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和牛枝肉脂肪の甘味成分
東北農業研究 (Tohoku Agric 枝 牛 阿 部 正 111-112(2000) 肉 ヒロ 和 Res)53, の 肪 博・ 石 甘 徹 。4ヽ 山 味 成 分 林 正 人 (山 形県農業研究研修 セ ンター畜産研究部) Sweet COmpounds Contained in lntermuscular Fat from Wagyu Carcass Masahiro ABE, TOru ISHIYAMA and `lasato Ko&、 YASHI (Department Of Animal Experiment, Yamagata Agricultural Research and Training Center) 1 は じ め 成 (水 分・ 粗脂肪含量)を 測定 した。 に 2)官 能検査 和牛枝肉 にお ける1旨 肪組織 は,独 特 の「 甘味」力ヽ あ ると (加 熱後)と 3)方 法 1)脂 肪組織中の遊離 グ リセロールの定性的確認 脂肪組織を クロロホルム・ メ タノ ール (以 下 C・ M) (2:1)で 抽出 し,溶 媒を減圧乾固 した後 クロロホル ム 言 われてお り,そ れが和牛 のおい しさの一つに もな って い る。 これまで食肉脂肪組織中の甘味 に関連 した成分 として , 豚肉にお いてはグルコースの定量が予備的に報告 されてお り ),さ らに豚 の背脂肪 のグル コース含量が052嘔 /100g と報告 されているの。今回 ,「 1旨 肪 の味」 という観点 か ら 牛肉脂肪 の甘味成分 として脂肪組織内 の遊離 グ リセロール 及 びグルコースに注目 し,そ の定性・ 定量について ガスク に溶解 し,シ リカゲルカ ラム クロマ トグラフィーを行 い C・ M系 溶媒を用 いて直線濃度勾配で溶 出 しフラクシ ョン , , コレクターで分取 した。溶出液を硫酸・ リン酸・ バニ リン 法 ,中 性脂肪測定試薬及び フェノール硫酸法で比色定量 し て溶出曲線を作成 し,各 ピー クに分けた。薄層 ク ロマ トグ ロマ トグラフによ り分析・ 検討 した。 また,他 の理化学分 析値 との関連性 について も検討 した。 2試 験 方 ラフ ィーで検出 し,ピ ー クの一部を乾固 , トリメチル化 し た後 ,ガ スクロマ トグラフで標準品 を用 いて保持時間 の比 較 と コクロマ トグラフィーを行 った。 法 (1)供 試牛肉 県内で肥育 された和牛 5頭 (去 勢 1,メ ス 4)の 枝肉第 6-7肋 骨間切開面 の筋間脂肪及 び皮下脂肪を用 いた。 そ れ らの格付成績等 は表 1に 示 した。 2)グ リセ ロールの定量 脂肪組織を70%エ タノール中でホモジナイズ した後 ,抽 出 液を減圧乾固 , トリメチル シ リル化 し,ガ スク ロマ トグラ ② 調査項 目 フ ィーを行 った。標準品で検量線を作成 し,同 条件 で グル コー スの測定 も可能であ った。 1)肉 質及 び理化学的検査 筋間・ 皮下脂肪 の遊離 グ リセロール及 びグルコース含量 1 調査牛 の格付成績等 肉性別 日 齢 肉質 929 A4 3 メス 376 1,051 A5 360 1,149 A3 434 1,013 A5 353 図1 5 4 632 B3 341 メス 4 5 去勢 9 5 1 2 4 メス 5 メス 厚 さ約 1側 の リプロー スを200℃ で片面 2分 ず つ加熱 し た後 ,適 度 にカ ッ トして供試 した。 パ ネル は 5人 で ,検 査 )及 び は順位法 。 自由記入法で行 った。 ヽ ラ 枝重 ロース志 ′ 厚 皮刊旨 ll 歩 留 BMS (d) (al 厚(a) 基潮直 (lgl 7 3 報 3)官 能検査 , 筋間脂肪 の月 旨肪酸組成・ 脂肪 の融点 ,胸 最長筋 の一 般組 表 (食 味評価 )は ,リ プ ロースの総合評価 ,脂 肪 の「甘 さJ等 を検査 した。 27 718 34 752 2 1 759 26 724 2 7 76 1 3 試験結果及び考察 (1)遊 離 グ リセロールの同定 グ リセロール と推定 された ピー クは,グ リセロールを特異 的に発色 させる GPO・ p― クロロ フェノール法で発色 し TLCで はグ リセロール標準 品 と Rf値 及 び発色 が一 致 し , 図2 和牛筋間脂肪 にお けるグ リセロール及 び グルコー ス含量 -111- 和牛皮下脂肪 にお けるグ リセロール及 び グルコース含量 東 北 農 業 研 究 表 2 成分含量・ 部位間 の相関係数 f\+o-)v 筋間 と皮下脂肪 53 第 (n-5) y')v:1 号 表4 (2000) 官 能 (食 味)検 査 の結果 -z 075 048 注 数字 は順位 の平均値 (パ ネル 5名 )検 査 は 1と 2及 び 3と 4と 5を 比較 表3 胸最長筋及 び筋間脂肪 の理化学的成分分析結果 372 162 3 268 464 29 1 31 0 258 528 381 330 283 444 267 337 31 5 32 26 15 20 23 19 533 537 565 579 2 206 205 185 199 288 292 316 15 : 17 : 17 : 32 0 た。 GLCで は保持時間が一 致 し,コ ク ロマ トグ ラフ ィー で ビークが一 致 した。以上 の結果 か ら推定 された ピークを 4に 示 した。赤肉 と脂肪 を含 んだ総合評価 では 2と 5の 評 価 が高 く,逆 に低 か ったのは 3で あ った。 1旨 肪 の「甘 さ」 グ リセロールと同定 した。 2)脂 肪 の遊離 グ リセロール及びグルコース含量 においては 1と 4が 高 い評価 で ,逆 に総合評価同様 に 3は 「甘 さ」評 低 か った。 「 うまみJで は 5の 評価 が高か った。 各試料 の筋間脂肪及 び皮下脂肪中 のグ リセロール及 びグ ルコース含量 について ,図 1と 2に 示 した。 グ リセロール 価 の高 い牛肉が グ リセロール含量 も高 い傾向であ ったこと か ら,特 に加熱 した筋間脂肪 を口に したときにお いて も 含量 は筋間脂肪で42∼ 183略 /100g,皮 下脂肪 で 26∼ 5 2mg/100gで あ つた。 また,グ ルコース含量 は筋間脂肪 甘味 に関 してはグ リセロール及 びグルコース含量 が関与 じ で05∼ 10鴫 /100g,皮 下脂肪 では001以 下∼0 2mg/100g であ つた。 グ リセロール及び グルコース含 量 において筋間 脂肪>皮 下脂肪 ,筋 間・ 皮下脂肪 ともグリセ ロール>グ ル コースの傾向があ った。 この結果 は,脂 肪 の採材時 に脂肪 組織 を口に した際 ,皮 下脂肪 よりも筋間脂肪 に独特 の「 甘 味」 を強 く感 じることとはぼ一致 している。 グ リセロール は 1嘔 /100gで も舌で甘味を感 じる ことか ら,脂 肪 の 甘 味 に関連 した成分 としての可能性が示唆され た。 また,表 2に 示 した 5頭 の相関係数 か らは,部 位 間 と成 分間 に関連性 があることが示 された 。 , ている可能性が示唆 された。 4 め 筋間脂肪 における遊離 グ リセロール含量 は試料間 のば ら つ きが大 きく,逆 に皮下脂肪ではば らつ きが小 さか った。 また,皮 下脂肪 よ りも筋間脂肪 のグ リセロール含量 が 高 い 傾向であった。 グルコース含量 においては,筋 間・ 皮下脂肪 とも試料間 のば らつ きが大 きか った。 グ リセ ロール と同様 に皮下脂肪 よ りも筋間脂肪 の含量 が高 い傾向 であった。 脂肪 の甘味 と官能 (食 味)評 価 については関連性がある と思われるが ,赤 肉 と脂肪を含んだ総合評価 (お い しさ) 3)理 化学分析値 との関連 理化学 的成分 について表 3に 示 した。 グ リセロール及 び グルコース含量 と筋間脂肪 の主要飽和・ 不飽和脂岬 との相関 は低 い結果 であった。 引 , 胸最長筋 の水分・ 粗1旨 肪含量 に関連性 が示唆 された。遊離 グリセ ロールとグル コースが1旨 肪 の LI味 に関与す ることが 示唆 された ことか ら,今 後 ,分 析数 の増加 によ り理化学 的 成分 や枝肉形質 との関連性 について解明 を図 りたい。 に)遊 離 グ リセ ロール及 びグルコース含量 と官能 (食 囀 用 文 献 1)川 井 田博 ,平 山愛和 ,福 永智明.丸 野弘幸 1993 さつ まい も畑 を利用 した「 お い しいJ黒 豚 づ くりに関す る研究(1)鹿 児島畜試研報 25:106-H5 2)上 原力,日 淵賢治,川 口政司,り ll原 徳彦 1999 讚岐黒豚 の「特徴あるお いしさ」評価技術 の開発 (1) 検査結果 調査牛No lと と ま 2(2頭 の比較),3∼ 5(3頭 の比較 ) と 2回 に分けて行 った官能 (食 味)検 査 の結果 について表 香川畜試研報 3)古 川秀子 -112- 35:32-37 1994 おい しさを測 る 幸書房 p24-29