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透過電子顕微鏡用試料作製法と問題点 - 超顕微解析研究センター

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透過電子顕微鏡用試料作製法と問題点 - 超顕微解析研究センター
透過電子顕微鏡用試料作製法と問題点
(非生物試料編)
1.透過電子顕微鏡TEM用試料の特徴
(1)加速電圧と試料の厚さ(透過能)
(2)TEM 用試料に必要な条件
2.観察目的と TEM 用試料
3.形態観察-レプリカ法
4.粉体・微粒子観察法
5.各種薄膜試料作製法と特徴
(1)化学研磨
(2)電解研磨
(3)イオン研磨
①Ar イオンミリング法
②Ar イオンスライス法
③Ga イオン FIB 加工法
(4)ウルトラミクロトーム法
(5)強磁性体試料
関連文献
九州大学超高圧電子顕微鏡室
無断複製禁止
2010 年 11 月改訂
0
1.透過電子顕微鏡用試料の特徴
(1)加速電圧と試料の厚さ(透過能)
図1-1
波長、試料透過能の加速電圧依存性
電子顕微鏡用試料
(a)
1
(b)
試料ホルダの設置
(c)
試料の交換
図1−2
試料ホルダーと試料の着脱
2
(2)透過電子顕微鏡用試料に必要な条件
・電子線が透過できる厚さであること
高分解能格子像・・・t < 10 nm
EELS 分析
内部組織観察・・・・t < 200nm
(加速電圧や元素によって異なる)
・導電性を有すること
(絶縁体の場合はコーティングが必要)
・表面が平滑であること
・表面が清浄であること
酸化物や炭化物、油性物などが付着していないこと
・湾曲や厚さの局所変動がないこと
・電子線照射中に試料がドリフトしないこと
厚さ
図1−3
試
料
形
3
状
と
支
持
2.観察目的と電子顕微鏡用試料
表2−1
材料の形状、観察目的および観察試料作製法
2−2 観察試料作製法の種類とその概略
種
類
試 料 作 製 の 概 略
・試料の支持法
メッシュ
・マイクログリッド
支持膜
・微粒体試料作製法
観察試料を電子線透過させ、対物レンズの固有な物体平面位置へ安定に保持
するための方法
単孔か 50∼1,000 メッシュの直径 3mm、厚さ 10∼50μで、Cu、Au、Pt な
どでつくられ、支持膜やメッシュ孔より大きな薄膜試料などを張り付け支持固
定する。
きわめて薄い試料膜や試料を支持するため、各孔径 0.1∼10μの網目状膜を
つくり、これをメッシュにのせて用いる。そのため支持が安定で、とくに高倍
率観察に必要である。
電子線をよく透過し耐性のあるプラスチックやカーボンなどの 数 nm∼数
10 nm の薄膜で、メッシュに張りつけた上に微粒体試料を支持する。プラスチ
ック薄膜は、希薄溶液を水面か基板上に流し広げ、溶剤を揮発してつくり、カ
ーボン薄膜は真空蒸着法により作製する。
凝集塊状か液体、グリース中に存在する微粒体試料を支持膜上に単一粒子と
して分散固定する(分散法とよぶ)。
4
噴煙法、直接捕
集法、捕集法
凝集塊状試料を煙や塵状に空気中へ分散浮遊させるか、またはその状態の粒
子を支持膜上に直接捕集固定する方法
付着・粘着分散
法
支持膜上に粉末状試料をはきなでて単一粒子に分散、付着させる。そのさい
にあらかじめ支持膜面に粘着性をあたえる処理をほどこし、粉末試料の分散を
高め粒子を確実に固定する方法
ペースト法
凝集塊試料を水、有機溶剤、ワセリンなどでペースト状にねることによって
分散させ、これを支持膜上に塗り、膜面に分散、付着した粒子のみを残し、余
分は洗い流して取り除く方法
懸濁法
微粒体を液体中に懸濁分散させるか、またもともと懸濁状試料を支持膜面に
のせ、懸濁溶液は蒸発させる方法と支持膜面に付着した粒子のみを残し、余分
は濾紙に吸いとる方法
噴霧法
微粒体懸濁液を特殊な噴霧器でμ台の微小滴にし支持膜へのせる方法。液の
蒸発が速いため粒子は凝集しにくい。
支持膜包埋法
・シャドウィング法
粉末試料を懸濁したプラスチック溶液で、支持膜作製法により薄膜をつくり、
メッシュにのせる方法
コントラストの低い微粒体や薄膜表面の形態に、真空蒸着法で斜め上方から
金属原子を吹きつけ、写真の照明に似た効果でコントラストの増強と形態観察
を可能にする。とくに、レプリカ法の像形成上重要で、そのコントラストと解
像度を高め立体視効果もあたえる。
・表面形態観察試料
金属その他の組織や破断面などの表面形態の観察は、その試料面の凸凹を転
作製法(レプリカ法) 写したレプリカの薄膜で行なう。試料面に真空蒸着法でレプリカ薄膜をつくり、
剥離してこれを観察する 1 段法。プラスチック材料などで、試料面を転写して
剥離した面に真空蒸着法でレプリカ薄膜をつくり、先のプラスチックは溶解除
去して観察用の薄膜を得る 2 段法や 3 段法がある。大きな試料や微粒体など試
料の状態、性質などにより種類が多い。
・電子線染色法
コントラストの低い試料に重金属を含んだ染色液で、化学的または物理的に
重金属を付着させる方法
・エキストラクショ
ンレプリカ法
金属組織面にある析出物や介在物を 1 段レプリカ法で抽出し、組織と対応し
た抽出物個々の制限視野電子回折が行なえる。
・デコレーションレ
プリカ法
イオン結晶の劈開面に金を平均膜厚1nm 以下に真空蒸着すると原子オーダ
の階段部に集積することを利用した方法
・フリーズエッチン
グ法
プラスチック、含水物質、水などに懸濁された試料を、液体窒素温度に冷却
固体化した後真空中で破断し、試料の組織構造または形態をあらわす面をレプ
リカ法で観察する方法
・薄膜試料作製法
大きな試料を電子線がよく透過するように薄膜にして内部構造を観察する。
そのさい試料薄膜は元の構造を保存し、薄膜化による構造の変化を起こさぬよ
うに作製する方法
金属薄膜法
材料から歪みをあたえずに切りだし電解法の化学研磨などで薄膜にする方法
真空蒸着法
金属などを真空中で加熱蒸発させ、観察目的により種々な基板や蒸着条件で
薄膜をつくり、処理を加えるなどを行なう方法
その他の薄膜法
プラスチックなど有機物質は、化学的な薄膜法、無機物質は機械的に破砕し
て得た薄片を用いる。結晶性物質などの劈開剥離性のよい試料は劈開法。試料
面を基板に接着し強く剥離させ、基板に残った試料の薄片は接着剤を溶かして
得るなどの方法
・超薄切片作製法
ガラスやダイヤモンドのナイフと、精密で極微小な送り機構をもつウルトラ
ミクロトームを用い、材料を切削し膜厚 数 10 nm 以下の薄膜試料を得る方法。
微小な試料はプラスチック樹脂に包埋して切削する。
5
Ⓐ各数字はそれぞれのメッシュ数を示す。ただし、たて横
の数を別々に示す場合あり。Ⓑ⑤はシートメッシュとよば
れ、安価でもっとも多く用いられている。Ⓒ⑫はアルファ
ベット記号入り。Ⓓ⑮∼⑰は試料をはさんで用いる。
図2−1
メッシュの種類(一部例)
①小さな穴
0.1∼0.5μ
②中位の穴
0.5∼1.5μ
③大きな穴
3∼6μ
④シートメ
ッシュに張
り付けたマ
イクログリッ
ド
図2−2
孔径の異なるマイクログリッド例
6
3.形態観察―レプリカ法
図3−1
レプリカ像の形成
図3−2
レプリカの種類
図3−3
エキストラクションレプリカ
7
図3−4
一段および二段レプリカ作製の図解
8
4.粉体、微粒子観察法
図4−2
図4−1
ペースト分散法
粉体試料付着分散法
(振掛け法)
図4−3
図4−4
懸濁分散法
水面に浮いた試料粒子の支持膜固定法
9
5.各種薄膜試料作製法と特徴
(1)化学研磨
表5−1 薄膜作製のための化学研磨法
金属の種類
化学研磨液組成
研磨条件
リン酸 45∼85%、硝酸 2∼40%(ほかに硫酸 0∼40%、酢酸 0∼
15%、ニッケル、銀、銅、カドミウム、ナトリウムの硝酸、硫酸
塩、ホウ酸、界面活性剤の一部を添加することあり)
硝酸∼13%、酸性フッ化アンモニウム∼16%、硝酸鉛∼0.02%(ほ
かに硝酸銅、クロム酸、グリセルロール、エチレングリコールな
どの一部を添加することあり)
カセイソーダ 28%、硝酸ソーダ 23%、亜硝酸ソーダ 17%、リン
酸ソーダ 11%硝酸銅 0.015%、残水
Al
90∼120℃
数秒∼数分
55∼80℃
数秒∼数分
135℃
数秒
フッ化ホウ素酸 0.15∼5%、硝酸 0.25∼3%(銅、亜鉛、銀、カ
ドミウムなどの一部を添加することあり)
1
2
HF
70 容
HNO3 30 容
H2O
300 容
シュウ酸
25 g
H2O2
13 g
H2SO4
0.1 g
H2O
1,000ml
55℃∼60℃
5∼10 分
鉄鋼および不鉄鋼
CrO3
H2SO4
4
縮合リン酸 100 容
(P2O5 72∼75%)
H2SO4(d=1.84)0∼10 容
180∼250℃
数秒∼数分
5
縮合リン酸 100 容
(P2O5 75∼80%)
有機溶媒 10∼40 容
60∼130℃
数分∼数十分
7
8
9
10
1
銅および銅合金
2
3
4
Fe-Si(<2.8%)の研磨
も可能
20∼30℃
30∼60 分
3
6
摘要
もっとも多く使用される
方法。これを中心とした
浴数例(Alupol 法など)
あり
E.W.法、ほかにこれを中
心とした浴数例(Kaiser
法など)あり
E.W.法、この例はほとん
どほかに存在していない
仏特許、ほかにこれを中
心とするもの数例(E.W.
法など)あり
500 g
150 ml
室温∼50℃
15∼30 分
縮合リン酸 100ml
H2SO4
10ml
SnCl2(FeSO4) 5g(10g)
Mn(NO3)2
5g
HNO3
65%
HCl
20%
H2SO4
10%
インヒビター 0.5%
HNO3
2∼8Vol%
HCl
4∼15Vol%
HF
2∼12Vol%
H2SO4
3∼18Vol%
H2O
残り
アルカロイド類
0.05∼6wt%
HCl
30wt%
H2SO4
40wt%
CCl4
5.5wt%
H2O
残り
(HNO3
0.5%)
HNO3
0.5mol
HCl
0.2mol
H2O
3.0mol
H3PO4
0.5mol
HOAC
0.5mol
HNO3 (d=1.38)
100 g/l
H2SO4 (d=1.84)
80 g/l
HCl (d=1.17)
25 g/l
H2O
残り
H3PO4 30∼80 容量%
HNO3
5∼20 容量%
氷酢酸
10∼50 容量%
H2O
0∼10 容量%
HNO3
40ml
氷酢酸
60ml
塩化第一銅
3g
重クロム酸カリ
5g
HF
40 重量%
H2SO4
95 重量%
氷酢酸
100 重量%
10
本浴に浸セキする前に希
H2SO4 処理によって被研
磨面を活性化しておく
縮合リン酸は市販正リン
酸の加熱脱水、または
P2O5 添加のいずれかに
よって調整する
有機溶媒としてアルコー
ル、エーテル、ケトンの
類を用いる。縮合リン酸
は高 P2O5 濃度のものが
よい
180∼250℃
数秒∼数分
18Cr-8Ni 系、13∼25%
Cr 鋼の研磨可能
50℃
処理面が黒味光沢をして
いるときは HNO3 で 2 次
処理をする
70∼85℃
10∼15 分
18-8 系、10∼35%Cr 鋼、
アルカロイドの類として
ニコチンのようなものが
添加される
65∼80℃
2∼5 分
オーステナイト鋼に対し
てとくに顕著な研磨効果
あり
65℃
45 秒
インヒビターを 0.1wt%
程度添加するとよい
室温
数分
純銅および単相合金に適
する
55∼80℃
2∼6 分
各種 Cu 合金の研磨可
能、左記組成範囲内で適
宜選択する
室温∼50℃
5∼10 秒
ほとんどすべての Cu 合
金の研磨可能、ただし
Sn(>5%)合金を除く
室温付近
金相学研究用に有効
図5−1
半導体結晶の平面 TEM 試料作製法
図5−2
多結晶シリコンの接着剥離法
11
図5−3
選択エッチングによる多層構造試料の平面 TEM 試料作製法
バルク金属
薄板
圧延
機械切断
腐食切断
超音波切断
放電切断
放電腐食切断
噴射式電解腐食
薄膜
化学研磨
電解研磨
イオン衝撃
などに
より
試料
研磨であいた
小孔の近傍か
ら切り取る
などに
より
図5−4
バルク金属から金属薄膜を得る手順
12
(2)電解研磨
図5−5
Bollmann 法
窓あけ法の電解槽における研磨状況(a)と、試料部のラッカー処理状態と
研磨に応じた試料の変化(b)∼(e)
図5−6
図5−7
ウィンドウ(枠つけ)法
窓あけ法
図5−8
による電顕研磨の一例
13
ウィンドウ法による試料作製の手順
陰極に 0.6mmの穴をあけ、穴の周辺は
図のように試料に対し凸形にする。
電顕研磨の最終段階まで使用できる。
図5−9
図5−11
試料に絶縁物を塗る必要がない。
有孔絶縁板と試料との角αを調節し、
試料にあく穴の位置が変えられる。
有孔陰極法
図5−10
薄板予備研磨法
14
有効隔壁法
表5−2
薄膜作製のための電解研磨法
15
16
図5−12
図5−13
表5−3
ツインジェット研磨法の原理図
ツインジェット用試料ホルダーの一例
電解研磨法(ツインジェット法)に用いられる代表的な電解液
17
(3)イオン研磨
イオン照射による無機材料の透過電顕試料作製
よく利用されている三種類のイオン研磨法の比較
装
置
研磨前の試
料寸法・形状
の目安
前処理
研
磨
特
徴
Ar イオ
ンミリ
ング
3mmφ×t
mm(円盤
状)
t < 1mm
t < 50∼70 μm になる
までエメリー紙等で
研磨、必要に応じて金
属単孔メッシュに貼
り付ける.
ディンプルグライン
ダーで円盤中央に窪
みをつける(中央部の
厚さ 10μm 程度).
円盤の両側あ
るいは片側か
ら Ar イオン照
射.
なるべく浅い
角度で研磨
硬度の違う複合
材料では研磨ム
ラができる.
スパッタリング
速度の違う多層
膜は均一に研磨
出来ない.
Ar イオ
ンスラ
イス
2.8×0.8×t
mm3
t < 1mm
t < 0.1mm になるまで
エメリー紙等で研磨.
イオンが当た
る前面にシー
ルドベルト*
を置き、
イオンソース
を傾けながら
試料両面を浅
い角度で研
磨.
研磨状況は
CCD カメラで
観察できる.
集束 Ga
イオン
ビーム
加工
(FIB
加工)
1.2×0.4×t
mm3
t < 1mm
t < 0.1mm になるまで
エメリー紙等で研磨.
狙った箇所を Ga イ
オンビームで切り出
し(3μm×15μm
×10μm)、半円状単孔
メッシュにはりつけ
る.
(マイクロサンプ
リング法)
イオンが当た
る面の一部に
W を蒸着**
してあらかじ
め保護してお
く.なるべく
浅い角度で研
磨.
ピンポイントサ
ンプリングが可
能.
SIM 像を頻繁
に観察するとダ
メージが入る.
SEM 付きの装
置では、研磨状
況を随時ダメー
ジなしで観察可
能.
*シールドベルト、**W 蒸着ともにイオン侵入による照射損傷を引き起こすのを防ぐ
ための処置
18
イオンスパッタリングによる電顕試料作製法
Ga+イオン
TEM観察
目印
TEM観察
Ga+イオン
W 保護膜
FIB 加工
回転方向
塊状試料
TEM観察
試料
Ar+イオン
ディンプル
グラインダー
機械的加工
・ダイアモ
ンド鋸
・超音波加
工
・放電加工
・エメリー
紙研磨
・ダイアモ
ンド研磨
・その他
∼80μm
ディンプル
加工断面
Arイオンミリ
ング
3mmφ
TEM観察方向
10∼
30μm
中心部に孔
Ar+イオン
TEM観察
Arイオンスラ
イス
①
Arイオンミリング法
図5−14
断面観察試料の薄膜作製の手順
19
図5−15
ディンプル研磨機の研磨様式(a)と試料の断面(b)
3mmφ
図5−16
イオンミリング装置の構成
20
図5−17
平面試料作製法模式図
図5−19
バックシニング法
図5−18
21
断面試料作製法模式図
a 粉末を樹脂で包埋、 b ガラスプレートを研磨治具に貼る、c 円盤状に研磨、
d, e 両面に Mo 単孔メッシュを貼る、f イオン研磨
図5−20
Ti 基急冷凝固粉末の TEM 試料作製法
上部電極(NbN)
下部電極(NbN)
図5−21
トンネル障壁層(Nb 酸化物)
ジョセフソン接合の構造
22
図5−22
断面 TEM 観察用試料の作製工程
図5−23
メッキ試料の断面観察
23
②Ar イオンスライス法
イオンスライサによる薄膜試料作製の概念図
イオンスライサの特長
●薄く機械研磨しないので
①試料に歪みが入らない。
②多層膜などが剥離しない。
③研磨時の破損がない。
●高速でイオン研磨ができる。
●イオン入射角度がゼロ度に近く、試料表面の凸凹が少なくローダメージである。
●硬度差の大きい複合材料が薄膜にできる。
●ポーラスで脆い材料でも薄膜にできる。
イオンスライス法の試料作製手順
1.
試料を、2.8mm×0.8mm に切り出す。
試料最表面を含む断面作製の場合は 2.8mm×0.4mm に切り出す。
ISOMET のようなカッターが便利。
2.
試料の厚さが、0.1mm 程度になるまで紙やすりなどで研磨する。
厚さは、両刃のカミソリの小片を、表面の色がはがれるまで試料と一緒に研磨して判断する。
日本電子製のハンディラップが便利である。
3.
2.8mm×0.8mm×0.1mm の試料ができたら、イオンスライサにセットする。
1時間から2時間程度で薄膜試料ができる。
(薄膜ができると自動的に イオンエッチングを停止する。)
(JEOL EM-09100IS ION SLICER カタログより引用)
24
③Ga イオン FIB 加工法
半導体デバイスの故障解析などでは、不良箇所を正確に薄膜化することが要求される。しかし、
従来のイオン研磨法では正確な位置精度での薄膜化という要求に十分対応できない。その対策の
一つとして、集束イオンビーム(FIB : Focused Ion Beam)加工装置が開発されている。
従来の FIB 加工
Ga イオン
スキャン
デュアルビーム FIB 加工装置
Gaイオンを照射
すると、
昇華により W が
堆積する
繰り返しまたは
同時スキャン
電子
イオン
Ga +
e走査電顕SEM
像観察
W(CO)6 ガス
FIB 加工
CO ガス
2次電子
-e
ion
atom
反射電子
2次電子像(走査イオ
ン顕微鏡SIM 像)観察
試 料
W 保護膜
試 料
FIB による電顕試料作製
C コーティング(導電性付与)
削る : イオンスパッタリング
見る : SIM 像観察(加工領域指定)
最近は、デュアルビーム FIB の出現で加工状態を
SEM 像でダメージなく観察できる
積む : W デポジション(表面保護)
取り出す : サンプリング
FIB マイクロサンプリングの手順
25
(4)ウルトラミクロトーム
表5−4
超薄切片法(試料と条件)
図 5−25
図 5−24
ミクロトームにおける試料調整手順
26
試料切削面の形状
図 5−27 ナイフを固定するときには、
“逃げ角”をとらなければならない。
図 5−26
ミクロトームによる超薄切片
の作製
表 5−5
電顕用各種試料調製法の特色
調製法
対象物質
得られる膜厚
表面層
備考
電解研磨法
金属、合金
数十 nm 以上
酸化物など不純
物層があらわれ
る場合あり
研磨液の選択、研磨
条件の設定がポイ
ント
粉砕法
セラミックス
数 nm 以上
比較的清浄
劈開性のある物質
に限られる
化学研磨法
半導体
数 nm 以上
酸化物など不純
物層があらわれ
る場合あり
研磨液はフッ酸系
が主。温度など研磨
条件の設定がポイ
ント
ミクロトーム法
金属、セラミッ
クス、生物試料
数十 nm 以上
清浄
比較的軟らかい物
質に限られる
イオンミリング
法
半導体、セラミ
ックスなど
数十 nm 以上
イオン損傷、組成
変化あり
電解研磨法、化学研
磨法における表面
不純物層の除去法
としても有効
真空蒸着法
金属、合金
十 nm 程度以上
不純物層は少な
い
均一な厚さの薄膜
が得られやすい
27
(5)強磁性体試料
強磁性体の観察の難しい点
(1)試料自身の磁場で電子ビームが偏向され、軸がくるう.
特に、試料を傾斜した時顕著.
(2)対物レンズの強い磁場に試料が引かれてホルダーから脱落.
レンズポールピースの孔にひっかかって、電子ビームの邪魔になる.
(3)ホルダーの試料支持台が傾いてしまう.
・試料をしっかり固定できるスクリュータイプの試料ホルダーを
利用する.
・試料の全体積を小さくする.
・対物レンズをオフにしてから試料ホルダーの出し入れを行う.
薄膜試料
Æ
小さな試料は非磁性金属メッシュに接着剤で固定する
粉末試料
Æ
微粒子は樹脂に埋め込む
28
透過電顕試料作製法
関連文献
FIB 法
日本顕微鏡学会和文誌 電子顕微鏡
Vol.37, No.3 (2002)
特集「FIB 加工による電顕試料作製の現状と課題」
T. Ishitani et al.: Improvements in performance of focused ion beam cross-sectioning:
aspects of ion-sample interaction,
Journal of Electron Microscopy, 53(2004)pp.443-449.
ミクロトーム法
岸田晴雄、伊藤喜子:薄切法の材料分野への応用、電子顕微鏡 Vol.29, No.3(1995)pp.181-185.
その他一般
(1)電子顕微鏡
基礎技術と応用 1995
∼試料作製の先端技術∼
第6回電顕サマースクール実行委員会
編、学際企画、1995年
(2)各種分析手法におけるサンプリング・試料調整法と前処理技術
技術情報社
編、
技術情報協会
発行、1993年
(3)先端材料評価のための電子顕微鏡法
日本電子顕微鏡学会関東支部
(4)多目的電子顕微鏡
見る
編、朝倉書店、1991年
測る
確かめる
多目的電子顕微鏡編集委員会、共立出版、1991年
(5)電子顕微鏡技術
外村
彰
編、丸善、1989年
(6)電子顕微鏡利用の基礎
安達
公一
他
共著、共立出版、1975年
(7)透過電子顕微鏡法
幸田
成康
監、諸住
正太郎
他共訳、コロナ社、1974年
29
Fly UP