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「農地売買事業」の連続活用による規模拡大 Ⅰ 伊佐市大口山野地区 農業
Ⅰ 後継者就農を転機に「農地売買事業」の連続活用による規模拡大 伊佐市大口山野地区 農業経営者 経 緯 ア .「伊佐米」で有名な米どころ,伊佐市大口山野地区で水稲と施設園芸(トマト・メロン)を組 み合わせた現在46haの経営面積の専業農家である。 イ.集落の農業従事者の高齢化により昭和50年代後半から水稲の作業受託を引き受けるようにな り,その後受託面積を徐々に拡大し,平成7年には「農作業受託料前払資金」を活用し,本格的 に作業受託による規模拡大を図ってきた。 ウ.受託作業を円滑に行うため,コンバインの更新時の平成11年度に再度「農作業受託料前払資 金」を活用した。 エ.平成12年三男が就農,平成15年には次男が就農したので,自作地の規模拡大の必要性があ ることから優良農地を確保するために「農地売買事業」を活用した。 オ. 「農地売買事業 」による土地の取得は ,平成12年0.4ha,平成13年0.2ha,平成14年0.3ha, 平成16年1.5ha,平成18年2.2haである。 成果と今後の取り組み 1.未相続物件等を解決し,橋渡しをしてくれるため安心して売買ができる。 現在も「農地売買等事業」を活用し経営地の近隣の農地取得を計画している。 2.将来を見据えた経営の為には高い賃借料で賃貸するより,安い価格で農地を取得した方が得だ という考えに切り替えた。 また,水稲栽培の自作地確保による農地の面的集積ができたことから,大型機械の導入により 生産コストを下げることができた。 3.トマト・メロンの施設園芸を組み合わせた複合経営により経営の安定化が図られた。 4 .後継者である次男・三男には分業化や給料制を導入し ,自助努力による後継者の育成ができた 。 5.耕作放棄地解消のため棚田(17区画0.6ha)の作業受託を引き受けているが,収益は上がら ない状況なので,今後はこのような農地活用の方法について,地域ぐるみで検討し耕作放棄地の 解消に努めたい。 事業活用による規模拡大の変化 主な作目 水稲 自作地 受 託 借 地 計 活用前 1.5 3.0 1.0 5.5 面積:ha H7 3.3 15.0 10.0 28.3 H11 3.7 15.0 22.0 36.0 H22 9.4 15.0 21.0 45.4 備 考 公社保有(一時貸付) 0.3ha Ⅱ 1 農地取得と利用権設定による経営規模の拡大 大島郡和泊町 農業経営者 経 緯 ア.サトウキビ・ジャガイモ・花卉・肉用牛と多種多様な農業が営まれている沖永良部島でサトウ キビで最大規模の経営を目指す専業農家である。 イ.前々は1haほどのユリ球根栽培農家であったが,父親の高齢化等に伴い,平成13年に機械 作業で行えるサトウキビに転換した。 ウ.転換を期に「農地貸借事業」で平成13年15a,平成14年86a,平成15年77a,平成16年3 7a,平成17年67a,平成18年61a,平成19年16aで利用権設定をし,更新分を含め延べ約5 haを集積している。 また ,平成19年に0.5ha,平成21年に1.2haを「農地売買事業 」により規模拡大を図った 。 成果と今後の取り組み 1.相対による農地の借入は,いろいろと気を遣うが合理化事業を活用することにより安心して集 積ができた。 2.貸借契約・借地料支払いなど事務の軽減が図られ,安心して耕作ができる。 3.サトウキビ専業で経営を安定させるためには規模拡大して生産量を増やすしかないので, 1,000トンの収量を目標に,今後も合理化事業を活用し5haの農地集積を図りたい。 主な作目 サトウキビ 2 経営面積(ha) 自作地 借 地 受 託 計 大島郡喜界町 4.2 10.8 3.8 18.8 農業経営者 経 緯 ア.地下ダムの水を効率的に活用した生産性の高い畑かん営農が確立している喜界町におけるサト ウキビの専業農家である。 イ .これまで公社事業は「農作業受託料前払資金」を活用したが ,近年「農地売買事業 」を活用し , 経営規模を拡大している。 ウ.借地契約を約100件約23haしており,事務手続き・賃借料支払いに時間を要するために県 公社に相談し ,「農地貸付事業」を活用し,経営面積を集積している。 成果と今後の取り組み 1.県公社の「農地貸付事業」での取り扱いは,県外の地権者分とし地元の地権者分は町の「利用 権設定事業」とした。 2.貸借契約・借地料支払いなど県外の地権者に理解され契約がスムーズに行えた。 3.経営面積は借地が圧倒的に多いため今後は高齢化により農地の買入が懸念される。 今後も合理化事業を活用し,農地の集積を図りたい。 主な作目 サトウキビ 経営面積(ha) 自作地 借 地 受 託 計 6.0 22.8 6.0 34.8 Ⅲ 耕作放棄地解消と売買 大島郡知名町 農業経営者 経 緯 ア.サトウキビで10a当たり8t生産を目指すサトウキビ専業農家である。 イ.平成19年度に売買の相談を受けた農地(1.0ha)は遊休化しており,当時価格が折り合わず事 業を断念したが,平成22年度再交渉の結果,合理化事業の活用となった。 ウ .農地の売買に併せて遊休農地解消事業を導入し ,農地取得資金と整備費はL資金を借り入れた 。 成果と今後の取り組み 1.県公社が介入することで価格の交渉等がスムーズに進み,遊休農地の解消ができた。 2.面積拡大をするとともに経営管理の徹底を図り,生産量のアップに努めたい。 A 整備前 B 整備後 主な作物 サトウキビ 経営面積(ha) 自作地 借 地 受 託 計 5.8 3.7 10.0 19.5 Ⅳ 1 農地売買事業と資金借入との連携活用で経営規模の拡大 曽於市末吉町 農業生産法人 経 緯 ア.畜産とお茶・葉たばこが盛んな末吉町で茶業経営の専業農家が農業生産法人を設立したのは, 平成9年。 イ.長男が5年前,次男が4年前に就農し,平成18年には,お茶の製茶機械を120kラインにし たことに伴い規模拡大を図る。 ウ.平成18年に0.5haを取得,平成19年には0.7ha,平成20年には1.6ha,平成22年には1. 5haを「農地売買事業」により,経営規模を拡大している。 成果と今後の取り組み 1.元気のある経営者の多い末吉町では,地域の優良農地は取り合いの状況にある。 茶は,新植して5年は管理作業のみで収入がなく,5年後に資金を借り入れ,据え置き期間を 入れると10年後からの返済となるため,一時貸付を利用することにより投資ばかりのリスクが 軽減される。 2. 「農地売買事業 」は ,計画的に規模拡大が図られるために ,安心して農作業及び経営ができる 。 3.今後は経営改善計画に基づき ,「農地売買事業」を活用し,25haの経営面積を確保する計画 である。 主な作目 茶 経営面積(ha) 自作地 借 地 計 2 指宿市山川町 8.4 14.4 22.8 農業生産法人 経 緯 ア.薩摩半島の最南端に位置し,主幹作物であるオクラ・そらまめを主体とする農業生産が展開さ れている山川町で昭和56年農事組合法人を設立。 イ.昭和23年10aの農地と1頭の子牛から農業経営をスタート。規模拡大時には,畜産公共事 業と農地保有合理化事業を活用している。 ウ.平成16,17年度に畜産公共事業による畜舎,機械の整備を行った。 エ. 「農地売買事業」による土地の取得は ,平成15年1.5ha ,平成19年0.6ha,平成20年0. 6ha,平成22年1.8haである。 成果と今後の取り組み 1.自給粗飼料の生産は輸入粗飼料に比べ,コスト高であるが,将来を見据えた粗飼料確保や経営 の安定化のために重要と考え生産している。 2.現在は堆肥が問題なく地域農家に供給できているが,これが捌けなくなったときは自分の土地 で牧草に吸収させ循環をはかり利用する必要がある。 効率的な生産を目指して牧草の品種を選び収穫,貯蔵の機械化体系を確立しているので,飼料 畑は可能な限り拡大を進めていく。 経営状況 飼養頭数 販売数 1,660頭 1,000頭 土地の状況 施設用地 所有地 借 地 計 2.5ha 0.9ha 3.4ha 農用地 20.0ha 4.0ha 24.0ha Ⅴ 土地基盤整備事業とセットによる経営規模の拡大 〈県営中山間地域総合整備事業〉 1 肝属郡錦江町田代地区 茶生産者 4名 経 緯 ア .田代地区の茶生産基盤の状況は10aにも満たない山間傾斜地を開墾した茶団地が多く点在し , 茶園管理・摘栽作業等多くの労働力を要する地域が多数見受けられ,旧来の茶園では機械化が図 りにくい。 また,高齢化等により雇用の確保が困難になり,茶生産農家から茶園管理の機械化や労働力の 低減,省力化できる大規模圃場の開発,整備の要望があった。 イ.このことから,農用地の利用増進を図るとともに生産基盤の拡大化を図り,茶の効率・低コス ト生産を目指すために土地改良事業により山林原野及び条件不利な小規模農地を一括して整備す ることとなった。 ウ.事業参加者から農地の取扱は「農地保有合理化事業」を活用との要請により,関係機関と連携 し事業に取り組むことになった。 エ.事業参加者の資金については,事業着手前に経営計画を作成し,スーパーL資金を活用するこ ととした。 オ.平成19年度事業計画面積10.9haのうち国有林8ha,遊休農地0.24ha,山林等1.6haを農 地保有合理化事業で買い入れ,平成21年5月換地後4名の茶経営者へ売渡した。 成果と今後の取り組み 1.国有林等の買入に係る事務の手続き等を公社で行うため,安心して農作業に従事できる。 2.一時利用地指定の時期から新植できるため,投資期間が短縮できる。 3.事業着手から農地売買及び資金計画まで関係機関が連携し,スケジュールが立てられ,安心し て規模拡大ができた。 事業活用による経営規模の変化 事業参加者 A B C D 経 営 事業活用前 8 5 4.5 2.6 規 模 事業活用後 11.5 7.7 5.9 3.4 2 〈県営中山間地域総合整備事業〉 西之表市 掛地区 茶生産者 経 緯 10名 ア.昭和43年農事組合法人を構成員10名で設立し,現在は15名である。 平成16年に新たな荒茶加工施設が完成し,生産能力65haとなったが現在54haの成園で あるため1名当たりの経営目標を5haとしている。 イ.構成員の茶生産基盤の状況は10aにも満たない山間傾斜地を開墾した茶園が多く点在してい るため,茶園管理・摘栽作業等多くの労働力を要し旧来の茶園では収量があがらない。 ウ.このことから,茶生産の規模拡大を目指し農地開発を希望した。 エ.事業参加者は事業面積が13haと大きいことから,買収金額や農地開発に伴う事業負担金が 多額になるため事業導入に不安があった。 オ.そこで用地の取得方法から資金計画等関係機関が連携して事業に取り組むことになり,農地の 取扱は「農地保有合理化事業」で,資金はスーパーL資金を活用することとなった。 カ.平成22年6月事業計画面積11.8ha 山林を農地保有合理化事業で買い入れ,平成23年3 月工事完了した。 成果と今後の取り組み 1.平成23年度は土壌改良に取り組み,換地による処分登記は平成25年度に実施される予定で ある。 2.個々の経営規模を5haに統一すると伴に管理・経費のかけかたも統一し,組織力を活かした 経営改善を進めたい。 3.早く収穫できることだけに甘んじてきた栽培法を見直し,早さプラス品質を重視した栽培法に 切り替え,組合で作業グループに分けることで茶品質の向上・統一による市場評価の安定化を目 目指す。 事業参加者 A B C D E 経営面積(ha) 事業参加者 経営面積(ha) 事業活用前 事業活用後 事業活用前 事業活用後 2.1 2.9 F 3.6 4.4 2.5 2.9 G 3.8 4.5 3.3 4.0 H 3.9 4.4 3.6 4.4 I 4.3 5.0 3.6 4.2 J 4.5 5.3 Ⅵ 農地保有合理化事業を活用した畜産基盤再編総合整備事業 1 曽於市有明町 JA 経 緯 ア .「JA」は,管内において肉用牛繁殖基盤は高齢化の進行に伴う繁殖農家の減少などにより脆弱 化する一方,大規模繁殖経営農家の増加により生産頭数は微増に転じており,今後多頭飼育のた めの技術向上,自給粗飼料供給体制の整備など生産基盤の拡充に向けた取り組みが課題となって いたことから,JAは多頭飼育を効率的にすすめるための新しい技術の実証・繁殖農家の不慮事 態に対応するための一時預かり・粗飼料の自給率向上・安定した供給システムの構築のための実 証展示圃設置など大規模経営農家を目指す人材の研修施設としての機能発揮を目的とした「肉用 牛繁殖実験センター」を設置することとした。 併せて実証結果について管内の畜産農家へ普及実践し,担い手農家や繁殖農家の経営効率化を 図り,地域の繁殖基盤を拡充することとした。 イ.畜産基盤再編総合整備事業は,肉用牛実験センターの施設建設及び飼料畑造成。 農地保有合理化事業は,担い手農家の一時預かり(月20頭程度)の肉用牛を飼育する飼料畑 を確保するための農地について活用した。 ウ.事業用地2.6haのうち,田(遊休農地)2.0ha・山林等0.6haであった。 成果と今後の取り組み 1.事業用地は,2.6ha,9件22筆のうち市有財産の払い下げ,相続登記等があり煩雑な事務が 予想されたが,合理化事業活用により軽減できた。 2.平成20年度,造成事業後の合筆完了後の譲渡のため,資産の管理が簡素化された。 3.合理化事業を活用した畜産公共事業の実施により,JA管内の肉用牛繁殖基盤の整備が図られ た。 2 薩摩川内市祁答院町 農業生産法人 経 緯 ア.平成22年度肥育牛700頭を1,500頭規模に拡大するため,飼料基盤の開発整備や農業 用施設の整備等を行う畜産公共事業を実施。 イ.事業用地1.6haのうち施設用地7件8筆1.15haを合理化事業を活用して買い入れた。 用水路の払い下げ,相続登記等の煩雑な事務を県公社と農業委員会と連携のうえ解消し,事業 に取り組んだ。 成果と今後の取り組み 1.造成事業後の合筆完了後の譲渡のため,資産の管理が簡素化された。 2.合理化事業を活用した畜産公共事業の実施により,畜産経営の基盤が整備された。 着工前 造成後