...

詳細はこちら

by user

on
Category: Documents
24

views

Report

Comments

Transcript

詳細はこちら
第
3部
「地域」を考える―自らの変化と特性に向き合う―
第1 節
事 例
3-1-4
勝連漁業協同組合等
地域内の多様な主体の連携による
消費者を意識した「もずく餃子」の開発と流通の展開
勝連地域(旧勝連町)は沖縄県中部に位置し、2005
全国シェアの 9 割を占める中、勝連地域は県内シェアのほ
年に旧具志川市、旧石川市、旧与那城町と合併してうる
ぼ半数を占めるほどの産地である。しかし近年、豊作が
ま市(人口:119,314 人(平成 22 年国勢調査)
)となっ
続いたとともに、元来、酢の物以外の食べ方が浸透して
た。当地域は、勝連半島の中城湾側及び浜比嘉島、津堅
いないことから消費が広がらないことで安く取引されるよ
島で形成されており、農業や漁業が盛んであるとともに、
うになり、生産しても捨てるといった状況が続き、もずく
2000 年には「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として
養殖業者のみならず地域経済は厳しい状況となっていた。
勝連城跡が世界遺産に登録されており、観光客が訪れる
これに対して勝連漁協では、もずくの販売量を増やす
地域でもある。うるま市全体でみると昭和 40 年代から人
ために各種団体とも連携しながら商品開発をしてきたが、
口は増加し続けているが、勝連地域にあっては人口減少
もずくを用いた新商品を開発すること自体に力点が置か
が進んでいる。
れていたため、新商品を開発してもなかなか販売額を伸
沖縄で昭和50年代に本格的に養殖が始まったもずくは、
ばすことができなった。
中小企業白書 2015
293
第1章
地域活性化への具体的取組
そこで、コープおきなわの担当者のアドバイスもあり、
て地域に幅広く浸透し、以前は 1日50 パック程度だった
県や市をはじめ地域の給食センターや流通事業者など12
売上が、1 か月半で 36,000 パックを売り上げるまでに発展
団体が集まって議論をした。その結果、消費者の健康志
した。
向を意識して、もずくの持つヘルシーさを活かし、肉を減
さらに、沖縄の地理特性を活かして海外への販売にも
らしたヘルシーな「もずく餃子」を開発することになった。
着手した。「肝高の阿麻和利」の地域文化を活かしつつ、
もずくのイメージを強めるために、皮にももずくを練り込
海外では定着していない日本ならではの食文化である“ 焼
むこととした。製造した餃子は、地産地消とヘルシーさも
き餃子 ” に着目し、試食を通して海外に普及させるととも
あって、販売以外に学校給食でも提供してもらうことに
に、“日本の食 ” が有する安全性を重視して国産の原材料
なった。また、うるま市内の中高生による舞台「肝高の
にこだわっていることを PRした。その際、12 団体では海
阿麻和利」と連携してパッケージに盛り込むとともに、売
外の販路が十分にはないため、実際に香港、マカオ、シ
上の一部をその舞台の振興のために寄付する仕組みを構
ンガポールで 20 店舗以上の飲食店を経営する「えんグ
築した。
ループ」との連携を図ったことで、アジアを中心に海外に
県庁での記者発表や給食を通しての情報発信等によっ
おいても日常的に販売されるようになっている。
文化振興策も盛り込んだ「もずく餃子」のラベル
【事例からの示唆】
■成功要因
して試作品が作られることが多いが、実際に購入する消
費者のニーズを的確に捉え、買ってもらえる商品を開発し
地域の特産品であるもずくの活用に向けて、行政を含
ていくことが重要であるといえる。特に「餃子」という一
めて地域内の多様な団体が集まって議論したこと、さらに
般的な食べ物であるために、中高生の舞台や地域の歴史
その実践に向けて各々が経営資源を補完的に提供しあっ
を商品パッケージに盛り込み、PR 活動も積極的に展開す
たことが成功要因として挙げられる。このような場づくり
るなど、商品を購入してもらう動機づけを仕掛けることも
を、行政や中間支援的に関わることができる第三者に求
重要であるといえる。海外では、日本固有の焼き餃子の
めていく姿勢も重要であるといえる。
調理方法やおいしさを一から伝える必要もあり、外国人
特産品の製造・販売にあたっては、生産と流通の両面
で専門的知識や経験が必要なため、連携することで新た
の風習や考え方を把握しながら商品を開発し、伝えていく
ことが重要と考えられる。
な挑戦に挑んでいくことが可能となる。特に海外に販売し
ていく際には、新たな販路を開拓して手続き等を整える
■今後の課題
には多大な労力とコストを要するため、既存の流通事業
もずく餃子を軸に、多様な農産物を一緒に海外へ輸出
者等に販路開拓のサポートをしてもらうことも重要である
することが可能であるため、野菜や日本製中華料理商品
といえる。
などを海外に販売していくとともに、他の国・地域へ販路
を拡大していくことも課題である。
■地域資源の活用
-消費者目線の商品開発-
特産品開発に際しては、思いつきや他の事例を参考に
294
2015 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan
Fly UP