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中世格言詩の表現と世界像(2) : 格言詩人としてのヴァル
ターとその後継者たちによるテーマの展開
高津, 春久
ドイツ文學研究 (1976), 22: 1-25
1976-08-21
http://hdl.handle.net/2433/184957
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
春
久
中 世 格 言 詩 の 表 現 と 世 界 像 (2)
│ │ 格 言 詩 人 としてのヴァルタ!と
その後継者たちによるテ l マの展開ーーー
津
ζとも ふくん でいる 。 そし て詩 人の
ζ の後の部分がむしろ関心事で
ζとを我々は知っている。いわば中世人が生活 の中で追求した価値 の序列がそとに歌われ る テl マ群の中
為の最終の意味、死後と現世、神と人の関係
たことを知るのである。
、
ζ の最後に持ち出される大テーマがあの時代の宗教的決定論の枠組によって強くしばられてい る ζと
中性格言 詩の表現と世界像︿ 2)
それぞ
κおよぶ時、我々は多く の言葉の準備がそれを引き出すためであっ
分に 引く ととができ ない 。しかし格言詩人の 語勢の高まるとと もに 、 それが次第 に大 テ1 マに集約され、 人の 営
心となっている。王侯より農民におよぶ各階層が日頃の生活にまもるべき讃末な注意事項や捉は我 々の関心を充
あった
表現上の重点の置き方から、当時それを語った者にとっても聞いた者にとっても
そとか ら詩人が最後的 Kと らえ た人間生活 の理想像や時代の価値 観 Kふれる
ら真実に照準を合わせて歌われた 。 との場合の真実とは詩人と政治的、社会的環境の出合いをい う だけではない。
中世世界の詩と真実の中から、真実の部分を語ってい る重要な資料が格言詩である。それは詩の形をとりなが
高
れ の 格 言 詩 人 が か な ら ず し も 全 く 自 由 な 人 間 論 を 展 開 し て い る の で な い と と は 、 現 代 の 視 点 か ら は 不 満 な ζとで
あ る か も 知 れ な い 。 し か し 格 言 詩 あ る い は 教 訓 詩 が も っ と も さ か ん に 歌 わ れ た グ ァ ル タ l晩年からライン?ル・
フォン・ツグェ l タ1 の時代まで、 つまり一二O O年 か ら 一 二 五O年 頃 ま で の 格 言 詩 人 は 乙 の 人 間 と 神 と 生 活 の
ζとをそれは教えている。
ζと K成功しているかを知って我々はおどろく。
問題を本質的には個人の立場 か ら語っているといって よ い 。 と の 時 代 の 特 徴 で も あ る 定 形 的 表 現 ( トlポス﹀の
中にそれぞれの格言詩人がどれほど多くの固有財産をひそめる
自分の表現というものが必ずしも他とちがった表現さえとれば可能となるのでない
κ人間行為の倫理的規準に大きレ混乱やとまどいをもっていた。ドイツ
格言詩がもてはやされた時代は一般的
ではシ ュタオフェン王朝 にま も ら れ た封建騎士社会が政治的に崩壊しはじめ、 それにつれて人のいだいていた価
yプ・フォン・
y
シ ュグア
値感に流動的な気配が生じた時に格言詩という分野が聞かれる。 一一九七年ハインリヒ六世がメッシl ナに死ん
だ後、 そ の 子 フ リ ー ド リ ヒ が 成 長 す る ま で の 後 見 と し て 、 大 多 数 の ド イ ツ 諸 侯 は フ イ リ
ーベ ンを 国 王 と し て 推 挙 し た 。 そ れ に 反 対 す る グ 占 ル フ 家 のものは英国の獅子王リチャ l ドの援護を・つけてオ
卜l ・ フ ォ ン ・ ブ ラ ウ ン シ コ ワ ァ イ ク を 支 持 し た 。 二 人 の 戴 冠 式 は マ イ ン ツ と ケ ル ン で 同 じ 年 に 行 な わ れ る 。 政
略的な法皇インノセ ント三世はシ プタオフムン王家の力を弱め 法 皇 権 を 強 め る た め に オ ッ ト ー を 国 王 と し て み と
yトlは神聖ロ
ζと を 条 件 に 法 皇 の 支 持 を 得 る 。 と の 後 も フ リ ー ド
l マ帝国の皇帝となる。しかし一一一一 O年に彼は破門され、十一年、 ハイ ンリ ヒ六世の子、
め、フイリップ王を破門する。ドイツ諸侯は法皇の介入にいきどおった。 一二O 八年にフイリップが暗殺され、
オ
リードリヒ二世がドイツ皇帝としての多くの権利を放棄する
リヒ二世によって法皇権と世俗権の戦いはつづけられている。 ζ の よ う な 政 争 を 利 用 し て ド イ ツ 諸 侯 は 各 々 自 己
フ
κ満 ち た 。
の 権 力 と 富を 増 す ζ と に ふ け り 、 不 正 で 暴 力 的 な 行 動 が 圏 内
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あ の 深 い 膜 想 に ふ け る 詩 人 の 自 画 像 に よ っ て 名 高 い グ ア ル タl ・フォ ン ・デァ・フォ l ゲ ル ヴ ァ ィ デ ( 毛 色H
その上に肘をささえ
。
脚もて脚をおおい ぬ
吾 いわ おに座し
仏叩叶︿o
m巳go広 叩 ) の 格 言 詩 が 歌 わ れ た の は ほ か で も な く と の 混 乱 の 中 か ら である。
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余の二つにまされるもの。
一つなるは 神 のみめぐみ
とれ、ほまれと人の財。
二つ はたがいにあまた損うも の
一つの得策も吾に浮ばず。
いかに得べきや
三つのもの一つとして欠けず
人乙の世にありて いかに生くべきや。
その時吾ふ かく思 い悩みぬ
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中世格言詩 の表現と世界像 (2)
方えな
3
・品llH斗 ﹀
ζとはかなわぬ ζとである。
ζの三人の旅路は阻まれている。
κ つづく。との三つを私は何とか一つにと思ったができなかった。財物と世間の尊敬、さら に
ζの一節はさら
神の恩寵が三っとも一人の身κ与えられるなどいう
ζの二人 が元気
﹂
。
﹁人のとの世にありていかに生 くべき や
不誠実が待ちぶせ、無法が大きな顔で街道をのし歩いている。平和と正義は深手を負っていて、
先の三人は安全な旅ができないというのである。
最
κあったのではない。それらはこの間い
ζ ζ にある。グアルタ l以後の格言詩の関心もほか
ζ のように格言詩は生活に向けられた理性的な省察であった。ととで
κ
ζとに
yハの﹃パルチグアル﹄の終章八二七、十九以
ζともなく、現世
κ
下は、神K召されるべき人の魂が現世の肉体の犯す罪によって神の手か らうばわれるという
ζとの徳節にその心をそそぐ者はやがて幸福と名誉にめぐまれるという言葉にはじ
7ン・フォン・アワ
まっている。
エの﹃イl グェイン﹄は、ま
あってもほまれ高く人々の好意をたもっという生涯のめでたさを語っている。そしてハルト
まれる ζとを説いている。ゲォルフラム・フォン・エッシェンパ
ーベルゲは﹃トリストラント ﹄三一一三行以下に神を心から愛し名誉を得ようとする者は必要とする財にもめぐ
宮廷叙事詩の中で物語の意味を集約する位置 Kζ の言葉はきまっておかれる。例えばアイルハルト・フォン・オ
くべきや﹂との聞から出発した中世盛期の全宮廷文学にやや表現を変えてくりかえしあらわれている。
げられている。乙れらの価値の組合わせはグアルタl の格言詩κかさらず、
OHgEE巾)の三つの大きい価値があ
終的な生活目標として名誉 23) と 動 産 会 民 主RmgC と神の寵愛︿m
一般に﹁人 ζの世 ありていかに生
かけκ答えるべく歌われまた書かれた。
詩人の眠惣の焦点は
にならぬかぎり
四
この時代の多くの作品にこれらの価値が定形的なあらわれ方をすることからも、 エ ー リ ス マ ン は ﹃ 騎 士 の 徳 目
体 系 の 基 礎 ﹄ の中でこれら三つの価値のそれぞれはキケロの﹃義務について ﹄(
号。ロkzck説 か れ た 三 つ の 価
﹃
値、美徳 3022ESlbO
)、有益なもの(口三巾関口03、 最 高 善 (25ヨロヨ σoロロヨlmOH22zEO) の直接の影
響から生まれたものだと推論した。しかしクルティウスがその﹃騎士の徳自体系﹄ Kよって、当時の騎士階級に
古 代 の 道 徳 律Kもとずく明確な倫理体系の存在したととを否定して 以来、 エlリ ス マ ン の 見 解 に 対 す る 一 般 の 信
頼はかなり後退したといってよい。ェ!リスマンのとらえ方が固定的であるのに対して、 クルティワスの理解の
柔軟な深さが次のような点にまでとどいているのが彼の論文の大きい魅力といえるのである。
﹁騎士のエートスの独特の魅力をなすものは類似した りあるいは 両 極 的 で あ っ た り す る 多 く の 理 想 の 閣をゆれ
動く ζと に 他 な ら な い 。 乙 の 自 由 な 理 想 か ら 理 想 へ か け て の 出 入 り 、 ゆ た か で 多 綾 な 価 値 の 世 界 を 動 き ま わ る 自
その詩人
ζのような懐疑や不決断の意味深さを強め
由 Kζ そ、おそらく宮廷詩人たちの心を詩作へと'つ ながすものがあったのだ
﹂
。
叙事詩の主人公とそれを描く詩人の心は、言葉の固定した使用にもかかわらず人生の価値の聞を懐疑的にさま
ょ っ た 。 人 の 生 き 方 に 思 い 悩 ん だ グ アルタ lが入念に描いた自画像は
ζない。
ζとを指摘する
ている。ェ lリスマン流の固定的な解釈では、﹁価値の世界を動きまわる﹂ それぞれの詩人の方法に
の本質的なものをくみとる可能性は生まれて
例 え ば グ ァ ル タl が三つの価値を列挙する方法から彼の事物の把握が特にダイナミックである
人はふ付。叙事詩などでは現世の名誉と神による魂の救済を多くは二元論的に配置する。グアルタl の詩では、
﹀
現世においておたがいはばみ合う二つの価値、名誉と財物に対して神の臨時愛を置く。財の所有に執着してばかり
中世格言詩の表現と世界像︿2
五
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日
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18)
印- M由
ζだわってはいられない、
というのは ζの世に
大胆にして施しの心あり、加えてまど乙ろあらば
男子には最高のほめ言葉。三つ自は二つに似合いて
よし。
ζれ ほ ど 内 側 に 力 を ふ く ん だ 場 合 は 少 い 。 ウ ア ル タ l の 騎 士 の た め
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︿町一口三九山伴者。}色白 N a ユ三冊
同 日 仏 巾 ロ Nd
rEgm ロロ仏自己丹市・己ロ門同仏自由同門凶 hvN己 O 回日陶器wmp
O U H O﹃三一向曲目・
的
他の叙事詩や格言詩の中で三つが並記され
σ
対して男のそなえるべき美質を数えるにも彼は単純な並列に満足しない。
って示している。ちなみに二対一の価値の組み合わせは彼の詩の中でしばしば試みられている。婦人の美しさに
価値をとのような二重の対立の中でとらえる彼の方法は価値の相殺や理想の達成のむつかしさを言葉の配列によ
受けねばならぬ。少々の過誤は許されて魂が天上へ救済されるのでなければ現世での営為は無に帰する。三つの
係に組み入れるのが彼の行き方である。あちらを立て、 ζちらを立てる ζとに奔命した人聞は最後に神の承認を
ければならない。現世の動きを二つの要素の対立の中でとらえ、もう一度それを現世と神意という大きい相対関
それらを行動によって実証することの難しさをよく理解し、詩に表現する点でもグアルタ1 の技何を最高としな
社会的尊敬の両立に直接かかわる重要な位置をしめるからであった。騎士社会の多様な美徳と価値の緊張関係、
騎士が要求される数多い徳目の中で彼が特に強調するのは施しの徳(弓︼仲間)であるのも、 乙の徳目が財の保有と
は外でもなく人聞の上に相反した力を及ぼすこつの現世の力、名誉と財物の相克を内容とするものである。王侯、
反応を示す人であった。その時々に人の行動に下した倫理的な批判が彼の格言詩の内容となっているが、 それら
生きて二つを同時に得たい人間の悩みである。グアルタlは現世の問題、 とりわけ政治や時局の事柄にするどい
では社会的に人望を失う、人々の尊敬を得るためには財の所有に
六
の教訓は時に一つの世界観ともいえる把握の大きさを示すととが ある。
グアルタ!の詩作が倫理的な内容 を 中 心 と し た 格 言 詩 へ と 傾 斜 し て 行 く の は 、 先 も ふれ た政治体制と時代の
比
日
変 化 K-つながされての ζとであった。 一一九O年から一二三O年頃まで彼は詩を書いたが、 とれは安定した封建
体制と 騎 士社会の秩序に亀裂が深まる時期であった。彼もその生涯の最初に体験したはずのシュタオフェン王朝
の最盛期は古代ロ!?帝国の継承者として世界秩序の理想像ともいえるものを持っていた。その中で騎士は自己
を錬磨し倫理的に完成するととを生活目標としていた。ラインマル・フォン・ハ lゲ ナ ウ の 詩 に 愛 の 苦 し み を 告
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ン朝の世界は傾きはじめ、高く張りつめた倫理意識にもゆるみが見え
白する騎士は成功の見込みなく苦しみに耐えるととが自己を問治し、徳操を試錬すると自分の行為を意味づけて
いる。やがて秩序ある偉大な シ ュタオフ
る
。 ζ の時点でグアルタl の偉大で悲劇的な政治詩や格言詩が生まれる。彼がシュ タオ フムン朝の政治の回復を
願ったのは、 それが昔保証した倫理的な秩序を求めてのととであった。グァルタ 1 の詩の悲劇性は、彼のシムタ
オフムン王家への支持が、 それが秩序ある帝国の統治者から圏内抗争の一派に転落した時にいよいよ熱意を帯び
て行ったととにもとづいている。その言葉が時局に対する警告的な響きを持ったのは当然のととであった。法皇
や王侯や時代に批判的な彼の格言詩は後の時代に起り得たようκ、 ドグマや知識を広めるために書かれることは
それが純
ζと だ 。 宮 廷 時 代 は そ の 理 想 を 生 き 、 詩 作 し た か ら で
なかった。デ・ボ l アは宮廷時代と格言詩を次のような言葉で要約する。 ﹁宮廷時代最盛期の特徴は、
粋に教訓詩人といえる人を一人も生み出さなかったという
あ る 。 こ の 時 代 は そ の 理 想 を 理 論 的 K分析したことはなかった。それともその時代がみずからを理論的κ語った
とすれば叙事詩の中でであるこ
中世格言詩の表現と惟界像 (2)
七
ζ の場合個性化の方向を示す
フライダンク(司﹃広田口の)、グインズベケ(者宮島巾円}内叩)、ラインマル・フォン・ツグム
ζれ ら の 詩 人 に と っ て グ ァ ル タ lは 、 共 感 あ る い は 拒 否 の 差 は あ れ 、 重 要
ってグアルタ!と同一人と推定されたが、 ζ ζ に 問 題 と な る 価 値 を 語 る 方 法 に グ ァ ル タ ー と の 本 質 的 な 違 い を 見
本論考の山はとの時代の典型的な格言詩人としてフライダンクの詩を論じていた。この詩人はグリムなどによ
浬想からの退却、絶望的な姿勢は時とともに深まったといえる。
からのへだたりの中に見出される。それぞれの後継者はグアルターにくらべてある欠落した一面をもっている。
な範例として常にその心に記憶されていたのである。彼らの格言詩の特性は、現象的には各々の人のグアルタ l
るのはラインマルだけである。しかし
ータl (刃包ロヨ印﹃︿ODN毛色巾﹁) をここにえらぶ ζととする。 ζ の中で本当の意味でヴァルタ l の後継者といえ
ヨ白田片口︿ O口口町ロ]恒三曲)、
び 、 こ れ ら の 他 の 詩 人 に お け る 使 用 を 観 察 し た い 。 格 言 詩 人 と し て は ト マ シ ン ・ フ ォ ン ・ ツ ィ ル ク レ l レ(吋 2 0
・
世に生きるべき価値の探求へと後の格言詩人を向かわせたグァルタ lの詩から名営と財と神の縄愛の三つをえら
尺 度 と な る 定 形 表 現 は ど の 格 言 詩 人 に と っ て も 重 要 な 、 共 通 に 用 い ら れ て い る も の で あ る こ と が 望 ま し い 。 ζの
﹁ゆたかで多様な価値の世界を動きまわる自由﹂の内容と範囲が明らかになろう。
化されて用いられているかを調査すれば、あの格言詩の創造をになったェ、ネルギl、 ク ル テ ィ ウ ス の い わ ゆ る
ことは先κのべた。 ζれ ら の 格 言 詩 の 中 か ら あ る 共 通 の 定 形 表 現 が そ れ ぞ れ の 格 言 詩 人 に よ っ て ど の よ う に 個 性
グァルタl以後一二五O年 ま で の ほ ぽ 半 世 紀 が 格 言 詩 あ る い は 教 訓 詩 の 特 に ゆ た か な 実 り を 見 せ た 時 期 で あ る
た結実でもあった。
このような情況からグ ァルター が 最 初 に ド イ ツ 格 言 詩 の 種 子 を ま い た と い わ れ る 。 実 は 彼 の が も っ と も す ぐ れ
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神、格別の罰あたえ給わず。
ζとの困難ではなく、
との理想が可能であると信じている。乙の二つ
何者か現世に迎えらるるとて
わが方へつなぎ得れば果報者なり。
神と現世、双方をば
せている。フライダンクにおいても神と現世の対立は明瞭である。そして他の格言詩人と同じく神の意志をいつ
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も現世の生活価値の上に置いている。
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しかし神と現世両方の寵愛にめぐり合う
を調和的に達成するためにヴァルターが費やした哨吟とか現実世界の不倫と抗争に示した怒りはとこにない。乙
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魂にとりでただ損失なり。
愚かなる現世の思惑、
毒なり。心すべき乙とぞ。
現世の美味ま ζと魂の
れは具体的な政治的破局を自の前に生まれた言葉ではない。
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ζの機語めいた、観念的な命題は現世の価値と魂の世界の対立を強調している。しかし二つの価値はととで対
中世格言誇の表現と世界像 (2)
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一見 似 た 言 葉 使 い の 中 に 語 義 の 違 い が み と め ら れ る
世の人争-って
財と世知と名誉をもとむ。
ζの三つを得て心飽くものを見ず。
現世に心とらわるるものにして
いまだ
人、財と名誉をもとむ べし
し ζれ は 人 聞 に 内 在 す る 欲 望 を 分析する言葉になっている。︽舌RS は と 乙 で は 世 間 知 、 抜 け 目 な さ で あ り 、
フ ラ イ ダ ン ク の 言 葉 の 中 か ら で き る だ け ヴ ァ ル タ l の 先 の 格 言 詩 の 表 現 に近い も の を え ら び 出 し て み た 。 し か
(5・NNlNω)
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Enzhum-口 前 日 ロB
- されど胸のうちに神をいだかざるべからず。
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也市﹃︻凶﹃目。﹃内同-ロ
日 口 町 毛 色 N g ♀・内同白N 己 叩 者 叩 吋
ロ白
U54唱。ユ門前件﹃即時叩昨日冊目
その詩はヴアルターとはちがった傾向のものなので
で は む し ろ ヴ ァ ル タ ー よ り も 生 き る と い う ζと の 原 点 を せ め て 近 代 に も 通ずる人間省察に成功している所がある。
その詩によって人間の生活を考えるとき、かえって本質に則した抽象化が自由に行なえるようになった。との点
ライダ ンクは生涯 騎 士 社 会 K近よる ζと も な く 、ま た 騎 士 を 聞 手 と す る 格 言 詩 を 作 っ た ζと も な い 。 没 階 級 的 な
いる宮廷騎士を念頭においていた。宮廷叙事詩の中で騎士が望まれる生き方と同じ問題の意識がそとにある。フ
る よ う な 抽 象 化 が あ る 。 グ ァ ル タ l が人のいかに生きるべきや、と問うとき、 そ の ﹁ 人 ﹂ と は や は り 彼 の 身 近 に
位的に置かれ、人間存在の構図を規定するように用いられる。フライ、ダン クの 詩句にはグア ルタl の現実を越え
。
κ価する内面的な徳性にまたがる
bzv も 名 聞 や 評 判 の よ さ を い う 。 グ ア ル タl のそれがもっていた名声とそれ
︽
bqH色町、九九四一三己Zgmwm
人と財と見栄のつどえるのみ。
乙の世はとかく
意味をもっていない。
者印コ=ロ Z-hHhbhロコ仏恥可司・
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﹁尽15 ﹀
ハ
こ の 格 言 詩 人 は あ の 騎 士 の 徳 目 と し て の 内 面 的 価 値 を ︽冊目v という一一拾に与えていない。名誉はすで K理想
ζ の語は彼
κよれば主観的、内的な意味では名
の価値ではなく現実世界の一要素になっている。怠円巾 V という語がとれだけの転用の可能性をもっていたととは、
エlリスマンの﹃騎士の徳自体系の基礎﹄にも指摘されていた。
誉 を 重 ん ず る 心 ゃ 、 体 面 を わ き ま え た 行 動 に よ っ て す ぐ れ た 人 に 認 め ら れ よ う と い う 志向 をい う 。客観的または
外的な意味では周囲の人々がある人に与える評価、尊敬を示す。それは時に高い地位やほとらしい身分でもある。
主 観 的 な 意 味 で の 怠ZV は中世では内的美質の総合であり、 ﹁美徳﹂ と同義であり、 キケロの ︽﹃戸。コ冊目苫ヨvk
4
7オラーは
ア ン ス は 中 世 文 学 に お い て 必 ず し も た や す く 判 別 で き な い 、 と す る の で あ る 。 ェ lリ ス マ ン は 宮 廷 叙 事 詩
v の意味の多様
あたる。客観的な意味のそれは︽き丘町︾︽E53cggv に あ た り さES で す ら あ る 。 怠g
なニ
やグアルタi の格言詩にいわれる名誉は主観的な意味を主とし、客観的な意味を従とすると考える。
その論文﹃美徳と名誉﹄の中でとれに対する反対意見をのべ、シごタオフムン王朝とそれ以前の大きい作品の
ζとはできない。
フライ、ダンクは
vの 意 味 で 用 い ら れ る と い う 。 し か し
bzv の用例のほとんどが内面的意味を欠き、︽﹀コ的巾﹃dgv ︽﹀口密rgコロコm
︽
ゲアルタ l の格言詩∞"区の名誉の 必 味 に 内 的 な も の を 全 く み と め ず 肘 釈 する
中世格言詩の表現と世界像 (2)
v を極度に客観化して用いる。
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︽z
ζれは彼が人格形成への志向よりも人と社会の自然な成行きを見守りながら、
。
すべからく自己の財を散逸す べからず
人と名聞を手中におさめんとするもの
そ ζに自然主義的な、するどい観察眼を働かせる ζとと無関係ではない。
申﹀
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円四冊﹁日
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われる。グ
世評と人心を得るためκはお金が要る、と彼はいう 。彼に よ る と 名 誉と 財産はグアルターが考え るような排除
し合う関係 Kはない。名誉は理想の高根から下って金銭となじんだ。これからは世評を得るために使
から
アルタ lは宮廷に所属する身でありながら、常にその底辺にあって物乞いし放浪していた。乙の苦しさの中
、柔 軟 な 生 命
彼は財の所有と徳節のおかれた困難な相互関係を見きわめていたにちがいない。 フライダン クは といえば、後期
中世を特徴づける自由な文士階級の一人であった。十三世紀になると宮廷符情詩が遊戯的に変質し
ζとによって同
を失いはじめる。ミンネザングのはぐくみ手としての 貴 族の文学愛好者の影が次第にうすくなるにつれて、する
どい観察と智恵を売物κ、 自 作 の 格 言 詩 を 歌 っ て パ ン を 得 る 遊 歴 の 職 業 文 士 が あ ら わ れ る 。 歌 う
じくパンを得てはいるが、グァルターには宮廷に属して宮廷文化を支えるものの自覚があった。フライダンクの
智恵と合蓄のゆたかな格言は民衆によって熱心にもとめられた。省察的な十三世紀文学の中では断然人気抜群で
あり、ヴァルターをしのいだという。自分の詩の朗読を金銭に変えた職業文士は﹁人心と名誉を手のうちに保た
んとするものはその財産をなくしてはならぬ﹂といい得たのである。
) がある。財の施し方によって施す人の名誉、 つまりその徳性が測られる。
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財と名誉の接点に﹁ほど ζし﹂(ヨ5
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はじらいつつ乞わるる施しは
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値は千金。
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金 言 的 だ要 約 し た 対 句 の 表 現 に よ っ て 与 え る 者 が 与 え ら れ る 者 に お よ ぽ す 心 理 の 機 微 が 語 ら れ て い る 。 し か も
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yプ王よ、つぶさに汝を見守るものらの難じていう、
施しによりていかにほめ言葉とほまれを得べきかを。
心進みて千ポンドを与うるがよきものを。汝いまだ知らず、
心進まずして三万ポンドをめぐまんよりは
かかる振舞によりて汝ほど乙せるより実にあまたを失えり。
汝、心より施しを好むにあらずと。恩うに
フイリ
社 会 全 般 の 現 象 か ら 読 み と っ た 客 観 的 事 実 と し て 、 諺 に ま で 一 般 化 さ れ て い る 。 同 じ テ1 マをゲアルタl は 時 局
的に訴える話題として提出する。
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グ ア ル タl の 格 言 誇 の 多 く は 不 満 や 怒 り を も っ て あ る 目 前 の 事 実 を 指 摘 す る 。 縦 横 山 に か け る そ の 詩 才 は 抽 象 か
ら 具象の事実へと、 ふ た た び 感 情 に 色 ず く 抽 象 へ と 動 い て 行 く 。 フ ラ イ ダ ン ク は 感情 生 活 を ど と か に か く し て い
中世格言詩の表現と世界像 (2 ﹀
る。彼の口からは純粋な智恵が諮られ る だけで ある 。
トマシンはフライダンクと同じ く グアルタ!の晩年に教訓詩を語った。 ﹃イタリヤからの異邦人﹄(己負さ佐一・
タオフ占ン朝の最も理論的な人生教訓書を
A
であり、 そ れ が ま た 彼 の 教 訓 詩 の 基 本 的 な 性 格 と も な っ て い る 。 第 二 巻 以 下 の 論 旨 は 次 第 に キ リ ス ト 教 的 倫 理 の
ってよい。最初の部分では婦人への奉仕や行儀のよさなど、宮廷的紀律が説かれている。とれは卑近な生活指導
活教訓とキリスト教が対立している。しかし ζ の詩の全体は結局キリスト教的な考え方につらぬかれているとい
ターともフライダンクともちがっている。彼が受けた教育と宮廷内での彼の立場から、 この本の中Kは古代の生
一四七五二行のとの大部の教訓詩は、僧侶の立場から宮廷騎士に向かってその生活の提を語るという点がグアル
ど を 真 近 に 体 験 し た 。 そ の 時 彼 は 日 頃 思 う 所 を 教 訓 詩 に よ っ て あ ら わ し た い 気 持 Kかられたはずである。全十巻、
ロ ー マ の 腐 敗 を 、 ま た = 二 O年 か ら 一四 年 ま で オ ッ トl 四 世 と フ リ ー ド リ ヒ 二 世 の 聞 に 戦 わ れ た 政 治 的 確 執 な
たあと彼はドイツの宮廷でドイツの騎士や詩人と接触する。 ζ ζ で 彼 は 騎 士 道 の 隆 盛 と 堕 落 の き さ し を 、 僧 侶 や
-エレンプレヒツキルヒェンという人の宮廷に僧侶として仕えるととになった。こうしてイタリヤの宮廷に育つ
やがて彼はドイツ西南部の国境に近く、グアルタ l の保護者でもあった文学好きの領主、 グォルフガl ・フォン
後北イタリヤのど乙かで彼は宮廷社会の教育をうけ、 プ ロ グ ァンス語を学び、 その初期の詩を ζ の言葉で歌った。
書き残したのである。幼時近くのアクイレアの本山学校でシャルトル派の教説によって神学教育を・つけた。その
の門閥家に生まれた。イタリヤ人でありながらドイツ語
κよってシ
統、居住地、身分などの点で異質な要素の奇妙な同居が目立っている。彼は北イタリヤの町ツィグィダ│レの市
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)と い う そ の 大 部 の 教 訓 詩 は 二 二 五 年 か ら 一 六 年 に か け て 成 っ た も の で あ る 。 と の 人 の 履 歴 は 特 に 血
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的
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重みを加えて行く 。そのような所 でも彼の懐 疑や含みに とぼしい明快な言葉がイタリヤ人の体質を示すようで あ
ESmロ03、全くよい物(開口 O門官﹃)、悪く てよい物(¢σ色ロコ仏mmgc
る。彼は大き く分けて、最高善(。σ叩
3
0 悪くてよい物とは門地、勢力、欲望、名声、財産、支配権の六つである。
々な美徳である(可巴!日寸N
85
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ζとであり、六つの﹁悪くてよい物﹂を持 つこ とではないという。キケロの︽
一
ζと﹀という第
級の美徳の上に きず かれている 。
人聞が神によっ
ζれらの美徳は彼の教説の中では重要なものではない。彼の倫理構造のすべては︽丘町mgv(
中世格言詩 の表現と世界像 (2 ﹀
-五
しかしこのような説明の道具によって彼の教説の内面的な性格までも変えられるわけではない。
ζれらは
ヤとドイツの宮廷に精通した彼は、 キリスト教的行動を騎士に勧めながら狩猟、比武、合戦に比輸を求めている。
価に冷淡である。怠Zv と︽mロOマも地上的な価値として﹁悪くてよい物﹂の中に入れられてしまった。イタリ
騎士の生活上の問題をよく察したり、様々な価値の困難な関係を知り抜いた言葉ではない。特に︽ヨ宮口叩 V の評
キリスト教的世界観に同化されている。-てしてこの思想の底 に彼の保守的で 貴族的な生 活感情がある。
く︽丘町mgv がその徳目の体系の基縫となっている。 古代倫理学の勧める行動の原理が彼の時代と環境に移され
行為が美徳の例として入れられている一方では、 ホラティウス、 セネカ、ボエティウスなどストア派的哲学の説
トマシンの倫理学の根は一つではない。﹁最高善﹂と﹁悪くてよい物﹂の聞には旧約聖書の族長たちの数々の
て設けられた世界秩序 に忠実に した がう
ただ
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ロgv と 2ES を明瞭に対立させ、 その間 へ ﹁全くよい﹂いろいろな美徳 2BEES﹀を置いている。
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生の真の価値は最高善を持つ
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らを持つこ とは喜びを与 えはす るが持つ者を堕落 させるから とのように名 づける(可むl
と
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三つの価値のグループを区別する。最高善とは神をいう(可ou│
S。全 くよい物とは最高善へと人を導く様
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よろしいか、ァ lサl王は名高い方でした。
その名は今でもなおよくたたえられております。
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だがおっしゃってみて下さい。王にとって名高い乙とは何の足しになりましょう。
たった一度の主の祈り の方があの方にとってもっとありがたいととでしょうκ。
アlサ│王が神様のめぐみを得られるとしたら、
それでもう私らの賞議などあきらめてよいのです。
と乙ろで王が地獄の底につきおとされ、
そんな王を私たちがほめればあの方の罪は一一層重くなりますよ。
なぜなら王は私たちに大うその話題を
いつも提供なさっている ζとになるからです。
あ の ﹃ イl ヴ ェ イ ン ﹄ の 最 初 に 、 騎 士 道 の 理 想 の 体 現 者 と し て 賞 讃 さ れ 、 宮 廷 社 会 の 敬 仰 を 集 め た ア ! サl王
は ζと で 名 声 の 玉 座 を 追 わ れ て い る 。 当 時 の 宮 廷 人 の 驚 嘆 を 呼 ぶ に は ζれ で 充 分 で あ っ た 。 現 世 の 名 誉 と 神 の 溜
愛を天秤にかけ、後者を絶対の高処へ持ちあげるトマシンの意図をよく示している。ヴァルターも神の恩簡を現
世の名誉の上に置いていた。しかしそれらに財物を加えて相互をバランスの力学によってとらえた。それによっ
て生きる道への困難な模索を表現したのである。トマシンの思考は ζの苦しいためらいを知らぬ。神の支配と人
閣 の 恭 順 と い う 二 元 論 を か な り ド グ マ テ イ yク に 進 め て 行 く 。 財 と 名 誉 の 位 置 づ け に も 同 じ 固 定 的 な 見 解 が 見 ら
忍たちは富賓と財物によって
れる。
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忍たちそう思って自分を思奔しているだけなのです。
自分に与えてくれると思い乙んでおります。
神綴のみもとに行ける力を
由化たちは支配権や門地や名声や威勢とそ
辰吉向義固にのぼる ζとができると思いとんでおります。
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財と富貴はトマシンにとって神への道をはばむものである。財が神への道を約束するのなら、不ロは今地獄にお
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神によって権力と名誉を与えられた人が
らぬであろうし、金持は喜捨によっていつでも罪がつぐなえるから何でもしたい
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自分に多くの名誉を与えられた御主人(神﹀に
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その人は一般の人よりもっと恥入ってよいのです。
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名 誉 は 人 を 神 に 対 し て 高 慢 に さ せ る と い う き ま っ た 属 性 に よ っ て と ら え ら れ て い る 。 ヴ ア ル タl や フ ラ イ ダ ン
クが名誉と財について語るにはとれらの世聞における働きを入念に観察し、注目すべき現象に行き当たったとき、
中世格言誇の表現と世界像 (2)
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それは宗教的な、本質において没階級的な教訓である。
私の身近に十年来一人の男がおりますが、
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本当 の所本 にもわからないのです。
私などが高慢ちきな気性から
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ぞとを見ればどんなに頓馬なやっかわかるでしょう。
それで自分の方が尊いなどと思いこんでいます
自分には法自主綴が気 K入らんとふれまわり、
法皇様に会った乙ともない男が
どうして自分の立場を弁明できましょう。
法皇様が 悪者だ などというとしたら、
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ζと で あ る 。 騎 士 の た め の 教 訓 と し て 語 ら れ て い な が ら
ら騎士道への具体的な関係をもたずに、永遠的な、しばしばアレゴリーめいた意味に変化しているのは不思議な
などの意味が固定的であり転義の力を持合わせていない。 ζれ ら の 語 が 騎 士 の 教 育 の た め に 用 い ら れ て お り な が
じめ用意された筋道にしたがう。それ
κ応じて彼の用い る 怠ZVA ロouaoHgE53
自 ら の 方 法 で そ れ ら を 語 っ て い た 。 トマシンにとっては、その都度の省察は重要でないかのように、考えはあらか
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ζの一節はゲアルタ lを名指すものとされている。身分の卑しいグアルタ l が貴人の愛顧を得て宮廷にはばか
り人身攻撃をするととにかねがねトマシンは不満であった。時に応じてヴアルタ l の詩は時局の問題や王侯、僧
侶の行動に対し非難をあびせているが、 ζれはストイ ックな中庸の徳を説くトマシンにとっては度はずれな増上
慢であった。例えば彼は いう。﹁貧者もまた富者も苦労はもっているものです。すべてのものが公平に誰の上に
叶 11Mgo)
も配分されています。よく考えればわかるでしょうが、貧者は富者よ り 不幸とはかぎりません。﹂ Q可
気性の激しいグアルタ lは自の前の貧富の差に我慢がならなかった。放浪の身にいつまでもつづく貧しさはつら
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といっている。 同時代の宮廷にあって騎士の生活の理想を語るとの二人
かった。﹁私は一度でいい、 自分の家の暖炉で身体をあたためてみたい。﹂(お・己﹁心ならずも私はあまりに長
く貧しい日々を送って来た。﹂
の詩人の距離ほどに、中世格言詩が個々の場合に持ち得た認識や表現の多様さを示すものはない。そしてまたと
んな比較にも増してグァルタ l の 詩 人 と し て の 菓 質 を 、 彼 の 中 世 的 制 約 を 抜 き ん 出 た 感 情 表 現 の 直 接 性 を こ の ニ
人の場合は示しているのである。
東部フランケンにデァ・ゲインスベケ 22 巧百与2r叩 ﹀ と 名 乗 る 一 人 の ド イ ツ 騎 士 が 二 二 O年から二O年
κなろうとする息子に父親
にかけてのある時期に各十行、 五十六詩節の比較的小さい教訓詩を書いている。騎士
が宮廷騎士としての修養事項を説く体裁をとっている。今までとりあげた格言詩人にはそれぞれ独自な傾向が認
ζれに当た る 目立った傾向をもっていない。
当 時の騎士道をた
められた。現実世界へのとと Kするどい凝視や、 カタログ作製に近い徳目の念入りな列挙や‘明確な抽象によっ
て合蓄を深めた金言などである。グィンス ベケは
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だ常識的な実践の立場から要約してのべている。それだけ にとこにの べられている乙とは他のどの教訓詩よりも
中性格言詩の表現と世界像ハ2
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し た倫理観を伝えている。
せがれや、財産 そ集め たり欲しがった りして もよいけれど
ただそれがおまえの心を負かしてしまわぬようにおし。
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注目。︻山由N 巾
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財物がお前から高潔さや広い気持をうばうようだったら
財物は貧欲がと かく落ち乙みやすい畏だ 。
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おまえの心ばえは人のほめ言葉にあずかれないよ。
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神緩や世間の名誉よりも財物を有難がる人は
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どうかしてるんだと父さんは思うよ。
Tルタ l の 継 承 者 を 自 覚 し て
それまでに試みられた格言詩の表現素材を意識的に網羅し、自分の詩
ウエーターである。作詩にあたっての態度はゲ
とした人がラインマル・フ寸ン・ツ 、
ζ の格言詩の時代の最後にあらわれて、
ていた ζと が ζ ζ からも確認できるわけである。
が 騎 士 社 会 一 般 の 考 え 方 で あ っ た ζ と は 乙 の 資 料 に よ っ て 推 察 で き る 。 グ ア ル タl が 騎 士 階 級 の 考 え 方 を 代 弁 し
も 共 通 し た こ と で あ る 。 し か し 財 を 所 有 す る ζと に 肯 定 的 で あ り 、 三 つ の 価 値 の バ ラ ン ス を 好 ま し い と 考 え る の
ζ ζ で財への執念が名誉や神の恩寵をはばむものと意識され、抑制的にとらえられているのは他の格言詩人に
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出 し た グ ァ ル タl の 詩 の 深 さ は そ と に 期 待 で き な い が 、 父 か ら 子 へ の ζ の 暖 か い 教 示 は ζ の 時 代 の 牧 歌 的 な 安 定
当時の人々の脳裏にあった理想の騎士道を過不足なく示しているものと信じてよい。現実世界の矛盾や緊張を描
。
いた。しかし そ の作品 は や や 個 性 にとぽしい グ ァルタl の一亜 流 にとどまったとい うべ き で あ る 。 作 詩 技術 の点
FE・巴戸吋gB 叶。コ) と呼ばれ
で も そ れ ぞ れ 内 容 に 応 じ た 詩 形 の 創 造 は な く、後世フラォ・ェ l レン・ト l ン(
深 め て 行 く宮廷文化の残り火をたずね、
る詩 形 に よ っ て す べ て の 事 柄 を や や 一本 調 子 に 歌 っ た 。今 や 調 落 の 色 を 、
自分の歌の迎えられる土地をもとめながら宮廷から宮廷へと移動する生涯であった。 一二三五年、 ワィ l ンの宮
廷に見切 り をつけてからはボヘ ミヤ王グェ ンツ ェルの宮廷に移り 、 さ ら に 数 年 後 に は 西 方 へ 移 動 し て 晩 年 の 詩 の
、 ケルンなどライ ン河 畔 の 貴 族 の 宮 廷 で 歌 っ た 。 そ の 詩 は 一 二 五O年 頃 ま で 歌 い つ づ け ら れ る の
多 くをマイ ン ッ
ζと は そ れ が グ ァ ル タ ー を 模 範 と し て 書 か れ た 乙 と か ら も
。
ζと で あ る
流転
ζの 詩 人 に つ い て 興 味 深 い の は 才 能 の 違 い は あ れ 、 グ ア ル タ l の 詩 の 世 界 が 半 世 紀 を へ て 他
である。彼の詩が騎士文化の理想の追求に捧げられた
当然のととである。
の詩人 によって再現さ れ、 代 弁 さ れ た 時 、 す で K そ れ が あ る お お い が た い 不 調 和 を 感 じ させる
す る 時 の 中 で、 あ る 階 級 の た め の 理 想 の 秩 序 を 求 め た 詩 表 現 が ま ぬ が れ 得 ぬ喪失 感 が 彼 の 詩 の言 葉 K強 く あ らわ
ζと に成 功 し た 。 そ れ は 実
κ大きい力量を必要とする仕事であった
れている。グアルタiは 格 言 詩 の 中 で 客 観 的 な 事 実 や 教 訓 を 歌 う 時 に も 持 情 詩 に 見 せ て い た 造 形 力 を 充 分 に 発 揮
し 、 悟 性 の 訴 え を 詩 の 表 現 力 に よ って強める
から、 それ以後の格言詩はトマシン、 フ ラ イ ダ ン ク に よ っ て 代 表 さ れ る よ う に 、 韻 文 の 形 式 を も ち な が ら そ の 中
で 散 文 的 要 素 を 強 め 、 文 の 思 想 内 容 の 表 現 に 重 点 を 置 く方 向 を と っ て 行 っ た 。 格 言 詩 の 時 代 は 自 分 た ち の 生 活 指
針 が 直 接 的 な 形 で 与 え ら れ る ζと を 求 め て い た の で あ る 。 悟 性 の 声 が 天 か ら下 る 歌 の 響 き と な っ て 人 々 Kとどき
ζ の時代の変化からずれている。彼の詩の表現にはやや悲壮めいた師匠への復-婦の意気どみが見
鑑 賞 的 K受 け 入 れ ら れ る と い う 宮 廷 的 な ゆ と り を 人 は す で に 失 っ て い た 。 ラ イ ン マ ル ・ フ ォ ン ・ ツ ヴ ェ 1 タi の
格言詩の試みは
中世格言誇の表現と世界像 (2)
κ目 立 つ あ ら ゆ る 素 材
え る 。 ェ ピ コ lネ 特 有 の 、 受 容 力 の 大 き い 多 面 的 な 彼 の 精 神 は 、 そ れ ま で の 絡 言 詩 の 歴 史
門 山 口 百 宮 内 定 qhu
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それは彼女(名誉)の勧めなしでやっている ζとだ。
財物を名誉より愛する人をどれほど人がたたえようと
だが彼女(名誉)は財物を見事に扱ってみせる人を愛する。
名誉は何かを財ゆえに好むという ζとがない。
と 技 術 を 内 部 Kた く わ え た 受 皿 で あ っ た 。 そ の 意 味 で 彼 は 格 言 詩 の 歴 史 の 解 明 に 重 要 な 手 が か り と な る 存 在 で あ
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上を行き来するだけであった。
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このように世の人々の気持は様々である。
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とはない。
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を 屈 折 さ せ 興 味 を 呼 ぶ ζと を ね ら っ て い る か の よ う で あ る 。 テ ー マ の 点 で は 彼 は 古 く か ら 敷 か れ た 安 穏 な 軌 道 の
人的な言いまわしが試みられている。多くの場合、ライン
や手の ζ ん だ 表 現 と 変 化 を 与 え 再 提 出 す る の が ζ の 亜 流 者 の 方 法 で あ る 。 と と Kは 後 期 の 詩 人 が ζと に 好 ん だ 凝
て い る 。 ほ ど よ き 財 の 追 求 が あ っ て そ と に 社 会 的 名 筈 の と も な う 乙 と を い っている。すでに 伝 え ら れ た 内 容 に や
財と名誉の関係については今までの格言詩と同じ視点で ζの二つがめでたく両立するととのむつかしさを説い
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賢者は賢明さを大いに好み
愚者は愚者の心を好む。
しかし我らが神の恩簡と名誉を好む ζとほどに
すてきなととはこの世にいまだありはしなかった。
﹁ 神 の 思 寵 と 名 誉 を 好 む ﹂ こ れ 以 上 事 の 内 容 K踏 み 入 る 言 葉 で は な い 。 時 に 虚 脱 し た 観 念 的 テl マのくりかえ
し と 懐 古 的 な 情 感 が こ れ ら の テl マ表現 Kと も な う ζとを見落すわけに行かぬ。 ζ の 詩 人 の 最 も 共 感 を 呼 ぶ 言 葉
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消えてしまうのだった。
彼女はすぐさまそとから
よさ心ばえの主人を見出さなかった所では
いかなる宮廷であれ名誉が
それを得るに大胆でなければならなかった。
名誉をあえて家に招き入れようとするものは
人はそれを求めていたものだ。
それで今日とはちがった風 K
名誉は昔大いに重んぜられていた。
は過去の騎士文化の頂点と今日の沈滞を比較する宮廷文化への挽歌の一節である。
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調されて行った。
ζと に 試 み た 列 伝 体 の 観 察 に 私 は 次 の よ う な 意 味 を 与 え た い 。
誰にしろあえて宮廷にそぐわぬ振まいをして
自分を名誉に価せぬものとする乙とはなかった。
時代だけが持ち得
ζ の 閑 難 な 価 値 の 均 衡 を 回 復 す る ζと へ の 期 待 が た し か に と め ら れ て い た 。 頂 上 を き わ め た
価値の調和的実現に絶望的なへだたりを感じているものもいる。中世盛期の終ろうとする時の格言詩の流れに、
出している。その中には三つの価値の比重に明瞭な片寄りを示しながらかたくななものがいる。あるいは三つの
模索し教示しようとした。あるものは階級の意識を捨て純粋な広い視野から人閣の本性にせまる新しい方法を見
軟でもあった。彼らは各々グアルターへの接近と離反を意識しながら、それぞれの環境の中で人間の生きる道を
た 人 間 の 理 想 に 対 す る と の 大 き な 包 摂 力 は 彼 に つ づ く 格 言 詩 人 の 誰 一 人 も 持 つ ζと が で き な か っ た ほ ど 大 き く 柔
は
おいた。彼は ζ の 均 衡 の み だ れ を 大 き い 時 代 転 換 の 中 に 読 み と る ζと の で き る 鋭 敏 な 詩 人 で あ っ た 。 彼 の 言 葉 に
グアルターはその一つの格言詩の中で三つの価値のバランスのとれた円満な達成
κ人間の最終的な生活目標を
られる不実と敵意に、世の倫理感の最後的な低下を見出して近ずく最後の審判を予告する終末観的な言葉へと強
て誕生し、宮廷騎士道の終湾の自覚の中で歌いつづけられたからである。それらはやがて兄弟父子の聞にすら見
る言葉は常に格言詩の発想の基礎にあった。格言誇がシュタオフムン王朝の理想の政治体制の崩壊に・つながされ
昔は人々の風儀ととのい理想の心高く、今日は人々の心いやしく不誠実でありその振まいは粗暴である、とす
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