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2008年4月16日 アメリカ合衆国到着ホワイトハウス歓迎式典の挨拶

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2008年4月16日 アメリカ合衆国到着ホワイトハウス歓迎式典の挨拶
アメリカ合衆国使徒訪問・公式歓迎式典答辞
ベネディクト16世―ヨゼフ・ラツィンガー
アメリカ合衆国と国連本部使徒訪問
公式歓迎式典でのベネディクト 16 世聖下の答辞
首都ワシントン・ホワイトハウス南面芝庭園
2008 年 4 月 16 日
2008 年 4 月 15 日ベネディクト 16 世聖下のアメリカ合衆国到着の際、メリーランドのアンドリュー空軍基地に着陸し
た特別機のタラップ下でパパ様を迎えたのは、ブッシュ大統領夫妻であった。アメリカ史上初めて、他国元首のアメ
リカ訪問にアメリカ合衆国大統領自らが出迎えに赴いた歴史的瞬間である。ブッシュ大統領は非常に深い敬意を
籠めて歓待し、その心尽くしの配慮は翌日のパパ様の誕生日に行われたホワイトハウスの歓迎式典後のサプライ
ズ・ケーキにまで表わされていた。
ミスター・プレジデント、
アメリカ合衆国民の代理として賜った貴方のお言葉をありがとうございます。この偉大な国へ
の訪問のお招きを大変有難く思い、深く感謝しております。私の訪問はアメリカのカトリック
共同体の生活における重要な機会と重なっています。それは、この国の最初の教区—バルティ
モア—の首都大司教区昇格とニューヨーク、ボストン、フィラデルフィアとルイスヴィル各司
教座設立 200 周年という機会です。しかしまた、私は、全てのアメリカ人の客人として、ここ
におりますのを喜んでおります。私は友人として、福音の一説教者として、そして、この広大
かつ多元的な社会に対する大いなる敬意を抱く者として参りました。アメリカのカトリック信
徒は、この国の存続に特筆に値する貢献を果たして参りましたし、これからも果たし続けて参
ります。この訪問を開始するに当たり、私の存在が合衆国の教会にとって刷新と希望の源にな
り、そして、この国家の存続により一層の責任を果たしながら貢献するというカトリック信徒
アメリカ合衆国使徒訪問・公式歓迎式典答辞
ベネディクト16世―ヨゼフ・ラツィンガー
の決意を強めるものとなると、私は信じております。彼らはこの国家の一員であることを誇り
に思っています。
共和国の夜明けの時から、自由を嘱望するアメリカの希求を導いてきたのは、政治的かつ社会
的生活を治める原理原則は創造主なる神の支配に基づいた道徳的秩序と密接に結び付いている
という確信でした。この国家の創立文書の立案者達がこの確信を書き上げ、全ての人々が平等
に創られ、自然法と神の自然法に基づいた譲歩不可能な権利を賦与されているのは『自明の真
実』であると宣言しました。アメリカ史の流れは数々の困難、闘いと共に、この気高い原理原
則を忠実に体現した社会を形成するのに要された大いなる知的かつ道徳的な決意を証ししてい
ます。国家の魂を練り上げた過程で、宗教的信条は着実なインスピレーションであり駆動力で
あり、その例には奴隷制に反対する闘いや公民権運動が挙げられます。私達の時代にも、殊に
重大局面において、アメリカ人はこの共有の理想と憧憬の財産を守るための尽力の内に自分達
の力を見出し続けています。
この数日間にアメリカのカトリック共同
体のみならず、この国に存在する他のキ
リスト教共同体や多くの宗教的伝統の代
表者の方々とお会いするのを、私は楽し
みにしております。歴史的に、カトリッ
ク信徒のみならず、全ての信徒達がここ
に自分の良心の命ずるままに神を礼拝す
る自由を見出し、それと同時に、各個人
と各グループが自らの声を聞かせられる
英国連邦の一部として受け入れられまし
た。私達の時代のますます複雑化する政治的かつ倫理的な問題点に国家が直面しつつも、アメ
リカ国民はもっと人間的で自由な社会を築く努力の中で合理的で責任ある敬意に満ちた対話を
追求するインスピレーションと自分達の宗教的信条の内に貴重な識見の源を必ずや見出すこと
に、私は信頼を抱いています。
自由とは単に賜物であるだけでなく、個人的責任
を要求する戒めでもあります。アメリカ人はこれ
を経験から分かっておられます--この国のほぼす
べての町には自由を守るのに、母国でか外国で
か、自分の命を捧げた人々を讃えるモニュメント
があります。自由の維持は徳の修養、自己鍛錬、
共通善のための犠牲と恵まれない人々に対する責
アメリカ合衆国使徒訪問・公式歓迎式典答辞
ベネディクト16世―ヨゼフ・ラツィンガー
任感を要求します。それはまた、市民生活に携わる勇気、そして、熟考した上での公開討論に
自分の最も深い信念と価値を持ち込む勇気をも要求します。一言で言えば、自由は常に新しい
ものです。それは各世代に突き付けられたチャレンジであり、善のために地道に勝ち越されな
ければならないチャレンジです(参照:Spe Salvi, 24)。これを先の教皇ヨハネ・パウロ 2 世
ほど明快に理解した人はほとんどいません。彼が自分の生まれたポーランドと東ヨーロッパに
おける全体主義を破った自由の霊的勝利について思い巡らしながら、私達に思い出させてくだ
ったのは、
「真実なしの世界では、自由はその土台を失う」のであり、そして、価値観のない民
主主義は魂そのものを失うこともあり得る(参照:Centesimus Annus, 46)ことを、歴史は幾
度となく示しているということでした。その預言的言葉は、ワシントン大統領の辞任の挨拶の
中に表現されており、信条と道徳は政治的繁栄に不可欠のサポートの代表格である、という彼
の確信を反響しています。
教会は教会で、神の現身に
して似姿に創られた(参
照:創世 1:26-27)人間の人
格によって、一層価値ある
世界を築き上げるのに貢献
したいと願っています。教
会は、信仰が全ての物事に
新しい光を投げかけるとい
うこと、そして、福音がそ
の気高い召命とあらゆる男
女の崇高な運命を啓示する(参照:Gaudium et Spes, 10)ということを確信しています。信
仰はまた、私達の高尚な召し出しに応える力と、常により正義に適い兄弟的な社会の実現のた
めに働くように促す希望を、私達にも与えてくれます。民主主義は、あなたがたの建国の父祖
達が認識しておられたように、政治的リーダーと彼らが代表する人々が真実によって導かれ、
堅固な道徳的原理から生まれた英知を国家の存続と未来に影響する決定に用いる時にのみ、開
花することができるのです。
一世紀を優に超える間、アメリカ合衆国は国際社会で重要な役割を演じてきました。この金曜
日に私は、神の思召しなら、国際連合で演説する名誉を頂きます。そこで私は、国連を世界中
の人々の正当な憧れのためにもっともっと効果的な声とすべく実践中の努力を激励したいと願
います。これに関し、世界人権宣言 60 周年を迎え、全ての人々が彼らの尊厳に相応しく--同じ
家に住み、恵み深い神が子供達全員のために用意してくださったテーブルを囲んでいる兄弟姉
妹として--生きるためには、グローバルな連帯がかつてないほど切に必要とされています。ア
メリカは伝統的に人類の必要に直ちに応える寛大さを示して、発展を助け、自然災害の被害者
アメリカ合衆国使徒訪問・公式歓迎式典答辞
ベネディクト16世―ヨゼフ・ラツィンガー
達に救助の手を差し伸べてきました。私は、より大いなる人類家族に対するこのような関心が
様々な紛争を解決し、進歩を助長する国際外交の忍耐強い努力へのサポートという形で表現さ
れ続けるに違いないと信頼しております。このように、来るべき世代は真実と自由と正義が開
花できる世界に効果的に暮らすことができるでしょう、それは、あらゆる男女と子供に神がお
与えくださった尊厳と権利が大切にされ、擁護され、そして、効果的に推進される世界です。
ミスター・プレジデント、親愛なる
お友達の皆様、私の合衆国訪問を開
始するに当たり、私はあなたがたの
御招待への感謝と、あなたがたの間
にいる喜びを表明し、そして、全能
の神がこの国家と国民を正義と繁栄
と平和の道において確かなものとし
てくださるように、私の熱心な祈り
を捧げさせて頂きます。神がアメリ
カを祝福してくださいますように!
原文© Copyright 2005-2015 – Libreria Editrice Vaticana
邦訳© Copyright 2015 – Cooperatores Veritatis Organisation
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