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Page 1 活性に欠かせない官 ケージド化合物による生理機能の 『 ()

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Page 1 活性に欠かせない官 ケージド化合物による生理機能の 『 ()
活性 に欠かせない官能基
Ⅷ
'
ケージ ド化 合 物 による生理機能 の
\、
_///
分析
生理活性物質
︱︱︱ユ▼
ケージング
(官 能基 の保護)
光分解性保護基
“
不活性 "
ケー ジ ド化合物
1
は じ め に
2
ケ ー ジ ド化 合 物
ケー ジ ド化合物 とい うと,読 者 の 中 にはケー ジ化 合物
(cage compound,か ご形化合 物 )を 思 い浮 か べ る方 が
いるか もしれな いが ,全 く別 の もので ある。 ケ ー ジ ド化
合 物 とは ,生 理活 性 物 質 に光 分解 性保 護基 を結 合 させ
て ,一 時 的 にそ の 活 性 を失 わ せ た 化 合 物 の こ とで あ
る〕。 この活性 を失 った化合物 は ,最 速 の媒体 で ある光
の照射 によ り,特 定 の細胞 内な どある決 まった位置で好
み の時 間 に生理活性 物質 を高濃度で産 生す る ことがで き
るので あ る (図 1)。 ケ ー ジ ド化 合物 として 最 初 に開発
され た の は ,光 分 解 性 保 護 基 に よ り不 活 性 化 され た
ATPの ケー ジ ドATP(caged ATP)で あ り, この とき
初 めて不活性化 された物質 に対 して “
ケー ジ ド"と い う
言葉が使われて いるの。
3
光 によ る生 理 機 能 の制 御
生理 的条件 を再現 し細胞機 能 を制御す るため には,生
理的環境 を模倣 した刺激 が必要 とな る。 生理的な刺激 と
は,高 い空間分解能 をもち,刺 激 が入 るタイ ミング と時
間 を規定 で き ものでな ければ な らな いう。光 で 誘起 され
Analysis of Physiology by Caged Compounds
ぶんせ き
2010 6
増
ビC―
図
1
ケ ージ ド化合物の作用機構
光反応
本 誌 2009年 9月 号 で 〔
特 集 〕「バ イ オイ メ ー ジ ング
技術 の最先端Jと して紹介 されたよ うに,近 年 ,細 胞 あ
るいは生物個体 レベ ル にお ける分子 ,イ オ ン等 の分布及
びそ の動態 を画像解 析す る “
バ イ オイ メー ジ ング技術 "
は,疾 病 の解 明,あ るいは創薬 といつた ライ フサイエ ン
ス分野 にお ける重要 な技術 として注 目と関心 を集 めて い
る。。 またバイ オイ メー ジング を行 う際 には,生 きた細
胞 ある いは個体 内で,で きるだ け生理的条件 を再現 した
や り方 で細胞機能 を制御 し,そ の結果起 こる現象 を リア
ル タイムで分析す る ことがで きれば ,生 命現象 の理 解 は
飛躍的 に深 まるυ。
今 回紹介 す る “ケー ジ ド化 合物 (caged compound)"
は,光 で細胞 の生理的条件 を再現 し,細 胞機能 を制御す
る ことが可能な化合物 である。 よって ,細 胞 を見 るバ イ
オ イ メー ジ ング 技 術 の威 力 を効 果 的 に発揮 す るた め に
は,ケ ー ジ ド化合物 との併用 が不可 欠めで あ り,ケ ー ジ
ド化 合物 とバイ オイ メー ジング技術 は相補 的な関係 にあ
る と言 える。。
帥
…
OJ…
1⇒ 意
項間交差
10-8∼ 1011秒
吸収
∼ 1015秒
りん光
蛍光
10-6ヘ ン
10-9f1/N
10_10-3秒
図 2 吸収から発光・光反応までの過程
る化学反応 (光 反応 )は , これ に適 して いる。光 吸収 に
よ る励起状態 の生 成 は非常 に速 く (∼ 1015秒 ),そ の後
の過程 が速 ければ ,マ イク ロ秒以下 で化学反応 が起 こる
(図 2)。 つ ま り,光 反応 は,高 い空 間分解 能 と時間分解
能 を有 して いるので ある。光分解性保護基 によって生理
活性 を不活性化 されたケー ジ ド化合物 を,生 きた細胞や
組織 に加 えてお けば ,光 を照射 した瞬間 に,光 を当てた
位置 で生理活性物 質 が高濃度 とな り生理的な環境 によ り
近 い形 で 細 胞 に刺 激 を与 え る こ とがで き る。 このよ う
に,ケ ー ジ ド化 合物 を用 い る ことで光 による生理 機能 の
市1御 が可能 とな り,そ の応用範 囲 とよ リー層 の展 開 の可
能性が広 が りつつ あるつ。
4
光分解性保護基
Bhc基
ケー ジ ド化合物 の 開発 には,生 理活 1■ 物質 の活性 を一
時的 に失 わせ るための光分解性保護基が必要 とな る。東
邦大学 の古 田寿 昭教授 と 2008年 ノー ベ ル化 学賞受賞者
で あるカ リフ ォル ニ ア大学 の R Y Tsien教 授 の研究 グ
ループは,優 れた光 分解性保護基 で ある Bhc(6-bromo
-7-hydroxycoumarin-4-ylmethyl)基 を開発 しい,多
くのケ ー ジ ド化合物 の合成 を行 って いる (図 3)。 Bhc―
ケー ジ ド化 合 物 の特徴 は ,① 光 反応 の効 率 が 高 い,②
Bhc基 でケー ジング した BhcmOc― Glu(図 3)を 用 いて
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零
277』 課 」
Jl多 Jttg讐 だ
Irを 例
;夢 で
し
酸 放 出 に よ る 化 学 伝 達 を ,ケ ー ジ ド化 合 物 BhcmOc―
Gluを 用 いて 光 照 射 で 置 き換 えた こ とにな る。 また , こ
の 実 験 で は ,2光 子 励 起 によ り,密 集 して 密 着 した細 胞
の 中 か ら,1細 胞 の み を BhcmOc― Gluの 光 照 射 に よ り
刺 激 して い る。
BhcmoGGlu
光分解
r
。
B H
恥 卿
η
Glu
図3
Bhc基 を用 いたケージ ド化合物の
'1
暗所 で の安 定性 が 高 い ,02光 子 励 起 (後 述 )の 効 率
が実用 レベ ルで あ る ことが上 げ られ るわ。 また ,光 照射
の波 長 は ,細 胞 へ の ダ メー ジを考 慮す る と,350 nm以
上 の波長 が望 ま しいが ,Bhc基 の 吸収極大 は 375 nmで
あ り,350 nmで の モ ル 吸 光 係 数 (ε )も 15000 dm3
mol lcm l程 度 で あ り細胞実験 に適 している。
なお ,mRNA(メ ッセ ンジ ャー RNA)を ケー ジングで
きる Bhc― diazo(6-Bromo-4-diazomethyl-7-hydroxy―
coumarin)は 遺伝 子研 究 用試 薬 と して 和光 純 薬 工 業 か
ら市販 されてお り,購 入す る ことがで きる。
5 2光
最 近 の 研 究 で は ,PNA(ペ プ チ ド核 酸 )を ケ ー ジ ン
グ した ケ ー ジ ド PNAの 開発 に も成 功 して い る9。 PNA
は ,特 定 の遺 伝 子 を発 現 させ た り,逆 に発 現 を阻害 した
りす る こ とので き る DNAに 似 た 人 工 分 子 で あ る。 そ の
た め ,ケ ー ジ ド PNAは ,生 体 内 の 特 定 の 部 位 で 特 定 の
遺 伝 子 を 自由 にス イ ッチ ングす る技 術 と して 注 目され て
い る。
7お
わ
り に
最 近 ,“ ケ ミ カル バ イ オ ロ ジー "と い う言 葉 を よ く聞
くよ う にな った。 バ イ オ イ メー ジ ング 技 術 はそ の 中心 的
な もので あ り,化 学 的手 法 によ って 生命科 学 の謎 を解 き
明か す ことが 求 め られ て い る。 個 々 の 生体 物 質 の生 理 機
能 分 析 をす るだ けで は な く,生 き た状態 の 生体 で ,生 体
物 質 が , “いつ ", “ど こで ", “どの よ う に"作 用 して い
るか を明 らか とす るた め には ,ケ ー ジ ド化 合 物 の 利 用 は
不 可 欠 で あ る。 ケ ー ジ ド化 合 物 の 開発研 究 には 多 くの 日
本 人研 究 者 が か か わ って お り,そ の トップ ラ ンナ ー も 日
本 人研 究者 と言 え る。 今 後 ,バ イ オ イ メー ジ ング 技術 と
一 体 とな って ,更 に 発展 して い く こ とを期 待 した い。
文
献
1)「 ぶんせ きJ編 集委員会 :ぶ んせき,2009,470
子励 起
ケ ー ジ ド化 合 物 の有 用 性 を更 に高 め る もの に 2光 子
励起 が ある。 1個 の分子 が 1個 の光子 を吸収す る一般 の
光励起 に対 し,光 強度 の強 い レーザ ー を用 いる と,分 子
1個 が 2個 以 上 の光子 を吸収 して励起 され る過程 ,多 光
子励起 が 生 じる。 この とき,光 子 が 2個 の場合 を,2光
子励起 とい う。 2光 子励起 を使 うと,通 常 の 2倍 の波長
の光 で 同 じ分子 を励起で きる ことにな るため,紫 外 か ら
可視領域 に吸収 をもつケー ジ ド化合物や蛍光性分子 は
近 赤 外 か ら赤外 のパ ル ス光 で 励 起 す る ことが 可能 にな
るa。 2光 子 励起 を用 い た光 分解 や蛍光 観 察 には ,2光
子励起 レーザ ー 走査顕微 鏡 (TPLSM)が 用 い られ る。
2光 子励起 を用 い る利点 としては,細 胞 の光損傷 の危 険
が減 る ことや ,組 織等 による励起光 の散乱が小 さ く深部
まで 励起光が届 くな ど幾つか あるが,最 大 の利点 は,通
常 の 1光 子 励起 で は深 さ方 向 に高 い空 間分解 能 を得 る
のが難 しく,励 起領域が ある程度広 範 囲 にわた って しま
うの に対 し,2光 子励起 では,励 起 され るのは焦点面近
傍 の分子 に限 られ る ことである。 つ ま り,ケ ー ジ ド化合
物 の 2光 子 励起 は ,細 胞 内 の極 微 小領 域 で の生理 活 性
物質 の 高濃度化 を可能 にす る。
,
6
,
培養神経細胞 中で神経伝達 の 素過程 を光照 射 で 再現 し
そ の結果 生 じる膜電位 の変化 をモ ニ ター す る ことで,機
ケ ー ジ ド化 合 物 を 用 いた 研 究 例
2)古 田寿昭 :バ イオインダス トリー,23(7),58(2006)
3)古 田寿昭 :“ 分子イメージング",化 学同人編集部編,p32
(2007),(化 学同人)
分子イ メージング",化 学同人編集部編,p43
(2007),(化 学同人)
5)a)岩 村道子 :“ 糖鎖分子 の設計と生理機能", 日本化学会編
4)中 西 淳
:“
,
p137(2001),(学 会出版セ ンター)ib)J M Nerbonne:
Юι
C″ ″ 0′ ル Aセ ″
あ′,1996,379;c)I
Wilher,B Willner:
′A″ ′
滋 ″ο
πs rlr P力 ο
力′
″滋 ′Sω グ
わι
た力
`s",H Mor―
“ 34 (1993),(」 ohn lviley&SOns,Inc)
rison ed,p
6)J H Kaplan,B Forbush,」 F Hoffman:Bあ ε
力θ
77i7_3″ ッ
,17,
“
Bあ わg′
1929 (1978)
7)“ Zン πα777グ εSr77グ グ
0グ ″Bわ lo即 P/1ο r/1ゎ れ ctt P力 οゎsltグ た力ω
α″ご Cage″ Bあ″οルο
zル s",Edited by Ⅳ
l Goeldner,R S
“
Givens,(2005),(John wiley&Sons,Inc)
8)T Furuta,SS― H Ⅵrang,J L Dantzker,Tン I Dore,Ⅵ r」
Bybee,E D/1 Callaway,W Denk,R Y Tsien:Poε
roフ ォ
i
五 ″ Sと プび34,96,1193(1999)
9)古“田寿 昭 ,大 室純子 , 中田真紀子 佐京 隼 :日 本化学会
第 89春 季年会講演予稿集 CD― ROM, lJ5-16(2009)
,
0-― ――‐
―――
川上
淳 (Jun KAWAKAMI)
弘 前 大 学 大 学 院 理 工 学 研 究 科 (〒 036-
8561青 森 県 弘 前 市 文 京 町 3)。 東 邦 大 学
大学 院理学研 究科博士 課程修 了。 博士 (理
学 )。 ≪現 在 の研 究 テ ー マ ≫蛍光 性化 学 セ
ケー ジ ド化合物 を用 いた実際 の研 究例 を幾つか紹介す
る。
前 述 の 古 田教 授 らは ,神 経 伝 達 物 質 の グ ル タ ミ ン 酸 を
2∂ ∂
ンサー の 合成 と応用。 ≪趣 味≫家族旅行 と
愛犬 との散歩。
E― mail:jun@cc hirosaki― u acjp
ぶんせ き
2010 6
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