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建 設 技 術 電力中央研究所報告 報告書番号: N 0 8 0 0 4 詳細な海底地殻変動解析による津波波源域評 価手法の提案(その4) −1993 年北海道南西沖地震津波を再現する断層モデル− 背 景 日本は世界有数の津波被災国であり,東海・東南海・南海地震に伴うものをはじ め,沿岸域における津波災害の危険性は高い.津波被害の減災には,津波の数値解 析による津波高さや浸水範囲などの事前想定が有効である.津波解析では,断層モ デルの設定が重要となることから,これまでに実測記録(沿岸の津波高や検潮記録) が存在する場合はこれらを検証データとして,断層モデルを修正し,実測記録と整 合性の高い断層モデルが提案されていた.しかし,当初の地震学的な断層モデルか ら断層形状が変わる等,本質的に異なるケースが多い. 当所では,地震と津波を発生させる断層モデルは同一であるという観点から, 1993 年北海道南西沖地震津波を対象に,津波評価手法の改良を試みてきた.この中 で,海底地震観測による余震分布に基づいて 6 つのセグメントからなる断層形状を 設定し,さらに 3 次元有限要素法による地殻変動解析により海底面変動分布を評価 する手法を提案している. 目 的 1993 年北海道南西沖地震津波について,実測された津波高に調和的となる断層モ デルを明らかにする. 主な成果 (1) 地殻変動解析手法の改良 断層面を挟んだ上盤と下盤に断層のすべり量をそれぞれ分配し,すべり角も任意 に設定できるように 3 次元有限要素法による地殻変動解析手法を改良した(図 1). パラメタースタディの結果,すべり量分配率は海底面の最大隆起量に,すべり角は そのピーク位置にそれぞれ影響があることを明らかにした. (2) 1993 年の津波実測値に最も調和的となる断層モデル 既報で明らかにされた 6 つの断層面を有限要素モデルに組み込んで個別に地殻変 動解析を行い,それらの海底面変動分布を足し合わせて津波計算に入力した.この とき,断層形状やすべり量は固定した上で,すべり量分配率とすべり角のみ可変と し,計算される津波高の分布を実測値と比較することで最適な断層パラメターを探 索した.この結果,奥尻島西岸において南部の津波高が 15m 以上,北部の津波高が 10m 以下となる実測結果と整合性の高い断層モデルを得た.このモデルは,余震分 布に基づく断層形状や地震モーメントを反映し,かつ津波を説明しうるものである. 今後の展開 本研究で提案した 3 次元有限要素法を用いた津波評価手法を津波の事前想定に適 用する.これに必要とされるパラメター設定法について検討を加える. 図 1 有限要素法モデルの概要.断層を含む直方体地殻構造をモデル化, 断層の上下盤にそれぞれ変位とすべり角を与えることが可能となった. 研究報告 N08004 関連研究報告書 担当者 連 絡 先 [非売品・不許複製] キーワード:津波,断層モデル,有限要素法,数値計算,海底地殻変動 「詳細な海底地殻変動解析による津波波源評価手法の提案(その2)−1993年北 海道南西沖地震震源域の海底地殻活動−」U99077(2000) 「詳細な海底地殻変動解析による津波波源評価手法の提案(その3)−1993年北 海道南西沖地震の津波実測値による検証−」U02013(2002) 松山 昌史(地球工学研究所 流体科学領域) (財)電力中央研究所 地球工学研究所 Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected] c財団法人電力中央研究所 平成20年10月 08−002