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受信機の製作∼ワイヤレス・モニタ・システムの実験

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受信機の製作∼ワイヤレス・モニタ・システムの実験
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第 4 部 無線機を作ってみよう
第
3
章
微弱電波によるワイヤレス・データ通信の実験製作
(2)
受信機の製作∼ワイヤレス・モニタ・システムの実験
前章は微弱電波の定義について解説し,315 MHz
の微弱電波を使った送信機の製作として,プリント基
板による方法およびピッチ変換基板を使って製作する
方法を説明しました.その応用事例として,家電製品
などの LED ランプの点灯状態の変化をセンサで検出
して,電波を出す装置の製作について述べました.
本章は受信機の製作です.受信機は信号を受けると
音や光を出すようになっていて,離れていても動作の
状態がわかる便利さと,目や耳が不自由な人の生活を
支援する器具として役立つことを狙います( 図1 ).
図1
送受信機の応用の概念図
微弱電波
点灯状態の変化が
あったとき送信
315MHz
送信機
家電製品など
光
音
振動
受信機
⋮
光センサをランプに取り付ける
3- 1
キーレス・エントリ・システムに使われるMAX1470を使用してASK 変調データを復調する回路を作る
受信モジュールの回路
● 高周波回路は取っつきにくいけれど
身の回りには無線 LAN や携帯電話をはじめとして,
いろいろな電波通信機器があります.送受信機が手軽
に使えるのであれば,いろいろなことをやってみたい
と思っている方も多いでしょう.しかし,自由に出せ
る送信機の出力は電波法で定められる微弱電波の範囲
でなくてはなりませんし,製作するにも高周波ゆえ表
面実装部品を使った基板化が必要となり費用も時間も
かかります.それを克服しようと試みた結果が,前章
の送信機と今回の受信機です.
前章で解説した送信機は送信モジュールがアンテナ
と一体化されていて,正しく組めば出力が微弱電波の
範囲に収まるようにしてあります.その送信機とペア
になるように設計したのが今回解説する受信機です.
受信モジュールにはプリント基板を製作しましたが,
市販のピッチ変換基板と銅板を使って組み立てる方法
についても解説します.この方法は,はんだ付けに自
信のある方でないと一度では成功しないかもしれませ
ん.しかし,基板を起こすより短時間かつ安上がりに
でき,再現性もまずまずです.
● 使用する IC
受信モジュールに使用するのはキーレス・エント
リ・システムや各種リモコン装置に使用されている
100
MAX1470(マキシム)です.中間周波数 10.7 MHz のス
ーパーへテロダイン方式で,ASK の復調回路を内蔵
しています.低電圧(3.0 ∼ 3.6 V)で動作し,シャット
ダウン機能を使えば動作電流を 5.5 mA から 10 μA 程
度まで落とせるなど,電池動作向きに設計されていま
す. 最 適 動 作 周 波 数 は 315 MHz で す が,250 ∼
500 MHz で使えます.
図2 に 内 部 ブ ロ ッ ク 図 を 示 し ま す.XTAL1 と
XTAL2 に接続された水晶発振子による発振周波数は,
PLL
(Phase Locked Loop)
回路により 64 倍の周波数に
なり,ミキサ回路に入ります.ミキサ回路では LNA
(Low Noise Amplifier)により増幅されたアンテナか
らの信号を 10.7 MHz に変換します.変換のための発
振周波数は受信周波数より 10.7 MHz 低く設定し,そ
の 1/64 が PLL 回路を駆動する水晶発振子の周波数と
なります.
MAX1470 のミキサ回路はダブル・バランスト・ミ
キサを 2 個使い,それぞれを 90°位相のずれた信号
(I
と Q)
でスイッチングし,それぞれを再び 90°
ずらして
加えるという方法でイメージ抑圧比 50 dB を得ていま
す.ミキサ出力はインピーダンス330Ωのセラミック・
フィルタ(外付け)に適合します.
セ ラ ミ ッ ク・ フ ィ ル タ を 通 っ た 中 心 周 波 数 10.7
MHz の信号は IFIN1 と IFIN2 に入り,振幅制限増幅器
第 3 章 受信機の製作∼ワイヤレス・モニタ・システムの実験
基礎編
(1)
4 LNASRC
12 17 18
M I XOUT
IF
制限増幅
0°
低雑音増幅
I F I N2
9
I F I N1
8
M I X I N2
3 LNAI N
6
M I X I N1
微弱無線対応の受信 IC MAX1470 の内部ブロック
LNAOUT
図2
Σ
90°
でさら に 増 幅 さ れ ま す. こ の 出 力 は 受 信 信 号 強 度
(Received Signal Strength Indicator;RSSI)を 示 し
ます.受信電力が− 120 dBm 以下のときの出力電圧
は 1.2 V, そ れ 以 上 の 入 力 に 対 し て は 出 力 電 圧 約
15 mV/dB の対数増幅器として動作します.飽和する
のは− 50 dBm 以上の入力で,そのときの出力電圧は
.
約 2 V です( 図3 )
RSSI 信号はフィルタを通してコンパレータ
(図では
データ・スライサと呼んでいる)に入り,H レベルと
L レベルのディジタル信号に復調され,DATAOUT
端子から取り出します.コンパレータの入力はピー
ク・ディテクト回路にも接続されていて,その出力を
コンパレータの反転入力に接続することにより,検出
レベルのコントロールに使うことができます.
● 回路と部品定数
図4 が受信モジュールの回路です.前章で解説し
た送信機には 9.8304 MHz の水晶発振子を使ったので,
送信周波数はその 32 倍の 314.5728 MHz になっていま
振幅制限増幅器の動作特性(帯域幅 350 kHz)
出力[V]
2.0
1.8
1.4
DF
19
26
21
22
す.ミキサにて 10.7 MHz に変換するための発振周波
数 は,314.5728 − 10.7 = 303.8728 MHz と な り, 発 振
子の周波数はその 1/64 の 4.7480125 MHz となります.
水晶発振子を正確な周波数で安定に発振させるには,
並列にコンデンサ(負荷容量)が必要です.最適な容量
が選ばれていないと,発振しなかったり周波数がずれ
て目的の電波をとらえられなかったりします.回路図
の C 4 に,受信 IC の内部容量および基板パターンによ
り生じる浮遊容量を加えた値が発振子の負荷容量にな
ります.図の値(7 pF)は,発振子に負荷容量 12 pF の
ものを使用した場合の値です.発振状態の確認法は後
述します.
LNA の入力に入っている 100 pF は直流阻止用,L 1
はアンテナ入力のインピーダンス・マッチング用です.
MAX1470 の入力部は,L 2 を含めて 1 − 4j というイン
ピーダンス特性(50 Ωに正規化)があります.315 MHz
のとき L 1 を 100 nH にし,寄生インダクタンスとして
10 nH 程度を見込むと虚数部分がごく小さな値になり,
特性インピーダンス 50 Ωの信号源とマッチングがと
れます.
ミ キ サ 回 路 の 入 力 に 入 っ て い る L 3 と C 11,C 16 は,
受信周波数に共振するように定められます.LC 回路
の共振周波数 f は 1/2 π√LC で求められます.ここで,
2.2
1.6
20
OPP
25
ピーク検出
PDOUT
27
100k 100k
データ・
スライサ
DSP
シャット
ダウン
DSN
28
フィルタ
DATAOUT
AGND
1
図3
RSS I
I Qダウンコンバータ
PWRDN
5, 10
DGND 水晶発振子
ドライバ
XTAL2
13
I
PLL
AVDD
XTAL1
2, 7
X64 Q
DVDD
実践編
14
この範囲で対数増幅器
として動作する
1.2
内部ノイズ
1.0
−140 −120 −100 −80 −60 −40
平均受信電力[dBm]
−20
0
f を 315 MHz,L を 27 nH として C を計算すると,約
9.46 pF になります.
実際にはパターンのもつインダクタンスと浮遊容量
などを考慮しなければならず,取り付けるC の値はよ
り小さくなります.トリマ・コンデンサで試したとこ
ろ最適値は 3.2 pF 近辺でした.現実にはインダクタの
誤差
(± 2 %)もセラミック・コンデンサの誤差
(5 pF
以下の場合一般用は± 0.25 pF)も避けられませんから,
C 11(3 pF)だけにするか C 16(0.5 pF)も付け加えるかは,
3-1 受信モジュールの回路
101
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