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第2章 国際エネルギー動向 - 経済産業省・資源エネルギー庁
第2部 エネルギー動向 第 第2 章 章 2 国際エネルギー動向 国際エネルギー動向 域は、1991 年のソ連邦崩壊以降、経済・社会の混 第 1 節 乱とともにエネルギー消費量が減少していました エネルギー需給の概要等 が、1999 年以降、エネルギー消費量は増加に転じ 世界の一次エネルギー供給は、経済成長とともに ています。 増加を続けており、1965 年の 39 億 TOE(石油換 こうした状況から世界のエネルギー消費に占める 算トン)から、年平均 2.6%で増加し続け、2005 年 OECD 諸国のエネルギー消費の割合は、1965 年の には 105 億 TOE に達しています。 69.1%から 2005 年には 52.6%へと 15 ポイント以上 その伸び方には、地域的な差が存在し、先進地域 低下し、地域別エネルギー消費の構造的変化を示し (OECD 諸国)では伸び率が低く、 開発途上地域(非 ています(第 221-1-1)。 OECD 諸国)では高くなっています。これは先進 次に世界の一次エネルギー供給動向をエネルギー 地域では経済成長率、人口増加率とも開発途上地域 源別に見てみます。 と比較して低くとどまっていること、産業構造が変 石油は今日まで一次エネルギーの中心となって 化したこと、エネルギー消費機器の効率改善などに きました。発電用などでは他のエネルギー源への転 よる省エネルギーが進んだことによります。一方、 換も進みましたが、堅調な交通用需要に支えられ、 開発途上地域では極めて堅調にエネルギー消費の増 1965 年から 2005 年の平均増加率は一次エネルギー 加が持続してきました。特に経済成長の著しいアジ 全体の増加率とほぼ同じ 2.4%を示しており、2005 ア太平洋地域 ※1 は、世界のエネルギー消費量の大 年時点でもエネルギー消費全体の 36.4%を占めてい きな増加要因となっています。また、かつて世界の ます。この間に石油の代替エネルギーとして特に増 エネルギー消費に高い寄与率を示してきた旧ソ連地 加が著しかったのが原子力と天然ガスであり、同期 【第 221-1-1】 世界の一次エネルギー供給の推移(地域別) (百万toe) 12,000 北米 旧ソ連 アジア太平洋 中南米 中東 OECD(シェア) (%) 欧州 アフリカ (%) 80 70 10,000 60 8,000 50 40 6,000 30 4,000 20 2,000 0 10 65 70 75 80 85 90 95 00 05 (暦年) 0 資料:BP「Statistical Review of World Energy 2006」 ※ 1:ここでアジア太平洋地域とは、日本、中国(香港含む)、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドネシア、マレーシア、 フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナム、パプアニューギニア、インド、パキスタン、 バングラデシュ、アフガニスタン、ネパール、スリランカ、台湾、モンゴル、北朝鮮を指します。 188 一次エネルギーの動向 第2節 年の 38.5%から 2005 年には 27.8%へと大きく低下 ルギーに占めるシェアは 1965 年から 2005 年にかけ しています(第 221-1-2)。なお、主要国のエネルギー て各々 0.2%から 6.0%へ、16.4%から 23.5%へと増 需給構造については p.318 の「参考資料」において 大しました。一方、かつては石油と並ぶ主力エネル 紹介しています。 2 国際エネルギー動向 います。その結果、これらのエネルギーの一次エネ 章 とどまり、一次エネルギーにおけるシェアは、1965 第 間の平均増加率はそれぞれ 13.1%、3.5%に達して ギーであった石炭のこの間の消費増加率は 1%台に 【第 221-1-2】 世界の一次エネルギー供給の推移(エネルギー源別) (100万toe) 12,000 水力 10,000 原子力 石炭 ガス 石油 6% 6% 8,000 27% 6,000 24% 4,000 37% 2,000 0 65 70 75 80 85 90 95 00 (暦年) 資料:BP「Statistical Review of World Energy 2005」 第 2 節 一次エネルギーの動向 1.石油 非 OPEC 産油国では、旧ソ連諸国、アメリカ、メ キシコなどが主要産油国ですが、全体的に見ると圧 倒的に OPEC 産油国、特に中東 OPEC 産油国の資 源保有が大きくなっています(第 222-1-1)。 (1)資源の分布 世界の原油確認埋蔵量は 2005 年末時点で 1 兆 2,007 億バレルであり、これを原油生産量で除した 可採年数は 40.6 年となっています。1970 年代の石 油ショックの時には石油資源の枯渇問題も深刻に懸 念されましたが、回収率の向上や追加的な石油資源 の発見・確認によって、1980 年代以降、可採年数 はほぼ 40 年程度の水準を維持し続けています。 現在、世界最大の確認埋蔵量を保有しているのは サウジアラビアであり、同国の確認埋蔵量は 2,642 億バレルと世界全体の 22%のシェアを占めていま す。以下、イラン(確認埋蔵量 1,375 億バレル、シェ ア 12%)、イラク(1,150 億バレル、10%) 、クウェー ト(1,015 億バレル、9%) 、アラブ首長国連邦(978 億バレル、8%)と第 5 位までを中東産油国が占め ています。そして、第 6 位はベネズエラ(797 億バ レル、7%)であり、この OPEC6 カ国だけで、世 界全体の石油確認埋蔵量の約 2/3 を占めています。 【第 222-1-1】 世界の原油確認埋蔵量(2005 年) アジア大平州 アジア大平州 中国 その他 3.4% 1.3% 2.1% 欧州 アフリカ 1.5% その他 サウジアラビア リビア 6.2% 22.0% 3.3% 旧ソ連 欧州 (ロシアを除く) アフリカ 1.5% 4.0% 9.5% ロシア 旧ソ連 6.2% 世界計 10.2% 1兆2007億バレル 米州その他 中東 可採年数40.6年 3.5% イラク 61.9% 米州 (2005年 末 ) メキシコ 9.6% 13.6% 1.1% アメリカ 2.4% ベネズエラ アラブ首長国連邦 6.6% 8.1% 中東その他 2.2% クウェート イラン 8.5% 11.5% 資料:BP「Statistical Review of World Energy 2006」 189 第2部 エネルギー動向 第 (2)原油生産の動向 章 2 た。その後 1999 年以降、再び増産基調に転じ、石 国際エネルギー動向 世界の原油生産量は、長期的に見ると石油需要 油国際市場において、ロシア、カスピ海沿岸諸国は、 の増大とともに増加し、1965 年の 3,180 万バレル/ 新たな産油地域として台頭しています。 日から 2005 年には 8,109 万バレル/日と、過去 40 また、1990 年代は、石油上流部門では外資導入 年間で 2.5 倍以上になりました。しかし、原油生産 の動きが進み、ロシア、カスピ海、中南米では多国 の状況は、地域ごとに大きな差異があります(第 籍企業が参加した開発が進みました。また、これま 222-1-2)。 で上流部門における外資参入に消極的だった中東諸 OPEC 産油国の生産は、1970 年代までの大幅増 国などで外資導入の検討などの新たな動きもみられ 産の後、全体としての非 OPEC 産油国の生産が増 ました。しかし、最近では、原油価格が高騰する中 加してきたこと、1980 年代前半は世界の石油需要 で産油国の財政が改善され、外資導入についての姿 が低迷したことを受けて 1980 年代前半を通じて減 勢が後退する状況が見られています。 少を示し、その後 1980 年代後半から緩やかな回復、 (3)石油需要の動向 という基調をたどってきました。この結果、世界の 世界の石油需要は、経済活動の活発化とともに増 原油生産に占める OPEC 産油国のシェアは、1970 大傾向をたどってきました。1973 年には 5,638 万バレ 年代前半の 5 割強から 1980 年代半ばには 3 割を割 ル/日であった世界の石油消費は、2005 年には 8,246 り込んだものの、2005 年には再び 42%にまで上昇 万バレル/日まで年平均 1.2%で増加しています。 しています。 世界の石油消費において最大のシェアを持つ先 旧ソ連を除く非 OPEC 産油国全体(アメリカ、 進地域では、1973 年の 4,152 万バレル/日の消費か メキシコ、カナダ、イギリス、ノルウェー、中国、 ら 1970 年代後半にかけて増加傾向を示したものの、 マレーシアなど)の生産は 1965 年以降、増加を続 第一次・第二次石油ショック後の世界経済の低迷に けています。旧ソ連を除く非 OPEC 産油国全体の 加え、原子力、天然ガスなどの石油代替エネルギー 原油生産量は 1965 年の 1,256 万バレル/日から年 導入促進を受けて 1980 年代には石油消費が減少し 平均 2.6%で堅調に増加し、2005 年には 3,541 万バ ました。その後、1980 年代後半以降、経済の拡大 レル/日に達しました。旧ソ連地域は 1991 年のソ とともに緩やかに石油消費が増加するという経緯を 連邦崩壊前までは世界最大の産油国でしたが、崩壊 たどりました。 後の社会・経済の混乱の中で石油部門への投資が大 一方、世界の石油消費の 1 割強のシェアを有して 幅に低下したため、原油生産量は急激に低下しまし いた旧ソ連地域は、1990 年代に入ってからソ連邦 【第 222-1-2】 世界の原油生産動向(地域別) 北米 中南米 欧州・旧ソ連 中東 アフリカ アジア・大平洋 (万バレル/日) 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 1965 1969 1973 1977 1981 資料:BP「Statistical Review of World Energy 2006」 190 1985 1989 1993 1997 2001 2005 (暦年) 一次エネルギーの動向 第2節 米欧 3 大市場による輸入量が合計で 3,201 万バレル 844 万バレル/日から 2005 年にはその半分以下の /日と全体の 64%を占めています。一方、輸出サ 394 万バレル/日となりました。 イドで見ると、中東からの輸出が 1,982 万バレル/ この間、最も著しい石油消費の増加を示したのが 日と最大で、全貿易量の 40%を占めています。以下、 開発途上地域です。旧ソ連を除く開発途上地域の石 旧ソ連(708 万バレル/日)、西アフリカ(436 万バ 油消費は堅調な経済成長に伴い、1973 年の 866 万 レル/日)、中南米(353 万バレル/日)などが主 バレル/日から年平均 3.9%で増加し、2005 年には 要石油輸出地域となっています。 2,927 万バレル/日となりました。その結果、世界 仕向地別では中東からの石油輸出のうち、12% の石油消費に占める開発途上地域のシェアは 1973 (235 万バレル/日)がアメリカに、16%(314 万 年の 15%から 2005 年には 36%と 2 倍強になり、逆 バレル/日)が欧州に、67%(1,321 万バレル/日) に先進地域のシェアは 74%から 59%にまで低下し がアジア太平洋地域向けとなっており、中東地域に ています(第 222-1-3) 。 とってアジア太平洋市場が最大の販路となっていま (4)石油貿易の動向 2 国際エネルギー動向 少しています。旧ソ連地域の石油消費は 1987 年の 章 量は 4,991 万バレル/日となっており、そのうち日 第 崩壊に伴う社会・経済の混乱によって石油消費が減 す(第 222-1-4)。 世界の石油貿易は、石油需要の増大とともに着実 なお、アジア地域の中東依存度は 1990 年代を通 に増大しています。2005 年の世界全体の石油貿易 じて常に欧米より大幅に高い水準で推移しています。 【第 222-1-3】 世界の石油需要の推移(地域別) 非OECD (万バレル/日) 9,000 旧ソ連 OECD 8,246万バレル/日 5,638万バレル/日 15% 11% 74% 8,000 7,000 6,000 35% 5% 5,000 4,000 3,000 60% 2,000 1,000 0 73 78 83 88 93 98 03(暦年) 資料:BP「Statistical Review of World Energy 2006」 【第 222-1-4】 世界の石油の主な移動(2005 年) (万バレル/日) 輸 出 国 ア メ リ カ カ ナ ダ メ キ シ コ 中 南 米 欧 州 旧 ソ 連 中 東 北 ア フ リ カ 西 ア フ リ カ 東 南 ア ジ ア 大 洋 州 中 国 日 本 その他アジア太平洋 不 明 合 計 アメリカ 0 217.2 164.7 286.8 110.0 47.3 234.5 54.7 194.3 0 1.4 3.2 0 17.0 21.4 1,352.5 カナダ 15.4 0 3.4 10.9 44.4 0.0 14.3 16.9 4.0 0 0 0.2 0 0.4 11.1 121.0 メキシコ 21.1 0.2 0 4.4 5.0 0.2 1.0 0.6 0 0 0 0 0 0.2 0 32.8 中南米 32.3 0.4 13.5 0 4.8 6.0 15.7 11.5 16.9 0 0 3.3 0 0.6 0.6 105.6 欧州 24.2 1.7 21.1 30.9 0.0 581.1 314.4 195.9 69.6 2.6 0 0.4 0.8 12.8 70.6 1,326.1 アフリカ 1.5 0 0.2 2.1 27.0 1.0 75.2 8.3 8.8 0 0 0.2 0 1.5 0 125.8 大洋州 0 0 0 0 0 0 11.3 0.4 0.4 0 0 0.8 0.8 54.5 3.9 72.2 中国 0.8 0 0 10.7 1.2 39.8 136.0 6.4 57.4 13.5 2.5 0 6.9 62.6 0.6 338.4 日本 8.4 0.6 0 0.2 0.6 4.7 426.9 0.2 6.0 8.0 6.5 4.7 0 51.1 4.4 522.5 その他 アジア 太平洋 7.3 0 3.2 6.8 12.5 7.2 746.6 10.9 76.5 2.5 11.7 28.9 2.1 30.1 4.4 950.7 その他 1.9 0 0.4 0.0 9.4 20.2 6.3 1.2 1.8 0 0 0.8 0 1.0 0 43.1 合計 112.9 220.1 206.5 352.8 214.9 707.6 1,982.1 307.0 435.8 26.6 22.2 42.7 10.7 231.8 116.9 4,990.6 資料:BP「Statistical Review of World Energy 2006」 191 第2部 エネルギー動向 第 2.ガス体エネルギー 章 2 〔2〕天然ガス生産の動向 (1)天然ガス 2005 年の天然ガス生産量は、2.76 兆 m3 でした。 〔1〕資源の分布 1990 年から 2005 年までの間で、石油及び石炭の生 国際エネルギー動向 世 界 の 天 然 ガ ス の 確 認 埋 蔵 量 は、2005 年 末 で 産量の伸びが双方とも年平均 1.4% であったのに比 約 180 兆 m3 であり、旧ソ連、中東及びその他の べ、天然ガスの伸びは 2.2%の伸びを記録しました。 地域におおむね 3 分の 1 ずつ存在しています(第 地域別には、北米が世界の生産量の約 27%、旧 222-2-1)。石油の約 62%が中東に存在していること ソ連・欧州が約 38%を占めています(第 222-2-2) 。 と比べると、地域的な偏りは小さいと言えます。ま 中東は約 11%にとどまっており、埋蔵量が世界の た、天然ガスの可採年数は、2005 年現在、65 年です。 約 40%を占めていることを考慮すれば少ないと言 えます。天然ガス輸送に必要な莫大な投資に加えて、 中東ではこれまで石油開発投資が主に行われてお 【第 222-2-1】 地域別天然ガス埋蔵量(2005 年) 少なかったことによります。したがって、中東から 中南米 4% 北米 4% アジア・大平洋 8% り、天然ガス開発投資は、その埋蔵量に比べ比較的 大需要地へのパイプラインが旧ソ連と西欧間のよう に敷設されることもありませんでした。中東各国で 生産された天然ガスは中東地域内で消費されるか、 アフリカ 8% 液化して LNG や LPG として輸出されています。 世界的な天然ガス需要の伸びに対応するため、欧 確認埋蔵量 179.83兆m 欧州・旧ソ連 36% 3 米メジャー各社や産油国等による天然ガス資源開発 の気運が高まっています。特に、LNG 需要の伸び を背景に、LNG の新規プロジェクトが多数計画さ 中東 41% れています(第 222-2-3)。 更に GTL や DME などの天然ガスの新たな利用 可能性を広げる技術について研究開発が進展してお り、一部では既に商業生産が開始されています。 資料:BP 統計 2006 【第 222-2-2】 地域別天然ガス生産量の推移 (億m 3) 北米 中南米 アフリカ アジア・大平洋 欧州・旧ソ連 中東 30,000 27,629 25,000 6% 21,424 20,007 20,000 15,000 13% 24,323 11% 16,763 14,565 38% 12,086 10,210 10,000 5% 5,000 27% 0 19 70 19 75 19 80 19 85 19 90 19 95 19 96 19 97 資料:BP「Statistical Review of World Energy 2006」 192 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 05 20 (暦年) 一次エネルギーの動向 第2節 第 【第 222-2-3】 主要な新規 LNG プロジェクト 章 2 新規LNG プロジェクト (億 m3/ 年) 生産量 (億 m3/ 年) 埋蔵量 (億 m3) 国際エネルギー動向 国 名 主な参加企業 オーストラリア 293 371 25,200 シェブロン、シェル、エクソンモービル、ウッ ドサイド インドネシア 105 760 27,600 BP、新日本石油、CNOOC、LNG Japan カタール 705 435 257,800 カタール国営石油、エクソンモービル、シェル、 トタル、コノコフィリップス ロシア 132 5,980 478,200 シェル、三井物産、三菱商事 ナイジェリア 56 218 52,300 ナイジェリア国営石油、シェル、トタル ノルウェー 58 850 24,100 スタットオイル、ペトロ、トタル、フランスガ ス公社 資料:生産量及び埋蔵量は BP「Statistical Review op World Energy 2006」、新規 LNG プロジェクトの生産量は(財)日本エネルギー 経済研究所調べ (注)生産量は 2005 年実績。埋蔵量は 2005 年末の数値。 C O L U M N LNG の輸送について 我が国では、産ガス国からの距離が遠く、現在のところ産ガス国とはパイプラインで連結されて いません。これは、天然ガスは熱量当たりの体積が非常に大きく、気体のままパイプラインで長距 離輸送するのは経済的ではないことがあります。そこでガス輸出国で、天然ガスを− 162 度に冷 却して液化することによって体積を小さくし(約 1/600)、専用船で我が国へ輸送するという方 法が取られています。我が国に到着した LNG は、受入基地で再気化されて発電用や民生用、産業 用に使用されます。 〔3〕天然ガス需要の動向 1990 年から 2005 年の間、世界の天然ガス需要は、 天然ガスの需要は、北米、欧州・旧ソ連で世界の 年率 2.2%で増加し、天然ガス需要は堅調に拡大し 66%を占めています(第 222-2-4) 。この理由として ています。需要増の主な理由の一つとして、発電 は、これらの地域内で豊富に天然ガスが生産されて 用燃料としての需要が伸びていることが挙げられま いること、すでにパイプライン・インフラが整備さ す。これは、天然ガスは他の化石燃料に比べて環境 れており、天然ガスを気体のまま大量に輸送して利 負荷が低いこと、コンバインドサイ クル発電など 用することが可能であることが挙げられます。アジ の技術進歩により、発電燃料として天然ガスの経済 アでは天然ガスの需要はまだ少ないですが、近年需 的優位性が高まったことなどによります。 要が増大しています。 天然ガスの需要構造を地域別に見ると、2004 年 193 第2部 エネルギー動向 第 【第 222-2-4】 天然ガスの需要量の推移(地域別) 章 2 3 国際エネルギー動向 (億m ) 北米 中南米 アフリカ アジア・太平洋 欧州・旧ソ連 中東 30,000 27496.0 15% 24,355 25,000 3% 9% 21,530 19,927 20,000 16,717 15,000 14,521 41% 11.973 10,264 10,000 5% 5,000 28% 0 19 5 70 975 980 985 990 995 996 997 998 999 000 001 002 003 004 00(暦年) 1 2 1 1 1 1 2 1 1 1 2 1 2 2 2 資料:BP「Statistical Review of World Energy 2005」 の一次エネルギー供給量に占める天然ガスの割合 ラ発展形態となりました。発電用と比べて需要が比 は、アメリカの 22%、EU15 カ国の 24%に対して 較的分散している民生用や産業用では、天然ガス利 我が国は 13%と約半分に過ぎません。欧米では、 用は相対的に遅れています。 自国もしくは周辺国で天然ガスが豊富に生産される 一方、欧米では、民生用と産業用への天然ガス利 ため天然ガスの利用が進んでいます。一方、我が国 用が先に進みました。しかし、前述の通り、発電燃 は、天然ガスのほとんどを LNG として遠距離輸送 料としての天然ガスの優位性が高まっていることに で輸入することもあり、一次エネルギー供給量に占 より、近年、欧米においても、発電用としての利用 める天然ガスの割合は低くなっています。 が増加しています。 天然ガスの利用用途を見ても我が国と欧米間では このように、増加傾向にある天然ガス需要に対 大きな違いがあります。我が国では発電用としての して、供給インフラをどのように整備するかが各 利用の割合が全体の 66%を占めており、産業用は 15%、民生・商業用は 19%に過ぎません。これに 対して、アメリカ、EU15 カ国では発電用としての 【第 222-2-5】 日・米・EU における用途別天然ガス利用状況(2004 年) 利用の割合が双方とも全体の 29%と我が国より低 く、その分、民生用や産業用としての利用の割合が 高くなっています(第 222-2-5) 。 90% このように利用形態が異なっている主な理由とし 80% ては、割高であった我が国の天然ガス輸入価格に加 70% 50% 入できなかったこと、 〔2〕このため、需要が集積し 40% やすい発電用や一定規模の大手都市ガス会社による 30% の結果、天然ガスの需要がある地域に LNG 基地が 順次立地し、LNG 基地から、需要に応じてパイプ ラインが徐々に延伸するという我が国特有のインフ 産業 民生・商業他 19 15 48 47 23 24 29 29 アメリカ EU15 60% え、〔1〕LNG 輸入という形態でしか天然ガスが導 利用を中心に導入されたという経緯があります。こ 194 発電他 100% 66 20% 10% 0% 日本 資料:IEA「Energy Balances of OECD Countries」 第2節 一次エネルギーの動向 LNG 受入基地の建設計画が相次いでいます。 (億m 3) 2005 年に取引された天然ガスの貿易量 7,312 億 m3 のうち、パイプラインにより取引された量は 8,000 25% 6,000 5,000 引 は 1,888 億 m3( 同 26 %) で し た( 第 222-2-6)。 4,000 2005 年には世界の天然ガス生産量の 26%が生産国 3,000 では消費されずに、他国へ輸出されています。 2,000 天然ガスの貿易量は増加しているものの、その割 1,000 合は生産量の 62%が輸出される石油ほどではあり 0 ジアの 3 地域です。一方、パイプライン貿易の主な 30% 7,000 5,424 億 m3(貿易量全体の 74%) 、LNG による取 ません。主な輸入市場は、アメリカ、EU、北東ア LNG貿易量 パイプラインガス貿易量 天然ガス貿易におけるLNGの比率 国際エネルギー動向 〔4〕天然ガス貿易の動向 2 章 天然ガス価格高騰とガス需要増加に対応するため、 【第 222-2-6】 世界の輸送方式別天然ガス貿易量の推移 第 国にとっての課題と言えます。アメリカでは近年の 20% 15% 10% 5% 0% 75 80 85 90 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 (暦年) 資料:Cedigaz「Natural Gas in the World」 輸出国はロシア、カナダなど、輸入国はアメリカ、 ドイツなどです。LNG 貿易は、アジア向け輸出を ナダからのパイプラインガス輸入の伸びが追いつい 中心として発達し、2005 年の貿易量の 40%は日本 ていません。そのギャップは LNG 輸入に依存せざ 向け(日本と韓国、台湾で 62%)です。輸出元も るを得ないため、アメリカの LNG 輸入量は近年拡 アジア太平洋地域が中心ですが、近年中東諸国から 大しています。輸入量は 2002 年の 68 億 m3 から、 の輸出も増加しています(第 222-2-7) 。 2005 年には 179 億 m3 に増加しました。従来は、供 また、近年、アメリカでは、天然ガス需要の伸 給量の 1%にも満たなかったアメリカでの LNG シェ びに対して、その主たる供給源である国内生産とカ アも、今後は拡大することが見込まれています。 【第 222-2-7】 世界の主な天然ガス貿易(2005 年) 1,452 (単位:億m 3) 809 旧ソ連 1,042 101 367 欧州 北米 824 66 中東 124 東アジア アフリカ 90 835 104 東南アジア・ オセアニア 69 資料:Cedigaz「Natural Gas in the World」 195 第2部 エネルギー動向 第 C O L U M N 章 2 国際エネルギー動向 LNG 市場の拡大 2006 年現在で、カタールの年間 LNG 生産能力は、約 2,500 万トンでした。これは既に世界 第二位の量ですが、近年大幅な拡張計画を打ち出しています。全ての新規プロジェクトが予定通り 立ち上がれば、2010 年頃には年間生産能力が約 7,700 万トンに達する予定です。現在、カター ル産の LNG はほとんどがアジア向けに供給されていますが、拡張分のほとんどが欧米に向けられ る見込みです。これによって、カタールが圧倒的供給力を持つ LNG 輸出国として台頭してくると ともに、中東から欧米向けの大きな LNG フローが生じることになります。 一方、アジア・太平洋地域に目を転じると、ロシア(サハリン)、オーストラリア、インドネシ アが北米西海岸に LNG を供給する契約を締結しています。これらの契約の供給が開始されると、 太平洋を横断する新たな LNG フローが出現します。このような、アジア、北米、欧州の市場を結 ぶ新たなフローの出現は、需給面だけでなく、LNG 取引内容や価格面等でも異なる市場間での相 互作用を促す結果、LNG 市場がグローバル化する方向に 一歩近づくことが見込まれています。 〔5〕価格の動向 2005 年では日本向け価格がアメリカ向けよりも低 天然ガス価格の決定方法は地域によって異なりま くなりました。また最近の原油価格の高騰に伴い、 す。日本向けの天然ガス(LNG)価格は JCC(Japan 原油価格と連動している日本向けの天然ガス価格も Crude Cocktail)と呼ばれる日本向け原油平均価格 上昇しています。 にリンクしていることに加え、JCC 価格が急激に変 なお、大西洋市場を中心に LNG のスポット取引 動した場合でも、LNG 価格は相対的に変動が小さ が活発化しており、取引全体に占める割合は 1992 くなるように価格フォーミュラ(価格決定方式)が 年の 0.6%から 2005 年の 12.1%へと増加しています 設計されています。アメリカにおける天然ガスの (第 222-2-8)。その一方で従来スポットあるいは短 売買契約は、天然ガスの需給状況などにより市場で 期が中心であった中東輸出国と欧米間の LNG 取引 決定されており、NYMEX(New York Mercantile は、欧米での需要増などを背景に、中長期間の契約 Exchange)で取引される天然ガス先物(ヘンリー が増加しています。 ハブ)価格が指標として多く用いられています。欧 州では多くの契約において、天然ガス価格は競合燃 料である石油製品、あるいは原油価格に連動してい ます。また、近年では、しばしばスポット市場や先 (億m 3) 2,400 物市場での天然ガス価格とリンクして価格が決定さ 2,200 れています。 2,000 日本向けの天然ガス(LNG)価格は、1990 年代 1,800 に、百万 Btu 当たり 3 ドル∼ 4 ドル(CIF ベース) 価格に換算すると、バレル当たり 18 ドル∼ 24 ドル 1,000 程度となり、1998 年を除いて原油価格とおおむね 800 し、近年のアメリカでの天然ガス価格高騰によって、 10.7% 8.7% 1,400 1,200 欧米の天然ガス価格と比べると割高でした。しか 12.1% スポット取引 スポット以外の取引 1,600 で推移していました。日本向けの LNG 価格を原油 同レベルです。1990 年代の日本向け LNG 価格は、 196 【第 222-2-8】 世界の LNG 取引に占めるスポット取引の割合 0.6% 1.8% 0 19 92 19 93 1.6% 2.8% 19 9 4 19 9 5 2.1% 19 9 6 1.5% 2.0% 19 97 19 9 8 3.8% 19 9 9 5.5% 20 0 0 7.5% 20 0 1 7.6% 20 0 2 20 0 3 20 5 0 20 (暦年) 0 4 資料:BP 統計、Petrostrategies (注)ここにおいてスポット取引とは契約期間が1年未満の取引を指す。 一次エネルギーの動向 第2節 〔1〕生産の動向 れぞれ 60%、36%)。また、自動車用市場も増大し ており、2004 年、世界で約 1,145 万台、約 1,790 万 で、1985 年度の約 1.2 億トンから大幅に増加してい トンの市場が存在しています。その中で我が国は、 ます。このうち、 ガス田および油田の随伴ガス 6 割、 台数ベースで見ると、ポーランド(200 万台) 、韓 製油所から 4 割が生産されています。 国(189 万台)、トルコ(150 万台)等に続き第 8 位 地 域 別 に 見 る と、2005 年 に は、 北 米 地 域 が (29 万台) となっていますが、 需要量ベースで見ると、 23.7%と最大のシェアとなっていますが、1995 年の 韓国(398 万トン)、ポーランド(177 万トン)に続 32.7%からみるとシェアは縮小しています。一 方、 き、第 3 位(162 万トン)となっています。これは、 アジア・太平洋地域、アフリカ地域は、それぞれ 我が国では、走行距離の大きいタクシー向けの需要 1995 年の 13.7%、4.9%から 2005 年には 21.4%、7.2% が多いことが影響していると考えられます。 とシェアを拡大しています(第 222-2-9) 。 〔3〕価格の動向 世界の LP ガスの価格は、原油、天然ガス価格動 〔2〕需要の動向 世界の LP ガス需要量は約 2.1 億トンで、1995 年 向に大きく影響を受けて形成されています。主要な から 2005 年の間に 2.6% / 年で増加しています。 価格を形成する市場地域としては、〔1〕米州(アメ 地域別に見ると、1995 年には、北米地域が需要 リカ・テキサス州のモント・ベルビュー市場を中核 の 32.7%を占め最大の需要地域でしたが、2004 年 にした地域)、〔2〕欧州(北海の BP 公定価格、及 には 26.0%に減少しています。一方、アジア・太平 びアルジェリア・ソナトラック公定価格をベースに 洋地域が 1995 年の 26.1%から、2005 年には 32.9% した北西欧・地中海等を中核にした地域)、〔3〕ス となり、北米地域を追い抜き最大需要地域となって エズ以東(サウジアラビア・アラムコの公定契約価 います(第 222-2-10) 。 格(CP)をベースにした中東・アジア・太平洋地 2005 年の消費を用途別に見ると、家庭・業務用 域を中核にした地域)の 3 つのゾーンに大別されて が 50%、化学原料用が 22%、工業用が 12%、自動 います。それぞれの価格形成市場地域の価格差を埋 車用が 8%となっています。更に、これを 地域別 めるように裁定取引が発生することにより、需給調 に見ると、北米地域は化学原料用のシェアが高く 整がなされています。 (42%)、アジア・太平洋地域や欧州・ユーラシア地 【第 222-2-9】 世界の LP ガス地域別生産量 我が国の LP ガス輸入指標となるサウジアラビア 【第 222-2-10】 世界の LP ガス地域別消費量 2億1,529万トン(2005年) 2億1,872万トン(2005年) アジア・太平洋 21% 2 国際エネルギー動向 2005 年の世界の LP ガス生産量は、約 2.2 億トン 章 域では家庭・業務用のシェアが高くなっています (そ 第 (2)LP ガス 北米 25% アジア・ 太平洋 34% 北米 26% アフリカ 7% 中東 18% 中南米 11% 欧州・ユーラシア 18% 中南米 12% アフリカ 4% 欧州・ユーラシア 18% 中東 6% 資料:World LP Gas Association 「Statistical Review of Global LP Gas 2006」 資料:World LP Gas Association 「Statistical Review of Global LP Gas 2005」 197 第2部 第 章 2 エネルギー動向 国際エネルギー動向 の CP は、ある程度スポット市場の値動きを反映さ 国はサウジアラビアで 1,310 万トンです。中東地域 れていますが、基本的にはサウジ側から一方的に通 に続く輸出地域は、欧州・ユーラシア地域(1,887 万 告される価格であり、我が国を含む消費国におい トン)、アフリカ地域(1,045 万トン)となっています。 ては、価格決定プロセスの不透明性が指摘されてき 一方、輸入面ではアジア地域が最大の輸入地域で、 ました。ただし、2010 年頃にかけて中東(イラン、 同年の輸入量は 2,938 万トンでした。アジア地域に アブダビ、カタール等) 、 西アフリカ(ナイジェリア、 続く輸入地域は、欧州・ユーラシア地域で 1,800 万 アンゴラ)での LP ガス増産が見込まれることから、 トンとなっています。最大の輸入国は我が国で輸入 サウジアラビアの LP ガス価格支配力に変化が生じ 量は 1,344 万トン、続いてアメリカ(1,106 万トン) 、 るのではないかと見られています。 中国(614 万トン)、韓国(421 万トン)となってい 原油価格の高騰とともに、3 つのゾーンとも 2000 ます。アメリカは世界最大の LP ガス消費国ですが、 年以降から LP ガス価格の上昇基調が続きました。 自給率が高いため貿易量はそれほど多くありません 2006 年 1 月にはプロパン価格が北海産で $611/ ト (第 222-2-11)。 ン、アルジェリア産で $620/ トンに、2 月にはサウ なお、全貿易量のうち約 8 割が海上輸送による ジアラビアの CP がプロパンで $622/ トン、ブタン 貿易で、残りの約 2 割がパイプラインやタンクロー で $627/ トンという史上最高のレベルに達していま リーによる貿易であると言われています。 す。その後、原油価格低下や高い LP ガス在庫水準 世界の LP ガス貿易市場は、「〔3〕価格の動向」 等もあり、12 月時点ではサウジアラビアのプロパ において既述のとおり、大きく 3 地域(米州地域、 ン CP は $480/ トンにまで下がっています。 欧州地域、アジア地域)に分割されており、従来 は、基本的にこの各域内で貿易取引が行われていま 〔4〕貿易の動向 最大の輸出地域は中東地域で、2005 年には 2,723 した。しかし、1999 年を境にそれまで余剰であっ 万トンの輸出実績がありました。また、最大の輸出 たアジア市場が一転して不足状態となり、スエズ以 【第 222-2-11】 LP ガスの貿易の動向 アメリカ向け 日本向け 欧州向け 極東向け ブラジル向け (単位:百万トン/年) 6.1 0.5 1.5 2.7 0.6 5.9 0.1 11.7 0.4 0.6 1.8 0.5 10.9 0.2 0.2 資料:World LP Gas Association「Statistical Review of Global LP Gas 2006」 198 1.9 第2節 一次エネルギーの動向 【第 222-3-1】 第 西から LP ガスが流入するようになりました。当面 世界の石炭可採埋蔵量 2 章 世界の LP ガスは東から西へ、西から東へと複雑な 動きを示すことになるものと考えられます。 南アフリカ 5.4% その他 ヨーロッパ 14.3% (1)資源の分布 石炭の可採埋蔵量は約 9,091 億トンで、このうち、 ロシア 17.3% 瀝青炭と無煙炭が約 4,788 億トン、亜瀝青炭と褐炭 で約 4,303 億トンです(石炭の分類については下記 コラム参照)。 その他 アジア太平洋 0.7% 石炭の持つメリットとしては、石油、天然ガスに 比べ地域的な偏りが少なく、世界に広く賦存してい 世界の石炭 可採埋蔵量 9,091億トン インド 10.2% オーストラリア 8.6% ることを挙げることができます。更に我が国にとっ インドネシア 0.5% ては中国、オーストラリア、インドネシアなど環太 平洋地域において石炭が多量に産出されることも大 国際エネルギー動向 3.石炭 その他アフリカ (中東を含む) 0.2% アメリカ 27.1% 中国 12.6% カナダ 0.7% コロンビア 0.7% その他中南米 (メキシコを含む) 1.6% 資料:BP「Statistical Review of World Energy 2006」 (注)BP 統計では World Energy Council「Survey of Energy Resources 2004(2002 年末のデータ)」を引用 きなメリットになっています。また、可採年数(= 可採埋蔵量/年産量)が 155 年(BP 統計 2006 年版) と石油などのエネルギーより長いのも特徴です(第 222-3-1)。 C O L U M N 石炭の分類について 石炭の分類法には、石炭化度による分類、用途による分類、形状(粒度)による分類などがあり ます。 〔1〕石炭化度による分類:石炭の根源植物が石炭に変質する過程を一般に石炭化作用と呼び、こ の進行度合を石炭化度と言います。石炭は、石炭化度により無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、 亜炭、泥炭に分類されますが、日本では一般に無煙炭から褐炭までを石炭と呼んでいます。 石炭化度による石炭分類のパラメータとして、日本では発熱量(無水無灰ベース)と燃料比 (固定炭素÷揮発分、通常では褐炭 1 以下、瀝青炭 1 ∼ 4、無煙炭 4 以上)を用いますが、国 際的には一般に発熱量と揮発分が用いられています。 〔2〕用途による分類:大きく分けて原料炭及び、一般炭に分類されますが、原料炭は製鉄の原料、 一般炭は主に発電用に利用されています。 〔3〕形状(粒度)による分類:粒度の大きいものから、切込炭、塊炭、中塊炭、小塊炭、粉炭、 微粉炭に分類されます。 199 第2部 エネルギー動向 第 (2)石炭生産の動向 章 2 更に高まっています。他方、旧東ドイツ地域では、 国際エネルギー動向 2005 年の世界の石炭生産量(褐炭を含む)は 58 国産褐炭に一次エネルギーの 70%を依存していま 億 7,400 万トンと見込まれています(対前年比 8.3% したが、1990 年の両ドイツ統合後、効率が悪く環 増)。このうち、褐炭を除いた原料炭、一般炭及び 境負荷の高い褐炭の生産量は減少しました。 無煙炭の生産量は、 49 億 7,000 万トン (対前年比 9.6% 近年、中国とインドネシアが石炭供給国として台 増)と全体の 85%を占めています。 頭し、我が国を始め、韓国、台湾などアジア域内各 2005 年の石炭生産量を国別シェアで見ると、中 国への石炭輸出を拡大し、石炭の供給国としての存 国(37.9%)とアメリカ(17.5%)の 2 カ国で世界 在感を増しています。インドネシアでは、国営炭鉱 の生産量の半数以上となる 55.4%を占めています。 と採掘権を持つ中小炭鉱により、小規模な生産が行 更に、インド、オーストラリア、ロシア、南アフリ われていましたが、1980 年代初めに生産分与方式 カまでの上位 6 カ国の生産量を合計するとそのシェ が導入されたことにより炭鉱開発に外国資本が参入 アは 78%を超えます。また、2005 年において石炭 し、1990 年代に入り生産と輸出が拡大しています。 生産量が 1 億トンを超えると見込まれる上位 9 カ国 (3)石炭需要の動向 のうち、2001 年と 2005 年を比較して石炭生産量が 2005 年の世界の石炭消費量(褐炭を含む)は 59 減少しているのはポーランドとドイツの 2 カ国で、 億 200 万トンと見込まれており、そのうち、褐炭を 残りの 7 カ国では増加しています。ポーランド、ド 除いた原料炭、一般炭及び無煙炭の消費量は 49 億 イツともに生産量の減少は、内需が減少傾向にある 9,000 万トン(対前年比 7.1%増)、褐炭の消費量は のに加え、輸入が増加傾向にあるためです(ポーラ 9 億 1,200 万トン(同 0.5%増)となります。 ンドは輸出も減少しています) (第 222-3-2) 。 2005 年の石炭消費の国別シェアは、中国(36.9%) 、 石炭生産量が世界第 1 位の中国は 1996 年をピー アメリカ(17.3%)の 2 カ国で世界の石炭消費量の クに減産傾向にありましたが、これは中国政府が石 半数以上(54.2%)を占めています。中国は、1996 炭需給バランスの確保と石炭価格の安定を目的に、 年をピークに石炭消費量は減少していましたが、 小規模炭鉱を中心に違法な採掘を行っている炭鉱や 2001 年を底に再び増加に転じ、2005 年の消費量は 赤字の炭鉱を閉山したためです。しかし、2001 年 21 億 7,900 万トンで、対前年比で 15.3%も増加して 以降、国内需要の急拡大に応えるため、大幅に生産 います。我が国の 2005 年の石炭消費量は、1 億 7,800 が伸びています。第 2 位のアメリカは、石炭を石油 万トンで、インド、ドイツ、ロシアに続き世界第 6 に次ぐ重要なエネルギーと位置付けてきましたが、 位(褐炭を除くとインドに続き世界第 4 位)の地位 近年の天然ガス価格の急騰により石炭への注目度は にあります(第 222-3-3)。 【第 222-3-2】 【第 222-3-3】 世界の石炭生産量の推移 世界の石炭消費量の推移 (百万トン) (百万トン) 6,000 6,000 その他 インドネシア ポーランド ドイツ 南アフリカ ロシア オーストラリア インド アメリカ 中国 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 85 87 89 91 93 95 97 資料:IEA「Coal information 2006」 (注)2005 年データは見込み値。 200 99 01 03 05 (暦年) その他 オーストラリア ポーランド 南アフリカ 日本 ロシア ドイツ インド アメリカ 中国 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 85 87 89 91 93 95 97 資料:IEA「Coal information 2006」 (注)2005 年データは見込み値。 99 01 03 05( 暦年) 一次エネルギーの動向 (4)石炭貿易の動向 第2節 億 7,100 万トンと見込まれています。最大の輸出国 オーストラリアが多くの石炭を輸出している理由 であるオーストラリアは世界の輸出量の 30.0%を占 としては、高品位の石炭が豊富に賦存すること、石 め、次いでインドネシアが 14.0%、ロシアが 9.8% 炭の生産地が積出港の近くにあること、鉄道や石炭 と続き、以下、南アフリカ、中国、コロンビア、ア ターミナルのインフラが他の輸出国と比較して整備 メリカの順となっています。この上位 7 カ国で世界 されていること、石炭消費の伸びが著しいアジア市 の石炭輸出量の 85%以上を占めています。インド 場に近いことなどが挙げられます。 ネシアの輸出量が順調に伸びているのに対して、中 一方、輸入国としては我が国が最大の輸入国で 国では国内需要の急拡大により需給が逼迫したこ あり、2005 年には 1 億 7,800 万トン(石炭貿易量 とからこれまでの輸出量を維持することができず、 の全体の 22.8%)の石炭輸入が見込まれています。 2003 年には第 2 位(9,400 万トン)であった輸出量 我 が 国 以 外 で は、 韓 国 7,700 万 ト ン(9.9 %) 、台 が 2004 年には第 3 位(8,700 万トン) 、2005 年には 湾 6,100 万トン(7.9%)などが主な輸入国ですが、 第 5 位(7,200 万トン)にまで減少しています(第 以下、イギリス、ドイツ、インドと続きます(第 222-3-4)。 222-3-5)。近年、韓国、台湾などアジア諸国では電 輸出量を一般炭、原料炭別に見ると、2005 年の 力需要の増加に伴い石炭火力発電所での石炭消費が 一般炭輸出量は 5 億 6,600 万トン、原料炭輸出量 増加し、日本、韓国、台湾の 3 カ国で 3 億 1,600 万 は 2 億 600 万トンと、一般炭が原料炭の約 3 倍の トン(40.6%)を輸入しています。2005 年には石炭 輸出量となっています。輸出国別では、インドネ 需要の拡大が著しい中国の石炭輸入量が、初めて シアが一般炭の最大の輸出国となり、世界の一般 2,000 万トン台を大きく上回り、2,500 万トンを記録 炭輸出量の 19.1%を占め、以下、オーストラリア することが見込まれています。 が 18.8%、中国が 12.7%、南アフリカが 11.6%、ロ 一般炭、原料炭別に輸入国を見ると、双方とも我 シアが 11.2%、コロンビアが 9.9%と続きます。一 が国が最大の輸入国であると見込まれています。以 方、原料炭の最大の輸出国はオーストラリアで、世 下、一般炭では台湾、韓国、イギリス、ドイツ、ア 界の原料炭輸出量の 60.7%を占め、以下、カナダの メリカと続き、原料炭では韓国、インド、ブラジル、 【第 222-3-4】 世界の石炭輸出量(2005 年見込み) カザフスタン 2.2% ベトナム 1.6% ポーランド 2.7% 【第 222-3-5】 主要輸入国における石炭輸入量(2005 年見込み) その他 4.3% カナダ 3.6 % 日本 22.8% その他 31.0 % アメリカ 5.8% 世界の石炭 輸入量 7億7,800万トン オーストラリア 3 0.0 % コロンビア 7 .2% 世界の石炭 輸出量 7億7,100万トン 中国 9.3% 南アフリカ 9 .5% 2 国際エネルギー動向 全体の 86%を占めています。 章 2005 年の世界の石炭輸出量(褐炭を除く)は、7 第 12.7%、アメリカの 12.6%と続き、これら 3 カ国で イタリア 3.1% インドネシア 1 4.0 % ロシア 9.8% 資料:IEA「Coal Information 2006」 (注)図表【第 222-3-5】の輸入統計と本輸出統計では、 出所データが異なるため合計値が一致しない。 韓国 9.9% 台湾 7 .9% スペイン 3.2% 中国 3.3% アメリカ 3.5 % インド 4.8% ドイツ 4.9% イギリス 5.6% 資料:IEA「Coal Information 2006」 (注) 図【222-3-4】の輸出統計と本輸入統計では、出 所データが異なるため合計値が一致しない。 201 第2部 第 章 2 エネルギー動向 国際エネルギー動向 中国、ドイツと続きます。 いました(なお、一般炭については、熱量以外の品 2005 年の世界の主な石炭貿易フローを見ると、 質差は基本的に加味しない、いわゆる熱量等価方式 石炭が我が国を中心とするアジア地域とヨーロッ でした)。 パ地域へ流れており、石炭市場はアジア市場とヨー しかし、1996 年度に入ると我が国の電力業界に ロッパ市場の 2 つに大きく分かれていることが分か おける規制緩和が一段と進んだため、電力事業者 ります(第 222-3-6) 。 のコスト削減の一環として一般炭の競争入札が急速 (5)石炭価格の推移 に展開されるようになりました。その結果、一般炭 石炭取引における価格交渉では、いわゆるベンチ のベンチマーク価格取引のウェイトは減少傾向に向 マーク価格が、1980 年代後半以降、世界的に参照 かい始め、中部電力とオーストラリア石炭会社 4 社 価格として広く採用されてきました。これは最大の で合意された 1997 年度価格が実質的に一般炭最後 輸出国であるオーストラリアの石炭シッパー ※2 と のベンチマーク価格となりました。1998 年度以降、 最大の輸入国である我が国の鉄鋼会社や電力会社と 電力各社は各石炭シッパーと個別に交渉し、ベンチ の協議により決定される年間協定価格です。ベンチ マーク価格に替わって独自の契約価格を設定するよ マーク価格方式では、代表的銘柄について FOB 価 うになっています。一方、原料炭は 1996 年度の価 格を決め、その他の銘柄の FOB 価格はベンチマー 格交渉から、従来のベンチマーク方式からシッパー ク価格を基準に品位の変動幅にスライドして決めて 別、銘柄別に価格決定が行われることになりました。 【第 222-3-6】 世界の主な石炭貿易(2005 年見込み) その他欧州 Other Europe 45.0Mt 18.5Mt OECD欧州 OECD Europe 237.0Mt 21.9Mt ポーランド Poland 20.8Mt カザフスタン Kazakhstan 16.9Mt 19.7Mt ロシア Russia 78.7Mt 51.4Mt 14.2Mt 6.2Mt 27.8Mt 55.4Mt 4.7Mt 中国 China 71.8Mt 8.1Mt その他アジア Other Asia 227.2Mt 68.4Mt インドネシア Indonesia 108.0Mt 4.0Mt 資料:IEA「Coal Information 2006」 (注)赤色数値:前年対比増、青色数値:前年対比減。 ※ 2:石炭シッパー:石炭出荷主のこと。 202 7.6Mt 22.1Mt 日本 Japan 177.7Mt 北米 N.America 45.7Mt 7.2Mt 46.7Mt アフリカ・中東 Africa&Mid.East 19.2Mt 南アフリカ South Africa 73.0Mt カナダ Canada 27.7Mt 10.5Mt 29.9Mt 102.9Mt 米国 United States 45.1Mt 16.2Mt 26.7Mt コロンビア 4.7Mt Colombia 55.5Mt 4.2Mt 79.6Mt オーストラリア Australia 231.3Mt 12.6Mt 19.5Mt 3.3Mt OECD欧州 7.8Mt OECD Europe 237.0Mt 4.9Mt 南米 Latin America 18.4Mt 一次エネルギーの動向 ※3 については 力とシッパーが 52.50 ドル(同、前年度比 0. 50 ド ル安)で妥結したと報じられ、他の価格交渉もこ 他銘柄もグニエラ炭の価格に合わせる仕組みでし の価格を基準に前年度並の価格で決着を見ています (第 222-3-7)。 中国炭など長期契約が続いている一部を除き、強粘 一方、原料炭価格も世界的な石炭需給の逼迫を 結炭の共同商談がなくなり、準強粘結炭や非微粘結 受け 2004 年度、2005 年度と急上昇しました。2004 炭 ※4 と同様に鉄鋼各社が相対交渉するようになり 国際エネルギー動向 た。更に、2001 年度からの価格交渉では、ロシア炭、 2 章 BHP 社のグニエラ炭の価格がベンチマークとされ、 第 ちなみに 1995 年度までは、強粘結炭 第2節 年度の原料炭価格は、強粘結炭(グニエラ炭)が ました。 57.20 ドル(前年度比 11.00 ドル高)で、非微粘結炭 (ハ 一般炭(日本向け長期契約ベース)FOB 価格は、 ンターバレーブレンド炭)が 40.80 ドル(前年度比 2003 年夏以降の世界的な石炭需給逼迫を受け 2003 10.00 ドル高)で決着しました。2005 年度の強粘結 年末から石炭スポット価格が急騰し、その後も高止 炭(グニエラ炭)価格は 2004 年度の 2 倍を超える まりしたことから、2004 年度、2005 年度と急上昇 126.20 ドルで妥結し、非微粘結炭(ハンターバレー しました。2004 年度の価格(以下、石炭価格につ ブレンド炭)価格も強粘結炭価格の上昇に引きずら いては US$ /トンをドルと表示する)は 42.00 ドル れて急騰し 79.25 ドルで妥結しました。2005 年度に (6,700kcal / kgAD、前年度比 15.25 ドル高)、2005 おいて豪州やカナダなどでの増産により需給状況が 年度は 53.00 ドル(同、前年度比 11.00 ドル高)前 改善されたことから、2006 年度の原料炭価格は値 後で決着しました。2006 年度の価格交渉は、スポッ を下げており、強粘結炭(グニエラ炭)の価格は前 ト価格が 2005 年秋から大きく変動する中で進めら 年度より 11.20 ドル安い 115.00 ドルとなっています。 れ、需要側と供給側の需給に対する見方が異なり、 非微粘結炭は需給が急速に緩んだため、前年度より 提示価格に大きな開きがあったことから交渉が難 20 ∼ 25 ドル安い 53 ∼ 58 ドルで決着しました。 航、長期化しました。2006 年 7 月に入り一部の電 【第 222-3-7】 我が国の輸入炭 FOB 価格の推移 (US$/トン) 140 強粘結炭 非微粘結炭 一般炭 126.20 120 115.00 100 79.25 80 60 57.20 53.0∼58.0 50.40 52.30 51.30 50.80 48.80 50.60 53.20 53.20 50.95 48.10 46.20 44.95 53.00 41.90 39.7542.75 42.40 44.20 43.20 42.20 39.70 42.67 43.87 42.00 52.50 37.90 42.00 36.40 40 36.90 35.15 32.80 32.20 30.60 30.80 40.80 40.85 39.85 38.90 40.30 40.30 37.65 36.35 35.6539.15 34.50 34.50 31.85 34.35 29.95 28.75 26.75 20 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 46.90 (年度) 資料:Barlow Jonker「Coal 2005」 などより作成 (注)強粘結炭:Goonyella 炭の契約価格 非微粘結炭:2005 年度までが Hunter Valley ブレンド炭の契約価格、2006 年度は各種情報による 一般炭:1997 年度までがベンチマーク価格、1998 ∼ 2002 年度が参考価格、2003 年度が東北電力の長契更新価格(実勢 価格)、2004 年度以降は電力各社の契約更新価格 ※ 3:強粘結炭:強固なコークスを作る際に必要な石炭。 ※ 4:非微粘結炭:コークスに適した性質である軟化溶融や固化する性質の弱い石炭。 203 第2部 第 章 2 エネルギー動向 国際エネルギー動向 電力用以外の一般炭の取引では、従来からベンチ 廉かつ安定的に推移していることが分かります(第 マーク価格を採用せずに、年度契約あるいは取引毎 222-3-9)。1980 年代前半では石炭の価格優位性は非 に価格を取り決めるスポット価格が一般的です。一 常に高いものでしたが、1986 年度以降その価格差 般炭スポット価格は、市場原理に基づき決定され、 が縮小しました。しかし、1999 年度以降再び価格 ベンチマーク価格よりも先行する形で推移していま 差は増大し、石炭の優位性が増しています。 す(第 222-3-8)。 また、2003 年以降、原油価格の上昇に合わせて 石炭の価格と他の化石エネルギーの価格を同一の 他の化石エネルギーの価格も上昇していることがわ 発熱量(1,000kcal)当たりの CIF 価格で比較すると、 かります。 石炭の価格が原油、LNG、LP ガスの価格よりも低 【第 222-3-8】 スポット価格とベンチマーク価格の関係 (US$/トン) 65 60 豪州産一般炭スポット価格(BJI) 55 50 日本の長期契約改定価格 45 40 35 30 25 20 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 (暦年) 資料:Barlow Jonker「Coal 2005」および Barlow Jonker「Australian Coal Report」など (注)長期契約改定価格̶年度毎に更新される豪州産日本向け一般炭の長期契約をベースとし た FOB 価格 豪州産一般炭スポット価格(BJI)̶Barlow Jonker が集計・発表する豪州ニューカッス ル港出し一般炭スポット FOB 価格(Barlow Jonker Index) 【第 222-3-9】 化石エネルギーのカロリー当たり CIF 価格 (¥/千kcal) LPガス 原油 原料炭 一般炭 LNG 7 6 5 4 3 2 1 0 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 (年度) 資料:財務省「日本貿易月表」などより日本エネルギー経済研究所計量分析ユニッ ト算出( 「エネルギー・経済統計要覧 2007 年版」 ) 204 一次エネルギーの動向 4.原子力 第2節 (1)原子力発電の推移 第 界各国で原子力発電の開発が積極的に進められてき ましたが、1980 年代後半からは世界的に原子力発 されて以来、2 度の石油ショックを追い風として世 第 222-4-2)。 2 国際エネルギー動向 電設備容量の伸びが低くなっています(第 222-4-1、 章 1951 年、世界初の原子力発電がアメリカで開始 【第 222-4-1】 世界の原子力発電の開発状況 運転中 建設中・計画中 チェコ 372.2(6) 372.2(6) スロバキア 264.0(6) 264.0(6) スウェーデン 921.1(1 0) 982.6(1 1) フィンランド 448.0(5) 278.0(4), 170.0(1) ドイツ 2,137.1(1 7) 2,137.1(1 7) オランダ 48.1(1) 48.1(1) 単位は万kW( )内は基数を表す(2005年12月末日現在) アメリカ 10,274.5(103) 10,274.5(103) ロシア 2,762.6(3 6) 2,355.6(3 1), 407.0(5) カナダ 1,342.3(1 8) 1,342.8(1 8) リトアニア 150.0(1) 150.0(1) ウクライナ 1,581.8(1 7) 1,281.8(1 4), 300.0(3) 韓国2,731.6(2 8) 1,771.6(2 0), 960.0(8) イギリス 1,279.3(2 3) 1,279.3(2 3) 日本6,488.0(6 7) 4,822.2(5 4), 1,665.8(1 3) ベルギー 605.0(7) 605.0(7) カザフスタン 192.0(3) 192.0(3) 台湾 784.4(8) 514.4(6), 270.0(2) 中国 1,629.8(1 9) 699.8(9), 930.0(1 0) インドネシア 400.0(4) 400.0(4) メキシコ 136.4(2) 136.4(2) スイス 337.2(5) 337.2(5) スペイン 788.7(9) 788.7(9) スロベニア 70.7(1) 70.7(1) ハンガリー 186.6(4) 186.6(4) ブルガリア 288.0(4) 288.0(4) 南アフリカ 200.0(3) 189.0(2) ルーマニア 353.0(5) イラン 317.3(4) 70.6(1), 262.4(4) 317.3(4) エジプト 187.2(2) 187.2(2) アルメニア 40.8(1) 40.8(1) パキスタン 76.2(3) 46.2(2), 30.0(1) アルゼンチン 175.0(3) 100.5(2), 74.5(1) イスラエル 723.0(2 3) 66.4(1) フランス 6,762.0(6 0) 6,602.0(5 9), 160.0(1) インド 723.0(2 3) 331.0(1 5), 392.0(8) ブラジル 331.6(3) 200.7(2), 130.9(1) 資料: (社)日本原子力産業会議「世界の原子力発電開発の動向 2005 年次報告」 (注)単位は万 kW( )内は基数を表す(2005 年 12 月末日現在)。 205 第2部 エネルギー動向 子力発電所の出力増強を積極的に行っているためで 第 【第 222-4-2】 原子力発電設備容量(運転中)の推移 章 2 (百万kW) 400 アジア アフリカ 旧ソ連 欧州 中南米 す。また、アメリカでは過去数年間にわたり設備利 北米 用率が向上しており、発電電力量だけでなく発電コ 国際エネルギー動向 350 ストの面にも貢献していると言えます。さらに、欧 300 米諸国においては原子力発電所建設計画の着実な進 250 展が見られます。特に、フィンランドでは 5 基目の 原子力発電所の建設を開始しており、アメリカでは 200 約 30 年ぶりの新規原子力発電所の建設に向けた準 150 備が進められています。 100 (2)各国の現状 50 0 1970 1973 1976 1979 1982 1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 (暦年) 資料: (社) 日本原子力産業協会「世界の原子力発電開発の動向 2005 年版」 〔1〕アメリカ アメリカは、原子力発電所の基数が 103 基と、そ の規模は世界一であり、原子力発電により電力量の 19%を賄っています。また、平均設備利用率が約 しかし、近年世界的に原子力見直しの気運が高 90%と順調な運転を続けています。近年では電力の まっており、アジア地域では、着実に原子力発電設 自由化により競争が激化し、経済性が重視されるよ 備容量が増加しています。2005 年末現在、日本で うになっています。運転の効率化が進められた既存 4 基(うち、2005 年 12 月に東通 1 号機が運転開始、 の原子力発電所は大量の電力を経済的に生産できる 2006 年 3 月に志賀 2 号機が運転開始) 、 中国では 3 基、 ことから、電力会社にとって貴重な資産と評価される 韓国で 4 基の原子力発電所が建設中であり、更に、 ようになっており、運転期間の延長が行われています。 日本で 9 基、中国で 7 基、韓国で 4 基の建設が計画 更に、エンタジー社、エクセロン社などが、小規模 中であるなど、アジアでは原子力開発が今後も堅調 な原子力発電所所有会社のプラントを買収するなど、 に進展していくと思われます。 原子力発電所所有会社の再編が急速に進んでいます。 原子力開発が順調に進んでいるアジア地域だけ アメリカでは、1996 年以降、原子力発電所の新 でなく、原子力発電所の新規建設が少ない欧米地域 規運転開始が途絶えていましたが、エネルギー省 においても、発電電力量は増加傾向にあります(第 は、2002 年 2 月、2010 年までに原子力発電所の新 222-4-3)。これは近年、欧米諸国において、既存原 規建設を行うことを目的とした「原子力 2010」プ ログラムを発表しました。このプログラムに沿っ 【第 222-4-3】 世界の原子力発電電力量の推移(地域別) (兆kWh) 3.0 アジア アフリカ 旧ソ連 欧州 中南米 北米 て、アメリカの複数の企業が原子力発電所の建設 に向け、検討を開始しています。更に、ブッシュ大 統領の一般教書演説(2006 年 1 月)において、エ ネルギー対外依存度低減などのための「先端エネル ギーイニシアティブ」を発表しました。エネルギー 2.5 省は、同イニシアティブを具体化するためのプログ 2.0 ラムとして「国際原子力エネルギーパートナーシッ プ(GNEP)」を同年 2 月に発表しました。 1.5 また、現在の原子力システムより、安全性、経済 1.0 性に優れた「第 4 世代原子力システム(Generation 0.5 0.0 1972 -IV)」の開発を提唱しており、我が国を含む 12 カ 国 1 機関が参加する「第 4 世代原子力システムに関 1977 1982 1987 資料:NUCLEONICS WEEK より作成 206 1992 1997 2002 2006 (暦年) する国際フォーラム(GIF)」を通じた協力を行っ ています。 一次エネルギーの動向 第2節 テキサス州に 2 基の原子力発電所(ABWR)を建 創出することを目的に、2 国間原子力協力プログ 設する計画であることを発表しました。これに対し ラムである I-NERI(International Nuclear Energy て、2007 年 3 月にはアメリカ政府が、原子力発電 Research Initiative)がスタートし、現在、「超臨界 所の建設の第一段階である「事前サイト許可 (Early 圧水炉の材料開発」について、研究協力が実施され Site Permit)」を発給しており、新規建設に向けた ています。 着実な進展が見られています。 2 国際エネルギー動向 のお互いの強みを活かして革新的な原子力技術を 章 ジー社が、米 GE 社・日立製作所等の協力を得て、 第 あわせて、日米間においては、2004 年から両国 一方、2006 年 6 月には、米電力会社の NRG エネ C O L U M N アメリカ「原子力 2010」プログラム エネルギー省(DOE)の S・エイブラハム長官(当時)は 2002 年 2 月 15 日、2010 年 までに新規原子力発電所を建設、運転を開始することを目的とした「原子力 2010(Nuclear Power 2010) 」プログラムを発表しました。本プログラムは、多様なエネルギー源の確保とエ ネルギー・セキュリティの保証というブッシュ政権の「国家エネルギー政策」の目標達成を支援す るものです。 2001 年 5 月に策定された「国家エネルギー政策」によると、アメリカの電力需要は 21 世紀 に拡大し、2020 年までに 393 百万 kW の新規発電容量が必要となるとしており、ブッシュ政 権はアメリカの主要なエネルギー源として原子力利用の拡大を推進しています。 「原子力 2010」は、DOE による「2010 年までにアメリカに新規原子力発電プラントを設置 するためのロードマップ」 としての役割をもっています。主に以下のような内容を目標としています。 〔1〕DOE と原子力業界が共同で段階的計画の実施にあたること 段階 1:新規プラントの規則承認プロセスに関する不確実要素の解決(連邦規則 10CFR52 プ ロセスの改善・実証) 段階 2:新型炉の候補設計の完了(最低でも軽水炉・ガス冷却炉各 1 基ずつ) 段階 3:2010 年までに新規プラントの建設・運転開始 〔2〕電力各社による新規プラントの許認可申請・設計・建設に対し、政府の財政インセンティブ を適切に導入すること 〔3〕原子力技術展開に対する原子力業界の構造基盤・影響の評価 〔4〕「国家エネルギー政策」の実施を支援する国家原子力戦略を策定 207 第2部 エネルギー動向 第 C O L U M N 章 2 国際エネルギー動向 第 4 世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF) 第 4 世代原子力システムの研究開発の多国間による国際協力に関する枠組みであり、2001 年 7 月に GIF 憲章が制定され、現在、日本の他、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、フランス、韓国、 南アフリカ、スイス、 イギリス、 アメリカ、 中国、ロシアの 12 カ国と欧州原子力共同体(ユーラトム) が参加しています。 GIF においては、ナトリウム冷却高速炉、超高温ガス炉、ガス冷却高速炉、超臨界圧水冷却 炉、鉛冷却高速炉、溶融塩炉の 6 つの炉型を対象として研究・開発協力を進めることとしており、 2005 年 2 月には、日本、カナダ、フランス、イギリス及びアメリカの間で、研究・開発協力を 行うための枠組みを構築する国際約束が締結されました。 C O L U M N 運転期間の延長 アメリカでは、原子力エネルギー法に基づき商業用原子炉には 40 年間の運転免許が与えられ、 これは更に 20 年間延長することができます。この期間は、技術的理由ではなく、経済性及び独占 禁止の観点から通信事業法にならい定められたものです。 2009 年には 1 基、2017 年までには 16 基の原子炉で、初めの 40 年間の運転免許が切れま す。運転期間の延長を申請するかどうかは、原子炉の経済性と安全規制を満足できるかに基づいて 原子炉所有者が決めます。 2006 年 11 月末現在、原子力規制委員会は 47 基の原子炉の運転延長を認め、34 基を審査 中です。 〔2〕欧州 208 の中で政府は新規原子力発電所建設に向けた政策面 イギリスでは、19 基の原子力発電所が運転中で、 での支援方針を表明するとみられています。なお、 電 力 量 の 約 18.4 % を 賄 っ て い ま す。2006 年 7 月、 操業を終えた核燃料施設等の廃止措置・廃棄物処理 英国政府はエネルギー政策見直しに向けた中間レ 処分事業を手がける原子力廃止措置機関(NDA)と ビュー的な位置づけとされる政策文書“The Energy 英国原子燃料会社(BNFL)は 2006 年 10 月、ブリ Challenge 2006”を発表し、この中で原子力発電は ティッシュ・ニュークリア・グループ(BNG)社の 地球温暖化ガスの排出削減に向けた有力な手段とし 分割売却について政府承認を得て公表しました。 ての意義が明確にされました。新しいエネルギー政 フランスでは、原子力発電所の基数が 58 基とア 策は 2007 年 5 月頃に発表される見通しですが、こ メリカに次ぐ世界第 2 位の原子力発電規模を有して 一次エネルギーの動向 第2節 これを受け、原子力発電所の段階的閉鎖を目標とし 新規原子力発電所の建設発注は行われてきませんで て、国内 10 基の原子炉は、今後 30 年から 40 年か した。しかし、 2005 年 7 月に制定された 「エネルギー けて段階的に廃止される見込みです。ベルギーでも、 政策指針法」において、2015 年頃までに既存原子 2003 年 1 月、脱原発法案が成立し、これに基づき、 力発電所の代替となる新規原子力発電所を利用可能 国内 7 基の原子炉は、建設から 40 年を経たものか とするため原子力発電オプションの維持が明記され ら順次閉鎖する予定です。一方最近では、複数の政 たこともあり、フランス電力公社(EDF)は 2005 府関係者が、エネルギー安全保障の観点から脱原子 年 7 月、新規原子力発電所としてフラマンビル 3 号 力政策に懸念を表明するなど、軌道修正の動きも見 機(EPR)の建設を発表しました。EDF はこのフ られます。 ラマンビル 3 号機について、2007 年下半期の本格 フィンランドでは、2002 年 5 月、議会が欧州で 着工、2012 年の営業運転開始を目指しています。 は 10 年ぶりとなる新規原子力発電所の建設を可決 また、シラク大統領は、2006 年 1 月に、2020 年ま しました。2003 年 10 月、TVO 社は同国 5 基目の でに次世代の原型炉の運転開始を行うことを宣言し 原 子 炉 と し て フ ラ マ ト ム ANP 社 の EPR(160 万 ています。 kW 級 PWR)を選定し、2005 年に着工しました(オ ドイツでは、原子力発電所の基数が 17 基で電力 ルキルオトで 2009 年に運転開始の予定)。 量の約 27%を賄っています。1998 年に社会民主党 〔3〕アジア地域 が緑の党と連立政権を樹立し、シュレーダー政権 中国では、10 基の原子力発電所が運転中であり、 が誕生しました。その後、ドイツ政府は産業界との 電力量の約 2%を原子力発電で賄っています。2003 協議で原子力発電所の運転期間を基本的に運転開始 年 9 月に発表された国家発展改革委員会の電力発展 から 32 年とすることなどを内容とする合意を行い、 原則では、「原子力の積極開発」が盛り込まれ、更 これを具体化する改正原子力法が 2002 年 2 月に成 に 2006 年 3 月の第 11 次 5 カ年計画においても原子 立しました。これに基づき、当時運用中であった国 力発電新規建設積極推進の姿勢を維持しています。 内 19 基の原子炉を、2020 年頃までに全廃する予定 中国政府は 2020 年には、更に 3,600 万 kW ∼ 4,000 としており、2003 年 11 月 14 日には、その第 1 号 万 kW(全発電容量の約 4%)にする予定です。 として、シュターデ原子力発電所が、2005 年 5 月 台湾では、6 基の原子力発電所が運転中であり、 11 日にはオブリッヒハイム原子力発電所が運転終 電力量の約 18%を原子力発電で賄っています。陳 了しました。2005 年 9 月の連邦議会選挙の結果、原 水扁政権は脱原子力政策を推進しており、行政院は 子力推進派のキリスト教民主・社会同盟と脱原子力 2003 年 5 月に「脱原子力国家推進法案」を可決し 派の社会民主党による大連立政権が誕生しました。 たものの、未だ成立していません。 原子力政策に関しては、両党の見解が一致しなかっ 韓国では、20 基の原子力発電所が運転中であり、 たため、前政権の脱原子力政策が継続されています 電力量の約 38%を原子力発電で賄っています。1 基 が、国内では脱原子力政策に対する批判もあり、今 が建設中であり、7 基が計画中です。 後の情勢は不透明です。 このようにアジア地域では、建設中、計画中の原 欧州では、そのほか、スウェーデンで 10 基(電 子炉が多数あり、原子力発電の新設の動きが活発で 力量の約 51%) 、スペインで 8 基(同 19.8%)、ベル す。 ギーで 7 基(電力量の約 56%) 、スイスで 5 基(同 2 国際エネルギー動向 が国内需要を上回っているという状況から、近年、 章 が立たないために全廃の期限は撤回されています。 第 おり、電力量の約 79%を賄っています。発電設備 〔4〕ロシア 42%)、フィンランドで 4 基(電力量の約 27%)オ ロシアでは 1986 年のチェルノブイリ原子力発電 ランダで 1 基(同 4%) の原子力発電所が運転中です。 所以降新規建設が途絶えていましたが、現在は積極 このうち、スウェーデンでは、1980 年に、国民 的に推進するようになり、2001 年に新たな原子力 投票の結果を踏まえて 2010 年までに原子力発電所 発電所が運転を開始、現在 4 基を建設中です。 を全廃することとされましたが、代替電源の見通し ロシア政府は、総発電電力量に占める原子力発電 209 第2部 第 章 2 エネルギー動向 の割合を 2030 年までに 25%に拡大することを目指 (3)核燃料サイクルの現状 しており、2006 年 7 月に発表した連邦特別プログ 〔1〕ウラン資源 国際エネルギー動向 ラム「2007 年から 2010 年までのロシア原子力産業 ウラン資源は世界的に広く分布しており、カナ コンプレックスの発展及び 2015 年までの展望」で ダ、オーストラリア、カザフスタンなどが埋蔵量、 は、2013 年から毎年 200 万kW以上の運転を開始 生産量ともに上位を占めています(第 222-4-4、第 する計画を示しています。また、2006 年 1 月、プー 222-4-5)。 チン大統領は、核燃料サイクルサービスを提供す ウラン価格は、1970 年代特に第一次オイルショッ る「国際センター」構想を発表しましたが、これは ク後の原子力発電計画の拡大を受けて上昇しました ウラン濃縮及び再処理に関する機微技術及び施設を が、スリーマイル島事故、チェルノブイリ事故を経 自前で保有することを断念した国に対し、国際セン て下落し、低価格で推移してきました。近年、ウラ ターがIAEAの保障措置下で、無差別かつ合理的 ン価格は再び上昇しています(第 222-4-6)。これは な商業条件で、濃縮及び再処理のサービスを提供す 2001 年のオリンピックダム鉱山(オーストラリア) るものです。 の火災、2003 年のマッカーサーリバー鉱山(カナ さらに、国内の原子力産業の再編も進めており、 ダ)、2006 年のシガーレイク(カナダ)の出水事故 2007 年 1 月、プーチン大統領の提出していた「原 等の短期的な要因に加え、解体核高濃縮ウランや民 子力発電部門を改革し、その発展を促進するため 間在庫取り崩しなどの二次供給の減少や中国、イン の法律」(原子力発電部門再編法)案をロシア下 ド等の需要増加の見通しなどから需給逼迫が懸念さ 院が第三読会で可決しました。同法によって、ウ れ、世界的なウラン獲得競争が激化していることに ラン探鉱・採掘、燃料加工、発電、国内外での原 起因していると考えられています。 子炉建設等民生原子力利用に関し、国が経営権を 〔2〕ウラン濃縮 完全に握る持株会社としてアトムエネルゴプロム 世界のウラン濃縮事業は、欧米を中心に行われ (Atomenergoprom)が設立されることとなってい ており、USEC(米国濃縮会社:年間約 11,300 ト ます。 ン SWU)と、フランスを含めた 5 カ国の共同事業 【第 222-4-4】 世界のウラン生産量(2005 年) 【第 222-4-5】 世界のウラン資源量(2004 年) 1.8% 1.6% 2 .1% 2% 1.9% 9% 2.5% 23% 5% 5.5% 2 8.0 % 7.6% 8.2% 合計 41,595tU 7.4% 2 2.9 % 10.5% 資料:世界原子力協会(WNA) ホームページ(http://www.world-nuclear.org) 210 カナダ オーストラリア カザフスタン ニジェール ロシア ナミビア ウズべキスタン 米国 ウクライナ 南アフリカ 中国 その他 5% ウラン 330万トンU (2004年) 6% 16% 4% 10% 8% 10 % オーストラリア カザフスタン カナダ 南アフリカ 米国 ロシア ナミビア ニジェール ブラジル ウズべキスタン ウクライナ その他 資料:OECD/NEA-IAEA「URANIUM2005」 (注)1.ウラン資源量とは 130US ドル /kgU 以下のコストで回収可能な 既知資源量。 2.世界のウラン需要量は約 6.7 万トン U(2004 年) 。 一次エネルギーの動向 第2節 第 【第 222-4-6】 ウラン価格(U3O8)の推移 章 2 ウラン価格(米ドル/ポンドU3 O8 ) 45.00 40.00 スリーマイル事故 (1979年 3月) 国際エネルギー動向 50.00 95米ドル/ポンドU3 O8 (2007年 3月末現在) 35.00 30.00 7.1米ドル/ポンドU3 O8 (2000年11月∼12月) 25.00 20.00 15.00 10.00 5.00 第1 次オイルショック (1973年10月) 0.00 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 200 22004 2006 (暦年) 資料:The Ux Consulting Company, LLC のスポット価格 体ユーロディフ(年間約 10,800 トン SWU)が、ガ 〔4〕プルサーマル ス拡散法を採用しており、また、イギリス、オラン 海外では既に相当数の実績があり、フランス、ド ダ、ドイツの共同事業体ウレンコ(年間約 7,300 ト イツ、アメリカ、スイスなど 9 カ国で、1960 年代 ン SWU)とロシアの工場など(年間約 15,000 トン から 2006 年 12 月末までに、57 基の発電プラント SWU)が遠心分離法を採用しています。我が国の において、MOX 燃料の装荷体数で合計 6,070 体が ウラン濃縮事業も遠心分離法を採用しており、その 使用されました。例えばフランスでは、2,662 体、 許可上の設備規模は、現在、年間 1,050 トン SWU ドイツでは 2,116 体の MOX 燃料が軽水炉で利用さ です。 れました。また、MOX 燃料加工施設は、フランス、 〔3〕再処理 フランス及びイギリスでは、自国内で発生する使 ベルギー、イギリスで既に稼働しています。 〔5〕高レベル放射性廃棄物の処分 用済燃料の再処理を実施するとともに、海外からの 海外では、各国の政策により使用済燃料を直接 委託再処理も実施しています。 処分する国と、使用済燃料の再処理を実施し、高 フランス AREVA NC 社(旧 COGEMA 社)は、 レベル放射性廃棄物をガラス固化体として処分する 海外からの委託再処理を行うための UP3(処理能 国があります。高レベル放射性廃棄物は海外のほと 力:1,000 トン・ウラン/年、操業開始:1990 年) んどの国で深地層に処分する方針が採られており、 及びフランス国内の使用済燃料の再処理を受け持つ 処分の実施主体の設立、処分のための資金確保な UP2-800(処理能力:1,000 トン・ウラン/年、操 どの法制度が整備されるとともに、処分地の選定、 業開始:1994 年)の再処理工場をラ・アーグに有 必要な研究開発が積極的に進められています(第 しています(ただし、UP3 及び UP2-800 における 222-4-7)。 処理能力の合計は、1,700 トン・ウラン/年に制限 されています) 。 [アメリカ] イギリス原子力デコミッショニング機関(NDA) 1987 年の関連法の改正によりネバダ州ユッカマ は、B205(処理能力:1,500 トン・ウラン/年、操 ウンテンが処分場の候補として選定され、エネル 業開始:1964 年)及び海外からの委託再処理を行 ギー省(DOE)によって、処分場に適しているか うため THORP(処理能力:900 トン・ウラン/年、 どうかを判断するための調査が 1988 年から実施さ 操業開始:1994 年)の再処理工場をセラフィール れ、2001 年に報告書がまとめられました。2002 年 ドに有しています。 には、DOE 長官が大統領にユッカマウンテンを処 211 第2部 エネルギー動向 第 【第 222-4-7】 高レベル放射性廃棄物処分に関する状況 章 2 国際エネルギー動向 国 名 廃棄物形態 アメリカ 使用済燃料 ガラス固化体 処分実施主体 連邦エネルギー省(DOE) イギリス ガラス固化体 原子力廃止措置機関(NDA)2005 年設立※ 4 処分予定地 操業予定 ユッカマウンテン※ 1 2010 年頃 未 定 未 定 核燃料廃棄物管理機関 (NWMO)2002 年設立 未 定 未 定 放射性廃棄物管理共同組合 (NAGRA)1972 年設立 未 定 2050 年頃 スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社 (SKB)1984 年設立 未 定※ 2 2015 年(初期操業) 2023 年頃(本格操業) 連邦放射線防護庁 (BfS) ゴアレーベン (再検討中) 2030 年頃 カナダ 使用済燃料 スイス ガラス固化体 使用済燃料 スウェーデン 使用済燃料 ドイツ ガラス固化体 使用済燃料 フィンランド 使用済燃料 ポシヴァ社 (POSIVA)1995 年設立 オルキルオト※ 3 2020 年頃 フランス ガラス固化体 放射性廃棄物管理機関 (ANDRA)1979 年設立 未 定 未 定 日 本 ガラス固化体 原子力発電環境整備機構 (NUMO)2000 年設立 未 定 2033 ∼ 2037 年頃 出所: (財)原子力環境整備促進・資金管理センター「諸外国の高レベル放射性廃棄物処分等の状況」より作成 http://www2.rwmc.or.jp/overseas/ (注)※ 1.2002 年 7 月に処分地として決定。 ※ 2.処分候補地であるオスカーシャム、エストハンマルにおいて、ボーリング等により適性を調査中。 ※ 3.2001 年 5 月に処分地として決定。 ※ 4.英国の環境・食糧・農村地域省 (DEFRA) による 2006 年 10 月時点の見解。 分サイトとして推薦し、大統領はこれを承認し、連 [スウェーデン] 邦議会に推薦しました。その後、ユッカマウンテン スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)が、 を処分場に指定する合同決議案が連邦議会両院で承 1993 年から 8 カ所におけるフィージビリティ調査 認され、大統領がこれに署名し、ユッカマウンテン を行い、、2000 年 11 月に 3 カ所(エストハンマル、 が処分場として選定されました。DOE では、2017 オスカーシャム、ティーエルプ)への絞り込みを経 年の処分場操業開始を目途として、2008 年 6 月の処 て 2002 年から自治体の承認をえられた 2 カ所(エ 分場建設許可申請に向けて準備が進められています。 ストハンマル、オスカーシャム)においてサイト調 査が行われています。SKB は、2018 年頃の初期操 [フランス] 業及び 2020 年代後半の本格操業を目途に、上記2 フランスでは、1991 年に放射性廃棄物管理研究 カ所でのサイト調査結果評価の候補地選定を経て、 法が制定され、地層処分、核種分離・変換、長期地 処分場の詳細特性調査や建設等に係る許可申請を 上貯蔵の3つの管理方法の研究が 15 年間を期限と 2009 年に行う予定です。 して実施されました。地層処分については、放射性 廃棄物管理機関(ANDRA)によって、1999 年 12 [フィンランド] 月から粘土質岩ビュール地下研究所の建設・研究が フィンランドでは、1983 年よりサイト選定が開 行われています。政府は 2006 年に3つの管理方法 始され、1999 年に処分実施主体であるポシヴァ社 に関する研究成果を総合的に評価しました。これら がオルキルオトを処分予定地として選定し、国に申 をもとに 2006 年 6 月には可逆性のある地層処分に 請が提出されました。2000 年に地元が最終処分地 向けて「放射性物質及び放射性廃棄物の持続可能な の受け入れを承認し、2001 年にオルキルオトを処 管理計画法」が制定され、2015 年に処分場の設置 分地とすることが国会で承認されました。ポシヴァ 許可申請、2025 年に処分場の操業を開始すること 社は 2012 年に建設許可申請、2020 年頃の操業開始 が定められました。 を目途に、現在地下特性調査施設の建設と調査を進 めています。 212 第2節 一次エネルギーの動向 第 (1)太陽光発電 [イギリス] ス固化体は、少なくとも 50 年間冷却のために貯蔵 で 370 万 kW(2005 年 12 月末)が導入されています。 することとしていますが、最終処分場、及び最終処 その中では政府の積極的な導入支援によりドイツと 分の開始時期については未定です。 日本の導入が進んでおり、アメリカが 2 国に続いて 2003 年 に、 放 射 性 廃 棄 物 管 理 方 策 を 検 討 す る います(第 222-5-2)。 2 国際エネルギー動向 太陽光発電については、世界全体(IEA 諸国) 章 イギリスでは、使用済燃料を再処理した後のガラ ための独立組 織 と し て 放 射 性 廃 棄 物 管 理委員会 (CoRWM)が設置され、CoRWM は 2006 年 7 月に、 地層処分が望ましいとすること、地層処分が実施さ 【第 222-5-2】 世界における太陽光発電設備容量(2005 年末) れるまでは中間貯蔵を行うとの最終勧告を政府に対 設備容量(万 kW) して行いました。2006 年 10 月、イギリス環境・食 太陽光発電(2005 年 12 月末) ① ドイツ 142.90 38.6% ② 日本 142.19 38.4% 47.90 12.9% ④ オーストラリア 6.06 1.6% ⑤ スペイン 5.74 1.6% 候補自治体との間に透明性を確保し、開かれたパー ⑥ オランダ 5.08 1.4% トナーシップを構築すること等を表明しています。 ⑦ イタリア 3.75 1.0% ⑧ フランス 3.30 0.9% ⑨ スイス 2.71 0.7% 5.再生可能エネルギー(新エネルギー、水力、 地熱等) ⑩ オーストリア 2.40 0.6% ⑪ メキシコ 1.87 0.5% ⑫ カナダ 1.67 0.5% 世界各国において導入が最も進んでいるのがバイ ⑬ 韓国 1.50 0.4% オマスであり、特にアメリカでの導入が多くなって ⑭ イギリス 1.09 0.3% います。一方で、 一次エネルギーの供給シェアでは、 ⑮ ノルウェー 0.73 0.2% ⑯ スウェーデン 0.42 0.1% 370.00 100% 糧・農村地域省 (DEFRA) はこの勧告を受け入れ、 ③ アメリカ 併せて原子力廃止措置機関(NDA)を実施主体と すること、処分場の決定及び計画推進に際しては、 世界合計 スウェーデン(主にバイオマス) 、デンマーク(主 に風力)が高くなっています(第 222-5-1) 。 資料:IEA「Trends in Photovoltaic Applications(2006) 」 【第 222-5-1】 IEA 統計における再生可能エネルギー導入量と対一次エネルギー供給シェア 風力 (Mtoe) 太陽光・太陽熱 地熱 バイオマス 90 18% 16.1% 80 16% 13.6% 70 14% 12% 60 一次エネルギー供給における 11.2% 再生可能エネルギーのシェア(%) 50 10% 8% 40 6% 30 6.1% 20 10 0 1.8% 90年 3.3% 1.7% 04年 日本 1.1% 90年 04年 デンマーク 0.9% 90年 04年 ドイツ 3.2% 3.1% 90年 2.0% 04年 オランダ 4% 2% 90年 04年 スウェーデン 90年 04年 0% 米国 資料:I E A「Renewables Information」 、 「Energy Balances of OECD Countries」 (注)IEA 統計では電力について一次換算をする際に、 “発電用バイオマス”は投入燃料データを利用、“地熱”は 10%の効率を、“それ以外(風力・ 太陽光・波力海洋等) ”は 100%の効率を仮定している(一次換算新エネルギー=バイオマス投入燃料+地熱 /0.1 +風力・太陽光・波力海洋等) 。 なお、1Mtoe=11,630GWh。 213 第2部 エネルギー動向 第 (2)風力発電 風力発電については、世界の風力発電設備容量 章 2 【第 222-5-3】 世界における風力発電設備容量 は、近年急速に増加し、5,921 万 kW(2005 年 12 月 設備容量(万 kW) 風力発電(2005 年 12 月末) 国際エネルギー動向 末)に達しています。特にデンマークにおいては、 ① ドイツ 1,842.7 31.1% ② スペイン 1,002.8 16.9% ツ北部やアメリカ・カリフォルニア州でもその割合 ③ アメリカ 914.2 15.4% が高くなっています。これらの国々においては、政 ④ インド 443.4 7.5% ⑤ デンマーク 312.7 5.3% ⑥ イタリア 171.7 2.9% ⑦ イギリス 134.2 2.3% ⑧ 中国 126.0 2.1% ⑨ オランダ 121.9 2.1% ⑩ 日本 115.0 1.9% ⑪ ポルトガル 102.4 1.7% ⑫ オーストリア 81.9 1.4% バイオマスについては、世界全体では、一次エネ ⑬ フランス 77.0 1.3% ルギー供給の約 10%と大きな割合を占め、先進地 ⑭ オーストラリア 74.6 1.3% ⑮ カナダ 68.4 1.2% 域平均では約 3%、開発途上地域平均では約 18%と ⑯ ギリシャ 57.3 1.0% 多く消費されています。また、近年は、アメリカな ⑰ アイルランド 52.5 0.9% ⑱ スウェーデン 49.2 0.8% 5,920.6 100% 風力発電が電力需要の約 14%を賄っており、ドイ 府が風力発電を環境政策、エネルギー政策の中に積 極的に位置付け、電力会社による買い取り義務を設 け、各種の優遇措置を講じて、導入を進めてきまし た(第 222-5-3)。 (3)バイオマス 世界合計 どバイオマス導入を政策的に推進する国も多くなっ ています(第 222-5-4) 。 資料:「Wind Power Monthly (Windicator)」 【第 222-5-4】 世界各地域のバイオマス利用状況(2004 年末) バイオマス (Mtoe) OECD 非 OECD 一次エネルギー 供給(Mtoe) バイオマスシェア (%) 欧 州 72.25 1,867.82 3.9% 北 米 84.14 2,760.41 3.0% 太平洋 11.82 879.67 1.3% 計 168.21 5,507.90 3.1% アフリカ 278.57 585.96 47.5% ラテンアメリカ 87.51 485.50 18.0% アジア(除く中国) 379.17 1,290.21 29.4% 中 国 220.55 1,626.47 13.6% 旧ソ連 8.15 979.35 0.8% 非 OECD 欧州 6.01 104.28 5.8% 中 東 計 世界計 (日本) 1.06 479.78 0.2% 981.01 5,551.54 17.7% 1,149.22 11,059.44 10.4% 5.39 533.20 1.0% 資料:IEA「Energy Balances of OECD Countries(2006 年版) 」 、「Energy Balances of Non-OECD Countries(2006 年版)」 (4)水力 水力による発電設備が多い国は、カナダ、中国、 アメリカ、ロシア、日本などです。豊かな水資源 214 ダム発電所が一部運転を開始し、完成を目指して工 事が進められています。 (5)地熱 に恵まれたカナダ、スウェーデンではそれぞれ発 地熱による発電は、アメリカ、フィリピン、メキ 電設備容量の約 6 割、約 5 割を占めています(第 シコ、イタリア、日本、インドネシアなどで行われ 222-5-5)。 ています。特にフィリピンでは発電設備の約 14% また、近年では中国において世界最大規模の三峡 が地熱となっています(第 222-5-6)。 二次エネルギーの動向 資料: (社)海外電力調査会、 「海外電気事業統計 2006 年版」 アメリカ フィリピン イタリア メキシコ インドネシア 日 本 ニュージーランド アイスランド エルサルバドル コスタリカ ニカラグア ケニア グアテマラ 中 国 ロシア トルコ ポルトガル エチオピア フランス 台 湾 ギリシャ タイ オーストラリア ドイツ オーストリア パプア・ニューギニア 世界計 総発電 設備容量 (MW) 1,031,692 13,434 78,249 43,536 24,706 272,701 8,555 1,510 1,133 1,715 641 1,129 1,697 391,408 216,000 28,332 11,240 501 115,975 34,598 11,360 50,532 44,852 112,781 18,030 − 2,516,307 2 地熱発電 地熱シェア 設備容量 (%) (MW) 2,534 0.2 1,931 14.4 791 1.0 953 2.2 797 3.2 535 0.2 435 5.1 172 11.4 151 13.3 163 9.5 78 12.2 127 11.2 33 1.9 29 0.0 79 0.0 20 0.1 16 0.1 7 1.4 15 0.0 3(休止) − 2(休止) − 0.30 0.0 0.15 0.0 0.15 0.0 1.2 0.0 6 − 8,879 0.4 国際エネルギー動向 シェア (%) 58.7 9.2 23.8 6.0 21.8 8.5 25.4 37.1 48.2 5.3 16.6 21.1 17.2 34.1 21.7 章 カナダ アメリカ 中 国 韓 国 フランス ドイツ イタリア スペイン スウェーデン イギリス オーストラリア ロシア 日 本 その他 合 計 総発電設備 (MW) 120,766 1,049,685 442,387 64,607 116,850 115,236 81,511 72,900 33,845 80,370 44,920 216,000 272,701 867,216 3,578,994 第 【第 222-5-6】 世界の地熱発電容量(2005 年 4 月現在) 【第 222-5-5】 世界の水力発電設備(2004 年) 発電設備 (MW) 70,854 96,845 105,242 3,879 25,421 9,795 20,744 27,013 16,297 4,248 7,436 45,500 46,803 295,745 775,822 第3節 資料:(社)火力原子力発電技術協会「地熱発電の現状と動向 2005 年」 第 3 節 二次エネルギーの動向 1.電力 (1)需要の動向 世界の電力消費量は一貫して増加しています。年 下しています。一方、1974 年から 2004 年までの世 界の電力消費量を増加させる大きな原因となったの は、途上国を多く抱えているアジア、中東、中南米 などの地域です。特にアジア地域は、1994 年以降、 電力消費量で西欧地域を上回るようになりました (第 223-1-1)。 代別に見ると、1970 年代は石油ショック直後の一 しかし、その一方でアジア、アフリカ、中東、中 時的な消費の低迷がありましたが、1 年平均 5.0% 南米は、北米・西欧地域に比べ、一人当たりの電力 と高い伸びを維持しました。その後、1980 年代は 消費量は、まだまだ低い水準です。例えばアジアの 3.5%、1990 年代は 2.8%と、徐々に伸び率が低下し 一人当たり電力消費量は、北米地域のそれの約 1 / ましたが、1974 年から 2004 年まで年平均 3.4%と、 10 以下にとどまっています(第 223-1-2)。 他のエネルギーと比べると高い伸びを維持していま また、電力化率(エネルギー消費量全体に占める す。 電力消費量の比率)は、世界全体で見ると 1974 年 これを地域別に見ると、先進諸国の多い北米・西 の 11.2%から 2004 年の 18.4%と 60%以上増えてい 欧地域は世界全体の伸びを下回っています。また旧 ます(第 223-1-3)。 ソ連・東欧地域は、ソ連崩壊後の経済の低迷も影響 これは世界全体で電化製品などの普及が目覚し し、1990 年代は年平均マイナス 3.0%と消費量が低 かったことも大きな理由です。 215 第2部 エネルギー動向 第 【第 223-1-1】 世界の電力消費量の推移(地域別) 章 2 国際エネルギー動向 (兆kWh) 旧ソ連・東欧 西欧 北米 中東 オセアニア アジア ラテンアメリカ アフリカ 増加率 (増加率) 16 7.0% 14 6.0% 12 5.0% 10 4.0% 8 3.0% 6 4 2.0% 1.0% 2 0 74 79 84 89 94 0.0% 04 (暦年) 99 資料:IEA「Energy Balances of OECD Countries」、「Energy Statistics and Balances of non-OECD Countries」 【第 223-1-2】 一人当たりの電力消費量(2003 年・地域別) (KWh/人) 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 ア ジ ア 東 オ セ ア ニ ア 中 南 中 ア フ リ カ 米 米 北 旧 ソ 連 ・ 東 西 欧 欧 0 資料:United Nations「Energy Statistics Yearbook」及び World Bank「World Development Indications」より(財)日本エネルギー経済研 究所作成 【第 223-1-3】 電力化率(地域別) 25.0% 1974 2004 20.0% 15.0% 10.0% 5.0% 均 平 界 世 ア ジ ア 東 オ セ ア ニ ア 中 米 ア フ リ カ 南 中 米 北 欧 西 旧 ソ 連 ・ 東 欧 0.0% 資料:IEA「Energy Balances of OECD Countries」、「Energy Statistics and Balances of non-OECD Countries」 (注)電力化率とは最終エネルギー消費に占める電力消費量の割合を指す。 (2)供給の動向 216 1990 年代は年平均 2.1%と、徐々に伸び率が低下し 世界の電源設備容量は一貫して増加し、2004 年 ています。ただ、中国については、近年著しい伸 時点で 37 億 kW です(第 223-1-4) 。しかし、年代 びを示しており、2007 年 3 月に国家電網公司が発 別に見ると、電源全体で 1980 年代は年平均 3.2%、 表した将来予測では、2006 年末に 6 億 2,200 万 kW 二次エネルギーの動向 第3節 備の稼働率が向上している状況が分かります。 に見ると、火力発電の比率が 7 割近くを占めており、 火力発電電力量を電源別に見ると、石炭火力の伸 主電源の役割を果たしていることが分かります。一 び率は、ほぼ電源全体の伸び率と近く、全発電電力 方、1970 年代の石油ショックを契機として、石油 量に占める石炭火力の割合は 1974 年の 36.6%から 代替エネルギーとして原子力発電の開発が促進さ 2004 年の 39.8%までほぼ横ばいで推移しています。 れ、1980 年代には原子力発電は年平均 9.2%と高い 石油火力は、1970 年代には年平均 4.6%と堅調な 伸び率を示していました。しかし、先進国での原子 伸びを示していましたが、石油ショックを契機に代 力開発が鈍化した結果、1990 年代は伸び率が年平 替エネルギーへの転換が図られた結果、1980 年代 均 1.0%にとどまっています。それでも 2004 年の原 は年平均マイナス 1.9%、1990 年代は年平均マイナ 子力のシェアは 9.9%と主要な電源の 1 つとなって ス 1.1%とマイナス成長に転じています。一方、天 います。 然ガス火力発電は、1970 年代は伸び率の年平均は また、水力発電は立地が難しくなってきており、 4.0%でしたが、1980 年代年平均 5.1%、1990 年代 伸び率は低い水準にあります。したがって、1990 年平均 5.3%と電源全体の伸び率を上回るようになり、 年代の電源設備容量の伸びは火力発電が中心となる 石油火力の代替エネルギーと見ることができます。 構造となっています。各国別に見ても、全般的には 各国の電源別発電電力量を見ると、アメリカは石 世界の傾向と類似しています。ただし、フランスの 炭が半分を占め、原子力とガスがそれぞれ 19%と ように、第一次石油ショックを契機に原子力発電の 18%を占めています。イギリスはもともと国内に石 開発を加速し、全電源に占める原子力発電の構成比 炭が豊富であり、石炭火力が主力電源の役割を担っ が 1980 年の 23.5%から 2004 年の 56.5%と 2 倍近く ていましたが、北海ガス田の開発や電力自由化に に増えているような例もあります。 伴って、天然ガス発電の比率が 2004 年には 41%と 世界の発電電力量も一貫して増加し、2004 年時 なっています。フランスでは原子力の比率が 79% 点で 17 兆 kWh です(第 223-1-4) 。これを世界の電 と非常に高くなっています。中国は経済発展ととも 源設備容量と比較すると、電源設備容量が 1980 年 に発電電力量も非常に高い伸びていますが、石炭の 代は年平均 3.2%、1990 年代は年平均 2.1%の伸び 比重が 78%と高く、環境問題が課題となっていま にとどまっているのに対して、発電電力量が 1980 す(第 223-1-5)。 年代は年平均 3.6 %、1990 年 代 は 年 平 均 2.7%と、 なお、欧州や北米では国境を越えて送電線網が整 2 国際エネルギー動向 kW となっています。世界の電源設備容量を電源別 章 電源設備容量を上回る伸びを維持しており、電源設 第 であった電源設備容量が 2020 年には 13 億 3,000 万 【第 223-1-4】 世界の電源設備構成と発電電力量 電源設備構成37億kW(2004) 火力 原子力 水力 地熱・再生エネルギー等 発電電力量17兆kWh(2004) 石炭 水力 石油 原子力 2% ガス その他 2% 10% 16% 39% 20% 68% 16% 20% 7% 資 料: ア メ リ カ エ ネ ル ギ ー 省「EIA International Energy Annual 2004」 及 び IEA「Energy Balances of OECD Countries」、「Energy Balances of non-OECD Countries」 217 第2部 エネルギー動向 第 【第 223-1-5】 主要国の電源別発電電力量(2004 年) 章 2 石炭 石油 ガス 水力 原子力 その他 国際エネルギー動向 アメリカ イギリス フランス 中 国 発電電力量 41,477億Kwh 発電電力量 3,932億Kwh 発電電力量 5,670億Kwh 発電電力量 22,367億Kwh 資料:IEA「Energy Balances of OECD Countries」、「Energy Balances of non-OECD Countries」 は、2004 年のベースでアメリカのガス事業の輸送 【第 223-1-6】 欧州の電力輸出入の状況 パイプライン総延長は 481 千 km、配給用パイプラ (2004年) 7,660 欧州ガス事業者協会である Eurogas の統計によ ベルギー ドイツ 15,490 フランス 720 数は、314 千 km となっています(ドイツは 2004 10,320 580 5,980 スペイン 千 km となっています。ドイツの輸送パイプライン の総延長は、61 千 km、配給パイプラインの総延長 2,680 イギリス 760 ると、2006 年 1 月現在でイギリスの輸送パイプラ インの総延長は 7 千 km、配給パイプラインは 275 400 1,160 9,780 インの総延長は、1,834 千 km となっています。 スイス 年 1 月時点データ)。フランスの輸送パイプライン の総延長は、36 千 km、配給パイプラインの総延長 数は、188 千 km となっています。 17,230 我が国は、電気事業者や国産天然ガス事業者等 イタリア によって整備されているパイプラインの延長が約 3 千 km、一般ガス事業者の配給パイプライン延長は (単位:100万kW h) 資料:IEA「Electricity Information 2006」 225 千 km となっています。 また、LP ガスについては、2005 年の消費量を先 進諸国間で比較すると、アメリカにおける消費量が 備されており、電力の輸出入が活発に行われていま 多く、5,041 万トンの消費量となっています。我が す(第 223-1-6)。 国は、アメリカに続き世界第 2 位の 1,856 万トンと なっています。EU 諸国は、イギリスの 383 万トン、 2.ガス事業 ドイツの 276 万トン、フランスの 357 万となってい 都市ガスの消費量を先進諸国で比較すると 2004 ます。 年 レ ベ ル で は ア メ リ カ に お け る 消 費 量 が 多 く、 218 24,352PJ(ペタジュール)の消費量となっていま 3.熱供給 す。EU 諸 国 は、 イ ギ リ ス の 3,836PJ、 ド イ ツ の 熱供給の始まりは 19 世紀に遡りますが、石油 3,490PJ、フランスの 1,867PJ となっています。我が ショック後、特にヨーロッパにおいて、石油依存度 国は、1,240PJ となっています。インフラについて の低減、エネルギー自給率向上、環境面からの有効 二次エネルギーの動向 第3節 なお、これら北欧諸国においては、発電排熱やご ンランド、スウェーデンでは 45%から 58%と北欧 み排熱の利用量の割合も約 40%∼ 90%となってい 諸国で高くなっています。また、導管ネットワーク るなど、我が国の 15%に比べ高くなっています(第 長でもデンマークが約 2 万 3,500km など、我が国 223-3-1)。 2 国際エネルギー動向 熱供給の普及率を国別に見ると、 デンマーク、フィ 章 の 240km(推定)と比べはるかに大規模です。 第 性から飛躍的に発展しました。 【第 223-3-1】 地域熱供給の海外事例(2000 年) 国 名 普 及 率 年間熱供給量 導管ネットワーク長 発電・ごみ排熱割合 デンマーク 58.0% 112PJ 23,500km 88.0% フィンランド 48.0% 97PJ 7,900km 75.3% スウェーデン 45.0% 173PJ 12,000km 39.0% オーストリア 14.5% 42PJ 2,646km 85.0% ドイツ 12.0% 331PJ 19,000km 83.5% 韓 国 8.0% 35PJ 1,300km 84.0% フランス 3.5% 80PJ 2,900km 42.0% アメリカ 3.0% 1,183PJ 19,000km 26.0% オランダ 3.0% 18PJ 2,415km 91.0% 日 本 1.2% 20PJ 240km 15.0% 資料:平成 14 年度経済産業省委託調査より (注)1 PJ(ペタジュール)= 106(百万)GJ(ギガジュール)= 1012(1 兆)kJ(キロジュール):1kcal = 4.186kJ 普及率(%)= 地域熱供給量(需要端)/国全体の熱需要量 × 100 4.石油製品 アが 2 割強となっています。1950 年代に比べ、世 世界の石油需要は 2005 年 8,250 万バレル / 日と 界の需要は 3 倍に拡大し、最近では中国の需要が拡 なり、北米が約 3 割、欧州が 2 割、中国を含むアジ 大しているのが特徴的です(第 223-4-1)。 【第 223-4-1】 地域別石油製品需要の推移 (100万バレル/日) 90 アジア(除、中国) 80 中東 70 旧ソ連 中国 アフリカ 中南米 欧州 北アメリカ 60 50 40 30 20 10 0 19 65 967 969 971 973 975 977 979 981 983 985 987 989 991 993 995 997 999 001 003 005 1 1 1 1 1 1 2 1 1 1 2 1 1 2 1 1 1 1 1 1 (暦年) 資料:BP Statistical Review of World Energy June 2006 219 第2部 エネルギー動向 第 世界の石油需要の変化を製品別にみると、ガソリ ンや灯油、軽油などの軽質油製品の需要が堅調に増 章 2 品需要の軽質化が着実に進んでいるのがわかります (第 223-4-2)。 加するのに対して、重油の伸びが低迷しており、製 国際エネルギー動向 【第 223-4-2】 世界の石油製品別需要の推移 (100万バレル/日) 35 30 25 構成比 1973 2005 ガソリン 29% 31% 中間留分 29% 36% 重油 28% 12% その他 15% 21% 中間留分 ジェット燃料等) (灯油、軽油、 20 ガソリン 15 10 5 その他(LPG、石油系ガス等) 重油 0 1965 1970 1980 資料:BP Statistical Review of World Energy June 2006 220 1990 2000 2005 (暦年)