Comments
Description
Transcript
動物心理学の展望 記憶のしくみとその多様性 記憶の種類 長期記憶の
記憶の種類 動物心理学の展望 記憶のしくみとその多様性 後藤和宏 「僕が若い頃は記憶力が良かった。 あった事も無かったことも思い出せた。」 マーク・トゥウェイン 長期記憶の分類 感覚システム 記憶システム 感覚 記憶 注意 あり リハーサル 短期 記憶 長期 記憶 刺激がなくな ると消える (1秒以内) 秒単位 何分、何日か ら何年も覚え ていられる 忘却 忘却 短期記憶の測定法 長期記憶 顕在記憶 宣言的記憶 (認知的記憶) 意味記憶 見本刺激呈示 (記銘期) 潜在記憶 非宣言的記憶 (手続き記憶) 遅延 (保持期) エピソード記憶 世界に対する 1回限りの具体的 知覚学習 古典的条 非連合 一般的な知識 な個人的経験につ 運動学習 件づけ 学習 いての知識 忘却曲線 経過時間が長くな ると再認率が低下 遅延0秒の再認率 (初期値)と忘却 率の2つで表現で きる 初期値に影響を与 える要因と忘却率 に影響を与える要 因を分けて検討で きる 再認率 場所に関する記憶課題 比較刺激呈示 (検索期) 遅延時間 1 空間記憶課題での比較 収斂と放散による認知多様性 C. nutcracker Pinyon jay Mexican Jay W scrub jay 7 居住地の標高が高いほど、遅延時間が長 くても課題に正解できる Olson, Kamil, & Balda (1995) J. Comp. Psychol. 貯食性と空間記憶 正答率 視覚記憶課題の比較 空間課題で見られたような居住地の標高 との関係性は見られない Olson, Kamil, & Balda (1995) J. Comp. Psychol. なぜ検索に失敗するのか 逆向干渉 先行する記憶1が、後続する記憶2と干渉 し、記憶1に関する成績が低下する 順向干渉 記憶1に続いて記憶2を保持すると、記憶 1が干渉するため、記憶2に関する成績が 低下する 遅延時間(秒) 貯食する種は貯食しない種よりも場所遅 延見本合わせの成績がよい アカゲザルでの順向干渉の例 4枚の写真を呈示後、テスト写真が4枚 の中にあったかどうかを判断 毎日、花の写真で40試行後、サルの写 真に切り替わる 2 ヒトとサルの系列位置効果 10枚連続で画像 が呈示される テスト画像が10 枚の中にあったか どうかを判断する 系列の最初と最後 は正答率が高く、 系列中盤の正答率 が低い 初頭効果 新近性効果 動物の長期記憶 ハイイロホシガラスは秋に 22,000~33,000個のマツ の実を貯蔵し、冬から夏に かけて取り出して食べる 指示された忘却 テストに出題されないものを覚えるか? 遅延見本合わせ課題のテストの有無を部屋 の照明の有無で指示する テストなし指示のときに、抜き打ちテスト をすると成績が低下する 見本刺激 遅延期間 比較刺激 動物の長期記憶 写真と左か右の選択肢の組み合わせを丸暗 記する場合、何枚の写真を覚えられるのか 長期記憶の分類 エピソード記憶 宣言的記憶 意識的に記憶され、言語によって 表現されるもの ヒトの記憶の特異性は、いつ、どこで、何 をというエピソードが1つに統合されたか たちで記憶され、心的に時間軸を自由に行 き来することができる アメリカカケスの貯食行動 ハチドリの採餌行動 – 意味記憶:時間や場所に依存しない事実や知識 例) アメリカの首都は? – エピソード記憶:ある期間と場所での出来事について の記憶 例) 中学校の卒業式 手続き記憶 手続き記憶は、時間をかけて学習 した刺激応答などのパターン。簡単に言葉にで きないことが多く、意識しなくとも使うことが できる。 例)バイクの運転技能、 タイピングの技能、 楽器の演奏、般若心経の暗唱など 3 ピーナッツと幼虫を 用意(幼虫のほうが 好物) どちらの餌も砂場に 隠す ピーナッツは腐らな いが幼虫は120時間 後には腐る どちらの餌を探す か? Number of inspections アメリカカケスの貯食行動 カケスの将来計画 2つの部屋に毎朝、 それぞれピーナッツ か虫が用意されてい る 前の晩に餌を蓄える 機会があればどちら の餌をどの部屋に蓄 えるか まとめ 記憶系は短期記憶、長期記憶の2つのサブ システムからなる 記憶における干渉、符号化、指示された 忘却などの現象はヒトとヒト以外の動物 で共通している 動物によっては、驚くほど特異的な記憶を 示すものもあり、記憶も生活様式にあっ た適応をしている 4