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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University
Title Author(s) Journal URL 切迫流産の予後判定についての検討 松村, 章子; 河西, 洋; 高梨, 安弘; 千葉, やよい; 萩原, 泰子; 楊, 瑞銘; 和田, 順子; 井口, 登美子; 高橋, 文 子 東京女子医科大学雑誌, 52(1):14-20, 1982 http://hdl.handle.net/10470/4609 Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database. http://ir.twmu.ac.jp/dspace/ 14 (甕女騨、。第購57鞘) 切迫流産の予後判定についての検討 東京女子医科大学 第二病院産婦人科 松村 章子・河西 洋・高梨 安弘・ マツムラ アヤコ カ サイ ヒロシ タカナシ ヤスヒP 千葉やよい・萩原 泰子・楊 チバ 瑞銘・ ハキワラ ヤスコ ヨウ ズでメィ 和田 順子・井口登美子・高橋 文子 ワ ダ ヨリ コ イ グチ ト ミ コ タカハシ フミ コ (受付 昭和56年10月3日) はじめに (58.5%),不良例は86例(41.2%)であった. 切迫流産は,我々が日常よく遭遇する疾患のひ 1) 妊娠5∼8週 とつで,その予後判定を,正確に速やかに行なう 123例の胎児心拍と予後を図1に,各週別の尿 中HCGの平均値と標準偏差を表1に示す.切迫 事は,極めて重要である.今回,妊娠初期に,超 音波断層診断,尿中HCG定量,更に予後不良例 [コ予後良好 に細胞病理学的検査を行なって,これらの臨床的 32例 意義について検討したので報告する. 「胎児崩繍 対象及び方法 総数 昭和54年10月目り昭和55年9月までの問に,出 (26%) 囮予後不良 32例 i100%) ・ 91例 L。闘白,一) 血又は出血及び腹痛を主訴として東京女子医大第 (91例74%) 57例 娼4例 i62.6%) 37・4% 二病院に入院した妊娠5∼15週の切迫流産の患者 211名を対象とした.年齢は17∼43歳(平均29.2 図1 胎児心拍と予後(妊娠5∼8週) 歳),初妊婦は76名(36%)である,初診時に月 経周期を問診し,25∼32日の正常同期である事を 流産の診断時に胎児心拍(十)であったものは32 確認した. 例(26%)で,これらは全て予後良好であった. 胎児心拍(一)であったものは91例(74%)で, Real linear array tomograph(HITACHI EUB− そのうち予後良好は57例(62.6%),不良は34例 21)を用いて,胎児心拍と胎嚢検査,GonavisHde (MOCHIDA)を用いて尿中HCG半定量を行な (37.4%)であった(図1).胎児心拍(+)例 った.症状改善後1ヵ月の時点で,妊娠が継続し の尿中HCG値は,平均(28・0±20・8)×1031U/1 ているものを予後良好とし,予後不良例セこは全て ∼(79・3±66・5)×1031u/zを示した(表1).各 病理学的検査を行なった. 週別の尿中HCG値を,症例ごとにプロットする と図2のようになり,256×1031uμは1例(3.1 成 績 %),128×1031uμは5例(15.6%),64×1031uμ 211例の研究対象のうち,予後良好例は125例 Ayako MATSUMURA, M.D., Himsbi KASAI, M.D., Yasuhim TAKANASm, M,D., yayoi CHIBA, M.D., Yasuko HAGIWARA, M.D., Z覗imei YO, M.D。, Yoriko WADA, M.D., Tomiko IGUCH1, M.D. and F㎜iko T凪田ASHI, M.D. Department of Obstetrics and Gynecology, Tokyo Women’s Medical College Second Hospital=Evaluation of prognosis of threaterd abortion 一14一 15 表1 妊娠5∼8週の尿中HCG平均値 (×1031Uμ) 胎児心拍 5週 6週 7週 8週 (×103iu〃) 胎児心拍(一) @(十) 予繍く1翻: 尿中HCG 予後良好 予後良好 予後不良 28.0±20.8 21.1士14.2 11.6±10.8 @(11) @(4) @(19) 72.0±34.9 51.3±63.9 3.0±2.8 @(4) @(16) @(5) 256 64 32 16 8 8.8±5.6 79.3±66.5 91.3±99.2 @(11) @.(16) 60.3±35.0 36.0±2,5 13.5±7.1 @(13) @(6) @(12) 一 128 @(6) 4 2 1 ( )内は症例数 5 6 7 8 9 10 11 12(週) 尿中HCG (×1031u/の ・予後良好 図4 予後良好例の胎児心拍出現時期と尿中HCG値 (妊娠5∼6週) 256 尿中HCG ・後畝綴ぷ (×1031U/2) 128 64 256 32 128 16 64 32 16 8 / 4 5 6 7 8(週) 2 図2胎児心拍(十)例の尿中HCG値と予後 1 (妊娠5∼8週) 56789101112(週) 尿中HCG 図5 予後良好例の胎児心拍出現時期と尿中HCG値 (妊娠7∼8週) O予後良好 (x竃031u/の 翼予後不良 は14例(43.8%),32×1011U/Zは5例(15.6%), 256 。 128 8 64 § 16×1031uμは6例(18.8%),8×1031uμは1 。 8 8 32 §§琵 8 88 § 16 題養 蕊 §養 § 萎 。≡ 6 § 護 o 8 §嚢 4 8 2 菱琵 1 5 .護 7 心拍(一)で予後良好例では,尿中HCG値は, 平均(21・1±14・2)×1031u/」∼(91・3±9912)× 1031u/1を示し,予後不良例では,平均(3・o± 2.8)×1031uμ∼(13.5±7.1)×1031u/1であった (表1),尿中HcG値が64×1031uμ以上のも ≡ 6 例(3.1%)であった.切迫流産と診断時に胎児 8(週) のは16例(28.1%)で全例予後良好であり,32× 1031u/zは14例(24.6%),16×.1031u/1は16例 (28.1%),8×.1031u/zは6例(10.5%),4×103 図3 胎児心拍(一)例の尿中HCG値と予後 (妊娠5∼8週) 1u/1は5例(8。8%)であった.2×1031uμや 一15一 16 1×1031u/zは全例予後不良であった(図3).予 尿中HCG ・予後良好 (X1031U〃) ▲予後不良 後良好例の胎児心拍出現時期と尿中HCGの関係 をみると,妊娠5∼6週では,1∼4週後に,胎 256 児心拍(十)となり,尿中HCG値も2∼6倍に 上昇した(図4).妊娠7∼8週では,1∼3週 128 後に胎児心拍(+)となった(図5). 2) 妊娠9∼15週 88例の胎児心拍と予後を図6に,各週別の尿中 ● 64 ■ 32 ● 16 ● 8 合 馨 ● 念 ● 8 ● ・ 銘 塞 ・ ● 8 8 8 ▲ ▲ 含 ● 4 HCGの平均値と標準偏差を表2に示す.切迫流 2 産の診断時に胎児心拍(十)は37例(43.2%), 1 このうち予後良好であったものは32例(86.5%), 予後不良は5例(13.5%)であり,胎児心拍(一) 9 10 11 12 13 14 15(週) 図7 胎児心拍(十)例の尿申HCG値と予後 は51例(56.8%)で,予後良好は4例(7.8%), (妊娠9∼15週) 予後不良は47例(92.2%)であった(図6).胎児心 拍(+)例の尿中HCG値は,予後良好例で平均 8∼(96・o±32.o)×1031u/zを示し(表2),, 32×1031U/Z以上のものは全例予後良好であり,1 128×1031u/zは5例(15.6%), 64×1031u/z 14 例(43.8%),32×1031u/1は7例(21.9%), 〔コ予後良好 37例 「胎児鰹溜 総数 32例 (86.5%) 16×1031uμは3例(9.4%),8×1031uμは3例 四予後不良 (9.4%)で予後良好であった(図7).予後不良 5例 σ3.5%) 例は乎均8∼16×1031Uμを示し(表2),16× 1031uμは2例(40%),8×1031uμは3例(60 (43,2%) 51例 L胎児醐一, %)であった(図7).胎児心拍(一)例の尿中 話彫 (,ll翫) HCG値は,予後不良例で平均(10・4±8・7>×103 4例 (7.8%) 1u/z∼(3・2±2・6)×1031u/1を示し(表2),32× 1031uμは3例(6.4%),16.×1031uμは10例 図6 胎児心拍と予後(妊娠9∼15週) (21.3%),8×1031uμは15例(31.9%),4×103 1uμは7例(14.9こ口,2×1031u/zは5例(10.6 表2 妊娠9∼15週の尿中HCG平均値 (×1031Uμ) 尿中HCG 胎児心拍(十) 。予後良好 (X1031U/ε) 胎児心拍(一) X予後不良 予後良好 9週 10週 11週 12週 13週 14週 15週 30.0士21.4 予後不良 8.0 @(4) i1) 48.0±202 16.0 i1) @(5) 60.0±42.9 @(4) 57.0±333 @(8) 8.0 i1) 12.0 i2) 予後良好 26.7土26.4 10.4±8.7. @(3) @(12> 64.0 i1) 256 予後不良 128 64 11.5±8.6 32 @(12) 8.9±9.3 16 K 誕 翼 養蚕 嚢巨 翼 @(9) 8 6.8士2.2 8委 歪 @(8) 4 歪 64.0±32.0 3.2士2.6 @(5) 2 碁 @(6) 書 8.0 養 嚢1 ・ 翼 翼 麗 貿 i1) 96.0±32.0 @(4) 9 10 11 12 13 14 15(週) 8.0 i1) 図8 胎児心拍(一)例の尿中HCG値と予後 ()内は症例数 (妊娠9∼15週) 一16一 17 %),1×1031WZは7例(14.9%)で,予後不良 胎のう径 (cm) であった(図8). 1G 予後良好例では,平均(26・7±26・4)×1031u/z 〔 9 ∼64×1031uμであり(表2),64×1031uμは2 例(50%),8×1031u/zは2例(50%)であった r二〇.445 y=0.297x一ト0.05 n=52 8 (図8). o 7 3)胎のう径と妊娠週数及び尿中HCG値の相 ■ 6 関 超音波断層診断により,胎のうの長径を測定し … 5 ・ : ● 得たのは,対象211例のうちの157例であった. 4 妊娠一三と胎のう径の相関を図9,10に示す. 予後良好例105例では,相関係数r=0・764の正の ●’ u 3 o 。 相関がみられ,回帰直線y=o・297x+o・05であっ 2 た(図9).予後不良例52例では,r=o.445, y= ’ , … 3 鱒i締3・. ● 1 0・297x十〇・05の正の相関であった(図10). 尿中HCG値と胎のう径の相関を,図11,12に o 示す.予後良好例105例では,r=0.332, y=0.02 56789101112131415 妊娠週数 x十2・22の正の相関がみられた(図11).予後不良 図10妊娠週数と胎のう径の相関(予後不良例) 例52例では,r冨一〇・212, y=一〇・06x十3.1の負 胎のっ径 (cm) 胎のう径 (cm) 10 ● 10 〔 9 rζ0.764 y=0.63x−1.44 9 nこ105 8 8 7 〔 r=0.332 yこ0.02x十2.22 n=105 7 ./ 6 6 /.’ 5 5 ./ 4 3 2 4 /乱●・ r/i盗 ・・’ 二/『 /Ll 3 護, 2 1 ・/ の 二:● … 1 0 0 56789101ユ1213 妊娠週数 48163264128256 尿中HCG値 (×IG31U/D 図11尿中HCG値と胎のう径の相関(予後良好例) 図9妊娠週数と胎のう径の相関(予後良好例) 一17一 18 胎のう径 (cm) 10 〔1≡記8:11激・・1 9 8 7 ● 6 ・r i・ ;1<_ 写真2 予後不良例の病理組織診(ヘマトキシリン ・エオジン染色) 表3 病理組織診にて異常を示した症例 上∴∵素 尿中HCGf直 (×1031U/D 図12尿中HCG値と胎のう径の相関(予後不良例) 年令 週数 23 5 28 5 21 7 28 7 43 8 33 10 26 11 30 11 28 12 胎児心拍 一 一 病理組織診 絨毛上皮細胞の異型 O毛間質の浮腫 一 一 } 絨毛上皮細胞の異型 一 一 一 絨毛上皮細胞の増殖,異型 一 絨毛間質の浮腫 写真1 予後不良例の病理組織診(ヘマトキシリ ン9エオシン染色) の相関であった(図12). 4)病理組織診 予後不良例の病理組織診(ヘマトキシリン・エ 写真3 ナジン染色)では,写真1,2に見られる如く, 流産標本のTouch smear(パパニコロウ 染色) 絨毛上皮細胞の異型増殖,大小不同,配列不整, 核の濃縮,空胞形成,絨毛間質の浮腫状変性等の 本のTouch smear(パパニコロウ染色)では,核 所見が9例(10.3%)にあり,これらは全て胎児 の大小不同,核膜の不整,核小体の増大及び増多 心拍(一)のものであった(表3).更に流産標 が見られた(写真3). 一18一 19 考 断層検査による予後判定としては,妊娠4週では 按 我々は,切迫流産の診断基準として,正常妊娠 胎嚢の有無で,5週以後は胎嚢の経時的成長が加 が流産になるかも知れない徴候,即ち,少量以下 わり,6週で心拍動の有無が,7週以後では胎芽 の子宮出血あるいはそれと同時に下腹痛,腰痛を 長の測定が指標となるという穂垣らの報告6)があ 訴えるものとし,子宮出血の認められない場合は る. 診断から除外した.この様に,切迫流産の診断は 我々の検査では,妊娠5週ですでに胎児心拍 臨床的所見により比較的容易であるが,その適確 (+)となったものが4例あり, 8週までに胎 な予後判定は,流産の原因が母体側,胎児側等, 児心拍を確認できた76例は,尿中HCG値平均 単一な因子によるものでない事もあって,明解な (21.1±14L2)×1031uμ∼(91・3±99・2)×1031uμ 基準が定められないのが現状である.切迫流産の を示し,全例予後良好であった.妊娠5∼8週に 予後判定には,従来より種々の方法が用いられて おいて胎児心拍(十)であれぽ,その予後は概ね いるが,今回我々は,そのう、ちの,比較的有用性 良好である.反対に,胎児心拍(一)であっても の高い尿中HCG半定量及び超音波Bスコープ 尿中HcG値64×1031u/1以上を示すものは,数 による胎児心拍と胎嚢検査を行ない,予後判定を 週後に胎児心拍(十)となり,予後良好になる可 行なった.HCGは,絨毛の最外層にあるシンシ 能性が強い.妊娠9∼15週では,胎児心拍・(十) チウム細胞で産生され,母体血より尿中に排泄さ で,尿中HcG 32×1031uμ以上であれぽ,予後 れる.尿中にエ×Io3ruμ以上含まれるようにな は概ね良好であった.切迫流産診断時に胎児心拍 (一)で,1∼2週後に(十)となり予後良好で るのは,妊娠の4週末で約60%5週末で約80%, 6週末でほぼ100%である.尿中HCGはその後 あったのは4例のみで,尿中HCG 32×1031U/1 も増量し,9∼12週でピ▽クに達し,以後漸減す あっても胎児心拍(一)の場合は,全例予後不良 ると言われている1).妊娠初期のステロイドホル であった.妊娠9∼15週で胎児心拍(一)の場合 モンの産生分泌について,妊娠6∼7週頃までは は,予後不良になる可能性が大であると考えられ 妊娠黄体優位であるが,妊娠.8∼9週以降は絨毛 る. 優位となり,この2つの時期を結ぶ妊娠7∼8週 予後良好例については,妊娠週期と胎のうの長 に,黄体から絨毛への内分泌機能転換があると言 径は,r=0・764と,比較的良好な相関を示した. える2).更に,超音波Bスコープでほぼ100%胎児 回帰直線式より算出した妊娠週数と胎のう径の関 心拍の有無の判定が可能になるのは,妊娠8週と 係を,表4に示す.例えば妊娠7週では,胎のう 言われている.以上より,我々は,妊娠5∼8週 径が約3cmあれぽ,予後は,おおむね良好であ と,妊娠9∼15週め2つの時期に症例を分けて, ると考えられる.尿中HCG値と胎のう径は, 別々に検討を加えてみた. r=0.332と相関は低かった. 尿中HCG値による予後判定基準については, 予後良好例では,妊娠6週までは4×1031U/1陽 予後不良例については,妊娠週数と胎のう径長 径は,γ=0・445で,正の相関がみられるが,その 性,妊娠7週以後は8×lo31u/‘陽性を示すもの 係数は低い.予後不良例では,胎のうの形態に変 が多いとする八神らの報告3)があり,又,妊娠16 化がおこり,長径の値にぼらつきがある為と思わ 週までで4×1031Uμ以下の症例では,流産に終 れる.予後良好例に比べ,直線の傾きは小さく, わるものが多いとする前山らの報告4),更に,妊 表4に示すように,同一罪数における長径の長さ 娠継続例の約90%は,16xlo31uμ,32xlo31uμ は短かくなっている.尿中HCG値と胎のう径 が陽性で,流産例は4×1031uμ陽性,8×1031u/♂ は,予後良好例より更に相関が低く,r=一〇.212 陰性が多く,8×1031Uμ以上陽性を示すものは であった. 少なかったという竹村らの報告5)がある.超音波 病理組織学的に自然流産卵を検査すると,絨 一19一 20 どがある8)が,いずれにしろ,絨毛の変性,異型 表4 妊娠週数と胎のう径の関係 が,絨毛性疾患の発生につながる危険性は大ぎい 胎のう径(cm) 妊娠週数 5 と考えられる.以上の観点より,切迫流産例のう 予後良好例 予後不良例 1.71 1.54 ち妊娠8週以上でも胎児心拍(一)の例では,絨 毛性疾息の予防の為に,子宮内容除去の時期を逸 6 2.34 1.83 7 2.97 2.13 8 3.60 2.43 9 4.23 2.72 10 4.86 3.02 11 5.49 3.32 12 6.歪2 3.61 しないことが重要と考えられる. 文 献 1)太田孝夫・阿部 進:切迫流産の管理と治療. 産婦人科の世界32(7)667∼671(1980) 2)余語郁夫・堀越順彦・芦原孝三:切迫流産と 性ステロイド.産婦人科の世界32(7)655∼ 659 (1980) 3)八神喜昭・水野金一一郎:切迫流産と児の予後. 13 6.75 3.91 産婦人科の世界32(7)673∼677(1980) 4)前山昌男・宮川勇生・池田 功:切迫流産の絨 毛機能検査とその予後判定.産婦人科治療29 毛の奇胎様変性を証明する頻度はかなり高く, (2) 117∼ 124 (1974) 5)竹村喬・浦上満男・山口泰:切迫流産の Hertig. Edmondsは,自然流産の38%に, Kaes6r は203例の流産のうち46.8%に変化を認めると報 告している.奇胎様変性の組織所見の特徴は,① 絨毛上皮の異型増殖は,わずかにSyncytium細 胞の散在性突起状増殖を見る程度で,大部分の 診断と予後.産婦人科治療34(4)436∼441 (1977) 6)穂垣正暢・箕浦茂樹・森田良子・坂元正一: 超音波高速電子スキャン装置による切迫流産 の予後判定.産婦人科治療37(5)601∼605 (1978) 絨毛上皮は変性所見を示し,核の濃縮,染色不 7)渡辺行正:絨毛性疾患の成因,胞状奇胎.現代 良,空胞形成,配列不整iなどの諸相を示すものが 産婦人科学大系 8巻C 絨毛性腫瘍.第1版 中山書店東京 (1974)107∼122,154∼182 8)竹内正七・小幡憲郎・半藤 保・広神俊彦・中 村修二=胞状奇胎と破壊性胞状奇胎の関連性, 産婦人科Mook 10,卵巣腫瘍,卵管癌と絨毛 混在する.②trophoblast細胞集団の発現量は 少なく,質的にも盛んど変性に陥り,増殖旺盛な 姿ば全く認められない.③ 絨毛基質は,細胞配 列は疎となり,形質の空胞化がやや著しいものが 性疾患.第1版金原出版東京(1980)195∼ 204 多く,中心基質のいわゆる中心液状化の組織像を 9)小林俊文・赤塚正純・田中秀美・春日義生: 切迫流産予後判定としてのスコアー.産婦人 科の世界30(7)647∼653(1978) 10)鈴木予州・平野睦男・和田裕一・斉藤 晃: 妊娠初期切迫流産の予後判定と治療法の有効 性について.臨床婦人科産科32(3)224∼227 示すものが認められる.④ 絨毛血管は,概ね確 認可能である.以上は,典型的な胞状奇胎の組織 像に対する,いわゆる奇胎様変性の特徴として, 渡辺らが提唱したもので7),我々の9例の標本に も,同様の所見が見られた.絨毛のこれらの変性 (1978) 11)星野茂夫・阿部 進:尿中HCG値による切 が,原発的なものか,胎児変性に伴う二次的なも 迫流産の予後についての検討.産婦人科の世界 のかという問題については,胞状奇胎発生に対す 30 (12) 1241∼1244 (1978) るParkらの腫瘍説, Hertingらの非腫瘍説な 一20一