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農地除染と復興農業 の課題 - 国際情報農学研究室
飯舘村小宮地区での稲刈風景 2013.10.6 2015.3.23 農工連携による福島バイオマス活創研究会 「グリーン・リノベーションを目指して」 ビッグパレットふくしま 農地除染と復興農業 の課題 溝口勝 東京大学大学院農学生命科学研究科 認定NPO法人ふくしま再生の会・理事 1 復興の農業土木学 • 上野英三郎博士 – ハチ公の飼主 – 東大農学部の教授 • 耕地整理法(1900) • 耕地整理講義(1905) • 農業土木とは – – – – 食料生産の基盤整備 農地造成 灌漑・排水 不毛な大地肥沃な農地 農地除染法開発の取り組み(溝口) 2011.3.11 東日本大震災 東大農業工学会議の仮設立 粘土表面の放射性セシウムセミナー 簡易空間線量計プロジェクト協力 土壌水分センサー講習会 ボランテア未来農水と土サポート 飯舘村踏査 中山間地セミナー:飯舘村の『土』は今 震災復興への処方箋セミナー ー農業工学でできることー (2011.8.30) ふくしま再生の会との出会い (2011.9.4 ) 東大農業工学会議現地調査 (2011.3.15) (2011.5.30) (2011.6.7 ) (2011.6.11) (2011.6.20) (2011.6.25) (2011.7.10) (2011.7.29) いま科学技術が問われている • 原発事故から4年 • 農学栄えて農業滅ぶ – 横井時敬 土に立つ者は倒れず、 土に活きる者は飢えず、 土を護る者は滅びず • いま大学に何ができるのか?「天空の城ラピュタ」から 農工連携による福島バイオマス活創研究会 グリーンリノベーションのアプローチ例 (2015.1.12の原田氏メール) • 除染による土壌改変後の農業 – 福島に適合するアグリファクトリー • 極低残留状態での風評被害を跳ね返す農業 – バイオマス・エネルギー資源作物生産 – ロボット農法、IT農法 – 植物非吸収型耕作技術 • 林野除染技術 – ため池、湖沼沈降物除染 – 山林除染技術 (人工ホットスポット法など) • 土地の潜在活力活用技術 – Fe++などの土壌有効成分の利用 • その他 – 多様な提案を歓迎 5 放射性セシウムの濃度(2011.5.24) 実線:不耕起水田,破線:耕起水田 塩沢ら:福島県の水田土壌における放射性セシウムの深度別濃度と移流速度, RADIOISOTOPES誌,8月号,2011 より引用 6 飯舘村役場横の斜面の放射線量測定 (2011.6.25;溝口・登尾) 2.5 μSv/h 3.5 μSv/h 7.0 μSv/h 7 農業農村工学会(旧農業土木学会) 土壌物理学 • 土は何でできているのか? – 土粒子、水、空気 • 土粒子の分類 – 大きさで分類される – 砂、シルト、粘土 • 粘土の性質 – 水に沈みにくい – 水を含むとドロドロ – 乾くとカチカチ ・飯舘村は花崗岩の産地 ・花崗岩は黒雲母(粘土鉱物)を含む ・土には風化した雲母が多量に存在 8 粘土の化学ーモンモリロナイト 周期表 Hydrophobic sites 放射性セシウムは粘土表面の穴に (grey) 落ちている! Hydrophilic Sites (red) 「粘土表面の放射性セシウムの吸着 特性とその挙動」の資料より抜粋 11 by Prof. C.T Johnston @Purdue Univ. 放射性セシウムはカリウムと入替わって 農地土壌中の粘土粒子に固定される 卵パック=粘土粒子 白卵=カリウム 赤卵=セシウム 放射性セシウムは粘土表面 の穴に填まり込んでいる! by Prof. C.T Johnston @Purdue Univ. 12 セシウムの土壌科学(中尾淳)より引用 農地の除染法 農地除染対策の技術書概要 【調査・設計編、施工編】 表土削り取り 水による土壌撹拌・除去 平成24年8月 反転耕 13 行先はどこ? 汚染土の入ったフレコンバック 飯舘村草野地区(2012年6月24日) 飯舘村須萱地区(2013年8月17日) 14 除染の工事現場 (2014.10.7 二枚橋) 15 除染終了した地区の“仮仮”置場 (2014.10.7 須萱) 16 住宅除染の工事現場 (2014.10.4 佐須) 17 中⼭間地の⽔⽥の現状 イノシシ 雑草 掘り返された農地 http://www.iai.ga.a.u‐tokyo.ac.jp/mizo/edrp/fukushima/fsoil/PAWEES131030.pdf この水田の除染をどうする? 農家自身でできる 農地除染法の開発 飯舘村小宮地区での田植え風景 2013.5.26 飯舘村小宮地区での稲刈風景 2013.10.6 19 飯舘村ーNPO法人ー大学の連携 農業委員会 福島復興農業工学会議 農学生命科学研究科 (農学部) RI施設 サークル までい 20 板状で剥ぎ取られた凍土(2012 年 1 月 8 日) あれっ、先生じゃないですか! 動画 地表面からの放射線量(コリメータ付)が1.28μSv/hから0.16μSv/hに低下 河北新報 (2012.1.17) 東京新聞 (2012.1.19) 削除 都市と地方の 認識のずれ 田車による除染実験(2012年4月) 23 田車代かき掃出し法の効果 ふくしま再生の会 http://www.fukushima-saisei.jp/ 24 までい工法 • 農水省が推奨する除染工法 – ①表土剥ぎ取り、②代かき、③反転耕 • までい工法 – 農地に穴を掘り、剥ぎ取った汚染表土を埋設 – 表土剥ぎ取りと反転耕の組み合わせ工法 – 反転耕より丁寧に上下の土を入れ替える 「までい(真手い)」=飯舘村の方言で「手間ひまを惜しまず」、 「丁寧に」、「時間をかけて」、「心を込めて」という意味 25 泥水強制排水法 (小宮, 2013.5.18) 定点カメラ画像(2013.7.6) (動画) 土壌採集 正面(その1)、正面(その2) 側面 26 除染土壌の処理実験 洗い流した泥水を溝に蓄積しておき、干上がった後に溝の底と側面の土 壌をサンプリングして深度別に放射能測定した結果。 セシウムは土の中に浸みこまない。 27 土の濾過機能 泥水は砂の層を通るだけで透明になって出てくる。放射性セシウムのほとんどは粘土粒子に 強く吸着(固定)されているので、セシウムだけが水中に溶け出ることはない。 農地の下の土はこの実験の砂の層よりも厚い上に、砂よりも細かい粒子で構成されているこ とが多いので、放射性セシウムを固定した粘土はそれらの粒子の間に次々に捕捉される。 28 までい工法(実践) 汚染土の埋設 よいとまけ(土の締固め) 2012.12.1 29 汚染土は素掘りの穴に埋めれば良い 50cmの深さに埋めれば放射線量は1/100 ~ 1/1000 になる Depth (cm) 宮崎(2012)より引用 イネの作付実験 (H24~) 31 イネの栽培試験(H24年度) 白米の放射性セシウム濃度は、すべて10Bq/kg以下 交換性カリ(K2O)を20㎎/100g乾燥土壌以上に保つ 32 佐須 前田 (小宮) 2012年 2013年 水田湛水による放射線遮蔽効果 東京大学 久保成隆(2012) • 道路・民家へ達する放射線は、水田から低角度で 放射される • 水深が浅くとも、土壌表面から水面までの距離は、 低角度の場合には長くなる • 大きな遮蔽効果が期待できる 34 水田湛水 (2012年7月29日) イノシシに荒らされた水田(2012年4月21日) Shiozawa, et.al (2011) 放射線計の設置(7月29日) 水田水位計 35 水田には水を貯めておくのが良い 高さ1m 高さ1m 放射線量と湛水深の時間変化 放射線量と湛水深の関係 • 水を貯めておくだけで放射線減衰効果がある • イネがセシウムを吸収しなければ、普通に水田稲作す れば良い • 雑草や野生動物対策になる 36 フィールドモニタリングシステム Field Monitoring System (FMS) • 農地におけるモニタリング – 気象(気温,降水量,日射量,風速,など) – 土壌(水分,温度,養分) – 作物(成長量,色) – 環境(放射線量?) • 農地は都会にあるのではない! – 電源なし,WiFiなし • 農地では有線を使わないのが望ましい – 草刈り鎌やトラクタによる切断 – 動物による切断 The FMS with a radiation sensor 飯舘村の環境モニタリング 39 雪による空間線量の低下 2014/03/09 12:23 降雪 11.現地環境モニタリング:溝口 40 土壌放射能鉛直分布測定器(開発中) 飯舘村内某所での測定例(2014.5.11) 土壌中の放射線量を測定 • 4深度(GM管を鉛板で挟む) – – • 1F:7-8cm, 2F:5-6cm 3F:3-4cm, 4F:1-2cm 測定所要時間 – 3分 横軸は放射線量cpm(現在、層別Bq/kgへの換算係数を計算中) 大学にできること 大学がすべきこと • 研究 – 過去の文献に基づく情報整理 – 正しいデータによる現状分析 – 現場のニーズに適う技術開発 • 人材育成 – アウトリーチ活動 • 講義 – 学生に現状を正しく伝え、一緒に考える – 現場をしっかりと見せる 42 学生の現場見学会 東大農学院生の調査 (2013.2.6) 東大五月祭対話集会 (2013.5.19) 東大農学部の学生見学会(2012.10.6) 43 http://www.iai.ga.a.u-tokyo.ac.jp/mizo/edrp/fukushima/Iitate-lec14.html 44 リアクションペーパー課題 • 講義資料を読み、かつ講義を聴いた上で、 「あなた自身ができそうな被災地の農業再生 について」考えを述べよ。A4で1枚から2枚程 度にまとめて提出すること。 • →締め切り:7/29(火)、12時。 法学部生のレポート 東大1年生のレポート 47 小学生のための土壌科学「飯舘村の土」 (2014.8.20) http://youtu.be/TLTQswp6Yic 48 飯舘村の現状 49 ふくしま再生の会による除染完了農地の土壌サンプリング (2014.8.30 須萱) 50 除染と客土 除染完了農地から採取された土壌コア(φ 5cm, 長さ30 cm) (2014.8.30 須萱) 52 除染終了した地区の“仮仮”置場 (2014.10.7 須萱) 53 除染後の農業をどう考えるか • 客土後の農地再生 – 土地改良後に農地の肥沃度が失われるのは当然 – でも数年で改良技術によって農地にしてきた – 問題は農家のやる気 • 担い手は日本農業の共通問題 – – – – やる気のある農家にとってはこれからの農業は面白い 農村の古いしがらみが新しい農業の芽を阻んできた? しがらみが原発事故でリセットされたと考えれば新天地 新しい日本型農業を飯舘から始めるチャンス • 現状では戻ってくる農家は多くない? – 何らかの農業を応援する仕組みを作る必要がある – 農地集積バンク制度を利用しながら企業や新規農業者を呼び込む – 新しい農業教育コースを高校・大学に作り、全国から数名だけ推薦入学 スマート農業 農業復興に向けて • 飯舘三酒 – 飯舘大吟醸 – 飯舘芋焼酎 – 飯舘濁酒 • 飯舘特産農産物 – 飯舘特産の肴(さかな) – 伝統的な味付けを活かした調理法 • 海外展開 – Fukushima/Iitateブランド – 徹底した品質管理(Global‐GAP) 56 復興の農業土木学 • 食料生産の基盤整備 – 農地除染 • 除染後の土地利用 – 森林を含めた農地管理 – 安全な農業用水の確保 • ため池の管理 – 肥沃度の回復策 – 施設IT農業 • 帰村後の農村計画 – 地域創生 – 産業再生 謝辞 • • • • • • • 飯舘村農業委員会 ふくしま再生の会 東京大学「福島復興農業工学会議」 明治大学震災復興支援・防災研究プロジェクト 東京大学 救援・復興支援室 東京大学大学院農学生命科学研究科 サークル「までい」 – 東大農学部教職員サークル 58 土地を守りぬく金一さん 59