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「續色葉拾要抄」「伊呂波拾要抄」 - 慶應義塾大学学術情報リポジトリ

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「續色葉拾要抄」「伊呂波拾要抄」 - 慶應義塾大学学術情報リポジトリ
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「續色葉拾要抄」「伊呂波拾要抄」
関場, 武(Sekiba, Takeshi)
慶應義塾大学藝文学会
藝文研究 (The geibun-kenkyu : journal of arts and letters). Vol.39, (1980. 2) ,p.1- 31
Journal Article
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00072643-00390001
-0001
関
場
武
一景といへる桑門ありて、代との集・家との
それしきしまの道のしるへ、昔いまのさかしき人たち、 しな/\しるしをき給へる事、 はまのまさこの数しらす
であるだけでなく、事葉的な要素をも兼ね備えている事典︵ことてん︶ でもある。而して本書には
し、語注に密教の教義を引くものがあるなど、おそらくは真言宗の絡流の手に成るものと考えられ、単にことばの辞典
書に関する唯一の参考文献である﹁憾都糊醐和漢書善本解題﹂︵昭和お︶が指摘する如く、イロハ分けの門標に宛字を配
歌・歌語辞典や節用集類に比しても、何ら遜色の無い、 いかにも中世室町風の、国語辞書であると言えよう。すでに本
の巻が存し首尾完結していたものであるかどうかは、 不明である。が、 その内容・体裁を、当時既に行なわれていた連
正十五年︵一五一八︶ 八月の書写にかかる本書は、惜しむらくは﹁い﹂から﹁と﹂の部までの一巻であり、果して後続
﹁績色葉拾要抄﹂と題する歌語を中心としたイロハ引の辞典がある。但し、室町時代永
﹁績色葉拾要抄﹂ ﹁伊呂波拾要抄﹂
め
本塾図書館蔵の貴重書中に、
じ
侍り、こ斗に三川園やはきちかきわたり、 しかすかの里に住侍る、
-1-
l
ま
一巻の抄物をなせり、是しかしなから、手ならふ人の見こ斗ろえて、此みちにやすくまなひ入給へかしの、
き
/
︷
、
. 1をさため、書と斗のへ
抄を見、ことはの良材をえらひて、四十あまりのいろはの文字をうへにをきて、 っ
て
、
h
こ ふろさしのみなり、なつけて伊呂波拾要抄といへり
拙者これを見るに、 いつみの柏木とりのこせるふしのみおほく侍るを、 かさねてひろひもてしるしつけ侍り、
つは先賢をあさけるに似たり、 かつは後覧のそしりあらん事、 わすれ水くみしり侍るといへとも、 やま烏のをろ
かなるわらはへのをしへにと、 おもふ斗にて、人の見るめもはっかしの、森のおち葉かきあつめ侍り、名にしを
ふ一のかけをうつし、山した水にうかふいろ葉の文字をたよりとして、次才をさため侍れは、 なつけてこれも績
色葉拾要抄といふ
此うちに、もろこしの文をもいれん川るは、 ら・り・る・れ・ろのもしは、和しかたきによりて、これにたよりあ
るを入侍り、然に、 やまとうたに、 いらぬこと葉をもくはへ侍る事、仰は名っかひを見しり給へとおもひて、京極
LA
るったなきった紅葉
黄門の、拾遺愚草かき給へる時とやらん定給ふ、 かなつかひの内を載侍り、或は秋の野の、露の玉っさにもかき
たまはんため、或は呉竹の世の、 日すさみの双紙なと、うつし給んためにとおもひて、 か
の、色なき筆の跡をのこせるものならし
L
を、紹介しようとするものである
u
︶内に入れて示した。閲
本文引用にあたっては、概ね通行の新字体に改め、文字の大
という序文がある。以てその制弘意凶等は明らかであるが、本稿はこの﹁績色葉拾要抄﹂と、右の序文にも一吉う、先行
する﹁伊品波拾要抄
小などを本意に改めたほか、私に句点を施した。また見出し項に対する語注は多くの場合︵
監調査に際し色々と御世話を賜った各図書館・文庫およびその方々に、深甚の謝意を捧げる次第である。
- 2ー
、
七
﹁績色葉拾要抄﹂
大本一冊︵存い!と部︶
栗皮色無地紙。喉二十四・七、横十七・八糎。
不等。
﹁月明荘﹂の小型長方朱印。四オ内題下方に﹁慶慮義塾/圃書
七オ、二十三オ、三十七オは、各々途中で紙を継いである。
もともと儲紙袋綴のものであるが、終了のみ一枚両面書きになっている。また、 五オ、六オ、十五オ、十
手ズレ・虫喰等あれど全巻総裏打補修済み。
この常然な
ナシ。
﹁子時永正十五暦蹴仲穐捻一日嵐之/宮満大夫若朝臣常然︵花押︶﹂とあり。
表紙左肩に﹁績色葉拾要抄﹂と打ちつけ書き。序題
終丁ウ左方に、
ナシ。内題 績色葉拾要抄 。
L 尾題
本書の伝本としては、慶応義塾図書館蔵の一本のみである。まずその書型を示す。
奥
章
一
日
巻末奥書左方に﹁費玲文庫﹂の長方朱印、
竪二十二、横十四・五糎。
毎半葉七 J九行。双注・細注もあり。字数
八十九了。但し一オ、 四十ゥ、六十六ゥ、七十二オは空白のまま。
る人物は単なる書写者ではなく或は編者か。
︷子宮同
備考
館蔵﹂の長方朱印。
印
-3-
外 表 写
題 紙 本
丁
数
行
数
記
ツタフレハキヨヲ
全巻に亘り、 朱筆による鈎点・朱引・句点等あり。
アキラメヲツヶテニ
序文に続く三ウ中央上に寄せて﹁一 人 侍 レ 虚 万 人侍レ賓/即レ色 明レ心附レ物 顕レ理﹂ と 二 行 に 記
す。この句は写本や版本の書き入れにたまに見かけるものであるが、ここは﹁善本解題﹂にも言う如く、
本書の編者もしくは書写者の感慨かと思われる。
さて、本文であるが、その全文は近く刊行を予定している写真版を参照していた父くこととして、その構成・内容上
の特色の一端を次に示すこととする。
一定の法則は存しないようで
。一ウ J三オにかけて前引の序文があり、三ウに﹁一人侍レ虚﹂云々の識語。本文は四オから始まる。
O見出し語の配列は、第一音節のみのイロハ順。而してイロハ各部内に於ける語順には、
ある。強いて言えば、﹁い﹂の部の 117 ︵洋数字は各部内に於ける見出し語の順番。以下向。︶
︵マ、︶
いせのくに、 いさつものくに、 いつものおほ屋しろ、いさなきのみこと、 いさなみのみこと、 いそめくたはねのゆ
きかよひちのっち︵裟婆世界ト書也日本記︶、いきをひ見えたまふ ︵仏ト書日本記︶
や、同部J mの
いそなつむめさし、 いりぬるいそ、 いそのかみふる、 いはかね、 いはねさくみち、 いはさくかみ、 いはくど
同じく幻・犯の
いそまくら、 いさねのさと
の例に見られるように、相互に関連があるか或は多少なりとも関連のありそうな語句を、 言わば連想方式で並べて行っ
- 4ー
ている個所や、
1
9
4
はら
り、とを山毛
は
. \
,
、
へ主た
るべす
とを
とむおとひお共、
とをは、
とほりつみ、
﹁と﹂の部
としゃく
と屋くしけ、 とごめのたか、 と作三り、 とかへり、 とたち、 とかり、 とをりは、
とろいた、 とを見、 とさけひ、
、 見出し語を平仮名で出して、次に漢字表記を示
ア﹂キ, h
UMM
v
、曹
、
,u
﹁仮名文字遺﹂と密接な関連をもっと思われるのである。親行著、定
し、若干の説明と証歌等を付してある場合と、上下二段に見出し語を出し、各々それに対応する漢字をあげるだけで、
いま配列順について若干例をあげてみよう。 ﹁績色葉拾要抄﹂
名遣﹂﹁行阿仮名遣し︶ の影響である。後述の如く、 イロハ分けの門標の形式も含め、同書の影響は明々白々であるが、
草かき給へる時とやらん定給ふ、 かなつかひの内を載侍り﹂としている仮名遣の書、 一仮名文字遣﹂︵いわゆる﹁定家仮
見出し語の配列ということで次に考えられるのは、序文で﹁蝦名っかひを見しり給へとおもひて、京極黄門の拾遺愚
している如く、全篇に亙ってこの方式を貫き通しているわけではない。
のように、 いわゆる鷹詞を列ねてある個所が日につく。が、例えば﹁いしの付く地名が先の即 J 山間以外の例所にも散在
や
の如く国名・地名をひとまとめにしてある個所、
又
﹁ろ﹂の部M J必の﹁六﹂のつく名数を集めてある個所、
いつみのくに、 いかのくに、伊つのくに、 いなはのくに、 いは見のくに、 いよのくに、 いきのくに、 い、きのまつ
の
と
の末花 jmmにかけての
斗
語注の殆ど無い部分とがある。 そのうち後者が、
と
1
8
7
る
しま、 とまりやま、
し
、
家関、行阿補の﹁仮名文字遺﹂は、 を・お・え・ゑ・へ・ひ・い・ゐの八項に、 ほ・わ・は・む・う・ふの六項を加え
-5-
と
屋
た十四項を立て、各項目のもとに、各々の仮名を用いて表記すべき語を多少意義分類らしきものを考えて配置・掲出
一績色葉拾要抄しの時代には、 既に一応の流布を見ていた書である。 写本・版本とも
し、それに対応する漢字表記を一不し、稀にその語の意味と出典とをあげた、仮名づかい事例集とでも言うべきもので、
文安や文明年間の写本もあって
L
いの部の貯﹁いひかいとりて ︵飯掻取弘一︶Llω
に伝本は色々あるが、今、便宜上、天文二十一年︵一五五一一︶ の三条西公条の奥書のある無刊記本︵国語学大系等に収
録︶によって﹁績色葉拾要抄﹂と比較してみると、 ー績色葉拾要抄
L
の部、
L
花﹁いかっち
似ついへ ︵
家
︶
L
は
、
L
﹁l
、
、
の部に、 7−IA一し
ょ
は五﹁へ﹂ の部、
L
﹁いらへーは﹁へ﹂の部
︵﹂ぷ、円︶﹂は五つへ
ついらへいらふ共
L
︵
﹁
う
L
の部
ι
の部、
L
︵
﹁
ふ
山﹁いちゐのき
同﹁いふかひなし
J
ω
ω ﹁いろこしは﹁い
引け﹁いりあひいは﹁ひし の部に、 万﹁いはひし
η
岩倉小野︶には同書一の﹁をしの部に、
︵主人ノ妻也︶Llm
の部﹁いひしは﹁ひい の部に各々あり、
ω ﹁いへとうし
1 臼﹁いはくらのをの
﹁いなのめのあけゆくそら︵篠目明行空ト嵐 M葉︶しは、﹁仮名文字遺﹂の七つい﹂の部にあり、 臼﹁いせをのあま︵伊勢
男海士山州制収夫︶﹂
﹁いへゐ﹂は八﹁ゐ
いひ共﹂は、寸いふ﹂は﹁い
の部、
ーいらふしは十四﹁ふし の部に、 ね﹁いろへて ︵色交卜嵐︶しは﹁へし
%﹁いはふ﹂は﹁い 、
L け﹁いきほひ﹂は﹁ほ
︵
傑
︶Llm ついどむ﹂は、 問﹁いとおし﹂ ︵つお﹂の部︶ 間﹁いとなう︵音信︶
の部︶ の三つを除き、全て﹁い﹂の部にあるといった具合に、両者の関係は非常に密接なのである。
但しこれは、各々の部内に於て、両者の語の配列順までが同じであるということを意味しているものでは勿論無い。
L
右の例に見る如く、﹁績色葉拾要抄﹂の編者が、﹁仮名文字遣しの少くとも一本を手許に置いて、 その中から適宜項Hを
選んで行ったということであって、前者の語順と後者のそれとは、 かなりの差異を示しているのである。またその採録
にあたって、前者は後者﹁仮名文字遣しを悉く忠実に引きうつしたというわけではなく、多少の異同を見る。例えば、
-6-
6
5
始めにあげた貯﹁いひかいとりて﹂は、﹁仮名文字遣しでは﹁いひかいとりてけこのうつはものにもる ︵一幹一日開語ニ有︶﹂と
O本文の形式は
ロいは斗しるたき
日いさ斗むらたけ
L
ゴ一コえしの部の﹁花のゆふはえ
η ・透・部・遍・経
人
一
サ、竹也、 カソケキトハ、 サヤケキ也
トけいい川一一選返遍経部﹂から来ていると見てよいであろう。
万伊佐ミ村竹ト属、小篠也
万岩はしる瀧もと斗ろに鳴蝉の聾をしきけは都しおもほゆ
岩走瀧ト書
︵党字のへ︶吋炉停は、同書の五﹁へ
は、﹁仮名文字遺﹂七の﹁い伊以己夷意異︵行書体︶異︵草書体︶﹂から来ており、﹁へ﹂のつへ
の形式は、﹁仮名文字遺﹂の十四の部門表記に同じであり、それに倣ったものと思われる。例えば、﹁いしの部のそれ
を一番最後に持って来ている場合︵﹁は﹂ J ﹁と﹂の部︶ とがある。 前条でふれた如く、 党字及びその注記を除いたこ
場合︵﹁い﹂﹁ろ﹂の部︶ と、﹁は・波・者・ハ・盤・半・端・葉・︵党字のハ︶糊可得﹂と、最初に通行の仮名を掲げ党字
O イロハ分けの門標は、﹁︵党字のイ︶一説得い・伊・以・委・巳・意・夷・異・違﹂の如く、はじめに党字を出している
︵州 M妙味一品も︶﹂と五﹁へ﹂の部の﹁ゆふはへ加え︵タ栄・タ光︶﹂の二つを合わせて勘案した形を取っている等の異同がある
L
︵韻山山︶ と 別 立 て に な っ て い た も の を
LA
き﹂︵頂人|
ω ﹁いなのめのあけゆくそらしは﹁仮
なっていて、見出し語としては﹁績色葉拾要抄﹂の方が約めた形になっている。
は、﹁仮名文字遣﹂七﹁い﹂の部で﹁いたデき︵頂人山︶﹂↑いた斗き
名文字遺﹂では﹁いなのめの明行空︵明則一割問空也︶﹂とあり、前者の方が注記が簡略化され、 また釘﹁いた
也
一つに統合、﹁は﹂の部ぬ﹁はなのゆふはへ ︵花タ光ト嵐ごは、同じくっ仮名文字遺
也
万五日宿のいさ斗村竹ふく風の音のかそけき此ゆふへかも
o
-7-
崩
歴
日いはとのせき
天岩戸ノ関也
庫橘ト嵐一ア、ハナタチハナト讃也
併欄葉戦水風涼
4
重
空ニ関アルニ非ス、 日月ノ行ヲ路ニヨセテカグ
イホリト請胴、 橘ハポ相雪ヲイタム故、 イホリヲ
子低トハ、橘ノ実成サカリタルヲ云、其一一雨ノ降ヵ、リ
戸ノ字ヲ、
久かたの天の岩戸の関路にもとまらて秋の今や行らん宗一尊親王
ヨメリ
1 ろきつ
雨
日
虚橋花開楓葉衰出レ門何処望一京師
低ユ朗
山詠
山いろくつ
問いをのほね
凶いぶかし
色
審鮫未審
了
m いきつく
山いをのふえ
凶いにけり
川いうしよく
胸小缶⋮|也
魚玩
汀
f 伊勢物語
有族
有識
の如く、見出しが上下二段に出され、対応する漢字表記のみが記されるか、もしくはごく簡単な語注・出典注記のみが
n,
,
、
〆
H
L
L
鱗
た和歌や詩句についての注釈を行なっているものも、相当数見られる。なお
明をし、和歌あるいは漢詩等の典拠・用例を掲出するのが、基本形である。中には右のように、証歌・用例として出し
の如く、 は じ め に 見 出 し 語 を 平 仮 名 表 記 で 出 し 、 次 に そ れ に 対 応 す る 漢 字 表 記 を 一 不 し 同 時 に 片 仮 名 ま じ り 文 で 語 義 の 説
炉橘匂中開二露筆一併欄影底巻一一風策一
テ、実一一ソヒテ重キヤウニ見タリ、併樹トハ、シロノ木也、風吹ハ葉ソヨヒテ涼キ也
子也
醤
師
-8-
鹿{乍
掩
橘
故
﹁仮名文字遺﹂とは異なり、 表記にも多少の異
あって、証歌等の掲出されていない部分が見受けられるが、その個所は、 前述したように、 ﹁仮名文字遺﹂から直接採
っていると思われる場合が多い。但しその配列順は、前に見たように、
同がある。
O見出し項目数は、数え方により多少のゆれが生ずるであろうが、試算によれば次の通り。
一一二二項。但し﹁いほしり﹂がおと印に重出︵問の方は後から墨で見せ消ちに
︻に︼にひいろ J にわめるみそ
m ﹁いけのいゐ﹂とm ﹁いけのいひ﹂が重出︵m の方が語注が詳しく証歌もあり︶。また終了オに
︻い︼いせのくにjいわけなし
しである︶、
一
O 二項。
- 9ー
﹁いろきらす﹂が書き入れられている。したがって差し引き二三O項となる。
︻は︼はしちかくJ はしひめ
︻と︼とこよものーとしのひかり
一
O 一項。別に終丁オに後撰集か
二八項。 但し鷹調としての ﹁ほこ﹂︵架︶が日とおに重出︵誌の方が語注詳しく証
五O項
。
︻ほ︼ほたち1 ほこ
︻ろ︼ろきつ Jろじん
一項。
一四項。
歌もあげられている︶ しているので、実質三七項。
︻へ︼へだて1 へしりうたれぬ
らの証歌二首があり、用語例からして﹁とも/\し︵共々︶を項目として立てるつもりであったことが知られる。
かさねてひろひもで、 しるしつけ侍り﹂と言っている
館本、 B の神宮文庫本を参照した。はじめに掲げるのが﹁績色葉拾要抄﹂、後が松平文庫本﹁伊呂波拾遺﹂である。︶
呂波拾要抄﹂の伝本にはA ・B二系列があるが、今比較するにあたってA の松平文庫を代表として示し、 Aの国会図書
が、以下にあげる見出し項目は、本書のもとになった﹁伊呂波拾要抄﹂と重なっているか或は近い。︵後述する如く、﹁伊
O序文で﹁いつみの柏木、とりのこせるふしのみおほく侍るを、
すなわち総計五七五項である。
四
1 いわし水、
間いきのまつはらl いきの松はら、 聞いなお
︻い︼時いさなみ|いさらなみ、 おいそのかみふる|いそのかみ仏 M、 位いさをし人l いさおし︵国会本﹁いさお
しi 人
﹂
︶
、 間いさらをかは l いさら河、 附いはしみつ
ほせとり|いなおほせ鳥
なお次の三項目は﹁伊呂波拾要抄しの伝本のうちB系統本にのみ見られるものと一致している。必いなひめ川甘い
1 いろくつ
っ績色葉拾要抄﹂には五0 項目あるが、﹁伊口口波拾要抄﹂には見出し項目としては一項も無く、 B系統本に
なのめ|いなのめ、 似いをねぬl いもねぬ、 山いろくつ
︻
ろ
︼
であろ
﹁夫木楼の上秋の望は月のほと春は千里に晩蝉のこゑ定家 愚草ろくやをん照す朝日に雪消て春の光をまつや道引 ML
L
一ろうたい ︵楼台︶﹂ ﹁ろうくわん
の二首があげられているのみである。したがって、仮に項目を立てるとすると、﹁楼の上﹂﹁ろくやをん
L
L
c
hふーは斗木
引はとやの
h
円 u l U 4 μ 4 J I L t u J J 中/
ωはっとりかりはっとかり共ーーはっとかり、
kA
、4工、工︶ 11ヱハ工
一致するものは無く、後者については却に﹁ろくやおん﹂があるということになる。
う。とすると、前者については﹁績色葉拾要抄﹂に﹁ろうをおる斗 ︵下レ楼︶
︵楼観︶しがあるものの、
はとのはかりーはとのはかり、
UU
︻
は
︼ 2はもりのかみーはもりの神、 日はこやの山ーはこやの山、 臼は、
く︵国会本﹁はかなし﹂︶、
たかl はとやのたか
︻
ヘ
︼ 一致するもの無し。
ωと き そ と も な き と き そ
︻に︼ 7 になひぐるまーになひくるま、 8 にげなふーにけなく。他に 4 ﹁にはっとり﹂が、 B系統本独白項日の
﹁にはとり﹂と一致。
︻
ほ
︼ 6ほのほかにl ほのか
︻と︼日とのゐ申とのゐ、 Mとこめつらなりl とこめつら、 日と斗ろく!と、ふろ、
- 1
0-
ともなく、
ωとよのあかり!とよのあかり
以上二七項である。而してその両者間の関係であるが、﹁はかなし﹂やっとよのあかりしの如く、 ﹁績色葉拾要抄﹂の方
L
時ナヘニトハ、皮也、鳴カラニ也、稲負烏ト一五一一多
と記すのみであるが、﹁績色葉拾要抄﹂では
が簡略であるものもあるが、大幅に増訂されているものの方が目につく。例えば﹁いなおほせとり﹂は、松平文庫本で
は﹁馬共、律共、鴇共、是ハ異説、古今
不知負鳥、稲負烏共書
我門にいなおほせ烏の鳴なへに今朝ふく風に馬ハきニけり
ノ義アリ、ニハ夕、キ、律、鴇、馬等ヲ云也、或ハ秋ノ田ニムレヰル烏也ト一五、本草和名、兼名苑ナト云廓ニ、
高ノ物ノ有一一異名一、一一ハ夕、キヲハ駕鳶ト一五、焼鵠ト廊リ、注一一ハ日本記日、トツキヲシへ烏ト尽リ、又別一一稲
負鳥ト書テ、注一二其ヨミヲ、イナヲセ烏ト付テ、万葉集ヲ引文一一出セリ、異烏ト見タリ、或鵜ト云也、鵜ハ
︵マ、︶
尾ノ赤ク長テ稲ヲ負タル様ナレハ云リ、或云タウト一五也、其故ハ順カ和名一一稲負ト嵐、音一一ハタウトヨミ、訓一一
ハイナオホセ鳥トヨメリ、鴇ト鳳
フニブカリfr
、、’
;
−
B
イナ
秋の回のいなおほせ烏のこかれ羽も木葉もよほす露やそむらん次清小納言カ枕草子一一ハ、タウト云、昔馬一一稲
ヲ オ ホ セ テ 有 ケ ル ヲ 、 秋 カ ヘ サ ン ト テ 、 サ テ ヤ ミ ヌ 、 依 ν之秋一一成ハ稲負鳴テ是ヲ乞、又借々ト鳴也翻凶或云、
色葉一一顕照義云雀也、秋稲ヲ食トテ飛カツキテアル也、
ヒ︵k欄に﹁附﹂と記す︶
タウハ常世ノ園ヨリ来レル鳥也、其尾ノ中ニ稲ヲ一穂ハサミテ此圏一一落ス、是ヲ取テ植始ムト云事アリ、サテ稲
負烏ト云也
クヒナス、メ
夕暮に片山かけを見わたせハ稲負鳥のとふのこかれは
又云水鶏也、雀ヲヨメル豆町日
- 1
1-
ヤマトリフセル
︵虫喰︶
雀といふいなおほせ烏のなかりせハ門のわさ田をたれにおほ︹せ︺ん
又鵜ヲ云、臥時尾ヲ逆︹一一︺シテ有カ、 稲ヲ折立タルニ似タリト云也、 又云鴇ヲ云、此烏ハ秋来也、隠ノ先
イナオホセ
使也、此烏来ハ必雁来也、此鵠一一コカレ羽ヲヨメリ、又烏一一コカレ羽アリ、 仰烏ヲ云、 亦ハ馬ヲ云、秋稲ヲ負
レハ也、普日
此司一一テハ、顕昭儀一一雀ト云義叶へリ、又嫁
是ハ馬ヲ稲負鳥ト一五、 不審ナシ、 又奇云
る恋路にまよハさらまし
tA
伊勢園いたくらの橋わたる馬をいな負烏といふへかりけり
あふ事をいなおほせ鳥のをしへすハか
教烏ヲ鶏ト日本記一一見タリ、今司ハ逢支為一一稲負烏ヲ引出セル也
- 1
2-
と長々と記すが如きである。
仰いで、 おろはう︵路傍︶、 おろくだう︵六
ーいせのくに、 3 いつものおほ屋しろ、 4 いさな
聞いつ斗のいましめ、
O右にあげた﹁いなおほせとり﹂の如く、一詰注が長く詳細なものは、
きのみこと、 5 いさなみのみこと、 9 いさこ斗に、
tA
又とやをいたす、等である。
道
︶
、 鉛ろくは羅みつ、 乱はせをははせう共、 m
mはとのはかり、 引はとやのたか、 おにくしにくむ共、 打とらふすのへ、
屋にいる
﹁仮名文字遣﹂から
のものも含めて孫引きもあるし、 また当然のことながら説伝もある。なお引用書のうち、注意すべきものとして﹁八幡
である。右のうち﹁五十番司合﹂は、所謂﹁年中行事歌合﹂のことである。 但しこれらの中には、
藻、続草庵集、六花集、 五十番苦合、和漢朗詠集、三五記、論語、千字文、三体詩、文選、胡曽詩、史記、証道歌など
語、万葉集、古今集、後撰集、拾遺集、後拾遺集、金葉集、詞花集、千載集、新勅撰集、続後撰集、続古今集、長秋詠
O引用文献は、表示されているものをそのまま信ずれば、次のようなものがある。すなわち日本記、伊勢物語、源氏物
7
8
と
愚童訓しがある。すなわち則一はとやのたか﹂の条に、次のように引用されているのである。
ハトヤクマタカッカミイヵ、
梶谷鷹ト嵐、奥州一一鳩谷ト云所アリ、彼処ヨリ出タルヲ云、一条院御時也、逸物也、司云
陸奥の鳩やの鷹の飛かへり親のためには鷲を取なり
ウヲナヒ
愚童訓中巻云⋮問問 一条院ノ御宇一一、奥刀加ヨリ奉シ鷹ヲ、鍋谷ト名付テ御秘蔵アリ、此鷹親ヲ鵬博ケリ、何シ
コロナ
ν
カハ
π トモ、辿生マシキナレハトテ被レ放
テ知タリケン、歎ケル色外一一顕レ、物ヲモ不レ食〆命危ク見シカハ、正事一一非ストテ御占アリケル一一、大一一物
へイサy
クヒヤマハト
思事アリ、不レ放ハ可レ死出ヲ奏聞シケレハ、日来馴テ飼セ給シヲ情グハ思
アヤシ、
シカハ、膿八幡ノ幣柵一一参テ、尾一一付タル鈴ヲ喰切テ、神前一一子向テ飛去行シカハ、鶏同ク伴ヒケリ、見ル物
事
、
才サルヨJ t
ク マ タ カ サT
ワリ
ypt
知カ
キ敵
鳥タ
モン
、為 ニ 八 幡 一 一 申 入 テ 本 意 ヲ 遂 者 ナ レ
心 モ 支 度 モ 有 難 ク 、 勝 レ 於 レ 人 偽物谷
哉タ
、
ヲニ
打
- 1
3-
佐ヲナシ、ヵト、心ノ中ヲ何一一〆神明ヨリ外ハ知ヘキ、其後奥茄一一、親ノ鷹ノ取ラレシ梢一一、上ハ大一一下ハ小
y 、キクマタカア
グ、二重ニ巣ヲ喰テ居タリケリ、角鷹先−一習テ下舞、飛下テ取ントスル時、下ノ巣ヘット潜テ、逆一一成テ待
処ニ、追次取ントテ、小キ巣ヲ離潜処ヲ、頭ヲ仰乍持シカハ、勇離モ云甲斐ソ被レ取ケル、其一七此鷹ヲ
キクマタカ
人捉ニ、不レ弔〆取レヌ、見ハ是先ノ杭谷ナリシカハ、支ノ様ヲ奏聞〆、帝へ鷹ヲソ進セケル、サテコソ鳩
因レ弦彼巣ノ在所ヲ鳩谷ト一五、
谷ハ、親ノ敵打ントテ、大井一一参テ鈴ヲ子向進七テ祈ル験ノ有リテ、鷹ノ身ナレト角鷹取テケリト、都部ノ間不
思儀才一トソ申停ケル、此鈴ハ金也、当社ノ賓蔵一一寵ヲカレテ今一一アリ、
サレハカウカヲスホカヘス
神鷹一一副遺給故也
カ
御
カ思ヲ酌、丹穴ノ鳳恩ハ聖明ノ代一一出テ、雪山ノ鶴鵡ハ盲父母ヲ養ヒ、彼様ノ鳥ハ多ケレト、未レ見親ノ敵ヲ打
サ山
有佐夜ノ鶴ハ、子ヲ思フ声九皐二口同ク、林ノ白川ハ、晴ヲ報孝三月ニ及ヒ、白鴎ハ圃王ノ毒ヲ除キ、病市ハ揚セ
務
ヲ
カウヘ
ハ、増テ人倫ト〆弓箭ヲ取ン輩、誰カ首ヲ不レ傾、何レカ誠ヲ不レ尽、信力ノ真アル事、神慮ノ感臆無レ疑処也
これは﹁八幡愚童訓﹂の諸本のうち、群書類従系統本に見られる説話である。 ﹁愚童訓﹂と言えば、 本書より三十年
イソヲカー
後の天文十六、七年︵一五四七、 四八︶ に成立した、石清水の官寺関係の僧侶の子に成るかとも一一一口われる﹁運歩色葉
また本書成立の背景を考えるうえでも、注目に伯
集﹂元亀二年本・静嘉堂文庫本に於て、 ﹁磁郎神﹂等六項目の典拠としてあげられているのが知られているが、 本書の
場合は長文が引かれており、 ﹁八幡愚童訓﹂の伝播を考える上でも、
しよう。
O証歌・語注等で、本文と同筆乍ら後から行間に書き入れられているものも若干ある。その意味では本書は、未定稿的
- 1
4-
要素を示しているものであると言える。したがって、奥書に署記する常然なる僧は、単なる書写者ではなく、 おそらく
編者なのであろうと思われる。
﹁伊日波拾要抄﹂
本書の伝本は、管見によれば五本あり、 A B
二系統にわかれる。形式上両者の間で大きく異なる点は、 A本には証
−
歌が一首も無いが、 B本にはあるということである。
A 1︶松平文庫本
︵
大本一冊
槌藍色地紙に紗綾形・牡丹唐草模様空押し。堅二十七・三、横二十糎強。
︹近世前期︺写
表
紙
題策
ナシ。
表紙左肩。うす青色にて桐・唐草模様のある布目地鳥の子紙に﹁伊巴波拾遺﹂と墨書。内題
ナシ。尾題
リニソナヘテ
奥書終了オに、﹁夫弦抄者矯一一初心之仁一拾一一集一一一由緒世俗之詞一侍也/偏好給者可レ矯一一連寄之障唯於レ胸中一一備一丁レ
ナリ
六十一一才一景作畢
L
とある。訓点の付け方におかしな
故賓/者諒容レ矯一一道之指南一敗失但此内口侍之条多レ之/古今伊勢物語源氏八雲之相侍之源底也然深秘レ
7
之/報レ匿一而可レ蔵レ之云余/本云明謄拾酔歳正月日
保存良し。料紙は薄手の斐格交漉紙。
後遊び紙ウ左下スミに﹁向舎源忠一房﹂の重枠付長八角紺印、﹁文庫﹂の横楕円陰刻印。
竪二十・八、横十四糎。
見出し項目は縦二段五行。語注は各項目の下に細字で一 1 四行に分けて記す。
墨付八十九丁半︵終了ウ空白︶。別に巻頭巻末に遊び紙各一丁を付す。
点があるので、このままでは訓みづらいが、正して訓めば意味も通るはずである。
︷子宮同
備考
O 巻頭に次のような序文が一丁ある。
斯一景といふもの、三茄額田郡しかすかの里に、 しかそ住ける、 したしきともたちとも侍しか、 さんぬる明臆八
年の秋のころ、 をちこち人の横辞にあいかたらひ侍りて、 みつから思ひの火をいたし、宅をうしない、住ところ
もとむとて、あつま・つくしにまとひいにけり、 し か れ は 、 予 七 旬 に お よ ひ ぬ れ は 、 露 の い の ち の き え を 待 や す
らひに、大草といふ山にかくれゐて、こすゑの嵐水のをとになれぬれは、 又うき世の花にかへり、色はにほへと
ちりぬへき、 わかよ誰かつねならんと思うっし、 つれ/\のすさひにかきあつめ侍るもしほ草、これもつゐにけ
- 1
5ー
丁
数
行
数
印
記
︵カ︶
一定のきまりは無いようである
ふりとなるへき物なれと、 玉の光は有明の、 っきせぬことに侍れは、手な︹ら︺ふ人の見ほときて、こと葉をは
ひろいすて L、 心をうへき物なるへし
。見出し語の配列は、第一音節のみによるイロハ順。イロハ各部内に於ける語順には、
が、次のような現象が見られる。すなわち﹁い﹂の 8 J日にかけて
hU
いなむしろ、 いなおほせ鳥、 いなふね、 いなはや、
いまさらに、 いまはた、 いまはのとき、 いまはとて、 いまこんと、 いましはと、 いまもかも、 いまよふ色
U
いなはの里、
な
公 ︶︵
戸 二
が並び、 1
ド
i 白2
いなはの雲、 いなはの衣、 いなは山峯共、
が続き、﹁あ﹂の部必J Uに
あさもよひ、あさほらけ、あけほの、あさひらけ、あさまたき、 あけくれ、 あけたつ、 あさなゆふな、 あさな
け、あさかり
が、同じくねimに
あし原うたふ、あしかきうたふ、あしからうたふ、あかほしうたふ、あさくらうたふ、あすか井うたふ、あをや
きうたふ、あつまやうたふ、あふみ路うたふ、あさみとりうたふ
- 1
6-
し
、
いもゐ、 いもかり行は、 いもせの中、 いもせ山、 いもか門うたふ、 いもとわれうたふ、 いせ人うたふ、石河うた
オリ司
t ︸ iAせ’−
FHVQdl ︵ Aせいかド
せ
ふ
が並べられているように、共通する語成素を有する複合語を一個所にまとめたり、 ﹁いなふね←いなはや﹂、 ﹁いもゐ←
いもかり行は﹂、﹁あさほらけ←あけほの←あさひらけ、あさまたき←あけくれ、あけたつ←あさなゆふな﹂の如く、第
二音節までの仮名表記が同じであったり、或は互に意味の近かったりする語どうしを並べてある場合がある。これはあ
るいは求める語を検出し易くするために、編者なりに考えた試みであり、編者自身にとっては検索しやすい配列方式で
あったのかもしれないが、他者から見れば残念乍ら首尾一貫した方式とはなっていない。たど編者一景が、歌・連歌を
暗み﹁ことば好き﹂の人物であったことは間違いなく、その実作者としての経験が、結果的には、本書をして歌・連歌
の実作に重要なことばの錬磨を、ある程度可能なものとしており、言わば﹁読む辞典﹂、﹁読んで役立つ座右の辞典﹂た
らしめていると一言えよう。
O イロハ分けの門標は一宇のみ。伊・路・波・仁・保・遍・登・遅・利・怒・留・遠・和・賀・与・多・稗・楚・津・
祢・奈・羅・無・宇・為・野・於・久・也・満・気・婦・古・江・手・阿・佐・幾・由・免・見・志・恵・飛・毛・
勢・須の行草体。
おくせ
偽ヲ云リ
悪ト書、人ノサカヲ云
名所ニモアリ、山城
おくちすさみ
Mくるとあくと
日夕セヲ云テナクサ
ム、口遊ト書
暮ト明ルト也
O本文の形式は
おくまことにして
心中一町一九件事﹂の如く、出典を示すものも稀にある。
の如く、 はじめに平仮名もしくは漢字平仮名まじりで見出し語を縦二段に出し、 その下に割注の形で、語義や漢字表記
を片仮名まじりで示す。﹁幻なよひやか
O見出し項目数は、総計二ハ四三。イロハ別に示せば次の通りである。
- 1
7ー
︻い︼いやとし J いわし水
二九項。
︻ろ︼﹁路ノ詞ナシ﹂とあり。
二O項
。
︻ぬ︼ぬさJ ぬま
五四項。
六項。
詞ナシしとあり。
四一項。
六九
︻か︼神
︻る︼﹁留
二二項。
九項。
︻へ︼へら1都へ
︻は︼はつ空の月J はりみち
︻ほ︼ほの/ヘJ ほとろ/\
詞ナシ﹂とあり。
︻わ︼わしのみねJわか菜の衣
︻ら︼﹁羅
︻つ︼つとめて J つまむき
︻た︼たきつみやこ J たまきはる
二二項。
三一項。
︻そ︼そのかみ Jそほふる雨
︻よ︼よるへの水 J よねくはる
一七項。
︻り︼﹁利
六O項。︵以上イ J トまでの小計二六九項目︶
一八項。
一一一項。
︻に︼にさきのはこ J にしき木
︻と︼としあらたまJとこつみ門
八七項。
︻を︼をしてる海Jをしてる宮
︻ち︼ちのひの松lち里のはま
詞ナシしとあり。
羊
﹄
一
通
一ま工工
一h
ツ
︸︵
,刀
4
0
f
vつ
三口ナシ﹂とあり。
−中 J
JUJu
︻れ︼﹁趨
三九項。
︻ゐ︼ゐかきJゐかくる
︻な︼な Lよの神、,tなたて
五O項
。
七項。
︻う︼ういかすみ Jうけひく
︻く︼くにつかみ Jくたかけ鳥
二九
︻し︼しめちか
一六項。但し
︻ゆ︼ゆたか Jタ附日
一二二項。
︻え︼えならすJえふ
︻け︼けに Jけふりくらへ
五六項。
三二項。
九八項。
二四項。
︻あ︼あけの玉かきJあつまからけ
︻き︼きくのなかれ1きはまり月
一五項。
︻こ︼こ斗らの年 J こ か ら し
︻ま︼まるい佳 j ましみつ
︻お︼おもひやる J おほけなく
一三項。
一八項。
ニムハ項。
︻ね︼ねまち月Jねこし山こし
︻む︼むつきJむかしかへ
︻
の
︼ FらJ のきの玉水
三九項。
二七項。
四四項。
八一項。
︻て︼手玉もゆらに j てるましこ
︻ふ︼ふるさとJ ふわのせき
︻や︼やそしま1 やまかたつきて
二項。
一O項。
︻さ︼さとり月 j さしも草
八七項。
︻め︼めもあやに、/、めと
︻み︼みことのり j見るかね
項。但し﹁め﹂の部の﹁めて﹂が混入しているので、実数は三八項。
﹁めて﹂が﹁ゆ﹂の部に入っているので、実数は一七。
- 1
8ー
項
の
み
はら j しくれ
六九項。
しき
tA
二二項。
問あらたまの月
六項。
年
ノ
心
也
、
︹す︼すさむ Jすみた河
︻ひ︼ひっきのみかり J ひ と 夜 川
八項。
︵マ、︶
ω みゆき行幸也
一
一
六
幻みさき水ノ崎也
ロあさまし草 松ヲ云、秘事共︵※これは﹁め﹂
︻せ︼せな J せみのしくれ
︻ゑ︼ゑそかしま Jゑゐをす斗むる
︻も︼もろかつらJも
社ノ惣名、受大和二名所ニ
O右の項目のうち、 A 2国会図書館本に無い項目は、次の六項である。
日おほあらきの森
モアリ
床ヲ一去、敷妙ト書、夜ノ物
枕言也、シヰテ士口心
の部にあり、語注からしても﹁めさまし草﹂の誤記であることは明白。︶、
おしきたへ
﹂れら六項はすべて B系統本には存する。
五
あって語注が脱落していたり、
衣ヲモ云リ
賀茂−一在
の語注に前項﹁せみのは衣﹂の続きが混入していたりするといった、本書の方が劣ってい
5せみのは衣 関ヲ、ル、又ウスキ
L
7ツ ケ ニ ス ク ウ 烏 ナ リ し
凡凡ノ事、ヵノ−
とあって、
右横に
﹁下事云、樵娯虫、形尤極小也、巣蚊ノ鹿者ナリ﹂
﹁め﹂の部日﹁めに見えぬ鳥﹂に、文安元年︵一四四四︶成立の﹁下学集﹂が引かれていることは、注目に値する。
﹁めに見えぬ烏
とあるのである ︵国会本ではこの﹁下事一三以下は語注に続いて記されている︶。これは﹁下学集﹂気形門の﹁樵娯虫﹂
すなわち
O
る例も若干あるが、両者聞に異同がある場合の多くは、この松平文庫本の本文の方がすぐれているようである。
の如く、 6 の﹁せみの小河
6せみの小河
OA2国会本と比べるに、 必﹁とぶ烏のあすか﹂が﹁とふ烏のあす L となっていたり、 組﹁さしも草﹂の見出しのみが
なお、
。
をそのまま引用したものである ︵管見の諸本では当該項の文辞に大きな異同は無い︶。おそらく語注に言う﹁八八﹂が、
- 1
9-
項
項
蚊のまっけに巣をかくる鳥な
﹁下学集﹂の﹁蝶娯虫﹂の項を引いたのであろう。 なお B系
国会本で﹁瓜市内﹂ B系統本で﹁鳳風﹂とあるように、鳳周のことであり、 とすると普通は立派な烏をさすから、 ﹁蚊ノ
臆ニ巣クウ﹂という説明とはあわなくなると不審を抱き、
統本には、この引用がない。 ちなみに、 古活字版﹁匠材集﹂の一本には、﹁めに見ぬ烏
お﹁はこやのたま ︵
秘
事
可
尋
︶
﹂
、 お﹁おみ
りしとのみあり、寛文版﹁和歌呉竹集﹂でもほ X同様にあって、﹁鳳風﹂云々の記事は無い。
L
、 必﹁しるしの箱詰事︶﹂の如く、 秘事とか口伝とか称し
Oすでに引いた例でもわかるように、語注は実に簡単なものである。中には、
hL字在︶
二巻合一冊
ころもみ唯一守時十一滑川也︶ L、 白﹁おかたまのき︵岬約一
横本二ツ切
び紙各一丁分あり。
- 2
0-
ているものも若干ある。
︵
A 2︶国会図書館本
︹近世前期︺写
成泊色地紙に紗綾形模様格子に烏紋空押し。竪十五糎強、横二十一・七五糎。
L
表紙左肩。短冊形白紙に書名を墨書するが、表層剥落多く﹁拾﹂と﹁集﹂の字のみ判読できる。内題
拾葉集上終﹂、拾葉集下終
一字分宛の脱落のあるほか、﹁源底﹂が﹁深底 L
、﹁網棚.民﹂が﹁鞘匠﹂となっている。
上
墨付七十二了。うち上巻三十八、下巻三十四丁。上巻と下巻の間に遊び紙が一丁あるほか、前と後にも遊
なって、
奥書 A 1松平文庫本と同文の本奥書があるが訓点等無く、 ﹁連司之障﹂が﹁連之障﹂、 ﹁但此内﹂が﹁但此﹂と
︶ には無く、下巻︵や Jす
︶ に﹁拾葉集下﹂とあり。尾題
巻︵い Jく
題策
表
紙
丁
数
︷子古同
見出し項目十二行一段。語注は割注形式のもの多し。
竪九・八、横十九糎。
一部裏打。料紙は斐
上巻一オ右下および下巻終丁ウ尾題左下方に﹁阿波園文庫﹂の子持ち枠付長方朱印。その他﹁園立園曾園
前見返し右上に﹁拾葉集﹂と墨書した短冊形白紙を貼付。手ズレ、虫喰い少しあり、
書館蔵書﹂の正方朱印や、昭和初年日月日日に登録の旨の青ゴム印あり。
備考
L
が﹁心うへき﹂になっている。 ﹁うき世の花に﹂が﹁累世の花にしと
O A 1本と漠字や仮名の表記に多少の違いがあるが、同文の序がある。但し﹁色はにほへとちりぬへき﹂が﹁色はにほ
へとちりぬへとちりぬへき﹂に、﹁心をうへき
なっているのは、﹁累世﹂を﹁うきょ﹂と訓ませるつもりなのであろう。
うるほひなり︶
。イロハ分けの門標でA 1本と異なるのは、透・梨・努・乃・毘・こ︵己︶・天・し ︵之︶・比︵ひ︶ の九つである。
OA1本に見られない独自項Hが三つある。
り
︶
、 日てふり
おかもと云舟︵鴨−b たれは云り︶、 おうつえ︵阪lMぷ
一
肌
じ
城
、 Mh
但しこれらはすべて B系統本には在る。 A 1本には前述の如く、本書に無い独自項目が六つあるから、差し引きして、
本書の総項目数は一六回O である。配列順は、 A 1本と少異のある部分がある。
O A 1本と比べるに、本文の上で劣っている個所が多いようである。国会本には、 ところどころ、漢字や仮名に濁点が
振られたりしているが、或は後筆のものもまじるかと思われる。
- 2
1-
行
数
印
記
紙
B 1︶神宮文庫本
︵
︹近世前期︺写
大本二巻二冊
青砥粉色布目地紙。竪二十五・六、横二十・一八糎。
表紙左一屑。泥間似合紙に金泥にて霞引き草木模様。﹁色葉抄上下︶﹂と長書。内題
ナシ。
題祭
下巻終了オに、 A 1本とほ父同文のものがある。﹁本一五明臆拾﹂以下の年記および署名が無いほか、﹁拾集﹂
ナシ。尾題
奥書
が﹁拾於﹂に、﹁由緒しが﹁旧緒﹂に、﹁連司之﹂が﹁連歌﹂、﹁故賞者﹂が﹁故実干し、﹁道之指南﹂が﹁道指市﹂
に、﹁此内﹂が﹁此﹂、﹁口侍之条﹂が﹁口侍条﹂に、﹁源底﹂が﹁深底 L、﹁然深﹂が﹁然注﹂になっている。
上巻︵い Jく︶百三丁半︵一オは空白︶、下巻︵やiす︶九十一丁︵九十一ゥ、九十二ウが空白︶。別に巻
虫喰い少しあり。
各巻巻頭に﹁林崎文庫﹂の長方朱印二種宛あり。
竪約二十一・八、横十五・五糎。
毎半葉十行。注も本文と同じ大ききである。証歌も同じく一行書きで十首宛記す。
頭巻末に遊び紙各一丁宛あり。
字高
備考
O 一ウに次のような序文がある。
一景古人、三州額田郡しかすかの里にしかそ住ける、 し た し き 友 と ち と も 侍 り し 、 あ る つ れ / 1、、にあひかたら
いろはにほへとちりぬへき、 わかよたれかつねならん、問しらさらん二一−日葉とも、 か き あ つ め よ と い ひ げ れ
は、もしほ草これもけふりとならんかし、 玉のひかりは有明の、 っきせぬことに侍れは、手ならふ人ミ見ほとき
- 2
2-
表
紙
丁
数
行
数
印
記
ひ
て、詞をはひろひ、 心をうへき物なるへし
すなわちA系統本の序を、 つづめたような趣になっている。
O前にもふれたが、本書とA系統本との大きな相違点は、 B系統本には、
イロハ分けの各部の末に、各々の証歌がまと
めて記されているという点である。収載項目にも多少の異同が見られ、本書の方がA本より約九十項目分多くなってい
る。以下その項目数と見出しの異同を記す。
か
、
tA
の一六項。 但し﹁いもねぬ﹂は
内いろくつ、 おいとはやも、 回ゐにくき心、 酬いほみた
mいさ
︻
い
︼ 一二五項。うちA本に見られない独自項目は、 ロいひます日、 回いなのめ、 幻いと水、 m
はふれ水、 鈎いもねぬ、 U いはつな、
つ山、ノ\ノ\斗 4ノh
ツ
FhUBVV44
tA
﹁ゐにくき心﹂は書陵部本の肩に﹁い﹂ の注記あり、 静嘉堂文庫本に
つる、 聞いほはた衣、 附いそかはし、 問いかまほしき、 川いもりのしるし、
﹁ゐ﹂の部に﹁ゐをねぬ﹂として重出、
﹁いにくき心﹂で出ている。またA本にあって本書に無い項目がある。﹁いしふしし﹁いわし水﹂の二つである。
︻
は
︼ A
︻ほ︼二一項。独自項は 5ほのかす
ω の﹁ちりかひくもれ﹂で、
Aにあった﹁ち本の紅
︻
と
︼ Aと同じ六O項。︵以上イ J トまでで合計二八六項目︶
︻
に
︼ 一九項。最後の﹁にはとり﹂がA本に無い独自項目。
︻ろ︼見出し項目無く、証歌が二首ある。それから推測するに、﹁ろうの上﹂﹁ろくやおん﹂の二項か。
と同じ五四項。
︻
ヘ
︼ A より﹁都へ﹂の一項が少ない五項。
L
L
﹁るりの水﹂か。
︻を︼二
﹁りうもんの瀧﹂﹁律の司﹂﹁りう
︻る︼証歌のみ二首あり。﹁るりの地
︻り︼証歌のみ三首あり。それから推測するに、 項目としては、
︻
ぬ
︼ A本と同じ九項。
- 23 -
、
3
1
三項。 但し、 うち、 ﹁をこたる﹂﹁をみ衣﹂﹁をきひ﹂﹁をさめ﹂の四項は﹁お﹂の部に重出。 独自項目は 2をふ
たんの花﹂の三項か。
葉﹂が無い。
︻ち︼三O項 。 但 し ﹁ ち の わ ﹂ が 日 と 幻 に 重 出 。 独 自 項 は
む
ね、幻をとめこ、 の二。
よはひほし、
MM
︻た︼六八項。但し﹁たくへ人し
︻よ︼三四項。 A本の﹁よそふへ
︻か︼九一項。 A にあった﹁かほはな﹂が無い代わりに、
の四項がある。
およぐ、 但よおり、 の独自明、三がある。
ωかみや川、 初
の神、 引かひまみ、
引
か ふ
tみ
以
︻わ︼二三項。 A本に無い独自項目は7わかぬる。
か斗みのさくら川、
L
﹁ためし﹂﹁たまきはるしが脱落。
ωつ
らをり、
LA
却ついな︶。
︻
そ
︼ Aと同じ
︻
ね
︼ 一四項。独自項一
︻れ︼証歌のみ二首あり。﹁例よりも﹂﹁連ょする﹂か。
臼﹁た Lよひて﹂侃﹁たなはたつめ﹂が独自項。 A の﹁たらちを﹂﹁たままくす︵国会本ったままくく
き﹂が無い代わりに、
ず
﹂
﹂
︻つ︼四二項。うち独自項三︵U つれなきつくる、
︻ら︼証歌のみ三首あり。
カL
二二項。
8
5
7
︻む︼三八項。うち幻﹁むすき﹂お﹁むくらのやと﹂が独自
︻な︼三九項。 A本のぬ﹁なたて﹂に代わり﹁なをしすかた﹂が入る。
9
攻4 ね
−寸
の
り
の
は
な
43 1
7
b を「
-:,_~ 欺の
−寸
二り
りわ
す」
!ケの
I
L
必﹁くさ
︻ま︼コ二二項。お﹁まひ
︻く︼四三項。うち幻﹁くま﹂ 4 ﹁くもみっし必﹁くさむしろ
し−
︻や︼四四項。 A本最後の﹁やまかたつきて﹂が無い代わりに﹁やまちの菊﹂が入る。
独
ちけ人︶。
項
︻ゐ︼九項。 6 ﹁ゐま
の
.
b
し
切っおさめと﹂ 回﹁おもふど
き
の
わ
た
目としては﹁らい﹂﹁らんけい﹂﹁らち﹂ の三っか。
の
︻う︼五二項。 7 ﹁うらやむ﹂却﹁うちはへて﹂が独自項。 A本の﹁うけひく﹂が無い。
』」
︻お︼六二項。うち臼﹁おもひのほか﹂ 四﹁おもほゆ﹂
ち月﹂ 7 ﹁ゐづ斗﹂が独自項。
白項。
2
1
Lー
F『
ω ﹁おほやけ﹂の六つが独自項。
ぺ
〉
重
出
//\のおもひしの四つがA本に無い独自項目。
ち
﹂
、
ヵ
1
う
1
項
−
A
“
ヮ
人﹂が独自項。
︻
け
︼ 一五項。
O 五項。うち時﹁こふかき﹂祁﹁こ斗ろくさ﹂鈎﹁こ斗ろ
︻
こ
︼ 一
u i日の﹁けふりのみや、 けはい、 けいのうみ﹂が独自項。 ︻ふ︼二九項。
﹁ふりはへて﹂却﹁ふなきおふ﹂が独自項。
︻
え
︼ A本と同じ一 0 項目。
︻
て
︼ A本と同じ二ハ項。
の杉︵すくなるをたとふ︶﹂但﹁こ斗ろの竹︵同しく直なるにたとふ︶﹂鉛﹁こ斗ろのたけ︵心長と書︶﹂幻﹁こも
寸たれ﹂問﹁こまかへり﹂の七項が独自項目。
Lm
乃﹁あしかきし 凶﹁あたしよ﹂ 山﹁あさりし 間﹁あしたのは
︻
あ
︼ 一三O項。但し﹁あさなゆふな﹂﹁あさなげ﹂が重出。 し た が っ て 具 り 項 目 は 一 二 八 。 凶﹁あゃな
ω ﹁あまつかみ﹂お﹁あしすたれ﹂
や﹂の二項が入る。
L
︻ゆ︼三八項。 A本
が無く、﹁しるしの.山
L
﹁しるらめ
︻み︼八七項。 A本の﹁みつくきのいと﹂
︻し︼六九項。 A本の﹁しかりとて﹂﹁しくれ
︻
め
︼ 一七項。
︻き︼二六項。うちお﹁きりのなみたつ﹂お﹁きまさぬ﹂が独自項。
が無く、一みるかに﹂が入る。
最後の﹁タ附日﹂の代わりに﹁ゆふまとひ﹂が入る。
﹁さしも背止が無い。
︻さ︼八三項。うち凶﹁さ斗れ行﹂お﹁さをとめ﹂初旬﹁さくらのみや﹂の三つが独自項で、 A 本 に あ っ た
ら﹂印﹁あひおひしの九項、が独自項。 A本にあった﹁あまのおして﹂﹁あちさい﹂﹁あつまからけ﹂ の 三 項 が 無
﹁あやしき﹂
7
o
L
︻す︼コ一
はA本では
のお︵B 2 ・B 3
︻ひ︼五四項。うち日l 弘の ﹁ひとめの関、 ひころへて、ひとょっ
0.
項
。 9 ﹁せき
︻
せ
︼ 一
8 ﹁せみのこゑ﹂︵蝉のこゑを時雨にたとふ︶
︻
も
︼ A本と同じ二二項。
︻ゑ︼五項。 A本の ﹁ゑゐをなす﹂が無い。
ま、ひとよのまくら﹂の四項が独自項。
せきちの烏︶﹂凶﹁せたのなかはし﹂が独自項。
﹁せみのしくれ﹂となっている。これは語注からしてどちらの形でも見出し項日たりうるものである。
一項。 うち時﹁すその﹂︵次条を参照︶ とお J 但の﹁すこもりのお、すさのお、 すくなみ神、す斗めかくれ﹂の
- 25 -
。
し
、
本
五項が、 A本に無い独自項目。
お﹁いはかき︵岩ノカコミタルサマ
ロ﹁すそのた井︹国会本・すそわのた井リ
ロ﹁おもひつめ︵関心UPM州ごを二つに分けて﹁おも
以上総計で一七四O 項。重出を除いた異り項目数は一七三六である。
O右のうちA本と共通するものを比べるに、当然のこと乍ら配列順に出入りのあるほか、
V心
也︶﹂を﹁いはとかしはし に変えて﹁︵崎山川紅み欣一山総也︶﹂としたり、
ひつめ ︵おもひのあつめたる也︶﹂ ﹁おもひのほか ︵案の外也ごとしたり、
︵刊わ炉ゾんに川いいザ川︶﹂を、同じくその請注の内容から二つに分けて、﹁すそわのた井︵縁輪田井と書、山のすそわたの井
一色一色同同同
詮司いまたかうかへす、一景の色葉集に見えたり、一景は参州額田郡しかすかの阜の人と云々
﹁制糊異名分類抄﹂︵寛政五年︿一七九三﹀刊︶巻之一・時節の﹁十二月異名二一月の条に
月の
一色同色日
尋へし﹂とある。また五月にも﹁いついろ月、むめのいろ月 L、六月に﹁せみのは月、はやしのかねし八月に﹁いかこ
- 2
6
也︶﹂﹁すその ︵山類也ごとして独立させたりしている場合も、稀にある。また語注にも多少の呉同がある。
木面白
とあり、三月に﹁しめいろ月﹂、四月に﹁ゆきみ月、鳥待月、鳥月、烏来月﹂とあって、﹁己上一景色葉集に載す、澄川
江
項
。イロハ分けの各部の項目の末にまとめてあげられている証歌は、総計二一四一首。重出を除くと一二三七首となる。
したがって見出し項目数より少ないから、当然すべての項目に対応する証取が一々に一不されているわけではない。
それに巧枕︵身枕名寄か︶・一一一五記、源氏・伊勢物語などを典拠とするようである。それらの歌の中には
首
A7・新勅撰・続古今といった勅撰集や、万葉・六花・夫木集、拾遺忠平・年中行事歌合・六百番歌合
日について複数の歌があげられている場合もあるし、全然無い場合もある。集什によれば、古今・後撰・拾遺・金葉・
院
詞花・千載・新古
堀
0
集什・作者名等も含めて、誤伝・論伝が幾分あろうかと思われる。
J
1
入
同同︵マ、︶一色一色同
し月、小田刈月、そのいろ月﹂、九月に﹁ゑとり月 L、十二月にも﹁としつみ月、かきりの月﹂などとある。昌喜はたし
大本二作]二冊
ゃーす
は﹁いろは日
下しと打ちつ
かに、 この証歌の付いているB系統本の﹁伊呂波拾要抄﹂を見ていると思われるのであるが、彼の見た本がどれである
かは今のところ未詳である。
目l
j
写
い1く
各冊表紙中央に、 上巻 ︵
︶ は﹁伊呂波討
上
﹂
、 下巻
。イロハ分けの門標で、 A 1松平文庫本と異る字母は、葉・耳・理・累・夜・連・屋・遊の八つである。
しJ
B 2︶官内庁書陵部本
︵
期
緑色無地紙。竪二十五、横十八・一二軒。
世
入れたものである︶。内題・尾題
ナシ c
下巻終丁オからウにかけて B 1本と同文のものがあるが、
竪十八・八、横十四・八糎。
毎半葉十行。和歌も同じなれど一首を二行にわけて記す。
r一
:
ー
IA1ト札ドL 4 μ
つ円日行
’
一
11
リ
ドHT
一−一ムMAいし一になっているほか、
上巻百十六丁半ごオ空白︶、別に巻末に遊び紙一丁。下巻百二丁、別に巻頭に遊び紙一丁あり口
﹁正本五慶長十一州年二月十八日﹂という年記が入っているのが、大きく異る点である。
︷子官同
鷹司城南館園書印﹂の子持ち枠什長方朱印、﹁宮内省闘書印﹂の長方朱印。
末
け書きにし、各々その右肩に﹁夫慈抄﹂と朱書する ︵これは奥書のはじめの三字をもとに書名のようにして書き
外 表
印
- 27 -
近
紙
題
奥
行
丁
数
数
両
己
備考
手ズレあり。朱・景による書き入れや鈎点あり。小口書﹁色葉詞乾︵坤︶﹂。表紙の表層剥落あり、﹁領三千
五百七十一号/寓本二冊領印ノ宮/一一納ル﹂と記した整理票などを貼る。
。巻頭にある序文は B 1本と同文であるが、 次の四ケ所が異る。 すなわちつしかそ﹂が﹁ちかう﹂に、﹁友とちとも﹂
が﹁朋友﹂に、 ﹁あひかたらひしが﹁あひかたらひ品ミのあそひ有中に﹂に、﹁いひけれは﹂が﹁いひけれ﹂になってい
。
る
田U将軍、奥州にて、弓
O B 1神宮文庫本に比べて、項目数・証歌の数とも多少の異同がある。まず項目について、 B 1本との異同の主なもの
をあげると、次の通りである。
γ文
﹁いし文︵ 口
︻ほ︼末に ﹁ほたし﹂の
日本の中賢と書しより、石文と云也︶﹂が入り、 計一二六項となっている。 なお B 1本の
︻
い
︼ B 1本の必﹁いせ人うたふしと必﹁いしかはうたふ﹂の聞に、
のはすにて、石の面
独自項目のうち、 川﹁いほみた斗つる﹂は﹁いほはた立る﹂と正しく表記されている。
見出しと説明が朱で書き入れられている。これは、もともとの証歌の中に﹁ほたししを含む歌が一首あげられて
いるためにとった措置と思われ、その証歌の上方に﹁ホタシ﹂と米で記すほか、末に﹁ほたししの証歌が二首、
新たに加えられている。したがって、もしこれを一項として数えるとすれば、計二二項となる。
︻ぬ︺八項。 9 の﹁ぬ
︻を︼一二三項。うち凶l nの ﹁をこたる、 をみ衣、 をきひ、をさめ﹂とお J 沼﹁をもはく、をは拾
︻ち︼二八項。 B 1にあった﹁ちのわ﹂の重出が無く、 8 の﹁ちりひちの山﹂も無い。
ま﹂が無い。
山、をしかへす、 をしなへて、をかたまの木、をこたらす、をとろのみち、をとろのかみ、をのかよ斗、をきの
しらいし﹂の計一四項は、 A本や B 1本では﹁おし の部にあり。︵B 1本ではうち一一項の右肩に﹁を欺﹂等と
- 28ー
A本に無い独自項目は、
注記している。困に﹁績色葉拾要抄﹂のところで引きあいに出した﹁仮名文字遺﹂を見るに、﹁お﹂の部にある
﹁をさめ﹂﹁をもはく﹂の二項を除いて、他は概ね﹁を﹂の部に属するようである。︶
︻
ら
︼ B 1本で
たまくらの柳︵名所也ィたまくし野大和名所也︶﹂を二つに
お﹁をりひめ﹂が一つ増えて三項。またA およびB 1本にあった﹁をそろ﹂は、この B 2本やB 3本では﹁おそ
ろ﹂として﹁お﹂の部に在る。
JL
1
﹁﹄おこなひし﹁お
︻
お
︼ B 1本にある﹁おはすで山﹂
その証歌の前に﹁らん﹂﹁らち﹂の二項が立てられ
﹁たまくし野︵大和名所也︶﹂としているので、項H数は変らず六八。
︻
た
︼ B 1本にあった﹁たくへ人﹂の重出は無いが、
分けて、﹁たまくらの柳︵名所也
﹂
の B 2本とB 3本では
︻
ゐ
︼ 8 ﹁ゐねかて﹂ 9 ﹁ゐをねぬ﹂が無く、七項。
は歌が三首あるのみであるが、
語義の説明もある。
﹁おきのしらいし﹂の一四項は、 ﹁をは捨山L J ﹁をきのしらいしL として﹁を﹂の部に入り
三四項。
︻ま︼﹁ますほのす
地名の説明に ﹁:・にあり﹂とあった
﹁・:と書﹂等とあったものを省略し
︻
あ
︼ B 1本にあった﹁あさなゆふな﹂﹁あさな
︻く︼お﹁くさとふ鷹﹂に並んで m
m ﹁くさとる鷹﹂が加わっているので、四四項。
とろ﹂が無い。そしてA本およびB 1本にあった﹁をそろ﹂が﹁おそろ﹂として入って来ているので、計四七項
となる。
一二八項。
き﹂のほかに﹁まそほのす斗き﹂が加わっており
kA
げ﹂の重出が無く、
見出し語に漢字を宛てる場合、
ゆえに一七三一、﹁ほたし﹂を入れて総計一七三二項となる。
OA本やB 1本と比べるに、表記等の異りのほか、
たり、︿例B 1本﹁いともかしこし ︵最賢と書︶﹂←﹁いともかしこし ︵最賢︶﹂﹀、
ものを省略する等︿例﹁いなは山みねとも︵美濃にあり、因幡にも有︶﹂←﹁いなは山峯共︵美濃・因幡工在︶﹂﹀の例が目につ
- 2
9
O証歌の数は B 1本と多少の出入りがあり、計一二OO首である。うち﹁つ﹂の部の第凶首目は﹁つくはねのこのも彼
面の草も木も﹂︵この歌はBーには無い︶ と上の句のみが記され、次の一行分は肩に﹁本一一﹂とあって、下の句を書くべ
く空白のままになっている口︵B 3本では空白は無いが、左胸に﹁本ノマ、落か﹂と記す。︶
O本書の B 1神宮文庫本に対する異同は、 B 1本に対するB 3静嘉堂文庫本のそれと殆ど同じである。すなわちB 2書
大本二巻二冊
陵部本と次にあげる B 3本は、同じ B系統本の中でもごく近い関係にあると言えよう。
B 3︶静嘉堂文庫本
︵
︹近世中期︺写
茶褐色無地紙。堅二十四・一五、横十六・七柄。
表紙左一屑。布目地泥間似合紙に﹁色葉詞本︵末︶﹂と墨書。内題・尾題
ナシ。
題策
下巻百二オ J ウにかけて、 B 2本と同文のものがある。慶長十一年二月の年記もある。
山一千古同
松井氏蔵書章﹂の長方朱印、﹁静嘉堂蔵書﹂の子持ち枠付長方朱印。
竪約二十、横十四糎。
毎半葉九ないし十行。証歌は一首を二行に分けて記す。
に奥書、百三オ J ウが制詞﹀。別に各巻巻頭に遊び紙一丁宛あり。
︶ 古二十八丁半︵一オ空白︶、 下巻︵やiす、制詞︶ 百三丁︿本文百一ウまで、 百二オ Jウ
上巻︵い Jく
奥書
表
示
氏
丁
数
数
印
記
- 30ー
く
備考
水しみや虫喰いあり。朱筆による鈎点・書き入れあり。水色や淡紅色の色紙・間似合紙等の小片を利用し
下
︶
﹂
。
た貼婆多くあり、その中に﹁随葉集﹂等の書名も見える。料紙は斐格交漉。小口書﹁色葉詞上 ︵
。序文はB 2本と全く同文である。また見出し項目の表記や数、語注・証歌とも、 B 2本と殆ど同じである。或は直接
の書承関係があるのではと思わせるくらい、両者の関係は密接である。項目数は B 2にあった﹁ほたし﹂の書き入れが
春・夏・秋・冬・恋・旅の五部に分けて計四七の﹁ぬしある詞︵制の詞︶﹂をあ
ないので、数え入れないとすれば、計一七一一二項である。
O下巻末に付されている﹁制詞﹂は、
げ、末に﹁此外、 みわたせは、 ほの/1、L の二語をつけ加えて、﹁かゃうのことは斗、 主/\ある事なれは、 よむへか
らす﹂とと父めたもので、 おそらく﹁詠歌一体﹂からの抜き書きである。
﹂斗ろさしのみなり﹂と言い、
﹁いつみの柏木とりのこせるふしのみおほく
前に掲げたように、﹁績色葉拾要抄﹂の編者︵常然︶ は、本書をさして、﹁是しかしなから、手ならふ人の見こ斗ろえ
て、此みちにやすくまなひ入給へかしの、
侍る﹂と言っている。たしかに子細に見れば整わぬ点も多少見受けられるが、本書よりや斗遅れて成立したと目される
﹁詞林三知抄﹂︵漢字表記を先に出す。その訓みに基きイロハ分けにしたものもあるが、部類別のものの方がはじめであ
ろう︶ や、さらに遅れて出たイロハ分けの﹁匠材集﹂等に比して、内容・形態ともに決して劣るものでは無い。しかし
ながら、﹁詞林三知抄しゃ﹁匠材集﹂が、近世初頭の印刷術再興の波に乗っていちはやく開板され、 流布し、簡便な連
歌・歌語辞典として後人を益したのに対し、本書﹁伊白波拾要抄﹂は、その続篇ともども、遂に刊行されることなくし
て了ったのである。
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