す「.com」
、ネットワークを表す「.net」
、非営利団体を
表す「.org」の 3 つ(実際は登録する組織に制限はない)が伝統的に用いられていたが、企業専用の「.biz」
、
汎用の「.info」
、個人専用の「.name」などの新しい gTLD が 2001 年に運用開始されている。
148
<「ドメイン名の管理運用の評価指標」について>
「アクセス・オープン性」
、「言語多様性」
、
「安全・信頼」という評価指標の全体像の明
確化と、3 つの指標を支える各要素がどのようにカントリードメインの管理という目標に
貢献するのかという点について、研究期間終了後の所見も踏まえると、この 3 つの評価指
標はいずれもかなり独立性の高いものであり、それぞれが独立した貢献を行うものと考え
られる。
「アクセス・オープン性」のうち、
「アクセス」については国際電気通信連合(ITU)の
年次開発報告(Development Report)が、
「オープン性」については、ジャーナリストの保
護などを行っている Journalists Without Boarder(フランス語版の頭文字で RSF と略称され
ることが多い)
、世界各国の政治的民主化度などを調査している Freedom House といった国
際 NGO が、現地でのジャーナリストへのアンケート調査などを通じて定期的に調査発表
している「報道の自由ランキング」などの国別評価情報があるが、本研究グループは特に
インターネット上のオープン性についての評価を行うことを目指しており、これらの既存
指標との照合などを行いつつ引き続き研究を行っている。特に本研究プロジェクトのメン
バーであった中平勝子助教は「Web リンク解析によるインターネット空間のオープン性評
価手法」というテーマで科研費を獲得し、研究を独自に発展させている。
「言語多様性」領域については、まずICANNが国際化ドメイン名IDNの提供を 2011 年に
開始した。ISO/IEC/JTC1 34/SC2(文字コード)の議長を務めるなど、この分野は三上教授
の専門領域でもあることからIDNに関連した安全性の問題は研究期間終了後の重要研究
テーマの一つである。現在、複数の博士課程所属学生を中心に研究を継続している。複雑
な構造を持つアジアの音節文字(ICANNもcomplex scriptと呼んでいる)におけるIDN
spoofingの問題についてはドメイン管理者への助言・提言を行うべく研究継続中である。
「言語多様性」領域ではUNESCO関係者との連携もある。この分野では本プロジェクトの
前身である「言語天文台」プロジェクトの時代から緊密な関係があり、現在ではNetwork for
Linguistic Diversityという国際NGO(通称MAAYA)との連携がそれに加わっている。本研
究グループは主としてインターネット上の言語多様性の実態の観測という側面で活動して
おり、その成果は、毎年パリのUNESCO本部で国際母語記念日の前後に開催される研究集
会や、Information for All Program(IFAP) 35の場などで発表を適宜行っている。一昨年は
MAAYAメンバーが中心となってEUの研究助成プログラムである第 7 次フレームワーク計
画FP7 36に言語多様性調査に関する共同提案を行ったが、採択されなかった。
34
35
36
国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の第一合同技術委員会(Joint Technical Committee 1)
のこと。情報技術分野の標準化を行うための組織である。1987 年に設立された。上記のうち SC2 は符
号化文字集合の規格を扱う副委員会であり、日本が幹事国である。
2000 年に作成された政府間プログラム。IFAP を通じ、世界の政府は、情報へのアクセス改善、ひいて
は公平な社会を構築することを目指している。
2005 年に策定された EU 第 7 次フレームワークプログラム(FP7)は、2013 年までの 7 年間に総額約 7
兆円の予算を用いて、3 か国以上が参加する産学官共同プロジェクトに対する研究助成(プロジェクト
予算の最大 50 パーセントを EU が負担)等を実施するほか、欧州研究圏の構築を目指し、基礎研究の
助成や人材育成、研究インフラストラクチャーの構築等を実施することとなっている。
149
「安全・信頼」領域については、研究期間の最終盤の時期(2010 年 3 月頃)に、本研究
チームは ICANN の公募に応じて「ドメイン名の匿名・代理登録制度と違法・有害行為の
関係についての調査」に応募した。これはインターネットの安全とドメイン名管理者の管
理責任の接点に位置する問題であり、本研究グループが ICANN を通じて世界に還元する
好機ととらえて取り組んだところだが、非採択に終わった。現在はこの時の応募内容とほ
ぼ同じ内容を自ら実施している。その際、特にスパムメール送信サーバの挙動解析を中心
に研究活動を継続している。これについては、APWG などが把握しているブラックリスト
などと照合しつつドメインの管理状態についての評価指標の開発を行っている。
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
① 政府の政策策定への影響
ccTLD の運営に関する定量データ(登録数、登録料等)にもとづく世界的な ccTLD の管
理運営ポリシーの動向分析の結果が、総務省総合通信基盤局データ通信課における政策策
定に活用された。具体的には、2011 年 3 月、2012 年 3 月にそれぞれ ccTLD 政策の策定に
関わる国内方針を検討するに際して、本研究開発の成果を発展させた調査研究を行ったほ
か、
2011 年 8 月に同課が行ったインターネット・ガバナンスに関する連絡会に招聘された。
その中で、代表研究者を中心として、国内の共通情報資産である ccTLD および地理的名称
ドメイン名への政府対応に関する国際動向の把握と論点整理を行った。
また、研究代表者は、2012 年に行われた Internet Governance Forum でも本研究の成果を
発表した。なお、Internet Governance Forum(IGF)は、世界情報社会サミットで結局明確
な結論を得ることができなかった「インターネットの管理者は誰(であるべき)なのか」
という問に答える国際的な討議の場を継続して提供するという趣旨で開催されるように
なったものである。2006 年のアテネ会合に始まり、その後、毎年継続的に開催されている
(2007 年:リオデジャネイロ、2008 年:ハイデラバード、2009 年:シャルムエルシェイ
ク、2010 年:ビリニュス、2011 年:ナイロビ、2012 年:バクー)
。今後も、IGF の場で積
極的に本研究開発の成果の発信や協力・連携を行う予定である。
プロジェクト・メンバーの 1 人は、本研究プロジェクトに関連する調査研究や公表した
論文の成果がきっかけとなり、情報通信審議会の専門委員に選任され、情報通信政策部会
ドメイン名政策委員会において日本政府としてのドメイン名政策形成に直接関わることに
なった。同委員会では、本プロジェクトで開発したモデル TLD チャーターについて紹介す
るとともに、国内のドメイン名政策に同チャーターの内容や精神が反映されるべく働きか
けを行っている。
② CDG Index のさらなる検討
CDG Index の全体としての普及という点では研究期間終了後の普及活動は進んでいない
が、改良は続けており、各論の改善研究という意味では着実に成果が上がっている。本研
150
究開発期間中に、工夫を要したのは、ccTLD コミュニティという比較的閉じたグループの
中に外部者として連携をとることであった。本研究開発が終了したことで、ccTLD コミュ
ニティとのつながりが急速に失われつつあり、モデル TLD チャーターの実装に関する理解
を維持することが難しくなってきている。一方、JP ドメインの管理運営を行う JPRS(㈱
日本レジストリサービス)の関係者とは非公式ながら随時意見交換を行うことで、関係を
継続する努力を継続している。
③ UNESCO との連携
UNESCO との連携については、研究期間終了後も努力しており、ほぼ毎年、UNESCO
本部で開催される国際母語記念日関係の諸行事、国際 NGO である言語多様性ネットワー
ク MAAYA の主催する会議などの場で継続的にコンタクトを続けている。最近では、カリ
ブ海のドミニカ共和国サントドミンゴに本拠を置く NGO である FUNREDES の要請を受け
て、
ラテンアメリカおよびカリブ海諸国の約 50 のカントリードメインについての言語多様
性調査を実施中である。
従来の調査に比べて、現地機関との共同研究という色彩が強く、今後の本研究グループ
の活動にとってのモデルと考えている。
国連の MDG は 2015 年にとりあえずの目標の達成期限を迎える。その後の改訂の際に、
ICT 関係の目標として、PC の台数や通信回線数といったハードウェア基盤だけの目標設定
から脱して、CDG Index が主張しているような多様な目標を設定するよう、本研究開発の
参加メンバーが働きかけている。実現するためには、UNESCO などへの情報提供を継続的
に行い、それが測定可能な、つまり国際社会にとってフォローアップの可能な数値目標で
あることを十分に訴えていくことが重要である。本研究開発の参加メンバーも調査結果を
様々な機会に発表しているが、日本の UNECO 国内委員会から主張してもらうことも考え
られる。研究代表者は、かつて UNESCO 国内委員会の専門委員に任命されていたこともあ
り、継続的に、協力・連携を進めていく予定である。
151
3.5.3.2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの開
拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
① 若手人材の育成・キャリアパスの開拓
本プロジェクトの参加者であった Chew Yew Choong 博士が、学位取得後、本研究プロジェ
クトで培ったウェブマイニング、ウェブクロ-リング技術などが採用の決め手となり、母
国マレーシアの政府研究機関である MIMOS で senior staff engineer として採用され、現在
では、いくつかの政府プロジェクトのリーダーとして活躍している。
また、本プロジェクトの参加者であった中平勝子助教が、本プロジェクトの課題の一部
を発展させて「Web リンク解析によるインターネット空間のオープン性評価手法」という
テーマでの科研費申請を行い採択された。研究期間は 2012 年 4 月 - 2015 年 3 月であり、
現在、引き続き研究を遂行中である。
② 本研究の独自性を生かした新たな研究分野の可能性
他の組織では取り組まれておらず、本研究グループの有する技術の独自性が生かされう
る分野として、以下のような分野が想定される。
①特に ccTLD に焦点を当てた「セキュリティ」関連の評価指標の開発・改善
②IDN に関連した「セキュリティ」対策(具体的には spoofing 対策)の研究
③言語天文台以来のテーマであるネット上の「言語多様性」の測定とそれに必要な技術
の開発
④「オープン性」について、ウェブのリンク構造からのアプローチを中心とする研究
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
① Model TLD Charter の普及活動
Model TLD Charter については、国内の ccTLD 管理運営組織(JPRS)との意見交換など
を通じて、その内容についての理解が得られるよう努めている。また、本研究テーマ終了
後、
ccTLD 当事者が定量データの公表や、
ガバナンスの向上の取り組みが進められるに至っ
ている。これは、本研究テーマの実施の過程において、海外 ccTLD 管理運営組織や、ccTLD
の地域連合体との意見交換を進めたことが反映されたものと考えられる。
152
3.5.4. 付属資料
3.5.4.1. 主要研究者動静表
氏名
三上 喜貴
Chandrajid
Ashuboda
Marasinghe
村上 直久
湯川 高志
中平 勝子
上村 圭介
Adam Peake
研究期間中の所属・役職
長岡技術科学大学
技術経営研究科 教授
現在の所属・役職
長岡技術科学大学 副学長・教授
長岡技術科学大学 経営情報系
長岡技術科学大学 経営情報系准教授
准教授
長岡技術科学大学 経営情報系
准教授
長岡技術科学大学 電気系 准教
授
長岡技術科学大学 経営情報系
助教
国際大学
GLOCOM 主任研究員
国際大学
GLOCOM 主幹研究員
長岡技術科学大学 経営情報系准教授
長岡技術大学 経営情報系 教授
長岡技術科学大学 経営情報系助教
国際大学
GLOCOM 主幹研究員/准教授
国際大学
GLOCOM 主幹研究員/准教授
3.5.4.2. 研究開発プロジェクト終了後(平成 21 年 4 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
1
2
3
4
5
6
論文名
著者
国別トップレベルドメイン
名の利用促進要因の推定と 上村圭介
統治体制の特徴抽出
国別トップレベルドメイン
名の利用促進要因の推定と 上村圭介
統治体制の特徴抽出(抄録)
掲載媒体
年月
社 会 学 会 誌 , Vol. 7,
2013
No. 2, pp. 23-40
智 場 , Vol. 118, pp.
2013
89-93
International Journal of
Improving
Transliteration Ohnmar Htun, Andrew Computer
Mining by Integrating Expert Finch, Eiichiro Sumita,
Applications,58(17),
Knowledge
Yoshiki Mikami
pp.11-22
Katsuko T. Nakahira,
Country Domain Governance: Hiroyuki
Namba, Artificial Life and
An analysis by Datamining of Minehiro
Takeshita, Robotics, 16 巻,311
Country Domains
Shigeaki
Kodama, 頁 ~ 314 頁
Yoshiki Mikaimi
国別トップレベルドメイン
情報社会学会誌, Vol.
名(ccTLD)の利用実態とその 上村圭介, 三上喜貴
6, No. 1, pp. 49-57
ガバナンスの課題
Language Identification of Web Yew Choong Chew, International Journal of
Pages Based on Improved Yoshiki Mikami, Robin Computer
Science
N-gram Algorithm
Lee Nagano
Issues, 8(3), pp. 47-58
153
2012
2011.12.1
2011
2011
(2) 発表・講演
招待講演
発表・講演名
発表・講演者名
1
Report
of
(Character
Chairman
2
Multilignualism
as
an
Yoshiki Mikami
Internet Governance Issue
3
4
Report
of
(Character
Chairman
Report
of
(Character
Chairman
the
SC2
Coding) Yoshiki Mikami
the
SC2
Coding) Yoshiki Mikami
the
SC2
Coding) Yoshiki Mikami
シンポジウム・セミナー名
(会場)
ISO/IEC/JTC1
Korea
Plenary,
年月
Jeju, 2012.11.5
-10,
the 2nd International Conference
on Linguistic and Cultural 2012.7.12
Diversity in Cyberspace, Yakutsk, -14
Russian Federation
ISO/IEC/JTC1
Diego, U.S.A.
Plenary,
San 2011.11.6
-12,
ISO/IEC/JTC1 Plenary, Belfast, 2010.11.7
U.K.
-14
口頭講演
発表・講演名
5
A
Framework
for
Understanding
Human
e-Network ― Interactions
among
Language,
Governance, and Divides
6
スパムメールサーバの発
信行動変容の推定
各種メディアへのリンク
7 解析に基づいた TLD オー
プン性評価
スパムメール発信源分析
8 によるサーバ・ドメイン管
理実態の推定
Web リソースの経年変化
9 を用いた情報基盤利用状
況の分析
Organisational Frameworks
and Registration Policies: A
10
Statistical Outlook Across
ccTLDs
ccTLD の利用実態から見
11 るドメイン名のガバナン
スの課題
What numbers can tell us
12 about domain names and its
policy implications
シンポジウム・セミナー名
年月
(会場)
III Symposium international sur
le multilinguisme dans le
Katsuko
T.
cyberespace
(SIMC), 2012.11.23
Nakahira
l’auditorium Marie Curie du
CNRS, Paris, France
第 11 回情報科学技術フォーラ
山口翔生・中平勝
ム、法政大学小金井キャンパ 2012.9
子・北島宗雄
ス、東京
発表・講演者名
難波弘行,中平勝
情報処理学会全国大会
子,三上喜貴
2012.3
竹下峰弘,中平勝
情報処理学会全国大会
子,三上喜貴
2011.3
難波弘行,中平勝
情報処理学会全国大会
子,三上喜貴
2011.3
Keisuke
Kamimura
APTLD Meeting, Hong Kong
2011.2
上村圭介
IGF-Japan 第 1 回全体会議
2011
Keisuke
Kamimura
LACTLD Commercial Aspects
for ccTLDs, Cartagena de Indias, 2010.12
Columbia
154
発表・講演名
発表・講演者名
世界の ccTLD についての
13 研 究 報 告 : 数 で 見 る 上村圭介
ccTLD の管理運営と利用
Measuring
14 Similarities
IDNs
in
シンポジウム・セミナー名
(会場)
年月
日本インターネットドメイン
2010.11
名協議会講演会
In proceeding of: International
Phonetic Ohnmar
Htun,
Conference
on
Computer
Myanmar Shigeaki Kodama,
2010
Applications (ICCA-2010), At
Yoshiki Mikami
Yangon, Myanmar
(3) 書籍・報告書等
1
2
著書名
NET.LANG:
Towards
the
Multilingual Cyberspace, MAAYA
Network 編(英語版,フランス語
版,全 435 頁)
(三上氏らの投稿分は 118-139
頁,Measuring Linguistic Diversity
on the Web)
Linguistic and Cultural Diversity in
Cyberspace, UNESCO ロシア国内
委員会等編(英語版,ロシア語
版,全 324 頁)
(三上氏・中平氏投稿分は 118
‐ 139 頁 , Measuring Linguistic
Diversity on the Internet)
著者
出版社
年月
Yoshiki Mikaimi, et
C&F Editions
al.
2012
Katsuko T. Nakahira,
Moscow
Yoshiki Mikaimi
2011
(4) 新聞・テレビ等
なし
(5) 特許
なし
(6) 獲得グラント
1
2
3
グラント名
タイトル
採択者
基盤研究(B)
市場監視の時代に向け
た傷害情報サーベイラ
三上 喜貴
ンスシステムの構築と
活用
挑戦的萌芽研
訳語形成と技術受容
三上 喜貴
究
基盤研究(C)(一 インターネットのオー
中平 勝子
般)
プンネス指標の研究
155
配分額
実施
年度
19,990 千円(総額) 2013~2017
3,000 千円(総額) 2012~2014
2012~2014
グラント名
4
5
6
タイトル
採択者
ことばを測る ―ヒン
基盤研究(B)(一 ディー語とウルドゥー
町田 和彦
語の語彙属性に関する
般)
研究―
表意文字曖昧検索のた
基盤研究(C)(一
めの文字表現及び検索 鈴木 俊哉
般)
手法の研究
やさしい日本語を用い
たユニバーサルコミュ
庵功雄
基盤研究(A)
ニケーション社会実現
のための総合的研究
(7) その他
なし
156
配分額
実施
年度
2012~2014
2012~2014
2009~2013
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