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低分散分光器を用いたεAurの Hα吸収線等価幅モニタリング観測

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低分散分光器を用いたεAurの Hα吸収線等価幅モニタリング観測
低分散分光器を用いたεAurの
Hα吸収線等価幅モニタリング観測
藤井 貢 (藤井黒崎観測所)
[email protected]
1:はじめに
ε Aur は周期27.1年で約700日の間0.9等程度の減光を示す食連星である。
主星(F型)と塵円盤をもつ伴星の連星系と考えられているが、詳細な物理量
は研究途上である。
今回の減光は2009年8月中旬始まった。本稿では第1接触前550日頃、2008
年2月14日から2011年5月20日(復光途中)までに低分散分光器(R=700 at
Hα)で得られた115夜における、特に伴星の塵の状態に大きく起因すると
考えられるHα吸収線の興味ある等価幅変動を報告する。
2:観測機器
望遠鏡:28cm F10 Celestron社
望遠鏡:40cm F10 Meade社
分光器:FBSPEC-2, FBSPEC-3
スリット幅0.1mm、 反射グレーティング600本/mm
CCD ST-10XME(SBIG社)・・・ FBSPEC-2
サンプルピクセル数=2.0 (2x2binning)
CCD ML6303E(FLI社)
・・・ FBSPEC-3
サンプルピクセル数=3.2 (1x1non binning)
3:観測・整約・測定
整約・測定はPC-IRAF(NOAO)を用い標準的な整約手順に従った。 等価幅測定は
onedspecパッケージのsplotタスクの"k" コマンドを用いた。
オブジェクトは1夜につき3〜5フレーム取得し、分光標準星もオブジェクトに近い高度
で取得し波長感度補正した。
4:結果
115夜の観測ログを表1に、得られたスペクトルのHα部を6例図1に示す。
またHα等価幅値の変動グラフを図2に示す。 また図2で示したHα等価幅とV-band
等級との関連であるが、次のHopkins Phoenix Observatoryの大変密なライトカーブ図
を参考にさせていただいた。 http://www.hposoft.com/Campaign09.html
このライトカーブ図に示されている1st, ,2nd, 3rd Contact 各ラインを図より読み取り、
図2にそれぞれ追加記入した。
図2のようにHα吸収線等価幅の増大は2010年1月23日(JD2455220)から2010年3月
11日(JD2455267)の間に開始されたようである。おそらく2010年2月中旬頃だと思わ
れる。 この増大開始時期であるが、図2をみると1st Contactから2nd Contactの中間
あたりで(JD2455157)、それまで1Å前後で推移していたHα吸収線等価幅値が一
旦0.5Åに減衰し、それから増大に転じている様子がうかがえる(図2 a部)。
しかし食外(1st Contact以前、観測数が少ないが)におけるHα吸収線等価幅値の
平均を1Åと仮定すると、本格的な増大は先の2010年1月23日から2010年3月11日
の中間あたり、すなわち2月中旬頃(JD2455240)開始 したとみなすべきであろうか。
その場合1st Contact に遅れること約180日後に、Hα等価幅の増大が開始された
ことになる。
その後直線的な増大を示すが、2010年5月11日(JD2455328)~2010年7月6日
(JD2455384)までは太陽に近く観測できなかった。 Hα吸収線等価幅の最大値は
2010年7月17日(JD2455395)から2010年7月19日(JD2455397)だった。
本稿では2010年7月19日(JD2455396)をピークに採用した。
ピーク後は減衰に向かうが、特徴的なこととして、2010年9月中旬頃より約2ヶ月に渡
り0.5Å程度一時的に増大するハンプ現象が現れた(図2 b部)。
以後は直線的に減衰するが、2010年3月16日頃(JD2455637)から一転して増大に
向かった。 このターンニングポイントはちょうどライトカーブにおける3rd Contact
に対応している。 そしてそれは先のハンプより大きな1Å程度の増大を示した(図2
c部)。
残念ながら5月20日以降は高度が低く観測できなかった。
Table 1
2008年2月14日〜2011年5月20日までの115夜の観測ログ
Fig.1
低分散分光器で得られたスペクトルのうち6例のHα部を示す
Fig. 2
Hα等価幅変動
2010年5月11日(JD2455328)~2010年7月6日(JD2455384)までは太陽に近く観測できなかった。
等価幅の増大は2010年1月23日(JD2455220)~2010年3月11日(JD2455267)の間に開始された
ようである。 等価幅最大値は2010年7月17日(JD2455395)~2010年7月19日(JD2455397)だっ
た。 減衰側は2010年10月上旬頃にハンプが見受けられ、以後直線的に減衰するが、2010年3月
24日(JD2455645)頃より再び増大に転じた。
さらにHα等価幅の増大側と減衰側との対称性をみるため、 Hα等価幅ピーク2010年
7月19日(JD2455396)を中心として折り返したグラフを図3に示す。
*印が増大側を、○印が減衰側を表す。
Fig.3
Hα等価幅の増大側と減衰側の対称性
*印が増大側、○印が減衰側を表す。 Hα等価幅ピークは2010年7月19日(JD2455396)とする。
減衰側で見受けられたハンプ部が興味深い。
このグラフをみると明らかに増大側と減衰側は非対称性を示している。すなわち増
大側に比べ減衰側はそのスピードが遅れている。 ちょうど減衰側にハンプが現れ
始めた2010年9月中旬頃より、図3では60日頃より、減衰の遅れが著しくなっている。
その遅れは60日程度のように見受けられる。
しかしながら図3において200日~300日のカーブの類似性は偶然の一致かどうか
少し気になるところである。
また図3において減光側(○印)から増光側(*印)の差分をとったグラフを図4に示
す。 但し増光側の各*印を直線で結び、○印の日時に対応する直線部を読み取
った近似的な数値である。
総じて増光側より大きな等価幅値をもち、50~120日間に急激な増大が見受けられ
以降は緩やかに減少している。
Fig.4
fig.3における減光側値(○印)から減光側値を(*印)差し引く。 但し各減光側値*印どおしを直線で
結び○印に対応する日時を直線部から読み取った近似的な数値である。
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