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フィジー・トリップに向けて 伊良湖合宿

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フィジー・トリップに向けて 伊良湖合宿
フィジ ー・トリップ に 向 け て
伊良湖合宿
くはカリフォルニアの仲間たち約20人が現地集
合し、島を貸し切ってサーフィンを楽しむのだ。
波のパワー、サイズともに日本より上回るが、三
角形の乗りやすい波がどこまでも続く。ヘタレ
な私でも、ビビらなければじゅうぶん楽しめる。
その波と出合ったのは3年前。以来、その島
文と写 真:国 井 律 子
でのサーフィンを“本番”と考えるようになった。
毎週水曜に通っている日本での波乗りは“練
習”
。フィジー行きが近づく夏の終わりからソワ
迷惑をかけないとか、そういう当たり前のことは
うなことをしてしまっただろうか。この海岸でテ
ソワし始め、予定を空けてはコソコソ練習。
“コ
まだ誰も入っていない。サーフトリップ3日目の
さておき、地元サーファー、いわゆる“ローカル”
ントを張り、サーフキャンプしているのがまずか
ソ練”に励んでいる。
早朝、ボードにワックスを塗っていたそのとき、
に気を遣う場面が往々にしてあるのだ。波を譲
ったか……と、焦っていると、その男性は来月
サングラス姿のいかつい男性が私たちの方へ
ったり、ローカルが多いポイントでは海に入る
フィジーで落ち合う予定の友人、Hくんだった。
ったころ、5日間の合宿を組んだ。その旅には同
歩み寄ってきたのである。
のを遠慮したり、ビジター・サーファーなりに気
なーんだ。
じく気合いを入れたフィジー仲間を誘い、サーフ
東の空がほんのり紅く色づいていた。海には
サーフィンというスポーツは、ときに厳しいル
を遣っているつもりだが、今こちらに向かってく
ールがある。ゴミを捨てないとか、周りの人に
る怪しい男性。私ったら、何か彼の気に触るよ
私たちは毎年11月の最終土曜日から1週間、
フィジーの離島を訪れている。東京や関西、遠
だから今年もフィジー・トリップまで一ヵ月を切
【左】伊良湖の駐車場でバッタリ出会ったHくん
(右)
と、東京から駆けつけたNくん
(中央)
。
【右】お金の管理は(あんまり関係な
いかもしれないが)、学生時代に経理のアルバイトをしていた私の仕事。みんなから領収書をかき集め、ノートに書きこんでいる。
ゲラゲラ笑い合った。Hくんも三重からひとり、
“コソ練”をしに来たそうだ。やはり考えることは
う、飛行機だった!」と、大騒ぎした。海の向こ
うにはイカ釣り舟のあかりが、いくつも灯ってい
ボード5枚、ウエットスーツ8枚、キャンプ道具満
みな同じで、それだけあの島で過ごす一週間は、
た。豪快なHくんらしからぬ繊細な恋愛話、最
載、コソ練に燃える3人を積んだクルマがたどり
われわれにとって特別なのである。
近Nくんの身に起きたおかしな話に盛り上がっ
着いたのは、愛知県の伊良湖(いらご)
だった。
「まったく驚かさないでよ!」
と、私は早朝の浜
辺でHくんに叫んだ。
「驚かしてないって。それより、なんでこんなと
ころにいるの?」
Hくんが訊く。
「どうしてこんなところにって、それはこっちの
台詞でしょう」
一瞬の間が空き、私たちはどちらからともなく
さらにその翌日の晩、新たなフィジー仲間、N
たかと思えば、私たちは突然顔を寄せ合い、真
くんも加わる。彼とは偶然出逢ったわけではな
面目なことを語り合ったりした。決まって話題の
い。私が旅先で逐一更新しているブログがきっ
最後に「来月のフィジーが楽しみだねぇ」で締め
かけで、彼は仕事が終わるや、わざわざ東京か
くくり、ずいぶん遅くまで焼酎を酌み交わした。
ら駆けつけたのだ。
毎日のように仲間が増えた伊良湖合宿。もし、
日々賑やかになっていくオープンリビング(キ
ここにあと10日いれば、噂を聞きつけたフィジー
ャンプ)の宴会。澄んだ空にわずかに動く物体
仲間全員が集まるかもしれない。それもまた楽
を見つけて「流れ星だ!」
、
「いや、衛星だ!」
「違
しそうだけど、
「じゃぁ、来月会おうネ!」私たちは
おのおの、南の島での波を思い描きながら伊
良湖を後にした。
国井律子
初日、張り切って波乗りしすぎ、ひどい筋肉痛に。2日目
は昼ごろには海から上がり、伊良湖をぐるりドライブした。
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【左】東京ではお目に掛かれない立派な銭湯は、旅の愉しみのひとつ。
【中央】伊良湖名物大アサリ
(のフライ)
。この旅では一
日一食豪勢に地物の料理を食べるようにしていた。なぜなら……。
【右】
あとの食事すべてが湯を注ぐだけのレトルトだったから。
1975年8月25日生まれ。東京都世田谷区出身。旅エッセイスト。
『ボンジ
趣味はオートバイ、波乗り、サメなど。著書は『放浪レディ』
ョルノ!(求龍堂)
』
『アタシはバイ
、
クで旅に出る1∼3』
(エイ出版社)
、
『国井的旅の力』
(ワールド
『国井印アリマス タビモノ・バイクモノ』
フォトプレス)
など多数。現在の愛車はジープ・コマンダー リミテッ
ド。記録的なアクセス数を誇る人気サイトはhttp://kuniritsu.com/
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