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片側性の眼瞼浮腫を呈したヒナの一症例

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片側性の眼瞼浮腫を呈したヒナの一症例
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片側性の眼瞼浮腫を呈したヒナの一症例
鳥取県西部家保
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○中口真美子
植松 亜紀子
はじめに
管内のブロイラー農場で、眼瞼の浮腫や目の白濁が見られ、淘汰鶏が増加していると
いう連絡があり病性鑑定を行った。
2
概要
(1)発生農場
当 該 農 場 は 22万 羽 規 模 の ウ ィ ン ド レ ス 鶏 舎 で 、 鶏 舎 ご と に 順 次 入 雛 ・ 出 荷 が 行 わ れ て
いる 。 ヒ ナ は 外 部 ま た は 社内 系 列 孵 卵 場 よ り 供 給さ れ て い る 。 発 生 の あ った 2棟 の鶏 舎 は
7,800羽規模平屋建てでほぼ同じ構造をしている。
(2)発生状況
同時期に入雛のあった2鶏舎で7日齢ごろより活力
の低下、眼瞼の浮腫、目の白濁が見られた。死鶏はそ
れ ぞ れ 1日 3 羽 以 下 だ が 、 淘 汰 鶏 が 増 加 し て い た 。 入
雛したヒナは外部より導入したものであった。当農場
の他の鶏舎や、導入元の他の農場へ出荷されたヒナに
問題はなかった。
(3)病性鑑定
①肉眼的所見
ヒ ナ は 13日 齢 で 、 活 力 の 低 下 、 顔 面 の 浮 腫 、 眼 瞼 浮
腫、角膜の白濁が見られ、病変は左右どちらかの 一
方 に に 強 く 表 れ て い た ( 図 - 1 )。 全 体 的 に 発 育 不 良
で、一部の鶏で肺の鬱血水腫と脾腫が見られたが(2
羽 /7 羽 )、 眼 の 周 辺 の 症 状 以 外 、 外 貌 、 内 臓 と も に 著
変は認められなかった。病変のあった眼の周囲は眼瞼
浮腫や角膜の白濁、眼球炎が見られた(図-2)。
②細菌学的検査
好 気 条 件 下 で D H L 培 地及 び 10%卵黄 液 加 Y M 食 塩 加 培 地を 、 微 好 気的 条 件下 で 5%羊 血
液 寒 天 培 地 を 用 い て 、 肝 臓 、 心 臓 お よ び 眼 球 ま た は 眼 瞼 皮 下 ス ワ ブ を 24時 間 培 養 し た 。
細菌培養の結果、眼球または眼瞼皮下よりほぼ純培養的に細菌が多数検出された(6/6羽)。
肝臓 、 心臓 か らは 優 位菌 は 分離 さ れな か った 。 病性 鑑 定室 に より 、 分離菌 は緑 膿菌
udomonas aeruginosa
Pse
Ⅰ型と同定された。 分 離 菌 に つ い て は 、 薬剤 デ ィ ス ク を 用 い て
薬剤感受性試験を行った。
薬 剤感受性: NFLX( ノルフロキサシン)、OFLX( オフロキサシン) が(++)。 ST合 剤、ERFX( エンフロキサシン)
が(+) 。AMPC( アモキシシリン) には(-) 耐性だった。
③血清学的検査
ND、IB、IBDについて抗体検査を行ったが異常は認められなかった。
(4)診断と対策
病性鑑定のの結果、症状の見られた眼の周辺以外から細菌は分離されておらず、他に
特に異常は見られないことから、緑膿菌による感染症と判断した。農場へは病性鑑定の
結 果 を 連 絡 し 、 農 場 で は N F L X ( ノルフロキサシン・ 品 名 : インフェック) の 飲 水 投 与 を 3 日 間 行 っ
た。また、不良鶏の淘汰を進め、温度、湿度等の飼養管理を徹底するよう指導した。
緑膿菌は日和見感染を引き起こす細菌であるため、
問題がないか農場に聞き取りを行い、最初の病性鑑定
より6日後、鶏舎へ立ち入り調査を行った。
訪問した当日に農場で淘汰されていた鶏に顔面浮腫
や眼瞼白濁が見られたものがいたが、鶏舎内に問題の
ある鶏は確認出来なかった。温度は適度に保たれてた
が、舎内にアンモニア臭があり、換気がやや不良であ
る こ と が 見 受 け ら れ た ( 図 - 3 )。 ま た 、 聞 き 取 り に
よると、以下の様なことが通常と異なっていた。①導入元の孵卵場ででの発生が1日遅れ、
それ に 伴 い 入 雛 も 予 定 よ り1日 遅 く なっ た 。 ② ヒ ナ の 状 態 も 通常 に 比 べ て や や 見 劣り す る
ものが散見された。③入雛直後の管理で、鶏舎内の温度差がやや大きく、換気不良や結
露の発生があったことなどが挙げられた。再度鶏舎内の環境の改善を指導するとともに、
淘汰鶏と鶏舎内で採取した給水タンクとドリンカーの水及び敷料を持ち帰って検査を行
った。
当日の淘汰鶏(19日齢)の外貌所見は最初の病性
鑑定の時と同様に発育不良、眼の周囲に浮腫が見られ
る程度だった。解剖を行ったところ、角膜の白濁、眼
瞼の充鬱血があり、やや慢性化した症状だった(図-
4 )。 内 臓 も 軽 度 の 肺 鬱 血 水 腫 が 見 ら れ た が 、 他 の 臓
器にに著変はなかった。細菌培養を行ったが、一部ブ
ドウ球菌が分離されたが、緑膿菌は検出されなかった。
この鶏の病理組織学的検査は 以下のようなもので
あったが、いずれも病変は片側性で、眼球や眼瞼以外には化膿性炎は認められず、敗血
症ではなく限局的な感染と思われた。
病理組織学検査:眼瞼表面に痂疲形成、眼瞼及び眼球結膜上皮の変性剥離、偽好酸球
浸潤、充血線維素重度析出。毛様体・虹彩にリンパ球・偽好酸球重度浸潤、好酸性液浸
出。硝子体に偽好酸球・粘液軽度浸潤。脈絡膜の充出血。水晶体に偽好酸球多数付着、
わずかにグラム陰性桿菌の菌塊を含む。
鶏舎内の給水タンクとドリンカーの水及び敷料についても緑膿菌は検出されなかった。
(5)考察
入雛当初の飼育環境の不備は管理者が気づいていながら、対応が遅れ気味で虚弱傾向
のヒナにはストレスとなったことが考えられる。
投薬後、不良鶏を淘汰した後は淘汰・死亡による大きな減数はなく、出荷成績も良好
であった(図-5)。
今回の事例は最初の病性鑑定で病変部から多数の緑
膿 菌 が検 出 され てい る こ と 。投 薬 後 の本 ロ ッ トの発 育 成 績
は良 好 で、 他 の疾 病 が蔓 延 して いる こと は考 え 難 い こと な
どから、緑膿菌が眼球周囲へ限局的に病変を引き起こし
たものだと診断した。同じ孵卵場から出荷されたヒナで他
にこのような事例がみられなかったことから、発症のあっ
た鶏舎 では、入 雛した ヒナの状態( 虚弱傾向) 、飼育管理の
問題( 入雛 直後 の温度 ・湿度 管理)、鶏 舎の環境(換 気不良) など 様 々 な条件 が重 りあった ため 、発
症 に至 っ た 思 わ れ た。 片 側 性 に 眼 の 周 囲 で 限 局 的 な症 状 を 起 こし た 理 由 は不 明 だ った が 、 ヒナ
の感受性、感染した日齢や菌数も関係があるかもしれない。
3
まとめ
当 農 場は衛 生管 理 区域 設 定、 農場 出 入り口に車 両用 消毒 機の設置 、来場 者名簿 の記入 など
飼養 管 理 基 準 に従 った 衛 生 対 策 が取 られ てお り、 出 荷 後 の洗 浄 、消 毒 なども 手 順 が決 められて
いる 。敷 地 内 の他 の 鶏 舎 では大 き な問 題 も 無く 、 鶏舎 ごとに 長靴 や 消毒 槽 もき ちん と 設 置されて
いた。このような農場での日和見感染症の発生は、作業の中に油断や見落としがないか、随時
見直す必要性があると思われる。併せて日々の管理において基本の大切さや細やかな対応の
重要性が再度認識された。
今 回 検 出 さ れ た 株 は幸 い にも 薬 剤 耐 性 が 進 ん で お ら ず 投 薬 の 効 果 が 現 れた が 、 近 年 人 の 分
野では多剤耐性の緑膿菌が問題になっている。緑膿菌に限らず、病気が出てしまい薬剤に頼
る、と いうことが無くなるよ う、現場の意識を向上させ、実際の管理者と ともに改 善する必要が増し
ている。 それにより、健康で安全な畜産物を生産ができ、農場にも利益をもたらす事につな
がって行くと感じた事例であった。
参考文献
白川 ひ と み ら : ヒ ナ に 発 生し た 眼 球 炎 を 主 徴 と する 緑 膿菌 感 染症 ( 鶏病 研 究会 報)、1 9
90
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