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野神 隆之 原油市場他:イランの制裁解除等で 2003 年5 月以来の低水準

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野神 隆之 原油市場他:イランの制裁解除等で 2003 年5 月以来の低水準
更新日:2016/2/14
調査部:野神 隆之
原油市場他:イランの制裁解除等で 2003 年 5 月以来の低水準にまで下落するも、OPEC 及び非 OPEC
緊急時総会開催観測から持ち直す場面も見られる原油価格
(IEA、OPEC、米国 DOE/EIA、ワシントン事務所星康嗣情報他)
① 米国では、冬場の暖房用石油製品需要期が峠を越えつつあるとともに、春場の製油所メンテナンス
作業時期に突入しつつあることに加え、ガソリン需給緩和感と精製利幅低下といった経済的理由か
ら、製油所の原油精製処理量が減少するとともに、原油在庫は増加傾向になり、平年幅を超過する
状況が続いている。他方、製油所でのガソリン生産活動は低下していると見られるものの、ガソリン需
要の伸びも鈍化した結果、ガソリン在庫は増加傾向を示し、平年幅を超過する量となっている。留出
油についても、米国での製造業の減速による物流活動等の不活発化に加え、寒冷な気候も持続し
ないため暖房用の石油製品需要が盛り上がらないことにより、在庫が増加、平年幅を超過する水準と
なっている。
② 2016 年 1 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、欧州で
はほぼ変わらずとなった一方で、日本では製油所での原油精製処理量が増加したこともあり、前月
比で 10%程度減少したものの、米国では製油所の稼働低下もあり相当程度増加したことで相殺され
て余りあったことから、OECD 諸国全体での当該在庫は増加となり、平年幅を大きく超過した状態は
継続している。他方、製品在庫については、欧米では微増となったものの、日本では寒波の到来とと
もに需要が刺激されたことに伴い灯油在庫が相当程度減少したことから、石油製品全体の在庫も減
少したことにより、OECD 諸国全体での製品在庫水準も低下したが、この時期としては平年幅上方に
位置する量となっている。
③ 2016 年 1 月中旬から 2 月中旬にかけての原油市場においては、1 月中旬は、1 月 16 日のイランに
対する制裁解除に伴う同国からの石油供給増加及び需給緩和に対する市場での観測や、国際通貨
基金(IMF)による世界経済成長見通しの下方修正等により、それまでの下落傾向が継続、1 月 20 日
には WTI の終値で 1 バレル当たり 26.55 ドルと 2003 年 5 月 7 日以来の低水準に到達した。しかし
ながら、その後はそれまでの原油価格下落に対し利益確定等から買い戻りの動きが発生した他、
OPEC及び非OPEC産油国による原油生産調整のための緊急時総会開催の可能性を市場が意識し
たことにより、1 月下旬には 1 バレル当たり 30 ドル台前半にまで価格が回復した。ただ、2 月に入って
からは、緊急時総会開催に対する市場の懐疑的な見方や中国経済減速を示唆する指標類等が原油
相場に下方圧力を加えた結果、原油価格は 2 月 11 日には 1 バレル当たり 26.21 ドルの終値と 2003
年 5 月 6 日以来の低水準にまで到達するとともに、一時 26.05 ドルにまで下落する場面も見られた。
④ 今後の見通しとしては、地政学的リスク要因面の原油相場に対する影響は限定的である一方で、米
国経済指標類等の面では中国及び世界経済に対する不透明感に伴う株式相場の変動、そして米国
金利政策動向に伴う米ドル変動により、原油価格に上下双方から圧力が加わるものの、どちらかとい
う下振れしやすいと考えられる。他方、この先石油不需要期に向かうことで原油相場に下方圧力が加
わる可能性がある。総合すると、今後当面原油相場は概して下落基調になりやすいものと思われる。
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Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1.原油市場を巡るファンダメンタルズ等
2015 年11 月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で 2.1%程度増加の日量 911 万バレルとなっ
た(図 1 参照)。11 月のガソリン輸出量について EIA は速報値時点では暫定的に日量 54 万バレル程度
と見込んでいたものの、実際の輸出量は日量 60 万バレルと暫定値を日量 6 万バレル上回っていたこと
から、この分が国内需要から輸出に振り替えられたことが、速報値(同 918 万バレル、前年同月比 2.9%
程度の増加)から確定値に移行する過程で需要が下方修正された一因であると見られる。ただ、11 月の
同国のガソリン小売価格が前年同月比で1ガロン(約3.8リットル)当たり0.7ドル強低下していることから、
自動車運転距離数もそれなりに堅調に推移した(11 月の同国の自動車運転距離数は前年同月比で
4.3%の増加となっている)ことが、ガソリン需要の増加に繋がっているものと考えられる。他方、2016 年 1
月の同国ガソリン需要(速報値)は日量 876 万バレル、前年同月比で 0.4%程度の増加にとどまっている。
この月は後半に米国の各所で降雪があったことから人々が自動車を利用した外出を控えた可能性があ
ることに加え、1 月の同国のガソリン小売価格が前年同月比で 1 ガロン当たり 0.15 ドル程度安価である状
態にとどまったことから、ガソリン需要の伸びも限定的であったことが推察される。他方、米国では、引き
続き最終消費段階では冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期ではあるものの、製油所の段
階では暖房用石油製品需要期も峠を越え始めており、春場のメンテナンス作業シーズンが視野に入りつ
つあったことに加え、これまでガソリン精製利幅が比較的堅調であったことに伴いガソリンの生産も旺盛
であったものの、ここにきて米国ではガソリン在庫の積み上がりが顕著になってきたことが精製利幅を圧
迫し始めたこともあり、一部の製油所が経済的な理由により稼働を引き下げ始めたことから、同国製油所
での原油精製処理量が減少する(図 2 参照)とともに、ガソリンの生産もそれに応じて低下したものと推定
される(最終製品の生産については図 3 参照)。それでも、ガソリンの需要の伸びの鈍化が影響した結果、
ガソリン在庫は 1 月中旬から 2 月上旬にかけ増加傾向となり、平年幅を超過する量となっている(図 4 参
照)。
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2015 年 11 月の同国留出油需要(確定値)は前年同月比で 5.5%程度減少の日量 370 万バレルと速報
値の日量 376 万バレル(前年同月比 4.1%程度の減少)から下方修正されている(図 5 参照)。米国では
金利引き上げ観測等に伴う米ドルの上昇が製造部門に影響を及ぼしているものと見られ、11 月の同国
の鉱工業生産は前年同月比で減少となるとともに 11 月の同国の物流活動も前年割れとなっていることが
当該製品需要に反映されているものと考えられる。また、2016 年 1 月の留出油需要(速報値)は日量 348
万バレルと、前年同月比で 17.9%程度の大幅な減少となっている。1 月は米国北東部で一時平年を割り
込む気温となった時期もあったが、それが持続しなかった一方で、2015 年 12 月の同国鉱工業生産及び
物流活動が前年割れしている影響を 1 月も引きずっていることが留出油需要に影響しているものと考え
られる。このように需要が軟調であったことから、製油所の稼働低下に伴い留出油生産は減少しつつあ
った(図 6 参照)ものの、1 月中旬から 2 月上旬にかけ当該在庫は概ね増加傾向となった結果、2 月上旬
としては在庫は平年幅を超過する量となっている(図 7 参照)。
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2015 年 11 月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で 0.9%減少の日量 1,919 万バレルとなった
(図8参照)が、これは、留出油及び「その他の石油製品」が前年同月比で減少していることが影響してい
るものと考えられる。。また、速報値の段階では前年同月比で 14.9%程度の増加(量としては日量 387 万
バレル)を示していた「その他の石油製品」が確定値では同333万バレル、前年同月比で1.3%程度の減
少となっていた他、留出油についても速報値から確定値に移行する段階で下方修正されている旨明ら
かになったことから、石油需要全体でも速報値である日量 1,971 万バレル(前年同月比で 1.8%の増加)
から下方修正されている。また、2016 年 1 月の米国石油需要(速報値)は、「その他の石油製品」の需要
が前年同月比で大幅に増加している(同 77 万バレル程度の増加)ことが寄与し、日量 1,963 万バレルと
前年同月比で2.0%程度の増加となっているが、1 月の「その他の石油製品」の需要が日量387 万バレル
と確定値上の実績(2014 年 11 月~2015 年11 月で日量 302~372 万バレル)と対比してなお高い水準に
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あると見受けられるので、この点については確定値に移行する際に下方修正される可能性を意識してお
く必要があろう。他方、米国では、春場の製油所でのメンテナンス作業シーズンに突入しつつあることや、
前述の通り経済的な理由により、原油精製処理量が低下してきていること、足元の原油在庫の豊富さか
ら直近の受け渡し月の原油価格が、将来に受け渡されるそれを相当程度下回っている(例えば 2 月 12
日の米国原油先物市場では、3 月渡しの WTI 原油価格は 4 月渡しのそれを 1 バレル当たり 2.47 ドル下
回っている)ことから、足元の割安な原油を貯蔵するインセンティブが働いていると見られることから、1 月
中旬から 2 月上旬にかけ米国原油在庫は増加傾向となったことで平年幅を大きく超過している状態は維
持されている(図 9 参照)。なお、原油、ガソリン、及び留出油在庫がそれぞれ平年幅を超過していること
から、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年
幅を超過する状態となっている(図 10 及び 11 参照)。
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2016 年 1 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、欧州では
ほぼ変わらずとなった一方で、日本では製油所での原油精製処理量が増加したこともあり前月比で
10%程度と大幅に減少した(但しその後増加に転じている)ものの、米国では製油所の稼働低下もあり原
油在庫が相当程度増加したことで相殺されて余りあったことから、OECD 諸国全体での当該在庫は増加
となり、平年幅を大きく超過した状態は継続している(図 12 参照)。他方、製品在庫については、欧米で
は微増となったものの、日本では、寒波の到来とともに暖房向け需要が刺激されたことに伴い、灯油の在
庫が相当程度減少したことから、石油製品全体の在庫も減少したことにより、OECD 諸国全体での製品
在庫水準も低下したが、この時期としては平年幅上方に位置する量となっている(図 13 参照)。なお、原
油在庫が平年幅を大きく超過する一方で、石油製品在庫量が平年幅の上方に位置していることから、原
油と石油製品を合計した在庫は平年幅を超過する状態となっている(図 14 参照)。また、2016 年 1 月末
時点での OECD 諸国推定石油在庫日数は 65.5 日と 2015 年 12 月末の推定在庫日数である 65.0 日から
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上昇している。
2016 年 1 月 13 日には 1,300 万バレル台後半程度の水準であったシンガポールでのガソリン等の軽
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質留分在庫量は、その後 1,300 万バレル台半ばから後半程度で推移していたが、2 月3 日には 1,400 万
バレル台後半と 2015 年 1 月 28 日以来の高水準に到達、2 月 10 日も 1,400 万バレル台前半と 1,400 万
バレル超を維持した。ガソリンと原油の価格差がこれまで堅調であったこともあり、製油所はガソリンを活
発に製造してきたが、1 月に入り、シンガポールのみならず米国でもガソリン在庫が増加傾向を示すよう
になってきており、さらに、2 月に入ると中国の春節(旧正月)に伴う休日(2 月7~13 日)を控えガソリン売
買に関する活動が低下してきた。このような要因もあり、ガソリン価格が抑制され、原油との価格差(ガソリ
ン価格が原油のそれを上回っている)は縮小する方向で推移している。他方、ナフサについても、石油
化学部門で競合する LPG 価格は冬場の暖房向け需要により相対的に維持されていることから、ナフサ
需要に大きく負の影響を及ぼしているわけではないものの、ガソリンの堅調な生産と連携する形で供給
が豊富であったことから、需給緩和感が市場で醸成されてきたこともあり、ナフサと原油の価格(ナフサの
価格が原油のそれを上回っている)は縮小する傾向を示した。
1 月 13 日には 900 万バレル台前半と 2015 年 12 月 9 日以来の低水準となったシンガポールの中間留
分在庫は、1 月 20 日には 1,200 万バレル台前半の量へと増加、その後は 1,100 万バレル強から前半程
度の水準で推移したが、2 月 10 日には 1,000 万バレル台後半の量と前週比で減少となった。ただ、それ
でも 1 月 13 日の水準からは上昇している。他方、中国での経済減速に伴う国内軽油需要の鈍化により、
今後同国からの軽油輸出が増加するとの観測がアジア市場で発生していることにより、軽油と原油価格
との差(軽油の価格が原油のそれを上回っている)は、縮小しつつある。また、ジェット燃料についても、
類似の製品である灯油が、アジアにおける総じて温暖な気候や、エル・ニーニョ現象の影響により 2~4
月は日本で概ね温暖な気候となる旨の予報が 1 月 25 日に発表されたこともあり、暖房向け需要が低迷
するとの観測が発生したことから、ジェット燃料と原油の価格差(ジェット燃料の価格が原油のそれを上回
っている)も縮小する傾向にある。
シンガポールの重質留分在庫は、1 月 13 日には 2,000 万バレル台後半の量となっていたが、その後
12 月の欧州方面での悪天候により支障が生じていた当該製品の輸送が進んだことに加え、中東諸国か
らもアジア地域に重油が流入してきたと見られることから、1 月 27 日には 2,200 万バレル台前半の量へと
増加し始め、2 月 3 日には 2,400 万バレル台後半の量に到達、2 月 10 日には 2,500 万バレル強の量と
2015 年 12 月 22 日(この時は 2,700 万バレル強)以来の高水準となった。このような状況から、特に在庫
が増加し始めている旨判明した 1 月下旬後半以降、アジア地域の重油と原油の価格差(重油価格が原
油のそれを下回っている)は拡大する傾向を示している。
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2. 2016 年 1 月中旬から 2 月中旬にかけての原油市場等の状況
2016 年 1 月中旬から 2 月中旬にかけての原油市場においては、1 月中旬は、1 月 16 日のイランに対
する制裁解除に伴う同国からの石油供給増加と需給緩和に対する市場での観測や国際通貨基金(IMF)
による世界経済成長見通しの下方修正等により、それまでの下落傾向が継続、1 月 20 日には WTI の終
値で 1 バレル当たり 26.55 ドルと 2003 年 5 月 7 日以来の低水準に到達した。しかしながら、その後はそ
れまでの原油価格下落に対し利益確定等から買い戻りの動きが発生した他、OPEC 及び非 OPEC 産油
国による原油生産調整のための緊急時総会開催の可能性を市場が意識したことにより、1 月下旬には 1
バレル当たり 30 ドル台前半にまで価格が回復した。ただ、2 月に入ってからは、緊急時総会開催に対す
る市場による懐疑的な見方の発生や中国経済減速を示唆する指標類等が原油相場に下方圧力を加え
た結果、原油価格は 2 月 11 日には 1 バレル当たり 26.21 ドルの終値に到達するとともに、一時 26.05 ド
ルにまで下落する場面も見られた(図 15 参照)。
1 月 18 日には、米国キング牧師誕生記念日に伴う休日によりニューヨーク・マーカンタイル取引所
(NYMEX)での通常取引は実施されなかった。ただ、1 月 16 日に欧米諸国によるイランに対する制裁の
解除が発表されたことで、この先イランからの原油生産が増加することにより、世界供給過剰感が増大す
るとの観測が市場で発生したことに加え、1 月 19 日に国際エネルギー機関(IEA)から発表された「オイ
ル・マーケット・レポート」で IEA が今後世界の供給過剰が継続することでさらなる原油価格下落の可能
性がある旨示唆したこと、1 月 19 日に IMF から発表された「世界経済展望」で、IMF が 2016 年の世界経
済成長率に関する見通しをそれまでの 3.6%から 3.4%へと下方修正したことにより、この日の原油価格
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は前週末終値比で 1 バレル当たり 0.96 ドル下落し、終値は 28.46 ドルとなった。また、1 月 20 日も、中国
経済を含め世界経済の今後の動向に対する不透明感を市場が意識したことにより、米国株式相場が下
落したことで、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 26.55 ドルと前日終値からさらに 1.91 ドル下落、
終値ベースでは 2003 年 5 月 7 日(この時は同 26.23 ドル)以来の低水準に到達した他、原油価格は 1
月 19~20 日の 2 日間で併せて 1 バレル当たり 2.87 ドルの下落となった(なお、この日を以て NYMEX
の WTI 原油先物 2 月渡し契約取引は終了したが、3 月渡し契約のこの日の終値は 1 バレル当たり 28.35
ドル(前日終値比 1.22 ドルの下落)であった)。しかしながら、1 月 21 日には、これまでの原油価格下落
に対し利益確定から買い戻しの動きが市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当
たり 29.53 ドルと前日終値比で 2.98 ドル上昇した他、1 月 22 日にも、利益確定から原油を買い戻す動き
が市場で継続したことで、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 2.66 ドル上昇し、終値は
32.19 ドルとなった。この結果、原油価格は 1 月 21~22 日の 2 日間で併せて 1 バレル当たり 5.64 ドル上
昇した。
1 月 25 日には、この日サウジアラビアの国営石油会社サウジ・アラムコのハリド・ファリ会長が、原油価
格の低迷にもかかわらず同社は石油開発に対する投資を継続する旨表明したことに加え、2015 年 12 月
のイラクの原油生産量が日量413 万バレルと過去最高水準に到達した旨1 月25 日に同国石油省が発表
したことから、この日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 1.85 ドル下落し、終値は 30.34 ドルと
なった。ただ、1 月 26 日には、サウジアラビアとロシアが過剰な世界石油供給の削減に取り組むことに対
し、より柔軟な姿勢を示す兆候が見られる旨、イラクのマハディ石油相がこの日明らかにしたことで、
OPEC 及び非 OPEC 産油国の減産協力の可能性に対する市場の期待感が強まったことから、この日の
原油価格の終値は 1 バレル当たり 31.45 ドルと、前日終値比で 1.11 ドル上昇した。また、1 月 27 日も、こ
の日ロシアのパイプライン会社トランスネフチ(Transneft)のトカレフ最高経営責任者が、ロシアがサウジ
アラビアとの間で減産につき協議することになるだろう旨発言した他、1 月 27 日に米国エネルギー省
(EIA)から発表された同国石油統計(1 月22 日の週分)でクッシングの原油在庫が前週比で 77 万バレル
の減少と 12 週間ぶりの減少を示している旨判明したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレ
ル当たり 0.85 ドル上昇し、終値は 32.30 ドルとなった。1 月 28 日も、この日ロシアのノバク エネルギー相
が、サウジアラビアが最大 5%の減産(うちロシアの減産分は日量 50 万バレル程度)を提案したと発言し
たことで、OPEC 及び主要非 OPEC 産油国間での減産協力に対する期待感が市場で増大したことにより、
この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.92 ドル上昇し、終値は 33.22 ドルとなった。1 月 29
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
日においても、ロシアと OPEC 諸国との間で協調減産につき協議される可能性に対する市場の期待感
増大の流れが引き継がれたことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 33.62 ドルと、前日終値
比で 0.40 ドル上昇した。この結果原油価格は 1 月 26~29 日の 4 日間で併せて 1 バレル当たり 3.28 ド
ルの上昇となった。
2月1日には、この日中国国家統計局から発表された1月の同国製造業購買担当者指数(PMI)が49.4
と 2015 年 12 月(この時は 49.7)から低下、2015 年 8 月以来 6 ヶ月連続で当該部門拡大及び縮小の分岐
点となる 50 を割り込んだ他、市場の事前予想(49.6)を下回ったことに加え、サウジアラビアは石油市場
を管理する用意はあるが、それは OPEC 及び非 OPEC 産油国が協力するという前提条件のもとであり、
イランの増産量が不透明なことから、依然として OPEC 緊急時総会を開催するには時期尚早である旨、
OPEC 関係筋が発言したと、サウジアラビア「アル・ハヤト」紙が 2 月 1 日に報じたことで、当該緊急時総
会開催に対する市場の期待が低下したこと、2 月 1 日に米国商務省から発表された 2015 年 12 月の同国
個人消費支出(PCE: Personal Consumption Expenditure)が前月比横這いと市場の事前予想(同 0.1%増
加)を下回った他、同日米国供給管理協会(ISM)から発表された 2016 年 1 月の同国製造業景況感指数
(50 が当該部門拡大と縮小の分岐点)が 48.2 と市場の一部事前予想(48.1~48.4)を下回ったこと、2 月 1
日に米国国立測候所(National Weather Service)から発表された今後2週間程度の米国北東部の気象予
報が、それ以前に比べ相対的に温暖になる旨のものに修正されたことで、米国暖房油先物相場が下落
したことから、この日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 1.99 ドル下落し、終値は 31.63 ドルと
なった。また、2 月2 日には、前日の OPEC 緊急時総会開催に対する市場の期待低下の流れを引き継い
だうえ、2 月3 日に EIA から発表される予定である同国石油統計(1 月29 日の週分)で原油在庫が増加し
ているとの観測が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 29.88 ドルと、前
日終値比で 1.74 ドル下落した。この結果原油価格は 2 月1~2 日の 2 日間で併せて 1 バレル当たり 3.74
ドル下落した。ただ、2 月3 日には、この日米国 ISM から発表された 2016 年 1 月の同国非製造業景況感
指数(50 が当該部門拡大と縮小の分岐点)が 53.5 と 2015 年 12 月の 55.8 から低下、2014 年 2 月(この
時は 52.6)以来の低水準となった他、市場の事前予想(55.1)を下回ったことに加え、同日ダドリー米国ニ
ューヨーク連邦準備銀行総裁が、2015 年 12 月 15~16 日の米国連邦公開市場委員会(FOMC)開催時
に決定した金利引き上げにより、金融市場は顕著に引き締まってきており、この状況がこの先も続くよう
であれば、次回 FOMC(3 月 15~16 日開催予定)時の金融政策決定時にそれを考慮する必要がある旨
発言したことにより、米ドルが下落したことから、この日の原油価格は前日末終値比で 1 バレル当たり
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2.40 ドル上昇し、終値は 32.28 ドルとなった。しかしながら、2 月 4 日には、前日の原油価格上昇に対す
る利益確定の動きが市場で発生したうえ、2 月 3 日に EIA から発表された同国石油統計(1 月 29 日の週
分)で、原油在庫が前週比で 779 万バレルの増加と市場の事前予想(同 400~480 万バレル程度の増
加)を上回って増加している旨判明した流れを引き継いだことで、この日の原油価格の終値は 1 バレル
当たり 31.72 ドルと、前日終値比で 0.56 ドル下落した。また、2 月 5 日も、この日米国労働省から発表され
た雇用統計で、時間当たり賃金が前月比で 0.12 ドル(同 0.5%)増加となっている旨判明したことで、この
先の米国金融当局による金利引き上げ策継続に対する期待が市場で増大したことにより、米ドルが上昇
したことから、この日の原油価格は前日末終値比で 1 バレル当たり 0.83 ドル下落し、終値は 30.89 ドルと
なった。この結果原油価格は 2 月 4~5 日の 2 日間で併せて 1 バレル当たり 1.39 ドル下落した。
また、原油価格浮揚のための協調減産を呼びかけるベネズエラのデル・ピノ石油・鉱業相が 2 月 7 日
にサウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相と会談を実施したものの、会談後具体的な減産策が明らか
にならなかったことに対して市場が失望したことで、2 月8 日の原油価格は前週末終値から 1 バレル当た
り 1.20 ドル下落し、終値は 29.69 ドルとなった。 2 月 9 日も、この日 IEA から発表された「オイル・マーケ
ット・レポート」及び同日 EIA から発表された「短期エネルギー展望」において、IEA 及び EIA が 2016 年
の世界石油需要を下方修正したことにより、この日の原油価格の終値も 1 バレル当たり 27.94 ドルと前日
終値比で 1.75 ドル下落した。さらに、2 月 10 日も、この日 EIA から発表された同国石油統計(2 月 5 日の
週分)でクッシングの原油在庫が前週比で 52 万バレル増加するとともに、2004 年の週間統計開始以来
最高の在庫量を記録したことで、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.49 ドル下落、終値
は 27.45 ドルとなった。さらに、2 月 11 日も、2 月 10 日に EIA から発表された同国石油統計でクッシング
の原油在庫が 2004 年の週間統計開始以来最高を記録した流れを引き継いだことで、この日の原油価格
の終値は 1 バレル当たり 26.21 ドル(これは 2003 年 5 月 6 日(この時は 25.72 ドル)以来の低水準であっ
た)と、前日終値比で1.24 ドル下落した他、一時は 26.05 ドルにまで下落する場面も見られた(そしてこれ
は 2003 年 5 月 8 日(この時は 26.00 ドル)以来の低水準であった)。この結果原油価格は 2 月 8~11 日
の 4 日間で併せて終値ベースで 1 バレル当たり 4.68 ドル下落した。しかしながら、2 月 11 日の米国原油
先物市場取引時間終了時に、マズルーイ UAE エネルギー相が、OPEC 産油国は減産に向け協力する
用意があるとともに現在の価格で非 OPEC 産油国の原油生産増加は抑制されている旨発言したと報じら
れたことで、OPEC 産油国による減産協力への期待感が市場で増大したこと、2 月12 日に米国石油サー
ビス企業 Baker Hughes から発表された同国石油坑井掘削装置稼働数が同日時点で 439 基と前週比で
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28 基の減少(同国石油水平坑井掘削装置稼働数は 382 基と同 26 基の減少)を示している旨判明したこ
と、そして、これまでの下落に対して株式買い戻しの動きが市場で発生した他、2 月 12 日に米国商務省
から発表された 2016 年 1 月の同国小売売上高が前月比で 0.2%の増加と市場の事前予想(同 0.1%の
増加)を上回ったこともあり、米国株式相場が上昇したことにより、この日の原油価格は前日終値比で 1バ
レル当たり 3.23 ドル上昇し、終値は 29.44 ドルとなっている。
3.今後の見通し等
シリアで当初 1 月 25 日に開始すベく調整されていたアサド政権及び反体制派による和平会議は、1
月 29 日に開始されたものの、アサド政権(そしてそれを支援するロシア及びイラン)及び反体制派(そし
てそれを支援する欧米諸国及びサウジアラビアをはじめとするアラブ諸国)等関係者間での協議の折り
合いがつかず、2 月 3 日には 2 月 25 日まで中断する旨決定された。2 月 11 日には、国連や関係国等に
よるシリア内戦終結に向けた会合が開催され、アサド大統領と反体制派との間での停戦を早期に実現す
べく働きかけていくことで合意したが、シリアにおけるテロ組織攻撃のためロシアは空爆を停止するわけ
ではないこともあり、シリア和平問題はこの先も紆余曲折を経る可能性があると見られる。また、1月 2 日
以降顕在化しているサウジアラビアとイランの対立関係についても、大きく悪化しているわけではないも
のの、目覚ましく改善しているとも見受けられない。リビアについては、事実上東西に政府が分裂して対
立している中で、同国中部シルトではイスラム国が勢力を拡大しつつあり、石油ターミナルの貯蔵タンク
がイスラム国によって攻撃され、炎上したとも報告される。このような中、国連の和平努力を通じ、2015 年
12月17日には、40日以内の統一政権樹立に向け、東(暫定議会:東部トブルク拠点)西(制憲議会:西部
トリポリ拠点)両政府が合意、1 月19 日には、統一政権の閣僚名簿が発表されたものの、1 月25 日には、
当該閣僚名簿につき暫定議会で否決されるなど、必ずしも順調に進展しているわけではなく、イスラム国
による、同国の石油関連施設への攻撃が完全に排除されたわけでもない。このように、特に中東・北アフ
リカ地域においては、依然政情不安から市場での石油供給途絶懸念を発生させる可能性のある地政学
的リスク要因は存在する。しかしながら、市場では石油供給過剰感が強く、これらの要因に伴う石油供給
途絶懸念増大に伴う原油相場への上方圧力が打ち消される格好となっている。今後も市場の石油供給
途絶懸念を大きく増大させる要因が発生するといったことでなければ、少なくとも当面は原油相場を継続
的に上昇させるには力不足になるものと思われる。
米国等の経済指標類については、米国では、失業率は 4.9%へと低下したものの、それ以外の指標
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類は雇用統計を含め、必ずしも同国経済が絶好調となっていることを示しているわけではない。米国金
利引き上げ観測により米ドルが上昇、これが同国の製造業に影響している結果、鉱工業生産指数は
2015 年 11~12 月は前年割れを示している他、耐久財受注も前年同月比で軒並み減少を示している。ま
た中国経済も 2016 年 1 月の PMI(中国国家統計局発表のもの)が製造業では当該部門の拡大感及び縮
小感の分岐点である50を割り込んでおり、非製造業については、50 は超過しているものの、低下傾向に
ある。また、原油価格下落は産油国経済に影響を与えるなど、世界経済の不透明感が漂っており(このよ
うなこともあり、IMF は 1 月 19 日発表の世界経済見通し(改訂見通し)で、2016 年及び 2017 年の世界経
済成長率予測をそれぞれ、3.4%及び 3.6%と、双方とも 2015 年 10 月 6 日時点の予測から、両年につき
0.2%下方修正している)、それが株式相場、そして原油相場に下方圧力を加えやすい状態になってい
る。今後も、中国及び米国経済、そして株式相場が原油相場に影響し続けることが想定される。ただ、米
国経済の減速感が強まると、同国金融当局による金利引き上げペースが鈍化する可能性があり、それに
より米ドルが下落することで、原油相場に上方圧力が加わる可能性がある。従って今後この面で原油相
場に上方及び下方双方から圧力が加わると考えられるが、一貫して上方圧力が加わるというよりは、昨今
の不透明な世界経済情勢からすると一貫とは言えないまでも当面はどちらかというと下方圧力が加わり
やすいと考えられる。
一方、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期は最終消費段階ではなおしばらくは続くも
のの、徐々に暖房シーズンの終了(市場関係者の認識では 3月31 日までとされている)が市場関係者の
視野に入りつつあり、米国を中心とする製油所では、メンテナンス作業時期突入に伴い、原油精製処理
量を減少させるとともに、原油の購入を不活発にしてくるとの観測が市場で広がってきているため、この
面で、原油相場に下方圧力を加えている。そして、製油所により引き取られなかった原油が貯蔵タンク業
者等のタンクに貯蔵されることによって、米国の原油在庫が増加する(既に 1 月 29 日には米国では週間
統計史上最高の 5 億バレル超となった)とともに、足元の原油価格を押し下げている。2 月 5 日時点の原
油在庫は前週比で減少しているものの、市場ではこれは一時的な輸入の落ち込みであり持続性のある
ものではないと考えられており、翌週には原油在庫が再び増加すると見る向きもある。そして、そのような
展開になれば、原油相場に再び下方圧力を加えてくる可能性があり、またそうでない場合でも、石油不
需要期を控えている現状では原油相場を上昇させるには不十分なものとなると考えられる。そしてこの
先 3 月前半頃までは、製油所の稼働と原油精製処理量が抑制されるとともに、原油在庫が増加しやすい
ことから、この面で原油相場が押し下げられるといった場面が見られる可能性がある。他方、1 月後半は
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米国では平年を下回る気温となったものの、今後は米国北部を中心として平年を超過する気温となると
予想されており、暖房用石油製品需要が盛り上がらない可能性があることが示唆され、これも原油相場を
押し下げる要因として作用すると思われるが、このような予想に反して気温が平年を割り込むようになっ
たりした場合には、一時的であれ、市場での暖房油需給の引き締まり感の醸成から、暖房油価格、そし
て原油価格が上昇する場面が見られることもありうる。
他方、ベネズエラのデル・ピノ石油・鉱業相が原油相場安定のための減産協力を要請しつつ、1 月 25
日以降ロシア、イラン、カタール、オマーンの石油産業関係者と会談、そして 2 月 7 日にはサウジアラビ
アのヌアイミ石油・鉱物資源相と会談した。この一連の会談で、イラク、アルジェリア、ナイジェリア、エクア
ドル、イラン、ベネズエラの OPEC 産油国 6 ヶ国、及びロシアとオマーンの非 OPEC 産油国 2 ヶ国が、要
請されれば緊急時総会に出席する意向である旨伝えられる。また、このような動きに加え、ロシアやサウ
ジアラビアの減産に対する姿勢が以前に比べ柔軟になってきているとのイラク石油相の見解や、サウジ
アラビアから原油生産量の 5%の削減を実施するとの提案があった旨のロシア石油産業幹部の発言等も
あり、OPEC 産油国等による協調減産に対する観測が市場で強まった結果、2 月上旬には原油相場が上
昇する場面も見られた。しかしながら、2月1日にはサウジアラビアとしては、石油市場を管理する用意は
あるが、OPEC 内外の産油国は協調しければならず、イランが制裁解除後市場に送り込む生産量が不透
明であることから、依然として OPEC 緊急時総会を開催するのは時期尚早であり、少なくとも 2 ヶ月間は
明確にはならないであろう旨OPEC 関係筋が発言した旨報じられている。そして、前述の通り 2 月 7 日に
はベネズエラとサウジアラビアとの間で会談が実施され、ヌアイミ石油鉱物資源相から当該会談は「生産
的であった」との発言はあったものの、具体的な減産策については明らかにならなかったこともあり、市
場関係者の間で減産観測が大きく盛り上がっている、という状況ではない。ただ、OPEC 内外の産油国
の協調減産の観測が市場で発生して以来、OPEC 産油国やロシアの減産の影響をより受けやすい、欧
州や中東の原油価格が、米国の原油に比べて相対的に堅調になっており、この部分の少なくとも一部に
ついては市場による減産に対する期待感が織り込まれていると考えられる。また、2 月 11 日にはマズル
ーイ UAE エネルギー相が OPEC は協調減産の用意がある旨発言したと報じられている。発言の真意に
ついては不透明な部分も多く、今後新たな展開がなければ、従来通り、サウジアラビアを含む中東湾岸
OPEC 産油国としては、他の OPEC 及び主要非 OPEC 産油国による、明確な減産への協力の表明がな
ければ、減産を実施する意図はない、といった原則を改めて表明したと市場に理解されることにより、原
油相場への上方圧力も時間の経過とともに低下していくと考えられるが、新たな方策につき、検討してい
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る旨明らかになれば、原油相場に継続的に上方圧力を加え始める可能性が高まるので、今後の OPEC
産油国、特にサウジアラビアをはじめとする中東湾岸 OPEC 産油国の石油産業関係者の発言に注意す
る必要があろう。
全体としては、今後の見通しとしては、地政学的リスク要因面の原油相場に対する影響は限定的であ
る一方で、米国経済指標類等の面では中国及び世界経済に対する不透明感に伴う株式相場の変動、そ
して米国金利政策動向に伴う米ドル変動により、原油価格に上下双方から圧力が加わるものの、どちら
かという下振れしやすいと考えられる。他方、この先石油不需要期に向かうことで原油相場に下方圧力
が加わる可能性がある。このようなことから、全体として当面原油相場は概して下落基調になりやすいも
のと思われる。そして、原油価格がある程度継続して上昇する場面が見られるとすれば、それは市場で
の売りの殺到が一巡したのちに買い手当が実施される場合や、OPEC 及び主要非 OPEC 産油国との間
で緊急時総会を開催する兆候が見られるといった場合等になると思われる。
4.米国原油輸出解禁がもたらしたもの
従来米国を代表する原油である WTI と欧州を代表するブレントは、品質の観点からは WTI の方が優
れているとされるため、2006 年までは、WTI の価格がブレントのそれを 1 バレル当たり 1~4 ドル程度超
過していた(図 16 参照)。そして中東を代表する原油であるドバイは品質面で劣るため、ブレントに比べ
てさらに 1 バレル当たり 1~4 ドル程度安価な価格で取引されていた。そして WTI、ブレント、及びドバイ
は米国、欧州、中東等の各石油市場の需給状況等を価格に織り込みつつも、価格差によって、各地域
間で原油もしくは石油製品が移動することにより、価格及び需給の平準化が行われる格好となってい
た。
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しかしながら、2006 年3 月 2 日にカナダのパイプライン会社 Enbridge によりシカゴ~クッシング間のパ
イプライン(”Spearhead“システム)が完成(BP がテキサスで生産された原油をシカゴに向けて輸送するた
めに建設したもののその後テキサス地域での原油生産減退により稼働が低下していた既存のパイプライ
ンを 2003 年に Enbridge が買収したうえ原油の輸送方向を逆転させるための改修を実施)したことにより、
既に出来上がっていたカナダのオイルサンドをシカゴに輸送するパイプライン(従ってシカゴ~クッシン
グ間のパイプライン完成前はシカゴ地域で原油の供給が過剰となり、その結果当該地域での原油価格
はクッシングのそれを 1 バレル当たり最大 10 ドル程度下回る状況となっていたと伝えられる)を通じて原
油がクッシングに流入してくるようになった。これ以降、特に春場等の製油所メンテナンス時期になると、
当該パイプライン沿線に立地する製油所での稼働低下等によりそのような製油所で引き取られなかった
原油がクッシングに流入するようになったことから、原油を流出させるためのパイプラインの能力が限ら
れていたクッシングでの原油在庫が増加(実際には製油所のメンテナンス作業状況は年によってまちま
ちであり、必ずしも実際のクッシングでの原油在庫は増加しない場合もあったが、それでも増加するとの
観測は市場で発生しやすくなった)、それがこの地で引き渡される WTI の価格を押し下げる(つまり WTI
がブレントの価格を下回らせる)要因となった。同時に WTI の世界指標原油としての適格性を疑問視す
る声が市場関係者から上がるようになったが、この当時は、春場等のメンテナンスシーズンが終了すると
ともに製油所の稼働上昇時期が接近してくると、クッシングでの原油在庫の低下(もしくは市場での低下
観測)が発生することにより当該地点での需給緩和感が後退、再び WTI 価格がブレントのそれを超過す
る状態となることが多かったことから、WTI の世界原油指標としての適格性を疑問視する市場の声も下火
となった(但し 2010 年にはこのように毎年のように不安定な動きをする WTI 価格を産油国の販売する原
油価格を決定する際の指標原油からはずす動きが出てきた、後述)。
しかしながら、2011 年に入ると問題はより構造的なものとなる。同年 2 月 8 日にカナダのパイプライン
会社である TransCanada がネブラスカ州スティール・シティ(Steele City)からクッシングまでのパイプライ
ンの操業を開始した(これは Keystone パイプラインプロジェクト(第二期)と呼ばれるが、第一期は、カナ
ダのアルバータ州ハーディスティ(Hardisty)と米国イリノイ州パトカ(Patoka)を結ぶパイプラインで、2010
年 6 月 30 日に操業を開始している)。このため、当該パイプライン完成が近づくにつれ、カナダからさら
なる原油がクッシングを目指して流入し、その結果よりクッシングでの原油在庫が高水準(つまり WTI の
引き渡し地点であるクッシングでの石油需給緩和状態)を持続する状態が顕著になるとの市場の観測が
増大したことが、WTI 価格に対して継続的に押し下げの圧力を加える結果となった。
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また、毎年のように不安定な動きをする WTI に対し、サウジアラビアとクウェートが 2010 年 1 月より米
国向け原油輸出に対する指標原油を WTI から ASCI(アスキー: Argus Sour Crude Index、米国メキシコ
湾で生産される Mars、Poseidon、Southern Green Canyon の 3 油種の価格の加重平均)へと変更した他、
イラクも同年 4 月より WTI に代えて ASCI の適用を開始した。また、2011 年 10 月 20 日にはコロンビア
産の Vasconia 原油及び Castilla 原油(いずれも重質高硫黄原油とされる)について原油価格設定の基
準となる原油を WTI からブレントへと変更したことが明らかになっており、翌 21 日にはブラジル国営石
油会社ペトロブラスからも同国産原油の米国向け価格をやはり WTI からブレントへと変更する旨発表が
あった。このように、WTI は世界の原油価格の基準油種としての性格を失ってきた(現在 WTI 価格を基
準としているのはカナダ、ベネズエラ等である)。
他方、クッシングをめぐる状況はその後変化する。それはクッシングに原油を流出させる要因と流入さ
せる要因双方が発生したことであった。まず、流出させる要因であるが、2012 年 5 月 30 日には、それま
で米国メキシコ湾岸からクッシングに原油を輸送していた Seaway パイプラインが輸送方向を転換、クッ
シングから米国メキシコ湾岸へと原油を輸送することになった(当初輸送能力日量 15 万バレル、その後
2013 年 1 月 12 日には日量 40 万バレル、2014 年 7 月 14 日には日量 85 万バレルへ能力が引き上げら
れた)。また、2014 年 1 月 22 日には Gulf Coast パイプラインも同じくクッシングからメキシコ湾岸へと原油
を輸送すべく日量 70 万バレルの能力で操業を開始した。次に、流入させる要因であるが、2010 年前後
以降米国では中西部などでシェールオイルの生産が増加傾向を示した。そしてそれに併せてクッシング
へ流入するパイプラインが完成した(表 1 参照)ことにより、クッシングにより多くの原油が流入するように
なった。このため、クッシングの原油在庫も減少しないどころか、むしろ増加傾向となった(図 17 参照)。
また、中西部から米国メキシコ湾岸への原油輸送量も増加したが、シェールオイルは軽質低硫黄原油が
主流であるのに対し、米国メキシコ湾岸では主に重質高硫黄原油を処理する製油所が数多く存在する
(なお、米国メキシコ湾岸でも軽質低硫黄原油を利用する製油所も存在すると推定されるが、そこでは従
来利用されていたアルジェリア産もしくはナイジェリア産の軽質低硫黄原油を国産のそれで置換済みと
なっていると見られる)ことから、原油の品質の不一致により、軽質低硫黄原油の利用が進まない状況と
なっていた。
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表1 2014年以降に完成したクッシングへ原油を流入させるパイプライン(輸送能力:日量万バレル)
パイプライン名
開通年月 輸送能力 起点
終点
備考
White Cliffs Pipeline
2014年8月
15 Platteville, Colorado
Cushing 2016年半ばに日量21.5万バレルへと能力増強見込み
Pony Express Pipeline
2014年11月
23 Guernsey, Wyoming
Cushing
Flanagan South Pipeline
2014年12月
60 Pontiac, Illiois
Cushing
出所:各種資料をもとに作成
そのような中、2015 年 12 月 15 日に、米国からの原油輸出が事実上解禁された。同国では 1974 年の
第一次石油ショックに伴い、エネルギー安全保障確保の観点から 1975 年に原油輸出を禁止していた。
ただ、最近では、米国で WTI がブレントに対して価格が割安であることを是正するために、国内原油生
産業者を中心として原油輸出の解禁を要望する動きが出ていた。もっとも、オバマ政権は、米国からの
原油輸出解禁により国内のガソリン小売価格が上昇する懸念があること(また、国内産原油価格が上昇
することにより精製利幅が縮小することを心配する精製業界からの反対もあった)を考慮し、米国原油輸
出解禁の国内石油市場への影響に関する調査を実施するなど慎重に対処したうえで、解禁が妥当と解
されれば、解禁するという姿勢だったと見られ、それ以前に米国議会が原油輸出解禁を決議しても、オ
バマ大統領は拒否権を発動すると言われていた。そして、そのような対処方法は時間を要することに加
え、特に 2016 年は大統領選挙を控えているなどの政治的要因から重要な懸案事項に関しては決定が
困難であるといった状況下でもあったことから、米国での原油輸出解禁は早くても大統領選挙が終了し、
新大統領が就任する 2017 年以降になるのではないかと見る向きもあった。しかしながら、2016 会計年度
の予算案につき 2015 年 12 月 16 日までに決着する必要性に迫られた(決着しなけば、政府機能が停止
する恐れがあった)民主党は、共和党から提案されていた予算案とともに提出された原油輸出解禁法案
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
につき、オバマ政権の推進する環境政策である、再生可能エネルギー(太陽光及び風力発電)に対する
税額控除の 5 年間延長等を予算案に含めることを条件として、合意した。原油輸出解禁に関する主な決
議内容は以下の通りである。
(a)Energy Policy and Conservation Act 103 条及び当該法律の関連条項を廃止する。
(米国内の石炭、石油製品、天然ガス、石油化学製品及びエネルギー関連物品・施設等の輸出を大統領権限により規制
する条項)
(b)他の法律のいかなる規定にも拘らず、化石燃料を含むエネルギー資源の効率的な探査、開発備蓄、供給、マーケティ
ング、価格決定及び規制を促進するために、連邦政府は原油の輸出に係るいかなる規制も課してはならない。
(c)憲法及び International Emergency Economic Act 他法律に規定される大統領の権限は何ら制約を受けない。
(d)大統領は以下の場合に米国からの原油輸出に対して 1 年未満の期間を定めて輸出ライセンスの要求又はその他の制
限を課すことができ、以下の(A)に基づく措置は 1 年未満の期間を定めて 1 又は複数の延長をすることができる。
(A)大統領が国家緊急事態を正式に宣言した場合
(B)大統領令又は議会による制裁又は通商制限を課す場合
(C)商務長官がエネルギー長官と協議の上で大統領に以下の報告をする場合
(ⅰ)米国の原油輸出が直接的に継続的な供給不足又は世界の原油相場に重大な影響を及ぼしている
(ⅱ)それらの供給不足や価格高騰が米国の雇用に継続的かつ実質的に影響を与える又は与える可能性がある
米国議会等で原油輸出解禁に向けた動きが出てきた 12 月14 日以降、それまでブレントを 1 バレル当
たり 2~4 ドル程度ブレントを下回っていた WTI は価格差を縮小し、両原油の価格はほぼ同水準になっ
た。また、それまで WTI の価格は品質の劣るドバイのそれとほぼ同水準であったが、WTI はドバイに対
してプレミアムを形成するに至った。つまりそれはブレント及びドバイに対して WTI が相対的に価格を上
昇させたと考えることができ、品質の面でブレントやドバイよりも優位にある WTI の価格が、より合理的に
市場から評価するようになったと見ることができる。その意味では、世界の石油市場の統合の度合いが
増したと言うこともできよう。しかしながら、2006 年以前のように、WTI 価格が持続的にブレントのそれを 1
バレル当たり 2~4 ドル超過する状況には至っていない。それどころか、最近では再び WTI の価格がブ
レントのそれを 4 ドル弱程度下回る状況となっている。この背景としては、いくつか考えられる。まず、前
述の通り、クッシングから米国メキシコ湾岸へと原油を輸送するパイプラインは増強されたのであるが、既
にそれらのパイプラインが相当程度利用されており、これ以上大幅に増加させる余地が限られていること
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に加え、特に春場に米国中西部やメキシコ湾岸地域での製油所の稼働が低下し、原油精製処理量が減
少すると、製油所により受け入れらなかった原油が、クッシングの原油貯蔵タンクに滞留しがちになること
で、WTI の受け渡し地点であるクッシングの原油在庫が増加、2 月 5 日の時点で既に 2004 年の週間統
計情最高水準である 6,470 万バレルに到達する(図 17 参照)とともに、当該地点の貯蔵能力である 7,300
万バレルからそう遠くない水準となっている。このため、足元クッシングでの原油需給の緩和感が市場で
感じられているとともに、この先しばらくは製油所の稼働低下が継続しやすい時期となることから、クッシ
ングでの原油需給のさらなる緩和が市場で意識されやすくなっていることが、ブレントに比べ WTI に相
対的に強い下方圧力を加えているものと考えられる。また、この価格差は 1 月下旬以降発生しているが、
この時期は、OPEC 及び非 OPEC 産油国間での協調減産の可能性に関して関係者間での発言が複数
なされた時期でもあった。協調減産が実現すれば、相当程度の減産を実施すると予想される中東湾岸
OPEC 産油国や主要非 OPEC 産油国であるロシアに近い、つまり減産の影響を受けやすい、中東や欧
州市場の原油価格(代表的なものはドバイであり、ブレントである)が相対的に上昇しやすい反面、国内
生産が豊富であり、かつ中東やロシアの原油輸入が限定的であることから、欧州等に比べ協調減産の影
響を受けにくい米国産原油(代表的なものは WTI である)の価格が相対的に下落しやすくなる。このよう
なことも、ブレントやドバイを WTI に比べて堅調にしている一因と考えることができる。
そして、今後 WTI 原油価格がブレントを継続的に上回るには、少なくとも米国でのシェールオイル等
中西部での原油生産の減少傾向が顕著になる(従ってクッシングでの原油在庫が減少傾向を示す)か、
もしくはさらに米国国内でのパイプライン等のインフラが整備されることにより、米国内陸産原油の輸出が
活発化することが必要になるものと思われる。それまでは、特に製油所がメンテナンス等で稼働が低下し
原油精製処理量が減少しやすい、そしてその影響でクッシングに原油が滞留しやすい春場及び秋場の
不需要期を中心に、WTI がブレントに対して割安になる場面が見られる可能性があると考えられる。他方、
持続的に WTI がブレントに対して、プレミアムを維持できれば、相対的にブレント原油価格は割安になり、
そのようなブレントをもとに価格決定される原油を輸入したり、また、欧州等で精製されたガソリン等を輸
入したりする米国北東部(主な受け渡し地点はニューヨーク港)でのガソリン価格は米国原油輸出が解禁
されない場合に比べ相対的に低下する可能性がある。また、米国北東部でのガソリン価格は米国全土
のガソリン価格に影響を及ぼすため、米国全体のガソリン価格も相対的に低下すると考えられる。他方、
米国内でのガソリン価格が抑制される反面、相対的に価格が上昇しやすくなった WTI に基づき価格が
決定される原油が主な原料となる米国中西部における製油所の精製利幅は圧迫気味となろう。また、相
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対的にコストの高い鉄道による原油輸送も影響を受けると考えられる(ブレントとの価格差が縮小すること
から、高い鉄道輸送コストを加えると、WTI がブレントに比べ相当程度割高になるため)。なお、米国から
今後輸出される原油は軽質低硫黄が中心となると考えられるため、主に欧州、中南米、カリブ海地域の
比較的構造が単純な製油所がそのような原油を受け入れる可能性があろう。
また、今後再び WTI が基準油種の座をブレントから奪い返すといった展開になるかというと、それに
は、原油品質や国際石油情勢を反映するような形で WTI の価格がブレントの価格を持続的に超過する
状態になること、そのうえで、ブレント価格の基準油種としての適用に大きな不具合が発生する、といっ
た条件等が揃わないと、費用と労力をかけてまで WTI を基準油種として戻すだけのインセンティブが
産油国側には働きにくいと見られることから、WTI の世界指標原油としての地位の回復までにはなお長
い道のりを要することになるものと考えられる。
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