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日本食文化の世界無形文化遺産登録に向けた フランス現地調査報告
資料3-1 ⑥-① 平成 23 年 9 月 28 日 日本食文化の世界無形文化遺産登録に向けた フランス現地調査報告 佐竹力総 日時:平成 23 年 9 月 4 日(日)~10 日(土) 場所:フランス国、パリ市 調査団メンバー: ①佐竹力総 ㈱美濃吉代表取締役社長、(社)日本フードサービス協会会長 ②山口範雄 味の素株式会社代表取締役会長 ③辻 辻調理師専門学校校長 芳樹 ④浅野由佳理 ㈱三菱総合研究所研究員 ⑤出倉功一 大臣官房政策課食ビジョン推進室室長 ⑥井上俊樹 大臣官房政策課企画官 在フランス大使館 吉松 亨1等書記官 他 〔1〕ヒアリング訪問各所 (別紙ご参照、ヒアリング結果一覧表) 〔2〕世界無形文化遺産とは ・有形文化遺産は 1972 年発足、現在 40 年目、 文化遺産 平泉他 12 件、自然遺産 小笠原他 4 件 計 16 件 ・無形文化遺産は 2003 年 10 月採択、2006 年 4 月 20 日条約発効 現在 213 件が登録、日本からは歌舞伎や人形浄瑠璃文楽、 京都祇園祭の山鉾行事など 18 件が登録 〔3〕訪問先、質問内容 ・ガストロミーについて ・登録に向けた取り組み ・登録後の取り組み ・記載提案書について ・保護措置について ・日本の骨子案について等 ⑥-② 〔4〕ガストロミーについて 定義は難しいが、もともとガストロミーという単語は 19 世紀に文筆家が作った言葉。 本来は胃袋の意味、エリート、ぜいたくなイメージ? 一般的には、みんなで楽しく会食、人生の重要な時の食事、祝い事の時の食事等、各地での食 事を大切にするという食事の内容ではなく儀式的なものを指す フランス人は食事に平均 2 時間かけるし、エンゲル係数も高い、フランス人のガストロミーを グロバリーゼーションの波から保護する働き 〔5〕フランスの登録にいたるまでの経過 ・1980 年 ジャック・ラング文化大臣「料理はアート」 全国料理芸術委員会[フランス料理の遺産リスト(材料、料理法、人を網羅)をまとめた] (全 20 冊) ・2000 年 ジャック・ラング教育大臣 食文化の概念確立 ・2002 年 国民栄養健康計画 10 ヵ年計画スタート トウール市にヨーロッパ食の歴史・文化機構(IEHCA)の設立、 将来の UNESCO 登録を見据えた検討開始 IEHCA のフランス、シベリエ氏が中心に 食の遺産と文化のフランス委員会 ・2007 年 (MFPCA)の立ち上げ ・2007 年 フランス国立科学研究センター(CNRS)が発足 ジャン・フランソワ・サブレ氏、ブルーノ・ロリウー氏 UNESCO 申請へサルコジ大統領を説得 ・2007 年秋 農業省がリーダー。最初、文化省はあまり興味を示さなかったがその後 UNESCO とのやり とりは文化省が実施。 ・2008 年 サルコジ大統領が UNESCO 登録、推進を発表 政治、経済界、業界が一緒に ・2007 年 IEHCA が立ち上げた、トウール市の学者を中心とした UNESCO 申請に向けて創 立された NPO 法人 MFPCA(食の遺産と文化のフランス委員会)が申請書作成や国内活動の実施 ジェーン・ロバート・ビット氏 ・2009 年 政府が UNESCO 申請 ・2010 年 1 月 15 日 提出 MFPCA 会長(夫人は日本人の戸塚真弓さん) 事前に UNESCO に提出していた申請書を修正後、正式な最終版として ⑥-③ ・2010 年 7 月 農業水産近代化法 ・2010 年 9 月 全国食品計画 ・2010 年 11 月 14 日 UNESCO に登録 〔6〕申請のポイント ・文化として本当に国民にとって大切な事であり、且つ世代を超えて伝達され、 常に新しく発展していく可能性があるかどうか? ・UNESCO の性格上、一部エリートのものではなく、民俗学的な考えに基づいているため、 広く一般大衆に開かれ、保護すべき内容のもの ・経済的観点(コマーシャリズム)に触れる箇所は一切削除する 申請前:フランス料理 申請当初:フランスのガストロノミー 登録時:フランス人のガストロミー的食事(美食術) 〔7〕登録後の取り組み 特に大きな変化はなかった。ただし食に関する普及啓発、教育は促進されつつある 〔8〕保護措置 (農業省の食品に関する計画や法律) 2000 年 国民栄養健康計画(10 ヵ年計画スタート) 2010 年 7 月 農業水産近代化法 2010 年 9 月 全国食品計画 4 つの柱 ①教育、普及 ②高品質の食品の提供 ③情報提供、知識啓蒙 ④食の遺産の保護伝承 ①「味覚の教室」 小学生を対象(7 才~11 才) 8 回シリーズ、最初の 6 回は味覚、残り 2 回はガストロミーについて学ぶ ⑥-④ ②「食品リストの作成」(WEB 公開予定) 農学校の生徒に、全ての食品(農業、水産の第一次産品を含む) レシピ―、調理法のリストアップをさせ、ウェブにアップする予定 ③ガストロミーセンターの設立予定 ④「ヨーロッパの文化遺産の日(毎年 9 月の第3週目の週末)」に食のイベントを開催 〔9〕日本の骨子案について (名称) 会席料理を中心とした伝統をもつ特色ある独特の日本料理 (日本料理の要素) ①多様な自然に基づく新鮮な食材を、自然の味そのものを生かし用いること (自然に基づく多様な食材) ・四季折々の季節に応じた多様で豊富な食材 ・素材の良さを引き出し、可能な限り生かす工夫 ②栄養バランスの取れた食事構成であること(健康的) ・米飯を中心とし、多種類のおかずと漬けもので構成される食事 ・栄養バランスの良い健康的な食事 ③出汁のうま味を中心に発酵調味料・漬けもの・日本酒などの多様な発酵食品が 取り入れられていること(発酵食品) ④食事が年中行事や人生儀礼などに結びついていること(行事との連携) ・季節の節目節目に行われる様々な年中行事や人生儀礼の核 ・食事の場の共有により地域コミュニティや家族・友人等を結び付ける役割 ・きれいに食べるマナーや「もったいない」、「いただきます」といった自然の恵みに 対する感謝の心 さらに、日本料理の洗練され、凝縮された形が会席料理である。 ⑥-⑤ 〔10〕評価 ①「自然」「健康」という観点は他の提案にもあるので、書き方には工夫がいる ②自然に基づく食材については、サスティナビリティーの観点を加えたら良いのではないか ③地域による食材の多様性に言及した方がよい ④UNESCO は民族的な考え方に基づいているため、伝統行事との関連を強調することは良い ⑤日本料理は世界で唯一無二のユニークさがある料理 食材の切り方、盛り付けの技術、食彩、しつらい、食事の作法、食器、道具、 発酵技術等、十二分に申請の価値はある 〔11〕今後の登録に向けたポイント ①申請書式の 5 つの基準をまず確認、実践する事 ㋑無形文化遺産の条件を満たしているか ㋺自国の無形文化財として登録されているか ㋩関係共同体のメンバーが申請に同意しているかどうか ㋥保護措置について ㋭無形文化遺産に登録することが国際的に文化的多様性を繁栄し、 人類の創造性を証明するものであるかどうか ②意欲、熱意が大切 ③日本人が自分達の食文化を重要であると捉えているか、守っているかということ これが分かるような提案が必要 食文化の重要性、国民に必要な事 ④政府だけではなく、日本全体として登録したいという意思を示す必要 (有形は政府から、無形はボトムアップの働きが必要) 国民的喚起(広く団体を集める、世論調査等) ⑤UNESCO のロビー活動(代表部) 現状の UNESCO の審査チームは現在 6 人だが、全て政府間委員会のメンバーから選出されてい る。(専門家はいない) ⑥-⑥ ⑥本物の日本料理が十分に知られていない、本物の日本料理の素晴らしさを 理解してもらう事が重要(10 分程度の映像が必要) ⑦経済的な面については言及しない方が良い ⑧UNESCO の今後の申請登録審査の見直しが議論されている中、このような仕組みが 変わる前に申請した方がよいと考えられる