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Web 掲示板のコミュニケーションにおけるメンバーの役割
日本社会心理学会第 42 回大会(2001 年 10 月 13 日) 論文集 pp.550-551. Web 掲示板のコミュニケーションにおけるメンバーの役割 山下 清美(Yamashita Kiyomi) ・ 源津 善崇(Gentsu Yoshitaka) (専修大学ネットワーク情報学部) ・ ((株)ドゥ・ハウス) キーワード:ネットワーク・コミュニケーション、Web 掲示板、コミュニティ (問題) 電子掲示板は、電子ネットワーク上のコミュニテ て発言者の役割に変化があるかどうかに注目した。 ィを作り出す中心的なツールである。ネットワー ク・コミュニケーションの初期から、アカデミック ネットワークに起源を持つ Net News やパソコン通信 (方法) 分析の対象としたのは、JAVA に関する技術的な質 問やそれに対する回答を行う Web 掲示板である。こ の電子会議室などを中心に発達した。現在では、そ うした異なる文化を引き継ぎつつ、さらに自由度の の掲示板を選んだ理由は、扱うテーマが比較的明確 であること、個人が管理する掲示板としては活発だ 高いコミュニティ形成のツールとして、インターネ ットの WWW 上に数多く存在する Web 掲示板が、掲示 が規模が大きすぎないこと、オープンで参加に自由 度があること、などである。2000 年 12 月 20 日の時 板コミュニケーションの中心となっている。 電子掲示板が活発なコミュニケーションの場にな 点での最新の発言501件(通算で 1900 番から 2400 番 まで)を分析対象発言とした。さらにこの分析対象発 るためには、掲示板の目的やテーマ、掲示板の形式 もなど、さまざまな要素が絡む。しかし電子掲示板 言の中で発言数の多い上位 15 名を、分析対象者とし た。また、これとは別に、掲示板開設当初の 100 件 がコミュニティとしてうまく機能するためにもっと も重要なのはメンバーである。活発な発言が持続す (1 番から 100 番まで)も、比較のために分析した。 個々の発言について、発言の種類(質問、回答、 るためには、管理者に協力してコミュニティをサポ ートするメンバーや、コミュニティに参加してそこ お礼、その他) 、発言の内容(言語、システム、その 他)、質問と回答については、その難易度(易、普通、 に居着くメンバーの存在が不可欠である。川上ら (1991)は、パソコン通信における電子会議室での コミュニケーションと発言者との関係を分析し、会 難)を分類した。また発言のツリーの連鎖も分析し た。以上の分析作業は、第二著者が単独で行った。 分類の後、発言数上位 15 名について、発言の種類、 議室にはキー・パーソンが存在するが、テーマやメ ンバーの構成によって、キー・パーソンの占める比 内容、難易度を集計した。 重が異なることを明らかにした。また、会議室のテ ーマによって、発言の種類(質問、応答など)の比 (結果と考察) まず開設当初の 100 件の発言について、発言者ご 率にも違いが見られることも示している。しかしな がら川上らの研究では、発言の種類も含めた発言者 との発言数を見た(表1) 。ひとりで 29 個の発言を 行っているのは管理者である。管理者以外のメンバ の役割の違いまでは検討していない。山下(2001) は、大学入学予定者が、教員と合格者を対象とする ーは、発言数があまり多くないことがわかる。 掲示板で交流を深め、大学入学という人生の大きな 転機での不安を乗り越えていく様子を観察した。し かしながらこれは小規模で、特殊な事例である。 本研究では、コンピュータ関連の質問を受け付け るオープンな Web 掲示板を対象にして、個々の発言 の種類と内容に関する内容分析を行い、そこでの発 言数の多いメンバーに注目し、掲示板での活発なコ ミュニケーションを支えるメンバーの役割に焦点を あてて検討した。特に主要なメンバー間に役割の違 いがあるか、またコミュニケーションの進行に伴っ 表1 開設当初の発言数 一人当たり発言数 29 6 5 4 3 2 1 発言者数 1 1 1 4 1 4 19 日本社会心理学会第 42 回大会(2001 年 10 月 13 日) 論文集 pp.550-551. 次に分析対象発言の 501 件について、発言者をふ たつのタイプに分けて、発言数と発言の種類を見た。 表2は、発言数上位 15 名のうち、当該掲示板の管理 者(発言者 A)およびその周辺のメンバー5 名(これら を主要メンバーと呼ぶことにする)の、発言の種類 ごとの発言数である。これに対し表3は、それ以外 のメンバー(一般参加者と呼ぶことにする)の、発 言の種類ごとの発言数である。 表2主要メンバーの発言の種類 発言者 A B C D E F 質問 3 0 0 1 0 0 回答 37 41 21 17 6 6 その他 6 4 0 0 1 0 合計 46 45 21 18 7 6 o 質問 8 12 6 6 4 8 3 10 7 回答 5 0 2 3 7 1 3 0 0 その他 2 2 5 3 1 3 5 1 0 回答 言語 易 普 難 システム 易 普 難 A ○ ○ ○ ○ ○ ○ B C D E F ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 最後に、一般参加者の質問と回答の内容と難易度 について整理した(表5) 。矢印(↓)は、後半にな って出てきた発言を示している。g、l、oは最初 易しい質問をしていたが後半から普通レベルの質問 をするようになったことがわかる。また、g、i, lは、最初は質問だけしていたが、後半から回答も するようになったことがわかる。こうしたメンバー は、最初質問者としてコミュニティに入り、学習す ることで徐々にメンバーとして定着し、次第に回答 者という主要メンバーに近い役割を担うように変化 表3 一般参加者の発言の種類 発言者 g h i j k l m n 表4 主要メンバーの回答パタン 合計 15 14 13 12 12 12 11 11 7 表1に比べて、管理者以外にも、相当数の発言を するメンバーがいるころがわかる。表2と表3のも っとも重要な違いは、主要メンバーの発言が回答に 集中しているのに対し、一般参加者の発言は質問が 中心である点である。一般参加者からの質問を受け 付けて、主要メンバーがそれに回答する、というや していったと考えることができる。 表5 一般参加者の発言パタン g h 質問 言語 易 ○ 普 ↓ ○ 難 ○ シス 易 テム 普 ○ 難 回答 言語 易 ↓ 普 難 シス 易 テム 普 難 i j ○ k l m n ○ ○ ↓ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ↓ ○ ↓ りとりで掲示板が進行していることがわかる。 さらに、主要メンバーの回答の内容と難易度につ 以上のように、電子掲示板でのメンバーが、役割 を分担しつつ、さらにコミュニティの成熟に伴って いて整理した(表4)。○は該当する分類の発言の存 在を示す。表4から、管理者 A は、まんべんなくす 自らの役割を変化させていく様子の一端を、内容分 析によって示すことができた。 べての内容、すべての難易度の質問に回答している が、その他の主要メンバーは、回答の内容や難易度 (注)本研究は、第二著者である源津善崇の、2000 年 にある程度の偏りがあることがあり、回答の役割が 分担されていることがわかる。 度専修大学教養ゼミナール卒業論文の一部に基づく。 o ○ ↓