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鳥にうんざり
然 汲 分 な と み 晴 か ま 蓼科・駒が池 の ど 羽 新 今 九 毛 酒 日 十 の を 十 蛇 籠 の 目 忽 直 野 な 本 喉 絡 九 曼 い 蛇 な す た 紅 籠 だ 珠 尽 の け 沙 能 村 研 三 の に む 折 華 り 目 し 随筆賞 昨 年、「 沖 」 創 刊 四 十 五 周 年 を 記 念して、初めて随筆集『飛鷹抄』を 刊行したが、これが日本詩歌句協会 の随筆大賞に選ばれ、九月二十四日 に授賞式があった。 日本詩歌句協会は、詩、短歌及び 俳句(詩歌句)のそれぞれの魅力を 結集し、広く一般市民に伝えるため の文芸講座及びイベント等の企画を し、詩歌文芸の発展に寄与すること を目的として発足した。 この運動を提唱したのが詩人の宗 左近氏で、今年は宗さんが亡くなっ て十年目にあたり、市川に詩碑が建 立された年でもあり、そんな縁もあ ることから、快く賞をいただくこと にした。 宗さんは日頃から詩歌の一つのジ ャンルに捉われることなく、文芸全 般が広く交流することを提唱された 方で、宮城県の中新田賞(現・加美 町)や、市川市の市民文化賞の制定、 奔 整 秋 放 な へ ぬ 走 手 こ り 足 と 千葉市・青葉の森 へ 天 つ 根 が 里見公園・じゅんさい池 点 柿 は の 雨 後 手 新 桶 な 秋 に 跨 爽 ぎ ぎ の 気 の「 灯 枯 風 像 と る 野 澄 生 翔 躙 」 め 態 く り 句 り 園 る 口 碑 登 高 の 途 次 に 歌 碑 句 碑 そ し て 詩 碑 原 豆 市川でも俳人、歌人、詩人、その他 文筆家が一同に会する会を定期的に 開いて下さった。 宗さんに賛同し私も数年前から入 会し、本年六月には宗左近さんにつ いて講演をした。 『 飛 鷹 抄 』 に 対 し て、 選 考 委 員 の お一人の坂口昌弘氏に「結社誌「沖』 に書いた十六年分の随筆と三年分の 時評を纏めている。多くは市川市と 文化関係の仕事を通じての体験談で あり、毎回簡潔に纏めている。例え ばエッセイ『宗左近宇宙』では二か 月宗氏の自宅に通い文化人展を開催 したことなどが書かれている。貴重 な平成俳句史の背景となっている」 と評していただいた。 当日は千田百里同人会長、辻美奈 子編集長をはじめ「沖」からも多く の方々がお祝いにかけつけてくれ た。 私個人に頂いた賞は「俳人協会新 人賞」以来で、少し面映ゆい面もあ ったが嬉しいことであった。 能村 研三 鍵 安 蒼茫集 穴 居 鍵 穴 を 抜 け 月 光 の 町 に 出 る 煙茸けむり出しても消えられず 故 郷 に 縁 な く な る 冬 瓜 汁 葡 萄 棚 光 り と 陰 の 交 ざ り あ ふ 次 の 世 へ 手 ぶ ら で 行 か ん 衣 被 の 辻 千 正 田 盆 道 を 呆 け し 父 の 迷 は ぬ か 京 山 車 廻 す き し み 百 遍 京 の 辻 虚と実のあはひに咲いて黴の華 一 滴 に 百 音 聴 く も 秋 の 水 新蕎麦を待つ間水車のよどみなし 浩 敬 字余りと言ふべし秋のサングラス 荒 井 千 佐 代 卓 袱 台 の 瑕 は 家 暦 よ 秋 の 暮 許すといふは 海 霧 深 き 隧 道 三 つ 夕 弥 撒 へ 韮 の 花 許 す と い ふ は 難 し き 桟 橋 と 船 腹 こ す れ 合 ひ て 秋 秋昼のオラショは寄する波のごと 纜 の 張 り て は 緩 ぶ 盆 の 月 矢 崎 す み 子 畦行くや来るな来るなと曼珠沙華 パンと檸檬 一 皿 に パ ン と 檸 檬 の あ る 平 和 中 の 天 や 秋 太 槿 越 森 辻 岡 美 正 奈 葛あらし風に背後のありにけり 九 月 く る 真 白 き も の に 握 り 飯 超 葛や葛絡まることに倦みてをり 燈 火 親 し 古 机 に は 肥 後 守 毒 茸 踏 ま れ て 美 し き 毀 れ や う 滅 び に も 輝 き の あ り 白 木 槿 稲雀甲斐より攻めて来たりけり ふるさとは遠かなかなの渦の中 木 噎せつたき香や常陸野の中稲刈 壺 昭 白 銀 の 夜 を 濃 く し た る 貝 割 菜 に 林 政 郎 優 駿 の 色 な き 風 を 競 り 抜 け し 中 す 田 江 蛍 掌 七 つ 星 夜 の 大 海 へ 秋 零 す 遠 浅 の 銀 波 に 秋 の 貝 一 つ 球 武 士 の 塚 山 霧 の 尾 の 奔 る 結 百 僧 の 一 斉 に 立 つ 涼 し さ よ クリップに微かな磁力鳥わたる 目 薬 の 雫 を 待 て ば 秋 の 風 か ち か ち の 雑 巾 が 待 つ 休 暇 明 八 朔 や 家 の 中 に も 風 の 道 吉 星 飛 ん で 高 原 キ ャ ベ ツ 結 球 す 福 つくつくぼふし絶交の三日ほど 至 新 涼 や 枕 を ぽ ん と 裏 返 す 桃 の 香 の 桃 の 形 を 超 越 す ・ 残暑の顔をありありと 心 太 反 論 い つ も 腰 く だ け み つ よ つ で 足 り る 至 福 よ 衣 被 つつしみの紅より昏るる酔芙蓉 50 木 槿 落 つ 地 下 水 脈 と 響 き あ ひ A r o u n d 作 子 シンフォニー 望 月 晴 秋口といふやはらかき響きかな 森はいま色なき風のシンフォニー 萩の風もののあはれを揺らしゐる 市川市より やさしさに色ありとせば芙蓉とも 敬 老 日 ど き り と な り し「 祝 」 受 く 千 田 百 台 風 の 去 り 陽 の わ つ と 若 返 る いろめく 藤森すみれさん勇退 二 十 年 や 裾 野 育 み 爽 や か に な ほ 遥 か め ざ す 裾 野 や 天 高 し 色烏にいろめく大正ガラスかな 大 川 の や が て は 天 の 川 と な る 晩 菊 や 木 偶 人 形 は 地 を 踏 ま ず 次兄逝く 水 線 杉 本 光 兄 と 我 隔 つ る 秋 の 簾 か な 吃 バイクの日いな俳句の日涼新た 美 里 祥 雲 海 の 吃 水 線 に 八 ヶ 岳 登 高 す 日 本 海 の 見 ゆ る ま で 秋 雨 に し か と 根 付 け り 御 柱 秋 思 な ほ 上 り 框 に 腰 か け て 早 に の 法 閂 台 風 と 甲 対 州 峙 千 草 宮 内 と し 子 缶 詰 を 開 け る に 難 儀 防 災 日 足 足 早 に 銀 座 は 秋 の く る と こ ろ 二百十日パンかライスか問はれをり 少し巻きすこし傾ぎて秋すだれ う ぶ す な の 大 河 を 渡 り 盆 の 月 膝 折 れ ば こ ど も の 視 線 庭 花 火 貫 油 揚 げ に 裏 表 あ り 敬 老 日 尺 門 氷 店 尺 貫 法 を 活 き 活 き と 校 成 宮 紀 代 子 肩 の 児 を 更 に せ り 上 げ 揚 花 火 手の甲のざはりと老ゆる日焼して 靴合はせ 類 型 の 分 譲 住 宅 い わ し 雲 毒 茸 白 さ 競 ひ て 妖 婦 め く 葛 咲 け り 街 道 跡 と い ふ 窪 地 かつて世に軍歌てふあり芋の露 遠 く 鳴 く 土 鳩 の こ ゑ や 晩 夏 光 油 蟬 今 更 何 を 急 か す か な 菅 谷 た け し 走り根に掛けて色無き風を聞く 節 分譲住宅 兄 弟 を 正 す バ リ カ ン 二 学 期 へ 所 子 病 み 抜 け て 初 秋 風 を 纏 ひ け り 田 子 にはとりを叱る媼や紫蘇は実に 群 れ 鳥 の 啄 む 夕 日 刈 田 あ と 爽 秋灯のはしやぐ銀座のにはたづみ 秋 秋 爽 の 空 気 踏 み ゆ く 新 畳 紺 碧 の 風 切 つ て ゆ く 秋 の 航 時止まるやうに母座す白露かな 秋 蝶 の 草 に 動 悸 を 鎮 め を り 鮨 詰 の 秋 思 の 顔 と 乗 り 合 は す 康 「 あ れ 」「 そ れ 」 で 会 話 の 育 つ 良 夜 か な 染 新 涼 や 黒 松 保 護 に 署 名 し て 久 裏 海 へ 筋 金 入 り の 瀧 一 本 よ そ ふ て ふ 言 葉 美 し 栗 御 飯 根 羽 織 る も の 少 し 厚 目 に 月 見 船 眩 驚 の 像 秋 天 に 何 を 吼 ゆ り 秋 螢 膝 の 高 さ を 飛 び 交 へ り ひるがへる朴の落葉に靴合はせ 走 赤 松 の 幹 ぴ り ぴ り と 秋 日 濃 し 潮鳴集 月 涼 し 篠 藤 千 佳 子 恐 竜 の 背 骨 な だ ら か 月 涼 し 葉 宿題半ば赤とんぼ増えてをり 声といふ個性つくづく蟬時雨 花 トマトのやうな笑顔で負けず嫌ひなり 立 秋 や 両 手 を 上 げ て 滑 り 台 山 蓮見舟ぐいと紅蓮の森分くる 目覚しを止める手のひら涼新た 内 魚網干す泡立草のまぶしき日 砂浜に打ち上げられし残暑かな 負けず嫌ひ 台風来ずしり立ておく広辞苑 はたと蟬の時間に谷のあるごとく 青 畳 足 裏 で 知 る 秋 の 声 地のほてり残りて虫の夜となりぬ 落 日 の 色 吸 ひ つ く す 唐 辛 子 能 美 昌 二 郎 木の影を脱いで晩夏の蝶となる 一合の酒と秋刀魚の刺身かな 落日の色 遠雷や肩組みなほす山の樹々 身 長 は 登 四 郎 ゆ づ り 竹 の 春 中 島 あ き ら 声かけてより蜻蛉に慕はるる 蟬の時間 秋暑し仮面殖やしてゐるやうな 山 子 七 種 年 男 赤 と ん ぼ 浅 野 古いほど記憶鮮明赤とんぼ 案 稲刈つて村ぢゆうが広くなる午後 土木課の女性の技師や赤とんぼ 崎 どぶろくやイエスタデーを聴きながら 峰 測量の基点の杭に赤とんぼ 機 刈取られ途方に暮れてゐる案山子 外 太平洋は雲湧くところ烏賊を干す 室 鵙 日 和 若 狭 に 残 る 塩 の 道 子 野分去る刺繍の裏の縺れ糸 公 木偶姫の木の声で泣く木染月 原 室外機路地の残暑を膨らませ 栗 鳳仙花はじけて古稀の出来心 ぐい呑みは備前と決めて新走 日 登高や町ジオラマのごとくあり 瀬を経たる水のまろみや鮎落つる 生 秋風や連ねて軽ろき千羽鶴 偏らず世を円く見る蜻蛉の眼 誕 夕かなかな擦り傷の児におまじなひ 成 吉 規 弘 大 沢 美 智 子 はらわたの苦味は履歴秋刀魚食ふ 飛ぶもの 水澄むや亡き夫にくる誕生日 孝 燃えきらぬ夕焼を呑み日本海 公 爽涼や岸辺にぽつと常夜燈 八 月 や 終 り の 速 き 砂 時 計 山 祭笛寅さん像の動きたさう 飛ぶもののなべてまばゆき水の秋 町 初 嵐 何 も な さ ざ る 一 日 よ へくそかづらたぐれば大樹また大樹 薬 秋澄むや避けて通れぬ六本木 頬杖を解くや鶲の来てをりぬ 媚 秋の夜のシングルモルトてふ媚薬 沖作品 爽やかに山の日の山連なりぬ 初秋の声聞くやうにひらく文 流木に砂のしめりや秋の浜 帰省して多弁の家系の中にゐる 群 青 の 夜 の 帳 や 花 火 待 つ 曼珠沙華燃えて近衛師団跡 爽 籟 の 沖 へ 刻 つ げ 風 見 鶏 八月のあの日あの子とけんけんぱ 潮騒の風に研がるる青蜜柑 中 能 登 の 荒 行 僧 や 滝 開 伏して児はファーブルとなる夏休み 帯 草 音 に 出 で ざ る 風 孕 み 干瓢を干すや日の研ぎ風の研ぎ 骨壺の姉ぎゆつと抱く萩の坂 涼 新 た 山 湖 に 艪 音 風 の 音 須賀ゆかり 藤代 康明 玉 市川市 下村 辰枝 埼 葉 千 能村研三 選 ミシン目で紙切る音や涼新た ヨーグルトにジャム沈みゆく九月かな 秋めくや何か出来さうな気のして 小さく振るさよならの手よ秋の駅 秋灯の増ゆ東京に近づきて 月今宵語り出すやう杜甫季白 桔梗のひらくや切絵開くごと 言 霊 を 沈 め て 秋 の 泉 か な 百歳の姑の起居美し枝垂れ萩 うたげなる海のしぶきやぺーロン祭 木漏れ日に色を返すや薄紅葉 フルートを吹く裸婦像や小鳥来る 秋晴やフリー切符の途中下車 猪垣の破れ目潜り子の帰る 数珠玉のこぼるる色となりにけり 崎 塩野谷慎吾 田川美根子 小川 流子 長 葉 市川市 千 代 康明 曼 珠 沙 華 燃 え て 近 衛 師 団 跡 藤 皇居にほど近い北の丸公園に近衛師団跡がある。現在は近代 美術館になっているが、明治維新以後政府が「天皇の警護」を 名目に近衛師団の兵営地が設置された。江戸城の北の丸があっ たところで現在は緑豊かな公園として散策や森林浴、ジョギン グなど市民に親しまれる公園である。北の丸公園からお堀の皇 居側の土手には真っ赤な曼珠沙華が咲き始める。都内でも有数 な曼珠沙華の群生地としても知られている。 強い太陽の日差しと適度な風にさらされる。「日の研ぎ」「風の 干瓢の収穫期は六月ごろから九月ごろまでで、収穫を終えた 干瓢は熟練の人たちの職人技でシュルシュルと剥かれ、白い帯 村 辰枝 干 瓢 を 干 す や 日 の 研 ぎ 風 の 研 ぎ 下 賀ゆかり 爽 や か に 山 の 日 の 山 連 な り ぬ 須 研ぎ」のリフレーンが細やかな作業を描写している。 はひとつひとつ丁寧に竿に掛けられ、天日干しにされる。夏の 今年から八月十一日が「山の日」に制定され、国民の休日と なった。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」こと 「山の日」の季語の本意が確立されていないので「爽やか」と い間に自由に句づくりができるためであろうか。須賀さんは、 語には、俳人たちが飛びついた。季語のイメージが固定されな 〈以下略〉 言えば下半期が始まる訳で、何か出来そうな勇気が湧いてきた。 て少し積極的に動いてみようと心が定まる。十月からは年度で 後半にさしかかり、今まで躊躇していたことも、心を入れ替え 夏のうんざりする暑さから開放されると、人間は俄かにやる 気が出てくる。暑さという肉体的環境の変化だけでなく、一年も 川 流子 秋 め く や 何 か 出 来 さ う な 気 の し て 小 いう初秋の季語を敢えて用いた。「山の日」の山々は、自分た 日を祝っているようであった。 ちが主人公の祝日を、肩を並べながら誇らしげに連らなりこの ての力は未知数である。しかし、「山の日」という初ものの季 語となるわけだが、まだできて間もない祝日なので、季語とし に相応しい休日として親しまれている。「山の日」は初秋の季 を趣旨としているそうだが、七月の「海の日」と共に、夏休み 能村研三