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論文の内容の要旨

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論文の内容の要旨
論文の内容の要旨
論文題目
IT 防災システムにおける情報収集・伝達・提示手法の研究
氏名
村
﨑
大
輔
( 本 文 ) 本 論 文 で は 日 本 の 自 治 体 を 対 象 に 、 防 災 活 動 の 質 を 情 報 技 術 (IT)の 導 入 に よ っ て 向 上 さ
せ る 取 り 組 み で あ る IT 防 災 の 実 現 と 推 進 に つ い て 論 じ る 。 本 論 文 は 8 章 か ら 構 成 さ れ る 。
第 1 章 で は IT 防 災 の 意 義 に つ い て 説 明 し 、 IT 防 災 が 目 指 す 将 来 像 を 述 べ た 。 そ の 上 で 、 本 論 文
で は 日 本 の 自 治 体 へ の 導 入 を 目 指 し た IT 防 災 シ ス テ ム の フ ィ ー ジ ビ リ テ ィ ス タ デ ィ を 行 う こ と
を目標とした。
第 2 章 で は 、ま ず 地 理 情 報 シ ス テ ム (GIS)が 扱 う 地 理 情 報 に 空 間 情 報・ト ポ ロ ジ ー・時 間 の モ デ ル
が あ る こ と 、 GIS が 空 間 デ ー タ ベ ー ス の 側 面 を 持 つ こ と 、 座 標 系 や 投 影 法 が あ る こ と 、 ソ フ ト ウ
ェ ア の 主 要 な 設 計 モ デ ル に つ い て 説 明 し た 。続 い て 、自 治 体 向 け の IT 防 災 に 求 め ら れ る GIS を 既
存 手 法 で 実 現 す る 際 の 問 題 点 を 指 摘 し 、 筆 者 は 見 通 し の 良 い コ ン パ ク ト な GIS を 提 案 し た 。 具 体
的なアプローチとして、自治体向けのシステムでは特定領域しか扱わない特性を生かしてトレー
ド オ フ を 導 入 す る こ と を 提 案 し 、 GIS ロ ジ ッ ク の 一 部 を バ ッ ク エ ン ド と し て 分 離 す る 設 計 を 示 し
た。
第 3 章では、災害情報の可視化システムに必要な要素を指摘した。まず、地図にアイコンを描画
することで情報を提示する手法について述べた。これには適切な描画スタイルを状況に応じて動
的に求めることが重要である。筆者らは描画スタイルのガイドラインを提案した。災害情報の深
刻度を基にした色彩の指定法、折れ線や領域の描画スタイル、そしてアイコンのデザインで構成
さ れ る 。ア イ コ ン に つ い て は 、表 示 す べ き 情 報 を 取 捨 選 択 し て 適 切 な 文 法 要 素 を 組 み 合 わ せ れ ば 、
一貫性があり、わかりやすくなることを例示した。また、地図画像と共にテキスト情報としての
提示も重要であることを述べた。
第 4 章 で は IT 防 災 シ ス テ ム に お け る グ ラ フ ィ カ ル ユ ー ザ イ ン タ フ ェ ー ス (GUI)の ガ イ ド ラ イ ン を
定め提案した。まず、システム全体の画面設計についてイメージを示した。常時表示される情報
を ア イ コ ン の み に し 、 詳 細 な 情 報 は ユ ー ザ か ら の 要 求 に 応 じ て 表 示 す る 指 針 を 提 案 し た 。 GUI の
モードは通常モードと形状指定モードの 2 種類に削減できることと、コンテキストに応じて適切
な付加処理を行うことが必要であることを述べた。また、オブジェクト先行方式による操作やメ
ニ ュ ー 項 目 の 簡 素 化 を 提 案 し た 。 次 に 、 個 々 の 自 治 体 の 状 況 に 合 わ せ て GUI を カ ス タ マ イ ズ 可 能
にすることが重要であることを述べ、その方法を示した。
第 5 章 で は 、実 用 的 な IT 防 災 シ ス テ ム に 必 要 な 、分 散 し た 異 種 シ ス テ ム と 連 携 す る た め の 情 報 伝
達技術について、標準化作業が進められていることを述べた。標準に準拠したシステムと連携す
る重要性を指摘し、通信処理を実装する手法を述べた。
第 6 章では筆者らが提案した手法を検証するために実装したプロトタイプシステムについて述べ
た。まずは第 7 章で述べる実証実験で用いたプロトタイプシステムがある。これは三つのサブシ
ス テ ム で 構 成 さ れ 、 第 2 章 で 提 案 し た GIS バ ッ ク エ ン ド や 3 章 と 4 章 で 述 べ た ガ イ ド ラ イ ン の 基
で構築したものである。他には、キーワードから描画スタイルを自動的に決定して主題図を生成
するシステム、地理情報をテキスト文書化して一覧表示するシステムなどがある。
第 7 章 で は IT 防 災 の 効 果 を 実 証 実 験 を 通 し て 確 認 し た 。 一 つ 目 の 実 験 は 2005 年 11 月 20 日 に 愛
知 県 豊 橋 市 飽 海 地 区 で 実 施 し た 情 報 共 有 実 験 で あ る 。IT 防 災 シ ス テ ム を 介 し て 現 場 か ら 報 告 さ れ
た災害情報を本部の大画面で共有し、直に対応指示が行えることの有効性を確認することができ
た 。 二 つ 目 の 実 験 は 2006 年 3 月 22 日 に 実 施 し た 新 潟 県 見 附 市 で の 予 備 実 証 実 験 で あ る 。 本 論 文
で 提 案 し た カ ス タ マ イ ズ 機 能 の 有 効 性 に つ い て 確 認 で き た 。最 後 の 実 験 は 2006 年 10 月 27 日 に 実
施した新潟県見附市での実証実験である。防災訓練で自治体の職員にプロトタイプシステムを用
い た 災 害 対 応 を 行 っ て も ら っ た 。筆 者 ら が 重 視 し た 容 易 に 習 熟 で き る イ ン タ フ ェ ー ス に つ い て は 、
評価者への短時間のトレーニングを通して有効性を確認することができた。参加者へアンケート
を行った結果、プロトタイプシステムは概ね高い評価を得た。
第 8 章 で は 論 文 の 内 容 を 総 括 し 、今 後 の 課 題 を 整 理 し た 。社 会 情 報 学 の 観 点 か ら 見 た IT 防 災 の 考
察のみならず、ソフトウェア開発に求められるプロジェクト管理、情報工学の研究成果を社会基
盤の情報システムに積極的に応用していく意義、適切な構造を持ったデータを整備する重要性、
マルチエージェントシステムの応用可能性を明らかにすることができたと考える。
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