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「単元を貫く言語活動」を設定した単元に活用できるワークシート
前 Aくん 難しい。今と昔は違う から、関係がない。 後 古典などは難しいものではなく、 気軽に読み味わうことができる と分かった。今と昔で共感でき るところやできないところを読 み取ったり、感じたりすること ができると分かった。 語句の意味を確認した いちいち訳を見たり、 限られた枠の中に、作者の思い さだと思いました。たった数行、 う、それこそが古典のおもしろ Bさん 難しくて理解しにくい。 何度も読み、理解を深めるとい りするのは面倒だ。 が詰め込まれています。共感で きることはもちろん、学ぶこと が多かったです。まさに、「温故 知新」です。 心情が表れていることを知って、 きまりについて分かった。 見た目がきれい。 漢詩がますますきれいに思えた。 Cさん おもしろい。 口に出して読むとき、 また、少し時間をおいて読んで、 自分の詩に対する感じ方が、変 リズムがあって好き。 わるかどうかやってみたいです。 12 教科研究国語 No.194 「単元を貫く言語活動」を設定した単元に活用できるワークシート 一 詩歌の味わい「今に向かって」の一枚ポートフォリオ(自 己評価カード〔ステップアップカード〕) まず初めに、古典についての自分の考え方を、ポートフォリ オ の「 単 元 の は じ め の 考 え 方 」 に 記 述 さ せ た。 単 元 の 最 後、 ポートフォリオの最後の欄に、再度自分の考え方を記述させる。 両者を比較することで、自己の認識の深化を自覚することがで きる。 例えば、単元の前後で生徒の記述は下のように変化している。 次に、このポートフォリオを活用し、単元の学習の見通しを もたせた。そして「言葉との出会い」を読み、「自分の体験と 響き合う言葉との出会いは、私たちのものの見方や感じ方、考 え 方 を 鍛 え 豊 か な も の に し、 表 現 を よ り 深 い も の に し ま す。」 という文を捉えさせ、古典を読むことの意味を考えさせた。各 中学校第三学年において、 「単元を貫く言語活動」を設定し た単元を考えた。この単元を通して、 「古典の一節を引用する などして、古典に関する簡単な文章を書くこと」〔伝統的な言 語文化と国語の特質に関する事項〕を指導する。この単元は、 第二学年の「古典に表れたものの見方や考え方に触れ、登場人 物や作者の思いなどを想像すること」も踏まえている。登場人 物や作者の思いなどを想像し、自分の感じ方や考え方と比べて 批評しながら読ませることで、学習者自身の考え方を深めさせ ることができる。また、古典に対して興味・関心をもち、主体 的な読み手を育てることができると考えた。 この単元では、次のワークシートや手引きを活用した。 ―「今に向かって」漢詩他を素材に― 「単元を貫く言語活動」 時間の自己評価では、 「自己評価のためのルーブリック」を用 いて振り返りを行わせた。 二 漢詩「読みの観点」 漢詩を読むために必要なことを学習した後、漢詩の「読みの 観点」を指導した。 「構成」 「表現」 「視点」「人物」「主題」で ある。授業の冒頭に、シートをもたせてペアで確認させ、覚え させた。これを用いて、 「春暁」 「絶句」「静夜の思ひ」「春望」 「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」を読み、交流して深 めた。 Cさんは、 「春望」の時間の振り返りに、「対句がその人の心 の移り変わりを表しているのかなと思った。悲しいと思った。 自然はとても生き生きしているのに、自分はとても衰えている。 いつもは希望を与えてくれる春も、人それぞれで違う感じ方が あるのだと思った。 」と書いている。 三 漢詩 ワークシート 漢詩を読む際に、ワークシートを用いて、作者の思いや主題 を読み取らせた。例えば「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送 る」では、 「孤帆」 「尽」の表現や倒置法で表現された「惟見長 江天際流」に着目させた。そして李白が、友を見送る限りない 惜別の情を、尽きることのない長江の流れに託して詠んでいる ことを読み取らせた。振り返りには「孟浩然と別れた李白の孤 独感を感じ取ることができました。 」 「きれいな歌だと思ってい たけど、別れの歌だとは思っていなかった。碧い空やかすみも、 少し悲しいイメージになった。 」等の記述が見られた。 四「古典の一節を引用して、古典に関する文章を書く」ための ワークシート(詩歌の味わい〜今に向かって〜) この単元の第九時で、古典の一節を引用して、古典に関する 文章を書いた。そのためのワークシートが、右のものである。 このワークシートは、「①作品を紹介する。②作品の部分を 引用して書く。③『自分だったら…』と、自分だったらどうす るかを書く。(現代と似ていること、違うことを書く。)④その 理由を書く。⑤古典作品に対する考えを書く。」という項目に なっている。古典の登場人物や作者の思いなどを想像し、自分 の感じ方や考え方と比べて批評しながら読ませることで、学習 者自身の考え方を深めさせることができるワークシートである。 書いた文章を交流した後、一のポートフォリオに、単元の最 後における古典の考え方を書き、自己の認識の深化を実感した。 今後は、一枚ポートフォリオの学習目標をより工夫すること が課題である。 (広島県 三次市立塩町中学校教諭 吉浪 徳香) 13 自己評価カード〔ステップアップカード〕 2 枚目 時 学習目標 自己評価 5 漢詩「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」を読む。 ・描写の効果,登場人物の言動の意味,場面や登場人 物の設定の仕方をとらえて,李白の心情や,漢詩の 主題を理解し,交流して深めている。 3・2・1 6 ○和歌を読むために必要なことを理解している。 ・歴史的背景を知り,特徴やリズムを生かして朗読す るなどして「百人一首」の和歌を読み,その世界に 親しんでいる。 3・2・1 「単元を貫く言語活動」 『万葉集』の和歌を読む。 ・描写の効果等をとらえ,内容を理解している。 7 ・作品に表れているものの見方や考え方について,自 分の知識や経験と関連付けて考え,自分の感想をもっ ている。 3・2・1 『古今和歌集』『新古今和歌集』の和歌を読む。 ・描写の効果等をとらえ,内容を理解している。 8 ・作品に表れているものの見方や考え方について,自 分の知識や経験と関連付けて考え,自分の感想をもっ ている。 3・2・1 ・古典について感想をもち,交流して考えを深めよう としている。 ・古典の一節を引用して,古典に関する文章を書いて いる。 3・2・1 9 ふりかえり ・古典について感想をもち,交流して考えを深めよう としている。 ・古典の一節を引用して,古典に関する文章を書き, 10 3・2・1 交流している。 ・単元目標に対し,自己評価を行い,成果と課題を振 り返っている。 《単元の最後の考え方》 《返信》 教科研究国語 No.194 14 自己評価カード〔ステップアップカード〕 1 枚目 ☆自己評価カード(ステップアップカード) 3 年 組 番・名前( ) 単元名 詩歌の味わい 〜今に向かって〜 (全 10 時間) 学習材 「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」 李白 「春望」 杜甫 「春暁」 「絶句」 「静夜の思ひ」 万葉集・古今和歌集・新古今和歌集 「言葉との出会い」 《単元の目標》 ・古典について感想をもち,交流して考えを深めようとする。 「関心・意欲・態度」 ・描写の効果,登場人物の言動の意味,場面や登場人物の設定の仕方をとらえ,内容を理解することが できる。 「C 読むこと イ」 ・作品に表れているものの見方や考え方について,自分の知識や経験と関連付けて考え,自分の意見を もち,交流して深めている。 「C 読むこと エ」 ・歴史的背景などに注意して古典を読み,その世界に親しむことができる。 「伝統的な言語文化に関する事項」 ・古典の一節を引用して,古典に関する簡単な文章を書くことができる。 「伝統的な言語文化に関する事項」 《単元のはじめの考え方》 15 時 学習目標 自己評価 1 ○学習の流れや学習方法を理解し,単元の学習の見通 しをもっている。 ・「言葉との出会い」を読み,古典を読み自分の考えを もつということを理解している。 3・2・1 2 ○漢詩を読むために必要なことを理解している。(訓読 の仕方・漢詩の形式・押韻) ・歴史的背景を知り,漢詩の特徴やリズムを生かして 朗読して漢詩を読み,その世界に親しんでいる。 3・2・1 3 漢詩「春暁」「絶句」「静夜の思ひ」を読む。 ・描写の効果,登場人物の言動の意味等をとらえ,内 容を理解している。 ・作品に表れているものの見方や考え方について,自 分の知識や経験と関連付けて考え,自分の意見をも ち,交流して深めている。 3・2・1 4 漢詩「春望」を読む。 ・描写の効果,登場人物の言動の意味等をとらえ, 「春 望」の内容を理解している。 ・作品に表れているものの見方や考え方について,自 分の知識や経験と関連付けて考え,自分の意見をも ち,交流して深めている。 3・2・1 ふりかえり 漢詩 「読みの観点」 「単元を貫く言語活動」 漢詩 ワークシート 尽 【主題】惜別の情 漢詩「読みの観点」 李白 悲しみは尽きない。 長江の流れのように また一人だ。 【心情】友は行ってしまった。 構成 (七言絶句) 表現 (倒置法) 視点 ( 李白 ) 人物 故人(孟浩然)→尽→長江 主題 (惜別の情) 描写 16 教科研究国語 No.194 《漢詩 ワークシート》(解答例は太字) 李白の伝えたいこと(主題)は何か。 故人西辞黄鶴楼 煙花三月下揚州 孤帆遠影碧空尽 孤帆 惟見 惟見長江天際流 長江 李白 友を送る悲しみ 黄鶴楼 寂しさ 孤独 黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る 目標 詩歌の味わい 〜今に向かって〜 17