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焼き鳥店で発生したカンピロバクター食中毒事例

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焼き鳥店で発生したカンピロバクター食中毒事例
焼 き鳥店 で 発 生 した カ ン ピ田バ クタ ー 食 中毒 事例
給 岡 白 美子 丸 住 美 都 里
章
1 森
田 美 加 藤 井 幸 三
**2
*現 市民病院
**現 感染症対策課
1.は じめ に
カンピロバ クター は 1982年食 中毒の原因物質 とな り、
厚 生労働省 の食中毒統計 では 1998年か らは、
1)古
カンピロバ クタ千食中毒の原因食品 としては調理不
年間平均 500事例、患者数約 2,000名である
十分な鶏 肉の摂取 が多 く報告 されてお り、加熱不足 の鶏肉が食 中毒 の原因食品 として重視 されてい
2)。
平成 1 7 年 度に当市で発生 した食 中毒 も加熱 していない生鶏肉が原因 と推定 された食 中毒事例 で
あ り、患者か ら
び α材
(C.j)及
( C . c ) が検出されたが、今回 この食 中毒の概要を報告す る。
2,食 中毒発生概要
平成 17年 12月 19日 市内の医療機 関か ら熊本市保健所へ 同一職場 の 14名が 12月 14日 に飲食店
で会食 しその うち 3名 が腹痛、下痢な どの症状 を呈 して来院 した と届出があつた。調査 の概要は以
下の とお りであつた。
①発生年月日 平成 17年 12月 16日
②摂食者数
14名
③患者数
12名
④発症率
1 2 / 1 4 ×1 0 0
⑤原因食品
鳥刺 し (推定)(も も肉たた き、むね肉湯 引 き、 ささみ湯 引き、 レバ ー 刺 し、
85.70/0
砂ず り刺 し)
⑥原因物質
、αα″
⑦平均潜伏時間 64.7時 間
③発生場所
飲食店
症状別患者数 を表 1に 、患者発 生状況を図 1に 示す。
表 1症 状別患者数
症状
愚者 数 (人)
発現 率 ( 0 / 0 )
発現率 (%)=症
腹痛
下痢
発熱
嘔気
9
12
10
75
100
83
嘔 吐
5
42
状別患者数/患者数 (12名)× 100 (総
-89-
1 黒
寒
21
17
患者数 12名 )
1 頭
8
67
痛
5
42
人
■患者数
8
■■
■■
D∼ 10 1B∼ 20 20∼ 3□ 30∼ 40 40∼ 50 5□∼ 80 BO∼ 78 78∼ B□ B□ ∼98 日8∼100
潜伏時間
図 1 患 者発 生 状況
3.材 料 お よび方法
(1)検 査材料
食品
5検
ふ き取 り 8検
体 (鳥もも利身 、鳥む ね湯 引き、鳥 ささみ湯 引き、鳥 レバ ー 刺身 、鳥砂ず り刺身)
体
有症者便 9検 体
従事者便 5検 体
‐
(〕 検査方法
ア 、食 中毒起因菌 の分離 ・同定
食 中毒起 因菌 の検 査 を常法 に よ り行 つ た。 分離 され たカ ン ピロバ クター の C,jと C.cの 同定
につい ては 、馬尿酸力日
水分解試験 に加 えて 、PCR法 による検 査 を行 つた。
イ、血清型
C.jの Penner血 清型 別 はデ ンカ生 研 の penner抗 体測 定 キ ッ トで行 った。 また 、C.jの Llor
血 清型 は熊本 県保健環境科学研 究所 に 、C.cの 血 清型 は東京 都健康安 全研 究 セ ン タTに 検 査 を依
頼 した。
ウ 薬 剤感 受性試験
血 清型実施 時 に熊本県保健環 境科学研 究所 に検 査 を依頼 した。実施項 目は、
薬剤感受性試験 は 、
ノル フ ロキサ シ ン (NFLX)、オ フロキサ シン (OFLX)、シプ ロ フ ロキサ シ ン (CPFX)、ナ リジキシ
ン酸 (NA)、エ リス ロマ シシ ン (EM)、テ トラサイ ク リン (TC)で あ つた。
4.結
果
今 回 の事例 では 、患者 が 喫食 した食 品 の残 品が残 つてい なか ったた め、 当該店 が 日常仕 入れ て い
る別 ロ ッ トの生 鶏 肉等 の 5検 体 につい て検 査 を行 つ た。そ の結果 、鳥 レバ ー 刺 し 1検 体 か ら C.jと Cc c
の 両方 が検 出 され た。 有症者便 につ いて は 、9検 体 中 5検 体 か ら C.jが 検 出 され 、4検 体 か ら C.cが
検 出 され た。 そ の 内 1検 体 か らは C.jと C.cの 両方 が検 出 され た。従事者便 につい ては 、5検 体 中 2
- 9 0 -
検体か ら C.jが 検出され た (表2)。
表 2カ ンピロバ クター検 出結果
C.j l Ccc
*(1)は 両方 が検 出され た数
検 出 され た 菌株 の血 清 型 は、C.jが 4種 類 、Co cが2種 類 に 分 類 され た。 C.clよ有 症 者 便 の 4株 は
PennerY、Lipr28型で全 て同 一 の血 清型 であったが 、食 品か ら検 出 され た株 は 、Penner UT、Lior57
型 で あ った (表 3)。
薬剤感受性試験 につ い ては 、
検 出 され た Ci c5株(食品 1、有症者 4株 )全 てがキ ノ ロン系及び ニ ュー
キ ノ ロン系 (NA、NFLX、OFLX,CPFX、
) に 耐″
性を示 した。 C.j8株 (食品 1、 有症者 5、 従 事者 2株 )
につ い て は 、TCに 耐性 を持 つ 株 が 3株 、 キ ノ ロン系及 び ニ ュー キ ノ ロン系 に耐性 を持 つ 株 が 1株 、
耐性 の な い ものが 4株 であった (表 3)。
表 3血 清 型別 及 び感 受性 試 験 結果
菌名
其日
m
︵
C.j
C.c
C.j
血清型別
Penner
Lior
楽 Fll懸受 性 試 験 斉 呆
NFLX
OFLX
CPFX
NA
EM
TC
S
S
R
R
S
S
有症者便
L
UT
S
S
UT
57
R
R
D
UT
S
S
S
S
S
R
L
UT
S
S
S
S
S
S
C
UT
R
R
R
R
S
S
F,L
UT
S
S
S
S
S
S
L
UT
S
S
S
S
S
S
R
R
R
R
S
S
R
R
R
R
S
S
R
R
R
R
S
S
128
R
R
R
R
S
S
L
UT
S
S
S
S
S
R
L
UT
S
S
S
S
S
S
S
!
R
菌株
出来
!
8
六ソγ
ly■
28
C.c
従事 者 便
β
J
C.ij : :3,sdu
ゴ
て
ガ
cec:α θ
R:薬 剤 耐性
Si栗 剤 感 受性
- 9 1 -
5 . 考察
疫 学調査 の結果 、患者 グル ー プの共 通食 が原 因施設 とな つ た飲食店 だ けで あ り、喫食 状況調査 の
疫 学統計 に よ り原 因食 として鳥刺 しが強 く疑 われ たた め、鳥刺 しが原 因食 (推定)の 食 中毒 と断定
され た。
今 回 の食 中毒事例 で は、原 因菌 と し1てC.jと C.cが 検 出 され た。 日本 にお け る食 中毒事例 で C.cが
報告 され るこ とは稀 であ り、熊本市 では 1982年以降、 1995年に SRVと C.cの 混合感染 に よる食 中毒
力
様 事例 が発 生 した 1例 の み で あ つ た。 C.jと C.cの 鑑別 検 査 は、従 来、馬尿 酸加 水分解試 験 の み
で判 定 していたた め、 当該試 験 が 陰性 を示す C.c!は陽性 を示す C.jと 混合 して検 出 され た場合 陽性
と判 定 され、 これ まで 分離 され な な つ た可能性 もあ る。 しか し今 回は、馬尿 酸加 水分解試 験 で C.c
と判 定 された検体 もあ つたが 、PCR法 を併用 し、α jと C.cを 検 出で きた ことか ら、カ ン ピロバ クター
の 同定 には PCR法 が有効 で あるこ とがわかった。
また、カ ン ピロバ クター 食 中毒 では 、同一 事例 の 患者 か ら複数 の血 清型 の 菌 が 分離 され る こ とが
3)、
知 られ てお り
本事例 で も患者 出来株 の血 清型 は C.jが 4種 類 、C.cが 1種 類 に分類 され た。
現在 、 カ ンピロバ クター の ニ ュー キ ノ ロン剤 耐性 菌 が 問題 にな って お り、高橋 らの調査 で は分離株
の 26.5%が 耐性株 で あ っ た │)と報告 され てい るが、今 回 の薬剤 耐性 のパ ター ン は、6剤 全 て感 受性
の株 、TC耐 性 の株 、NFLX、OFLX、CPFX、NAの 4種 類 に耐性 の株 、 の 3パ タィ ン に分類 され 、 ニ ュー
キ ノ ロ ン剤 耐性株 の割合 は、C.jが 全 分離株 8株 中 1株 (12.5%)で あ るの に対 し、C.cは 5株 中 5
株 (100%)と 高率 に認 め られた。
・
一
有症者 由来 C.c株 は 、血 清型 お よび 薬剤 耐性 パ ター ンが 同 じで あ る こ とか ら、 同 株 で あ る こ とが
示唆 され た。 また血清型 の 違 う食 品 出来 Co c株もニ ュー キ ノ ロ ン剤 耐性株 で あ るこ とか ら、 同 じ農
場 由来 とも考 え られ たが 、 さか のぼ り調査 に よる農場 の汚染状況 は調査で きな か つた。
今 回 の食 中毒事例 で も示 され た よ うに、鶏 の レバ ー 刺 し、砂ず り刺 しや 鶏 肉 を半生 の状 態 で食 す る
こ とはカ ンピ ロバ クター に よる感 染 を受 け る リス クが高 い こ とか ら、飲食 店や家庭 で 鶏 肉 を生 で食
す る こ とな く十分 な加 熱調理 が必 要 で あ るこ とを指導、 広 報す る こ とがカ ン ピロバ クター に よる食
中毒予防に必要不可欠 であ る と考 え られた。
6 = 謝辞
当食 中毒 で分離 され た C.j、C.cの 血 清型別及 び感 受性試験 を行 つていただ きま した 、東京都健 康
安全研 究 セ ン ター 、横 山先 生 、熊本県保健環境科学研 究所 、人 尋先生 に深 く感謝 い た します 。
参考文献
1)厚 生労働省 HPよ り食 中毒統計
2)裕 岡 由 美子 ,他 :平成 7年 度熊本市 で発 生 した 2件 の 下痢症 ウイ ル ス に よる集 団食 中毒様 事例 ,
熊本 市環境総合研 究所報 ,3,31-33(1995)
3)伊 藤 武 ,他 :1979∼ 1981年 間 に東京都 内で発生 した Campylobacter.j6juniによる 15事 例 の
集 団下痢症 に関す る調査,感 染症誌 ,57,576-586(1983)
4)高 橋 正 樹 ,他 :カ ン ピロバ クター感染症 ,IDWR
5)厚 生 労働科学研 究 (食品 の安 心 ・安全確保推進事業)「食 中毒菌 の薬剤 耐″
性に関す る疫 学的 ・遺
伝学 的研 究」平成 15∼ 17年 度報告
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